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2 大学教員の任期制

(1)教員の流動性向上と任期制導入の意義

a.教員の流動性向上による教育研究の活性化

 以上のように、大学教員の流動性を高めることが必要であるが、そのための一方策として、大学教員に任期制を導入できるようにすることは、国内外を問わず、他の大学や研究機関等との人材交流を一層促進することとなり、教員自身の能力を高め、大学における教育研究の活性化を図る上で、極めて大きな意義を持つものである。
 また、大学教員の人事については、いったん教員に採用された後は、業績評価がなされないまま、年功序列的な人事が行われ、教育研究が低調となることなども指摘されている。任期制を導入することにより、任期満了後、他の大学、研究機関、企業等に採用される場合には、採用に当たっての審査を受けることが必要となり、また、再任を認める場合にも、再任するかどうかの判断に当たって、それまでの任期中の教員の業績評価を行うことが必要となる。これらの審査の際には、各教員が任期中十分な教育研究等の業績をあげていること、あるいはその間の教育研究活動の内容を明らかにすることが求められることとなる。こうしたことを通じて、教員の教育研究が活性化することが期待される。
 さらに、近年、実社会における経験を生かした実践的な教育研究や、最先端の技術開発現場の情報等を取り入れた教育研究を推進することの必要性が指摘されており、産官学を通じた人材の交流を促進することが重要となっている。加えて、人文社会系と理工系が融合した学際的な教育研究などの必要性が高まるとともに、期限を限った教育研究のプロジェクトを共同で行う形態の増加や国際交流の進展などから、外部から優れた人材を一定期間招聘することを含めて、教員の流動性を高めることが求められており、任期制の導入は、このような教育研究上の要請にこたえる有効な手段と考えられる。

b.多様な経験を通じた若手教員の育成

 大学教員には、教育者としての側面と研究者としての側面があるが、教員としてのスタートの時期に、異なる経験や発想を持つ人材と交流したり、多様な経験を積むことは、その後のキャリア形成にとって大きな意味を持ち得るものと考えられる。任期制の導入により、一定期間ある機関で教育研究に従事した上で、更に他の機関をも経験し得ることとなることから、教員としての創造的な能力と、幅の広い視野が養われ、若手教員の育成に資することとなると考えられる。
 大学教員の任期制に関しては、既に、本年7月に閣議決定された科学技術基本計画において、本審議会の結論を踏まえて所要の整備等を行うこととされているほか、8月の人事院の勧告時の報告でも、本審議会等の検討結果等を踏まえて適切に対処することとされているところである。また、本年7月の学術審議会の建議「21世紀に向けての研究者の養成・確保について」においても、任期制の導入など研究者の流動性を高める措置が望まれる旨提言されている。なお、国立試験研究機関等の研究公務員については、科学技術基本計画において任期制を導入することとされ、また、前述の人事院の報告においても、研究活動の活性化を図る観点から、新たな雇用の仕組みとして、一定の場合での任期制の導入の必要性が指摘されるとともに、給与や勤務形態を含めた具体的な検討が行われることが明らかにされている。

(2)基本的方向

a.選択的任期制

 以上のような観点から、大学の教員について任期を付けることができるようにしておく必要があると考えられる。その際、各大学や学問分野ごとに実状が異なること、また、日本社会全体の人材の流動性の実態などを踏まえて、大学教員に任期制を導入するに当たっては、各大学の判断により任期制を導入し得る「選択的任期制」とし、導入の範囲や任期の期間についても、各大学の判断に委ねることとすることが適切である。

b.法制整備等の考え方

 大学教員に任期制を導入するに当たっては、大学において、教育研究上の必要性に基づき任期を付けることが適切であると判断した場合には、制度的にそのような対応ができるようにしておく必要がある。期間を区切った教育研究の実施については、前に述べたように様々な形態が見られるところであるが、今後、国公私立を通じて、以下のように大学教員に任期制を導入するためには、公務員関連法制や労働関係法制等との関係を明らかにし、制度面を含め、所要の措置を講じることが必要である。

(3)任期制の具体的な在り方

 各大学において実際に任期制を導入する場合には、大学の教育理念や実状等を踏まえ、各大学の判断により、どのような任期制を導入するかを決定できるようにしておく必要がある。
 したがって、法令上は大綱的事項のみを規定し、具体的な運用については、教員の流動性を高めることによって教育研究の活性化を図るという任期制の趣旨を踏まえて、各大学において定めることとするのが適切である。その際、恣意的な運用を避けるため、任期制の導入方法や基準等を十分検討し、学内規則等で明確にしておくことが必要である。

ア.任期制の対象教員

 任期制の対象教員については、制度上は、教授から助手まですべての職を対象とし得ることとし、その旨を法令上明文化することが適切である。
 実際にどの職に導入するかは、各大学が判断することとする。

 なお、特に、若手教員の育成の観点から、助手への任期制の導入は重要であると思われる。
 また、大学の判断で、例えば教授や助教授については任期を付さないこととしたり、一定の任期満了後は、評価に基づき、任期を定めず、定年まで在職を認めるような運用も妨げない。

イ.任期制を導入する単位、導入の方法

(ア) 任期制を導入する単位については、法令上特に定めず、各大学の判断に委ねることが適切である。その際、運用が恣意的にならないようにするとともに、教育研究の活性化等の観点から、基本的にはあらかじめ一定の組織(原則として学部・学科等)を単位として職を指定し、その職に就く者に対して任期を付けることとするのが適切である。

 指定された職に就く者全員に任期を付けることを原則とするが、学部や学科によっては、性格の異なる多様な専門分野の教員が共存していること、大講座化が進んでいることや助手については職務内容が多様であることなどから、同一組織の同じ職の中でも、その一部について任期を付けないような運用も妨げない。
 同一組織の同じ職に任期付きの教員と任期を付けない教員がいることとなる場合には、原則として、恣意的な運用を避ける観点から、任期を付けることとする教員の範囲を、教員の専門分野・職務内容などにより、あらかじめ定めておくこととするのが適切である。

(イ)また、上記(ア) のようにあらかじめ指定した職に就く者に任期を付けるだけではなく、特定の講座や教育研究プロジェクトの担当教員を、大学外部から、任期を定めて、教授、助教授等として招聘できるよう、そのような人材を採用する場合に限って任期を付けることができることとするのが適切である。

 なお、現職の教員に任期制を導入する場合は、国公立大学にあっては、任期を付けるものとして指定された職に昇任、転任する場合など任用の際に、また、私立大学にあっては、学校法人と教員が合意の上、新たに期間を定めた労働契約を締結することにより、任期を付けることができることとするのが適切である。

ウ.導入を決定する機関

(ア) 任期制の導入は、国公立大学の場合は、評議会の議に基づき学長(単科大学の場合は教授会の議に基づき学長。)が決定するものとし、その旨を法令上明文化することが適切である。

(イ) 私立大学の場合、任期制の導入については、学校法人と教員との労働契約にかかわるものであり、最終的に理事会において決定する事柄ではあるが、任期制を導入するに当たっては教育研究に従事する教員の理解を得ることが大切であり、各大学で、教育研究上の必要性等について、学長等教学側の意見を十分踏まえて行うことが適切である。

 導入の決定に当たっては、任期制導入の単位、方法のほか、任期の期間、再任の取扱い等について明確にしておく必要がある。また、決定した内容を変更する場合には、決定の際と同様の手続を経ることとするのが適切である。

エ.任期の期間

 任期の期間については、学問分野や職等によって事情が異なることなどを考慮し、各大学において定めることとする。この場合、例えば教授、助教授、助手という職ごとに異なる任期を付けることができることとするのが適切である。

 任期の期間を定めるに当たっては、教育研究の継続性や、教員の流動性を高めるという任期制導入の意義を踏まえて決定する必要がある。また、教員の教育研究の質を高める観点から、任期の途中で評価を行い、その結果を当該教員にフィードバックすることも有意義であることに留意して、期間を設定することが望ましい。
 なお、組織的な教育、研究指導等を強化することによって、任期満了により教員が異動しても、教育面の継続性を保つことは可能であると考えられる。また、研究面においても、最終的な成果だけではなく、途中経過を明らかにし、これに対する適切な評価を工夫することにより、任期制の下で長期的な研究を推進していくことができるものと考えられる。

オ.再任の取扱い等

 大学の判断により、任期満了者の再任を妨げない運用も、逆に再任を認めない運用も可能とする。
 任期制を導入するに当たっては、再任を妨げないものであるか否か(再任を妨げない場合には、必要に応じて再任後の任期の期間)をあらかじめ決定しておくこととするのが適切である。

 その際、任期制は、教員の流動性を高めることにより、教育研究の活性化を図ることを目的とするものであることから、他大学や研究機関、企業等との交流をできるだけ促す方向で、制度が運用されることが望ましい。
 また、再任を妨げない場合、個々の教員について再任の可否を判断するに当たっては、再任とは再びその職に採用するということであることから、通常の採用手続に基づき、選考を行うことになる(国公立大学の場合、教員の選考は教授会の議に基づき学長が行う。)ので、採用時にこの旨本人に明示しておくことが求められる。再任審査の時期等については、当該教員の円滑な異動という観点にも十分配慮した上で定める必要がある。
 なお、任期制を導入するに当たっては、任期を付して任用された国立大学教員の離職後の営利企業への就職制限の取扱いについて、適切な配慮がなされることが望ましい。

(4)教員の業績評価の在り方

 a.任期制の導入の有無にかかわらず、教育研究の活性化を図る上で、採用時や昇任時をはじめとして、教員の業績評価が適時に、かつ適切に行われることが重要である。特に、任期制の導入によって、任期満了後、他の大学等に採用されたり、当該大学で再任・昇任させる場合など、業績評価の機会が増えることとなるので、従来にも増して、信頼性と妥当性のある評価システムを各大学で確立することが大切である。教員が任期満了後に新しい職場に異動するに当たり評価されるのは、以前の勤務場所における教育研究等の業績であるため、その評価が適切になされることは、以前の勤務場所での任期中の教育研究等への専念を確かなものとする上でも重要である。

 b.業績評価に当たっては、大学教員が教育者と研究者の両方の側面を有していることを踏まえて、各大学において評価の在り方を工夫することが肝要である。「教員採用の改善について」の答申において既に提言したとおり、学生に対する教育機能(課外活動の指導等を含む)の充実が求められる今日、これまで以上に教育能力、教育意欲、教育上の優れた業績等について積極的に評価することが必要である。教育面の評価については、各大学が様々な工夫を行う中でその基準や方法を確立していくことが基本ではあるが、例えば、担当する授業、学生等に対する教育研究指導、教材・教育課程等の開発、学生の厚生補導といった項目について、多面的に評価することが大切である。その際、授業担当時数、休講の状況、対象が学部学生か大学院生かといったものから、同僚の評価、学生による授業評価、論文指導の状況、ファカルティ・ディベロップメント(注)への参加といった質・量両面のデータを活用することが考えられる。また、研究面の評価に当たっても、博士の学位に限らず、研究歴や業績等を広く評価の対象とすることが求められる。特に、任期制の導入によって、限られた期間内に一定のまとまりのある成果をあげることにのみ意を注ぎ長期的な視野に立った研究がおろそかにされることのないよう、研究途上の業績等も含めた広い意味での研究業績を考慮するとともに、論文の多寡ではなく、その質を重視した評価の方法を工夫することが重要である。さらに、教育や研究の面以外にも、管理運営や地域社会への貢献といった能力や業績についても適切に評価していくことが求められる。なお、評価の客観性を高める観点から、必要に応じて、当該大学以外の者に意見を求めることなども有意義である。
 これらのことは、日頃から各大学において積極的に対応すべき課題であるが、任期制の導入を契機として、より具体的な検討が進められることを期待したい。

 c.また、任期制を導入しない教育研究組織や職についても、例えば、業績評価の基準を公表した上で、すべての教員を対象として定期的に審査を行い、その結果を教育研究の活性化に結び付けていく等一層の改善努力が不可欠である。なお、近年、各大学の自己点検・評価の一環として、個々の教員の業績を公表する例が出てきていることは意義のあることであり、今後の一層の取組が望まれる。


(注)ファカルティ・ディベロップメント
 教員が授業内容・方法を改善し、向上させるための組織的な取組の総称。FDと略して称されることもある。その意味するところは極めて広範にわたるが、具体的な例としては、教員相互の授業参観の実施、授業方法についての研究会の開催、新任教員のための研修会の開催などをあげることができる。

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