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「新しい情報通信技術を活用した生涯学習の推進方策について」(中間まとめ)

平成12年6月
生涯学習審議会

1.生涯学習における情報化の現状と展望

1 生涯学習における情報化の必要性と現状

(1)生涯学習の必要性と情報化の意義

【生涯学習の推進】

 21世紀は、科学技術の著しい進展や少子・高齢化による人口構成の変化などにより、産業構造や雇用構造の急速な変化、就業形態の多様化が進み、社会の姿が大きく変化していくことが予想されます。また、地球環境・エネルギー・食糧などの世界的な課題も指摘されております。
 今後、我が国が、創造的で活力に満ちた豊かな国家として国際社会の中で発展していくためには、あらゆる社会システムの基盤となる教育において、個性豊かで創造性に富む人材を育成することが不可欠です。
 このため、人々が、学校教育だけではなく、生涯にわたり学び続けることを通じて、自ら課題を見つけ、自ら学び考える力や豊かな人間性をはぐくみ、新しい知識や能力を主体的に獲得していくことが求められています。
 平成11年のケルンサミットにおいても、主要国が伝統的な工業化社会から知識社会へと移行しつつある中、このような変化に対応するため、生涯学習により、経済・社会の発展の基礎を築き、個々人がその発展に貢献し、またその発展から利益を得るための能力を培うことができると指摘したケルン憲章が採択され、生涯学習の意味が改めて強調されたところです。
 また、平成12年4月に行われたG8教育大臣会合の成果をとりまとめた議長サマリーにおいても、今後の知識社会においては、これまでの学習や教授のあり方に根本的な変化が求められており、生涯学習はすべての人にとって高い優先課題であるとともに、生涯学習によって知識社会に完全に参画するための十分な機会を与えることができると指摘されており、今後の社会における生涯学習の重要性については、国際的な場においても強調されているところです。

【情報化の進展とその意義】

 一方、近年の情報通信分野における技術革新にはめざましいものがあり、パソコンをはじめとした情報機器の普及、インターネット利用の拡大、光ファイバー網の整備、通信と放送の融合、衛星放送等による多チャンネル化などが急速に進んでいます。
 統計によると、家庭へのパソコンの普及率は平成11年3月の時点で29.5%に達し、また、15歳から69歳までのインターネット利用者は平成10年度において1,700万人と推計されています。また、余暇活動についての調査では、余暇にパソコンを利用した活動をしている者が年々増加傾向にあることに加えて、将来はパソコンに取り組みたいと考えている者も中高年齢層を中心に多くなっているなど、パソコンに関する学習意欲は高まっています。
 本格的な情報化社会に向けた動きは、産業、経済、社会生活のあらゆる分野に及び、我が国でも高度情報化社会への対応が21世紀に向けた重要な課題になっています。
 このような中、21世紀を担う子どもたちの教育においても、情報化の流れを避けて通れなくなっているとともに、情報・コミュニケーション技術を適切に活用することにより、効果的で効率的な教育・学習を一層推進することができる可能性が広がってきています。
 このようなことから、平成11年には、高度情報化社会に対応した人材を育成するため、学校を中心とした教育の情報化を推進することを目的として、文部省が中心となり、通商産業省、郵政省、自治省が連携して総理直属として設置されたバーチャル・エージェンシー「教育の情報化プロジェクト」で初等中等教育の情報化の推進が検討され、12月にはハード・ソフト両面にわたる施策が報告されました。この報告を踏まえて策定されたミレニアム・プロジェクト「教育の情報化」においては、1.平成13年度までにすべての公立学校がインターネットに接続でき、2.平成17年度を目標に、すべての学級のあらゆる授業において教員及び生徒がコンピュータ等を活用できる環境を整備することなどが決定され、公私立学校のコンピュータ整備、校内LANの整備、教員研修の実施、学校教育用コンテンツの開発などが進められることとなっています。
 国際的にも、例えば先述のG8教育大臣会合の議長サマリーにおいて、近年における衛星通信、大容量光ファイバー、インターネットなど情報・コミュニケーション技術の飛躍的発展により、生涯学習及び国際理解の手段としての遠隔教育の可能性が大きく拡大していると指摘されています。また、学習と仕事の両立は、遠隔教育によってはるかに容易になるとともに、情報・コミュニケーション技術は、社会全体に対して、学習機会へのアクセスを拡大することや、児童生徒の理解力・創造力を深めることを可能にする潜在力を持つものであり、教育の内容を豊かにし教育機会提供の方法を変える展望を与えるものであると指摘されています。さらに、国際標準機関(ISO)において、この遠隔教育を推進するための教材等に関する情報の標準化の取組みも行われています。
 今後、我が国においても、科学技術の進展の方向や課題を視野に入れつつ、生涯学習の分野において積極的に情報化に取り組むことにより、人々が生涯にわたり、より主体的に学習に取り組み、一人一人の学習者がその可能性を飛躍的に拡大できるようにすることが必要です。

(2)生涯学習における情報化の現状

 学習者の学習ニーズの高度化、多様化が進む中で、個々人が情報・コミュニケーション技術を活用して生涯学習に取り組むにあたっては、家庭へのパソコンの普及が進んでいるものの、生涯学習用のコンテンツの不足や、インターネットの通信料金の問題、情報リテラシーを身につける学習機会が十分にないことなどが問題となっております。また、各地方公共団体で公民館などの生涯学習関連施設を情報拠点として十分に活用していないことや、学習機会を提供している多様な施設の連携が必ずしも図られていないため、学習者に対し総合的な学習機会やその情報を提供できていないことなど、我が国の生涯学習における情報化への対応は、エル・ネットなどの先進的な取組みやパイロット的な事業が行われているものの、まだまだ解決すべき課題も多いのが現状です。
 この結果、生涯学習における情報化に関しては、以下のような課題の解決に取り組むべき状況にあります。

  1. 情報化を推進する職員・人材が十分でないことや活用されていないこと、さらには情報化に対応した職員を養成するための体制が不十分であることなどの人的側面。
  2. 情報通信機器を整備した施設・設備がないこと、あるいは少ないことなどの設備面。
  3. 生涯学習関連施設がネットワーク化されていないことや、運用の仕組みが十分開発されていないこと、あるいは、学習者、ボランティアが情報ネットワークに接続していないため、情報化のメリットを充分に享受できていないことなどのネットワーク面。
  4. 情報コミュニケーション技術を用いた生涯学習用コンテンツが充実していないことや、コンテンツを作成するためのソフトウェアの利用環境が充実していないことなどのソフト面。

2 情報化で広がる生涯学習の新たな可能性の展望

 生涯学習における情報環境を整備し、情報・コミュニケーション技術を積極的に活用していくことにより、地理的・時間的制約を超えた多様で豊富な学習機会を提供できるようになるだけではなく、生涯学習に対する人々の意欲や興味・関心を高め、生涯学習の新たな可能性の展望が大きく開けることとなります。

(1)生涯学習に対する意欲の高まり

~生涯学習をより身近なものとして意欲的に取り組むことにより、豊かな人生をおくることが可能になります~

 経済社会構造の変化などに対応して、多くの人々がキャリア・アップなどを図るため、生涯を通じて学び続けることが必要だと考えるようになっており、生涯学習に対する意欲は高まっています。
 また、情報・コミュニケーション技術を活用することにより、多様な情報に接することができるようになるとともに、自ら情報を発信することが容易になるなど、主体的な学習を行うことができる環境が整備されつつあることから、特にそのような方法による生涯学習が注目されています。
 実際に、学習者の情報・コミュニケーション技術を活用した学習に対する意欲は高く、例えばエル・ネットによる子ども放送局や、大学遠隔公開講座の受信が可能な施設の利用者のうち、40歳代では約8割の者が、遠隔による授業・講座の受講を希望しています。
 また、完全学校週5日制が平成14年度から実施されることを踏まえ、子どもたちが情報・コミュニケーション技術を活用することにより、様々な学習に取り組むことが可能になります。
 生涯学習における情報化を推進し、情報・コミュニケーション技術を活用することにより、いつでも、どこでも、だれでも生涯学習に取り組むことができるようになります。これにより、今後、より多くの人々が豊かな人生をおくることができるように、常に様々な学習に取り組み、伝統的な学習を含めた生涯学習全体が発展することが予想されます。

(2)学習資源・機会の飛躍的拡大

~学習資源・機会が飛躍的に増えることにより、一人一人のニーズに適切に対応した学習資源・機会の選択が可能になります~

  1. 地理的制約の克服
     インターネットなどを利用することにより、公民館や博物館、図書館などの学習コンテンツや地域の様々な情報をはじめ、世界のあらゆる情報などをインタラクティブに使った学習を行うことができます。
     また、人々が生涯学習関連施設に集まり、情報ネットワーク端末を活用して学習するなど、興味・関心に応じたグループ・団体活動、サークル活動が盛んになるとともに、新たなヒューマンネットワークの構築が促進され、学習機会が増加します。
     一方、インターネットや衛星通信などを利用することにより、在宅で多様な学習を行うことができるようになるなど、地理的制約を受けない学習機会が飛躍的に増え、より自由に選択できるようになります。
     これにより、今後の高齢社会において、高齢者の活躍する場が拡大するとともに、病院や自宅で病気療養中の人々や、身体障害者など行動範囲が制限されている人々なども、自由に学習資源・機会にアクセスすることができます。
  2. 時間的制約の克服
     いつでもどこでも学習資源・機会にアクセスすることができるようになることにより、例えば、インターネットなどを利用することにより、出向かなくても現地の状況を知ることができるようになったり、図書館や博物館の開館時間など時間的な制約を受けずに学習資源を活用することができるようになるなど、時間をかけずに様々な学習に取り組むことが可能になります。
     また、様々な学習情報をデータとして蓄積し、いつでも引き出すことができるようにすることにより、社会人など時間的な制約がある学習者にとっての学習機会が飛躍的に増加します。

(3)学習スタイルの変化

~マルチ・タスク型の学習など新たな学習スタイルを活用した主体的な学習が可能になります~

 公開講座や通信教育等の伝統的な学習から、例えばモバイル通信端末を使ってリアルタイムに遠隔地で俳句のやりとりをしたり、働きながら、また、別のことを行いながら学習するような、マルチ・タスク型の学習スタイルが生まれます。人々はあらゆる時間に、あらゆる場所で学習することができるようになり、学習者が主体的に学習することにより、キャリアを形成することができるようになります。
 また、このようなモバイル通信端末は、常時ネットワークに接続できるため、単なる学習情報の伝達のみではなく、情緒的な部分も含んだより深いコミュニケーションの手段としても有効です。モバイル通信端末で学習者を情報ネットワークにつなぐことにより、感動をリアルタイムに伝え、学習意欲をより一層かき立て、主体的な学習を促進する新たな学習の場が出現します。また、新しい形態のヒューマンネットワークが形成され、現在失われつつある人間的なつながりを補完する可能性があります。
 一方、近年急速に家庭に普及しているゲーム機は、教育用のコンテンツや、インターネットに接続する機能を有しているものもあり、親子で遊びながら学習することもできるようになります。
 このように、学習目的別に多様な情報機器を選択して学習することにより、新たに効果的な学習スタイルを開発することができるようになるとともに、学習者が主体的に、自らの学習目的に応じて、それぞれの情報機器や学習機会を選択し、組み合わせてメニューを作り学習することができるようになります。
 また、グループ・団体活動やサークル活動などの伝統的な集合学習においても、テキストや講義方法などの面で情報・コミュニケーション技術を活用していくことにより、場を共有する利点を活かしつつ、より効果的な学習機会を提供できるようになるとともに、上記のような遠隔的な学習と融合させることにより、新たにより効果的な学習スタイルを開発することができます。
 さらに、学習者が学習資源を自ら検索し、新たに学習資源となるコンテンツを作成することにより、学習者による手作りの多様なコンテンツの広がりが期待されます。

(4)地域づくり・まちづくりの推進

~様々なコミュニケーションを通じて地域や世界を知り、まちづくりが活性化します~

 阪神・淡路大震災などを契機に、ボランティア活動が国民に広がりつつある中、情報・コミュニケーション技術を活用することにより、ボランティア活動が一層盛んになり、個々人の学習成果を十分に活かしたまちづくりが推進されることが期待されます。
 また、情報化が進む中で、地理的制約を超え、リアルタイムで双方向に情報の送受信が可能になることにより、情報集積度の低い地域、特に離島、へき地でも、多様な学習情報にアクセスすることができるようになり、住民の意識が高まるとともに、まちづくりなどが活性化します。
 さらに、個人がアクセスできる情報が飛躍的に増加することにより、意識が変化するとともに、それぞれの地域で容易にまちぐるみの国際的な協力関係を築くことができるようになり、まちづくりが活性化します。
 一方、それぞれの地域の歴史や文化、地域の人々の活動など、地域に根ざした情報を容易に発信できるようになり、また、多様な情報を入手できるようになるため、住民の間のコミュニケーションが活発になるとともに、地域を愛する心がはぐくまれ、まちづくりが活性化します。
 また、各地域の特色のあるまちづくりの事例の発信を通じて、その情報がデータベース化され、有機的に連携することにより優れた取組みが全国に広がり、生涯学習によるまちづくりが一層活性化します。
 これらの課題や展望を踏まえながら、今後、生涯学習における情報化を推進することにより、生涯学習を通じて、人々が夢や希望を抱き、生き生きと生活することができる社会を構築していくことが望まれます。

2.情報・コミュニケーション技術を活用した生涯学習施策の基本的方向

(はじめに)

 平成4年の生涯学習審議会答申において、人々が、生涯のいつでも、どこでも、だれでも自由に学習機会を選択して学ぶことができ、その成果が適切に評価されるような生涯学習社会の構築を目指すことが提言され、その後、今日に至るまで、その実現を目指して様々な施策が講じられてきました。
 今後は、近年の情報・コミュニケーション技術の発展に適切に対応した生涯学習施策を講じることにより、生涯学習社会を飛躍的に進化・発展させることが必要です。
 また、諸外国においては生涯学習に対する先進的な取組みが既に進められているところもあり、そのシステムや成果、課題等も参考としていくことが必要です。

1 生涯学習に関連する人材・機関・施設等に求められる役割・機能

 今後、生涯学習における情報化を推進していくためには、生涯学習関連施設はもとより、それぞれの生涯学習に関するグループ、団体、サークルなどが情報化に対応できるように、情報リテラシーを身につけた地域の学生や生徒などを活用した情報ボランティアや大学、短期大学、高等専門学校、専修学校などの人材を活用し、アドバイスを受けたり、情報リテラシーに関する学習機会を設けることなどが必要です。
 また、情報リテラシーを身につける際には、単に情報機器の操作など技術的な能力だけではなく、社会の中での実体験とのバランスの取り方、情報化社会における危機管理や自己責任能力、情報を選択し、活用する能力やモラルなど基礎的な能力や態度を身につけることができるようにすることが大切です。
 それとともに、人々が実際の学習機会に参加できるようにすることが最も重要であることから、学習機会の情報と学習活動を結びつけるためのコーディネート機能を整備することが必要です。
 一方、生涯学習関連施設に情報機器を整備し、施設の機能の向上を図るとともに、それらの施設を情報ネットワークに接続することにより、学習者の多様なニーズに対応した学習機会やその情報を提供するなど、それらの施設の本来の機能を活かした特色づくりを推進することが必要です。
 また、効率的に情報化を推進するため、地域の中心となる生涯学習関連施設が情報化の拠点的な役割を担い、そのほかの施設がその拠点に接続することにより、学習機会やその情報、学習資源を十分に活用できるようにすることが必要です。
 その際には、今後予想される情報・コミュニケーション技術の急速な発展に適切に対応していくため、なるべく柔軟性のある施設・設備とすることが大切です。
 さらに、今後、大学の公開講座等の動画を含む豊富なコンテンツや、完全学校週5日制の実施に向けて子どもたちが利用できる様々な学習コンテンツの蓄積を促すとともに、そのようなコンテンツの作成を支援し、多様な学習需要に応えられるようにすることが求められます。
 これらの観点から、今後、生涯学習に関連する機関・施設などは、以下のような役割・機能が求められます。

(1)公民館等

【学習機会やボランティアなど地域のあらゆる情報を提供する機能<地域の大人センターに>】

 生涯学習の振興を図るためには、「いつ、どこで、何が行われるか」という情報をはじめ、様々な生涯学習に関する情報が容易に入手できるようにすることが最も重要です。
 今後、公民館や生涯学習センターは、高度化・多様化する学習者の個別のニーズに対応するため、職業に関する学習機会、ボランティア、まちづくり・県政情報など地域のあらゆる情報を容易に入手できるようにすることにより、そこに行けば、知りたいことがわかり、様々な人々と出会うことができ、学習意欲がかき立てられるような地域住民のための情報センターとなることが求められます。
 そのため、公民館や生涯学習センターは、都道府県や市町村内の公民館、図書館、博物館をはじめ、地域の行政施設、民間を含む様々な事業体において実施される文化・スポーツ事業を含んだ生涯学習に関する情報が得られるように、様々な機関等との連携を図り情報収集機能を一層充実するとともに、それらの情報を整理し、一覧として発信するなど情報提供の中心的機能を持たせることが必要です。さらに、それらの公民館や生涯学習センターの情報ネットワークを構築することにより、地域を超えた情報を容易に入手することが可能となります。
 一方、現在、文部省では、地域の親や子どもたちに対し、週末や夏休みの自然体験活動機会などの情報を提供する子どもセンターを全国に展開しているところであり、今後とも子どもセンターを積極的に整備するとともに、将来的には子どもセンターが公民館などと連携して、社会人などへの情報を含むすべての生涯学習に関する情報を総合的に提供することができるようになることが求められます。

【情報リテラシーを身につける学習機会など様々な学習機会を提供する機能】

 さらに、地域住民の高度化・多様化する学習需要に広く適切に対応していくためには、衛星通信等の情報・コミュニケーション技術を積極的に活用して、全国の大学の公開講座等の学習プログラムを地域住民に提供する拠点としての機能を備えていくことが必要です。
 このためには、衛星通信受信設備の整備を進めるとともに、全国の公民館や生涯学習センターがこのような機能を果たせるようにするためのシステムを開発することが必要です。
 また、特に情報リテラシーを身につける学習機会が不足しがちな社会人、高齢者や女性などに対して、情報機器を用いて情報を収集・選択し、さらには自分で情報を発信していくための情報リテラシーや情報ネットワーク上でのモラルやルール、マナーなどに関する学習の機会と場を、地域の人材を活用しつつ提供することが必要です。

【地域社会のコミュニケーション・まちづくりの拠点としての機能】

 公民館や生涯学習センターが、様々な学習機会やその情報を提供し、地域の住民の学習の場や学習に関する相談窓口としての機能を果たすとともに、情報機器を使った学習方法や情報収集・活用方法に関し気軽に相談できるヘルプデスクとしての役割を果たしていくことが必要です。
 これにより、公民館や生涯学習センターが地域のコミュニケーション拠点となり、まちづくりや地域の活性化に寄与することが期待されます。また、地方公共団体においても、公民館や生涯学習センターを地域の拠点として様々な形で活用していくことが望まれます。

(2)図書館

【「地域の情報拠点」としての機能の飛躍的な拡大】

 各地域の図書館は、地域住民の様々なニーズに応じて、情報提供のためのサービスを行う施設ですが、近年急速に発展・普及しつつある情報・コミュニケーション技術を積極的に活用することにより、「地域の情報拠点」としての機能を飛躍的に拡大する好機を迎えています。
 こうしたことを実現するためには、従来から扱ってきた紙媒体を中心とする資料に加えて、インターネットや衛星通信を活用しつつ、デジタル化された資料・情報を地域住民に提供するなど、情報拠点としての機能を高度化することが望まれます。
 また、各地域の図書館は、インターネットなどの情報・コミュニケーション技術を活用することにより、これまで収集してきた各地域の情報を全国の多くの地域や外国にも提供できるようになり、「地域への情報提供」に加え、「地域からの情報発信」という機能を持つことができるようになります。
 このような機能の拡大は、単に電子化された新しい媒体の利用を付加するだけではなく、今後も継続して利用される紙媒体等による資料・情報と、電子化された資料・情報とを有機的に連携させること(いわゆる「ハイブリッドなサービス」の展開)により、図書館全体として行われる必要があります。

【「新たな図書館サービス」の展開】

 図書館において情報・コミュニケーション技術を積極的に活用することにより、様々な新しいサービスを提供することが可能になります。
 例えば、インターネット等に接続することにより、外部のデータベース等の情報を提供することができ、(その際、情報等を図書館の端末を通じて提供するような場合については、図書館設置者の裁量により有料とすることも考えられます。)また、ホームページを開設することにより、地域住民が資料検索や電子化された情報そのものの閲覧ができるようなシステムを整備したり、電子メールによるレファレンスサービスを行うことができるようになります。こうしたことにより、障害者や高齢者など日頃図書館に来館しづらい利用者にとっても図書館の資料・情報が利用しやすくなるなど、より住民に開かれた施設となることができます。
 また、住民が自由に情報機器に触れる機会を図書館において提供することで、実際の情報検索などを通じた情報リテラシーの習得を支援することができ、エル・ネット受信設備の整備を一層推進することにより、図書館においても「子ども放送局」やエル・ネット「オープンカレッジ」の番組を提供するなど、住民にとっての様々な学習の場となることが求められます。
 さらに、平成13年度までにすべての公立学校がインターネットに接続される予定であることから、電子化された資料・情報を提供することにより、学校における図書館の利用促進を期待することができます。
 また、図書館に「情報ボランティア」などボランティアを積極的に受け入れることで、資料のデジタル化や住民の情報リテラシーの育成支援等図書館サービスの一層の充実を図ることができます。そのため図書館には、ボランティアを養成するための研修の実施や、活動の場の確保など受け入れ促進のための環境整備が求められます。

(3)博物館

 博物館は、歴史系、芸術系、自然科学系等多様なものがあり、それぞれの博物館は、全国的にも貴重な学習資料や郷土を理解する上で重要な学習資料等を収蔵しています。このような展示物を電子情報化し、それをインターネット等で提供することが求められます。
 これを実現するために、各博物館においてデジタルアーカイブ化(資料の電子情報による保管)を進め、それぞれの博物館が持っている膨大な資料を種別ごとに分類し、電子情報化して、インターネット上で提供することにより、利用者が学習に関する情報を簡単に入手できるようにすることが求められます。さらに、それを集約して、全国的・体系的な電子博物館網(バーチャルミュージアム)の形成を目指すことが必要です。
 これにより、学習者が実際に博物館を訪れることなく、博物館資料を開館時間の制約なく全国どこでも利用できることとなります。なお、その際には、料金システムなどについても併せて検討することが必要です。
 また、こうしたデジタルアーカイブ化により、来館者には、見学時に展示物の関連資料を展示コーナーの隣で情報として見せたりするとともに、博物館資料に関する詳細な情報をインターネット等で事前及び事後に学習することができるようになるなど、様々な学習の場面で活用可能な形で提供できるようになります。
 さらに、こうした新しい学習機会を提供することにより、人々が博物館により一層関心を持ち、来館することが予想されます。また、実際に博物館に来る前に、インターネット等で博物館資料について学習し、目的意識を持って来館することが可能となり、博物館自体の活性化も期待されます。

(4)大学・短期大学・高等専門学校

 大学、短期大学及び高等専門学校は、従来から公開講座を開催するなど地域に開かれた高等教育機関としての機能を果たすとともに、社会人特別選抜や科目等履修生、昼夜開講制の実施などを通じて広く社会人のための学習機会を提供し生涯学習機関として積極的な役割を果たしています。今後は、衛星通信やインターネットなどを活用して、広く全国に高度な学習機会を提供するなど、より一層地域に開かれた高度な学習機会の提供拠点としての役割を果たし、高度化した学習者のニーズに十分に対応できるようにすることが重要です。
 例えば、現在公開講座を開設している大学は、549大学に及んでおり、その講座数も合計10,086講座にのぼりますが、その受講者は、各大学の付近に居住する人々に限定される傾向があります。一部の大学では、衛星通信の利用により、広く全国に高度な学習機会を提供する試みがなされていますが、回線を使用するための経費の問題や、一大学ではひとつの回線を常時使用するだけの講座を用意できないこともあり、このような取組みはまだ端緒についたばかりです。
 今後、大学、短期大学及び高等専門学校が提供するこうした貴重な学習機会を、全国津々浦々の人々に提供していくためには、開設する講座数が少ない大学、短期大学及び高等専門学校でも衛星通信等を利用できるようなシステムの構築が必要です。
 また、大学、短期大学及び高等専門学校の情報・コミュニケーション技術の専門家を活用することにより、一般住民をはじめ、生涯学習関連施設の職員などが情報リテラシーを学ぶ機会を充実することが必要です。また、大学、短期大学及び高等専門学校の施設を活用して、そのような学習機会を提供することが望まれます。

(5)専修学校

 専修学校、とりわけ専門学校は、実践的な職業教育・専門的技術教育を実施し、地域に密着した高等教育機関としての機能を果たすとともに、専修学校が有する専門的な知識・技術等を提供する開放講座を地域で開催したり、子どもたちに職業についての体験的な学習機会を提供するなど、生涯学習機関としての役割を積極的に果たしてきています。
 今後は、情報リテラシーに関する講座の開設をはじめ専修学校の地域開放をより一層推進するとともに、生涯学習関連施設の職員などが情報化に対応できるようにするため、専修学校の施設と情報・コミュニケーション技術の専門家を活用して、情報リテラシーに関する学習機会を充実することが必要です。

(6)小・中・高等学校等

 現在、平成17年度を目標に、すべての公立小中高等学校からインターネットにアクセスでき、すべての学級のあらゆる授業において教員及び生徒がコンピュータを活用できる環境の整備が進められています。
 今後は、地域に開かれた学校づくりを一層推進するため、学校がその施設・設備を地域の人々に開放し、それを活用した情報リテラシーに関する学習機会の提供などを積極的に推進する必要があります。その際、PTAなどが中心となって親と子が一緒に情報リテラシーを身につける機会などを広く提供していくことができるように、それぞれの地域において工夫していくことが求められます。
 また、子どもが学校で学んだ情報リテラシーなどについて家庭で親と共に学習することなどにより親子のコミュニケーションが図られるとともに、学校のホームページなどに保護者が書き込めるようにすることにより保護者間のコミュニケーションが図られることなども期待されます。
 なお、勤労青少年などの学びの場となっている通信制高等学校においても、情報・コミュニケーション技術を活用した教育方法のあり方や教材開発などについても検討することが望まれます。
 また、障害のある児童生徒については、その障害を補完し学習を支援する補助手段として情報機器を活用することが有効であり、そのような環境整備に向けての取組みが期待されています。
 一方、学校が情報化する中で、地域に密着した情報を発信・受信できるようになることから、地域社会における学校の役割や機能を再認識し、地域に学びの素材を求めるなど地域社会と密接に連携していくことが求められます。

(7)地域住民の身近な公的施設等

 公民館、生涯学習センター、図書館、博物館以外の地域住民に身近な様々な公的施設などにおいても、生涯学習の観点から、地域の状況に対応して、施設相互の連携を図りつつ情報化を進めることにより、新たに多様な学習に役立つ情報を提供したり、様々な学習機会を設けたり、あるいは、学習機会に関する各種情報を提供するなど生涯学習の推進を図ることが望まれます。

(8)社会通信教育

 社会通信教育では、伝統的な印刷教材だけではなく、マルチメディアを活用した教材を開発するとともに、インターネットや衛星通信を活用した学習方法を推進することが必要です。

(9)学習者のネットワークづくり

 学習成果を活用して住民が講師になって講座を開くなど、学習者のヒューマンネットワークによる手作りのカルチャーセンターのような取組みを振興することが必要です。
 また、それぞれの地域でこのような取組みを推進することにより、地域の情報ネットワークづくりと相まって、生涯学習を推進するヒューマンネットワークを構築することが必要です。
 さらに、それぞれの学習者が情報ネットワークに接続することにより、地域を超えて講義抄録をインターネットで流したり、関連サイトにリンクを張ったり、音声や動画を合成して立体的な視聴覚コンテンツを開発したりするような新たな取組みが広がることが期待されます。

(10)不登校児童等の在宅学習等

 現在、不登校の子どもたちが毎年増加する傾向にあります。学校には、集団生活を通して人格形成を行う基本的な機能があり、こうした子どもたちに対しては、学校に復帰することを目指し、例えば適応指導教室の活用が図られたりしているところです。今後は、こうした子どもたちや中途退学の子どもたちに対しては、その必要に応じて、家庭での学習を支援する観点から、学校等との連携を十分に図りながら、インターネットなどを活用して在宅で学習することを支援するような取組みを進めることが求められます。
 また、病気療養児など通学して学習することが困難な子どもたちについても、新たな教育ソフトを開発したり、インターネットによる授業の展開などマルチメディアを活用した教育を支援することが大切です。

2 国際的連携による生涯学習施策の推進

 先に述べたとおり、ケルンサミットでも生涯学習の重要性が認識されており、また、G8教育大臣会合においても、情報・コミュニケーション技術を活用した生涯学習の重要性について確認されています。
 また、諸外国、特に先進国においては、情報・コミュニケーション技術を活用した生涯学習のあり方について様々な取組みがなされており、各国の成功例などについて情報交換を行うことが望まれます。
 一方、生涯学習における情報化は、インターネットなどを活用することにより、学習資源・学習機会に対する国境を越えたアクセスが可能になることを意味しています。現在でも、大英博物館の学習資源が世界中でインターネットにより活用できるようになっていますが、今後、世界的に著名な博物館の学習資源を各国で活用できるようにしたり、日本の美術館・博物館の学習資源を情報発信し、各国で活用できるようにするため、諸外国が連携して情報ネットワークを構築し、世界規模での生涯学習機会を拡げることが期待されます。
 また、アメリカと日本の大学が共同で、情報ネットワークを使った遠隔授業や公開討論会を開催する試みも行われており、今後、インターネットを使って各々の特色ある授業を実施し、相手国の学生や地域住民が受講する取組みが推進されることが望まれます。
 さらに、情報格差による社会的不平等の拡大などいわゆるデジタル・デバイド克服に向けて、遠隔教育手段を活用した途上国の人材育成のための国際協力を検討することが必要です。

3.当面推進すべき施策

1 情報リテラシーに関する学習機会や研修体制の整備

【情報リテラシーの学習機会の拡充】

2.で述べたように、情報・コミュニケーション技術のめざましい発展は、生涯学習のあり方を変え、その可能性を飛躍的に拡大すると考えられますが、そのためには、いわゆる「デジタル・デバイド」を防止・解消する観点からも、国民一人一人が情報・コミュニケーション技術を活用できるリテラシーを身につける必要があります。
 今後、特に情報リテラシーを身につける学習機会が不足しがちな社会人、高齢者や女性などに対しては、生涯学習関連施設において、情報リテラシーに関する講座などを積極的に開設していくことが必要です。

【生涯学習行政に携わる職員等の研修の充実】

 生涯学習行政に携わる職員、特に生涯学習関連施設の職員は、情報機器を使用して情報を収集し、自ら発信する能力や、学習者から情報検索の方法や情報の活用方法について相談を受けた場合の対応能力、情報セキュリティなど情報ネットワークで問題が生じた場合の対処方法・指導方法などのより幅広い情報リテラシーを身につけることが必要です。
 そのため、大学、短期大学、高等専門学校や専修学校など専門的な知識を持った人材・施設を活用して、生涯学習行政に携わる職員などの情報リテラシーに関する研修体制を整備・構築することが必要です。
 また、国立教育会館社会教育研修所において情報リテラシーに関する研修機会を充実するほか、都道府県や市町村においては生涯学習センターなどの中心的な生涯学習関連施設を研修拠点として活用し、研修機会を増やすなど、研修体制のシステム化を図り、情報リテラシーを計画的に身につけさせることが求められます。
 さらに、社会教育主事の資格取得のための「社会教育主事講習」においても、情報リテラシーを身につけるためのプログラムを組み入れる必要があります。
 なお、先に指摘した学習機会の情報と学習者を結びつける学習コーディネート機能の整備については、その機能を担う職員等の養成にあたり、情報リテラシーを身につけさせることが必要です。
 このため、国立教育会館社会教育研修所が養成研修を実施し、これを衛星通信を活用して全国に配信するとともに、公民館や生涯学習センターにおいて地域の実情に応じて実践的な養成研修を行う体制を整備することが望まれます。
 また、学習コーディネート機能を担う職員等を含め、生涯学習行政に携わる職員の養成・研修にあたっては、単に知識を習得するだけではなく、受講者がお互い議論し合いながら情報交換を行うことも重要であり、こうした集合学習の効用を公民館や生涯学習センターが積極的に活用していくことも必要です。

【情報ボランティアの活動の促進】

 情報ボランティアなど情報・コミュニケーション技術に通じた人々の参加を求めるためには、人材の登録を促進し、情報ボランティアを必要とする団体や施設などに対してその情報を提供するとともに、情報リテラシーに関する講座を多く設け、情報ボランティアの養成を図る必要があります。

2 生涯学習関連施設の情報化の推進

 今後、生涯学習における情報化を推進するためには、生涯学習関連施設において情報機器、インターネットへの接続などネットワーク環境を飛躍的に整備し、すべての施設で自由に情報機器を使用できるようにすることが必要です。
 そのためには、まず、それぞれの地域において、その実情等に応じて、整備目標を設定するなどの取組みが行われることが望まれます。
 なお、情報機器の整備にあたっては、地方公共団体が主体的に推進することが望まれますが、その方法については、例えば、中古パソコンを寄付しようとする企業に受入れ先を紹介し、生涯学習関連施設のニーズに応じたパソコンを斡旋する組織など中古パソコン等を安価、または無償で整備できるような方法やリースなどの方法を検討することが必要です。また、整備された情報機器の管理・維持についても、効率的な運営を図る観点から、地域共通のサポート体制のあり方などについて検討することが必要です。
 一方、今後、生涯学習関連施設を設置する場合には、情報化に対応できるように施設のインテリジェント化を図ることが必要です。さらに、図書館や公民館の機能など多面的な機能を持たせるような複合的な生涯学習関連施設を設置する場合には、例えばそのような施設でグループ活動を行っているときに、図書館の資料を即座に検索し、その場で使用することができるようにするなど、施設としての機能が総合的に活用できるような体制を作ることが望まれます。

3 インターネット利用環境の整備について

 家庭や生涯学習関連施設などにおいて生涯学習に取り組んでいくためには、インターネットなどを利用することが有効であり、そのための環境整備が重要です。
 インターネットの通信料金については、家庭や企業等におけるインターネットの利用を促進する料金体系として、インターネットアクセス部分における定額料金制の導入が進んできています。従来は、サービスを受けられる地域が限定されていたり、必ずしも使い勝手がよい料金水準になっていない面もありましたが、平成12年度中に定額料金制を全国拡大する動きもあり、今後は、地域通信市場における競争を一層促進させ、その競争の中で、さらに、インターネットの通信料金に係る定額料金の低廉化を図ることが求められます。

4 生涯学習用コンテンツの開発の必要性

 情報・コミュニケーション技術を活用することにより、遠隔地の珍しい動物の生態をリアルタイムで映像資料として活用したり、デジタルアーカイブ化された博物館などの学習資源を引き出して加工するなど、単なる文字情報だけではなく、映像や音声を用い、五感を通して学習効果を高めることができるよう、学習者の手作りのコンテンツ開発を含め、生涯学習用のコンテンツについて民間教育事業者の活力を活かしながら開発する必要があります。
 また、そのような素材的なものばかりではなく、例えば子ども放送局番組のようなエル・ネットを活用したプログラムなど、情報・コミュニケーション技術の活用により、多様かつ優れた生涯学習用コンテンツを開発することが必要です。
 そのため、国立教育研究所や、メディア教育開発センターなどにおいて、情報・コミュニケーション技術の活用について積極的に研究を行っていくことが求められます。

5 学習機会に関するデータベースの整備等

 都道府県や市町村が共同で、生涯学習関連施設で開設している学級・講座など様々な学習機会に関する情報やボランティアに関する情報などをデータベース化し、常に最新の情報を提供していくことが必要です。
 また、生涯学習の振興のための施策、実践等についての様々な情報をデータベース化し、都道府県や市町村のみではなく、様々な社会教育・青少年団体や民間教育機関、NPOなどが活用できるようにすることが必要です。
 こうした様々な情報については、「まなびねっと」などのポータルサイトを窓口として全国すべての情報にアクセスできる体制が整備されることが必要であり、また、同じテーマに関する各地域の学習機会を比較することなどができるよう、横断検索が可能なシステムを開発することが望まれます。
 さらに、このような情報提供システムでは、学習者の側からアクセスして検索等を行う必要がありますが、将来は、各学習者が関心のある分野等をあらかじめ登録しておくことにより、これに係る学習機会に関する情報が自動的・定期的に端末等に送り込まれるような工夫(いわゆる「プッシュ型」の情報配信)も望まれます。

6 大学等の公開講座を公民館等を通じて広く全国に提供するシステムの構築

 質の高い大学、短期大学、高等専門学校及び専修学校(以下「大学等」という。)の公開講座を、情報・コミュニケーション技術を活用して広く全国に提供していくことが必要です。具体的には、「衛星通信」の活用と「インターネット」の活用が考えられ、それぞれ「同時送信型」と「オン・デマンド型」があり得ます。こうしたシステムは、将来は融合されて総合的なものになると考えられますが、当面衛星通信による配信システムを具体化することが期待されます。このシステムの具体化にあたっては、大学等と公民館等やその設置主体である地方公共団体との緊密な連携・協力が必要です。

(1)衛星通信の利用

 既に述べたように、大学等の公開講座については、衛星通信等の情報・コミュニケーション技術を活用してこうした貴重な学習機会を全国津々浦々の人々に、身近な公民館等を通じて提供していくことが望まれていますが、回線を使用するための経費の問題や、一大学ではひとつの回線を常時使用するだけの講座を用意できない等の問題があります。このため、開設する講座の数が少ない大学等も参加できるシステムの構築が期待されています。
 一方、公民館の側においては、各地域の住民の高度化・多様化するニーズに対応するため、衛星通信等の情報・コミュニケーション技術を活用して、全国の大学等の公開講座の学習プログラムを各地域に提供する拠点としての機能を整備することが期待されていますが、個々の公民館がそれぞれの大学等と個別に契約を行うことは複雑、かつ煩雑であり、必ずしも合理的ではないこと、また、現在公民館を中心に整備が進んでいるエル・ネットを活用することが有効であることなどから、総合的なシステムを開発することが望まれています。
 こうしたシステムの機能としては、1.全体のスケジュールを組んで大学等の公開講座を提供し、2.受講希望者への広報や募集を行い、3.受講者から受講料を集めることなどが含まれます。
 衛星通信を活用することにより、受講者の受講料を、大学等で受講する場合よりも低額に抑えることができるようになり、また、このシステムのもと、受講者からの受講料等の収入から衛星チャンネルの借上などの経費を差し引いた後、これを各参加大学等への分配や、参加する各公民館等の事業への援助に活用することができるようになります。
 このような状況を目指し、当面以下のような考え方に立ち、必要な施策を実施していくことが必要であると考えられます。

【送信側について】

 大学等の公開講座を広く提供する上で、広域を同時にカバーできる衛星通信は非常に有効ですが、衛星通信チャンネルの確保は、毎年約1億円かかるため、多くの大学等が共同でチャンネルを確保する必要があります。
 また、送信会場の受講者と多くの受信会場の受講者の双方を同時に対象とし、双方向送信も活用するような状況を前提として、新しい講義の形態、プレゼンテーションの手法、質疑応答の方法等について、さらなる研究を行うことや、技術的側面についての開発を進めることが望まれます。
 さらに、このようなシステムにより大学等の公開講座を受講した者について、生涯学習として正規の単位認定とは別に特別の単位の認定を行うなど、学習成果の適切な評価を行うことにより学ぶ意欲を高めるような方策も検討する必要があります。

【受信側について】

 衛星通信を利用した公開講座の受信については、放送予定表や資料の送付などに対応するため、一斉データ送信・イントラネット送信等も利用できる受信設備の整備が必要になりますが、個々人で対応するにはかなりの費用がかかります。また、学習者が学びの場を共有することの価値も考慮し、このシステムにおいては、公民館等を活用した集合学習方式を前提とすることが適切であると思われます。
 また、受信局となる公民館等においては、地域住民への情報提供、受講者の募集、テキストの入手、それぞれの受講者自身による学習プログラムの設定等について、受講者のための種々のサービスを提供することが必要です。
 さらに、送信される講座について、録画による二次利用も含め、受信局となる公民館等が独自に企画する学習プログラムへの活用を進めることや、地域からの情報発信を行うことなど、各地域における様々な学習機会の中に積極的に位置づけることも期待されます。

【運営のシステム】

 衛星通信により大学等の公開講座を全国に提供するシステム全体の円滑な運営を確保するため、既に述べたように、送信側の大学等と受信側の公民館等の双方をカバーし、衛星通信チャンネルの確保、種々の情報の収集・提供、番組の企画・利用に係る助言・援助、受講料の徴収・分配、テキストの送付等のサービスを行うようなシステムを整備することが望まれます。なお、運営のシステムについては、例えば大学等のコンソーシアム(連合体)を形成し、そこで運営したり、あるいは生涯学習関連の既存の団体等を活用するなど、今後その方策について検討することが必要です。
 また、このシステムに参加する大学等は、衛星通信チャンネルの確保等に要する経費を分担して負担しますが、受講料の分配も受けることとなり、収支的にも十分自立したシステムを構築できると思われます。
 さらに、このシステムによる収入(受講料等)は、各大学等に分配するほか、システムに参加する各公民館等の事業の援助にも活用できるようにすべきと思われます。
 なお、情報・コミュニケーション技術の発展・変化は、今後ますます急速になっていくことが予想されるため、このシステムが現時点での技術水準や情報機器によって拘束されないものとするよう注意する必要があります。
 以上のようなシステムを具体化していくにあたっては、解決すべき様々な課題もあることから、公民館などを中心としてエル・ネットが普及拡大する中で、現在実施しているエル・ネット「オープンカレッジ」事業などの調査研究等も踏まえた検討を進めていく必要があります。

(2)インターネットの利用

 衛星通信を活用した上記のようなシステムでは、受講者は公民館等に出向く必要がありますが、将来は自宅で簡単に受講できるシステムも並行して整備する必要があり、インターネットの活用が望まれます。
 また、インターネットの利用は、1.いわゆる「インターネット放送」のように受講者が同一内容を同時に受信するような方法と、2.サーバーに蓄積された各講座を好きな時間にダウンロードして視聴する方法とがあります。
 このようなシステムを効果的に運用するためには、回線の高速化(1.5Mbps以上)が不可欠であるため、政府の高度情報通信社会推進本部の決定(平成10年11月9日)により、平成17年度が努力目標とされている光ファイバー網の全国整備ができるだけ早期に実現されることが期待されます。
 また、インターネットを利用する場合の受講料徴収システムは、現時点ではクレジットカードや一部のプリペイドカードなどに限られているため、「生涯学習カード」的なものの発行を検討することが必要と思われます。また、将来は、サーバー内の特定のサイトへのアクセスを自動的にカウントし、回線接続料金にサイト利用料(受講料)を自動的に加算するシステムの開発が望まれます。
 インターネットを利用したシステムの場合も、サーバーの確保など、前記のシステムによる広範なサービスの提供が必要になると思われます。

(3)衛星通信利用とインターネット利用の連携

 既に述べたように、回線速度や課金システムなどの問題のため、現時点ではインターネットのみを用いて衛星通信と全く同じ講座配信を行うことは困難ですが、衛星通信利用とインターネット利用を連携させることにより、より有効な講座提供を行うことは可能です。
 このような連携の例としては、インターネットを利用して、衛星通信によって提供される講座に関する広報を行うこと、関係する資料や情報の提供を行うこと、小画面による講座の配信を行うことなどが考えられます。
 こうした試みにより、新たな技術の開発・普及の状況も見極めつつ、様々なメディアを積極的・総合的に活用したシステムを構築していくことが望まれます。

7 大学院レベルの学習機会などの充実

 情報・コミュニケーション技術をはじめとする科学技術の進展などにより、今後社会人にはより高度な知識が求められるとともに、既存の知識の陳腐化の速度が速いため、常に積極的に能力開発を行い、新たな知識、技術を獲得していく必要があります。
 今後、人々が新たに知識や技術を身につけていくためには、学校教育修了後も引き続き学び続けることが必要不可欠となっており、大学、短期大学、高等専門学校や大学院などにおいて、昼夜開講制や科目等履修生、社会人入学などの取組みの推進を通じた社会人に対するリカレント教育を推進するなど高度な学習機会の充実が一層重要となっています。
 このため、社会人向けにインターネットを活用して大学・短期大学の学部・学科等や大学院修士課程の教育を提供することを促進する方策について検討を進めることが必要です。
 また、社会人向けの高度な学習機会を充実するため、平成11年度に制度化された通信制大学院修士課程が社会人の学習の場として活用されるよう、その設置の促進が期待されるとともに、修士課程の開設・運営状況、実績等や、通信制の講義により得られる教育効果などを総合的に勘案しながら、今後博士課程の通信制大学院について研究することが望まれます。

8 放送大学の拡充

 放送大学は、広く社会人等を対象として、幅広い分野で多くの授業科目を開設し、テレビ・ラジオを活用した高等教育レベルの教育を提供しており、生涯学習の中核的な機関としての役割を果たしてきています。また、近年、大学院における高度専門職業人養成に大きな期待が寄せられており、平成10年3月に大学院設置基準が改正され、通信制の大学院が制度化されたことから、放送大学においても、高度専門職業人養成を主とした大学院の創設を予定しています。現在、平成14年4月からの修士課程の学生受入れを目指し、諸準備を進めているところであり、社会人のニーズに即した大学院が設置されることが望まれます。
 また、今後は、情報・コミュニケーション技術を活用して、双方向的な教育機会の提供と学習指導体制の充実に資するため、インターネットやテレビ会議システムの活用などキャンパス・ネットワークシステムを構築することが求められます。
 さらに、現在デジタル・デバイドへの対応が課題となっていますが、こうしたことに応えるため、アジア地域を中心とした発展途上国における人材育成に資するための遠隔教育手段を活用した高等教育レベルの教育協力を推進するなど、放送大学において関係機関と連携しながら国際協力について検討することが望まれます。

お問合せ先

生涯学習局社会教育課

-- 登録:平成21年以前 --