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グローバル化時代に求められる高等教育の在り方について (答申) (平成12年11月22日大学審議会)

平成12年11月22日
大学審議会

はじめに

 本審議会は、平成11年11月18日に、文部大臣から「グローバル化時代に求められる高等教育の在り方について」諮問を受けて以来、基本問題検討部会を設けて、調査審議を重ねた。
 平成12年6月30日に「審議の概要」を取りまとめ公表した後、「審議の概要」に対する各界からの意見を踏まえつつ、総会及び基本問題検討部会において更に審議を深めてきたが、ここに「グローバル化時代に求められる高等教育の在り方について」結論を得たので、答申を行うものである。

【1】 我が国を取り巻く状況と高等教育の更なる改革の必要性

 今日の世界においては、社会、経済、文化のグローバル化が急速に進展し、国際的な流動性が高まっている。また、科学技術の爆発的な進歩と社会の高度化、複雑化や急速な変化に伴い、過去に蓄積された知識や技術のみでは対処できない新たな諸課題が生じており、これに対応していくため、新たな知識や専門的能力を持った人材が求められている。
 昨年6月のケルンサミットにおいては、来るべき21世紀は柔軟性と変化の世紀であり、すべての人々にとって流動性に対応するためのパスポートは教育と生涯学習であるとして、生涯にわたる学習機会の確保と、学生、教員等の国際交流の重要性が強調された。また、本年4月のG8教育大臣会合においても、知識社会においては、これまでの教育と学習の在り方に根本的な変化が求められるとした上で、生涯学習や、教育における情報通信技術の活用、学生、教員等の国際交流などを進めていくことについて合意がなされた。さらに、九州・沖縄サミットにおいても同趣旨の合意がなされた。このように、グローバル化時代に対応して教育の在り方を見直す必要性については、我が国に限らず国際的にも共通の認識となっている。
 このような中、大学等の高等教育機関は、その知的資源を世界に向けて発信し、世界の人々に対して高度な知識や技術を伝えることによって、世界に開かれた高等教育機関としての役割をなお一層果たすことが期待されている。
 本審議会は、平成10年10月の答申「21世紀の大学像と今後の改革方策について」(以下、「21世紀答申」という。)において、21世紀初頭の社会状況を展望し、この中において、我が国の高等教育が世界的水準の教育研究を展開し、その期待される役割を果たしていくために、改革に向けた四つの基本理念(1)課題探求能力の育成を目指した教育研究の質の向上、2)教育研究システムの柔構造化による大学の自律性の確保、及びそれを支える3)責任ある意思決定と実行を目指した組織運営体制の整備、さらにこうした大学の取組についての4)多元的な評価システムの確立による大学の個性化と教育研究の不断の改善)と総合的かつ具体的な改革方策を示し、各大学においてはこれを踏まえて、個性化・多様化に向けた取組を推進し、社会的存在としてその責任を十分に果たすべく改革を進めているところである。
 しかしながら、その後も、世界は目まぐるしく変化を遂げつつある。第1に、インターネット等の情報通信技術の急速な発展は、「知」の創造や伝達の方法を大きく変化させつつある。第2に、これと関連して、グローバル化は、経済界のみならず社会や個人の様々な営みにまで波及し、国境を越えたあらゆる活動の増加と拡大をもたらしている。第3に、各国におけるグローバル化に対応した教育改革がなお一層進展しており、欧米諸国をはじめとする諸外国の大学においては、グローバル化に適応する高等教育システムの構築を目指して、教育内容の見直し、情報通信技術の活用をはじめとする様々な新機軸の検討が開始されつつある。
 一方、中央教育審議会答申「初等中等教育と高等教育との接続の改善について」(平成11年12月)においては、大学教育における今後の課題として、国際化や生涯学習社会の一層の進展に対応した大学の在り方についての検討が求められている。
 このような状況を踏まえ、今後、我が国の高等教育機関が、世界に開かれた高等教育機関としてその役割を十分に果たしていくためには、特に、高等教育制度の国際的な整合性を図り、教育研究のグローバル化を推進するとともに国際競争力を高めることが重要であり、これを通じて質の高い高等教育を提供し、世界のあらゆる分野で活躍し得る能力を持った人材の育成に貢献していくことが求められる。
 なお、高等教育機関における教育及び研究は表裏一体のものであることから、本答申では「教育研究」という用語を用いている。また、グローバル化と科学技術の進歩に対応しつつ世界最高水準の研究を推進することは、我が国の高等教育機関にとっての極めて重要な課題であるが、このことについては別途検討する場もあることから、本答申では、教育面を中心に検討し、専ら研究にかかわる事項については必要に応じて触れるにとどめることを付言しておきたい。

【2】 グローバル化時代において高等教育が目指すべき改革の方向

 今後、社会、経済、文化の地球規模での交流が進み、国際的な協調、共生さらには競争の関係が増大する時代において、我が国の高等教育機関が世界に開かれた高等教育機関として期待される役割を果たすためには、21世紀答申に示された基本理念を踏まえつつ、その後のグローバル化の進展と高等教育の環境変化を踏まえ、特に、高等教育制度及び教育研究水準の両面にわたって、国際的な通用性・共通性の向上と国際競争力の強化を目指した改革を進めることが求められる。
 そこで、我が国の高等教育の国際的な通用性・共通性の向上と国際競争力の強化を図るためには、
 1 グローバル化時代を担う人材の質の向上に向けた教育の充実
 2 科学技術の革新と社会、経済の変化に対応した高度で多様な教育研究の展開
 3 情報通信技術の活用
 4 学生、教員等の国際的流動性の向上
 5 最先端の教育研究の推進に向けた高等教育機関の組織運営体制の改善と財政基盤の確保
の五つの視点に立って改革を進めることにより、我が国の高等教育機関が世界に開かれた高等教育機関として、その社会的責任を果たしていくことが重要である。
 この五つの視点のうち、第1及び第2の視点においては、国際的な水準を視野に入れつつ、我が国の大学における教育内容・方法等のより一層の改善充実の方向性を示すことを内容としている。また、第3及び第4の視点においては、インターネットの急速な普及をはじめとする情報通信技術の革新、人や情報の国境を越えた交流の急速な進展という状況の中で、大学教育において情報通信技術を活用し、国際交流をより円滑に進めるための具体的方策を示すことを内容としている。さらに、第5の視点では、第1から第4までの視点に立って示された大学の教育内容・方法等の革新を進める上で、その基盤となる大学の組織運営や財政について、より一層の改善充実の方向性を示すことを内容としている。
 なお、以下に示す改革方策は、全大学で一律に進めることを推奨するものではなく、各大学がそれぞれの理念・目標に従って個性化・多様化をより一層進める中で、適切に取り組んでいくことが期待される。その際、それぞれの大学が、最先端の教育研究の実施、幅広い教育機会の提供等各々の担う役割や、学問分野ごとの特殊性などを踏まえ、個性的な方策を講じることが必要である。
 また、大学学部及び大学院のみならず、短期大学及び高等専門学校についても、その特性を踏まえつつ、これらの改革の趣旨を生かした取組を進めることが期待される。短期大学及び高等専門学校については、その制度上の位置付け等について別途検討を行っているが、その際にもこのようなグローバル化時代への対応という観点を踏まえて検討する必要がある。

【3】 我が国の高等教育の国際的な通用性・共通性の向上と国際競争力の強化を図るための改革方策

1 グローバル化時代を担う人材の質の向上に向けた教育の充実

(1)グローバル化時代に求められる教養を重視した教育の改善充実

 グローバル化時代において、ますます価値観が多様化する中で、世界中の様々な人々と共生し、地球社会の一員として活躍する人材には、その時代と活躍の舞台にふさわしい教養と専門的知識が必要である。社会全体としても教養の重要性が改めて指摘される中で、我が国の高等教育においては、新たな教養教育の在り方を考慮した教育の推進が求められる。

(高い倫理性と責任感を持って判断し行動できる能力の育成)

 グローバル化時代に生きる新しい世代には、地球社会を担う責任ある個人としての自覚の下に、学際的・複合的視点に立って自ら課題を探求し、論理的に物事をとらえ、自らの主張を的確に表現しつつ行動していくことができる能力が必要とされる。さらに、その根底には、深く広い生命観や人生観の形成、自らの行為及びその結果に対する深い倫理的判断と高い責任感を持って行動する成熟度が求められる。
 各大学においては、グローバル化時代に求められるこれらの能力を育成し高めることをあらゆる教育活動の基本として、具体的な教育課程の編成、実施等を推進すべきである。その一つの例として、実際の教育の舞台である授業において、現実に社会が直面している課題に即して事例研究を行い、学生が自分の知識や人生を社会との関係で位置付けてみる機会を与えることが考えられる。その際、討論やプレゼンテーション等を積極的に取り入れたりすることを通じて、物事の多面的な理解と総合的な洞察力を涵養(かんよう)する方向で、教育内容・方法の改善を図る必要がある。

(自らの文化と世界の多様な文化に対する理解の促進)

 異なる歴史的・文化的背景や価値観を持つ人々と共生していくためには、自らがよって立つ国や地域の歴史や伝統、文化を深く理解し、異なる文化的背景を持つ人々に対し、これを適切に説明し理解を求めたり、主張したりすることのできる能力を学生が養うことが必要である。また、異なる歴史的・文化的背景や価値観の存在を視野に入れつつ、地球的規模で物事を考える基礎を培う観点から、世界の多様な国や地域の歴史や伝統、文化に対する理解を深めさせることが重要である。

(外国語によるコミュニケーション能力の育成)

 グローバル化が進展する状況においては、外国語を駆使する能力が不可欠である。とりわけ英語は、現状において国際共通語として最も中心的な役割を果たしており、英語力は後述の情報リテラシーと併せてグローバルな知識や情報を吸収、発信し、対話、討論するための基本的な能力である。
 各大学においては、英語をはじめとする外国語によるコミュニケーション能力を重視して、外国語を聞く力や話す力の一層の向上を図るとともに、外国語で討論したりプレゼンテーションを行ったりできる能力を育成するための教育内容・方法の工夫改善が必要である。
 また、TOEFL、TOEIC等国際的通用性の高い試験の成績に応じて単位の認定を行ったり、これらの試験の成績を各大学の教育目標に応じて入学者選抜に利用することなども考えられる。
 今後は、特に国際共通語としての重要度等が高まる言語あるいは近隣のアジア諸国の言語の教育について積極的に改善に取り組むことが必要である。

(情報リテラシーの向上)

 情報通信技術の飛躍的発展は「知」の創造や伝達の方法を大きく変化させるとともに、価値観や創造性の意味にまでも変容を迫っている。このような中で、大学教育においては、学生に、グローバルな広がりで、主体的に情報を収集し、分析し、判断し、創作し、発信する能力を養うことが不可欠である。その際、情報モラルや、情報機器及び情報通信ネットワークの機能にかかわる基本的知識や能力の習得を重視することが必要である。

(科学リテラシーの向上)

 科学技術の最近の進歩は未曾有(みぞう)のものであり、それに伴って、高等教育に携わる教員と学生にとって必要な科学リテラシーは大きく変化しつつある。とりわけ遺伝子工学等の生命科学の革新や地球環境問題の発生などの中で、社会人に求められる科学的な基礎知識の内容も大きく変化し、倫理的な判断を必要とする問題も増えてきている。
 各大学においては、科学技術の分野を専門としていない学生にも、自然科学に関する基礎知識とともにそれに基づく広い視野からの判断力を養うことが必要であり、また、科学技術の分野を専攻する学生に対しても、その専攻分野に限定されない広い科学的知識と判断力を身に付けさせることが不可欠である。

(2)広い視野を持った人材の育成を目指す柔軟な教育システム

(学生の進路選択の幅の拡大)

 社会の高度化、複雑化に伴い、社会の求める人材が多様化し、学生自身が人生の進路として目指す方向も多様化している。学生が将来の進路を見定めそれを意識しつつ適切に修学を果たすことができるようにするためには、学生が幅広い分野の教育研究に触れつつ、社会意識を深め、社会的要請を的確に認識しながら、自らの興味・関心と能力・適性等に基づいて、修得すべき学問を見極めていく時間を持てるようにすることが必要である。
 我が国においては、学生が大学に入学する際に、学部のみならず、学科まで決める必要がある場合もあり、実際に入学してから、自らの興味・関心と修得する学問との間に齟齬(そご)を感じる学生が少なくない。このため、学生の募集単位を大くくりにし、入学後一定期間をおいて、学生の進路に対する考えがより明確になった段階で希望に応じて専門に分けたり、学部間の移動を行いやすくしたりするなどの工夫を行う必要がある。
 また、大学間の転入学をはじめとして、短期大学、高等専門学校及び一定の水準の専門学校からの大学への編入学等、学生の流動性を一層高めることも期待される。

(広い視野を持った人材の育成を目指す教育プログラムの提供) 

 学問分野の専門化や細分化に伴い、ともすれば学生の受ける教育内容が狭い範囲に限定される嫌いがある。各大学においては、学生の立場に立って、入学してくる学生の多様な履修歴や卒業後の多様な進路を考慮しつつ、学生に高い付加価値を適切に身に付けさせる体系的な教育課程の編成に留意することが必要である。
 また、平成3年の大学設置基準等の大綱化以来、多くの大学でカリキュラム改革が進んでいるにもかかわらず、教養教育の取扱い方についての学内の議論が十分でなく、教養教育が軽視されているのではないか、あるいは、このような状況と進学率の上昇に伴う学生の能力や適性の多様化などとがあいまって、大学生と大学卒業者の教養の低下が進んでいるのではないかとの危惧(きぐ)の声がある。一方、グローバル化が進展する中では、世界を舞台にして活躍し社会で指導的な役割を果たす、深い教養と高度の専門性に裏付けられた知的リーダーシップを有する人材が求められる。各大学においては、21世紀答申で示した課題探求能力の育成という考え方も参考としつつ、新しい時代の教養とは何かを問い直し、これを重視する方向で学部教育の見直しを検討することが望まれる。このことは、今後の専門大学院や研究者養成型の大学院の展開を視野に入れると、特に期待されるところである。
 今後、各大学において、特定の分野に偏らない広い視野を持った学際的な人材を育成するためには、学部や学科の枠を越えた横断的な教育課程を編成して提供したり、学生が所属している学部や学科の枠を越えて授業を選択し履修できる仕組みを整備、充実したりする必要がある。米国の大学における主専攻・副専攻のように、複数の異なる分野の学部や学科の専門科目を同時に履修できるような教育課程上の工夫を行うことも必要である。
 また、各大学の理念・目標に基づく主体的判断により、米国におけるリベラルアーツ・カレッジのような教養教育を中心とした幅広い教育プログラムを持つ学部への改組転換を促進し、これらの学部等から様々な分野の大学院に進学する機会を与えることについても検討する必要がある。
 さらに、今後、学生の多様な能力や適性に対応したきめ細かな教育プログラムを提供する一環として、社会で指導的な役割を果たす知的リーダーシップを有する人材を育成する観点から、各大学においては、各々の理念・目標に応じて、特別な教育課程や体制を工夫する改革を促進する必要がある。

(3)教育方法、履修指導の充実

 大学への進学率は急速に上昇しつつあり、学生の能力や適性の多様化が進んでいる。一方、グローバル化の進展により、大学の教育研究の国際的な通用性・共通性の向上と国際競争力の強化を図ることが求められている。このため、各大学においては、当該大学の学生の実態を十分把握し適切な教育目標を設定した上で、21世紀答申で提言した、責任ある授業運営と厳格な成績評価の実施など教育方法等の改善や、秋季入学の拡大、セメスター制の活用等の取組を更に徹底するとともに、とりわけ次のような教育方法や履修指導の改善に向けた取組を行うことが必要である。 

(学習指導・履修指導体制の充実)

 国際競争が激しさを増す社会においては、自分が何において優れているかを自ら見極め、積極的にその能力を発揮していくことが重要となる。このことを踏まえ、各大学においては、学生に自らの能力を認識させ、これを引き出すことができるよう、個別の学習指導の充実や少人数教育の促進とともに、授業を受ける学生に対して教員が相談に応ずる専用の時間帯(オフィス・アワー)を設けたり、ティーチング・アシスタント等を活用したりするなど、きめ細かな学習指導を行う体制を充実する必要がある。また、学生の能力や適性が多様化することに伴い、これに応じた履修メニューの作成が求められることから、きめ細かな助言やガイダンスを行うために必要なアドバイザーなどの専門的なスタッフを設け、学生の履修相談に応ずるなど、学生の履修指導体制を整える必要がある。

(実体験の重視や職業観の涵養(かんよう))

 多様な文化や価値観を受容し、その中で自らの考え方を主張し、行動できる心豊かな人材を育てるためには、知識の修得だけでなく、多様な文化に触れたり、多様な価値観を持つ人々と交流を行ったりするなどの実体験を持つことが必要である。
 そのためには、各大学において、ボランティア活動等の社会貢献活動を授業に位置付けるなどの取組を進めるとともに、国内外でのフィールドワーク等の機会を充実することが必要である。理工系学部においては、ものづくり教育の重要性にかんがみ、実験・実習等に力点を置いた実践的な教育を充実する必要がある。
 また、学生が将来への目的意識を明確に持てるよう、職業観を涵養(かんよう)し、職業に関する知識・技能を身に付けさせ、自己の個性を理解した上で主体的に進路を選択できる能力・態度を育成する教育(キャリア教育)を、大学の教育課程全体の中に位置付けて実施していく必要がある。また、現実的な職業観を涵養(かんよう)するためのインターンシップについては、ある程度長期間にわたって実施する取組が必要である。

(4)教員の教育能力の向上及び教育の質的向上を図るための評価・認定

(教員の教育能力や実践的能力の重視)

 大学が社会の多様な要請にこたえ、質の高い教育を提供するためには、教育に携わる教員の教育能力や実際の社会経験によって培われた実践的能力を重視する必要がある。また、従来の教員の評価は、研究能力に偏する嫌いがあるとの指摘があるため、大学設置基準等における教員の資格については、教育能力や実践的能力を従来以上に重視する方向で見直す必要がある。大学設置基準等の運用についても、同様の方向で見直すことが必要である。
 また、各大学における教員の採用選考においても、教員が作成した教科書、教材等、授業科目に関するシラバス案、あるいは模擬授業などにより、対象となる教員の職務内容に応じて、教育能力や実践的能力を具体的に評価することが必要である。
 教員の教育能力の向上のためには、各大学において、昨年度新たに制度化されたファカルティ・ディベロップメント(大学の授業の内容及び方法の改善を図るための組織的な研究及び研修)の実施を推進する必要がある。また、教育課程の編成、実施、個々の教員の授業運営、成績評価等教育活動における一連の過程に関して、教員が、随時、意見や情報を交換し、それらの改善を検討する場を設けることも、教員の教育者としての意識を高めると同時に教育の質の向上を図る上で大きな効果があると考えられる。
 さらに、各大学においては、大学院生がティーチング・アシスタントとして授業の補助を行う機会などを活用して、将来の大学教員としての指導力を育成するための努力をすることが必要である。

(教育活動に関する大学の自己点検・評価の推進)

 各大学においては、教育の質の向上を不断に図る観点から、学生の卒業時の質の確保に向けた教育機能の充実強化の実施状況を常に自ら評価することが重要であり、自己点検・評価の取組を更に推進する必要がある。この場合、大学として、教育活動の中核である授業の実態を確実に把握することが基本であり、その上で、大学の組織的な教育活動に対する評価及び個々の教員の教育活動に対する評価の両面から評価を行うことが重要である。その際、教育活動の改善に向けた組織的な取組や個々の教員の努力を多様な視点から適切に評価し、ファカルティ・ディベロップメントの改善充実、優れた教員の顕彰や処遇改善を行うことなどを通じて、評価結果を教育の質の向上に着実に生かしていくことが必要である。
 さらに、学生の学習意欲の向上に資するため、学生にとって授業をより分かりやすくするための工夫を行うなど、学生の視点に立った授業改善を行うことが必要であり、これに役立てることを目的として、各大学においては、学生による適切な授業評価を実施するとともに、その結果の公表等を通じて教員の教育改善への取組に生かしていくことが重要である。さらに、在学生に限らず、卒業生の社会での実際経験を踏まえた上での意見を聴取し、これを授業等の改善につなげる工夫も考えられる。
 21世紀答申でも指摘しているように、厳格な自己点検・評価は、大学の教育研究活動が自主的に行われることに対して社会の信頼を確保するために必要不可欠なものである。また、国際的に見ても大学が大学として存在する上で当然に具備すべき基本的な仕組みである。各大学においては、自己点検・評価の在り方を不断に見直し、学長のリーダーシップの下、自己点検・評価を実施し、その結果を教育活動の内容・方法等の具体的な改善に結び付ける仕組みを整備することが求められる。

(大学評価・学位授与機構の評価をはじめとする教育に関する多元的な評価の推進)

 本年4月、透明性・客観性の高い第三者評価を推進すべく、大学評価・学位授与機構が設けられた。今後、各大学の教育の質の向上に資するため、同機構においては、産業界をはじめとする社会の多様な視点や国際的な視点を踏まえつつ、教育評価事業を推進するとともに、そのために必要な評価体制の整備、確立を図る必要がある。また、評価結果は、各大学にフィードバックされることにより、各大学の教育の質の向上に着実に役立てられるとともに、評価結果が教育を受ける学生自身を含め、社会に対して分かりやすく示されることにより、幅広く活用されることが期待される。
 さらに、大学団体、学協会、大学基準協会等の様々な団体によるそれぞれの特質を生かした評価を一層充実、普及することにより、大学教育に関する多元的な評価システムが確立されることが望まれる。

(各種専門職業教育のアクレディテーション・システムの導入・支援)

 現在、我が国においては、技術者教育プログラムのうち一定水準を確保しているものについて認定を行うことを通じて教育の質を高めるとともに、当該認定システムを国際的な共通標準に準拠させる仕組みを導入する動きがある。このような取組は我が国の大学教育の国際的な通用性・共通性の向上や国際競争力の強化を図る上で重要な役割を果たすものとなると考えられる。
 今後、我が国において、このような技術者教育をはじめとする様々な専門職業教育の分野でのアクレディテーション(適格認定)・システムが導入されることは、教育の質を向上させる観点から望ましいものであり、その普及、支援を図る必要がある。

2 科学技術の革新と社会、経済の変化に対応した高度で多様な教育研究の展開

(1)国際的な魅力と競争力を備えた教育研究の推進

(卓越した教育研究拠点の形成と評価に基づいた資源の重点的配分)

 科学技術の急速な進展を踏まえつつ、世界に伍(ご)する教育研究を積極的に展開していくためには、卓越した教育研究拠点の形成を図ることが重要であり、卓越した実績をあげることが期待できる大学院や、教育研究上の新たな取組を行っている大学院に対し、客観的で公正な評価を行うことを通じて資源の重点的配分を行うことが必要である。

(大学院の教育研究の質的向上と創造性・独創性豊かな優れた若手研究者の育成)

 科学技術創造立国の実現に向けた世界的水準の教育研究を推進するとともに、様々な分野で国際的に通用する若手研究者を育成するためには、学部段階から一貫して課題探求能力の育成を重視した教育を進めるとともに、大学院の教育研究の高度化・多様化を図ることが求められる。特に、独創的・萌芽(ほうが)的な研究が創出される体制づくりを進めることが不可欠であり、基盤的分野の充実を基礎としつつ、先端的・学際的分野を中心とする研究科・専攻等の整備を一層充実させる必要がある。
 また、各大学院においては、科学的な思考法や研究の方法論を身に付けさせるための体系的な教育を通じて、学生に、論理的思考能力や実践的研究能力を涵養(かんよう)するとともに、各課程の趣旨、目的に即して課程修了までのプロセスを明確化するなどにより、課程制大学院としての充実した教育研究指導を行い、教育研究の国際競争力の強化と世界的水準の教育研究の展開を目指して、教育研究の更なる質的向上を図る必要がある。
 なお、その際、研究分野の専門化や細分化が進む中で、大学院における教育研究指導が狭いものとならないよう留意することが求められる。

(学部段階における幅広い教養教育を基礎とした専門大学院の充実による高度専門職業人の養成)

 社会、経済の構造変化と国際的な相互依存関係、世界的規模での競争の中で、職業人として指導的な役割を果たす人材を育成するためには、学生に、幅広い教養を身に付けさせた上で、職業上必要な高度な専門的知識・技術を習得させることが重要である。このため、学部段階において、広い視野を持った人材の育成を目指す教養教育を中心とした教育プログラムの提供を推進しつつ、専門大学院の設置を促進し、学部と大学院を通じて高度専門職業人を養成するシステムを確立する必要がある。また、学部段階における幅広い教養教育を受けた者を対象として、高度専門職業人の養成を目的とし、職業資格との関連も視野に入れた新しい形態の大学院制度を検討するとともに、このことと関連していわゆる専門職学位の創設についても検討する必要がある。

(2)社会の要請にこたえた柔軟な教育の展開

(学部・研究科の枠を越えた教育課程の機動的な提供)

 社会の変化を踏まえた学生の多様な学習ニーズに応じた柔軟な教育プログラムを積極的に提供する観点から、各大学においては、例えば米国における一定期間に二つの学位の取得を目指すジョイント・ディグリー・プログラム等のように、複数学部・研究科の共同による学際的プログラムを推進するなど学部・研究科の枠を越えて教育課程が機動的に提供されるような工夫が必要である。その際、複数の大学がグループを構成して協定に基づいて相互に連携協力を行う、いわゆるコンソーシアム方式により、授業科目の提供、教員や学生の交流等を組織的に進めることも、有効な方策であると考えられる。

(企業と大学との共同による教育プログラムの開発)

 専門職業人の養成に当たっては、大学における教育研究と社会における実践や実務との調和を保つ観点が重要であり、各大学は、地域社会や産業界との情報交換に努め、何が大学に求められているかを敏感に受け止めるとともに、学生に実践や実務に必要な能力を身に付けさせる観点から、企業と共同して教育プログラムの開発を推進することが必要である。

(3)生涯学習ニーズへの対応

(社会人の学習環境の充実)

 大学における教育研究活動の成果を広く社会に開放し、生涯学習の振興に資することは、高等教育と社会との往復型の生涯学習を推進する上で重要なことであり、大学が果たすべき役割として明確に位置付けることが求められる。
 各大学においては、社会人が最新かつ高度の知識・技術を習得するために必要な教育を受けやすくするため、企業や社会の要請を十分考慮しつつ、インターネット等の情報通信技術を活用して、社会人が利用しやすい教育提供の形態を整備する必要がある。また、社会人に対して提供される学習機会の積極的な活用を促進するため、教育プログラムの内容を分かりやすく示すなど適切な情報提供に努めたり、社会人が必要とする教育プログラムを的確に選択できるよう社会人の履修相談に応ずる専門的なスタッフを設けたりするなど、社会人の学習支援体制を整える必要がある。
 あわせて、社会人の大学教育へのアクセスを拡大するため、社会人特別選抜の実施、科目等履修生制度の活用、夜間大学院の設置をより一層推進するとともに、放送大学の整備充実や同大学院の創設に向けた準備を進めていくことが必要である。
 なお、現在、通信制の大学院については、修士課程のみ開設が認められているが、社会人が利用しやすい高度な教育提供の形態を整備する観点から、今後、博士課程の開設について検討することが必要である。

(単位累積加算制度の導入の検討)

 大学における単位の累積については、これまで、1)他の大学又は短期大学における授業科目の履修単位、2)大学以外の教育施設等における学修、3)入学前の既修得単位、等について、当該大学における授業科目の履修とみなして合わせて60単位までの単位を与えることができる制度や、短期大学や高等専門学校の卒業者等が大学等において更に一定の学修を行った場合には大学評価・学位授与機構が学士の学位を授与する制度を導入してきた。また、平成10年からは、科目等履修生として大学で一定の単位を修得した者がその大学に入学する場合には、修業年限の2分の1を上限として、しかるべき期間を在学期間に算入することができるようになったところである。
 このように大学における単位の累積については、卒業要件単位数のおおむね半分、あるいは在学期間の半分を限度として既に認められ、実施されている。
 こうした制度を更に進めた、いわゆる単位累積加算制度(複数の大学等で随時修得した単位を累積して加算し、一定の要件を満たした場合、大学卒業の資格を認定し、学士の学位を授与する制度)については、大学評価・学位授与機構において専門的な調査研究を行ってきたところであるが、これを国際的に通用するものとして整備するためには、なお検討を要するとされている。今後、学習者自身による主体的な学習設計を尊重しながらも、学位授与にふさわしい体系的な履修を確保する観点から、1)どのような専攻分野を学位の対象とするか、2)学位の基礎となる単位の体系的な修得をどのように確保するか、3)学位授与に至るまでの様々な段階で必要な履修指導をどのように行うか、など制度の基本となる部分や、4)単位累積加算制度に基づき学位授与を行う機関としてどのような機関が適当であり、5)学位授与を行う体制をどのように整備していくか、などの組織体制の在り方について、更に検討する必要がある。

(パートタイム学生の受入れの検討)

 今後、我が国の大学が生涯学習機関として社会人の受入れを積極的に推進するに当たり、正規の学生としてパートタイム学生を受け入れられるようにすることには、大きな意義があると考えられる。
 パートタイム学生の受入れを具体的に推進するに当たっては、フルタイム学生の学修の在り方を明確にした上で、大学に在学することが可能な期間や、一年間あるいは一学期中に履修し修得することが可能な単位数の設定など、パートタイム学生の学修の在り方を検討することが必要である。また、パートタイム学生に提供する教育の質を確保するとともに、学生の学修上の便宜に配慮する観点から、収容定員、授業料等の在り方などについて、検討する必要がある。もとより、これは単に修学形態の区分であり、大学による効率的な教育提供を阻害したり、フルタイム学生とパートタイム学生とが共に学ぶことによって豊かな人間形成が図られるという長所を損なったりすることのないよう留意しなければならない。また、地域に密着して生涯学習機会を積極的に提供することが期待されている短期高等教育機関や、社会人の専門的な知識・技術の向上等に大きな役割を果たすことが期待される大学院においては、特に、パートタイム学生の受入れを検討する必要がある。

3 情報通信技術の活用

(情報通信技術の発展と大学)

 昨今の情報通信技術(IT)の発展は、「知」の創造や伝達の方法、さらには価値観まで大きく変化させている。新しい情報通信技術により大量の情報が国境を越えて瞬時に流通することが可能となり、このことが今日、社会、経済、文化のグローバル化が急速に進展する上での基礎となっている。
 情報通信技術の発展は、大学における教育研究活動の在り方についても、その全般にわたって大きな変革をもたらす可能性を持つ。例えば、教員や学生が入手することができる情報量が飛躍的に増大することにより、教育研究の内容が豊富化すること、従来、専ら教室や研究室で行われてきた教育研究活動について時間的・地理的な制約が取り払われることにより、海外を含め学外の学生や研究者との交流の機会や職業人などの学習の機会が大幅に拡大することなどが期待される。
 また、大学がその知的活動により社会をリードし、その発展を支えていくという観点からは、大学が情報通信技術に関する研究開発、この分野での専門的な人材の育成、情報モラルを含めた情報リテラシーの向上などの面で主導的な役割を果たしていくことが強く求められる。さらに、このような取組を推進するために、大学の情報通信基盤の整備を進めていくことも重要な課題である。
 本答申では、情報リテラシーの向上等については、既に第1の視点において示したところであり、ここでは、今後の大学教育において、新しい情報通信技術の特性を踏まえつつこれを積極的に活用するために必要な具体的方策を示すこととする。
 これまで、情報に関する研究の面を中心として、学術審議会の建議「情報学研究の推進方策について」(平成10年1月)において提言がなされており、国全体として、あるいは各大学・研究機関の個別の取組により、大学学部や大学院における情報関係の学部・学科、研究科・専攻等の整備、メディア教育開発センターを中心とする衛星通信大学間ネットワーク構築事業等の推進、国立情報学研究所の創設、学術情報ネットワーク(SINET)の整備やその高度化・高速化、各種学術データベースの整備などが積極的に進められている。
 今後は、情報通信技術の進展の動向等を踏まえつつ、これらの施策を更に推進するとともに、高度情報通信ネットワーク社会の形成に向けて、各大学等の活動を支援するため、国として総合的、戦略的な取組を進めていくことが求められる。

(1)大学教育における情報通信技術の活用の在り方

1)基本的考え方
(大学教育と情報通信技術)

 大学は、単に知識を教授するだけではなく、人格形成期にあたる青年期の学生にとっては、教員や他の学生との触れ合いや相互の交流を通じて人間形成を図る大切な場であるという考え方に立って、キャンパスにおいて直接の対面授業を行うことを基本としており、その重要性は今後とも変わることはない。
 一方、衛星通信やインターネット等の情報通信技術を大学教育において活用することは、教育内容を豊かにし、教育機会の提供方法を変え、大学教育への一層のアクセス拡大に資するものであり、新しい社会的価値観の健全な創出に重要な役割を果たすものである。
 情報通信技術の発展に関連しては、人間関係の希薄化や情報モラルの問題なども指摘されているが、こうした負の側面への対応に留意しつつも、迅速かつ高度な情報通信技術を大学教育において積極的に活用して、大学教育の内容や方法を高度化するとともに、国民に対し学習機会をより広く提供することにより人々の生涯学習ニーズに適切にこたえ、さらに、国境を越えて知的資源を発信することにより知的国際貢献を果たしていくことは、大学における教育研究活動を革新していく上で重要なことと考える。
 ここでは、近年普及が著しいインターネット等の情報通信技術を中心として、大学教育における活用の在り方について、提言を行うこととする。しかし、情報通信の分野における技術の進展は日進月歩であるため、制度上の諸問題については随時見直しを行っていく必要がある。各大学においても、新しい情報通信技術を積極的に活用し、大学の教育内容・方法の改善を進めることが求められる。
 以下、大学学部における取扱いを中心に述べるが、特段の記述がない事項については、大学院、短期大学、高等専門学校についても同様の取扱いとすることが適当である。

2)大学の授業等における情報通信技術の活用

 近年の情報通信技術の発展により、インターネット等の新しい技術を大学教育において様々な形で組み合わせて活用し、後述する遠隔授業の活用と併せて、各大学の授業内容の豊富化・高度化や授業時間外の学習支援の充実を図ることが期待されている。

(情報通信技術の活用による授業内容の豊富化・高度化)

 情報通信技術の発達と普及は、教員と学生の間のみならず、授業が行われている教室と国内あるいは海外の各地域の高等教育機関を結ぶことを可能とし、また、国内あるいは海外の各地域の様々な情報や資料を入手することを容易なものとしている。各大学においては、このようなインターネットをはじめとする新しい情報通信技術の有する機能を授業において積極的に活用し、授業の内容を豊富化・高度化する工夫を行うことが望まれる。

(情報通信技術の活用による授業時間外の学習支援)

 情報通信技術は、学生の授業時間外の学習を支援するために活用することも可能である。本来、単位制度は授業時間外の十分な学習を前提としているものであることを踏まえ、単位の実質化を図るための教育方法上の工夫として、各大学において、インターネットをはじめとする新しい情報通信技術を活用し学生の学習支援に努めることが望まれる。

3)遠隔授業の在り方の見直し

 遠隔授業については、後述するように、既にテレビ会議式の授業が、一定の要件の下、直接の対面授業と同様に取り扱われているが、近年の急速な情報通信技術の発達とその普及により、インターネット等の情報通信技術を活用した授業(以下、「インターネット等活用授業」という。)についても、きめ細かな学習指導が行われることにより、全体として直接の対面授業と同等の教育効果を確保することができると考えられる。
 インターネット等の情報通信技術は、知識や技術の新しい伝達手段として大きな可能性を有するものであり、その活用により、学生が必要なときに情報を引き出して自らのペースで学習を進めたり、電子メール機能等を活用して適時に教員との間や学生相互で意見交換を行ったりするなど、学習者主体の学習を促進することができるものと考えられる。
 今後は、こうした状況等を踏まえて、通信制の教育において遠隔授業により修得することのできる単位数を見直すとともに、インターネット等活用授業を遠隔授業として位置付ける方向で通信制及び通学制の授業方法を見直すことが適当である。
 なお、今後の情報通信技術の発展を踏まえつつ、将来的には、卒業に必要な単位をどのような形態の授業方法により修得させるかは、各大学の教育方法の選択の問題としてとらえることとし、通学制と通信制の区別の在り方について見直す方向で検討することが必要である。

(通信制における取扱い)

a)遠隔授業により修得することのできる単位数の見直し
 現在、通信制の大学においては、通学制の場合と同様に、人間形成に資するなどとの考え方の下、卒業に要する単位のうち20単位以上は直接の対面授業によることとしているが、このような対面教育の併用は、今後とも重要である。
 しかしながら、通信制は、そもそも職業人など通学が困難な者に対して広く高等教育の機会を開く観点から設けられた教育提供の形態であり、一定の単位を直接の対面授業により修得することは、とりわけ職業人などにとっては必ずしも容易ではなく、高等教育と社会との往復型の生涯学習を推進する上では改善の余地があると考えられる。
 一方、情報通信技術の発展により、直接の対面授業以外の方法でもきめ細かな学習指導を行うことが可能となってきており、米国においては、メンターと呼ばれる学習指導者による学習指導体制を確保しつつ、主に職業人を対象としてインターネットを活用した授業のみで学位取得が可能な大学教育が展開されつつある。いつでもどこでも学習が可能な、職業人がアクセスしやすい教育システムの構築は、世界的に共通の課題となっている。
 以上のことから、今後、通信制の大学においては、社会人の学習ニーズに柔軟にこたえる通信制本来の役割にかんがみ、従来の直接の対面授業による修得が必要な20単位についても、遠隔授業により修得することができるものとすることが適当である。このことにより、卒業に必要な単位(124単位)すべてを遠隔授業により修得することも可能となる。
 ただし、平成9年12月の答申「「遠隔授業」の大学設置基準における取扱い等について」において示したとおり、直接の対面授業には、教員と学生や学生相互の触れ合いなどによる人間形成の効果があると考えられることから、高等学校を卒業して実社会での職業経験を経ずに大学教育を受ける青年期の学生などに対しては、各大学の定める範囲内で、直接の対面授業を履修させる機会を与えることが望ましい。

b)インターネット等活用授業の遠隔授業としての位置付け
 現行の大学設置基準では、遠隔授業について、「文部大臣が別に定めるところにより、多様なメディアを高度に利用して、当該授業を行う教室等以外の場所で履修させることができる」と定めている。この規定を受けた文部省の告示においては、テレビ会議式の遠隔授業に関する要件が定められている。具体的には、次の要件のいずれをも満たすもので、大学において、直接の対面授業に相当する教育効果を有すると認めたものであることとされている。
 ア 文字、音声、静止画、動画等の多様な情報を一体的に扱うもので、同時かつ双方向に行われるもの
 イ 授業を行う教室等以外の教室、研究室又はこれらに準ずる場所において、履修させるもの
 インターネット等活用授業については、その特性にかんがみ、直接の対面授業におけるような同時性・双方向性がなくとも、全体としてそれと同等の教育効果が確保されると評価することが可能である。具体的には、次の要件をすべて満たすもので、大学において、直接の対面授業に相当する教育効果を有すると認めたものを遠隔授業として位置付けることが適当である。
 イ 文字、音声、静止画、動画等の多様な情報を一体的に扱うもの
 ロ 電子メールの交換などの情報通信技術を用いたり、オフィス・アワー等に直接対面したりすることによって、教員や補助職員(教員の指導の下で教育活動の補助を行うティーチング・アシスタントなど)が毎回の授業の実施に当たり設問解答、添削指導、質疑応答等による指導を行うもの
 ハ 授業に関して学生が相互に意見を交換する機会が提供されているもの
 なお、インターネット等活用授業についても、1単位が45時間の学修を要する教育内容をもって構成されるべきことは、対面授業の場合と同様である。また、こうした授業を実施する大学についても、正課外の活動を含めた教員や学生相互の触れ合いなどを考慮すると、現在の設置基準に定める校舎等の所要の施設を備えることが必要と考えられるが、今後の実施状況等を踏まえつつ、その基準の在り方について必要に応じ検討することが適当である。

(通学制における取扱い)

 通学制の大学においては、直接の対面授業を基本としており、これに相当する教育効果を有すると認められる一定の態様の遠隔授業については、卒業に要する単位のうち60単位を限度に単位修得が認められている。また、大学院においては特段の限度はなく遠隔授業による単位修得が認められている。
 通学制においても、インターネット等活用授業が、先に述べたイからハまでの三つの要件を満たし、大学において、直接の対面授業に相当する教育効果を有すると認める場合には、これを遠隔授業として位置付け、各大学の主体的判断により、現行制度に定める上限の範囲内で単位修得を可能とする方向で見直しを行うことが適当である。

4)情報通信技術活用の普及のための支援

 インターネット等活用授業を行うに当たっては、十分な教育効果があがるような適切な教材の開発が不可欠である。
 米国やカナダなどにおいては、教材作成を支援するセンターが大学の遠隔地間の授業用の教材作成に大きく貢献していると言われている。今後、我が国においても、各大学の学内における支援体制の充実とともに、大学が共同してノウハウを蓄積し適切な教材の開発を支援する仕組みが求められる。

(2)国境を越えて提供される大学教育の在り方の検討

(通信教育によって得た外国の大学の単位・学位の取扱い)

 我が国の大学においては、学生が外国に在住し当該国の大学で修得した単位については、単位互換制度により一定の限度で我が国の大学の単位として認定することが認められているが、我が国にいながら、インターネット等を活用した通信教育により修得した外国の大学の単位については、現行制度上そのような履修が想定されていないことから、我が国の大学の単位として認定することは認められていない。
 また、我が国の大学院の入学資格については、現行制度上「外国において」学校教育における16年の課程を修了した者に入学資格が認められているが、我が国にいながら通信教育により外国の課程を修了した者については入学資格が認められていない。
 今後は、外国の教育制度において、大学がインターネット等を活用した通信教育により単位を修得させたり正規の課程を修了させたりすることを認めている場合には、我が国の学生がこれにより得た単位又は学位については、一定の要件の下で、学生が外国に在住して当該国の大学で得た単位や学位と同様に取り扱い、大学における単位認定を可能とし、我が国の大学院入学資格を認めることが適当である。
 なお、実際の個別具体的な単位の認定や大学院への入学の許可が、各大学の主体的な判断により行われることは従来と同様である。

(通信教育による我が国の大学教育の海外への提供)

 外国にいながら我が国の大学の単位を修得したり、課程を修了したりすることは現行制度上想定されていないが、インターネット等を活用した通信教育により海外に大学教育を提供することが制度的に可能であることを明確にする必要がある。

(各国の教育制度間の調和と教育の質の確保)

 以上のことに関連して、多様な文化的背景を有する各国の教育制度間の調和を図り、かつ、大学教育の質を確保する観点から、各国において大学がインターネット等を活用した通信教育により国境を越えて教育を提供している場合には、その教育プログラムの内容や当該国の教育制度上の位置付け等の情報を、相互に提供し合うことなどに取り組むことが必要である。

4 学生、教員等の国際的流動性の向上

(1)日本人学生、若手教員等の海外派遣 

(学生の海外派遣の充実)

 国際社会で活躍できる人材を育成するためには、学生に、外国語の習得だけではなく、異なる文化的背景を有する人々と共に学び生活することなどを通じて、相手の立場を理解しようとする感覚を身に付けさせるとともに、国境を越えた適応能力を獲得させることが大切である。このためには、できる限り若いうちに異文化体験を得させることが重要であり、短期留学による日本人学生の海外派遣を一層拡充、支援したり、海外でのインターンシップの推進や、フィールドワーク等の単位化を促進したりするなどの方策を充実することが必要である。

(若手教員等の海外派遣の充実)

 学生の指導に当たる教員自身の国際感覚を高めるとともに、我が国の大学の「知」を積極的に海外に提供していく観点から、教員の海外派遣を充実することが必要である。また、国際感覚に富んだ若手の教員や研究者を育成する観点から、大学院生及び若手教員を積極的に海外に送り出し、学位を取得させるための海外留学を推進することが必要である。

(2)留学生の受入れの推進

 大学の教育研究の国際的な通用性・共通性の向上と国際競争力の強化に向けて大学改革を推進することは、留学生の受入れの基盤となるものであり、また、留学生の受入れを拡大することは、このような大学改革を更に促進することにもつながるものである。このことを踏まえ、今後留学生の受入れを推進するためには、大学改革の一層の推進とともに、とりわけ、次のような取組を行う必要がある。

(留学生を組織的に受け入れる教育プログラムの開発・実施)

 各大学においては、留学生と我が国の学生を併せて対象とする外国語による授業や試験を実施するなど、留学生を組織的に受け入れる教育プログラムを開発・実施することや、日本語教育体制の充実を図ることが必要である。

(学位授与の改善)

 留学生に対する学位授与の改善を図る観点から、各大学においては、外国語による特別プログラムを開発したり、外国語による論文作成を認めたりするなどの配慮を行うことが必要である。また、留学生に限らず、我が国の大学院では、特に文系を中心として博士の学位の取得が難しいと言われていることから、我が国の大学院が課程制大学院である趣旨を踏まえ、教員の意識改革に努め、学位授与の改善に向けた一層の努力を行うことが求められる。

(事前教育や帰国後のフォローアップの充実と情報通信技術の活用)

 留学生の円滑な受入れを推進し、留学生交流により形成される人的ネットワークを維持・継続させるためには、事前教育や帰国後の適切なフォローアップ等、各大学において、受入れから帰国後までの体系的な留学生受入れのための方策を総合的に推進する必要がある。
 この場合、情報通信技術を使った遠隔教育により、留学希望者に対する日本語教育、専門基礎教育等の事前教育や、帰国した留学生に対するフォローアップ教育を行うことも有効である。
 なお、現在、外国において学校教育における12年の課程を修了していない留学生については、我が国で指定された施設における準備教育課程を経ることで、我が国の大学の入学資格が認められているが、適切な方法で学力を判定することにより、日本語能力も含めて我が国の高等学校卒業生と同程度の学力を有すると認められ、我が国の大学教育を受けるに十分な能力を有すると判断される場合には、準備教育課程を経ることなく我が国の大学への入学が可能となるための方策について検討することが必要である。

(入学選考手続きの改善)

 我が国の大学では、留学希望者が渡日前に入学許可を得ることが極めて困難であり、このことが留学に当たって大きな負担となっているとの指摘がある。
 このことから、各大学においては、財団法人日本国際教育協会が平成14年から実施を予定している「日本留学試験」の積極的な活用や書類選考の重視、海外での入学試験の実施等により、渡日前に入学許可を出せるよう一層努力することが必要である。また、将来的には、米国のアドミッションズ・オフィスのように、留学生の入学選考を全学で一元的に行う取組が必要である。

(積極的な情報提供と募集活動)

 我が国の大学への留学を考えている人が、我が国の大学に関する情報や奨学金、宿舎、進路等の情報を容易に入手できるよう、各大学等においては的確な情報提供を行うとともに、各大学が連携して海外において積極的な募集活動を行うことが必要である。

(留学生に対する奨学金の拡充や宿舎の整備充実等修学支援の拡充)

 留学生センターの整備など留学生の指導・相談体制の充実とともに、留学生に対する奨学金の拡充や宿舎の充実など生活支援を一層推進するほか、企業等、あるいはボランティア等の留学生支援団体の活動を充実することが必要である。なお、これらの取組を進めるに当たっては、留学生と日本人との交流の推進に留意し、地域と一体となって取り組むなど、きめ細かな配慮が必要である。

(3)大学間交流の推進

(UMAPの活動支援)

 海外の大学との間の交流を推進することは、大学における学習内容の多様化や異文化体験の拡大に資するものであり、UMAP(アジア太平洋大学交流機構)の活動に対する支援策を充実することが必要である。
 また、大学間交流を推進するに当たっては、単位の相互認定を行うことが有意義であり、各大学においては、積極的にこれに取り組むことが必要である。現在、UMAPにおいては、外国の大学での学修が自大学の単位に適正に認定されるための仕組み(UCTS)の普及を図っており、今後、各大学においては、UMAPの活動に積極的に参加し、UCTSの活用を通じて、学生交流を更に増大させることが望まれる。

(コンソーシアム方式による海外の大学との間の連携・交流の促進)

 海外の大学との間での連携・交流を一層促進するためには、国内外の複数の大学が共同体を形成して協定に基づいて個別大学間の連携・交流を行う、いわゆるコンソーシアム方式の大学間の連携・交流が極めて有益であることから、各大学においては、これに積極的に取り組む必要がある。

(4)国際教育協力の推進

 大学がグローバル化に対応した取組を推進するためには、開発途上国からの留学生や研修員を受け入れるだけでなく、大学教員が開発途上国における人材育成に進んで参画し協力していく姿勢が必要であり、開発途上国への教育協力の経験を通して自らの視野を広げ、教育能力を高めていくための取組が必要である。
 国際教育協力を推進する観点から、情報通信技術を活用し、アジア地域をはじめ世界の大学等に高等教育レベルの授業や教材を配信するプログラムの実施や、援助関係機関による開発途上国への各種援助事業に大学教員が円滑に参画するための方策等について検討する必要がある。

5 最先端の教育研究の推進に向けた高等教育機関の組織運営体制の改善と財政基盤の確保

(1)大学の組織運営体制の改善

(学長のリーダーシップの下に大学改革をより機動的に進めるための組織運営の在り方の検討)

 世界の大学との競争的環境の中で、我が国の大学が、十分に競争力を発揮して世界に伍(ご)する教育研究を展開していくためには、学長の大学運営におけるリーダーシップの下に大学改革をより機動的に進める必要がある。このため、大学運営に識見を有する適任者を学長に選任できるよう学長の選考方法を見直すとともに、学長を中心とする全学的な運営体制を整備する必要がある。
 先般、学校教育法等を改正し、大学が一体的・機能的に運営され、また、教員が教育研究に専念することができる体制を作るため、国立大学の学長、評議会、教授会等の役割分担の明確化を図るとともに、大学が社会からの意見を聴取するなどのため、すべての国立大学に運営諮問会議を設けたところである。各国立大学では、これを機に機動的で責任ある意思決定と実行を行うために、組織運営の在り方を見直すことが必要であり、その改善状況を公表することが望ましい。各公私立大学についても、このような制度改正の趣旨を踏まえ、教授会等の在り方を改めて見直し、一層の改善を図ることが必要である。

(学校法人の理事会と教学組織との関係の明確化等)

 私立大学がその建学の精神を実現し、大学改革を推進していくためには、設置者である学校法人の理事等に適任者を選任した上で、学校法人が大学の在り方全体について責任を持ち、かつ円滑な運営を行うことが求められる。
 そのためには、学校法人の理事会と教学組織との機能分担と連携協力が不可欠であり、教学組織における学長、教授会等の役割や機能を明確化した上で、両者の円滑な意思疎通の確保のために積極的に取り組む必要がある。
 また、学校法人運営に当たる理事、監査を行う監事、一定の事項について理事長等に意見を述べる評議員については、それぞれの職務についての専門性の向上が求められる。特に、監事については、学校法人制度上位置付けられた評価システムである監査を担う職務の重要性にかんがみ、監査業務に係る専門性の向上に留意する必要がある。

(教員の流動性の向上)

 教員が視野を広げながら資質・能力を高めていくためには、教員の流動性を向上させることが重要である。そのため、各大学においては、任期制の導入、公募制の実施方法の工夫や、例えば自大学出身の教員の採用率の自主的上限設定、助手の継続的な内部昇格の自己規制等の工夫を行うことが必要である。
 とりわけ、任期制については、大学の教員等の任期に関する法律の趣旨を踏まえ、各大学の主体的判断により、多様な人材の受入れと教育研究の活性化を図る観点から、普及拡大を図ることが求められる。
 さらに、実際に教員の流動性の向上を図るためには、情報提供等の環境整備が重要であり、国立情報学研究所の研究者公募情報提供サービスや学会の機関誌の活用などの方法により、教員採用関連の情報の流通を促進していくことが期待される。

(教員構成の国際化)

 大学が創造する知識や技術は本来普遍的なものであり、国境を越えて活発な教育研究が進められるべきものである。グローバル化の進展の中で、各大学が、内からの国際化に一層積極的に取り組むためには、教員の公募の対象を海外に拡大したり、一定の外国人教員採用枠を設けたりすることなどにより、優秀な外国人教員の積極的な採用を進め、教員構成の国際化を推進することが必要である。

 また、教員の採用に当たり、豊富な留学経験や海外での活躍の実績を加味することが必要である。

(講座等の組織編制の弾力化)

 講座制は、安定した組織の下での教育研究の継承発展に寄与してきた点において意義を有するものの、閉鎖的・硬直的な運営に陥りがちになるとの指摘もあることから、今後、大学が社会、経済の著しい変化に的確に対応して、伝統的な学問分野の枠にとらわれることなく柔軟かつ機動的に教育研究を展開していくためには、より柔軟な教員組織の在り方を検討する必要がある。
 現行制度上、大学設置基準では、大学の教員組織は学科目制又は講座制を設けることを原則とし、学部以外の基本組織を置く場合にはこれらを設けないことができることとしている。また、国立大学については、国立学校設置法により、講座・学科目の種類等を文部省令で定めることとなっている。
 したがって、今後、大学の教員組織については、それぞれの大学の教育研究上の目的を達成するために必要な教員を置くことを基本に、具体的な組織編制の在り方については各大学においてより自由に設計できるようにする必要がある。

(事務体制の充実強化)

 大学における教育研究の質を確保するためには、教員が教育研究に集中できる環境を醸成することが重要であり、例えば、従来の教員と事務職員の役割分担を見直すことも必要である。また、グローバル化の進展に対応して、組織的な研究・研修による事務職員の専門性の向上、教員組織と事務組織の連携の強化、専門性の高い業務についての外部機関との連携協力等を含む事務体制の充実強化を図る必要がある。

(2)高等教育機関の財政基盤の確保

 以上に述べてきたような改革を実現するためには、高等教育機関に対する公的支出をはじめ、充実した財政基盤が確保される必要がある。 

(欧米並みの公的支出の確保)

 高等教育に対する公財政支出の割合を単純に国際比較することは、制度の違いもあり困難であるが、統計によれば、我が国の国内総生産(GDP)等に占める高等教育に対する公財政支出の割合は、他の先進諸国に比べ低い状況にある(対国内総生産比(1997年):日本0.5%、米国1.4%、英国0.7%、仏国1.0%、独国1.0%(出典:OECD “Education at a Glance OECD INDICATORS”2000 Edition)、対国民所得比:日本0.9%(1997年)、米国1.4%(1995年)、英国1.8%(1995年)、仏国1.2%(1995年)、独国2.0%(1996年)(出典:文部省「教育指標の国際比較」平成11年版))。
 我が国の高等教育機関は、世界に開かれた機関として質の高い教育を提供するとともに、世界で活躍する人材育成や、世界的水準の教育研究の推進等によって世界に貢献することにより、自らが果たすべき使命を達成することができるものであり、その使命を果たすための基盤として、21世紀答申でも指摘しているように、我が国の高等教育に対する公的支出を、欧米諸国並みに近づけていくよう最大限の努力が払われる必要がある。その際、厳しい財政状況や大学等に期待される役割等も踏まえつつ、積極的に改革に取り組んでその成果をあげている大学等を重点的に支援していくことが必要である。

(国公私を通じた競争的経費の拡充と基盤的経費の確保)

 国公私を通じて、大学における教育研究が、競争的環境の中で切磋琢磨(せっさたくま)しながら発展していくことができるよう、競争的経費の拡充によって、大学間に一層競争的な環境を整備し、より良い教育研究に対しては資源を重点的・効率的に配分していくことが必要である。一方、長い年月を経て大きな発展を遂げる教育研究分野もあることから、日常的な教育研究活動の継続的・安定的な遂行に不可欠な基盤的経費を確保することも重要である。

(私学助成の推進)

 私立大学等については、特色ある教育研究を積極的に行うことができるよう、私学助成の推進を図るとともに、社会的要請の強い特色ある教育研究プロジェクトに対する重点的配分を一層図る必要がある。また、私立大学等の収入源の多様化等を図るための税制改正を更に進めることも重要である。

おわりに

 現下の我が国の高等教育は、全く新たな状況に直面している。大学は、グローバル化、科学技術の爆発的進歩という新たな事態に対応して、国際的な水準を視野に入れつつその教育活動の質的向上を図らなければならない。半面、少子化に伴ういわゆる大学全入時代の到来と社会人の生涯学習の必要性の高まりは、多様な能力、適性、学習ニーズを持つ学生層を生み出していることから、教育内容・方法の改善により、高等教育としての水準確保を図ることが求められている。
 本審議会は、昭和62年9月に設置されて以来、高等教育の高度化、個性化あるいはその基盤となる組織運営の活性化など多岐にわたる高等教育の課題について審議を重ね、この答申を含め、累次の答申等により具体的改革方策を提示してきた。
 この十年余の間に高等教育全体としての改革の動きが大きく進展したことは、高く評価されるべきであろう。もちろん、その進展の度合いは個々の大学等により様々であり、高等教育関係者のみならず学生、社会、産業界等から依然として厳しい問題点の指摘もある。
 各大学においては、本審議会の答申等を参考としつつ、それぞれの自主的・主体的な取組により個性的な大学改革を不断に進めることが期待される。
 大学を中心とする高等教育機関における教育研究活動は、社会、経済、文化の発展や文明の構築に貢献するものである。社会の変革が急速に進むことにより、大学等の果たすべき役割への期待も今後ますます大きくなるものと思われる。グローバル化が急速に進展する今日、我が国の大学等における教育研究の振興は、我が国民のみならず人類の未来に対する先行投資であり、また、責務でもある。今後とも、広く関係者がこのことを自覚し、大学改革の不断の推進とその基盤の整備に向けて更なる努力を傾注することを期待したい。

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