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生涯学習の成果を生かすための方策について (生涯学習審議会審議の概要)

平成9年3月13日
生涯学習審議会

 生涯学習審議会は、平成9年3月31日総会を開催し、「生涯学習の成果を生かすための方策について」の審議の概要を取りまとめた。

1.はじめに

○ 生涯学習審議会は、平成7年5月15日、文部大臣から「地域における諸施設の生涯学習機能の充実方策について」及び「学習成果の活用方策について」審議要請を受けた。前者については、平成8年4月24日、審議の結果を取りまとめ、「地域における生涯学習機会の充実方策について」(答申)として公表した。

○ 後者の審議要請の具体的内容は、「学習成果の活用を通じて地域の教育・文化・生活・福祉等の充実・発展に資する方策、及び学習成果としての知識・技能をボランティア活動に生かせるような環境を整備するための方策の検討」であり、これを受け、平成8年10月からワーキング・グループを編成し、論点の整理を行ってきた。

○ 「生涯学習社会」について、本審議会は、「人々が、生涯のいつでも、自由に学習機会を選択して学ぶことができ、その成果が適切に評価されるような社会」と定義している(平成4年7月答申)。これは、人々が学習を通じて自己の能力と可能性を最大限に伸ばし、それぞれに自己実現を図っていく社会であると言える。生涯学習社会を実現していくためには、人々のニーズに合った多様な学習機会の充実と同時に、学習成果を地域や社会あるいは職業生活の中で生かすことができるような環境の整備が重要である。このため、行政には学習者の自発的な意思を尊重しながら、学習成果を生かすための支援方策を積極的に展開することが求められている。

○ 本審議会では、このような観点から、人々が生涯学習の成果を生かしていくための必要な方策を審議してきたが、具体的方策について、なお検討すべき課題も多い。この「審議の概要」は、今期審議会の任期が満了するこの機会に、ワーキンググループにおける論点整理をもとに、これまでの審議の結果を整理し、まとめたものである。

2.生涯学習の成果を生かすことの意義とそれを支援する方策の必要性

1 生涯学習の成果を生かすことの意義

○ 近年、生涯学習社会構築に向けた様々な施策が講じられ、人々の学習活動が盛んになる中で、学習活動を通じて身に付けた知識や技術を広く地域や社会あるいは職業生活の中で生かしたいと考える人が増えてきている。

○ これらの人々が学習成果を生かす方法と場は様々である。
 地域や社会の中で生かす方法としては、地方公共団体が行う市民講座・学級の講師を勤めたり、青少年のスポーツ・文化活動や野外体験活動のリーダーとなったり、さらには福祉、環境保全、交通安全、国際協力など様々な分野のボランティア活動に役立てることなどがある。
 職業生活の中で生かす方法としては、産業構造のサービス経済化、情報化、高度化、グローバル化など急速な変化の中で、学習成果を生かした新しい職務への対応、(再)就職、転職、起業に役立てることなどがある。

○ このように、学習成果を様々な方法と場で積極的に生かしていくことは、学習者自身にとっても、また、地域社会や産業界にとっても次のような点で極めて有意義である。

1)学習者の生きがいや生活の励みになり、自己実現につながる。また、学習成果を具体的に生かすことができることにより、学習意欲がより一層高まる。
2)地域や社会の諸活動に積極的に関わっていくことは、人々の触れ合いや仲間づくりの機会を創出し、豊かな人間関係の形成や地域社会の活性化につながる。
3)新たに得た知識、技術を職業生活に生かしていくことは、学習者自身のキャリア向上のみならず、産業社会の発展にもつながる。
4)学歴のみならず多様な学習成果をキャリア向上に生かしていくことは、生涯学習社会構築の目的の一つである学歴偏重社会の弊害の是正につながる。

2 生涯学習の成果を生かす上での問題点

○ このように、人々が学習成果を生かしていくことの意義は極めて大きいが、これを促進する上で、次のような問題点がある。

1)学習成果を生かせる魅力的な活動の場が少ない。
2)学習成果を生かして活動したい側の希望と、それを受け入れる側(行政、施設、サークルなど)の要請を調整する仕組みが十分でない。
3)地域での活動やボランティア活動を社会全体で奨励・支援する条件が十分でない。
4)学習成果を個人の職業生活に有効に生かそうとしても、それが社会的に十分評価されないことが多い。

3 生涯学習の成果を生かすための支援方策の必要性

○ これらの問題を解消し、人々が学習成果を生かしていくことを促進するため、行政は、個人やグループ・サークルなどの自己責任による自発的な活動を尊重しながら、様々な支援方策を講じることが必要である。

○ 具体的には、

 1)学習成果の発表の場や様々な活動の場の開発
 2)学習成果を生かすための情報提供・コーディネイトシステムの整備
 3)地域での活動やボランティア活動を奨励・評価する社会的環境の整備
 4)各種資格等も含めた学習成果の社会的評価システムについての改善と活用の促進などのための方策を講じていくことが必要である。

○ 本審議の概要では、これらの方策を検討するに当たり、人々が学習成果を生かす場面に応じて、「地域社会の発展に生かす」、「ボランティア活動に生かす」、「個人のキャリア開発に生かす」に分け、それぞれに関し、基本的考え方、問題点と方策を整理した。

3.生涯学習の成果を「地域社会の発展」に生かす

1 基本的考え方

○ 2.でも述べたように、学習成果を生かして、地域における様々な活動に積極的に関わっていくことは、社会参加を通しての仲間づくりなど、豊かな人間関係の形成に役立ち、学習活動を核とした地域の活性化に資する。また、このことは、住民参加による開かれた行政運営を促し、自治意識を高める上でも重要である。

○ とりわけ、学校・家庭・地域社会の連携のもとに、地域の大人一人一人が子供たちを見守り、育んでいくという地域社会の教育力向上に対する期待が高まっており、地域の子供たちの活動や学習の場に住民がこれまで身に付けた知識や技術を積極的に生かすことの意義は大きい。

○ これらを踏まえ、次のような視点で、学習成果を地域社会の発展に生かすための支援方策を講じていくことが必要である。

 1)行政は、自らが率先して、住民参加の場の確保に努めるべきである。すなわち、行政の施設や事業の活動の様々な側面において、あるいは様々な教育活動において、住民の学習成果を生かす活動の場を開発していくことが必要である。
 2)講座・学級等の学習機会を提供する際には、住民から学習プログラムの企画開発への参画や講師としての協力を求めたり、受講者がその学習成果を地域の様々な活動に生かすことができるような講座内容とするなど、学習成果を生かすことに配慮して計画・実施していくことが必要である。
 3)学習成果を地域での様々な活動に生かすことを奨励するため、住民の希望と受け入れ側の要請を円滑に調整する体制の整備や、活動に対する社会的評価の促進が必要である。

2 問題点と方策

(1)学習成果を生かす魅力的な場の開発

<問題点>

○ 学習成果を地域社会の発展に生かそうと考えても、地域の身近なところに魅力的な活動の場が少ない。

○ 行政施設等においては、外部人材を受け入れることについて、消極的な場合が多い。学校においては、教育活動を充実する観点から、外部人材の活用が進められつつあるが、なお一層推進の余地がある。

<方策>
(行政の様々な施設や事業における活動の場の開発)

○ 人々の学習活動の活発化に伴い、地域における学習成果の発表の場の確保や、行政の行う事業の企画・運営への参画について、住民からの要請が高まっている。

○ これに応えるため、行政は、住民の自発的な学習成果の発表の場ともなる地域レベルの生涯学習フェスティバルの開催、住民が学習プログラムの企画や講師などとして参画する市民講座等の実施、住民が参画する自主的、主体的な地域づくりや活力ある地域経済振興に資する事業の推進に積極的に取り組んでいくことが必要である。これらの事業の企画に当たっては、例えば、各種のイベントのなかで体験学習の場を充実したり、あるいは事業の企画・広報を行う委員会の委員や運営スタッフ等に住民の参加を求めるなど、参加者が学習成果を生かして実際に活動を行うような機会を組み込んでいくことが求められる。また、住民に対し、これまでの経験や能力に基づくアイデアを募集し、新しい学習プログラムの開発や地域づくりのイベントの企画などに生かしていくような取組も考えられる。

○ 公民館、図書館、博物館、スポーツ・文化施設、さらには福祉センター、農村環境改善センターなど地域の様々な関連施設においては、学習機会の提供のみならず、その活動の様々な側面に住民の学習成果を生かす場を確保していくことが必要である。
 例えば、学級講座等における手話通訳、図書館における対面朗読、博物館等における展示解説、スポーツ・文化施設が実施する事業における指導、福祉センターにおける介護補助など、多様な活動側面に学習成果を生かす場を確保することが考えられる。

(グループ・サークル等の活動に生かす場の拡大)

○ グループ・サークル等の学習活動は、人々の触れ合いや仲間づくりの機会を創出するものであり、学習成果を生かす場として、このような活動を育成支援し、その充実を図ることは重要である。

○ 特にスポーツ・文化活動、野外体験活動、ボランティア活動など目的指向的な活動は、学習成果を生かす上で有効な機会であり、地域の教育力の向上という点でも重要な役割を持つ。行政としては、グループ・サークル等の自主性に十分配慮しながら、このような目的指向的な活動を活性化し、学習成果を生かす場を拡大することが必要である。このため、グループ・サークル間のネットワーク化や情報交換の機会の設定、特に公民館、図書館、生涯学習センター、スポーツ・文化施設や郵便局など身近な施設におけるグループ・サークル活動についての積極的な情報提供や交流の場の提供、団体育成についての相談窓口の整備などの支援方策を講じていくことが必要である。

(地域の子供の健やかな育成に生かす場の開発)

○ 地域全体で子供の健やかな育成を図るという観点から、住民の学習成果を生かすためのプログラムを積極的に開発・提供していくことが必要である。

○ 例えば、子供の学校外の体験活動や学校開放等に文化・スポーツ活動等の指導技能を有する者の協力を求めたり、いじめ等の生徒指導上の問題への地域としての対応や子供の様々な悩みに対する身近な施設での相談にPTA、青少年団体や教員経験者等の協力を求めることが考えられる。あるいは、地元の職業人から体験談を聞く機会を設けるなど進路指導の面で、情報処理等の技術者には情報教育の面で、さらに環境保全に取り組む自然保護関係者には環境教育の面で協力を求めることも考えられる。また、障害のある子供と地域の人々とが共に活動する場を設けていくことも有意義である。これらの取組を進めるに当たっては、高齢者の豊富な知識・技術や経験を積極的に生かしていくことも求められる。

○ このような様々な教育活動を地域全体で支援していくため、市町村教育委員会が核となり、スポーツ団体、自治会、地元企業など地域の様々な団体・機関と学校からなる教育支援ネットワークを組織化していくことが必要である。

(学習成果を生かす場の提供についての啓発活動)

○ 学習成果を生かす魅力的な場を開発するためには、受け入れ側である行政施設や学校、グループ・サークルなどが、広く住民の協力を得て活発な活動を行っていくことの意義や重要性について、十分な認識を持つようにすることが何より大切である。また、人材受け入れに当たっての役割分担・責任体制の明確化を図ることにより、学習成果を生かす側、それを受け入れる側の双方が安心して協力できるようにしていくことも重要である。このような観点から、各地方公共団体においては、施設等の職員に対する意識啓発を積極的に行うとともに、施設、学校、グループ・サークル等に対する助言や援助を充実していくことが必要である。
 また、国においても、外部人材活用の際の責任体制・役割分担の在り方、知識・技術習得に必要な研修の在り方や、協力を得る人々に求められる条件及びその待遇など様々な課題について実践的研究を実施し、その成果を広く関係者に提供していくことが必要である。

(2)学習成果を生かす場と人についての情報の提供

<問題点>

○ 住民が学習成果を生かすのに必要な情報(例えば、どの施設やグループで、どのような知識・技術を有した人をどのような条件で求めているかなど)を適時的確に提供する体制が不十分である。

○ 施設、グループ等が地域の人材を受け入れるために必要な情報(例えば、どのような知識・技術や経験を有した人が、どのような条件でどのような活動を求めているのかなど)を適時的確に提供する体制が不十分である。

<方策>
(地域活動の場についての情報提供)

○ 学習成果を地域活動に生かすことを促進するためには、人材の受け入れ側にとって必要な情報提供(人材登録データベース)だけでなく、地域活動の場に関するきめ細かな情報も住民に積極的に提供していくことが必要である。この場合、学習成果を生かしたいと考えている住民に対し、学習関連の行政施設のみならず、民間グループ等の活動も含めた地域での様々な活動の場の内容、例えば、施設の種別、そこでの役割、活動の時間帯や求められる知識・技術等の応募要件などについて、具体的な情報をできるだけ利用しやすい形で提供していくことが必要である。

(人材登録データベースの整備)

○ 地方公共団体等で整備されつつある人材登録データベースを有効に機能させるためには、人材の受け入れ側が求める情報をできるだけきめ細かに提供することが必要である。例えば、受け入れ側が判断しやすいよう、個人の登録データについて、学習歴、取得資格、さらには、学習成果を生かした活動の実績やその人が展開できる学習プログラムなどに関するデータを含めることが有効であろう。

○ 人材登録データベースの整備に当たっては、個人情報保護の観点から、情報の収集、管理、利用、提供について、十分な配慮が必要である。具体的には、収集する情報の内容及び利用・提供の範囲については、登録者本人の同意を得ることが必要である。なお、個人情報保護に関する条例を制定している地方公共団体においては、それに沿った対応をすべきことは当然である。

(地域の有資格者等の活用支援)

○ 教員や保母・保父の資格、社会教育主事、司書、学芸員など社会教育関係の資格、あるいは薬剤師、看護婦(士)、介護福祉士等医療・福祉関係の資格などの様々な職業資格について、資格を有していながら実際の業務に就いていない地域人材について、それらの専門的知識や経験を地域での活動に有効に生かしていくことも重要である。
 また、資格を有していなくても、ホームヘルパーや体育大学の卒業者など体系的で特別な技能を身に付けた人材の活用を図ることも望まれる。これらを促進するため、情報提供や人材登録、研修体制の整備などを進めていくことが必要である。

(3)地域社会での活動と評価

<問題点>

○ 地域での様々な活動の場を充実するには、これらの活動に対する社会の理解と評価が必要であるが、企業や学校等においては、これらの活動経験やその成果についての積極的な評価が十分になされているとは言い難い。

○ 一方、学習成果を地域での様々な活動に生かそうとするときに、その知識・技術についての客観的評価や証明が求められることがあり、このことが学習成果を生かすことの隘路となる場合がある。

<方策>
(地域活動に対する企業等の評価)

○ 企業、官公庁の採用等において、近年、学歴だけでなく多様な活動経験とその成果を積極的に評価しようとする動きがみられるが、このような評価の方向が社会において一層促進されることが望まれる。また、企業や官公庁においては、勤労者が地域社  会の構成員として、地域の活動に積極的に参加できるよう、残業の軽減や年次有給休暇の計画的な取得促進などの配慮が求められる。このような観点から、文部省をはじめ関係行政機関は、企業等に対して、地域での活動に対する評価や参加促進のための配慮について積極的な要請を行っていくことが必要である。

(青少年の地域活動に対する評価)

○ 青少年の地域社会での様々な社会体験、自然体験やその成果を学校、社会が積極的に賞賛・評価することは活動の励みとなり、その活動を促進する上で重要である。このため、文化・スポーツ活動はもとより、環境保全活動等身近な実践を通しての地域社会の貢献など青少年の学校外における様々な活動経験やその成果を行政機関や地域の団体等が顕彰したり、活動の多様性を踏まえ青少年の自発性を損なわないように配慮しつつ、入学試験や単位認定等学校において評価していくなどの取組を行っていくことが必要である。この関連で、青少年がいつ、どこで、どのような学校外活動に参加したかということについての記録を、青少年自身の求めに応じて、青少年団体や青少年教育施設等が証明するような取組も望まれる。

(学習成果を地域活動に生かすことと学習成果の客観的な評価との関係)

○ 学習成果を地域での様々な活動に生かそうとする場合に、知識・技術についての客観的評価や証明があることは、地方公共団体等が人材を登用する際の手懸かりになるのは確かである。しかし、このことは、生かそうとする学習の分野によって大きく異なるものである。学校教育・社会教育や社会福祉、保健・衛生等社会的に一定の知識・技術が求められる分野で学習成果を生かす場合には、何らかの客観的な証明が要請されるが、一方、学習成果発表の場としてのイベントやグループ・サークル活動等において、趣味、日常生活等に関する学習の成果を生かす場合には、必ずしもそれが求められるわけではない。

○ 前者の場合には、各種資格等に関し、どのような資格等が地域の活動のどのような分野で活用できるかについての実態把握や情報提供、また、活動に一定の知識・技術を要する場合の研修の充実などの方策が求められる。後者の場合には、学習成果の発表の場の充実、グループ・サークル活動に対する支援などの方策を通じて、むしろ自らの学習の成果をもって、それを積極的に生かすことを奨励すべきである。

4.生涯学習の成果を「ボランティア活動」に生かす

1 基本的考え方

○ 平成4年7月の本審議会答申も述べるように、ボランティア活動は個人の自由意思に基づき、その知識や技術、時間を進んで提供し、社会に貢献することである。その基本理念は、自発性、無償性、公共性、先駆性にあるという考え方が一般的である。また、ボランティア活動を行うために必要な知識・技術を学んだり、学習した成果を生かし、深める実践としてボランティア活動があるなど、ボランティア活動は生涯学習と密接な関連を有する。したがって、あらゆる年齢層の人々が学習成果をボランティア活動の中で生かせるよう環境整備を図ることは、生涯学習社会の形成を進める上で重要な役割を持つ。

○ ボランティア活動は、個人の自由意思に基づき行うことが基本であるが、行政は、人々のボランティア活動を支援し、奨励する取組を今後一層推進すべきである。すなわち、人々がボランティア活動に参加しやすい社会環境を整備していくとともに、ボランティア活動の意義やその社会的評価について広く普及・啓発を行うことが求められる。また、ボランティア関係団体との連携を深め、団体等の自主性を尊重しつつ、ボランティア活動の場の開発を支援するとともに、ボランティアの意欲を持つ側と受ける側のニーズを結びつけ、互いに連携させることが重要である。

○ 特に、人々がボランティア活動を身近に感じ、気軽に参加するようになるためには、青少年をはじめあらゆる年齢層を対象に、将来ボランティア活動に積極的に関わっていけるようボランティア活動の意義を理解し、ボランティア活動に必要な知識・技術を身に付けるための学習機会を充実する必要がある。

○ 生涯学習の成果をボランティア活動に生かすための支援方策を講じるに当たっては、概ね3.で述べた考え方、視点が当てはまると考えられるが、ボランティア活動については、自発性・無償性等の基本的理念が尊重される必要があることに着目した施策の展開が必要である。

2 問題点と方策

(1)ボランティア活動の場の開発

<問題点>

○ ボランティア活動の場は、従来の福祉、環境保全、国際協力、国際交流、青少年の健全育成といった分野から、近年、防災・災害援助、文化・スポーツ活動、学校教育・社会教育活動の支援など広範囲に拡大しつつある。他方、ボランティアの受け入れが期待されながら、十分にその門戸が開かれていない分野も少なくない。今後、生活や社会のあらゆる場面で、新たな活動の場を開発し、取り組むことが求められる。

○ 学校は、ややもすれば閉鎖的になりがちであるが、その教育目標を実現する観点から、地域の様々な人材による、様々な形態のボランティアの受け入れを考慮することが求められる。

○ また、社会教育・文化・スポーツ施設や福祉施設、あるいは様々な民間団体などの中には、ボランティアを受け入れることについて、面倒であるとかわずらわしいと考え、敬遠する傾向がないとも言えない。また、ボランティアコーディネイターの配置など受け入れ窓口の整備が遅れている。

<方策>
(新たな活動の場の開発)

○ 地方公共団体、各種施設、ボランティア関係団体が、相互の連携・協力を深めながら、それぞれの地域のニーズに即したボランティア活動の新たな場を開発することが求められる。例えば、新たな活動の場として、市町村庁舎、郵便局、病院、駅など、これまで必ずしも活発ではなかったところで、幅広いボランティア活動の場を開発していくための取組が必要である。また、近年、スポーツ競技大会等公的イベントなどにおいて、組織運営など幅広いボランティア活動を行う新たな取組が注目されており、このような活動もボランティア活動の重要な場として開発していくことが望まれる。
 なお、地域の環境保全のためのボランティア活動など、一人一人が身近に実践できるよう活動の場を充実させることも重要である。

○ 子育て支援、いじめ・登校拒否など、子供をめぐる課題に対処するため、子供や親の相談にあたるボランティアも、新たなボランティア活動の場の一つと考えられる。その際、これらボランティアが担う役割の重要性に鑑み、教育委員会や教育センター、適応指導教室、警察、児童相談所、臨床心理士会など専門機関との連携を図ることが必要不可欠である。また、このようなボランティア活動は、専門的知識・経験を必要とするため、十分な期間で専門的な内容の研修を経ることが要求される。

(学校支援ボランティア活動の推進)

○ 学習活動で得た知識や技術を地域の子供たちの健やかな成長のために役立てたいと考えている保護者、地域人材や団体、企業等をボランティアとして、学校をサポートする活動(学校支援ボランティア活動)に受け入れることもボランティア活動の有効な場と考える。これは、学校・家庭・地域社会が連携して子供たちのために取り組んでいくという要請にも応えるものである。このようなボランティア活動は、これまでもクラブ活動や部活動の指導補助や学習環境の整備など、個々の学校によって、地域の協力を得て行われてきた。今後は、教育委員会が地域の様々な団体・機関と連携した事業を展開するなどにより、このような活動を一層促進し、課外活動はもとより教科学習や特別活動の指導等への協力も含め、学校教育の様々な活動に取り入れていくようにすることが必要である。国においても、学校支援ボランティア活動についての各地の事例収集に努め、ボランティアの協力を得ることができる活動領域、そのための研修や人材登録の在り方などボランティア受け入れに関する条件・課題等について研究し、その成果を広く関係者に提供していくことが必要である。

(受け入れ側の意識改革と体制の整備)

○ 社会教育・スポーツ・文化施設や社会福祉施設、あるいは様々な民間団体などボランティアの受け入れ側としても、ボランティアを受け入れる際の基本的考え方やボランティアに接する態度等に関する職員研修を充実する必要がある。また、新たな活動の場を提供するという観点から、その組織、運営の見直しを行い、ボランティア活動の場を積極的に開発していくことが必要である。

○ また、ボランティアコーディネイターの配置など、ボランティア受け入れに関する窓口を設け、ボランティア一人一人が、その能力、経験、希望にふさわしい場で活動できるよう調整する必要がある。また、活動歴や活動内容などに応じたボランティアの研修機会を充実することも重要である。

(2)ボランティア活動の奨励・支援

<問題点>

○ ボランティア活動についての人々の関心、意欲は、近年、高まりつつあるものの、現状では実際の活動には必ずしも十分に結びついていない。これは学習成果をボランティア活動に生かしたいと考える人が、実際の活動の場あるいは条件について知らなかったり、あるいは、ボランティア活動を希望する人が必ずしもそれぞれの能力、経験、希望にふさわしい場面で活動できないことなど、ボランティア活動をしたいとする意欲と、それを受け入れようとする側の要請をうまくつなげるコーディネイトシステムの整備が遅れていることが大きな原因となっている。

○ ボランティア活動の意義や役割が社会的に広く認識されるようになり、企業や官公庁のボランティア休暇制度の導入など、ボランティア活動への参加を支援する動きが学校、職場、家庭で高まりつつあるが、全体としては、人々のボランティア活動を奨励・支援する社会的環境は未成熟である。

<方策>
(コーディネイトシステムの整備)

○ 人々のボランティア活動を推進するため、都道府県レベルの生涯学習ボランティアセンターの整備を進めるとともに、公民館等の住民に身近な施設においてボランティア活動に関する情報の収集・提供や相談等を行う窓口を設ける必要がある。そこでは、ボランティア希望者の多様な要求に応えられるよう、ボランティア関係団体との連携を深め、幅広い分野の様々な活動の場・機会・条件に関する情報を収集・提供していくことが必要である。
 また、ボランティア活動に関するコーディネイトシステムの整備を図ることが重要である。具体的には、ボランティアとして役立ちたいという人々の意欲と、それを受け入れようとする側の要請を、活動分野、形態、場所、内容、対象、期間などに応じてきめ細かく調整したり、ボランティアやボランティア希望者に対して、よりよく活動するための相談、助言を行ったり、受け入れ側による新たな活動プログラムの開発・普及の支援やボランティアグループの組織化を推進することが求められる。

(ボランティア活動についての学習機会の充実)

○ 人々のボランティア活動への参加を促進していくためには、学校教育、社会教育の場において、ボランティア活動の基本的考え方を理解し、活動に必要な知識・技能を身に付ける学習機会を確保していくことが求められる。

○ 初等中等教育段階の青少年に対しては、学校の教育活動としてボランティア活動に関する学習を推進することが重要であり、ボランティア活動の基本理念、活動する場合の心構えなどの基礎的・導入的なことを理解させるとともに、環境保全活動や社会福祉活動等のボランティアに関する地域の機関や団体の協力も得ながら体験学習を行う機会を充実する必要がある。このような学校におけるボランティア教育を推進するためには、教員にもボランティア活動に関する正しい認識が求められることから、教員の養成・研修カリキュラムにボランティア活動の体験を導入することが望まれる。

○ 高等教育段階では、例えば、これからの高齢社会を社会全体で支えていくという意識の養成のために、学生が何らかの高齢者介護の体験を積むようにすることなどの教育内容の工夫も望まれる。また、地域の実情に即して高齢者介護に係る人材を育成するため、大学、行政、民間関係者等による協議の場を設け、福祉、医療、保健関係学部・学科等の学生・生徒が積極的にボランティア活動を行う仕組みづくりなどを進めることが望ましい。

○ また、社会教育においても、あらゆる年齢層の人々を対象に、公民館等社会教育施設でのボランティア養成講座の実施など、ボランティア活動を行うための準備学習の機会を充実する必要がある。このため、社会教育事業の企画・立案・実施にあたる社会教育主事等社会教育の専門的職員の研修において、ボランティアに関する内容を充実する必要がある。

(ボランティア活動についての休暇面での配慮等)

○ 国家公務員については、平成9年1月から、被災地において行う被災者を支援する活動や障害者、高齢者等の施設において行う活動など一定のボランティア活動に従事した場合、年間5日以内のボランティア休暇制度が導入され、地方公共団体においても国に準じた制度による導入が進められている。企業においても、勤労者のボランティア活動への参加を一層促進するため、休暇制度等支援方策の充実が求められる。また、ボランティア活動中の事故等を懸念して、ボランティア活動への参加意欲を失うことのないよう、ボランティア活動に関する保険制度の周知普及を図るとともに、ボランティアが事故等の防止策や事故が起こった場合の対応などを事前に十分に認識できるようオリエンテーションの機会を設け、ボランティア自らの責任を明確にした上で活動が行われるような配慮も必要である。

(ボランティア活動と評価)

○ ボランティア活動の経験やその成果を賞賛したり社会において正当に評価することは、ボランティアの励みとなるものであり、活動を促進する上で重要である。

○ ボランティア活動に対する評価については、多様な考え方がある。ボランティア活動を一層促進し、発展させるという観点から、自発性、無償性、公共性等のボランティア活動の基本的理念を尊重しつつ、ボランティア活動の多様性を踏まえた上で、様々な機関・団体等において、それぞれが活動の評価の在り方を検討していくことが必要である。

○ 例えば、次のような取組を進めることが望まれる。

1)高等学校においては、現在も、入学試験においてボランティア活動やその成果を評価項目の一つとして取り入れている。今後は、さらに、企業実習や大学における単位取得などの様々な学校外活動の成果を高等学校の単位認定の対象としていくことの一環として、ボランティア活動について、各学校の教育目標・理念に応じ、各学校の措置により、単位認定することを検討する。
2)中学校・高等学校の進路指導の中で、ボランティア活動の経験を多様な能力・適性の一つとして捉えた指導を行う。
3)大学においては、ボランティア活動を入学試験の多様な評価項目の一つとすることを進めるとともに、その教育内容に取り入れる。
4)企業や官公庁においては、採用の際にボランティア経験の有無を多様な評価項目の一つとして取り入れる。
5)ボランティアの希望に応じ、ボランティアの受け入れ側が、いつ、どこで、どのような活動に参加したかについての記録証明を交付する。

○ なお、ボランティア活動の評価に当たっては、ボランティア活動への参加が、入学試験や採用試験での評価のみを目的とすることにならないよう、十分配慮する必要があることは当然である。

5.生涯学習の成果を「個人のキャリア開発」に生かす

1 基本的考え方

○ いわゆる「キャリア開発」の概念は、時代とともに変化してきている。従来は企業・雇用者主導のキャリア開発プログラムに沿って、被雇用者が業務遂行に必要な教育訓練を受けるという形をとってきた。しかし、最近は、個人が自らの生涯にわたるキャリアを設計し、それに沿って個人のイニシアチブで学習活動を続けるという形が重視されるようになっている。また、「キャリア」の概念についても、最近はそれを職歴面に限定せず、地域や社会での様々な活動歴など社会生活上の諸側面も含めるようになってきている。本審議の概要では、これらを踏まえ、「キャリア」を「生涯にわたる個人の社会生活・職業生活に関する経歴」と捉え、個人主導のキャリア開発を支援する観点から、1)青少年、2)勤労者、3)高齢者、iv)女性、に分けて支援方策を検討するとともに、学習者のキャリア開発にとって重要な公的職業資格や技能審査等の活用方策について整理した。

(青少年-キャリア開発の基礎となる職業観の涵養-)

○ 青少年が自己の将来に対する目的意識を持ち、キャリアを主体的に開発していくようにするためには、働くことの喜び、楽しさ、苦しさやその意義を学習し、将来、社会の一員として勤労を担っていくにふさわしい職業観を涵養することが必要である。

(勤労者-個人主導のキャリア開発の推進-)

○ 近年における技術革新の進展、産業構造の変化、産業活動の情報化、グローバル化、雇用環境の変化等に伴い、勤労者に職業人としての絶えざる資質能力の向上が求められる中で勤労者の職業に関する学習需要が高まっている。
 個々の企業にとっても、雇用する勤労者が職務に関連する知識や技術を修得することは、技術水準の向上や新規事業の展開を図る上で有益である。また、産業界全体にとっても、産業構造の転換を進める上でプラスとなろう。
 こうした状況の中、職業に関する学習機会の場を充実するとともに、個々の勤労者によって主体的に行われる自己啓発に対する支援をより一層重視することが必要である。

(高齢者-新たな活動への参加の促進-)

○ 高齢社会が到来しつつある中、高齢者が、長年培ってきた経験や知識を生かし、社会の重要な一員として様々な活動に参加、貢献できるようにすることは極めて重要な課題である。このため、高齢者に対し、地域社会やボランティア活動に生かすことを前提とした知識・技術の習得や、さらなる職業能力の向上を図る学習機会の充実が必要である。

(女性-エンパワメントの支援-)

○ 近年、女性がその能力をあらゆる分野で発揮することを可能にするような条件づくり(いわゆる女性のエンパワメント)が社会的に強く要請されていることから、特に女性を対象とした施策を推進することが必要である。女性が学習成果を生かして社会、経済など様々な分野で活躍することを促進するため、地域社会への貢献やボランティア活動に関する学習機会に加えて、女性の(再)就業・起業を支援していく学習機会の充実が必要である。

(公的職業資格や技能審査等の活用促進)

○ 各種の公的職業資格や技能審査等は、生涯学習の成果を社会的に活用するための評価システムとして重要である。しかし、これらの資格等の内容・水準は多種多様であり、また、類似の資格等の間における連携も十分ではなく、学習者や資格等を生かす場である企業等の側にとって分かりにくいものもある。今後、学習成果の多元的な評価を進める上で、これら資格等について、その活用を円滑にするための方策を講じていくことが必要である。

2 問題点と方策

(1)青少年を対象とした方策

<問題点>

○ 近年、職業の多様性に関する認識や自己の将来の進路に関して、明確な希望や目標を持っていない青少年が少なくない。青少年が幅広い視野をもって自らの社会生活・職業生活についてのビジョンを形成していくための進路指導、就職指導をより一層充実していくことが求められている。

<方策>
(職業意識を高める学習機会の充実)

○ 一人一人の職業意識を高め、その能力、適性、希望に応じた適切な職業選択、キャリア開発を支援するには、学校と企業、職能団体等が連携し、青少年が職業や勤労の意義を理解する機会を設けていくことが必要である。
 具体的には、中学生の段階から、様々な職業の現場を見学・体験させたり、社会の各分野で活躍する人々を学校へ招く機会を設けること、また、高校生についても、働くことやそれによって得られる達成感を体得させる勤労体験学習や職場実習の機会を一層充実することが必要である。さらに大学生等の職業意識を高めるため、学生が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行うインターンシップの導入の在り方について検討を進めることが求められる。
 また、青少年が実際の活動を通じて実社会の在り様に直接触れることができるよう、地域社会の中でも様々な生活体験、社会体験に触れる機会を充実していくことが重要である。

(2)勤労者を対象とした方策

<問題点>

○ キャリア開発のための自己啓発を行う方法としては、民間の講座や通信教育などと比べると大学や専門学校を利用する割合は、現状では必ずしも大きくない。しかし、そのニーズは高いと考えられることから、今後、勤労者が学習するための一層の条件整備が求められている。

○ 勤労者が高等教育機関で学んでも、その学習の成果が企業等における採用や人事配置等に必ずしも十分に生かされていない場合が多い。

<方策>
(個人主導のキャリア開発についての学習機会の充実と学習活動に対する支援)

○ 個人主導のキャリア開発を促進するためには、高等教育機関の社会人の受け入れ体制の一層の整備・充実が不可欠である。具体的には、社会人入学に関する情報提供の拡充、社会人特別選抜の導入や3年次編入学定員の拡大、社会人の学習ニーズ、問題意識に応じた教育内容の多様化、多様なメディアの活用、履修形態の弾力化や夜間大学院の拡充などについての一層積極的な取組が求められる。

○ 他方、学習者が所属する企業や公的な職業能力開発制度による支援も重要である。企業が行う支援として、学習と職務との関連性や必要性に応じ、学費の支弁・貸与、奨励金の支給、フレックスタイムの実施、超過勤務の軽減や勤務時間の割り振りの配慮、有給教育訓練休暇の実施や学習活動のための職務の免除などの取組を様々に組み合わせて行うことが期待される。

○ また、公的な職業能力開発支援方策として、休暇制度の面では、有給教育訓練休暇制度の普及、高度で専門的な教育訓練等のための長期休暇制度の導入の促進等、また費用面の援助としては、広く労働者個人へ直接支援する方策等の取組が進められており、これらの取組の一層の促進が期待される。

(多様なメディアを活用した学習機会の充実)

○ 意欲がありながら、時間的・地理的制約のために学習を断念、先延ばしにしている勤労者は多いと考えられる。この点で、放送大学は、広く国民に対し、テレビ・ラジオ等放送により高等教育の機会を提供するものであり、その役割は極めて重要である。現在関東地区に限られている放送区域を全国に広げるための準備を今後とも着実に推進し、単位互換・放送教材の提供など、大学等との適切な連携を図っていくことが必要である。

○ また、衛星通信やインターネットなど近年の情報通信技術の進展に伴い、これらの教育への利用の有効性が指摘されている。高等教育機関や社会教育施設においては、これら多様なメディアを活用して勤労者のキャリア開発についての学習機会を積極的に提供していく必要がある。

(社会人学生等の学習成果の評価)

○ 勤労者が高等教育機関等で学んだ学習成果を採用、人事配置等個人の職業生活において有効に生かしていくためには、企業等における適切な評価、活用を促進する方策を講じることが必要である。
 具体的には、1) 勤労者の自己啓発のためのリカレント教育や社会人学生の学習成果の活用促進について、大学等高等教育機関と企業側が定期的に協議する場の設定、2)採用に当たっての年齢制限の緩和・撤廃や社会人特別採用枠の設定、3)官公庁における社会人学生の積極的な採用、などの取組が求められる。

○ 従来、能力評価が困難とされたいわゆるホワイトカラーについても、労働省が平成5年度から職業能力習得制度(ビジネス・キャリア制度)を発足させ、教育訓練等により習得した能力の確認のため修了認定試験を実施しているが、この制度の活用促進などにより、ホワイトカラーの職業能力をできるだけ客観的に評価していくシステムを充実していくことが求められる。

(3)高齢者を対象とした方策

<問題点>

○ 現状では、公民館等社会教育施設や生涯学習センターにおける講座等の内容は、趣味・文化・教養などに関するものが多く、地域活動、ボランティア活動に生かすことを前提としたものや、職業に係る知識・技術を向上させるようなものが少ない。

<方策>
(新たな活動への参加についての学習機会の充実)

○ 高齢者については、地域活動やボランティア活動への参加を促進する学習機会を充実するとともに、職業生活の継続を希望する者にも対応した学習機会を提供していくことが求められる。とりわけ、高齢者がかつての職業経験やその専門分野を生かした地域社会への貢献や再就職、あるいは自ら起業していくことも支援していくことが重要である。

○ 公民館等社会教育施設においては、高齢者ができるだけ身近な施設でキャリア開発を図ることができるよう、地域の大学、専修学校、高等学校等の協力を得て、例えば、企業経営、情報処理や地域課題についての講座など、高齢者が新たな活動に参加することを促進させる学習機会を積極的に提供することが必要である。

(4)女性を対象とした方策

<問題点>

○ 現状では、公民館、女性センター等における女性向けの講座等の内容は、趣味、文化、教養や家庭生活に関するものが中心である。出産、子育て、介護といった理由で職業生活を中断している女性も対象に含めた、幅広い生涯にわたるキャリア開発に資するような講座等が少ない。

<方策>
(キャリア開発を支援する学習機会の充実)

○ 女性のキャリア開発を支援するには、大学、専修学校等における学習機会提供の充実とともに、公民館や女性センター等の婦人教育施設においても、女性を対象にした職業に関する学習機会を積極的に提供することが求められる。
 特に、女性センター等婦人教育施設においては、地域の高等教育機関や企業の協力を得て、女性のニーズに対応した専門的な学習機会の充実を図ることが重要である。

○ 職業生活を一旦中断し、再就職を希望する女性を対象に、女性の能力を活用し、経済的自立を促進する女性の職業に関する学習機会の充実を図ることが必要である。例えば、長らく中断していた仕事に就くために必要な職業能力の向上を図るリカレント教育講座や、以前の職業・職種とは異なる新たな職業分野の知識・技術を身に付けるための再就職準備セミナーのほか、リサイクルショップなど生活に根ざした分野における起業を支援する学習機会の提供が考えられる。

(5)公的職業資格や技能審査等の改善と活用の促進

<問題点>

○ 公的職業資格や各種技能審査等は多種多様であり、その受験要件、取得方法等が学習者にとって複雑である。また、重複する分野の資格等の相互乗り入れなど活用促進のための連携は必ずしも十分でない。

○ 公的職業資格の中には、その受験に当たって一定の学歴要件が課されているものや、一定の学歴により受験等に必要な試験科目等などに差があるものもある。このため、実際には、能力や熱意があるにもかかわらず、受験を断念するケースもあり、公的職業資格の要件見直しについての要請も強い。

○ 一定水準以上の学習成果に関する各種の技能審査等について、高等教育段階で単位として認定する方策がまだ十分でない。

○ 多種多様な資格等について、その内容や取得方法に関する情報を提供したり、相談援助する体制が整っていない。

<方策>
(公的職業資格の学歴要件等の見直し)

○ 公的職業資格を国民にさらに開かれたものとするためには、高度で専門的な知識・技術や経験を要し、特別の教育・訓練を必要とする資格を除き、一定の学歴がないことのみによって公的資格の取得の道を閉ざすことは妥当ではない。学習成果を適切に評価し、個人のキャリア開発に生かしていくという観点からは、できるだけ学歴要件を除去することが求められ、公的職業資格に関する受験要件等が合理的なものであって学歴偏重になっていないかどうかを見直していく必要がある。特に、専門士制度の創設等により、各種資格の受験要件に関し専門学校卒業者が短期大学卒業者に相当する取扱いを受ける例が増えているが、なお短期大学相当と評価されていない事例が見られるので、その改善を図っていくことが求められる。

○ また、一定水準以上の生涯学習の成果により、資格取得の要件としての学歴、実務経験や修得すべき科目等を代替できる途を開いていくことも望まれる。

(技能審査等の学習成果の学校での単位認定)

○ 青少年・成人が習得した知識・技能について、民間団体がその水準を審査・証明する事業のうち、教育上奨励すべきものを文部大臣が認定する制度として「文部省認定技能審査」がある。現在、実用英語技能検定、日本漢字能力検定など24種目の技能審査が認定されている。生涯学習の成果の評価に関する方策の一つとして、この文部省認定技能審査の合格に係る学修を大学、短期大学、高等専門学校、高等学校において単位認定することが制度化されている。このうち、高等学校においては、文部省認定技能審査の合格に係る学修だけでなく、各省庁、民間団体が行っている審査・認定制度(例えば、日本商工会議所簿記検定、情報処理技術者試験など)についても、単位認定できることとされている。
 今後、大学、短期大学、高等専門学校においても、その教育内容の充実と学習成果の多様な評価を進めるという点にも留意し、同様の途を開く必要性について検討していくことが求められる。

○ 専修学校については、文部省認定技能審査の合格に係る学修について科目の履修とみなすことが制度化されていないが、これについては早急に制度化する必要がある。あわせて、各省庁、民間団体が行っている審査・認定制度についても、専修学校の科目の履修とみなすことができるよう検討を進めることが求められる。

(文部省認定技能審査の改善)

○ 文部省認定技能審査は、学習成果の評価を通じ、学習活動に励みを与えるものとして重要な役割を果たしている。一方で、文部省の認定の在り方については、技能審査の対象となる知識及び技能の種目について、認定する団体を原則一団体とする運用がなされており、これが技能審査の実施団体に対し特別の地位を与えるのではないかという指摘もある。
 文部省認定技能審査がより一層適正に行われるようにするためには、審査基準の明確化や業務及び財務等に関する情報の自主的な公開の促進など、実施団体に対する指導監督を一層強化するとともに、文部省の認定の在り方の運用等について、見直しを行っていくことが必要である。

(分野に応じた資格等の活用のための標準的モデルの作成と情報提供体制の整備)

○ 公的職業資格の要件を一定の生涯学習の成果で代替することを進めていくためには、どの分野の資格にどのような学習成果を生かすことが可能なのか等について十分な実態把握が必要である。
 また、成人男性が地域の活動において資格等を生かそうとする場合や家庭の主婦が職業生活において資格等を生かそうとする場合など、具体的な活動の分野に即して、どのような資格等がどのような形で生かせるのか、十分な実態把握と情報提供が必要である。

○ このためには、都道府県や大学の生涯学習センター、民間の生涯学習関係団体などの協力を得て、育児・教育、健康・スポーツ、主婦や高齢者の就業・起業など活動の分野に応じ、資格等の実態把握と資格等の水準に照らした具体的な活用方法について調査を進めることが必要である。このような調査を進めながら、活動分野ごとに資格等の受験要件・取得方法、活用方法等について情報を収集、整理し、資格等の具体的活用に当たっての標準的なモデルを作成することが必要である。また、これらの資格等に関する情報を学習者に分かりやすく提供する体制を整備することも求められる。

(生涯学習歴等の履歴書への記載)

○ これまでの学習歴やその成果を生かした活動の実績を個人のキャリア開発に有効に生かしていくことを促進するため、例えば、履歴書に学歴と並んで各種の生涯学習歴、活動の実績の記載を奨励することも有効な方策と考えられる。

(学習成果の多元的評価のための研究開発)

○ 学歴だけでなく、生涯にわたる学習成果を有効に社会に生かしていくための多元的な評価システムを構築するという視点から、1)多種多様な資格、審査等に関する評価基準の体系化、重複する分野の相互の乗り入れ、活用領域の整理、2)学歴以外の様々な学習成果を公的に認定し、累積する仕組みなどについて、条件、留意事項等を研究し、具体的な方途を開発することが求められる。

○ また、既に一部の企業ではインターネットを用いた求職活動が行われているが、生涯学習の成果を生かす方策として、インターネットなどの情報通信網を用いて、生涯学習歴、職業歴、能力を個人が自己申告し、それを活用する機関、団体等が個別に審査・評価するような方法についても、その有効性、留意事項等を実践的に研究していくことが求められる。

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生涯学習局生涯学習振興課

-- 登録:平成21年以前 --