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大学入試の改善について (中間まとめ)

平成12年4月
大学審議会

はじめに

 本審議会は、昭和62年10月29日、文部大臣から、「大学等における教育研究の高度化、個性化及び活性化等のための具体的方策について」諮問を受けて以来、多岐にわたる高等教育改革の課題について調査審議を進めている。
 このうち、大学入試の問題については、平成元年3月、文部大臣から、大学入学者選抜制度の在り方について、改善方策の探究をするようにとの審議要請があったことを受けて、同年11月、大学入試に関する専門委員会を設置した。同専門委員会においては、大学入学者選抜の在り方は、高等教育のみならず、高等学校以下の教育全体に大きな影響を及ぼすものであり、その意味において、常に最善の方途を見出すべく、不断の努力を傾注すべき重要な課題であるとの認識の下に、平成3年4月の中央教育審議会答申の示唆も受け止めながら、中長期的な観点から幅広い検討を行い、平成5年9月に「大学入試の改善に関する審議のまとめ」の報告を行った。この報告を受けて、各大学においては入学者選抜の改善についての様々な取組が行われてきたところである。
 その後、平成9年6月の中央教育審議会第二次答申「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」、及び昨年(平成11年)12月の中央教育審議会答申「初等中等教育と高等教育との接続の改善について」において大学入試の改善に関する提言がなされたところである。大学入試に関する専門委員会においては、少子化の進行や大学進学率の上昇等の状況、及びこれらの答申における提言等を踏まえつつ、大学入試の改善についてさらに議論を進めてきた。
 このたび、現段階における審議の概要を以下のとおりとりまとめたので、「中間まとめ」として公表することとした。今後、本審議会としては、今回の「中間まとめ」に対する各界の意見を踏まえつつ、さらに審議を深めることとしており、この「中間まとめ」に関連して、各大学等においても、大学入試の改善についての活発かつ積極的な検討が行われることを期待するものである。

第1章 大学入学者選抜の改善のための基本的な視点

1 大学入学者選抜を巡る状況

 大学入学者選抜は、受験生に各大学(短期大学を含む。以下、特に書き分けていない限り同じ。)の大学教育を受けるのにふさわしい能力・適性等があるかを判定するものであり、大学教育の第一歩として、基本的には各大学の自主性に基づいて行われている。
 受験生の能力・適性、履修歴等が多様化する一方、大学の多様化・個性化が求められる中で、各大学の入学者選抜においては、それぞれの大学・学部の目的、特色や専門分野等の特性に応じ、受験生の能力・適性等を多面的に判定する方向で工夫・改善が行われているところである。近年、各大学の入学者選抜においては、学力検査だけでなく、面接、小論文、リスニングテストを実施したり、推薦入学、帰国子女や社会人、専門高校・総合学科卒業生を対象とした特別選抜を採用するなど、選抜方法の多様化、評価尺度の多元化が進められている。
 平成2年度入学者選抜からは、受験生の高等学校段階における基礎的な学習の達成の程度を判定することを目的とした大学入試センター試験が実施され、個別試験との適切な組み合わせによる受験生の能力・適性等の適切な判定、高等学校教育に対応した良問の出題による難問・奇問の減少など、多くの成果を上げてきたところである。平成12年度入学者選抜では、すべての国公立大学のほか、私立大学の半数以上が大学入試センター試験を利用しており、多くの国公私立大学が大学入試センター試験をそれぞれの判断と創意工夫に基づき適切に利用することにより、その基礎の上に、国公私立を通じて入学者選抜の工夫・改善が図られているところである。

 しかしながら、大学入学者選抜を巡る状況は、少子化の進行や大学進学率の上昇等により大きく変わりつつある。18歳人口の減少や推薦入学の増加等により、相当数の者にとって大学入試が過度の競争ではなくなりつつある中で、高等学校と大学との円滑な接続をどう図っていくかが重要な課題となってきている。その一方で、1回限りの学力検査による成績順位に基づく選抜が最も公平であるとの観念や、高等学校卒業時点で一斉に大学進学を目指すのが最も一般的であるという観念は、社会的にまだ根強く残っている。
 このような、今後の大学入学者選抜の改善を検討するにあたって踏まえるべき状況を次のように整理した。

 まず、変化しつつある状況としては、以下の3点が挙げられる。

(1)現在の大学=国民の半数近くが進学する教育機関

 平成11年において、大学への進学率は約49%にまで達しており、さらに、高等専門学校、専門学校も含めた高等教育機関全体で見ると、その進学率は約70%にまで達している。
 一方、近年の少子化の進行により、18歳人口は、近年のピークである平成4年には205万人であったものが、平成11年には155万人まで減少している。
 そして、平成9年1月の本審議会答申「平成12年度以降の高等教育の将来構想について」が、平成16年度までに臨時的定員の半数を解消した場合、平成21年度には収容力(入学者数を全志願者数で除したもの)は100%に達すると試算しているように、収容力の観点からは、大学への進学を希望する者がいずれかの大学には入学できるようになりつつあり、全体として見れば、既に大学入試は過度の競争ではなくなっている。
 このように、すでに大学は、特別の教育の場ではなく、国民の半数近くが進学する教育機関となっている。

(2)大学に求められるもの=広く大学教育を受ける機会を提供すること

 大学に進学する者が少数の時代には、大学は特別な教育の場であって、高等学校と大学とは性格が異なるものであるという意識が強く、したがって、大学入試についても選抜機能に偏っていたきらいがあった。
 しかし、現在では、国民の半数近くが進学する教育機関として、大学は、このような国民の進学意欲を積極的に受け止め、従来のように受験生を選抜するという視点ではなく、高等学校と大学との接続を重視し、広く大学教育を受ける機会を提供するという視点を持つことが重要である。その際、一度社会に出た者等にも、機会を提供することが一層重要になっている。

(3)卒業時における質の確保(出口管理、大学教育の充実)

 国民に広く大学教育を受ける機会を提供していくという観点からは、大学入学後の教育の在り方がますます重要になってくる。
 従来、ともすれば、大学の評価、さらには卒業生の評価が、入口段階すなわち大学入試の難易度等に基づきなされてきたきらいがあり、社会においても、大学において何を学んだかではなく、どこの大学を出たかが関心事であった。
 しかし、国際的競争力の強化が求められる中で、産業構造や雇用形態に大きな変化が起こり、企業や社会においても、大学の卒業生に対し、単にどこの大学を卒業したかでなく、課題探求能力を持ち、その上に専門的な能力や技能を身に付けていることを求めるようになっている。
 また、大学教育は、社会生活を送る上で必要な知識、技能を身に付けるだけでなく、幅広く深い教養を身に付けるなど、一人一人の人生を豊かなものとしていく上でも重要な役割を果たすものとなっている。
 このような要請に応えるためにも、大学全体として、大学教育を充実し、卒業時における質の確保を重視していくことが必要になっている。

 次に、根強く残る状況としては、以下の2点が挙げられる。

(4)学力検査による成績順位に基づく選抜が最も公平であるという観念

 現在、各大学の選抜においては、推薦入学やアドミッション・オフィス入試等を導入したり、学力検査に加えて面接、小論文等を実施するなど、選抜方法の多様化、評価尺度の多元化の取組が進んでいる。しかしながら、それでもなお社会においては、学力検査による成績順位に基づく選抜が最も公平であり、それ以外の要素を加味することは不公平であるという観念が根強く残っており、このような社会の観念も意識して、大学における入学者選抜も学力検査による成績順位に基づく選抜が一般的になっている。
 今後とも、大学と高等学校との接続を重視する観点から、各大学がそれぞれの教育理念等にふさわしい資質を持った学生を見いだすことが重要であり、そのためには、学力検査による成績順位に基づく選抜では見いだし難い者の中にも、大学が求める学生が埋もれているかもしれないという認識に立ち、評価尺度の多元化を一層推進する必要がある。
 このことは、選抜方法の一つとしての学力検査による成績順位に基づく選抜が不適当ということを意味するものではない。それ以外の多様な試みが、大学の自主的な判断やそれぞれの入試設計に基づき行われ、そのような取組が、社会においても許容されていくことが必要であるということである。

(5)高等学校卒業時点で一斉に大学進学を目指し、失敗をやり直すことが難しい入試システム

 総体として大学に入りやすくなっているとしても、18・19歳という時点で一斉に大学進学を目指すという状況は大きく変化していない。企業の採用慣行としても、どこの大学を出たかではなく、個人の能力を重視する方向に向かいつつあるものの、なお、大学入試の結果がその後の人生を大きく左右すると意識されているため、受験生にとって、入試は失敗のできないものと認識されている。
 また、このようなことから、大学入試に関しては、その公平性や客観性があまりにも強く求められることとなっており、かえって硬直した状況を生み出してもいる。
 こうしたことが、高校生に大きな心理的圧迫を与え、過度の受験競争が依然として解消されていないとの社会一般の受け止めの根拠にもなっており、このような状況を変えること、すなわち、やり直しのきくシステムへと転換していくことが必要になっている。

 さらに、大学入試の実施体制における問題として、次の点が挙げられる。

(6)大学における入学者選抜の実施体制が抱える問題

 我が国においては、入学後の教育に責任を持つ大学教員自らが教育を行う者を見いだすべきであるとの考えが強く、選抜の過程にほとんどすべての大学教員が関わっているような状況にある。このため、大学入試の多様化が進む中、入試業務の負担が増大してきており、教育研究活動への影響についての懸念も指摘され始めているところである。
 一方、高等学校教育の多様化や大学入試の多様化等が進む中で、高等学校教育の内容を十分に咀嚼し、良質な試験問題を作成するための努力も益々増加することとなり、十分な対応が困難になっているとの声も聞かれるところである。
 こうしたことから、大学入試の改善を図るためには、その実施体制について見直しを図ることが必要になっている。

2 大学入学者選抜の改善のための基本的な視点

1で述べたような大学入学者選抜を巡る状況を踏まえ、大学入学者選抜の改善のための基本的な視点として、次の5点が重要である。

(1)入学後の教育との関連を十分に踏まえた上での大学入学者選抜の改善(求める学生を見いだすこと)

 これからの大学には、国民の半数近くが進学する教育機関であるという認識の下に、広く国民に大学教育を受ける機会を提供した上で、それぞれの教育理念等に応じた教育を適切に施し、社会の様々な要請に応じた人材を育成していくことが求められる。
 大学入試においても、それぞれの教育を受けるのにふさわしい資質を持った学生を見いだすことが重要になる。入学後の教育との関連を十分に踏まえた上で、それぞれの大学にふさわしい、大学入試の改善を図ることが必要である。
 すなわち、高等学校、大学双方の多様化が進む中で、各大学の理念や特色等に応じた教育を円滑に行うためにも、学生の大学教育への円滑な移行を図るためにも、入学者選抜において、各大学が、それぞれの教育理念等にふさわしい資質をもった「求める学生」を適切に見いだすことが重要である。
 入学者選抜において求める学生を見いだすためには、まず大学はそれぞれが特色ある教育理念等を確立することが必要であり、それに応じた入学者受入方針(アドミッション・ポリシー)を明確化し、対外的に明示することが求められる。その上で、それを実際の選抜方法や出題内容等に反映させ、それぞれの大学にふさわしい入試を行うことが必要である。このような取組は、受験生が、各大学の入学者受入方針(アドミッション・ポリシー)を参考にし、自らにふさわしい大学を主体的に選択することができるようにするという意味でも重要である。
 同時に、必要に応じ学生の履修歴等に対応して大学教育の基礎を教えるなど、入学後の学生に対するきめ細かな配慮や様々な工夫も必要である。
 先に述べたように、相当数の者にとって大学入試が過度の競争ではなくなり、全体として見れば、大学への進学を希望する者がいずれかの大学には入学できるようになりつつある中で、大学は、社会の要請に応え、それぞれの特色を明確にし、魅力ある大学づくりを行うことが必要不可欠である。今後の大学においては、それぞれの理念や目標等に応じた教育により学生に付加価値を施し、社会の多様な要請に応じた人材として育成していくことが求められるのである。各大学の入学者選抜の改善は、この一環として行われるものであり、入学後の教育との関連を十分に踏まえた選抜を行うことにより、「求める学生」を見いだすことが重要であって、そのための努力は惜しむべきではない。

(2)受験生の能力・適性等の多面的な判定(評価尺度の多元化の推進)

 入学後の教育との関連を十分に踏まえた上での大学入学者選抜の改善を図るためには、各大学の多様で自由な入試設計が重要であり、それぞれの入学者受入方針(アドミッション・ポリシー)に基づき多様な選抜が行われることが必要である。
 選抜方法の多様化等は、受験生の能力・適性等を多面的に評価し、求める学生を適切に見いだすといった観点や、様々な学生を入学させて大学教育を活性化させるといった観点から行われることが重要である。
 このためには、大学入試センター試験の成績の資格試験的な取扱い、思考力や表現力等の評価に力点を置いた個別試験の改善、アドミッション・オフィス入試等の丁寧な選抜等を推進することが重要である。
 なお、大学入試は、高等学校卒業者に対し、その能力・適性等に応じた大学教育の機会を提供し、各人の個性に即して、その能力のより適切な伸長を期するための教育的業務であり、このため、その実施にあたっては、初等中等教育の改善の方向を一層助長するよう十分配慮するとともに、選抜の方法及び結果が公正かつ妥当なものとして受験生はもとより社会一般の信頼を受けるように実施することが必要である。

(3)受験機会の複数化(やり直しのきくシステムの構築)

 大学進学率の上昇、高等教育の量的拡大、生涯学習社会への移行の中で、今後の大学入試においては、これまで重視されてきた選抜機能のみならず、受験生に対し、その能力・適性等に応じた大学教育を受ける機会を提供するという機能が重要になってくる。
 その際、大学教育を受けるためには、それぞれの教育に必要な能力・適性等を有していることが必要であることは当然であるが、国民の進学意欲に積極的に応え、広く国民に対して大学教育を受ける機会を提供するとの観点からは、大学に進学を希望する者がその能力・適性等を証明する機会がより多く提供されることが重要である。
 これを受験生の側から見れば、一度の試験で失敗しても、やり直しの機会が与えられ、新たな気持ちで再度挑戦することができることになる。このことにより、失敗できないという心理的圧迫をかなりの程度減ずることができ、本来の実力を発揮することができるようになると考えられる。
 大学あるいは社会の側から見ても、受験生に再挑戦の機会を提供することにより、その能力・適性等を正確に判定することができるようになり、大学が求める学生を見いだす上で大いに役立つものと考えられる。特に、1回限りの学力検査による成績順位に基づく選抜が一般的な中で、そこでは見いだし難い者の中にも、大学が求める学生が埋もれているかもしれないという認識に立ち、できる限り目を向けていくという観点が重要である。
 こうしたことから、今後の大学入試においては、受験機会を複数化し、やり直しのきくシステムの構築を目指すことが必要である。
 このためには、各大学の個別試験において、前期日程試験・後期日程試験の募集人員の適切な配分や秋季入学の拡大、推薦入学やアドミッション・オフィス入試等の導入・拡大によって、受験機会の拡大を図るとともに、大学入試センター試験を複数回実施し、より良い成績を選抜資料として用いることができるようにするなど、様々な場面で工夫・改善がなされることが必要である。
 また、編入学の推進、他大学出身者の大学院への受け入れ、さらにいったん社会に出てからのリカレント教育の機会の拡大等、様々な方策が進められるべきであり、そのような努力の積み重ねにより、18・19歳での選択がその後の人生を決定するという観念を変えていくことが必要である。このような取組により、失敗が許されないという観念の下、大学入試に、あらゆる条件が同一でなければならないというあまりにも厳密な公平性、無謬性(絶対的な公平性)が求められている現状を改善し、公平性についての考え方の見直しにもつながるものと考えられる。

(4)公平性についての考え方の見直し

 大学入試の改善が求められる一方、入試については絶対的な公平性を求める社会の意識が強く、そのことがかえって様々な改善策の実現を困難としている。また、社会の公平性に関する考え方を意識して、いささかのミスも許されないとの認識の下、入試業務は非常に緊張した状態で行われており、そのことも大学教員等の負担を大きなものとしている一因となっている。
 学力検査による成績順位に基づき、上から順に選抜していく方法は、主観的要素が含まれず、誰が判定を行っても結果が同一であるという点、そして、なぜある者が合格し、ある者が不合格であるかを明確に説明し得るという点のみから見れば、現時点でこれ以上の方法は存在しないと言ってよい。
 これに対し、受験生の能力・適性等を総合的、多面的に評価し、さらに受験時点での学力だけでなく大学入学後の能力の伸長の可能性ということまでも見据えて判定を行っていこうとすれば、例えば評価者を複数にし、その間の意見調整を行うなどにより、できる限り主観が恣意に陥ることを防ぐ工夫を行うことは必要であるが、それでもなお、ある程度主観的要素が入ることは避けられない。
 また、これまで、大学入試の試験問題においては、過去に出された問題や類似した問題を出題することは適当ではなく、常に新作の問題でなければならないと考えられ、作題負担を重いものとしてきたが、その理由も、新作の問題であれば全ての受験生に対して公平であり、過去に出された問題等であればこれを目にしたことのある受験生が特に有利になるとの考え方が根強かったためである。
 さらに、これまで大学入試センター試験において複数回実施が困難とされ、その成績の複数年度利用が認められてこなかったのは、実施体制の問題だけでなく、難易度の異なる試験の結果を同一の選抜に用いることが公平性の原則に反すると考えられてきたことが大きい。また、大学入試センター試験へのリスニングテストの導入が要望されながらこれまで見送られてきたのは、全ての受験生に対して音が聞こえる環境等を絶対的に均一にすることが不可能と考えられてきたことも理由である。
 以上のように、今後の大学入学者選抜の改善を検討するにあたっては、絶対的な公平性を追求しようとすることは、かえって様々な改善策の実現を困難にし、入試業務の負担を重いものにしていくことを踏まえることも必要である。
 このため、受験生の能力・適性等の多面的な判定や、大学入試においてやり直しのきくシステムの構築を進める上でも、絶対的な公平性ではなく、もう少し柔軟にこれを捉え、合理的に許容される範囲の中での公平性という考え方に転換していくことが必要であり、社会全体がこのような考え方を受け入れていくことが重要である。

(5)大学における入学者選抜の実施体制の見直し

 我が国においては、大学入試は大学教員が実施するものと考えられている。すなわち、入学後の教育に責任を持つ大学教員が、自らの目で、入学し教育を受ける者の選抜を行うべきであると考えられてきた。
 しかし、厳格な成績評価等大学教育の充実により卒業時点での質の確保が求められ、また国際的な競争の下で優れた研究成果を生み出すことがますます求められている中で、教員はこれまで以上に教育研究活動に力を注ぐことが必要になっている。
 一方で、入試について、受験生の能力・適性等の多面的な判定ややり直しのきくシステムの構築が求められる中で、大学教員の入試業務の負担もますます増大することとなる。
 加えて、高等学校教育や大学入試が多様化する中で、高等学校の学習指導要領や教科書の内容を十分に研究し、良質な試験問題を作成するための労力はますます増大するものと考えられるが、大学教員が教育研究の合間に交代でこれに取り組むことはますます困難になっている。
 先に述べたように、求める学生を見いだすための努力は惜しむべきではないが、大学教育の充実を図りながら大学入試の改善を進めていくには、入学者選抜の実施体制について適切な見直しを図ることが必要と考えられる。

第2章 大学入試センター試験の改善

1 大学入試センター試験の改善のための基本的な考え方

 入学者選抜は、大学で学ぶために必要な能力・適性等を判定するものであり、その内容・程度等は大学によって異なるとしても、それは高等学校での学習を基礎として習得されるものであり、基本的には高等学校での学習の達成の程度が大学で学ぶ能力等の土台となるものである。
 各大学が求める学生を見いだすためには、入学者選抜の方法も、多様で自由な設計が可能でなければならないが、その際、大学で学ぶ能力等の土台である高等学校段階における学習の達成度が信頼性の高い良質な問題で判定されているのであれば、各大学はそれを前提に、自らの選抜方法等に関しより多様で自由な工夫を行うことができる。
 その意味で、大学入試センター試験は国公私立を通じた入学者選抜の工夫・改善に大きな役割を果たしてきた。今後とも、大学入試センターは、大学進学を志願する者の高等学校の段階における基礎的な学習の達成の程度を良質な問題によって判定し、各大学に受験生に関する信頼性の高い情報を提供することが求められる。
 各大学にとっては、大学入試センター試験を活用することによって、それぞれの入試設計の工夫・改善を促進するという観点が重要である。
 大学入試センター試験については、このような基本的な役割や、先に述べた「大学入学者選抜の改善のための基本的な視点」を踏まえ、次のような改善策を検討することが必要である。

2 大学入試センター試験の具体的な改善方策

(1)大学入試センター試験の成績の資格試験的な取扱いの推進

 大学入試センター試験は、各大学にとって、入学者選抜に用いる資料の一部であり、大学入試センター試験の結果をどのように利用するかは各大学の自由な判断に委ねられている。
 大学入試センター試験が高等学校における基礎的な学習の達成の程度の判定を目的としていること、大学入試センター試験の活用を基礎とした各大学の創意工夫が求められることなどを踏まえれば、各大学における大学入試センター試験の成績の利用方法としては、素点による選抜だけでなく、一定の学力水準に達しているか否かの判定に主として用いる、いわゆる資格試験的な取扱いがもっと考えられてよい。現在でも、各大学の創意工夫に基づき大学入試センター試験の成績を資格試験的に取り扱うことは可能である。
 このような資格試験的な取扱いとしては、例えば、

  1. 大学入試センター試験で必要とする成績水準を明示した上で、大学入試センター試験の成績がその水準に達している者は個別試験に進ませ、大学入試センター試験の成績は合算せずに個別試験の成績のみで合否を判定する。
     その際、成績水準については、総合点を提示するほか、大学入学後の教育に特に重要と考えられる教科についてはさらに一定の水準を求めることも考えられる。
  2. 受験生の大学入試センター試験の成績を概括的にまとめて扱った上で、個別試験においては、それぞれのグループごとに異なる選抜方法を採用する。例えば、あるグループは面接のみ、あるグループは論文試験を加え、あるグループはさらに学力検査を課す。

などが考えられる。

 また、大学入試センター試験の成績を資格試験的に取扱うこととあわせ、受験生の総合的な学力を判定する観点から幅広い教科・科目を課すことも考えられる。
 このような資格試験的な取扱いが促進されることによって、1回限りのペーパーテストの結果に加えて、受験生の多様な能力・適性等を丁寧に評価することが、それぞれの大学が求める学生を適切に見いだすことにつながるものと考えられる。
 なお、高等学校、大学双方の多様化が進む一方、大学教育の充実が求められる中で、大学教育に必要な能力・適性等を確保し、学生の大学教育への円滑な移行を図る観点から、大学入試センター試験について、一定の成績を修めた者に大学入学資格を与えるという意味での資格試験化するという考え方についても、今後の課題として検討することが必要である。

(2)良質な試験問題の出題

 大学入試センター試験の試験問題については、高等学校の学習指導要領に準拠した良質な試験問題を出題し、これが各大学の選抜にも影響を与え、難問・奇問の是正、良質な試験問題の推進に寄与してきたところである。
 大学入試センター試験の役割である、受験生の学力に関する信頼性の高い情報の各大学への提供を達成するためには、受験生の学力を適正に判定できるようにするための良質な問題を出題することが基本であり、今後とも、良質な試験問題の出題に努めることが求められる。
 その際、作題関係者の努力に期待するというだけではなく、良質な試験問題を作成していくための具体的な仕組みを整備していくことが必要である。
 良質な試験問題の出題という観点からは、過去に出題された問題や類似した問題を再利用できるようにすることが必要である。このため、大学入試センターにおいて、良質な問題の収集と分析評価を行い、このようにして収集し評価した試験問題をデータベース化したアイテムバンクを構築することが必要である。
 構築したアイテムバンクは、大学入試センター試験の試験問題の作成の充実に役立てるとともに、将来的には、各大学に試験問題の素材を提供し、各大学が試験問題を作成するに当たって利用できるようにすることが必要である。
 さらに、アイテムバンクの構築と並行して、これを活用して試験問題の難易度の標準化に関する研究を進めることも重要である。
 また、大学入試センター試験が高等学校の段階の基礎的な学習の達成の程度を判定するものであることを踏まえれば、試験問題の点検のみならず作成においても高等学校関係者の参加の一層の促進を図ることが適当である。また、上述したような過去の試験問題の分析評価にあたっても、高等学校関係者の参加を図ることが必要である。
 その際、退職教員を活用するとともに、現役の教員については、機密性の確保等の観点から試験問題の作成には参加し難い現状にあることも踏まえ、試験問題の作成そのものではなく良質な試験問題の収集の一環として、作題関係者が参考として利用可能な試験問題の素材の提供に協力してもらい、それらを編集していくという方法も検討することが必要である。
 なお、大学入試センターは、設置が予定されている国立教育政策研究所の教育課程研究センター等高等学校教育のカリキュラムの研究組織等との緊密な連携を図ることにより、大学入試センター試験の試験問題の作成に役立てるとともに、大学入試センター試験の成果を高等学校教育のカリキュラムや教材の開発等に活かしていくことも求められる。

(3)教科・科目横断型の総合的な問題や総合的な試験について

 受験生に関する信頼性の高い情報を各大学に提供するという大学入試センター試験の役割にかんがみれば、今後、幅広い層が大学に進学してくることが予想される中で、選抜において教科・科目にとらわれない総合的、基礎的な能力等の判定に力点を置く大学が現れることが想定されることも踏まえる必要がある。
 今後、大学入試センター試験が各大学の多様な要請に応じるためにも、現在の教科・科目ごとの達成の程度とは異なる受験生に関する情報も提供し、各大学の選抜資料としての可能性を広げることが必要である。
 また、教科・科目ごとの達成の程度とは異なる能力等を選抜において判定することは、受験生の能力・適性等の多面的な判定にも寄与するものと考えられる。
 このため、大学入試センターにおいて、教科・科目ごとの知識等ではなく、数理的な思考力や言語的な表現力、あるいは複数の教科・科目に基づく知識等を組み合わせて応用していく能力等、大学で学ぶための総合的、基礎的な能力等の判定を目的とした、総合的な問題に関する調査研究を推進することが必要である。
 その際、受験生の履修歴等の多様化が進み、一定の履修歴等を有していることを前提にできない中で、マークシート方式により総合的、基礎的な能力を適切に判定するための出題の在り方について具体的な検討を行うことが求められる。
 その結果を踏まえた上で、大学入試センター試験における総合的な問題や総合的な試験の導入を考えていくことが適当である。

(4)リスニングテストについて

 現在、高等学校の外国語教育において実践的なコミュニケーション能力の育成等が重視され、また、大学教育においても国際舞台で活躍できる能力の育成が求められている。このような状況を踏まえれば、各大学に提供する受験生に関する能力・適性等の情報の充実の観点から、大学入試センター試験におけるリスニングテストの導入を図ることが必要である。
 その際、60万人近い受験生が受験し、全国一斉に同一時間帯に実施する大学入試センター試験においてリスニングテストを実施するためには、試験の公平性が大きな問題になることに留意する必要がある。
 現在試験会場となっている大学の教室は、その大きさ等に相当の差があるため、音が聞こえる環境等を均一にするなど、十分な公平性を確保することは困難であることも踏まえ、高等学校の教室を試験会場として活用すること、さらには高等学校の教員に試験監督を協力してもらうことなど、高等学校との協力体制も含めた実施方法等を検討するとともに、各大学における成績の利用の仕方について工夫することが必要である。
 今後、このような点も踏まえながら、大学関係者や高等学校関係者等の協力の下に、円滑にリスニングテストが実施できるよう、大学入試センターにおいて試験内容や実施方法等に関する具体的な検討を推進することが必要である。

(5)大学入試センター試験の年度内複数回実施

 大学入試センター試験は、受験生の進路選択に大きな影響を及ぼしており、そこでの失敗は、進路変更に直結するため、取り返しのつかないものと意識され、受験生にとって大きな心理的圧迫になっている。
 先に述べた大学入試センター試験の成績の資格試験的な取扱いを推進するとともに、大学入試センター試験の受験機会を複数化し、再挑戦の機会を与えることは、受験生が本来の実力を発揮できるようにするとともに、その結果に納得できるようにする上で重要である。
 大学にとっても、広く国民に対して大学教育を受ける機会を提供する観点から、1回の大学入試センター試験の結果では埋もれてしまっている学生を、複数の機会を与えることにより、求める学生として適切に見いだすことができるものと考えられる。
 しかしながら、大学入試センター試験の複数回実施については、実施時期によっては高等学校教育に影響を及ぼすことが懸念される。また、実施体制についても、現在、大学入試センター試験の実施には、全国で約600の試験会場を準備し、約8万人の大学教員が携わり、試験当日には約4万人の大学教員が動員されるとともに、1つの試験会場のミスが大学入試センター試験全体に影響を及ぼすことから試験実施は非常に緊張した状態で行われているため、これ以上の入試業務の負担の増加には堪えられないという意見があるなど、難しい問題がある。このような点も含め、検討を行った。

 実施時期については、

1 1月のほかに、夏、秋など年度途中で大学入試センター試験を実施することについては、

  • 1月の試験と夏、秋の試験との結果を同一の選抜の資料として用いる限り、出題範囲を同じにせざるを得ないが、現役の受験生に対しては、まだ学習していない内容について試験をすることとなり、受験準備の早期化を招き、高等学校2年まででとりあえず3年までの内容を学習する詰め込み教育を助長する結果となるおそれがある。
  • また、受験生の心理として、夏又は秋の試験と1月の試験の2度受験せざるを得なくなり、受験の緊張が1年を通じて続くことになりかねない。
  • さらに、夏、秋の試験を浪人生のみが受験できる試験とすることについては、少数である浪人生のみに多大な労力を払って受験機会を設ける必要性が十分に見いだし難い。

といった問題がある。

2 現在本試験の1週間後に行われている追・再試験の代わりに、もう1回の本試験を行うことについても、

  • 2度の試験の成績を確定するまでに現在より2週間程度はさらに必要となることから、3月末までに各大学が選抜を終えることが困難になる。
  • 大学入試センターの成績処理等においては、2回の試験の処理を同時並行的に行う必要が生じるため、その負担が過大なものとなる。
  • 最初の試験の1週間後にその成績を開示する(得点通知)ことは物理的に不可能であり、受験生も最初の試験の成績は不明のまま2度目の試験に臨まなければならない。

といった問題がある。

3 これらに比べ、1月に実施している試験に加えて、12月にも大学入試センター試験を実施する場合には、

  • 受験準備の早期化、受験の緊張の長期化は、1か月程度に留まること。
  • 1月の試験の前までに受験生に対して試験成績の開示を行える可能性が高まり、受験生は当該通知を受けて、2回目の大学入試センター試験を受験するか、出願する大学をどこにするか、判断することができること。
  • あわせて各大学が資格試験的な取扱いを行えば、2回目の大学入試センター試験を受験する必要性は少なくなること。
  • 現在の追・再試験を廃止し、その試験問題を活用することによって、作題負担の増加を極力抑えることが可能になること。

といったように、大学入試センター試験の成績の資格試験的な取扱いの促進と併せることにより、問題点をかなり克服できると考えられる。
 こうしたことから、考えられる複数回実施の案の中では、12月にも大学入試センター試験を実施する案が比較的問題が少ないと考えられる。
 このため、大学入試センター試験については、1月に加えて12月にも実施し、選抜資料としてはより良い成績を用いることができるようにする方向で検討することが適当であると考える。
 しかしながら、入試日程については、1回目の試験が2学期になることにより、高等学校の特に3年次における教育課程の実施や学校行事等に影響を与えるなどの問題が依然として懸念されるため、高等学校の教育活動にできるだけ影響を与えないような配慮が必要である。実施体制については、例えば、大学教員がすべての入試業務に携わっている状況を改め、試験監督等において事務職員や大学院生等を活用するなど、2回実施を可能とするための実施に必要な条件整備が必要である。試験の実施について、高等学校側の協力を得ることも検討に値すると考えられる。また、2回の試験の難易度に大きな格差が生じないような研究の推進や試験問題の作成・点検機能の充実強化も重要である。
 大学入試センター試験の複数回実施には、解決すべき課題があるが、受験生の視点に立ち、大学入試においてやり直しのきくシステムを構築する上で重要であり、また、大学が求める学生を見いだす上でもその意義は大きいものと考えられる。
 このため、以上のような点に留意しつつ、今後、大学関係者、高等学校関係者等の間で協議する場を設け、入試日程や所要の条件整備も含めた具体的な実施方法等に関し早急に検討を行うことが適当である。

(6)大学入試センター試験の成績の複数年度利用

 大学入試におけるやり直しのきくシステムの構築の一環として、また先に述べた大学入試センター試験の成績の資格試験的な取扱いの一つとして、現在は当該年度の選抜にのみ利用が認められている大学入試センター試験の成績について年度を越えた利用を可能にすることが適当である。
 大学入試センター試験の具体的な内容等は、その基本的な事項を定めた「大学入試センター試験実施大綱」及びその具体的な事項を定めた「大学入試センター試験実施要項」によって規定されている。これらは、「平成○年度大学入試センター試験実施大綱」等のように、各年度ごとの試験についてそれぞれ定めることを前提とした上で、当該試験の成績請求・提供等について定めており、これを受けて、成績請求・提供等に関する具体的な取扱いも各年度ごとの試験についてそれぞれ行うものとなっており、現在の大学入試センター試験の成績の取扱いは、複数年度利用を可能とするものになっていない。
 複数年度利用については、年度によって異なる試験の成績を選抜の資料として同等に扱えるかという観点から、公平性の確保が問題になるが、この点については、各大学において、できる限り、大学入試センター試験においては大まかな達成度を見ることに力点を置いて、その成績を一定の学力水準に達しているか否かの判定に主として用いる資格試験的な取扱いを望みたい。このような資格試験的な取扱いが行われる限り、難易度に差のある試験を選抜に利用したとしても、公平性を欠くことにはならないものと考えられる。
 実際に過去の大学入試センター試験の成績を選抜に利用するか否かは、各大学の自主的な判断に基づくものであるが、それを希望する大学に対しては、大学入試センターにおいてその成績提供が行えるようにすることが必要である。
 なお、実施時期については、大学入試センターにおける、各大学への成績提供システムや過去の試験の答案の保存体制等の整備の準備に要する時間を考慮して、平成14年度入学者選抜より実施可能とすることが適当である。
 その際、大学入試センターの答案等の保存能力や各大学への成績提供業務等の処理能力、受験生の能力等の判定における過去の試験成績の有効性を踏まえれば、複数年度利用の範囲は、1年前の試験の成績のみとすることが適当である。

(7)大学入試センター試験の成績の本人開示

 大学入試センター試験の本人開示については、入試日程終了後の本人開示(事後開示)と各大学の個別試験出願前の本人開示(事前開示)とがある。
 事後開示については、入試日程終了後と言えども大学入試センター試験の成績を開示した場合、点数による輪切りの進路指導や大学の序列化をより一層助長する結果となるおそれもあるが、近年の情報公開の趨勢に照らし、その実現は重要であると考える。受験生本人にとっても、自分の学習の成果を把握し今後の学習上の参考となるなどの積極的な意義も認められる。
 このため、大学入試センターにおいて、入試日程終了後に大学入試センター試験の成績を受験生本人に開示することが適当である。ただし、大学入試センターにおいて開示のための体制やシステムを整備することが必要であることから、平成13年度入学者選抜については、各大学に対して本人開示を禁止している「大学入試センター試験実施要項」を見直し各大学がそれぞれの判断に基づき開示を行うことができることとし、平成14年度入学者選抜からは大学入試センターが開示を行うものとすることが適当である。
 次に、大学入試センター試験の得点を各大学の個別試験出願前に受験生本人に開示することについては、そのための事務処理に要する時間を考えると、現在の入試日程では物理的に困難である。
 このため、先に述べた大学入試センター試験の複数回実施に向けた入試日程の見直しに関する検討において、大学入試センター試験の成績を各大学の個別試験出願前に受験生本人に開示することも可能とする方向で考えていくことが必要である。

(8)新しい学習指導要領への対応

 現在、大学入試センターにおいては、新しい学習指導要領に即した平成18年度入試からの大学入試センター試験の出題教科・科目等について検討を始めたところであり、平成18年度入試に臨む生徒が高等学校に入学する平成15年4月までには出題教科・科目等を決定し公表することが望まれる。

第3章 各大学における入学者選抜の改善

1 各大学における入学者選抜の具体的な改善方策

 大学入学者選抜は、基本的には各大学の自主性に基づき行われるべきものであるが、先に述べた「大学入学者選抜の改善のための基本的な視点」を踏まえ、次のような取組を各大学に対して促していくことが必要である。

(1)募集単位の大くくり化と、その中での多様な選抜方法、評価尺度の導入

 今後、高等教育の普及が一層進むことを踏まえると、学部段階の大学教育においては、初等中等教育における自ら学び、自ら考える力の育成を基礎に課題探求能力の育成を重視するとともに、幅広い教養を身に付け、専門的素養のある人材として活躍できる基礎的能力等を培うことが重要になる。
 このようなことを踏まえれば、大学入学前の段階で入学後の専攻分野を決めるのではなく、大学入学後に幅広い分野の大学教育に触れながら自らの適性、関心等に基づき、専攻分野を決めることができるようにすることが望ましい。
 このため、現在、多くの大学においては、学科、さらには専攻、コースというように、募集単位を細分化した上で、それぞれの募集単位ごとに入学者選抜を実施し、学生を受け入れているが、上記のようなことを踏まえれば、募集単位は、細かく区分けするのではなく、学科ではなく学部単位で募集するなど、できる限り大くくり化することを考えていくことが必要である。
 その上で、多様な学生を受け入れ、大学教育を活性化する観点から、一つの募集単位の中で、異なる方法や尺度を用いることを考えていくことも必要である。

例えば、

  • 大学入試センター試験や学力検査の成績をもとに受験生をグループに分類した上で、グループごとに異なる選抜方法を用いて各々合否を判定する方法
  • 全ての受験生に同一の選抜方法を課した上で、全ての選抜資料をもとに総合的な能力等で判定する、論文試験のみにより論理的な思考力や表現力で判定する、調査書や活動報告書により高等学校における学習活動等の評価で判定するなど、複数の評価尺度を用いて各々合否を判定する方法

などが考えられる。
 このような取組は、細分化された募集単位に基づき少数の募集人員ごとにそれぞれ選抜を行い全体として入試業務が大きなものになっているという現状を改め、入試業務の負担軽減を図ることも期待できる。

(2)大学入試センター試験とは異なる能力の判定に力点を置いた個別試験の改善

 大学入試センター試験を利用する大学については、大学入試センター試験で受験生の高等学校段階における基礎的な学習の達成の程度が判定されていることを前提にして、大学・学部の教育内容や専門分野等の特性に応じた個別試験を実施することにより、受験生の能力・適性等を適切に判定してきたところである。
 今後、大学の多様化・個性化が一層進むとともに受験生の能力・適性等の多様化も一層進むことが予想される中で、各大学が求める学生を十分に見いだすためには、受験生の能力・適性等を多面的に評価しつつ、入学後の教育を受けるのに必要な能力・適性等があるかを適切に判定することが一層重要になる。
 このため、各大学が大学入試センター試験を利用する場合には、受験生の高等学校段階における基礎的な学習の達成の程度が大学入試センター試験により判定されていることを踏まえ、個別試験においては、例えば、論文試験や口頭試問等により論理的な思考力や言語的な表現力等の判定に力点を置く、あるいは大学入試センター試験より難易度が高い問題により高度な思考力や応用力等を見るといった、大学入試センター試験とは異なる能力を判定するような工夫・改善を行うことが求められる。
 また、高等学校における平素の学習等を評価する観点から、調査書、様々な学習活動、文化スポーツ活動、就業経験、活動経験の記録や成果物等の多様な調査資料をより一層活用することも必要である。その際、大学関係者が調査書等の意義に対する理解を深めるとともに、学校によりいわゆる学力レベルの差が存在することなどに起因する調査書の有効性の問題がその活用を妨げてきたとの指摘を踏まえ、高校生の学習の到達度の評価基準・評価方法等を開発するなど、客観的に到達度の評価を行えるようにするための方策について検討し、調査書や調査資料等の有効性を高めることが必要である。

(3)受験教科・科目の考え方について

 受験教科・科目については、入学後の教育との関連を十分に踏まえた上で設定することが必要であり、各大学の教育に必要なものを課すことは当然である。また、幅広い知識や教養を大学入学者に対し求め、文系・理系にとらわれない幅広い受験教科・科目を課すことがあってもいい。
 いずれにせよ、各大学の自主的な判断に基づき、それぞれの教育内容や教育理念を踏まえて受験教科・科目を適切に設定することが必要であり、入学後の教育に配慮して受験教科・科目を増やすことがあってもいい。
 ただし、受験教科・科目を増やすなど、その内容が受験生の学習に大きな影響を与えると考えられる場合においては、2年程度前には予告・公表することが望ましい。
 共通第1次学力試験実施以来、共通試験と同じ科目を個別試験で二重に課すことは受験生にとって過度の負担であるとの考えに基づき、従来、「大学入学者選抜実施要項」において、大学入試センター試験利用大学について個別試験の受験教科・科目数の削減を求めてきたところであるが、上記のような趣旨を踏まえ、このような受験教科・科目数についての一律の要請は見直すことが必要である。ただし、大学入試センター試験と個別試験との組み合わせ、受験教科・科目の設定における各大学の適切な配慮や工夫、受験教科・科目の変更の公表・周知の徹底を求めることは必要である。
 なお、受験教科・科目の設定にあたっては、普通科目に代えて職業に関する科目を加えるなど、受験生の多様な学習履歴に対する配慮も必要である。
 さらに、学力検査において必要な教科・科目を課すこと以外にも、以下のような学生に対するきめ細かな配慮や様々な工夫により、学生の大学教育への円滑な移行を図ることが必要である。

  1. 入学前に学生が学習しておくべき内容に関する積極的な情報提供に努め、高等学校の生徒の適切な学習選択等を支援すること。特に、推薦入学やアドミッション・オフィス入試等により比較的早期に大学が合格者の決定を行う場合には、高等学校側との連絡・協力を密にしながら、入学前までに学習しておくべき具体的な内容を示したり、具体的な課題を課すなど、合格者に対して入学前から学習指導等を行うことも望まれる。
  2. 入学者選抜において、学力検査を課さない教科・科目については、高等学校で履修しておく科目として予め指定したり、高等学校の調査書を選抜資料として活用すること。
  3. 入学後は必要に応じ学生の履修歴等に対応して大学教育の基礎を教えること。特に、学生が高等学校で履修していない科目等についていわゆる補習授業を実施するだけでなく、文献の読み方や議論の仕方、レポートの作成の仕方等についての授業を入学後すみやかに行うことにより、大学教育への円滑な移行を図ることも望まれる。

(4)分離・分割方式の募集人員の適切な配分

 国公立大学の入学者選抜については、昭和62年度入試から連続方式が、平成元年度入試から分離・分割方式が導入され、さらに、国立大学においては平成9年度入試から、公立大学においては平成11年度入試から、原則として分離・分割方式に統一されるなど、受験機会の複数化の観点からの取組が行われてきたところである。
 現在、前期日程試験と後期日程試験の募集人員の配分比率は全国平均で、おおよそ7対3となっており、この比率はここ数年大きく変化していない。
 後期日程試験については、多くの大学で面接、小論文等の丁寧な選抜が採り入れられているために、その比率が大きく拡大することが困難な面があることも確かではあるが、各大学においては、それぞれの状況を勘案しながら、受験機会の複数化の観点や分離・分割方式への統一という今日的状況を踏まえ、前期日程試験と後期日程試験の募集人員の配分が、より一層適切な比率となるよう積極的な対応を行うことが望まれる。
 また、後述するアドミッション・オフィス入試に限らず、これからの選抜においては、求める学生を適切に見いだすために、丁寧な選抜と時間をかけた評価を行うことが求められる。今後は、国公立大学の後期日程試験のみならず前期日程試験についても、受験生の受験機会の複数化の観点のみならず、多様な評価尺度により求める学生を見いだすという観点から、各大学の創意工夫に基づき多様な取組が積極的に行われることが望まれる。

(5)秋季入学の拡大

 秋季入学については、従来、「特別の必要があり、かつ、教育上支障がないとき」に限り導入できることとされていたものが、学校教育法施行規則の改正により、平成11年度から各大学の判断により柔軟に導入できるようになったところである。
 現在のところ、秋季入学は、一部の大学が取り組んでいるにとどまっており、また、その多くが、欧米諸国等我が国と学年歴の異なる国との円滑な交流を図る観点から、留学生や帰国子女等を対象にしたものである。
 今後は、受験生の選択の幅を広げ、多様な学習計画を可能にするといった観点からも、各大学において、一般選抜における秋季入学の導入を積極的に行うことが求められる。その際、1月の大学入試センター試験の成績を、秋季入学の選抜において活用することも考えられる。
 あわせて、学期ごとに授業が完結するセメスター制の導入等、秋季入学を円滑に導入するための大学教育の工夫・改善も行われることが求められる。
 また、秋季入学者については、大学を卒業する時点が他の学生と異なる場合も考慮し、企業の採用活動における配慮を期待したい。

(6)事務職員等の積極的な活用や入試専門組織の整備

 入試業務の合理化を図る観点から、大学教員を中心とした入学者選抜の実施体制を見直し、入試業務に対する教員の関与は、入学者受入方針(アドミッション・ポリシー)の決定や最終的な合格者の判定といった選抜にとって本質的な部分に集中し、その他の部分については事務職員や大学院生等の積極的な活用を図ることが適当と考えられる。
 その際、現在の大学入試センター試験の実施においても、試験監督等において事務職員や大学院生等を活用することも考えられる。
 さらに、事務職員等の積極的な活用の一環として、入試専門組織を整備することも考えていく必要がある。
 アメリカの多くの大学では、アドミッション・オフィスの専門の事務職員が選抜方法を決め、様々な観点から受験生を評価し合否を決定している。我が国においても、教員の入試業務の負担の軽減、専門家による適切な選抜の実施等の観点から、選抜に関する業務を集中的に行い、その結果を教授会に報告するような専門組織を学内に設けることを検討することが必要である。その際、我が国では、事務職員のみによる選抜には抵抗が強いものと考えられること、事務職員の専門的知識の蓄積にも時間を要すること等から、教員と事務職員の協力の下で実施する体制を確立することが重要である。
 今後の入学者選抜においては、大学の教育理念等に基づいて求める学生像を明確にし、そうした学生を得るために、広報活動や実際の選抜等について総合的に戦略を練り、大学が求める学生を受け入れていくことが必要である。入試専門組織を具体的にどのような組織とするかは大学の運営方針等により様々であるが、こうした幅広い業務について権限と責任を持つ組織として整備されることが望まれる。
 このような専門組織を整備するためには、選抜等について専門的知識を有する専門的な事務職員を養成することが重要であり、そのための体系的な研修の充実も必要であり、このような研修の在り方について検討する必要がある。

(7)各大学の選抜における信頼性の高い外部の試験の活用

 各大学の選抜において、入試業務の合理化を図る観点から、信頼性の高い外部の試験を一層活用することも重要な方法の一つである。
 大学入試センター試験は、受験生の高等学校段階における基礎的な学習の達成の程度を判定するものであり、大学入試センター試験を利用する大学においては、このような大学で学ぶための土台となる能力が判定されていることを前提に、それぞれに必要な個別試験を実施することが可能となっている。各大学の教育を受けるのに必要な能力・適性等を適切に判定する一方で、試験問題の作成も含めた業務負担を軽減する観点からも、大学入試センター試験の活用は有効と考えられる。
 また、TOEFLやTOEICはアメリカ等英語を母国語とする国の大学への入学のための英語能力を測定することなどを目的とした試験であって、我が国の一般的な高校生には難易度は高いと考えられるが、例えば、入学後の教育において外国語教育やコミュニケーション能力の育成等を重視している大学においては、入学後の教育に必要な能力・適性等を判定するために、英検のみならずTOEFL等を活用することも有効であると考えられる。

(8)試験問題の作成における外部の専門家等の活用

 大学入学者選抜は、受験生がそれぞれの大学の教育を受けるのに必要な能力・適性等を有しているかを判定するものであり、受験生の能力・適性等を適正に判定できるような良質な問題を出題することが基本である。
 しかしながら、大学教員が教育研究活動のかたわら良質な問題の作成に取り組むことが難しくなっている状況の下で、試験問題の作成の負担があまりにも過重である場合には、入試業務の合理化の一環として、外部の専門家等の協力を得ることも検討に値すると考えられる。
 その際、入学者選抜、特に試験問題の作成には、機密性や公平性、中立性が強く求められるものであり、社会において疑惑が持たれないような方式を用いることは当然の前提である。
 外部の専門家等の活用としては、先に述べた信頼性の高い外部の試験の活用も一つであるが、例えば、他の大学の教員を試験問題作成協力委員として委嘱し、試験問題の点検等に協力してもらうことなども考えられる。
 また、20年以上に亘って高等学校の学習指導要領に準拠した良質な試験問題を出題してきた大学入試センターを活用するという観点から、前述したとおり、大学入試センターにアイテムバンクを構築し、将来的には、各大学に試験問題の素材を提供し、各大学が試験問題を作成するに当たって利用できるようにすることが必要である。
 さらに、良質な問題の収集・分析評価や試験問題の作成・点検にあたる常勤の専門家を置くことなどにより、大学入試センターにおける試験問題の作成・点検機能の充実強化を図ることが必要である。あわせて、大学入試センターによる各大学の試験問題の作成の支援とそのための体制の整備について、検討することが必要である。

(9)入学者選抜についての評価

 各大学の選抜をより良いものにするための工夫・改善の取組を進めるためにも、入試に対する社会の信頼や理解を得るためにも、入学者選抜についての評価を促進することが必要である。
 これまでも、各大学においては、選抜方法の工夫や多様な入試を行った結果入学した学生が入学後どのような成績をとり、どのように活躍しているかの追跡調査等を実施しているところである。今後は、このような追跡調査のみならず、各大学の選抜が、求める学生を適切に見いだすものとなっているかという観点から、入学者受入方針(アドミッション・ポリシー)に照らした選抜方法の評価等を適切に行うことが必要である。その際、大学入試センターが入学者選抜に関する調査研究結果を積極的に各大学に提供し、各大学の評価において活用することも有効であると考えられる。
 また、選抜方法に関する評価については、自己点検・評価のみならず、高等学校関係者等による外部評価等も行われることが求められる。さらに、本年4月に設立された「大学評価・学位授与機構」による教育研究活動の評価の一環として、選抜方法に関する評価を行うことも考えられる。
 なお、試験問題の評価については、以下のような点に留意することが必要である。

  1. 試験問題の適否の判断は極めて専門性の高い事項であり、正解率の高低等の客観的な数値に基づき評価を行うことは困難であり、特に、思考力や応用力等の大学入学後に学ぶための基礎となる能力を問う良問であれば、単にその知識が学習指導要領や教科書で扱われていないというだけで一概には不適切とは言い難い面があること。
  2. 大学が入学者受入方針(アドミッション・ポリシー)として高度な能力を受験生に求める場合もあり、学習指導要領に準拠した上で高度な能力を問おうとする良問であれば、難問であるとの指摘がなされても、一概には不適切とは言い難い面があること。
  3. 大学入試の目的が入学後の教育に必要な能力を見るものであることを踏まえれば、その試験問題はそれぞれの教育内容に関連させて各大学が適切に設定すべきものであり、その評価も各大学の個々の教育内容に照らして行うことが必要であること。

 このため、試験問題については、専門家も参画しながら、自己点検・評価や高等学校関係者等による外部評価等の各大学の自主的な取組が行われることが望まれる。
 なお、試験問題の作成に当たっては、試験問題を作成する組織とは別に、試験問題としての適切さを点検する組織を設けることが望ましい。

(10)入学者選抜等に関する情報提供の推進

 各大学においては、学生とのより良い相互選択を目指す観点から、入学者選抜に関する情報、さらには教育研究の内容等について、正確で質の高い情報を進学希望者や高等学校等に積極的に提供していくことが必要である。
 このような情報提供を推進する観点から、現在、キャプテン通信網を通じて全国すべての国公私立大学の入学者選抜に関する情報や大学案内の情報を提供している、大学入試センターのハートシステムをインターネット化し、情報提供システムの充実を図るとともに、そのさらなる活用の方途について検討することが必要である。
 さらに、今後は、大学入試のみならずそれぞれの教育内容等について互いの理解を深めるとともに、一層の連携協力に努めることが必要である。このような観点から、大学や教育委員会等が協力し、都道府県単位で高等学校関係者と大学関係者が一堂に会し情報交換や相互理解を行う連絡協議会等の開催、大学教員による高等学校の生徒に対する学問の紹介や講義の実施等の取組を進めることも必要である。

2 アドミッション・オフィス入試の適正かつ円滑な推進

(1)アドミッション・オフィス入試の意義と現状

 アドミッション・オフィス入試は、選抜方法の多様化、評価尺度の多元化等の入学者選抜の工夫・改善の中で各大学の自主的な取組として発展してきた。
 平成2年度入試において、慶應義塾大学が初めて導入し、少しずつこれを導入する大学が増えてきたが、平成12年度入学者選抜においては、新たに59の大学が導入することとなり、現在、国公私立大学あわせて72大学でアドミッション・オフィス入試が実施されており、取組が着実に拡大している。
 アドミッション・オフィス入試には明確な定義はなく、その具体的な内容は各大学の創意工夫に委ねられている。このため、現在では大学自らがアドミッション・オフィス入試と呼称しているものがそれであるという状況にあるが、一般的に言えば、「アドミッション・オフィス入試」とは、アドミッション・オフィスなる機関が行う入試というよりは、学力検査に偏ることなく、詳細な書類審査と時間をかけた丁寧な面接等を組みあわせることによって、受験生の能力・適性や学習に対する意欲、目的意識等を総合的に判定しようとするきめ細かな選抜方法の一つとして受け止められている。
 その意味でアメリカの大学においてアドミッション・オフィスが行う入学者選抜が、経費節減と効率性を目的としたものと言われるのに対して、すでに我が国独自の選抜方法となっている。
 特に最近の動向をみると、高校生の大学に対する理解に力点を置き、大学説明会等を入学者選抜の過程に位置付けたり、高校生とのコミュニケーションを重視した事前の面接を行ったりすることにより、大学の理念や特色等を十分に理解した上で進学してもらおうとする、いわば「相談型」「対話型」のアドミッション・オフィス入試も増えてきている。
 大学入学者選抜が「選抜」から「相互選択」へと変化しつつある中、このような「相談型」「対話型」のアドミッション・オフィス入試も増加していくものと考えられる。
 アドミッション・オフィス入試は、受験時の学力に過度に依存することなく、受験生の能力・適性等を多面的かつ丁寧に判定することを目的とするものであり、これが趣旨通り実施されることで大学入学者選抜の改善に大きく寄与すると期待される。すなわち、アドミッション・オフィス入試に限らず、今後の入学者選抜においては、受験生の能力・適性等を多面的に判定し、求める学生を見いだすことが重要であり、アドミッション・オフィス入試の推進は、丁寧な選抜を入学者選抜全体について推進することにつながるものと考えられる。
 しかし、アドミッション・オフィス入試には、どのような学生を求めているのか、出願資格、選抜基準が明確でなく、推薦入学とどこが異なるのかはっきりしない、あるいは学生の青田買いに繋がることが懸念されるといった問題点も指摘され始めている。
 アドミッション・オフィス入試のような新しい形の選抜方法は、大学の創意工夫により様々な試みがなされることが望ましく、その取組が緒についたばかりの段階で、厳密な定義を与え、各大学の具体的な方法を拘束するような基準を設けることは望ましくない。しかし、一方でアドミッション・オフィス入試に対してマイナスのイメージが定着してしまうことは、各大学の多様化・個性化につながるせっかくの新たな試みの芽を摘むことにもなりかねないという問題がある。アドミッション・オフィス入試が適正な形で実施され、大学入学者選抜の重要な方法として社会に受け入れられ、定着することができるようにするためには、最近の各大学における取組の拡大を踏まえつつ、アドミッション・オフィス入試の目的や特色、あるべき方向について、基本的な考え方を示すことが必要である。

(2)大学入学者選抜におけるアドミッション・オフィス入試の位置付け

 これまでに実施されているアドミッション・オフィス入試をみると、推薦入学と異なり、推薦者を必要とせず、一定の条件を満たす限り誰でも自らの意思で出願・受験できるものであり、また、受験生の能力・適性等を大学自らが多面的に判定しようとするものであることから、公募型入試の一つと考えられる。このことから、アドミッション・オフィス入試の入学者選抜における位置付けとしては、一般選抜に位置すると考えることが適当である。
 アドミッション・オフィス入試を実施している大学の中には高等学校長や教員等の評価書等を出願書類の一つとして求めるところもあるが、これは選抜に当たって大学が用いる多くの資料の一つという位置付けであり、推薦入学における高等学校長の推薦とは位置付けを異にするものである。
 アドミッション・オフィス入試のほかにも、各大学は、自己推薦入試、コミュニケーション入試、自己アピール入試等の様々な名称の入試を実施している。これらの選抜方法は、各大学が新たな試みであることを訴えかけるために様々な名称を考案している面もあるが、その内容をみると、その多くは(1)で述べたアドミッション・オフィス入試の特徴を備えていると考えられる。

(3)アドミッション・オフィス入試に求められるもの

 アドミッション・オフィス入試が社会に受け入れられ、大学と学生とのより良い相互選択を目指すものとして定着していくためには、次のような内容を持つことが適当と考えられる。

  1. 自らの意思で出願できる、公募型の入学者選抜であること
     公募型としつつ、例えば出願に高等学校長の推薦を必須の条件とするようなものについては、アドミッション・オフィス入試というよりは推薦入学の一形態と考えることが適当である。
     現在、アドミッション・オフィス入試については、推薦入学とは異なるものとして、募集人員の目安となる割合等が示されていないが、これはアドミッション・オフィス入試が公募型であって一定の条件を満たす限り誰でも出願することができるものであり、高等学校長又はその他の者の推薦を必須の条件とし、その推薦を基礎として選抜が行われるものについては、推薦入学と考え、募集人員の目安となる割合等を適用していくことが適当である。
     推薦ではなく、高等学校長等の第三者の評価書等を補足的な資料として必要とするものもありうるが、その際には第三者の範囲は広い方が望ましい。
  2. 求める学生像や、受験生に求める能力・適性等を明確にし、それに応じた選抜方法を工夫・開発すること
     アドミッション・オフィス入試は、大学と学生のよりよい相互選択を目指すものであり、学生の募集に当たっては、大学が、いかなる学生を求めるのか、どのような能力、適性、意欲、目的意識等を求めるのか、明確に提示し、その上で、求める学生を見いだすのに適した選抜方法を工夫・開発する必要がある。
     その際、具体的な選抜方法や評価尺度は各大学の主体的判断の下に行われるべきものであり、各大学の創意により多様な方法が工夫されることが望ましい。現実に行われているアドミッション・オフィス入試をみると、詳細な書面審査と時間をかけた丁寧な面接の組み合わせが多いが、模擬授業やグループディスカッションを取り入れたり、1回限りではなく何度も面接等を実施し長い期間をかけて学生を評価している大学もあり、今後、各大学の創意工夫に基づき多様な試みが行われることが望ましい。
     例えば、受験生の多様な能力・適性等や高等学校における学習成果を多面的、総合的に評価する観点から、各大学の創意工夫に基づき、高等学校における職業体験やボランティア経験、高校時代に取得した職業資格、「総合的な学習の時間」や「課題研究」等の学習成果を評価していくことも考えられる。
     ただし、アドミッション・オフィス入試における選抜方法としては、それぞれの大学の入学者受入方針(アドミッション・ポリシー)に適合したものであることが重要である。
     例えば、国際社会で活躍する人材を育成することを教育目標として掲げる大学において志願者に対し高度な英語のコミュニケーション能力等を求める場合には、TOEFL等における一定の水準を出願要件にしたり、リスニング、ライティングテストを行うようなことも考えられる。
     そして、このように各大学が選抜方法の工夫・開発に取り組むことは、各大学の求める学生像の一層の明確化にもつながるものとも考えられる。
     さらに、求める学生像の明確化に加えて、そのような学生を見いだした上で入学後の教育においてどのような学生に育成するのかという教育方針についても明らかにしていくことが必要である。
     また、高校生のみならず高等学校において進路指導を担当している教員等に対する説明・情報発信等により、大学が求める学生像、選抜方法、教育方針等に対する高等学校側の理解を深めることも必要である。
  3. 受験生の能力、適性、意欲、関心等を多面的、総合的に評価すること
     アドミッション・オフィス入試は、受験時の学力に過度に依存せず、将来の可能性も見通した上で、能力・適性等を多面的、総合的に評価することを目的とするものであり、ペーパーテストによる学力検査に過度に重点を置いた選抜基準を設けることは基本的に適当ではない。一方、どのような選抜方法であれ、大学入試が大学教育に必要な能力等の判定を目的として実施されていることにかんがみれば、基礎学力の判定を全く抜きにして選抜を行うことも適当ではない。アドミッション・オフィス入試は、第三者の推薦や学力保証を基礎とするものではなく、大学が提供する教育機会を活かすことが可能な能力等があるかどうかを自らの目によって受験生を評価するものであり、受験生に一定の基礎学力があることを要求し、調査書を活用するほか、自ら試験を実施し必要な学力を判定することも妨げられるべきではない。
     例えば、アドミッション・オフィス入試において、高等学校での基礎的な学習の達成の程度を判定し、大学に信頼性の高い情報を提供することを目的とする大学入試センター試験の成績を資料の一部として活用することも考えられる。
  4. 高校生との相互のコミュニケーションを重視するものであること
     アドミッション・オフィス入試において求める学生を見いだすためには、大学から高校生に働きかけるという側面が今後重要になる。すなわち、高校生の進路選択の段階から大学が関与し、高校生の能力・適性等を把握しながら、当該大学の教育内容、教育理念、どのような付加価値を与えることができるかなどを率直に伝えることにより、高校生の進路選択や学習を支援するという機能が求められる。例えば、大学の紹介にとどまらず、高校生の疑問に応え、当該大学の試験を受け、進学するためにはいかなる学習が必要であるかについてアドバイスを与えることなどが求められる。そのようなやりとりの中で、大学と高校生とのよりよい相互選択を図っていくことが必要である。
     さらに入学決定後も、必要に応じ、入学前に行っておくべき学習準備等についてのアドバイスを行ったり具体的な課題を課すなど、合格者に対する丁寧なケアを行うことが求められる。また、このような大学入学前の学習準備等の取組を行う場合には、高等学校と密接に連携協力しながら高等学校での学習と関連付けつつ行うことも求められる。
     なお、適切な相互選択を行おうとする場合、入学者選抜のプロセスは長期化することが考えられる。すなわち、アドミッション・オフィス入試が、その理念通り、受験時の学力に過度に依存せず、入学後の能力の伸長までを見据えつつ、受験生の能力・適性等を総合的に判定し、大学と学生の双方のよりよい相互選択を目指す形で行われるとすれば、選抜の期間も長くならざるを得ないという事情がある。また、アドミッション・オフィス入試が、前述のような受験生の進路選択への支援という機能をもつものであるとすれば、選抜とその前段階との区別を明確につけることも難しくなってくる。このようなことを踏まえれば、アドミッション・オフィス入試とは、大学と受験生の相互選択に至る一連の過程として捉えることが適当である。
     このようなことを踏まえれば、アドミッション・オフィス入試の実施時期について一定の目安を設けることは極めて困難であると考えるが、
     1.アドミッション・オフィス入試において教科・科目中心の学力検査を行う場合には、現在の一般選抜の学力検査と同様に、原則2月以降に行う
     2.複数回の面接の実施等にあたっては、その時期、内容等に関し、高校生に過度な負担とならないよう配慮する
    など、その実施時期等に関し、高等学校教育への影響に配慮することは必要である。
     さらに、アドミッション・オフィス入試については、早期に進学が決まることにより落ち着いて学習や社会的経験を積むことが可能となるという利点を活かすことが求められる。前述したように、合格決定後も大学において、高等学校の理解と協力を得ながら、高等学校での学習と関連付けつつ入学準備学習を行わせる等により学習に対する動機を維持し、この期間を有意義なものとするよう支援していくことも必要である。
     また、上記のような入学準備学習の一環として、入学者選抜の資料としてではなく、入学準備あるいは大学入学後の教育の参考資料としての活用の観点から、各大学の判断によりアドミッション・オフィス入試等の合格者に大学入試センター試験を受験させることも考えられる。
  5. 専門的なスタッフの充実等十分な体制を整備すべきこと
     アドミッション・オフィス入試に限らず、これからの選抜において求める学生を見いだすための努力を行おうとすれば、選抜についての高い専門性を有するスタッフの整備等十分な体制を整えることが必要であり、アドミッション・オフィス入試の実施にあたっては、その特色にかんがみ、特に必要であると考えられる。
     現在、各大学においても、アドミッションオフィサー(私立大学)といった専門的なスタッフの整備、アドミッションセンター(国立大学)、アドミッション・オフィス(公私立大学)といった組織の整備がなされた上で、アドミッション・オフィス入試を実施しており、このような取組が今後とも促進されることが必要である。
     ただし、アドミッション・オフィス入試を実施していると言い得るためには、アドミッション・オフィスといった組織を設けていけば十分ということではなく、選抜方法等においてその目的等に沿った取組が行われていることが必要である。

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