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「地域における生涯学習機会の充実方策について」(生涯学習審議会(答申))

平成8年4月24日
生涯学習審議会

 生涯学習審議会(会長 伊藤正己 前日本育英会会長)は、平成7年5月以来、文部大臣からの審議要請を受け、地域における諸施設の生涯学習機能の充実方策について審議を行ってきたが、このたび審議の結果がまとまり、「地域における生涯学習機会の充実方策について」答申として文部大臣に提出することとなった(平成8年4月24日)。

生涯学習審議会答申「地域における生涯学習機会の充実方策について」(本文)

はじめに

1.社会に開かれた高等教育機関

1 社会人の受入れの促進
 (1)教育内容の多様化と履修形態の弾力化
 (2)公開講座の拡充
 (3)学内の組織体制の整備
 (4)社会人学生への支援の充実

2 地域社会への貢献
 (1)施設開放の促進
 (2)社会からの支援

2.地域社会に根ざした小・中・高等学校

1 地域社会の教育力の活用
 (1)地域社会の人材等を活用した教育活動
 (2)学校に対する地域社会の支援

2 地域社会への貢献
 (1)地域住民への学習機会の提供
 (2)施設開放の促進

3.地域住民のニーズにこたえる社会教育・文化・スポーツ施設

1 多様化・高度化する学習ニーズへの対応
 (1)多様で総合的な学習機会の提供
 (2)施設間の広域的な連携の促進
 (3)情報化・マルチメディア化への対応
 (4)学校教育との連携・協力

2 組織運営の活性化
 (1)人的体制の整備
 (2)利用者の立場に立った施設の運営
 (3)新しい学習課題に対する運営の改善
 (4)財政面での充実

4.生涯学習に貢献する研究・研修施設

1 多様な学習機会の提供
 (1)施設の開放や学習関連事業の実施

2 地域社会との連携
 (1)地域の生涯学習ネットワークへの参加
 (2)学校教育や社会教育への協力

おわりに

はじめに

 本審議会は、平成7年5月15日、文部大臣から「地域における諸施設の生涯学習機能の充実方策について」及び「学習成果の活用方策について」審議要請を受け、その後、前者のテーマについてワーキング・グループを編成し、論点を整理しつつ、総会において審議してきた。このたび、その結果を、「地域における生涯学習機会の充実方策について」答申として取りまとめた。

 生涯学習の振興については、本審議会は平成4年7月に「今後の社会の動向に対応した生涯学習の振興方策について」答申を行った。この答申では、生涯学習社会を「人々が生涯のいつでも、自由に学習の機会を選択して学ぶことができ、その成果が適切に評価される」ような社会と定義している。そして、当面重点を置いて取り組むべき課題として、1)社会人を対象としたリカレント教育の推進、2)ボランティア活動の支援・推進、3)青少年の学校外活動の充実、4)現代的課題に対する学習機会の充実、の四つを挙げるとともに、学習者の立場に立って、生涯学習全般にわたる振興方策を提言している。

 これまで、この答申を踏まえ、国・地方を通じて生涯学習振興のための関連施策が積極的に展開され、かなりの進展を見るに至った。しかし生涯学習社会の実現という大きな目標に照らしてみるとき、なお、改善すべき点が多く残されている。どこに問題があり、今後何をなすべきか。現状を見ると、既に生涯学習の意義については多くの人々の理解が得られつつある。学習意欲も高まってきている。当面の課題は、このように高まりつつある学習意欲にこたえる学習機会をいかに拡充するかということであろう。多くの人が所得水準の向上、自由時間の増大、高齢化の進行などの社会の成熟化に伴って、学習に生きがいや楽しみを見いだしたいと願っている。また、科学技術の高度化、情報化・国際化の著しい進展、産業構造や雇用形態の変化などに伴い、新たな知識・技術を習得したいと考える人も増えている。こうした学習者に対して、適切な学習機会を提供する必要がある。学習活動の機会を提供する側の工夫改善の努力が望まれている。

 したがって、本答申では、地域社会の中で様々な学習機会を提供している機関や施設の生涯学習機能の充実という視点から検討を加え、提言を取りまとめることにした。取りまとめに当たっては、機関や施設を四つの類型に分け、それぞれがどのような課題を抱えているか、現状を改善するためにとるべき方策は何かということを検討し、具体的な施策を提言した。四つの類型とそれぞれの審議の観点は以下のとおりである。

 第一は、大学をはじめとする高等教育機関である。高等教育機関は高度で体系的かつ継続的な学習機会の提供者として、生涯学習社会の中で重要な役割を果たすことが期待されている。高等教育機関においては、既に生涯学習機能を十分に発揮しているところや、様々な改革努力を行ってきているところも見られるが、生涯学習の推進という観点から社会の期待に十分にこたえるには、更に全体として広く社会に開かれなければならない。年齢に関係なく人生のいつでも必要な時に必要な学習ができる場として高等教育機関が自ら変わっていかなければ、真の生涯学習社会は実現しないと言っていい。また、社会人学生を受け入れることに加えて、施設の開放などによる地域社会への貢献も一層期待される。したがって、ここでは「社会に開かれた高等教育機関」という観点から課題を整理し、「社会人の受入れの促進」及び「地域社会への貢献」を進めるため必要な施策を提言した。

 第二は、小・中・高等学校など初等中等教育の諸学校である。これらの学校は、人間形成の基礎を培う場であるとともに、生涯学習の基礎を身に付ける場でもある。すなわち、自分で考え、判断し、行動する力を養い、生涯にわたって学習を続けるための意欲と能力を培う場である。また、子どもは地域社会の中で様々な教育的な影響を受けて育っており、学校がその機能を十分に発揮するためには、地域社会と良好な連携・協力関係を維持し、地域社会とともに発展するように努める必要がある。特に、学校週五日制が導入され、またいじめ問題への対応が課題となっている今日、学校と家庭や地域社会との連携の必要性はますます大きくなっている。さらに、学校の施設は地域住民の学習活動の場として活用され、それを通じて地域社会づくりや人々の連帯感をはぐくむことにも役立つものであり、地域社会への一層の開放が求められる。したがって、ここでは「地域社会に根ざした小・中・高等学校」という観点から課題を整理し、「地域社会の教育力の活用」、「地域社会への貢献」を進めるため必要な施策を提言した。

 第三は、社会教育・文化・スポーツ施設である。これらの施設においては、既に地域の人々の活発な学習活動が展開されている。これらの施設は本来、地域住民の多様な学習ニーズにこたえるために整備されたものであり、生涯学習機会を提供する場として最も基本的な役割を担っている。地域住民にとって、これらの施設は今後とも生活の質を高める上で欠かすことのできない存在である。さらに、学習を通じて人間関係を深め地域意識を涵養し、豊かな地域づくりを進めていく上でも一層重要なものとなっていくであろう。特に青少年の学校外活動をより豊かで充実したものにするために、これらの施設の果たすべき役割は大きい。今後の課題は、ますます多様化し高度化する地域住民の学習ニーズにいかに柔軟、迅速、的確にこたえていくかということであろう。したがって、ここでは「地域住民のニーズにこたえる社会教育・文化・スポーツ施設」という観点から課題を整理し、「多様化・高度化する学習ニーズへの対応」、「組織運営の活性化」を進めるため必要な施策を提言した。

 第四は、各省庁や企業の研究・研修のための施設である。もとより、これらの施設は、それぞれの専門分野に関する研究・研修を目的に設置されているものであり、教育活動を本来の業務とするものではない。しかし、それらが有する専門的で高度な人的資源、施設設備、知識、情報、技術などは、生涯学習という観点から見て、貴重な学習機会を提供し得る可能性を持っている。これらの施設は様々な資源を活用して、人々の多様化し高度化する学習ニーズにこたえ、これからの生涯学習社会の中で重要な役割を果たすことが期待されている。したがって、ここでは「生涯学習に貢献する研究・研修施設」という観点から課題を整理し、「多様な学習機会の提供」、「地域社会との連携」を進めるため必要な施策を提言した。

 なお、これら四つの類型を超えて、横断的、総合的に取り組むべき課題については、「おわりに」で必要な施策を改めて提言した。

 関係する機関や施設においては、本答申に盛り込まれた提言に沿った取組を積極的に展開し、地域住民の期待にこたえる生涯学習機能を一層充実強化されるよう強く望みたい。また、行政あるいは企業などにおいてはこれらの提言に沿って適切な対応策を講じるよう要望する。

1.社会に開かれた高等教育機関

 大学、短期大学、高等専門学校及び専門学校からなる高等教育機関は、高度で体系的かつ継続的な学習の場として、生涯学習社会において重要な役割を果たすことが期待されている。これからは自分自身の生きがいのために教養を身に付けたり、職業生活に必要な新しい知識や技術を身に付けたりするために、いったん社会に出た後でもまた勉強し直したいと考える人が増えてくるからである。もし大学等の高等教育機関がこれらの新しい学習ニーズに適切にこたえられなければ、本当の意味での生涯学習社会は実現しないと言っていい。

 高等教育機関がこのような新しい学習ニーズにこたえて社会に開かれた存在に生まれ変わるためには、まず社会人の受入れを促進する必要がある。若い年齢層の学生だけでなく、広範な年齢層にまたがる社会人を積極的に学生として受け入れることである。意欲と能力さえあれば、だれでもいつでも容易に高等教育を受けられるようにする必要がある。近年は大学審議会の答申に基づいて高等教育の改革の中で、社会人の受入れに資する様々な改善策が講じられてきた。その結果、受入れの実績も上がってきている。しかし、社会人を受け入れることに積極的な大学等であっても、一部の関係者の努力にとどまり教職員全体の意識が変化しているとまでは言えないことが多い。社会人の受入れには、社会人の学習にふさわしい新たな教育課程の編成、履修形態の工夫を行わなければならないなど様々な困難も伴うが、各大学等はそれぞれの教育理念・目的に沿って、個性を発揮しながら、積極的に取り組むことが望まれる。

 社会人学生の受入れ以外の方法による地域社会への貢献も重要である。教育や研究を通じて行われる社会貢献とりわけ地域社会への貢献は高等教育機関に期待されている重要な役割である。次代を担う若者の教育や研究活動を通じて地域社会の発展に寄与することはもとよりであるが、今後は更に広く地域一般の住民に生涯学習の場を提供することを通じて、地域社会に貢献するという役割が期待される。

 したがって、社会に広く開かれた高等教育機関を実現するためには、「社会人の受入れの促進」と「地域社会への貢献」を当面の目標とし、その達成に向けて必要な方策を強力に推進する必要がある。以下にそのための具体の施策を提言する。

1 社会人の受入れの促進

(1)教育内容の多様化と履修形態の弾力化

 これまで大学等が受け入れてきた学生は、主として高等学校などを卒業して直ちに進学してくる者であった。これらの学生は同年齢層の比較的均等な学力を持つ若者である。一方、社会人は広範な年齢層にわたり、社会生活・職業生活の面でも全く異なる背景を持ち、学習に対する問題意識も極めて多様である。また、多くの場合、職業や社会生活と学業との両立も図らなければならない。大学等における社会人の円滑な受入れを促進していくためには、こうした特性を持つ社会人の学習ニーズに適切にこたえられるよう、教育内容、履修の方法について新たな改善策を検討することが望まれる。

○社会人特別選抜の推進
 社会人の入学に当たっては、小論文や面接などを中心にした社会人特別選抜が多くの大学・大学院で行われるようになっている。また、大学院によっては、小論文や面接などのほか研究計画の審査等によって選抜する例も見られる。さらに、初めから主として社会人を対象とした教育課程を組むところも出てきている。これらにより社会人の大学・大学院への入学が促進されてきている。社会人学生は、社会的な様々な経験を積んでおり、勉学への意欲も強いことなどから、一般の学生に好ましい影響を与え、大学・大学院の活性化にも資するものと期待される。今後とも、社会人特別選抜や社会人を主たる対象とする研究科や専攻、専修コースの設置などの一層の推進が望まれる。

○夜間大学院の拡充
 平成元年および5年の大学院設置基準の改正により、専ら夜間に教育を行う大学院修士課程、博士課程の設置が認められるようになった。高度な職業人養成についての社会的な要請が強いことから今後ますます夜間大学院の設置が進むものと思われる。既存の大学院にあっても、例えば、郊外に設置される大学院の場合、都市部にサテライト的な学習の場を設け、そこでカリキュラムの一部を履修する仕組みをとれば、社会人のリカレント教育を推進する上で有効な方策となると考えられる。また、昼間・夜間の両方にわたって授業を開設する昼夜開講制も普及してきている。さらに、標準修業年限を超えて在学できるコースを設けることができるようにすることについての検討も望まれる。

○科目等履修生制度の積極的な活用
 従来から正規の学生以外の者にも聴講生として一部授業の聴講は可能であったが、単位を取得することはできなかった。平成3年の大学設置基準等の改正により科目等履修生制度が創設され、パートタイムの学生にも大学等の正規の単位取得が可能になった。これを受け、各大学等では科目等履修生制度の導入が急速に進んでいる。今後とも、各大学等にはこの制度の実施を広く社会に知らせるなど、制度が一層活用されるように積極的に取り組むことが求められる。

○研究生の受入れ
 大学等では、企業から研究生や受託研究員の受入れを行っている。これらは研究上の受入れではあるが、実質的には企業の研究者等への高度な学習機会の提供に当たるものも少なくない。これまでも受入れが弾力的になされるように制度改善が行われてきているが、このような学習機会が多様に開かれるよう大学等の積極的な対応が望まれる。

○社会体験のための休学制度の活用
 学生の修業については、継続的・集中的に勉学を行うことが教育上適切であるとの考え方から、一定の修業年限が定められ、卒業するためには一定年限以上在学することが必要であるとされている。しかし、各大学等の教育理念・目的あるいは専攻分野によっては、学生が学業の途中に一定期間就業することやボランティアなどの社会活動に参加することは、教育上の効果を高め、また、本人の人間形成や人生設計にとっても有意義な場合もあり、勉学に対する新たな意欲を喚起する点でも評価できる場合がある。「寄り道」又は「道草を食うこと」の効用である。このため、各大学等において休学制度の積極的な活用が考えられてよい。この場合、企業等には、学生の就職の際にこうした社会体験も評価するように配慮を求めたい。

○通信教育の改善充実
 大学・短期大学の通信教育の在学者数は逐年増加を続け、現在では、約21万人に上っており、生涯学習に重要な機能を果たしている。しかし、課程の修了率は大学で毎年数%にとどまるなど、学習継続の困難性もうかがわれる。それぞれの大学・短期大学において、カリキュラムや教材の工夫などを通じて、学習意欲を継続・支援する方策が講じられることが望まれる。また、スクーリングについては、近年の情報通信技術の進展を踏まえ、各大学・短期大学において単位数の設定などを弾力的に行うことができるような方向で検討されることが望ましい。さらに、今後、通信制大学院も含め、通信衛星等の情報通信網を活用することによる新しい通信教育の在り方について検討することが望まれる。通信制を採用していない大学等にあっても、情報通信網を活用することにより、他の高等教育機関との連携による教育内容の多様化・高度化を図るとともに、教育委員会や社会教育施設等との連携による公開講座の実施など大学等の教育を地域社会に提供していくことも望まれる。なお、こうしたことの前提として情報通信網を早急に整備していくことが重要である。

○放送大学の全国化
 放送大学については、放送の視聴可能な地域を全国に拡大することが重要な課題である。このことにより、高等教育を受ける機会の飛躍的な拡大がもたらされるばかりでなく、単位互換・放送教材の提供など既存の大学等との適切な連携により、大学等の教育の改善に資するものと期待されている。国としては放送大学の全国化の早期実現に向けて、その準備に最大限の努力を払うことが必要である。これに伴って、学習センターの整備も進める必要がある。

○大学への編入学等
 平成3年の大学設置基準の改正により、編入学定員の設定が可能になり、短期高等教育機関卒業後も学習の継続の道が実質的に開かれるようになった。編入の実績も着実に増加している。今後の産業構造の変化や、社会生活に必要な知識・技術の高度化等に対応するためにも、多くの大学で編入学定員が一層積極的に設定されることが望まれる。また、専門学校から大学への編入学についても、そのために必要となる要件などを含めて制度的な検討を進める必要がある。
 専門高校から大学への進学については、これまでも、入学試験科目の設定や問題の作成に当たって専門高校の教育内容に即したものにするなどの配慮が行われてきているが、今後も、専門高校からの進学機会の拡充に向けて一層の工夫改善が求められる。なお、高等学校総合学科についても同様の配慮が求められる。
 大学間での単位互換制度について、現在、幾つかの地域では、大学・短期大学が地方公共団体と連携・協力の体制を組んで、組織的な単位互換や施設設備の共同利用が行われており、その一層の推進が期待される。
 大学以外の教育施設等の学習成果であっても、大学教育に相当する一定水準以上のものについては、各大学が教育上有益と判断した場合には、大学の単位として認定できるようになっている。認定の対象となり得るのは、一定要件を満たす専門学校における学習や文部大臣の認定を受けた技能審査の合格に係る学習などである。大学においては、この制度の積極的な活用により、学生の学習機会の多様化や学習内容の充実を図ることが期待される。また、認定の対象となる学習活動については、今後、大学の教育に対する社会の要請の変化やこの取組の進捗状況を踏まえて、大学の教育水準の維持等に留意しつつ、更に拡大していくことが望まれる。なお、大学以外の高等教育機関についても同様な制度化がなされており、その活用が望まれる。

(2)公開講座の拡充

 従来から、大学等では盛んに公開講座が行われてきている。現在、ほとんどの大学で実施され、年間の受講者数も大学と短期大学とを合わせて約77万人に及んでいる。地域住民の学習ニーズがますます高度化・専門化していることから、大学等には、一層、そこでなければ提供できない内容・水準の学習機会提供が強く求められる。ややもすると提供する学習内容が住民のニーズと遊離しがちとの声もあり、公開講座を内容面・運営面で見直し、充実していくことが必要になっている。また、成人向けのものばかりでなく、青少年に対して最新の研究成果などを分かりやすく学習できる講座を設けることも期待される。

○講座内容・方法の改善
 講座内容・方法の改善に当たって考慮すべき点としては、職業技術の習得などの新たなニーズに即応すること、より高度で専門的な内容を備えること、新しいメディア等の活用によって広域の受講を可能にすること、社会教育施設等での学習と連携・接続できるようにすることなどが挙げられる。また、聴講形式のものばかりでなく、演習・実験を取り入れた参加型のものをとの要望もある。こうした点に配慮しつつ公開講座を一層充実することが望まれる。
 なお、実施に当たっては、地方公共団体や民間団体等との連携・協力を推進し、地域社会のニーズに的確に即応するようにすることも大切である。また、地域の教育委員会や生涯学習センター、社会教育・文化・スポーツ施設を通じて積極的に広報し、地域住民が参加しやすくなるように努める必要がある。

○単位の認定
 大学の中には授業科目の一部を公開講座としても位置付け、正規の学生以外の受講者は科目等履修生として登録することにより、それらの者の単位取得を可能にしているところがある。こうした措置は、科目等履修生としての費用が必要になるものの、講座受講への意欲を高め、より多くの人々が高等教育に接する契機となるものであり、多くの大学での取組が期待される。

○短期集中プログラムの開設
 社会人の職業能力の充実・向上をねらいとする講座を実施する場合、それぞれの高等教育機関の専門性を生かした専門的で集中的なプログラムの開設が求められる。正規の課程では修学の要件を満たすことが難しいこともあり、また、一般的・入門的な内容の講座では学習ニーズに沿わないこともあることから、様々な期間と内容で行われるプログラムを設けることが期待される。受講希望者の意向に応じて、期間も数日や数週間などと比較的短期間に集中したもの、また分野についても、先端的なもの、学際的なものなど専門性の高いものが望まれる。このため、プログラムの企画の段階から、受講者や受講者の派遣企業などとあらかじめ協議をすることが大切である。

(3)学内の組織体制の整備

 大学等は、社会人学生の受入れに伴って、従来とは違った様々な措置を講ずる必要が出てくる。こうした措置を効果的、継続的に実施していくためには、教職員間で生涯学習の重要性についての共通理解を形成し、学内の生涯学習推進の組織体制を整備することが重要である。

○生涯学習のセンターの整備
 学内の組織体制を整備するに当たっては、実際に学生を受け入れる各部局の対応が必要になる。必要に応じて委員会を作ることなどが考えられるが、最近、一部の大学院においては、専ら社会人教育の充実を図るための講座を整備するなどの例も見られる。こうした措置は社会人の受入れの推進に大いに資するものと期待される。また、学内全体としても、生涯学習を総合的に推進する体制の整備が必要であり、現在、国公私立を問わず、幾つかの大学等において全学的な生涯学習推進のためのセンターの整備が進められつつある。生涯学習教育研究センターなどと称されるこれらの組織においては、生涯学習に関する調査研究、公開講座などの生涯学習事業の企画・運営、大学等における学習関連情報の収集・提供、他の関係機関との連携・調整など、大学等における生涯学習推進の中核として様々な事業が行われている。今後こうした体制整備が各地の大学等において進められていくことが望まれる。

○教員の業績評価の改善
 生涯学習の重要性についての教員の理解を深めるためには、教員個々の自覚に期待するだけでは十分ではない。現在、大学教員としての評価は研究業績が重視されがちであり、学生への教育、まして地域の人々への学習機会の提供に関する事業の実績が評価されることは少ない。大学内での教員の業績評価の在り方について、それぞれの大学において検討されることが望ましい。

(4)社会人学生への支援の充実

 大学等における社会人の受入れが円滑に進むためには、学生本人の十分な意欲や能力、及び大学等での必要な受入れ措置だけでは十分とは言えない。社会における特別な配慮や支援がどうしても必要である。職業を持つ社会人の場合、通学時間や学校外での学習時間の確保に困難な場合が多い。職場での理解を得ることも必要になる。経済的な負担も決して少なくない。こうしたことへの支援は、企業等にとっても従業員の職務能力の向上という点で有益であり、積極的に行われることが望まれる。

○学習成果の適正な評価
 大学等への社会人の入学が促進されるためには、学習の成果が、企業あるいは社会一般において適正に評価されるようになることが基本的に必要である。このことによって、社会人の学習意欲が一層高まり、学習の質や成果に対する期待も増大する。企業等においては、大学等での学習の成果が適切に評価されるように検討を行うことが望まれる。

○教育休暇・フレックスタイム制の導入
 企業においては、大学等での生涯学習を支援するため、有給教育訓練休暇の実施、フレックスタイム制といった弾力的な労働時間制度の実施、あるいは勤務時間の割り振りなどでの配慮、さらには受講料についての経済的な援助などの推進が求められる。

○奨学金制度の拡充
 国としても、大学等における社会人教育の意義について企業等に対して啓発を進めるとともに、社会人学生を含めて学生が安心して学業に専念できるよう奨学金を拡充することが必要である。また、勤労者が自己の職業能力の向上のために教育訓練機関において学習を行う場合、個人に対して行われる助成事業の拡充も望まれる。さらに、民間においても教育ローン制度の拡充について検討が望まれる。また、育英奨学財団等の民間の教育支援団体にあっても、社会人の教育に対する助成・支援の実施が期待される。

○社会人教育に関する情報提供の推進
 社会人の大学等への入学を促進するため、大学等における学習に関する情報を社会人や企業等に積極的に提供するとともに、意見交換の場の設定など、大学等と企業との連携を進めることが必要である。

2 地域社会への貢献

(1)施設開放の促進

 施設の開放については、これまでも多くの大学等で行われてきているが、地域住民の高度で専門的な学習に対するニーズの高まりにこたえて、今後より一層施設開放を進め、これらのニーズにこたえていくことが重要である。

○施設開放の拡充
 大学等の施設の開放は、図書館・博物館・資料館・体育館・グランドなどが主な対象となるが、実情に応じて、多様な施設の開放が可能な限り行われるよう工夫されるべきである。これらの施設を円滑に開放するためには、大学等が地域社会の一員として地域に積極的に貢献していくことが社会から強く期待されている、との共通認識を学内で確立することが必要である。その上で、施設開放に必要な手続きを簡素化し、それを地域の人々に広く知らせることが望まれる。この場合、様々な学習情報を統合的に扱う都道府県の生涯学習推進センターなどの活用が考えられる。

○大学博物館の整備
 大学は豊富な知的資産を有することから、学術審議会学術資料部会において、ユニバーシティ・ミュージアムを設置して学術標本の多面的活用を図ることが提言されている。これは、標本の収集・保存、画像情報の提供などにより大学の教育研究を支援することはもとより、展示や講演会等を通じ、人々の多様な学習ニーズにこたえるものである。今後、大学における知的情報発信拠点の一つとして、それぞれの大学の研究実績等に応じて設置されることが期待される。
 また、大学の博物館においては、その充実したスタッフや資源を生かして、一般の博物館の活動に対して支援・協力を行うことも求められる。学芸員の現職研修への協力や研究活動への援助などを通して、博物館全体の振興に大きな役割を果たすことが期待される。

(2)社会からの支援

 大学等は、教育研究を通じて地域社会をはじめとして広く社会に貢献していくことが強く期待されている。しかし、その役割を果たしていくためには、地域社会から様々な支援を受けなければならない。これまでも、大学等の教員資格の弾力化を図り、産業界など広く社会の各分野から優秀な研究者・技術者・実務家などを教員として受け入れてきた。また、寄附講座・寄附研究部門の設置、奨学寄附金の受入れなどの支援も受けてきた。今後も、これらの一層の拡充を図るなど、人的にも物的にも多様な支援を受け、地域社会との連携強化を図っていくことが必要である。

○ボランティアの受入れ
 大学等の図書館、資料館あるいは付属病院などにおいて、ボランティアの人々による施設運営への協力・支援が見られるようになっている。こうしたボランティアの活動は、大学等にとって、施設の機能の充実、組織の運営の向上のために極めて貴重である。また、地域の人々の学習成果や経験を生かす機会の確保、社会における有能な人材の公共の場での活用、大学等が地域社会に支えられているという好ましい雰囲気の醸成などの点においても有意義である。今後、充実したボランティア活動が多様な形態で進むよう、大学等においてボランティアの育成を図るとともに、受入れの仕組みを明確にし、広く社会に積極的な受入れの姿勢を示すことが大切である。その際、ボランティアを対象とする研修の充実も必要である。

2.地域社会に根ざした小・中・高等学校

 子供たちの生活は、学校ばかりでなく家庭や地域社会での生活すべてから成り立っている。子供たちはそれぞれの生活を通して学び、成長していく。豊かな人間として成長していくには、知・徳・体のバランスのとれた成長が必要であり、子供の生活全体を通して適切な教育が行われることが大切である。特に、今日、子供たちは社会的な価値観の大きな変化や、マスメディア等を通じてもたらされる様々な社会的風潮の影響を強く受けており、学校は社会から孤立して教育を進めることはできない。学校が適切に教育活動を展開するためには、家庭、地域社会との密接な連携が不可欠である。特に、学校週五日制の円滑な実施、いじめ問題への適切な対応を進めていくためには、学校・家庭・地域社会の三者の連携が一層必要とされている。この連携・協力のためには、学校を社会に積極的に開いて、学校が抱えている問題、置かれている状況などを地域社会の人々に理解してもらい、地域社会が持つ多様な教育力を生かすことが大切になる。同時に、学校は地域社会の一員として積極的に地域社会に貢献していくことも大切である。つまり、生涯学習時代の学校として期待される教育機能を十分に発揮し得るために、地域社会に根ざした学校として、地域社会に開かれ、地域社会とともに発展していく姿勢が求められる。

 学校教育ではただ単に知識を一方的に身に付けさせるのではなく、自ら学ぶ意欲や自分で考え、判断し、行動する力を高め豊かにすることが重要である。学校でこのような教育を推進することは、生涯を通じて学び続けようとする意欲と能力を培うことにつながる。そのためには、子供たちが様々な対象に進んでかかわり、自分の課題を見いだし、解決できるような教育活動を積極的に展開することが大切である。その際、学校内の教職員だけで取り組まなければならないと考える必要はない。地域社会から様々な支援を得ることによって、学校の教育機能をより一層効果的に発揮することができると考えられる。このような認識の下に、学校は、その教育活動に地域社会の人材の協力を得るなど、地域社会の持つ教育力の活用に心掛けることが大切である。

 他方、地域住民のために学校を活用することも考えるべきである。学校が地域社会の住民に対して学習機会を提供したり、施設を開放したりすることにより、地域社会へ貢献するのである。こうした貢献により、地域の人々と学校との連帯意識が高められ、学校がその本来の機能を果たすに当たって大きな力となる。

 したがって、小学校、中学校、高等学校、特殊教育諸学校、幼稚園が地域社会に根ざした学校として発展していくためには、「地域社会の教育力の活用」と「地域社会への貢献」を当面の目標とし、その達成に向けて必要な方策を強力に推進する必要がある。以下にそのための具体の施策を提言する。

1 地域社会の教育力の活用

(1)地域社会の人材等を活用した教育活動

 地域社会には、職業や経験を通して培った高い資質や能力を持つ様々な人々がいる。これらの人々の専門的な知識や技能などを学校の教育活動に適切に活用することによって、教育活動の多様化とその質の向上に大いに資することが期待できる。しかし、現在のところ地域の人々による学校の教育活動への参加・協力が日常的にどの学校でも見られるという状況にはなっていない。自ら学ぶ意欲や思考力、判断力、表現力などの育成を重視する教育が進められている今日、地域社会の多様な人材、社会教育・文化・スポーツ施設、地域の文化財、産業施設、さらには、森林・河川・海浜などの自然の持つ教育機能などを有効に活用することが望まれる。

○特別非常勤講師制度の活用
 昭和63年の教育職員免許法の改正により、社会人の学校教育への登用を可能とする制度である特別非常勤講師制度が導入された。この制度により、特定の領域において優れた知識・技能を持つ者については、教員免許状を持っていなくても、都道府県教育委員会の許可を受けて教科の領域の一部やクラブ活動を担当する非常勤講師として採用され、教室で直接子供に指導できることになった。平成6年度からはこのような非常勤講師配置のための国による助成措置も講じられている。平成6年度には高等学校を中心に全国で延べ2、328人がこの制度の活用により教壇に立っているが、小・中学校においては必ずしも実績は多くない。この制度の一層の活用を望みたい。そのため、教育委員会は、この制度の活用を各学校に広く促すとともに、地域の人材を授業に有効に活用するシステムを作るべきである。例えば、教員や指導者となり得る人材を発掘して、登録制度を設け、候補者名簿を作成すること(特別非常勤講師人材バンク)などが考えられる。また、地域の人々にも、学校からの求めに応じて、積極的に学校教育に協力する姿勢を持つことを期待したい。

○学校行事や部活動での専門家の活用
 学校行事等の特別活動や部活動などの指導においても、地域の人々の積極的な協力を得ることが大切である。この場合も、教育委員会は学校と地域の人材を結び付ける役割を積極的に果たすことが大切である。

○社会教育施設等の活用
 自ら学ぶ意欲や思考力などを育てるためには、様々な生活体験や活動体験を通じて自ら考え学ぶことができる機会を増やすことが大切である。学校においては、そのための方途の一つとして、社会教育・文化・スポーツ施設の一層積極的な活用が求められている。これまでも、少年自然の家などを利用して学校の集団宿泊活動が行われてきているが、様々な施設を活用して学校の教育活動を充実させることが期待される。例えば、公民館、博物館、美術館などの施設において、学校教育に即した内容で事業を企画したり、社会科や理科、美術などの授業の一部をこれらの施設において、施設の専門的職員の協力を得て行うことを考えてもよい。
 こうしたことを着実に推進するためには、市町村教育委員会において、適切な指導助言や財政上の措置など地域や学校の実情に合わせた積極的な対応を図ることが必要である。市町村教育委員会の創意と工夫が期待される。なお、こうした地域の教育資源の活用を考える場合にはいわゆる教育機関・施設に限らず、広く、森林・河川・海浜などの自然環境も視野に入れて、検討されることが望ましい。

(2)学校に対する地域社会の支援

 地域社会が学校に対して必要な支援を行うことは、学校教育の機能を高める上で特に大切である。学校週五日制の円滑な実施、いじめ問題への適切な対応、学校を取り巻く教育環境の改善など、緊急の課題が生じている。これらの課題への実効性ある対応のためには、学校と家庭・地域社会との密接な連携が重要である。また、社会からの様々な支援の受入れは、ややもすると閉鎖的になりがちな学校のこれまでの慣行や雰囲気の見直しの契機にもなる。

○PTA活動の活性化
 学校に対する地域社会の支援の拡充のためには、地域の人々が、自分たちの学校として愛着を感じ、学校の問題を共有しようとする気持ちを持つことが大切である。そのためには、学校側からその現状を知らせ、課題を理解してもらい、その上で協力を求めることが必要である。
 このためには、PTA活動の一層の活性化が不可欠である。PTAは、学校からの求めに応じ学校の諸活動に必要な支援・協力を行うとともに、学校を取り巻く課題を十分把握しながら、会員自らがやりがいを感じられるような、自主的な事業に取り組むことが重要である。また、組織的な活動ばかりでなく、個々の会員が各自の都合に合わせて柔軟に参加できるような多様な活動形態を工夫するとともに、職業を持つ人々が参加できるよう夜間や休日に活動の時間を設定するなどの工夫も考えられる。さらに、学校に対する地域社会の支援を拡充していくための一つの方策として、例えば、市町村教育委員会が核となり地域の社会教育団体や学識経験者などの参加を得て設けられる地域の教育問題に関する連絡協議の場に、PTAも積極的に参加していくことも考えられる。
 PTA活動は、男女共同参画社会へ向けてのモデルともなるべき活動であり、男女両性がいろいろな場で共に参画していくことが求められる。父親の積極的な参加を促すために、各種の会合などの開催時間や場所を見直すことも必要になる。さらには、PTA活動への参加が保護者としてまた地域社会の構成員として当然のことであるとの認識が、企業を含め社会全体に広がる必要がある。行政としても、そのような意識の高まりや環境の醸成に向けて努力すべきである。

○ボランティアによる支援
 学校に対する地域社会の支援としては、地域の高齢者の会などのボランティア活動を行う団体等に呼び掛け、その協力を得ることも考えられる。このことについては、世代を超えたふれあい活動の実施、地域の伝統的な文化や技能の伝承、校庭の整備・花壇の世話など学校の環境整備への協力など、様々な支援が考えられる。

2 地域社会への貢献

(1)地域住民への学習機会の提供

 学校は、子供たちに対する教育の場というばかりではなく、地域社会の貴重な学習の場でもある。学校の持つ教育機能や施設を開放して、地域住民に学習機会を提供することに対する、地域住民の期待は大きい。また、このことは学校の機能をよりよく発揮する上においても是非必要なことである。

○開放講座等の充実
 地域住民への学習機会として学校の開放講座への期待は大きい。現在、高等学校、専修学校においては国庫補助を受けて開放講座が行われてきているが、一層の拡充が望まれる。また、地域によっては、小・中学校でも実施しているところがある。こうした講座の実施に当たっては、それぞれの学校の特色や教職員の意欲を生かす配慮が必要である。教職員にとって、講座の実施はある程度の負担にはなるという面はあるものの、一方で、地域住民への指導や教授を通じて得るところも少なくないと考えられる。地域の人々の学校への理解も深まることになる。今後、講座の実施に当たっては、受講者の利便を考慮して多様な時間帯に実施されるようにする必要がある。
 なお、幼稚園においても地域の実情に応じて、子育て相談や子育てに関する講座などの取組が行われているが、今後一層それらの取組を推進し、幼稚園が地域の幼児教育のセンター的役割を果たすことが求められる。

(2)施設開放の促進

 学校施設の開放は、現在、小・中・高等学校を合わせて平均9割の学校で実施されている。しかし、その開放の日数や時間は学校により様々であり、近年の地域住民の学習ニーズの増大に対して必ずしもその需要を満たしているとは言えない。一方、開放時に事故があった場合に学校側が責任を問われるのではないかとの懸念が開放を妨げる要因となっているとの指摘もある。
 地域において学習活動のためのまとまった施設設備が不足している現状では、学校施設の開放は、地域住民が身近な場所で多様な学習を行う上で極めて有効であり、その促進が強く期待される。

○開放実施体制の整備
 学校施設開放の促進のためには、開放事業の実施上の責任がどこにあるかを明確にしておくことが必要である。この点については、従来、学校開放事業の実施上の責任は開放事業の主体である教育委員会にあるとされている。事業の具体的な運営は、教育委員会が直接、あるいは地域住民のボランティアによる開放実施委員会を通して行い、校長は事業についての管理責任は負わないことになっている。体育施設の開放については昭和51年の文部省通知により、学校開放時の管理体制の仕組みが明確にされている。また、校舎などの施設の開放についてもこれまで指導がなされてきているが、なお、実態として学校にとって負担になっている例も見られる。施設開放に対する学校関係者の懸念を払拭し、開放事業の実施体制を確立するため、教育委員会においては、学校ごとに施設の管理や利用者の安全確保・指導に当たる管理指導員の適切な配置、地域住民の協力を得た委員会の整備など必要な措置を講ずることが求められる。また、教育委員会は、開放事業にともなう事故に対応するため、参加者や指導者を対象とする各種保険制度について周知することも必要である。

○学校施設の高機能化
 学校施設は、子供たちの学習活動にとって最も適切な環境となるよう整備されることが前提であるが、地域の人々の学習の場として活用することも大切であることから、それに対しても快適で機能の高い学習環境として整備される必要がある。このため、施設設備の機能の高度化を図るほか、関連する文教施設等との有機的な連携や施設の複合化などにより、多様な学習機会を提供することについても柔軟に検討すべきである。
 開放を円滑に進めるためには、あらかじめ学校の建設の段階で開放にも配慮した設計が行われることが大切である。文部省により示されている学校施設整備指針においても、クラブハウスの設置など開放に関する事項が規定されており、地域の実情に応じた適切な配慮が望まれる。
 学校施設の機能の高度化を図るためには、地域の実情に応じて、例えば、学校の校庭と市民公園、あるいは学校プールと市民温水プールなど、学校施設と地域の施設との一体的な整備を行うことも考えられる。また、学校施設と隣接する地域の施設との間での相互利用を図ることも考えられる。いずれの場合にも、学校教育に支障の生じないように十分配慮すべきことは言うまでもない。

○余裕教室の活用
 生徒の減少に伴って生じている余裕教室の有効な活用も当面の大きな課題になっている。余裕教室の活用に当たっては、コンピュータ教室など教育活動を一層充実させる観点からの転用がまず考えられるべきである。特に、いじめなど生徒指導上の諸問題への対応に関連して、近時、カウンセリング室の整備のための緊急3か年整備計画が策定されたところであり、その促進が期待される。このほか、更に活用の余地のある場合には、地域住民の学習活動を積極的に支援する観点から、社会教育・文化・スポーツ施設への転用も検討すべきである。なお、地域の実情に応じては、更に学童保育・デイサービスセンター等福祉施設や備蓄倉庫等地域防災のための施設などへの転用も考えられる。

○週末等における学校施設の活用
 週末等に子供たちの身近な場を活用して、社会教育・文化・スポーツの様々な活動が総合的・継続的に展開されることが望まれるが、学校施設の活用もその一つとして考えることが大切である。子供たちが、学校など身近な場に集い、地域社会の人々との交流の中で楽しく体験活動をすることは、月2回の学校週五日制の実施とあいまって極めて有意義である。また、地域の多くのボランティア等の協力を得て子供たちのための多様な活動の機会を用意し、その中から子供たちが自分の気に入ったものを自由に選択できるようにすることが必要である。その点で、文部省が平成8年度から新たに実施する予定の「ウイークエンド・サークル活動推進事業」の活用が期待される。

○災害時の避難場所としての整備
 災害時において学校がまず果たすべき役割は児童生徒の安全確保であるが、被災者の避難場所としての役割も期待されている。このため学校教育のための施設としての機能向上を図りつつ、施設設備、運営の両面にわたる防災機能の充実・強化を図る必要がある。特に施設設備面については、学校施設の耐震性能の強化を図るとともに、備蓄倉庫等の防災機能の整備を図ることも重要である。また、学校施設を活用して地域の防災施設(耐震性貯水槽・備蓄倉庫等)を整備するに当たっては、学校教育活動に支障のないよう十分配慮するとともに、適切な管理体制を整える必要がある。平成7年1月の阪神・淡路大震災の際には、教職員の献身的な活動により、学校施設は避難場所として大きな役割を果たした。とりわけ、学校と地域社会との日ごろからの関わりが深く、地域社会に対する連帯意識の強いところにおいては、救援活動がより円滑に行われたとの指摘もある。学校は災害時の避難場所として使用されることも考慮し防災機能の整備を図るとともに、地域社会の学校であるとの観点から、地域社会の連帯感を培うシンボル的な施設として充実することが必要である。

3.地域住民のニーズにこたえる社会教育・文化・スポーツ施設

 公民館や図書館・博物館・美術館あるいは生涯学習センターなどの社会教育施設においては、これまでも地域社会における生涯学習の中心的な場として活発な活動が展開されている。文化会館・音楽ホールなど各種の文化施設あるいは体育館・スポーツセンターなどのスポーツ施設も同様である。さらに、最近は、民間の事業者によるカルチャーセンターなども活発な事業を行っている。これらの施設は地域住民の多様な学習ニーズにこたえ多種多様の学習機会を提供しており、それを通じて地域住民の幅広い学習活動を支える基盤的な役割を担っている。これら施設は今後とも生涯学習振興の上で重要な役割を担う存在であり、一層の機能の充実と活性化が求められている。

 社会教育・文化・スポーツ施設は、何よりも地域住民のニーズに柔軟・迅速・的確にこたえるものでなければならない。そのためには、多様化・高度化する学習ニーズに適切に対応した事業活動を展開することが重要である。社会がますます高度化・複雑化する中で、多くの人々は様々な課題に対処し、より豊かで充実した人生を送るため、身近なところで自由意志に基づく学習をし、自己を高めたいと考えている。また、月2回の学校週五日制が実施されている中で、青少年の学校外活動の重要性が改めて指摘されている。さらにいじめや登校拒否の問題が深刻な状況にあることから、こうした問題に的確に対応するため、家庭や地域社会の教育力の充実が求められている。そのようなニーズにこたえる場として地域社会に存在する社会教育・文化・スポーツ施設には、今まで以上により積極的にその教育的機能を発揮することが求められている。

 社会教育・文化・スポーツ施設は、多様化・高度化するだけでなく新たに生じてくる地域住民の学習ニーズを常に的確に把握し、それにこたえた学習機会を積極的に提供していくことが求められる。なかでも積極的に拡充を図る必要があるのは、平成4年の答申でも指摘した、いわゆる現代的課題に関する学習である。変化する社会の中で充実した生活を営んでいくためには、様々な現代的課題についての理解を深めることが必要となってくる。例えば、地球環境の保全、国際理解、人権、高齢社会への対応、男女共同参画社会の形成などの課題がある。学習機会を提供する側においては、こうした現代的課題の重要性を認識し、そのための学習機会の充実を図ることが強く求められる。その際、民間の教育事業者や関係団体の活力を生かすことをはじめ、大学や各種の研究・研修施設等の提供する学習機能の活用についても配慮することが必要である。

 また、地域住民の学習ニーズに適切にこたえるには、事業活動面での充実を図るのみならず、それを動かす組織自体が活性化していなければならない。時代のニーズに合った新しい事業に取り組む進取の気性に溢れた施設運営が行われることが肝要である。地域住民の学習ニーズは社会の変化に対応して常に変化しており、それに即応する新しい事業の展開が求められるからである。組織が沈滞していてはニーズの変化をとらえることも、斬新な発想を生み出すこともできず、新しい事業も生き生きした活動も展開できない。常に組織運営の活性化を図り、活力を維持・増大していくことは極めて重要である。

 したがって、社会教育・文化・スポーツ施設が常に地域住民のニーズに柔軟・迅速・的確にこたえていくことができるようにするために、「多様化・高度化する学習ニーズへの対応」と「組織運営の活性化」を当面の目標とし、その達成に向けて必要な方策を強力に推進する必要がある。以下にそのための具体の施策を提言する。

1 多様化・高度化する学習ニーズへの対応

(1)多様で総合的な学習機会の提供

 人々の生涯学習のニーズは、日常の身近な生活の場で、文化やスポーツなどを含む様々な分野にわたり、広範かつ多様に現れる。個々の施設が孤立していてはそれに十分にこたえることはできない。社会教育施設だけでなく様々な施設を総合的、計画的に配置し活用することにより、多様な学習機会の提供が可能になる。その際、森林などの自然、貴重な文化遺産、あるいは産業施設なども地域の学習資源として、視野に入れておくことが大切である。施設の総合的な整備によって、地域住民の学習拠点が形成され、様々な年齢層の人々が自由に交流し多様な学習が促進される。さらに、地域全体の学習環境が整うことにより、学習を進める雰囲気がおのずから醸成されることも期待される。

○総合的な計画の整備
 多様な施設の総合的な整備のためには、地域全体での総合的、有機的な学習施設整備計画を作ることが大切である。地域のまちづくり計画等の中にしっかりと位置付けられることにより、施設の整備は着実に進展することであろう。
 なお、「生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律」に規定される地域生涯学習振興基本構想は、民間の活力を活用しながら地域における総合的な学習機会を整備しようとするものであり、地域の生涯学習機能の飛躍的な向上に資すると考えられる。各都道府県において具体的な構想の作成が積極的に進められることが期待される。

(2)施設間の広域的な連携の促進

 関係施設間にネットワークを形成し、相互の機能の広域的な連携・協力体制を整備することにより、地域における生涯学習機能を総合的に発揮することが期待される。

○行政部局間の連携強化
 社会教育・文化・スポーツ施設においては、それぞれの施設の職員の努力により、多様な学習機会の提供が行われてきている。他方、地域住民の学習ニーズの高まりに応じて、首長部局および関連施設での学習機会提供も盛んに行われるようになっている。このため、教育委員会や他の行政部局で行われる各種の事業の実施について、学習者の立場に立って、行政部局間の連携・調整を図ることが必要になってきている。そのため教育委員会が積極的な役割を果たすことが期待される。
 なお、教育委員会が実施する事業の内容は、どちらかと言うと、これまで趣味・文化・教養などに偏る面も見られたが、今後は、職業に係る知識・技術の向上や市民意識・社会連帯意識などに関する学習、あるいは、介護等の生活技術の習得に係る学習などを含め、新たな学習ニーズにこたえる適切な内容の事業を積極的に実施すべきである。このためには、それらの学習に関係する行政部局・施設の協力・支援を得ることが必要であり、その観点からも、教育委員会と他の行政部局間の連携・調整を図る必要がある。

○民間との連携強化
 人々の多様な学習ニーズに柔軟にこたえるためには、多様な学習機会が提供されなければならない。学習機会の提供や学習支援を行うのは公的施設ばかりではない。一般の個人・グループあるいは民間教育事業者などを広い視野でとらえ、これらと適切な連携を進める必要がある。このため、民間の教育事業者と公的施設との連携のあり方が現実的な課題となり、連携のための新たなルール作りが必要になってきている。平成7年9月の文部省通知により、公民館における民間教育事業者の施設利用が、社会教育法上許容される旨の法解釈が明確に示されたことは、公民館事業における民間との連携を考える上において有意義である。今後とも関係者の相互の理解の下に適切な連携関係を作っていくことが求められる。生涯学習関連施設・民間事業者間の円滑な意思疎通を図るための協議会・情報交換会が幾つかの都道府県で開催されるようになっているが、こうした機会の拡充と機能強化が期待される。

○コーディネート機能の強化
 異なる種類の施設間で形成された広域的なネットワークが有機的・効率的に機能するためには、連携の中心となる中核的な機関が不可欠である。これには、一般に地域の生涯学習推進センターが当たっているが、ネットワークを形骸化させないようにするためにも、生涯学習推進センター自体の体制整備が必要になる。この場合、特に、コーディネート機能の強化が大切である。地域住民の学習ニーズを的確に把握し、これに即応した学習機会の提供を企画し、関係施設間の事業の調整を図るなど、ネットワークが生き生きと統合的に機能するようにする必要がある。このため、生涯学習全般にわたって企画・調整・助言などの支援能力を持った専門的職員をセンターなどに配置することが大切である。コーディネーター養成も急がれる課題であり、国立教育会館社会教育研修所などでの研修の拡充が望まれる。

○学習情報ネットワークの構築
 施設間のネットワークを円滑かつ迅速に動かすためには、構成施設等の学習情報のオンラインネットワークの構築が欠かせない。このため、現在、国では西暦2000年を目途に、全国的な学習情報のネットワークづくり、全国的な中核機関づくりが進められている。様々な分野で構築されつつあるネットワークを統合した総合的な学習情報システムの利用が早期に実現することを期待したい。その際、他の学習情報関連システムとの連携にも配慮が望まれる。都道府県においても、国の補助制度を活用しながら、情報ネットワークの構築が進められている。おおむね、順調な整備状況と言えるが、各都道府県・市町村によっては情報を検索できる端末が少ないこと、最新の情報が入力されていないことなど、学習者にとって必要な情報が得られるまでにはなっていないところもあり、引き続き努力が求められる。なお、社会通信教育事業も、今日の学習ニーズに応じて、多様に展開してきており、生涯学習を進める上で重要な役割を担うに至っている。これらに係る学習情報についても、情報ネットワークにおいて適切に提供されることが望まれる。

(3)情報化・マルチメディア化への対応

 学習機会へのアクセスに対する時間的・地理的な制約を大幅に緩和させ、より質の高い効率的な学習を可能にするものとして、各種の学習施設における情報化・マルチメディア化への対応に対する人々の要請は特に高い。また、個人の自主的な学習を進める上での有力な手段としても、期待は大きい。

○情報化による事業の革新
 施設においては、事業の実施や施設の運営に情報関係施設設備を積極的に導入することが必要になっている。これに伴って、情報関係の機器・システムのもとでマルチメディアを用いた学習プログラムを開発するなど新しい事業の内容・方法の革新を図る必要がある。同時に、職員の関係知識・技術の習得が迅速に進むよう研修等の改善を図る必要がある。

○情報提供のマルチメディア化
 現在整備が行われつつある生涯学習情報提供システムは、文字や数値による案内情報等が中心である。しかし、科学技術の進歩により音声・図形・画像・映像等を効果的に組み合わせたマルチメディア形態の情報提供が可能になっている。このため、地域住民に親しみやすく利用しやすい情報提供を行うためにも、システムのマルチメディア化を図ることについて検討を行う必要がある。また、インターネットなどの情報通信網の発展を視野に入れた先行的な研究開発が求められる。

(4)学校教育との連携・協力

 今日の学校教育では、自ら考え、判断し、行動するなどの資質・能力を重視する教育が展開されている。こうした教育を進めていく上で、自然環境や日常生活の中での体験学習が効果的である。社会教育・文化・スポーツ施設などが学校と連携して、こうした事業を展開していくことが求められており、その連携・協力の推進の在り方や具体的な方向が課題となっている。

○「学社融合」の理念に立った事業展開
 従来、学校教育と社会教育との連携・協力については、「学社連携」という言葉が使われてきた。これは、学校教育と社会教育がそれぞれ独自の教育機能を発揮し、相互に足りない部分を補完しながら協力しようというものであった。しかし、実際には、学校教育はここまで、社会教育はここまでというような仕分けが行われたが、必要な連携・協力は必ずしも十分でなかった。この反省から、現在、国立青年の家、少年自然の家においては、学校がこれらの青少年教育施設を効果的に活用することができるよう、「学社融合」を目指した取組が行われている。
 この学社融合は、学校教育と社会教育がそれぞれの役割分担を前提とした上で、そこから一歩進んで、学習の場や活動など両者の要素を部分的に重ね合わせながら、一体となって子供たちの教育に取り組んでいこうという考え方であり、学社連携の最も進んだ形態と見ることもできる。このような学社融合の理念を実現するためには、例えば、学校が地域の青少年教育施設や図書館・博物館などの社会教育・文化・スポーツ施設を効果的に利用することができるよう、それぞれの施設が、学校との連携・協力を図りつつ、学校教育の中で活用しやすいプログラムや教材を開発し、施設の特色を活かした事業を積極的に展開していくことが重要である。これによって、学校だけでは成し得なかった、より豊かな子供たちの教育が可能になるものと考えられる。今後、こうした学社融合の理念に立った活動を積極的に推進していくためには、国としても、必要な調査研究や先導的な事業に対する支援などを行うことが求められる。
 また、学校と家庭・地域社会との適切な役割分担と連携を図りつつ学社融合を円滑に推進していくためには、その基盤を整備していくことが重要である。学校と施設間の人事交流の一層の促進や、学校教員が青少年教育施設等で体験的な研修を行うような機会を拡充することなども検討される必要がある。

○ 学校週五日制への対応
 平成4年9月から実施されている学校週五日制は、これからの時代に生きる子供たちの望ましい人間形成を図るため、学校、家庭及び地域社会が一体となってそれぞれの教育機能を発揮する中で、子供が自ら考え主体的に判断し、行動できる力を身に付けるようにしようとするものである。この学校週五日制は子供たちの生活にゆとりを与え、より豊かな生活体験・活動体験の機会を豊富にする契機となるものであり、地域社会における学校外活動充実の拠点となる社会教育・文化・スポーツ施設には大きな期待が寄せられている。
 現在、休業土曜日には、全国各地の青年の家、少年自然の家などの青少年教育施設において、子供たちや親子を対象としたキャンプ、自然探索などの事業の実施や青少年団体による活動が活発に行われている。また、例えば、公民館においては体験を通じたふるさとについての学習やサークル活動が、図書館においては子供たちを対象とする読書会が、博物館においては科学教室などが実施されている。さらに、これらの博物館・美術館においては、休業土曜日の子供の入場料を無料としているところも多い。
 今後、社会教育・文化・スポーツ施設においては、これらの事業の一層の充実を図るとともに、施設の特色を生かし子供の興味や関心に応じた新しいプログラムを開発・提供することが求められる。その際、施設がそうした事業を展開するには、地域の青少年団体や住民のボランティアなどの積極的な協力を得ることが重要である。これにより、子供たちに対し創意にあふれた多様な活動の機会の提供が期待される。なお、平成8年度から文部省が実施する「ウイークエンド・サークル活動推進事業」は、週末等において学校施設などの子供たちに身近な場を活用して様々な体験活動を展開するものであり、これに対する社会教育・文化・スポーツ施設の連携・協力が求められる。
 また、市町村教育委員会においては、自ら事業を計画するほか、施設や団体の活動に関する情報を子供たちや保護者等に迅速かつ適切に提供することや、施設や団体等に対し事業の企画や運営に助言や支援を行うことなど、格段の配慮を行うことが必要である。

○地域ぐるみの活動の展開
 社会教育・文化・スポーツ施設が学校と連携・協力していくためには、これらの施設を中心とした地域ぐるみの活動が展開される必要がある。特に、現在、学校週五日制の実施やいじめ問題への対応などを契機に、子供の育成に関して地域社会の持つ教育機能の充実・向上が求められている。このため、これらの施設においては、子供たちのためにやりがいのある楽しい活動機会を積極的に提供していくとともに、社会教育関係団体、ボランティアグループなどと協力して、子供たちの健全な育成のための適切な事業が行われるようにいろいろな啓発事業を行うことも求められる。これらの活動が円滑・的確に行われるよう教育委員会による支援も必要である。
 また、子供たちが基本的な生活習慣・態度等を身に付ける上で、家庭の果たす役割は特に大きい。家庭の教育力の向上のために、社会教育施設等において、家庭教育についての学級・講座の実施、親子で活動する機会の提供、家族一緒の文化・スポーツ活動の機会の提供などの多様な学習機会の提供や相談事業の充実などの支援が必要である。
 こうした地域ぐるみの活動が活発に行われるためには、企業におけるこれらの活動への支援も必要である。この点については、平成8年3月に社団法人経済団体連合会が取りまとめた「創造的な人材の育成に向けて~求められる教育改革と企業の行動~」においても指摘されているところであるが、労働時間の短縮、弾力的な労働時間管理、休暇取得の促進などの実施、進学時期の子供を持つ職員への転勤時期・場所等についての配慮など、社会人が地域社会や家庭で活動・生活するためのゆとりをもたらすよう企業が具体的な対応をとることが求められている。

2 組織運営の活性化

(1)人的体制の整備

 施設の機能が十分に発揮できるかどうかは、事業の実施や施設の運営管理を担う職員体制にかかわる面が大きい。学芸員、司書、アートマネージメント担当職員、スポーツプログラマー等の専門的職員、あるいは様々な分野の指導者等に優秀な人材を得て、機能的な業務体制を編成することが重要である。社会の変化や学習ニーズの多様化の中で常に生起する新たな課題に迅速かつ的確に対応できるかどうかは、それに対応し得る能力と意欲を持った人材を確保し、機能的な組織運営を行うことにかかっていると言っても過言ではない。

○専門的職員の確保・養成
 人的体制の整備のためには、各施設の事業を担当する専門的職員に優秀な人材を確保するとともに、研修により資質の向上を図ることが必要である。その際、特に、地域住民との対応において意思の疎通を円滑、適正に図ることが求められていることにかんがみ、そのような観点からの研修も配慮される必要がある。社会教育主事等の専門的職員の養成や研修の充実について、本審議会社会教育分科審議会の報告(平成8年4月)を踏まえ適切な方策が講ぜられることを期待したい。

○ボランティアの受入れ
 人的体制の整備の上では、施設職員とともに、施設業務に対して協力・支援を行うボランティアも重要な要素となる。ボランティア活動は、施設にとってその組織運営の活性化に重要であるばかりでなく、ボランティア自身にとっても、自己開発・自己実現につながる学習の場として、学習成果を生かす場として、あるいはボランティア相互の啓発により学習を活性化するものとして重要である。こうした点から、積極的にボランティアの受入れを進めることが必要である。その際、社会教育主事、学芸員、司書などの資格を有しながら実際の業務に就いていない者が多数存在することから、こうした有資格者の持つ専門的知識やそれぞれの多様な経験等を活用することが有意義である。データベース(人材バンク)の創設を行うなど、国と関係機関・団体等との連携・協力の下に、ボランティアの受入れの推進を図ることが必要である。また、ボランティアの受入れに当たっては、施設の業務全体の中でボランティアが有効な活動を進められるようにするため、先導的な取組を行っている施設の事例を普及させたり、あるいは研究協議を行ったり、ボランティアや職員の研修を実施したりすることも必要である。

(2)利用者の立場に立った施設の運営

 自発的な意志に基づき自由に行われるべき生涯学習を進めるには、施設は、施設の管理者側の都合ではなく、利用者側の立場に立った事業の実施、施設の運営に十分配慮する必要がある。

○アクセスの改善
 利用者が社会教育・文化・スポーツ施設をできるだけ利用しやすいように、施設の開館日・開館時間については、地域の実情に応じつつ、可能な限り弾力的な扱いをすることが必要である。また、身近なところで施設の利用が可能になるよう、分館の拡充などが求められるとともに、施設間のネットワーク化の推進により、施設のサービスが柔軟に受けられるようにする必要もある。施設の利用の改善を図る上では、施設内の設備など学習環境の充実も大切な課題である。学習者の特性(子供、高齢者、障害者、外国人など)に配慮した施設設備の整備や事業運営の工夫も求められる。

○住民参加による運営
 施設の事業の運営に当たっては、施設の管理者が事業の企画・実施を含めて施設の運営全般に責任を持って行うことが当然であるが、施設や地域の実情に応じて、地域住民が事業の企画や運営に何らかの関与ができるようにすることも考えられる。例えば、事業の企画・運営・広報などを行う委員会に委員として参加したり、ボランティアとして指導のスタッフに加わったりすることなどがあろう。こうした事業運営への住民の参加は、地域の施設としてより利用者の立場に立った施設の運営に資するところが大きいと考えられる。

(3)新しい学習課題に対する運営の改善

 地域住民を取り巻く社会環境の急激な変化の中で、新たな学習課題も生起してきており、施設としてそうした課題に対応できるように運営を工夫することが必要になっている。常に新たな需要を的確に把握し、新しい事業展開や運営の改善を図っていくことは、施設がその組織の活力を維持していく上にも大切である。

○国際化・情報化等への対応
 国際化・情報化・高齢化等の社会の変化への対応や男女共同参画社会の形成など現代的課題に関する学習の推進について、地域の実情に応じた積極的な取組が期待される。
 このうち国際化に関しては、社会教育・文化・スポーツ施設において外国の文化の紹介、外国人との交流事業、通訳など国際交流ボランティアの養成、日本語指導者講座の実施、地域に居住する外国人のための情報誌・ガイドブックの発行など様々な事業が行われてきている。今後ともこれらの事業の拡充を図る必要がある。特に、最近は、個人やグループによる様々な国際交流の活動が行われるようになってきており、国際交流に係る関係団体の育成、関連情報の収集と提供などの充実が求められている。また、マルチメディアなどの情報化の進展に伴い、学校ばかりでなく広く社会教育の分野においても、コンピュータの操作、通信システムの活用など様々な情報活用能力の育成に関する学習機会の提供が求められる。このほかにも、高齢化に対応したライフプランづくりや、成人・高齢者の社会参加支援のための学習機会、男女共同参画に関する意識啓発のための学習機会の開発や充実を図ることなど多様な学習機会の提供が求められている。
 これらの事業の展開に当たっては、各施設とも職員の資質能力の向上、指導体制の整備を図る必要がある。それぞれの施設は、これらの課題に関連する首長部局やその機関、学校等と連携を図りながら事業に取り組むことが求められる。また、施設は社会教育団体やその他の関係団体にはこれらの事業に自発的に取り組むことを奨励しつつ、これら団体と連携を図ることも重要である。

○学習者への支援
 人々の学習形態は学級・講座や講演会のほか、共通の学習ニーズで構成される学習グループ、図書・メディアを活用した個人学習など多様化が進んできている。社会教育・文化・スポーツ施設においては、このような学習グループや個人の自主的な学習活動を積極的に支援するとともに、こうした学習グループ等の育成に向けた支援・協力を行う必要がある。自主的な学習への支援方策として、学習者の幅広い選択が可能になる多様な内容の提供、学習相談や助言事業の改善・充実、視聴覚教育メディアの開発、学習情報提供システムの充実などが検討される必要がある。

(4)財政面での充実

 財政面での充実は、活力ある施設の運営のための重要な基盤の一つである。質の高い事業を多様に展開していくためには、職員など関係者の創意・工夫とともに、必要な財政的な裏付けの確保が不可欠である。

○財源の確保
 公的な社会教育・文化・スポーツ施設が、今後、より高度な事業や情報化等に対する新たな機能の充実等を積極的に推進していくためには、まず、施設の設置者が施設の運営体制の充実を図るとともに、運営経費など財政的な基盤の整備に従来にも増して努力することが必要である。また、施設においても、施設の事業の充実のために自助努力を行う姿勢が求められる。特に、様々な財政上の制約の下においては、施設運営のための独自の財源を確保することも大切である。社会教育法においては公民館の維持運営のため市町村は特別会計や基金を設けることができる旨規定されているところであり、こうした既存の仕組みなどを積極的に活用することが期待される。また、支援のための財団が地域レベルあるいは施設単位に設置できれば、安定的に事業運営や施設維持をすることができる。その際、広く民間からの資金協力を得ることが望まれる。そのためには、例えば、各種行事・イベント等を開催し、継続的に広報を実施するなどして、生涯学習の重要性や施設の事業の必要性について民間の関心と理解を深めるような努力と工夫が必要である。
 また、それぞれの施設においても、利用者の適切な経費負担を含め、施設の有する多様な機能を効果的に活用するような事業展開に努めることが必要である。そうした努力や工夫によりもたらされる蓄積を当該施設等の財源に充て地域住民のための事業の充実や施設運営のために活用することにより、財政基盤の充実の面のみならず、施設の組織運営の活性化のためにも極めて大きな効果を及ぼすものと考えられる。

○適切な料金設定のもとでの事業展開
 現在、公的な施設においては、その公共性を考慮し講座等の受講料などは無料あるいは教材費などの実費に限ることが一般的である。地域住民のための公共的な利用に供することを目的とする本来的な性格から、そのこと自体は今後とも否定的にとらえるべきことではない。特に、青少年の学校外における多様な学習の場の確保や学校週五日制の導入など新たな課題への積極的な対応という観点から、学校が休みの土曜日に博物館の入場料を子供について無料にする等の取組も行われており、一層の拡充が必要である。しかし、事業内容や参加者、地域における学習機会提供の状況によっては、適切な料金設定の下での事業展開の在り方について検討することも必要と考えられる。その際、地域住民の学習ニーズや参加者の特性、あるいはそれぞれの施設としての事業の必要性や優先度、民間教育事業者など他の学習関連施設の設置状況や事業の実施状況などを十分考慮することが必要である。

4.生涯学習に貢献する研究・研修施設

 各省庁や首長部局が所管したり企業等が所有したりする施設の中には、本来の業務に関連して学習機会の提供を行うものもあり、これらにおいては地域住民の学習ニーズを的確に把握し、適切な事業の展開を図ることが求められる。それ以外の研究・研修施設については、教育活動を本来の業務としているわけではないが、専門的でかつ高度な人的資源、施設設備、知識、情報、技術などを有しており、それらは生涯学習のための貴重な学習資源になり得るものである。これまでも地域住民などに対して施設の開放などが行われる例はあったが、今後そうした事業の一層の拡充が望まれる。事情の許す限りそれぞれの特色を生かしながら、適切な方法で学習機会を提供し、生涯学習社会において重要な役割を果たすようになることが期待される。地域社会への学習機会の提供は、一方的な地域社会への貢献というばかりでなく、地域住民に施設についての理解を深めてもらうことができ、施設本来の事業の円滑な推進にも資する場合が少なくないものと考えられる。
 このような研究・研修施設がその生涯学習機能を効果的に発揮するためには、何よりも、各施設の設置者が生涯学習に貢献することの意義を十分に認識した上で、「多様な学習機会の提供」、「地域社会との連携」を当面の目標とし、その達成に向けて必要な方策を強力に推進することが必要である。以下にそのための具体の施策を提言する。

1 多様な学習機会の提供

(1)施設の開放や学習関連事業の実施

 研究・研修施設は、地域住民の高度化し多様化する学習ニーズに的確にこたえることのできる、極めて魅力的な地域社会の学習資源としてとらえることができる。施設の持つ人材や施設設備等の学習資源をいかにうまく活用して地域に学習機会を提供するかが課題となっている。このため、それぞれの施設がその置かれた状況に応じて、施設の公開や公開講座の実施などを進めることが求められる。

○施設の公開
 研究・研修施設の建物や設備等を見学することはそれだけで専門の分野における研究事情を学習するための契機となり得る。積極的な施設の公開、見学会・説明会の実施、それらに合わせた施設や関連する研究に対する啓発資料の作成・展示・配布などが求められる。

○公開講座等の実施
 研究・研修施設の研究者等の職員が当該施設の研究成果や研究に関連しての知見を、分かりやすく公開講座・講演会などの形で地域住民に提供していくことについても地域の期待は大きい。これらの開催については、教育委員会や社会教育施設などを通して広く地域の人々に広報することが望まれる。場合によっては、地方公共団体の行う事業に組み込んで行うことも考えられる。また、研究者等の職員が地方公共団体等で行われる講座、学級に講師として協力することもあろう。こうした活動を積極的に実施することが期待されている。

2 地域社会との連携

(1)地域の生涯学習ネットワークへの参加

 研究・研修施設が地域住民に対して学習機会を提供しようとする場合、地域住民の学習状況やニーズの動向を把握することが大切である。しかし、これらの施設では日常地域住民との直接の接触の機会が少ないことから、地域の社会教育施設等との連携が必要になろう。また、地域の人々の学習のニーズは極めて広範多岐にわたることから、他の施設や機関と協力して事業を実施する必要も出てくる。これら施設がその固有の能力をより発揮するためには、地域の生涯学習機関のネットワークに参加し、全体の学習機会提供システムの中でその機能を生かしていくことが効果的である。

○生涯学習担当の体制整備
 研究・研修施設の中に、施設の学習事業を全体として構想し企画・運営するための担当を設けることが望ましい。ここを窓口として地域の生涯学習ネットワークの中核的な機関や主要な構成機関・施設との連絡調整を行い、効果的な学習事業を提供していくことが大切である。また、同時に、研究・研修施設の生涯学習に係る情報を収集し、ネットワークを通して発信していくことも必要になる。このため担当者には、生涯学習についての理解やコーディネートの在り方についての研修も望まれる。

(2)学校教育や社会教育への協力

 地域社会にとって、貴重でユニークな学習資源を持つ研究・研修施設は、これまでも実習施設として学生を受け入れたり、特定の領域における指導者として職員を学校に派遣するなど学校教育に対して協力を行ってきている。今後とも、これらの施設は、子供たちへの多様な教育活動や指導を展開することを通じて、学校教育や社会教育への支援・協力を行うことが求められる。

○実験・実習施設としての活用
 研究・研修施設を学校教育や社会教育のための実験・実習の施設として活用することが望まれる。特に、専門高校や専修学校における特色ある学習活動のために、独自の研究施設・設備の持つ高度な専門性が有効に活用されることが期待される。

○教員・指導者としての協力
 研究・研修施設の職員が高等学校などの教育に専門科目担当の特別非常勤講師として指導に当たることがあるが、より積極的な推進を図るためには、法令等の弾力的な解釈・運用を図るなど研究者等の参画を容易にするための配慮も必要である。さらに、これら施設の退職者で希望する者を積極的に活用することも有効である。また、逆に、学校や社会教育施設などの教員・専門的職員・指導者などを研究・研修施設に研修などの形で受け入れて、これら職員の資質能力の向上に役立てることも考えられる。

おわりに

 地域における生涯学習に関連する諸施設を四つの類型に分け、それぞれの施設が今後とるべき方策について述べてきた。その中にはそれぞれの類型を超えて、より横断的、総合的に取り組まなければならない課題もある。

 第一は、施設間の連携・協力の推進である。学習者の様々なニーズに柔軟・迅速・的確にこたえていくためには、各施設が単独で対応するのではなく、類型を超えて関連する施設間に機能的なネットワークを構築して対応することが有効である。このことについては、それぞれの類型内での連携は図られてきているが、更にその枠を超えて、地域社会におけるすべての関連施設を含む連携・協力システムの構築を推進する必要がある。その場合、学習者の立場に立った学習機会の提供という観点から、行政部局の違いや公的施設・民間施設の違いを超えて連携を深めることが大切である。
 また、円滑で実効あるネットワークを構築するためには、情報ネットワークの整備やコーディネート機能の充実が基盤的な要件になる。新しい豊かな情報データが容易に取得できる仕組みを活用して、コーディネーターが学習者と施設、施設間相互の連絡・調整を的確に行うことが大切である。日常的な連携・協力は、各施設の学習機会提供に有用なノウハウなどをもたらし、施設の職員に新たな意欲を刺激する。従ってシステムに参加する機関・施設の機能の向上に資することにもなろう。広域的かつ総合的なネットワークの仕組みを、地域の状況等に応じて形成していくことが望まれる。

 第二は、情報化・マルチメディア化への対応である。科学技術の発展に伴い、コンピュータ、光ファイバー等の高度情報通信網、衛星通信、衛星放送等がごく身近な存在になってきた。これらは時間的・地理的な制約を大幅に緩和させ、より質の高い効率的な学習を可能にするものとして期待されている。施設における適切・効果的なマルチメディアの活用は、学習機会の提供の充実、学習方法や内容の改善等に大きく貢献するとともに、個人の自主的な学習活動の支援にも大きな役割を果たすことが期待されている。今日、施設と学校との連携の強化が求められているところから、両者を有機的に結ぶための手段の一つとしてマルチメディアの活用は一層重要となろう。今後は、これまで以上に、マルチメディアの利用、コンピュータ等物的条件の整備、活用方法の研究と実践、ソフトウエアの研究開発、専門的な人材の養成等諸施策の推進が望まれる。

 第三は、ボランティアの受入れである。ボランティアを受け入れることは、施設の提供する学習機会をより充実するばかりでなく、地域住民の希望や意見を施設の運営に反映させ、その活性化に寄与する。また、ボランティアとして協力する人々にとっても、その活動は自らの能力を生かす道でもあり、生きがいや自己実現に結び付くものでもある。その意味において、生涯学習の視点からボランティア活動を拡充することが望まれる。
 施設へのボランティアの参加・支援を促進するため、それぞれの施設の実情等に応じて受入れの体制を整備することが望まれる。また、行政においても、ボランティアグループや団体への支援、ボランティアコーディネーターの養成、情報の提供など、ボランティア活動を促進するための諸施策の推進が望まれる。

 第四は、市町村教育委員会の活性化である。市町村教育委員会は、小・中学校や社会教育・文化・スポーツ施設の設置者としてそれぞれの施設が適切に運営されるよう必要な基盤の整備や管理を行っており、これら施設が今回の答申の諸提言に即して事業や施設運営の改善を図る場合、それを有効に促進する役割を担う。施設における学習活動の推進のため市町村教育委員会の役割は極めて重要である。関連機関の連携体制を構築するに当たっても、市町村教育委員会は学習ニーズを具体的に把握して施設の事業に生かすなど、住民の最も身近なところで実質的にコーディネートの役割を果たしている。その一層の活性化が求められる。

 いずれの課題も、これまでの組織の中に閉じこもった閉鎖的あるいは縦割りの指向とは相容れないものである。関係者においては、学習者の視点に立った生涯学習機会を実現するため、新しい発想に立って広い視野からお互いの連携・協力関係を築き上げることを期待したい。

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生涯学習局生涯学習振興課

-- 登録:平成21年以前 --