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社会の変化に対応した今後の社会教育行政の在り方について (生涯学習審議会(答申))

平成10年9月
生涯学習審議会

<目次>

はじめに

第1章 社会教育行政の現状
 1 社会教育法等の制定と改正の経緯
 2 社会教育行政の組織と運営

第2章 社会教育行政を巡る新たな状況と今後の方向
 1 地域住民の多様化・高度化する学習ニーズへの対応
 2 生涯学習社会の構築に向けた社会教育行政
 3 地域社会及び家庭の変化への対応
 4 地方分権・規制緩和の推進
 5 民間の諸活動の活発化への対応

第3章 社会教育行政の今後の展開

第1節 地方分権と住民参加の推進
 1 地方公共団体の自主的な取組の促進
 2 社会教育行政における住民参加の推進
 3 国・都道府県・市町村の取組

第2節 地域の特性に応じた社会教育行政の展開
 1 教育委員会における社会教育行政推進体制の強化
 2 地域づくりと社会教育行政の取組

第3節 生涯学習社会におけるネットワーク型行政の推進
 1 ネットワーク型行政の必要性
 2 学校との連携
 3 民間の諸活動との連携
 4 首長部局等との連携
 5 生涯学習施設間の連携
 6 市町村の広域的連携

第4節 学習支援サービスの多様化
 1 情報化時代の通信教育の在り方
 2 学習成果を評価するための技能審査の在り方
 3 マルチメディアの活用
 4 青年学級振興法の廃止

はじめに

 本審議会は、平成9年6月16日、文部大臣から「社会の変化に対応した今後の社会教育行政の在り方について」諮問を受け、その後社会教育分科審議会において、今後の社会教育施設の運営体制の在り方、社会教育指導体制の在り方、その他社会の変化に対応した今後の社会教育推進上の課題について審議を行った。審議に当たっては、地方公共団体、社会教育関係団体からヒアリングを行うとともに、平成10年3月に中間まとめを公表することにより、できるだけ多くの関係者からの意見を参考にするよう努めてきた。このたび、この審議の結果を、「社会の変化に対応した今後の社会教育行政の在り方について」答申として取りまとめた。

 社会教育法をはじめとする社会教育関係法令が戦後間もなく制定されて以来、地域における学習活動の基盤である公民館、図書館、博物館等の社会教育施設の充実や社会教育指導体制の整備など、我が国の社会教育行政は着実に進展してきた。こうした中で、社会教育行政は制度発足以来50年近くを迎えようとしているが、今日、社会の変化に伴う人々の多様化・高度化する学習ニーズや生涯学習社会の進展等の新たな状況に対応した社会教育の推進が求められている。また、地方分権等を推進していく見地から、社会教育行政について、種々の指摘がなされている。このような状況を踏まえ、社会教育関係法令の見直しを含め、今後の社会教育行政の在り方や具体的方策について検討する必要がある。

 本審議会は、今後の社会教育行政において重要となる視点として、地域住民の多様化・高度化する学習ニーズへの対応、生涯学習社会の構築に向けた社会教育行政、地域社会及び家庭の変化への対応、地方分権・規制緩和の推進、民間の諸活動の活発化への対応を指摘するとともに、社会教育行政の今後の展開として、地方公共団体の自主的な取組の促進、社会教育行政における住民参加の推進、ネットワーク型行政の推進、学習支援サービスの多様化等を提言した。

 地域における社会教育活動を振興していくためには、住民一人一人が社会教育活動や社会教育行政に積極的に参画していくことが大切であり、それぞれの地域において自由で闊達な社会教育行政を展開していくことが必要である。本審議会はこうした考えに基づき、この答申をまとめたものであり、住民参加の下で魅力ある社会教育行政が行われ、活力のある地域づくりにつながることを期待するものである。

第1章 社会教育行政の現状

1 社会教育法等の制定と改正の経緯

 我が国の社会教育行政は、戦後間もなく制定された社会教育法、図書館法、博物館法、青年学級振興法等の社会教育関係法令に加え、学校教育、社会教育を通じ、生涯学習の振興を目的とした生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律等にのっとって行われている。その特徴としては、住民の自主的な社会教育活動を尊重し、行政の役割は主としてそれを奨励、援助すること、また、社会教育施設の運営に当たっては住民参加の考えが取り入れられていることなどが挙げられる。

  昭和24年6月に社会教育法が制定され、社会教育に関する国及び地方公共団体の任務、地方公共団体(都道府県及び市町村の教育委員会)の社会教育に関する事務、社会教育関係団体、社会教育委員、公民館、学校施設の利用、社会通信教育など社会教育全般にわたって規定が整備された。その後、昭和25年4月に図書館法が、昭和26年12月に博物館法が制定され、その目的、事業、職員、国の補助などについて定められた。博物館法においては、行政が奨励、援助する対象を明らかにするため、博物館の登録制度が設けられた。また、青年学級については、その全国的な普及に伴い、国及び地方公共団体の援助が求められたことから、昭和28年8月に青年学級振興法が制定された。そして昭和59年に設置された臨時教育審議会における数次にわたる答申等を受けて、平成2年6月に広く学校教育、社会教育及び文化の振興を視野に入れた生涯学習の振興を目的として、生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律(以下、「生涯学習振興法」という。)が制定された。社会教育法は、制定後、数回にわたり一部改正が行われた。大きな改正としては、昭和26年3月における社会教育主事等社会教育関係職員の充実を期するための規定の追加と、昭和34年4月における社会教育関係団体に対する補助金支出禁止規定の削除などがある。また、博物館法については、昭和30年7月に学芸員の資格認定制度の導入及び博物館相当施設の指定制度などを追加する改正が行われた。

 こうした法律の整備と並んで、臨時教育審議会、中央教育審議会、社会教育審議会、生涯学習審議会等において、社会教育に関する様々な答申及び建議が行われ、それぞれの時期における施策推進上の指針として重要な役割を果たしてきた。中でも、昭和46年4月の社会教育審議会答申「急激な社会構造の変化に対処する社会教育の在り方について」は、社会的条件の変化によってもたらされている社会教育の課題を踏まえ、社会教育の内容、方法、団体、施設、指導者の各項目について、社会教育が担うべき役割とその基本的な方向を指摘するとともに、社会教育行政の役割と当面する重点事項について提言し、その後の社会教育行政に大きな影響を与えた。

 社会教育法等に規定されている社会教育行政の特徴としては、住民の自主的な社会教育活動を尊重しつつ、行政の役割は主としてそれを奨励、援助することにあるとしていること、また、特に社会教育施設の運営に当たっては住民参加の考え方が取り入れられていることなどが挙げられる。

2 社会教育行政の組織と運営

 地方公共団体の社会教育行政は、教育委員会が所管しており、その事務局に社会教育を担当する課等が設置されるとともに、社会教育主事等の社会教育関係職員が置かれている。また、教育委員会は公民館、図書館、博物館等の社会教育施設を設置・管理し、それらの施設には、館長その他の職員が置かれるとともに、その運営に関する審議会・協議会等が置かれ、その運営に住民の意思が反映されることとされている。

 社会教育における中立性の確保は極めて重要であり、その行政の執行に当たっても、特定の党派的、宗派的影響力から中立性を確保する必要がある。このような趣旨から、社会教育行政は、地方公共団体において首長から独立した行政委員会である教育委員会が所管している。教育委員会の事務局には、社会教育の担当課等が置かれているが、その態様は、例えば、社会教育課という一つの課を設けている地方公共団体や、生涯学習課の中に社会教育係を設けている地方公共団体など様々である。

 社会教育法第9条の2の規定により、教育委員会の事務局に、社会教育主事を置き(1万人未満の町村は設置義務が猶予されている。)、社会教育主事補を置くことができるとされている。社会教育主事の職務は、社会教育を行う者に専門的技術的な助言と指導を与えることであり、社会教育主事補の職務は、社会教育主事の職務を助けることである。また、市町村における社会教育行政体制の充実強化を図るため、都道府県教育委員会が市町村教育委員会の求めに応じて、社会教育主事を派遣する制度が定着しているところである。社会教育主事の設置率(派遣社会教育主事を含む。)は、平成8年10月1日現在、都道府県においては100%、市町村においては約91%となっている。社会教育主事は、社会教育行政の中で重要な役割を担っており、生涯学習が盛んになるにつれて、ますますその役割は大きくなっている。

 また、同法第15条第1項の規定により、地方公共団体に、社会教育委員を置くことができるとされている。社会教育委員は、独任制の機関であり、その職務は、社会教育に関し教育長を経て教育委員会に助言するために、社会教育に関する諸計画を立案したり、会議を開いて教育委員会の諮問に応じて意見を述べたりするほかに、教育委員会の会議に出席して社会教育に関し意見を述べることなどがある。社会教育委員の設置率は、平成8年10月1日現在、都道府県においては100%、市町村においては約99%となっている。しかし、社会教育委員制度は、一部例外はあるものの、その運用が活発に行われているとは言えないのが現状である。

 教育委員会は、公民館(市町村のみ)、図書館、博物館等の社会教育施設を管理・運営している。公民館においては、その職員として館長、主事等が置かれ、館長の諮問に応じて公民館における各種の事業の企画実施につき調査審議する機関として、公民館運営審議会が置かれている。図書館には館長、司書等が、博物館には館長、学芸員等が置かれるとともに、施設運営に住民の意思を反映させることを趣旨として、図書館協議会、博物館協議会が置かれている。社会教育施設数は、平成8年10月1日現在、公民館が1万7,819館、図書館が2,396館、博物館(博物館相当施設を含む。)が985館、青少年教育施設が1,319施設、婦人教育施設が225施設などとなっている。

 平成7年度間の施設の利用状況(延べ数)を見ると、公民館においては、団体利用が約199万団体、約1億8,442万人、個人利用が約2,302万人であり、図書館においては、帯出者数が約1億2,001万人であり、博物館においては、入館者数が約1億2,407万人である。

 近年、ボランティアの活動が社会教育施設の運営において重要になってきている。ボランティアの活動状況(延べ人数)をみると、公民館が約138万人、図書館が約26万人、博物館が約11万人、青少年教育施設が約14万人、婦人教育施設が約6万人などとなっている。

 また、生涯学習の振興に関する審議機関としては、生涯学習振興法第10条の規定により、文部省に生涯学習審議会が設置され、その分科会として社会教育分科審議会が置かれている。都道府県については、同法第11条の規定により、都道府県生涯学習審議会を置くことができるとされており、平成9年4月1日現在、33都道府県において設置されている。

第2章 社会教育行政を巡る新たな状況と今後の方向

1 地域住民の多様化・高度化する学習ニーズへの対応

 戦後の著しい経済発展等がもたらした人々のライフスタイルの変化、価値観の多様化、高学歴化の進展、自由時間の増大の中、人々は、物心両面の豊かさを求め、高度で多様な学習機会の充実を求めている。社会教育行政が、このような人々の多様化・高度化する学習ニーズに的確に対応するためには、様々な方法により豊かな内容の学習機会を確保するとともに、学習情報の提供等を通じて、住民の自主的な学習活動を支援・促進する役割を果たしていく必要がある。

 戦後の著しい経済発展、科学技術の高度化、情報化、高学歴化、少子高齢化等が進む中、人々のライフスタイルの変化や価値観の多様化が見られる。人々の生活水準は向上し、自由時間も増大している。人々は物質的な面での豊かさに加え、精神的な面での豊かさを求め、生涯を通じて健康で生きがいのある人生を過ごすことや自己実現などを求めている。このような状況の中で人々は、高度で多様な学習機会を求めるようになってきている。また、近年、産業構造が急激に変化しており、継続的に知識・技術を習得することが必要になるとともに、転職等人材の流動化も高まり、リカレント教育の必要性とその充実が一層強く求められている。さらに、単に学習するだけではなく、その学習成果を地域社会の発展やボランティア活動等に生かしたいと考える人も多くなってきている。

 戦後の社会教育行政は、初期における勤労青少年に対する教育機能、地域住民に対する生活文化や教養の向上、女性の地位向上と社会参加の促進、高齢者に対する生きがいづくりなどを中心的な目的においた社会教育を展開してきた。例えば、市町村にあっては、公民館を中心として学級・講座等の事業を実施し、学習グループの育成等に努めてきた。しかしながら、前述したような学習ニーズの多様化・高度化の中で、公民館における学級・講座等、行政が自ら提供する学習機会だけでは、住民の学習ニーズに十分には対応することができなくなっている。今後の社会教育行政は、このような多様化・高度化する学習ニーズに的確に対応するため、大学等高等教育機関や民間教育事業者、企業の人材や学習資源を活用しながら豊かな学習機会の確保に努めるとともに、学習情報の提供等を通じて、住民自身の学習意欲と自由な創意・工夫を生かした学習活動を支援し、促進する視点を重視すべきである。

2 生涯学習社会の構築に向けた社会教育行政

 学歴社会の弊害の是正、社会の成熟化に伴う学習需要の増大、社会・経済の変化に対応するための学習の必要性の観点から、生涯学習社会の構築に向けて教育改革の努力が進められている。社会教育はその中で重要な位置を占めており、社会教育行政は、生涯学習社会の構築に向けて中核的な役割を果たさなければならない。今後の社会教育行政は、学校教育をはじめ、首長部局、民間の活動等との幅広い連携の下に、人々の生涯にわたる自主的な学習活動の支援に努めていかなければならない。

 学歴社会の弊害の是正、社会の成熟化に伴う学習需要の増大や、社会・経済の変化に対応するための生涯学習の必要性の観点から、昭和60年6月の臨時教育審議会答申「教育改革に関する第一次答申」において、学校中心の考え方から脱却して、生涯学習体系への移行が提言された。また、平成4年7月の生涯学習審議会答申「今後の社会の動向に対応した生涯学習の振興方策について」は、基本的考え方として、今後、人々が、生涯のいつでも自由に学習機会を選択して学ぶことができ、その成果が適切に評価されるような生涯学習社会の構築を目指すべきであるとした。

 生涯学習活動は、広範な領域において行われており、社会教育活動の中で行われるものに限定されるものではないが、社会教育活動は、幼児期から高齢期までの生涯にわたり行われる体育、レクリエーションまでをも含む幅広い活動であり、社会教育活動の中で行われる学習活動が生涯学習活動の中心的な位置を占めると言える。このような観点から、社会教育行政は、生涯学習社会の構築を目指して、その中核的な役割を果たしていかなければならない。

 これからの社会教育行政は、幼児期から高齢期までのそれぞれのライフサイクルにおける学習活動に対応することを基本として、生涯学習社会の構築に重要な役割を果たさなければならない。今日、住民の行う学習活動は広範多岐にわたって行われていることから、教育委員会の社会教育行政だけでは住民の学習ニーズに対応する施策の推進が困難となってきている。このため、文部省においては他省庁及び民間の活動と、教育委員会の社会教育部局においては学校教育部局、首長部局及び民間の活動などと連携しつつ、幅広い視野に立って社会教育行政を展開することが不可欠となっている。

3 地域社会及び家庭の変化への対応

 地域社会や家庭の環境が変化し、住民の地域社会の一員としての意識や連帯感が希薄化するとともに、家庭の教育力も低下している。完全学校週5日制への移行、学校のスリム化に伴い、青少年に対する社会教育の責任は一層重要なものとなっており、社会教育行政は、地域社会の活性化と地域の教育力向上に取り組むとともに、家庭の教育力の充実に資する施策の推進が必要となっている。

 都市化、核家族化、少子化の進展や産業構造の変化等に伴い、地域社会や家庭の環境が大きく変化した。住民の地域社会の一員としての意識や連帯感も希薄化してきていることに伴い、地縁的なつながりの希薄化の中で、家庭の孤立化も進んでいる。

 親が子どもに対して行う家庭教育は、本来、親の責任と判断において、それぞれの親の価値観やライフスタイルに基づいて行われるものである。今日、家庭を取り巻く環境が大きく変化する中で、多くの親が子どものしつけや教育に対する悩みや不安を抱えており、育児に対する自信喪失とともに、本来家庭において行うべき教育を学校等の外部機関にゆだねる傾向が見られるなど、家庭の教育力が次第に低下してきている。このような低下した家庭の教育力を回復していくためには、行政は積極的に家庭教育に対する支援を充実していくことが強く求められている。学校、家庭、地域社会が連携し、これらのバランスのとれた教育の推進を図るため、完全学校週5日制への移行や学校のスリム化が進められる中、青少年に対する社会教育の責任は一層重要なものとなってくる。地域と家庭の教育力の向上を図りつつ、青少年の健全な育成に地域全体で取り組んでいく必要がある。

 地域の教育力の活性化のためには、地域社会自体が活性化されていなければならない。このためには、地域の住民が、地域社会が自らの生活基盤であるとともに住民自身が地域の構成員であるという意識を培っていくことが重要である。このような意識を育てていく上で、地域住民による自主的な学習活動や社会参加活動が果たす役割は極めて大きい。今後の社会教育行政は、地域の課題を的確にとらえた学習活動の提供、ひとづくり、まちづくりなど地域に親しみを持てるような社会教育活動、住民相互の交流につながる社会教育活動の振興などに努める必要がある。また、地域社会はボランティア活動を含め、地域住民の経験、技術を生かせる場でもある。豊かな社会体験や実務経験を有する高齢者や学習活動で実力を身に付けた地域の人材が、こうした社会教育活動の中で活躍できるようにすることも必要である。

 なお、最近、青少年を巡る悲しい出来事が続いている。ゆとりのなさがもたらす青少年のストレス、倫理観の欠如、生命に対する認識の希薄化、青少年非行の低年齢化・凶悪化など、青少年を巡る諸問題は、大人社会の在り方や近時の青少年を取り巻く環境の変化と密接な関係にあり、抜本的な対策が必要であって、対症療法的な取組で解決できる問題ではない。

 平成10年6月30日に、中央教育審議会は「新しい時代を拓く心を育てるために-次世代を育てる心を失う危機-」として「幼児期からの心の教育の在り方について」答申した。また、本審議会において「青少年の生きる力を育む地域社会の環境の充実方策」について、別途審議を行っているところであり、こうした答申等の結果を踏まえて施策の充実を推進する必要がある。

4 地方分権・規制緩和の推進

 地方公共団体が、地域の状況に即応した適切な社会教育サービスを住民に提供するためには、その自主的な判断の下に、住民の意思を十分に踏まえた事業を展開できる環境の整備が不可欠であり、規制の廃止、基準の緩和、指導の見直し等、地方分権を一層推進していく必要がある。

 地域にはそこで生活する住民がいて、地域固有の課題や学習資源が存在する。そこで行われる社会教育としての取組は、それぞれの地域の歴史、風土、産業、人口構成などを反映して行われる。今後、地方公共団体が、地域の状況に応じた自主的な取組や地域住民の意思を十分に踏まえた事業を展開することができるよう、国の規制等の廃止ないしは緩和など、地方分権の一層の推進が求められている。

 現在、地方分権推進委員会を中心に、政府全体として地方分権の推進に総合的に取り組んでいる。もともと戦後の社会教育行政制度は、地方分権の考え方に立ち、また、公民館運営審議会の設置をはじめとして住民が社会教育施設の運営に参加する仕組みを持つなど、今日においても先進的な考えを持って整備されたものであると言える。しかしながら、住民自治の考え方に基づく制度でありながら、その定め方が固定的・画一的であることもあって、住民参加の仕組みが形骸(がい)化したり、地域の特色が生かせなくなっている場合が少なくない。地方公共団体が、自主的な判断の下、地域の状況に即応した適切な社会教育サービスを地域住民に提供するため、社会教育行政制度における規制の廃止、基準の緩和、指導の見直しなど地方分権、規制緩和の観点からの改革を積極的に進めることが必要である。

 また、活力ある社会教育行政は、そこに暮らす住民の意思と責任において確保していくものであり、地域づくりへの住民の主体的な取組を促すためにも、その政策形成過程に地域住民の広範な参画を促進する必要がある。

 なお、地方分権推進委員会の第2次勧告(平成9年7月)の中で、「必置規制の廃止・緩和とは、・・(略)・・現に地方公共団体で業務を行っている職員の職や行政機関等の廃止を推奨するものではない。むしろ必置規制の廃止・緩和が行われることにより、地方公共団体としては、より適切な形で職員や行政機関等を設置することができるようになるものである。」「必置規制が廃止・緩和されたとしても、地方公共団体が必要な行政サービスの低下を招くようなことがあってはならず、職員や組織の硬直的な設置義務付けを見直し、柔軟な設置を可能とすることにより、それぞれ異なった社会経済条件、地理的条件の下に置かれている地方公共団体が地域の実情に最もふさわしい体制で行政サービスを提供することができるようになり、そのことが機動的で充実したサービスの提供、即ち行政の質の向上にもつながるものである。」と指摘していることは重要であり、特に留意する必要がある。

5 民間の諸活動の活発化への対応

 民間の社会教育活動が活発化し、社会教育関係団体、民間教育事業者、ボランティア団体等が積極的な活動を行っている。これからの社会教育行政は、これら民間活動についての環境の整備や支援を行うとともに、ボランティア団体をはじめとするNPOを含め、民間団体との連携協力を進めることが必要である。

 民間の社会教育活動が未発達な状況においては、社会教育行政が、住民の社会教育活動の先導的役割を果たしてきた。しかしながら、住民の学習ニーズが多様化、高度化する中、民間教育事業者等、社会教育分野における民間の諸活動が活発化しており、こうした民間活動を視野に入れ、それと連携しつつ社会教育行政を展開する必要がある。

 特に都市部においては、民間教育事業が発達し、社会教育における重要な役割を占めるようになってきている。また、ボランティア活動も活発化するなど、社会教育活動の領域がこれまで以上に拡大している。従来、社会教育行政が行ってきた民間活動支援施策は、主として、社会教育関係団体に対する補助金や指導・助言というものであった。今後の社会教育行政にあっては、民間教育事業者、ボランティア団体をはじめとするNPO等とも幅広く連携協力を進めるとともに、これら民間活動がより一層活性化し、人々の学習活動をより豊かにする上で貢献し得るよう環境を整備していくことが必要である。

第3章 社会教育行政の今後の展開

第1節 地方分権と住民参加の推進

1 地方公共団体の自主的な取組の促進

 地方公共団体が、地域の特性と住民ニーズに的確に対応した社会教育行政を展開するため、国の法令、告示等による規制を廃止・緩和する。また、地方公共団体の主体的な行政運営に資するよう、社会教育施設の運営等の弾力化を進める。
(1) 地方公共団体に対する法令等に基づく規制の廃止・緩和
○ 公民館運営審議会の必置規制の廃止と地方公共団体の自主的判断の反映

 社会教育法第29条第1項の規定により、公民館に公民館運営審議会を置くこととされている。公民館運営審議会は、公民館の運営に住民の意思を反映するための組織であり、戦後の公民館の発展期において重要な役割を果たしてきた。しかしながら、住民の意思を反映させる方法については、公民館運営審議会が必ずしも十分に機能しているとは言えないところもあり、地方公共団体が地域の実情に応じてその反映方法を考え、決定できるようにすることが、実質的にその趣旨をより徹底できるものと考えられる。また、同法第30条の規定により、公民館運営審議会の委員構成として、学校の代表者や、社会教育関係団体の代表者などが規定されており、結果的に選出範囲が狭くなり、男性に偏る傾向になるなど、地域の実情、住民の意思を踏まえた運営という観点から見て、これらの規定は、現時点では必ずしも適切とは言えない。

 今後は、公民館運営審議会の設置を任意化することとし、その委員構成等についても地域の実情に応じて決めることができるよう弾力化するとともに、地方公共団体の自主的な判断の下に、公民館運営審議会以外の方法による住民の意思の反映の仕組みをも採り得るようにすることが適当である。

○ 公民館長任命の際の公民館運営審議会からの意見聴取義務の廃止

 社会教育法第28条第2項の規定により、公民館長の任命に際して、事前に公民館運営審議会の意見を聞くことが義務付けられている。しかしながら、事前に公民館長という公務員の人事を公民館運営審議会にかけ、意見を聞くことは事実上困難を伴うという実情にあることや、上記のように公民館運営審議会の必置規制を廃止すること等にかんがみ、意見聴取義務を廃止することが適当である。

○ 公民館の基準の大綱化・弾力化と公民館長、主事の専任要件の緩和

 「公民館の設置及び運営に関する基準」(文部省告示)は、社会教育法第23条の2第1項の規定に基づき定められている。この基準においては、公民館の設置運営に必要な基準として、必要な施設、設備、職員等が細かく規定されている。しかしながら、公民館は地域に密着した活動が求められる施設であり、画一的かつ詳細な基準を定めることは適当ではないことから、今後、こうした基準については、公民館の必要とすべき内容を極力大綱化・弾力化するよう検討する必要がある。

 現在、同基準第5条第1項の規定において、公民館には専任の公民館長及び主事を置くことが定められている。公民館長や主事は、公民館の運営において極めて重要な役割を担っており、地域の実情を踏まえ、かつ視野の広い特色ある公民館活動を展開するためには、広く優秀な人材を館長及び職員に求めることが必要であり、基準の大綱化・弾力化を進める中で、この専任要件を緩和することが適当である。

○ 国庫補助を受ける場合の図書館長の司書資格要件等の廃止

 図書館法第13条第3項に、国庫補助を受ける図書館においては、当該図書館長は司書となる資格等を有する者でなければならないと規定されている。また、同法第19条の規定により、国庫補助を受けるための最低の基準を文部省令(図書館法施行規則)で定めることとされており、同施行規則第2章において、図書館長の専任・有給要件、人口等に応じた図書の増加冊数、司書及び司書補の配置基準、建物の延べ面積基準が規定されている。

 図書館長は図書館についての高い識見を持つことが求められるのはもとより当然であるものの、司書の資格は有していないが識見、能力から図書館長にふさわしいと言える人材を登用する場合も考えられる。また、館長の専任・有給要件、人口等に応じた図書の増加冊数、司書及び司書補の配置基準、建物の延べ面積基準については、国庫補助を受けるための最低の基準として規定されたものであるが、図書館の情報化や他の施設との連携、地域の実情に応じた多様な図書館サービスの推進等が求められていることなどから、法律に基づく一定の基準を設け、それに適合しなければ補助対象とすることができないとする制度は今日必ずしも適当とは言えない。以上の観点から、同法第13条第3項及び第19条、同施行規則第2章の規定は廃止することが適当である。

 なお、同法第19条の規定を廃止することとの関連で、同法第18条に基づく公立図書館の望ましい基準の取扱いについて検討することが必要である。

○ 博物館の望ましい基準の大綱化・弾力化と公立博物館の学芸員定数規定の廃止

 博物館法第8条の規定に基づき、博物館の望ましい基準として、昭和48年11月に「公立博物館の設置及び運営に関する基準」(文部省告示)が告示されている。同基準においては、必要な施設及び設備、施設の面積、博物館資料、展示方法、教育活動、職員等が定められている。このような基準を設けることにより、博物館の水準の維持向上が図られてきたが、既に本基準の制定後四半世紀が過ぎ、博物館を取り巻く環境も大きく変化している。自然史博物館、科学博物館、美術館、水族館、動物園等、博物館の種類が多いことに加え、現在の博物館に求められる機能は、単なる収蔵や展示にとどまらず、調査研究や教育普及活動、さらには、参加体験型活動の充実など多様化・高度化している。こうした状況を踏まえると、博物館の種類を問わず、現行のような定量的かつ詳細な基準を画一的に示すことは、現状に合致しない部分が現れている。このため、現在の博物館の望ましい基準を大綱化・弾力化の方向で見直すことを検討する必要がある。

 学芸員及び学芸員補は博物館にとって欠くことができない専門的職員であるものの、その配置基準については、博物館の種類、規模、機能等のいかんや地域の実情を問わず一律に定めることは適切でないことから、少なくとも現行の同基準第12条第1項の学芸員又は学芸員補の定数規定は廃止することが適当である。

(2) 社会教育施設の運営等の弾力化
○ 社会教育施設の管理の民間委託の検討

 近年、博物館等の社会教育施設の管理を、地方自治法第244条の2の規定に基づき、地方公共団体出資の法人等に委託するケースが出てきている。文部省は、こうした委託について、社会教育施設運営の基幹に関わる部分については委託にはなじまないとして、消極的な立場をとってきている。しかしながら、施設の機能の高度化や住民サービスの向上のためには、上記のような法人等に委託する方がかえって効率的な場合もあることや、施設の特性や状況が地域により様々であることから、今後、地方公共団体がその財政的基盤を保証した上で、社会教育施設の管理を適切な法人等に委託することについては、国庫補助により整備された施設を含め、地方公共団体の自主的な判断と責任にゆだねる方向で検討する必要がある。

○ 図書館サービスの多様化・高度化と負担の在り方

 近年の情報化の進展には目を見張るものがあり、社会のあらゆる領域に情報化が浸透しつつある。図書館についても、例えば、コンピュータネットワークを通じて、自宅にいながら図書館の提供する情報を得ることや、図書館において館の内外の様々な情報を得ることが可能になるなど、今後図書館の提供するサービスは多様化・高度化することが予想される。

 一方、公立図書館は、入館料その他図書館資料の利用についてはいかなる対価をも徴収してはならないと法定されているが、今後公立図書館が高度情報化時代に応じた多様かつ高度な図書館サービスを行っていくためには、電子情報等へのアクセスに係る経費の適切な負担の在り方の観点から、サービスを受ける者に一定の負担を求めることが必要となる可能性も予想される。

 このようなことから、地方公共団体の自主的な判断の下、対価不徴収の原則を維持しつつ、一定の場合に受益者の負担を求めることについて、その適否を検討する必要がある。

○ 博物館設置主体に関する要件の緩和

 博物館法でいう博物館、いわゆる登録博物館は、その設置主体が地方公共団体、民法法人、宗教法人、日本赤十字社等に限定されており、またその施設の性格は社会教育施設であることから教育委員会の所管となっている。また、博物館法第29条に規定する博物館相当施設については、設置主体が、国、株式会社、学校法人、個人等である場合でも指定できるが、公立の博物館相当施設については、教育委員会所管の施設でなければ指定できないとする運用がなされてきた。しかしながら、美術館、動物園等については、首長部局で設置運営する例が増えてきていることなどから、首長部局所管のいわゆる博物館類似施設(博物館法上の登録博物館でも博物館相当施設でもない施設をいう。)を、博物館相当施設として指定する道を開き、教育委員会の専門的、技術的な支援を積極的に進めることが適当である。平成10年4月17日付け生涯学習局長通知において、こうした要件緩和が実施された。今後、教育委員会は施設の所管や設置主体の別なく博物館に相当する施設については、適切に博物館法第29条に基づく指定をしていくことが望まれる。

 さらに、大学等において充実した博物館施設が整備されつつあることや、学校教育と社会教育の連携を推進する観点から、学校法人が設置する施設等についても博物館として登録することができるようにするなど、博物館登録制度の在り方について検討する必要がある。

○ 司書等の資格取得における学歴要件の緩和

 図書館法第5条の規定において、司書又は司書補となる資格を取得するための要件が定められているが、資格取得を拡大する方向で、学歴要件などの基礎要件の見直しを行う必要がある。現行では司書補となる資格の取得に当たり、高校卒業又は高等専門学校第3学年の修了を基礎要件として求めている(同条第2項第2号)が、大学入学資格検定合格等も司書補となる基礎要件となるように見直すべきである。また、司書の資格の取得に当たっては、司書補として実務経験を有する者以外は大学卒(短期大学卒等を含む。)を基礎要件として求めており、学位授与機構による学士の学位の取得等によっては司書となることができないが、これについても見直す必要がある。

2 社会教育行政における住民参加の推進

 社会教育委員の制度を積極的に活用するほか、社会教育施設の運営をはじめとする社会教育行政に、多様な方法により住民参加を求めることが必要である。また、女性の積極的な登用が必要である。
(1) 住民参加の推進

 地方公共団体は、これまで以上に社会教育行政の政策形成過程に住民の意思を反映していくことが求められることから、社会教育委員の制度等を積極的に活用していくことが必要である。また、社会教育施設の運営は、それぞれの施設が地域の実情に応じた適切な仕組みを工夫し、その運営に住民参加を求めていくことが必要である。特に、社会教育活動の多くを女性が担い、参加しているにもかかわらず、例えば、都道府県の社会教育委員の女性の割合は4分の1程度にとどまっている。今後、社会教育委員や社会教育施設の運営協議会等の委員に占める女性の比率を4割以上とすることを目指すなど、女性の積極的な登用が必要である。

(2) 社会教育委員の規定の見直し

 社会教育法には、社会教育委員制度が規定されているが、社会教育行政の意思形成に対する民意の反映のため、社会教育委員の知識や経験等をこれまで以上に活用する必要がある。しかしながら、社会教育委員の構成規定から、学校の代表者や社会教育関係団体の代表者などが多く、結果として選出範囲が狭くなり、男性に偏る傾向にある。また、社会教育委員の委嘱期間の長期化や人物の固定化など弊害も指摘されていることから、地域の実情に応じ、多様な人材を社会教育委員に登用できるようにするため、委員構成、委嘱手続き等を定めた同法第15条の規定の見直しを行う必要がある。

(3) 図書館協議会の規定の見直し

 図書館法には、図書館の運営に住民の意思を反映させるための機関として図書館協議会制度が規定されている。図書館協議会の委員についても、社会教育委員と同様、その構成規定から、学校の代表者や社会教育関係団体の代表者などが多く、結果として選出範囲が狭くなり、男性に偏る傾向にある。また、利用者の代表が委員になるケースは必ずしも多くないなど同協議会の形骸化も指摘されている。このため、地域の実情に応じ、多様な人材を図書館協議会の委員に登用できるよう、同法第15条に定める委員の構成規定の見直しを行う必要がある。

3 国・都道府県・市町村の取組

 地方分権が進められる中、国・都道府県・市町村は新たな取組を求められる。住民の最も身近な社会教育行政を行う市町村は、住民参加の下、地域に根ざした行政を展開する必要がある。都道府県は、広域行政や市町村の連携を積極的に進める必要がある。国は、人材養成、学習情報の収集・提供、調査研究などに重点化する必要がある。
(1) 市町村の取組

 市町村は、住民の最も身近な行政機関として、住民ニーズ等を的確に反映し得る立場から、地域の特性や住民ニーズに根ざした多様な社会教育行政を推進することが求められている。このため、社会教育行政の企画運営に住民参加を求めるとともに、住民の自主的な社会教育活動を支援するため、学習情報提供や学習相談事業の充実を図っていくことがより重要となる。また、住民の生活圏の広域化や学習ニーズの高度化等に対応する社会教育行政が求められていることから、都道府県、市町村間の連携協力の促進を積極的に進めていかなければならない。なお、市町村教育委員会の事務を定めた社会教育法第5条の規定については、現在では役割を終えた事項の削除を含め、規定の見直しについても検討していくことが望まれる。

(2) 都道府県の取組

 都道府県は、市町村事業との重複を避けつつ、市町村の社会教育行政の基盤となる、中核施設の運営、指導者の養成・研修、学習情報の提供、都道府県レベルの社会教育に関する諸計画の策定、モデル事業の実施等を行う必要がある。特に、広域連携のコーディネート機能を充実し、各市町村の連携を促進していかなければならない。その際、都道府県と市町村が連携して、広域的な学習サービス提供のための体制を整備する必要がある。また、住民の活動範囲の広域化、学習の内容やレベルに対するニーズの多様化に対応し、広域的な学習情報の提供等の実施が重要である。

 地方分権等に伴い、市町村の人口規模、財政力等により、その社会教育活動の活発化などの面で格差が広がることが予想される。その場合、市町村の行政を補完・補充する立場から、人的交流等を含め多様な支援が求められる。また、社会教育行政の企画立案や円滑な実施に資するため、都道府県、市町村の持つ情報を相互に日常的に交換できるような体制の整備充実が求められる。なお、都道府県教育委員会の事務を定めた社会教育法第6条の規定については、現在では役割を終えた事項の削除を含め、規定の見直しについても検討していくことが望まれる。

(3) 国の取組

 国は、これまで補助金の交付や地方交付税措置等を通じ、社会教育施設の整備充実、指導者の養成、社会教育事業の振興、社会教育主事の配置の支援等を行ってきている。今後は特に、社会教育指導者、学習活動・事業等に関する情報の蓄積に力を注ぎ、広く関係機関や国民に学習情報を提供するとともに、海外に対しても発信できるように努める必要がある。また、高度な学習事業や学習方法等の調査研究の開発・実施、先駆的なモデル事業の開発・実施、各地域の特性を生かした具体的な取組や参考になる国内外の先進事例を収集し提供していかなければならない。

 また、社会教育主事をはじめとする社会教育の関係職員は、社会教育を支える重要な基盤であることから、企画立案能力や連絡調整能力等を備えた高度で専門的な人材としての研修・養成を行うことが重要であり、それらを一層充実していく必要がある。

第2節 地域の特性に応じた社会教育行政の展開

1 教育委員会における社会教育行政推進体制の強化

 社会教育委員、社会教育主事の機能を強化すること、公民館の専門職員等の能力の向上を図ることにより、教育委員会及び社会教育施設における社会教育行政体制の強化を図る。
○ 社会教育委員の審議機能の強化

 独任機関である社会教育委員は、教育委員会の会議に積極的に出席して意見を述べるとともに、会議体としての社会教育委員の会議の審議機能の強化を図る必要がある。社会教育委員の会議を活性化し、各種審議、提言活動などや、調査研究機能を強化するとともに、公民館、図書館、博物館等の社会教育施設の運営の在り方についても、総合的な企画立案、提言等を行うなど、積極的かつ恒常的な活動が期待される。なお、都道府県においては、社会教育委員の会議と生涯学習審議会の役割や職務の分担、又は連携の在り方などについて、検討していくことが必要である。

○ 社会教育主事の新たな役割等

 社会教育主事の職務は、社会教育法第9条の3の規定により、社会教育を行う者に専門的技術的な助言と指導を与えるとされている。従来、市町村における社会教育行政は、公民館等における学級・講座の実施や団体・グループの育成に重点が置かれ、社会教育主事の指導、助言の対象もそのような分野において行われてきた。しかしながら、住民の学習活動は多様化・高度化し、住民にとっては、社会教育行政以外の、首長部局や民間から提供される学習機会も魅力的なものとなってきている。こうした、住民の学習活動の実態やニーズに対応するためには、社会教育事業の実施等の従来型の社会教育行政の範疇での指導・助言だけでは、広範な社会教育活動に対する総合的な支援ができなくなってきている。今後の社会教育主事は、より広範な住民の学習活動を視野に入れて職務に従事する必要がある。このため、社会教育活動に対する指導・助言に加え、様々な場所で行われている社会教育関連事業に協力していくことや、学習活動全般に関する企画・コーディネート機能といった役割をも担うことが期待されている。こうした業務に社会教育主事が積極的に従事していくため、同法第9条の3の社会教育主事の職務規定について、企画立案、連絡調整に関する機能を重視させる方向で見直すことについて検討する必要がある。

 また、社会教育主事としての幅広い知識や経験は、学校教育や地域づくりにおいても大いに貢献し得るものであり、社会教育主事となる資格を有する職員を公民館、青少年教育施設、婦人教育施設等の社会教育施設に積極的に配置するとともに、学校、さらには、首長部局においても社会教育主事経験者を配置し、その能力を広く活用することが期待される。

○ 社会教育主事を通じた学社融合等の推進

 現在、小・中・高校の教職員を社会教育主事に登用する場合が多い。教員出身者が社会教育主事として社会教育の実務を経験し、学校に戻った時に、社会教育行政で培った広い視野を持って学校の運営に当たることは、学校教育にとっても望ましいものであるとともに、学校教育と社会教育の連携の強化の上でも意義深いものである。また、学校から社会教育主事として登用された後、学校に戻るという一方通行型だけではなく、一度学校に戻って、再度社会教育行政の管理職等として戻ってくる、あるいは生涯学習、文化、スポーツ関係等幅広い分野にも登用されるような双方向型のキャリアシステムの採用が必要である。これにより、社会教育行政と学校等関係機関との連携が促進されるであろう。このような社会教育主事の経験等を有効に生かす人事システムの構築が期待される。また、学校教育行政と社会教育行政の中心的役割を果たす指導主事と社会教育主事との間においても、人事上や事業推進上の連携を進めていくことが求められる。

○ 社会教育主事の設置促進のための社会教育主事講習の見直し等

 社会教育法第9条の2の規定により、教育委員会の事務局に、社会教育主事を置くとされ、また、社会教育法施行令の附則(昭和34年政令第157号)第2項の規定により、人口1万人未満の町村に対して、「当分の間」社会教育主事を置かないことができるとしている。本規定制定後約40年が経過した今日、未設置市町村は281市町村(平成8年10月1日現在)となっている。社会教育主事の役割は、生涯学習社会の構築を目指す上で、ますます重要となっており、社会教育主事の設置を促進するための環境整備が求められている。そのための一環として、社会教育主事の資格取得のための講習機会を大幅に拡充することが必要である。現在、社会教育主事講習は、国立教育会館社会教育研修所及び国立大学で行われているが、今後は、夏期以外の受講機会の拡充、受講場所の拡大、単位の分割取得制度及び単位互換制度の整備、さらには放送大学や通信教育を活用した在宅学習による受講、通信衛星等を使った社会教育主事講習の実施等を導入していくことが必要である。

 また、市町村における社会教育主事の配置を促進するため、都道府県においては、地方交付税を活用し、派遣社会教育主事に関する所要の財源措置を図り、市町村の社会教育行政の体制整備を支援していくことが望まれる。

○ 公民館職員の資質向上

 今後の公民館活動は、学級・講座の実施や団体・グループの育成のみならず、ボランティアの受入れをはじめとした地域住民の学習成果を生かす場としての機能を果たすことや、学習情報の提供機能、さらには学習相談の機能を持つことも期待されている。社会教育行政において、公民館は、住民と日常的、恒常的に接する社会教育の場であることから、学習機会の提供のみならず地域の課題の調査分析能力や住民ニーズを的確に把握する能力を持つことが期待される。このためには、館長、主事等の公民館の職員が社会教育全般についての広範かつ専門的な知識と経験を持つようにすることが大切であり、社会教育主事講習の受講等により社会教育主事となる資格を取得するなど、種々の研修機会を利用して専門性のある職員としての資質を向上させていくことが必要である。

2 地域づくりと社会教育行政の取組

 住民が共同して行う地域づくり活動を支援するなど地域社会の活性化に向け、社会教育行政は重要な役割を持つ。今後の社会教育行政は、住民の個々の学習活動の支援という観点のほか、地域づくりのための住民の社会参加活動の促進という観点から推進する必要がある。
(1) 社会教育行政を通じた地域社会の活性化

 地域社会の活性化に向け、社会教育行政は、地域住民が地域に根ざした活動を行えるような環境を創り出すことや住民が一体となって地域づくりをしていくような活動(地域共創)を支援していくことに取り組む必要がある。社会教育施設における、どちらかといえば受け身の学習活動から、発信型の学習活動の支援、例えば、学習成果を生かしたボランティア活動の支援、地域社会というフィールドで行う実践的活動の振興、住民の交流促進などを積極的に推進していかなければならない。このためには、社会教育活動に関する情報の収集・提供や、地域の社会教育に関する人材情報の収集・提供等を推進するとともに、社会教育諸活動における地域の人材の登用、ボランティアが活躍できる場の開発を推進する必要がある。社会教育施設の運営に一層住民の参加を求めることについても、積極的に取り組んでみるべき課題である。今後の社会教育行政は、住民の学習活動の支援という観点とともに、地域づくりのための住民の社会参加活動の促進という観点を加味して推進する必要がある。

(2) 地域の人材が活躍するための社会教育主事となる資格の活用

 地域には、勤労者や退職者を問わず、また性別や年齢も問わず、社会教育活動を実践・指導する資質を有する人材が豊富に存在する。こうした地域の人材が社会教育の場で活躍できる環境を整備しなければならない。例えば、民間から社会教育主事に積極的に登用したり、また、民間の人々が、社会教育指導員等非常勤の社会教育行政の専門家として活躍できるように工夫すべきである。このため広く社会人一般が、社会教育主事となる資格を取得できるよう、社会教育法第9条の4に規定する取得要件を弾力化の方向で見直すことを検討する必要がある。これに加え、社会教育主事設置のために設けられている社会教育主事講習を、地方公務員以外の者でも受講しやすくする必要がある。社会教育主事講習は、生涯学習概論、社会教育計画等、社会教育に関する専門的な内容から構成されており、社会教育の分野で活躍する民間の人々にとっても有効な内容であるが、収容定員等の制約から地方公務員の受講を優先せざるを得ないという事情がある。今後は、広く社会教育主事講習を受講できるよう、その講習の在り方を改善していく必要がある。このため、同法第9条の5の規定に基づく社会教育主事講習等規程(文部省令)に定める社会教育主事講習の受講資格規定について見直しを行うとともに、社会教育主事講習の機会の大幅な拡大など、一般にも受講しやすい方法を導入していくことが必要がある。

(3) 地域の人材が活躍できる場としての社会教育施設

 人々の学習活動が進むにつれ、その学習成果を地域で活用したいと希望する人が増えてきている。こうした人々が活躍する場として、社会教育施設が率先してその役割を果たすことが期待されている。公民館をはじめ、図書館や博物館等においてボランティア活動が盛んになってきていることは、そうした人々のニーズの現れである。しかしながら、多くの社会教育施設においては、ボランティアを受け入れる体制ができていない、受入れのための事務が繁雑である、受入れ予算がないなどを理由として、ボランティアの受入れ等に消極的なものが見受けられる。

 学習成果を生かす場が広がることは、学習者に達成感や充実感等が生まれ、さらに学習意欲が増すという相乗効果が期待できるなど、生涯学習社会の構築にとって有効なものである。このような学習支援・社会参加支援は社会教育行政の重要な使命であり、社会教育施設は学習成果の活用の場としてその役割を果たしていかなければならない。

第3節 生涯学習社会におけるネットワーク型行政の推進

1 ネットワーク型行政の必要性

 生涯学習社会においては、人々の学習活動・社会教育活動を、社会教育行政のみならず、様々な立場から総合的に支援していく仕組み(ネットワーク型行政)を構築する必要がある。社会教育行政は生涯学習振興行政の中核として、学校教育や首長部局と連携して推進する必要がある。また、生涯学習施設間や広域市町村間の連携等にも努めなければならない。
(1) ネットワーク型行政の必要性

 人々の学習活動・社会教育活動は、様々な時間や場所において様々な方法で行われている。多様化する学習活動や学習ニーズにこたえ、生涯学習社会における社会教育行政を推進するためには、多様な機関間で多様なレベルの連携が不可欠である。学習者から見れば、学習サービスをだれが提供するかは、さして重要ではなく、それぞれの学習サービスが自分に合った内容や水準であり、かつ、低コスト、場所的・時間的にも都合がよいことなどが重要であると言える。したがって、各機関は、その自らの特色や専門性を生かしつつ、相互に連携して住民に対する学習サービスを的確に行うようにしなければならない。

 生涯学習社会においては、各部局の展開する事業や民間の活動が個別に実施されると同時に、こうした活動等がネットワークを通して、相互に連携し合うことが重要である。これからは、広範な領域で行われる学習活動に対して、様々な立場から総合的に支援していく仕組み(ネットワーク型行政)を構築していく必要がある。この意味で社会教育行政は、ネットワーク型行政を目指すべきであり、社会教育行政は生涯学習振興行政の中核として、積極的に連携・ネットワーク化に努めていかなければならない。

 また、ネットワークを構築するためには、国、地方公共団体、大学・研究機関、民間団体等に存在する人・もの・情報等に関する学習資源を調査、収集し、その学習資源を有効に活用できるようにすることが必要である。このため、国は、学習資源の開発を効率的に進めるため、地方公共団体間のネットワーク化を促進し、また、地方公共団体は、人々に直接学習資源を提供するだけではなく、ネットワーク参加機関、施設、団体等がそれぞれ役割を果たせるような環境を整備していくことが求められる。

(2) 生涯学習社会構築を目指した社会教育行政の法令上の位置付けの検討

 生涯学習社会における社会教育行政は、前述したとおり、ネットワーク型行政の中核としての機能を果たすことが必要である。このような役割を効果的に果たしていくためには、社会教育行政が生涯学習社会の構築を目指すものであることを行政システムの中で明確にしていくことが求められており、社会教育法上の位置付けを含めて検討していく必要がある。

2 学校との連携

 社会教育と学校教育とが連携することにより、子どもたちの心身ともにバランスのとれた育成を図ることが重要である。学校施設の開放等を進めることにより、地域社会の核としての開かれた学校を作る必要がある。また、高度化する学習ニーズに対応するため、高等教育機関、国公立や民間の研究機関、企業との連携も不可欠である。
(1) 学校教育と社会教育の連携

 子どもたちの生きる力をはぐくむために学社融合の必要性が言われ、様々な場面で取組が始まっているが、いまだ学校教育と社会教育の連携は不十分と言わざるを得ない。学校教育と学校外活動があいまって、子どもたちの心身ともにバランスのとれた育成が図られることとなる。昨今の子どもたちを巡る環境を考えると、早急に学社融合の実をあげていかなければならない。

 地域社会の核としての開かれた学校を作ることや、学社融合の観点から、学校施設・設備を社会教育のために利用していくことが必要である。余裕教室等を利用するなど学校施設を社会教育の場に提供することにより、児童、生徒と地域社会との交流が深まり、地域社会の核としての開かれた学校が実現する。また、特に学校体育施設については、地域住民にとって最も身近に利用できるスポーツ施設であり、学校体育施設の地域社会との共同利用化を促進し、地域住民の立場に立った積極的な利用の促進を図ることも重要である。学校の運動場やプール、教室の開放等が盛んとなってきているが、学校開放にいまだ慎重な学校もあるなど、学校により取組が異なっている。学校開放を進めるため、教育委員会が学校ごとに施設の管理や利用者の安全確保・指導に当たる人員の適切な配置、地域住民の協力を得た委員会の整備など必要な措置を講ずることが求められる。

 こうした中で、学校の建替えに際し、地域住民の生涯学習活動の場としての活用を予定した設計を行うこと、また、地域住民のための高機能な生涯学習施設を整備し、これを学校教育に優先的に使わせることなど、非常に分かりやすい学社融合のスタイルを施設の設置運営面から打ち出している例もあり、先駆的取組として評価できるものである。

(2) 高等教育機関等との連携

 高度化した人々の学習ニーズに対応するためには、大学等の高等教育機関との連携が不可欠である。最近では、公開講座はもとより、科目等履修生制度の充実や夜間大学院の開設等、社会人が大学の単位を取得したり、修士課程、博士課程を履修することができるなど、大学における社会人受入れのための取組が活発となっている。従来、教育委員会側からの高等教育機関との連携への働き掛けは必ずしも活発ではないが、今後は連携を積極的に進めていく必要がある。これらを支援する上で国が果たすべき役割は極めて大きい。高等教育機関においても、地域社会の一員として地域における学習活動の振興のために、積極的に貢献していくことが期待される。また、今年から通信衛星により全国的に提供することになった放送大学の放送授業を公民館等社会教育施設において受信できるようにするなど、住民の学習活動の高度化のために積極的に活用していくことが期待される。さらに、国公立及び民間の研究機関や企業についても、専門的かつ高度な人材や施設設備など貴重な学習資源を有していることから、これらとの連携も有効である。

3 民間の諸活動との連携

 社会教育行政は、社会教育関係団体、民間教育事業者、ボランティア団体をはじめとするNPO、さらには、町内会等の地縁による団体を含めた民間の諸団体と新たなパートナーシップを形成していくことが必要である。
(1) 民間教育事業との連携

 本来、社会教育行政は、人々のニーズに応じて、多様で豊かな学習の場を提供する観点から民間教育事業を支援すべきであり、民間が創意にあふれた活発な教育活動を展開できるような環境整備を図っていくことが重要である。社会教育行政が、これまでどちらかといえばその支援に消極的であった民間教育事業者に対して、今後は、例えば共催で事業を実施することや、社会教育施設を開放すること、さらには、住民に対して、民間の教育事業に関する情報を提供していくことなど積極的な対応が必要である。

 特に、公民館等においては、民間教育事業者の活用についてこれまで消極的な姿勢が見られたり、また、民間で実施可能な事業を行政側の主催事業として行うことなど、民間と競合する面が見られたりするが、その協力方策について検討する必要がある。公民館が、住民の意思を反映しつつ主催事業を展開する上で、民間教育事業者との連携協力を積極的に考えるべきである。

(2) 社会教育関係団体との連携

 これまで社会教育関係団体は、民間の行う社会教育活動の中心として重要な役割を担ってきた。しかしながら、ボランティア団体をはじめとするNPOによる活動など、新たな団体の活動が盛んになっている。平成10年3月には、特定非営利活動促進法(いわゆるNPO法)が成立している。同法では、社会教育の推進を図る活動等を特定非営利活動としており、こうした活動を行う団体に対して法人格を付与することができるようになった。

 これまで、社会教育行政は、社会教育関係団体の活動を重視し、奨励すべき活動に対して補助金を交付して支援する等、連携を密にとってきた。その結果、団体側も行政の支援を前提とした事業展開となり、本来の自立的な意識が希薄となったとの指摘もある。今後、社会教育関係団体は、それぞれの設立の趣旨・目的に沿った一層自立した活動の展開が求められる。社会教育行政は、社会教育法第11条及び第12条の規定の趣旨を踏まえ、社会教育関係団体、ボランティア団体をはじめとするNPO、さらには町内会等の地縁による団体をも含め、これらとの新たなパートナーシップ(対等な立場から相互に連携・協力しあう関係)を形成していくことが大切である。

4 首長部局等との連携

 地域社会の活性化を通じた地域の教育力の活性化は社会教育行政の重要な課題である。地域の人材育成に責務を負う教育委員会と地域づくりに広範な責務を負う首長部局とが連携して、生涯学習、社会教育、スポーツ、文化活動を通じた地域の教育力の向上に取り組む必要がある。

 人間形成の基盤が地域社会にあることを考えると、活力ある地域社会の構築、地域づくりは社会教育行政にとって極めて重要な意味を持っている。地域の人材育成に責務を負う教育委員会と地域づくりに広範な責務を負う首長部局とが連携して初めて、生涯学習、社会教育、スポーツ、文化活動を通じた地域づくりと地域の教育力の再活性化が可能となる。青少年教育、男女共同参画社会の形成等の諸活動は、地域全体で取り組むものであり、それぞれの地域の実情に即して、教育委員会と他の部局が連携協力して推進していかなければならない。行政サービスの提供者がどの組織であるかは、住民にとって重要な意味を持たない。それぞれの部局が、その行政目的に応じた特徴ある様々な事業を行うことは好ましいものであり、問題があるとすれば、同種の事業が様々な部局で相互に連携されずに行われていることである。

 例えば、男女共同参画の一層の推進のために、教育委員会は、男女の固定的な役割意識を改めるための学習や、女性のエンパワーメント(個々の女性が自ら意識と能力を高め、政治的、経済的、社会的及び文化的に力を持った存在となること)を目指した学習を専門的な見地から支援することが必要である。一方、首長部局の女性担当部局では男女共同参画に関する広報活動等を行っており、教育委員会の婦人教育行政と首長部局の女性行政は、各専門部局がそれぞれのノウハウを生かした役割分担に従って施策を行いつつ相互に連携を図ることが効果的である。社会教育としての婦人教育を実施する教育委員会は、首長部局を通じて、関係施策を行う他部局の情報を得ながら施策を進めていくことが必要である。特に、民間団体に対しては、首長部局と教育委員会が密接な連携を図り、それぞれの持つ情報を提供するといった具体的な対応が不可欠である。

 住民にとっての行政サービスの提供、充実という観点から、教育委員会と首長部局が積極的に連携協力していかなければならない。現行の社会教育法では、第7条、第8条に広報宣伝における協力、資料の提供等教育委員会と地方公共団体の長との関係が規定されているが、教育委員会が首長部局とさらなる連携を進める観点から、規定の在り方について検討していく必要がある。

5 生涯学習施設間の連携

 社会教育施設間のみならず、首長部局が所管する各種の施設等との積極的な連携を促進し、住民にとって利用しやすい生涯学習施設のネットワークを構築していくことが必要である。このための恒常的な組織の設置が期待される。

 生涯学習の拠点として様々な施設が設置されている。社会教育施設だけではなく、首長部局が所管する各種の施設においても、さらに民間や企業が持つ施設でも学習活動は行われている。学習者から見れば、各施設がそれぞれ特色を生かして魅力的な活動を行っていることと、それぞれの施設が連携していることが重要である。したがって、社会教育施設と学校施設を含めたその他の生涯学習施設との連携協力体制を構築し、住民にとって使いやすい魅力的な施設運営に努めるべきである。このためには、例えば生涯学習施設ネットワーク委員会ともいうべき連携のための恒常的な組織を設置し、施設間の連携を図るとともに、施設間における事業情報の相互交換、人材の共通活用、共同キャンペーン、事業の調整ができるようなシステムの一層の充実が必要となる。例えば、ある市においては、公民館、図書館、博物館等の社会教育施設と学校、児童館、消費者センター、コミュニティーセンター等が連携して、各施設の実施事業の情報提供や学習プログラムの開発をするための共同事務局を設置して住民サービスを展開するなどの取組が行われている。こうした施設間の連携協力は、それぞれの施設の事業内容の充実、高度化にもつながるものとして参考に値する。

6 市町村の広域的連携

 高度な社会教育行政サービスを実現するためには、事務処理の共同化をはじめ、市町村が広域的に連携することが有効であり、こうした連携を促進することが期待されている。

 住民の活動範囲は広域化しているとともに、一つの市町村で提供できるサービスは限定されている。例えば、小規模の町村では、単独で充実した博物館などを整備することは容易ではなく、市町村が広域的に連携して社会教育行政に取り組むことが有効かつ効率的である。連携の手法としては、一部事務組合等による事務処理自体の広域処理化や、各市町村が共催負担金を拠出し協力して事業を行い、事務局は持ち回りにするなどの方法がある。地方自治法上の規定により、公の施設の区域外設置や、区域外の住民の利用について、議会の議決が必要とされているが、住民ニーズに対応し、高度な社会教育サービスを提供するためには、サービス機能の広域的な連携協力に積極的に取り組むことを検討する必要がある。その例として、指導者の登録、情報提供の共同実施、施設職員の合同研修などが挙げられる。また、市町村の連携協力には都道府県の支援が不可欠であり、各地域において、恒常的な連携組織を設置するなどの工夫が考えられよう。なお、平成10年度からは、文部省の広域学習サービスに関する補助制度が開始されることとなっており、広域連携への支援施策として期待される。

第4節 学習支援サービスの多様化

1 情報化時代の通信教育の在り方

 社会通信教育は、生涯学習社会の実現に大きな役割を果たしてきているものの、現在の社会教育法の規定は郵便が情報伝達手段の中心であった時代に設けられたものであり、多様なメディアが急速に進展している情報化時代にふさわしい社会通信教育の在り方について検討する必要がある。

 社会通信教育は、時間的、地理的な制約を受けることなく、いつでもだれもが学ぶことのできる学習機会として、生涯学習社会の実現に大きな役割を果たしてきているが、近年、インターネット、衛星通信等の情報通信技術をはじめとした科学技術の急速な進展に伴い、これらの多様なメディアを活用することにより、情報化時代に対応した社会通信教育の発展が期待される。これらの多様なメディアを利用した通信手段やビデオテープ、CD-ROM等の映像・音声教材を効果的に活用することができるよう研究開発を促進することが必要である。

 社会通信教育については、社会教育法第49条から第57条までに規定されているが、これらの規定は、郵便が情報伝達手段の中心であった時代に設けられたものである。このため、同法第50条第1項の定義等については、情報化に対応した今後の社会通信教育にふさわしい規定となるよう見直す必要があるかどうかを検討するとともに、社会教育上奨励すべき通信教育を文部大臣が認定する「文部省認定社会通信教育」についても、このような新しい技術を活用した社会通信教育を認定の対象とする等、社会通信教育の認定の在り方について検討することが必要である。

2 学習成果を評価するための技能審査の在り方

 文部省認定技能審査制度は、学習の成果を社会的に評価するものとして、また、学習活動に励みを与えるものとして重要な役割を果たしている。技能審査の法令上の根拠を明確にするとともに、今後の在り方を検討することが必要である。

 文部省認定技能審査制度は、青少年・成人が習得した知識・技能について、民間団体がその水準を審査・証明する事業のうち、教育上奨励すべきものを文部大臣が認定するものであり、現在、実用英語技能検定、日本漢字能力検定など25種目の技能審査が認定されている。この文部省認定技能審査制度は、学習の成果を社会的に評価するものとして、また学習活動に励みを与えるものとして重要な役割を果たしており、学校教育の現場や就職の際にも活用されてきている。

 一方、公益法人が独自に行っている審査等を各省庁が認定等することについては、その手続等に関する不透明性の改善が求められており、平成8年9月の閣議決定「公益法人に対する検査等の委託等に関する基準」では、各省庁が行う認定等が法令に基づくものであること、審査等を実施する公益法人は、法令によって指定されていることなどの要件を整えることが必要とされたところである。現在、文部省認定技能審査は、昭和42年10月に制定された「技能審査の認定に関する規則」(文部省告示)に基づき実施されているが、同閣議決定を踏まえ、その実施に関し、法令上の根拠を明確にすることが必要である。

 併せて、認定する団体を原則一種目一団体とする現行の認定に当たっての運用の見直しを検討するとともに、実施団体における業務及び財務等に関する情報の公開の促進など、文部省認定技能審査がより適切に行われるための措置を講ずることを検討していくことが必要である。

3 マルチメディアの活用

 マルチメディアの活用は、時間的・地理的制約を克服し、質の高い効率的な学習を可能にするものであり、マルチメディアを活用した新しい学習システムの開発や普及が望まれる。また、社会教育施設におけるコンピュータの整備や、操作に関する学習機会を充実させることが必要である。

 今日、社会のあらゆる分野において情報化が浸透しているが、生涯学習の振興を図る上で、マルチメディアの活用は、時間的、地理的制約を克服し、勤労者や子育て中の人、身近に学習機会のない人にとって、より質の高い効率的な学習を可能にするものとして、また、障害者や高齢者等の学習機会へのアクセスを容易にするものとして期待されている。

 放送大学は、テレビ、ラジオの放送メディアを効果的に活用した大学通信教育の実施機関として、広く国民に大学教育の機会を提供している。平成10年1月、これまでは関東地域の一部に限定されていた放送対象地域が、通信衛星を利用した放送により全国へ広がったところである。また、生涯学習に関する情報の提供を充実させるため、全国的に生涯学習情報を提供する体制(まなびねっとシステム)の整備が、西暦2000年を目標に進められているなど、マルチメディアを活用した社会教育サービスの充実が図られているところである。

 今後は、いつでもどこでも学習者のリクエストに応じた学習ができるシステムや、ISDN(音声、ファクシミリ、データ、映像等の情報を大量、高品質かつ経済的に伝送することを可能としたデジタルネットワーク)、衛星通信を活用したテレビ会議システム等による遠隔学習の実施、さらには図書館、博物館等の有する学習素材をマルチメディアデータベース化して他の社会教育施設や学校等において活用できるようにするなど、マルチメディアの活用による新しい学習システムの開発・普及が望まれる。

 こうした中、衛星通信を利用した総合的な教育情報通信システムが平成10年度に整備され、平成11年度より運用が開始される。これは、国立教育会館(本館、学校教育研修所、社会教育研修所)、文部省本省、国立科学博物館、国立オリンピック記念青少年総合センターと都道府県・政令指定都市の教育センター、学校及び社会教育施設等を衛星通信により結び、教育情報通信ネットワークシステムの整備を図るものである。本システムを活用した全国規模の社会教育事業の実施や社会教育職員研修の充実が期待される。

 一方、急速な情報化は情報リテラシー(情報及び情報伝達手段を主体的に選択し、活用していくための個人の基礎的な資質)の不足等情報システムにアクセスすることが困難な人々、いわゆる情報弱者を生み出す可能性がある。このため、様々な人々がコンピュータに慣れ親しみ、利用するために、社会教育施設におけるコンピュータの整備やコンピュータの操作に関する学習機会を充実させることなどが必要である。

 現在、マルチメディアの活用については、社会教育分科審議会教育メディア部会において包括的に検討しているが、引き続き検討していくこととする。

4 青年学級振興法の廃止

 勤労青年に教育的機会を付与するための青年学級振興法は、進学率の上昇等の社会の変化に伴い廃止することが適当である。ただし、青年に対する学習成果の評価等、その法律の精神については、引き続き継承していくことが期待される。

 青年学級振興法は、勤労青年に教育の機会を付与するため昭和28年8月に制定されたものである。その後、進学率の上昇等によるそのニーズの低下、青年教室への予算措置などによる代替措置の充実等の社会の状況の変化に伴い、その存続意義が乏しくなってきていることから、同法を廃止することが適当である。ただし、同法は、青年側から学級講座の開設を求めることができるなど、学習意欲のある者にその機会を与えるという趣旨を持つとともに、青年学級を受講したことが学習の成果として社会から評価されるなど、その法律の精神については、生涯学習社会の構築を目指す現在においても重要である。学習したい青年に対し学習機会や学習情報を確実に提供することやその学習成果の評価のためのシステムを構築することなど、青年学級の精神を継承した社会教育行政を展開することが期待される。

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-- 登録:平成21年以前 --