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大学院入学者選抜の改善について (答申) ((平成11年8月9日 大学審議会))

平成11年8月9日
大学審議会

 本審議会は、昭和62年10月29日、文部大臣から「大学等における教育研究の高度化、個性化及び活性化等のための具体的方策について」諮問を受けて以来、多岐にわたる高等教育改革の課題について調査審議を進めている。

 このうち、大学院の問題については、昭和63年に大学院部会を設置し、これまでに「大学院制度の弾力化について」(昭和63年12月)、「学位制度の見直し及び大学院の評価について」(平成3年2月)、「学位授与機関の創設について」(平成3年2月)、「大学院の整備充実について」(平成3年5月)、「大学院の量的整備について」(平成3年11月)、「夜間に教育を行う博士課程等について」(平成5年9月)、「通信制の大学院について」(平成9年12月)それぞれ答申を行い、平成8年10月には「大学院の教育研究の質的向上に関する審議のまとめ」の報告を行った。

 さらに、平成9年10月の文部大臣からの諮問を受けて、21世紀初頭における高等教育の在り方についての幅広い検討を行い、平成10年10月には大学院についての諸制度の改革方策を含む「21世紀の大学像と今後の改革方策について」答申を行った。

 これらの答申等に基づき、大学院の整備充実と所要の制度改革が図られつつあるが、社会の高度化・複雑化、技術革新の加速化、生涯学習志向の進展等を背景として、学術研究の推進と、研究者や高度な専門的知識・能力を有する人材の養成を担う大学院に対する社会の要請は一層多様化・高度化している。このような要請に大学院が教育研究水準の向上を図りつつ適切にこたえていくためには、教育研究の方法、形態等について一層の改善を進めるとともに、大学院における入学者選抜についても今後の大学院の在り方を踏まえた改善方策を検討する必要があると考えられ、大学院部会では、平成11年2月以降8回にわたり調査審議を進めてきた。

 本審議会は、その結果に基づき、さらに総会で審議を行い、このたび、大学院入学者選抜の改善について結論を得たので、逐次答申の要請に応じ、ここに答申を行うものである。

1.大学院入学者選抜改善の基本方向

1 大学院の役割の増大

(a) 大学院は、基礎研究を中心とした学術研究の推進とともに、優れた研究者の養成及び社会の様々な分野で活躍できる高度の専門的能力を有する人材養成の中核的機関であり、人類の知的資産の継承と未来を拓く新しい知の創造、社会の発展や文化創造への積極的貢献等、様々な面において重要な役割を果たしている。

(b) 学術研究の著しい進展、社会・経済の高度化・複雑化や国際化の進展等が一層進むと予想される21世紀において、我が国が知的リーダーシップを発揮できる国等として一層発展していくためには、大学院において質の高い教育研究を展開し、独創的な学術研究を推進するとともに、高度な課題探求能力や専門的知識等を有し社会の各分野の第一線で活躍できる多くの優れた人材を養成することが極めて重要となる。また、生涯学習需要の高まり等に伴い、大学院が人々の関心や意欲等に応じてその能力を十分に伸ばしていくための多様かつ充実した高度の学習機会を提供していくことがますます重要となっていく。このため、将来にわたって我が国の学術研究水準の向上や社会・経済・文化等の発展を図る上で極めて重要な機能を果たしている大学院への期待とその役割は今後一層増大していくと考えられる。

(c) 平成10年10月の本審議会答申「21世紀の大学像と今後の改革方策について」においては、このような観点から、今後の大学院の在り方について、各大学院の多様化・個性化を推進しつつ、全体としては、今後、専門性の向上は大学院で行うことを基本として教育研究の質の更なる高度化を図るとともに、1)学術研究の高度化と優れた研究者の養成機能の強化、2)高度専門職業人の養成機能、社会人の再学習機能の強化、3)教育研究を通じた国際貢献の役割の3点を重視した多様で活力あるシステムを目指すことが重要であるとの提言を行ったところである。

(d) また、特に、大学院の入学者選抜の在り方に関連して、今後、社会・経済の高度化・専門化、大学等と社会の往復型の生涯学習社会への転換等が一層進行していくことを踏まえると、職業上必要な新しい知識・技術を求める者、実社会で身に付けた実践的な知識・経験を学術的に更に高めていくことを希望する者や留学生に対して大学院が広く門戸を開き、それらの要請に適切に対応していくことが一層求められる旨提言したところである。

(e) 大学院が、直面する多くの課題を解決し、上述したような多様な要請や期待にこたえて発展を遂げていくためには、教育研究の質の更なる向上を図るとともに、大学院入学者選抜についても今後の大学院の在り方を踏まえつつ、大学院の特性に応じた大学院入学資格の一層の弾力化及び入学者選抜実施方法等の改善の両面から総合的な検討を行うことが求められている。

2 大学院入学者選抜の現状と課題

(1)これまでの改革の進展状況

  世界的水準の学術研究の推進、優れた研究者及び高度専門職業人の養成の中核的機関である大学院については、教育研究の高度化を目指して質・量ともに飛躍的充実を図るとの基本的な考え方の下に、本審議会答申等を受け、大学院入学者選抜の改善とともに、独立研究科・専攻の開設や独立大学院の設置、昼夜開講制の制度化や科目等履修生制度の導入、夜間大学院や通信制大学院の制度化など様々な改革が進められてきている。

(ア)大学院入学資格の弾力化

(a) 大学院入学資格に関連しては、本審議会答申を受け、研究者として早期から専門教育を実施するとともに、社会人の再学習を積極的に推進するためには、大学院の入学資格の弾力化が必要との観点から、平成元年に学校教育法施行規則等を改正し、優秀な学生の学部3年次からの大学院入学の制度化、修士の学位を有しない学部卒業者で一定の研究歴が評価される者への博士後期課程入学資格の付与の措置が講じられたところである。

(b) このような制度改正を受け、大学卒業前に早期に大学院に進学した学生数は、平成10年度で、国公私立大学合計55大学81研究科で205人にのぼっている。

 また、大学卒業後2年以上の研究歴を有する者で修士の学位を有する者と同等以上の学力があると認められ博士後期課程に入学した者は、平成4年度の20大学84人(全進学者数9,481人)から、平成10年度45大学219人(全進学者数15,491人)へと増加している。

(イ)大学院入学者選抜実施方法等の改善

(a) 技術革新の加速化による職業上の知識・技術の継続的学習の必要性の高まりや、労働時間の短縮に伴う余暇時間の増大など様々な要因から、社会全体の生涯学習需要はかつてない高まりをみせている。このような需要に応え、各大学では、社会人を対象として行う面接等を重視した社会人特別選抜が積極的に実施されており、実施大学は平成10年で240大学536研究科となっている。社会人入学者数について見ても、平成元年では修士課程1,539人、博士課程288人であったが、平成3年には修士課程2,233人、博士課程460人へと、更に平成10年には修士課程5,177人、博士課程2,027人へと増加している。

(b) このほか、大学院の活性化や学生の創造性の向上等の観点から、他大学の大学院への進学促進なども併せて進められている。この点については、例えば大学院を有する7つの国立大学についての文部省の抽出調査結果では、入学者に占める他大学の学生の比率(7大学平均)は、修士課程では平成4年度26.6%から平成10年度28.8%へと上昇が見られ、博士課程では他大学からの入学者比率では平成4年度35.5%から平成10年度32.7%へと低下しているものの、入学者数は増加している。

(2)今後の検討課題

(a) 大学院の入学者選抜については、上述したように大学院入学資格の弾力化及び入学者選抜実施方法等の改善の両面から改革のための取組が進められておりかなり成果が上がってきてはいるが、次のような点について更なる改善が必要との指摘がある。

(b) 大学院入学資格については、平成3年2月の本審議会答申「高等専門学校教育の改善について」及び平成8年10月本審議会報告「大学院の教育研究の質的向上に関する審議のまとめ」においても述べたとおり、高等専門学校及び短期大学卒業者に対する卒業後の実務経験等を評価しての大学院入学資格付与について具体的検討を進めることが求められている。
 また、平成9年12月に教育職員養成審議会がとりまとめた「養護教諭の養成カリキュラムの在り方について(報告)」において学士の学位は有しないが養護教諭の専修免許状又は一種免許状を有する者への大学院入学資格の付与について、平成11年2月の21世紀医学・医療懇談会第4次報告「21世紀に向けた医師・歯科医師の育成体制の在り方について」において医学部・歯学部における医学・歯学系大学院への早期進学特例の導入について、それぞれ検討を求める旨の提言がなされているところである。

(c) 大学院入学者選抜実施方法等についても、実施要項が昭和49年に一部改正が行われた後は見直しが行われておらず実情に合っていないのではないかとの指摘があり、望ましい大学院入学者選抜の在り方の検討を踏まえた見直しが必要となっている。
 さらに、平成8年10月の本審議会報告「大学院の教育研究の質的向上に関する審議のまとめ」において、他大学の大学院への進学促進など学生の流動性を高めていく必要がある旨提言したところであるが、必ずしも十分な改善が図られている状況にあるとは言えないとの指摘もあり、今後一層の改善が必要であると考えられる。

(d) このように大学院入学者選抜の在り方に関しては、様々な観点から検討が求められている。大学院における入学者選抜は今後の大学院における教育研究の在り方と密接に関連するものであることを考えると、これらの課題について、今後の大学院の在り方を踏まえつつ、大学院入学資格の在り方及び大学院入学者選抜実施方法等の在り方の両面から総合的に検討することが必要である。
 また、今後大学院入学資格の一層の弾力化とともに大学院の量的拡大が進むと予想されることを踏まえると、大学院における教育研究の質の更なる向上の観点から大学院入学者選抜について適切な評価を実施することが必要である。

3 今後の入学者選抜の基本的な在り方

(1)大学院の特性に応じた入学資格の一層の弾力化

(a) 今後の大学院の在り方については、上記1、1で述べたようにより多様で活力ある柔軟なシステムを目指すことが求められており、このことを踏まえると、大学院入学資格についても今後各大学院における一層弾力的な運用を確保する方向を基本として検討を進める必要がある。

(b) 我が国の大学院が将来にわたって学術研究の水準を世界のトップレベルに伍して高めていくためには、高度の研究能力と広い視野を持った研究者の養成、特に創造性豊かな若手研究者の育成を図っていくことが重要であり、優れた資質を持つ者に対し大学院教育を受ける機会をできるだけ広く開いていくことが求められている。
 また、著しい学術研究の進展、急速な社会変化や産業技術の高度化、生涯学習需要の増大等に伴い、大学院における高度専門職業人養成に対する社会の要請や職業上必要な新しい知識・技術を求める者をはじめとする社会人の大学院レベルの再学習の需要は今後とも増大していくと考えられる。このような要請に応えて、積極的に大学院への社会人の受入れを図り、同時に豊富な経験を有する社会人の受入れにより大学院の教育研究を活性化することは、今後の大学院の充実と改革の上でも重要である。
 さらに、大学院における教育研究の内容は、専門性が高く各研究科・専攻によって大きく異なるほか、教育研究指導の方法も、各学生の研究テーマを踏まえた研究指導の実施など個々の学生に対する個別的な指導が求められるものである。このような大学院の教育研究の特性から、入学資格についても個別的な取扱いが可能となるよう大学院に広く判断を委ねる方向で一層の弾力化を図ることが求められている。

(c) このように大学院については、その多様化・個性化を進めつつ、社会の多様な要請に応え、期待される役割を十分に果たしていくことが教育研究の質の更なる向上に繋がるものであることから、大学院教育を受ける機会をできるだけ広く開いていくことが求められている。このことを踏まえると、大学院入学資格については、学校教育制度における制度的な接続を基本としつつ、大学院に広く判断を委ねる方向で一層の弾力化を図り、大学院で学ぶ意欲と能力を有すると判断される者にできるだけ広く大学院教育を受ける機会を提供していくことが必要である。

(d) この大学院入学資格の弾力化は、「大学を卒業した者と同等以上の学力があると認められる者」(学校教育法施行規則第70条)の具体的な取扱いについて、その求められる能力等の水準を維持しつつ、具体的な対象範囲をできるだけ拡大することにより、社会の多様な要請にこたえることを目指すものであり、大学院入学者に求められる能力等の水準自体の低下を許容するものではない。各大学院においては、このような水準の低下により、当該大学院に対する社会的信頼が損なわれることのないよう、今回の弾力化の趣旨を十分に踏まえた対応が求められる。さらに、大学院入学資格を認められた者が、個々の大学院において教育を受けるにふさわしい能力・適性等を有する者として実際に入学が許可されるか否かは、入学者選抜試験等における各大学院の適切な判定によるものであることはいうまでもない。
 各大学院においては、大学院入学資格の取扱いについて弾力化の趣旨を踏まえた適切な運用を図った上で、入学者選抜試験等を適切に実施するとともに、各課程の趣旨、目的に即して課程修了までのプロセスを明確化するなどにより課程制大学院としての充実した教育研究指導を行い、世界的水準の教育研究の展開を目指して教育研究水準の更なる向上を図ることが重要である。

(2)入学者選抜実施方法等の改善

(a) 各大学院が多様化・個性化を進め、特色ある教育研究を展開していくためには、それぞれの大学院がその理念・目標を明確にし、どのような学生を求めているのかを明確に示していくことが重要である。また、今後大学院においては、専門的素養のある人材として活躍できる基礎的能力を有する者を対象に、その専門性を一層向上させていくことが重要となる。各大学院においては、このような今後の大学院の在り方を踏まえ、それに応じた入学者選抜実施方法等を工夫する必要がある。

(b) また、学生が若い時期にできるだけ異なる機関やテーマで研究を行うことは、専門分野に関する幅広い基盤の形成や専門分野における能力向上の上で重要であり、学生の自由な進路選択が確保されるよう様々な取組を進めることが重要である。同時に、社会人や留学生を含め、大学院の学生の構成を多様なものとすることは、大学院を活性化し、創造性を高めるために極めて有効であり、その推進が必要である。このため、大学院への入学や博士後期課程への進学に当たって、他の大学・大学院の出身者はもとより、社会人や留学生にも広く門戸を開いていく観点から、入学者選抜実施方法等の改善を進めることが必要である。

2.大学院入学者選抜の具体的な改善方策

1 大学院入学資格の弾力化

 大学院については、上述したように、今後とも社会の多様な要請等に応えていくためには、入学の機会をできるだけ広く提供していくことが必要である。大学院入学資格については、このような観点から、これまでも逐次弾力化を図ってきたところであるが、大学院の今後の在り方を踏まえると、更に次のものについても大学院入学資格を付与することが適当である。

(1)制度的な接続の観点からの入学資格の弾力化

(ア)教育職員免許法による養護教諭の専修免許状又は一種免許状を有する者で22才に  達したものへの入学資格の付与等

(a) 大学(短期大学を含む。)に2年以上在学し、62単位以上修得した者等で、その後の実務経験と大学における所定の単位修得等により、教育職員免許法による小・中・高等学校若しくは幼稚園の教諭の専修免許状又は一種免許状を取得した者については、学士の学位を有する者で教諭の専修免許状又は一種免許状を有する者と同等以上の学力があると認められるとの観点から、現行制度上既に大学院入学資格が認められている。

(b) このことを踏まえると、大学(短期大学を含む。)に2年以上在学し、62単位以上修得した者であって、その後の実務経験と大学における所定の単位修得等により、教育職員免許法による養護教諭の専修免許状又は一種免許状を取得した者についても、教諭についての場合と同様に、学士の学位を有する者で養護教諭の専修免許状又は一種免許状を有する者と同等以上の学力があると認められるとの観点から、大学院入学資格を認めることが適当である。

(c) また、専修学校、各種学校、国立養護教諭養成所の卒業者等で、その後の実務経験と大学における所定の単位修得等により、教育職員免許法による小・中・高等学校若しくは幼稚園の教諭又は養護教諭の専修免許状又は一種免許状を取得した者についても、上記  (b)に述べたと同様の観点から、大学院入学資格を認めることが適当である。

(d) なお、養護教諭の一種免許状については、教育職員免許法における取扱い上、最短では21才で取得可能であるが、現行の学校教育制度との整合性を図る観点から22才に達したものであることを入学資格要件とすることが適当である。

(イ)大学の医学・歯学・獣医学の分野における学部から大学院への早期進学特例の導入

(a) 創造性豊かな高度の能力を有する研究者養成に資する観点から、本審議会答申を受け、平成元年に学校教育法施行規則が改正され、学部を卒業していない者であっても、大学に3年以上在学(外国において学校教育における15年の課程を修了した場合を含む)し、所定の単位を優れた成績をもって修得したと大学院において認めた者については、当該大学院(修士課程及び博士前期課程)への入学資格が認められているが、医学・歯学・獣医学(以下「医学等」という)の分野については修業年限が他の分野と異なることから現在このような特例は設けられていない。

(b) しかしながら、今後、医学等の分野における最先端の研究を支える創造性豊かな高度の能力を有する研究者の養成が強く求められていることを踏まえると、このような研究者の養成に資する観点から、修業年限が6年である医学等を履修する課程についても、他分野におけると同様に、学部を卒業していない者であっても、それらの学部に一定年数以上在学し、所定の単位を優れた成績をもって修得したと大学院において認めた者については、医学等の分野の大学院への入学資格を認めることが適当である。この場合の医学部等における必要在学年数については、4年制の学部の場合に専門教育の半分以上を修了していると考えられる3年以上の在学が要件とされていること、また、4年制の学部の学生で優れた成績を修めた者については最短4年(学部3年修了後大学院へ進学し、修士課程を1年で修了)で修士の学位を取得し医学等の分野の大学院への進学が可能であることなどを考慮すると、4年以上とすることが適当である。この際、外国において、大学の医学等を履修する課程を含む学校教育における16年の課程を修了した場合にも、4年制の学部におけると同様に早期進学の特例を認めることが適当である。

(c) 医学等の分野における早期進学特例の適用に当たっては、医学等の教育内容が基本的には医師・歯科医師・獣医師の免許を取得させることを目的として構成されていることなどを踏まえると、学生の将来の研究者としての志向やそのための能力・適性等を慎重に判断し、常に適切な運用が確保されるよう十分留意する必要がある。また、今回の特例の適用により大学院に早期進学した後、進路変更等により医師等の免許を取得することを希望する者に対しては、医学部等への学部再編入を認めることとするなど、柔軟な対応が各大学においてなされることが期待される。

(d) なお、医学等の分野における大学院においても、異なる大学・分野間の学生や研究者の流動性を高めることが、学際的な研究の展開など大学院の教育研究の向上と活性化にとって重要であり、この点についての十分な配慮が望まれる。特に、臨床を伴わない基礎研究分野については、例えば他学部で生命科学や生物科学を専攻した学生にも広く入学の門戸を開いていくことが必要である。なお、学部段階においても、医学部等への他学部からの学士編入学制度について引き続きその拡充を図ることが望まれる。

(2)大学院における個人の能力の個別審査による入学資格の付与

(a) 大学院は、学部段階の教育で培われた専門的素養のある人材として活躍できる基礎的能力に立ち、専門性を一層向上させていくことを基本としているが、大学の多様化・個性化が進む中で、学部段階の教育で育成を目指すものや教育内容等は各大学によって様々である。また、専門分野によっても学部段階における教育内容等や大学院入学資格として求められる基礎的能力は異なるものである。さらに、上記1、3、(1)、(b)において述べた大学院の教育研究の特性を踏まえると、「大学を卒業した者と同等以上の学力があると認められる者」として大学院入学資格を認める者の具体的内容・範囲について制度上の接続の観点から一律に規定するだけでなく、これに加えて各大学院において個人の能力の個別審査により入学資格を認めることができるようにすることが大学院の更なる発展を図る上で必要となっている。
 大学院の入学機会をできるだけ広く提供していくとの観点から、これまでも制度的な接続の観点からの入学資格の弾力化が図られてきたが、上述のように、それだけにとどまらず、大学院において個人の能力の個別審査を行うことにより、大学院で更に専門性の深化を目指すことが適切な水準に達しており大学を卒業した者と同等以上の学力があると認められる者については、例外として、当該大学院の入学資格を認める道を開くことが大学院の今後の在り方にも合致するものである。
 また、大学院は学校制度上最終段階に位置する高等教育機関であり、このような方向で能力のある個人について大学院入学資格を認めていくことは、個人の進路選択の袋小路を解消し、学生が自己実現を図るための多様な進路選択を行えるようにするものであり、学生の学習意欲の刺激、高等教育の活性化の上からも大きな意義がある。

(b) 既に大学院博士後期課程については、社会人の再学習を積極的に推進するなどの観点から、修士の学位を有していない者であっても、それぞれの大学院において大学学部卒業後の一定の研究歴の成果を個別に審査し、評価することにより入学資格を認めることができるようになっている。大学院における個人の能力の個別審査により入学資格を認めることの意義を考えると、今後、大学院修士課程及び博士前期課程についてもこのような方向で入学資格の一層の弾力化を図ることが必要である。

(c) 大学院において、入学希望者個人の能力等の個別審査により入学資格を認めることが、大学院の役割・目的等から適切と考えられるものとしては、例えば短期大学、高等専門学校や一定の専門学校の卒業者など大学編入学資格を有する者であって、更に短期大学又は高等専門学校の専攻科等における学習歴を有していたり、実務経験や海外における国際的団体等での活動経験等を有しており、大学院において当該者の学習歴や実務経験等の評価により大学を卒業した者と同等以上の学力を有すると認める者が考えられる。  さらに、大学編入学資格を有しない専修学校・各種学校の卒業者やその他の国内外の教育施設の修了者等であっても、海外における国際協力事業への参加などにより豊富な国際的活動経験や一定の語学力を有していたり、例えばコンピュータ・ソフト制作などの実務経験等を通じ専門分野について一定の資質・能力を有していたり、これらの学校等における学習を通じて大学院で更に専門性の深化を目指すに適切な水準に達しているなど、大学を卒業した者と同等以上の学力を有し、大学院において入学資格を認めることが適切であると判断される者についても入学資格を認めていくことが適切であると考えられる。

(d) 大学院における入学資格判断のための個別審査の対象となる入学希望者個人の学習歴や実務経験・国際的活動経験等の具体的な内容については、上述したような場合を含め多様なものが考えられること、さらに、大学院の専攻分野によってもその求められる内容は異なることなどから、どのような内容の学習歴や実務経験等が個別審査の対象となり得るかをあらかじめ具体的かつ一律に規定するのではなく、その具体的判断は各大学院に委ねることとするのが適当と考えられる。

(e) 以上のことを踏まえると、大学院入学資格の規定整備については、個々の大学院において、学習歴や実務経験等の評価による個人の能力等の個別審査により、個別に大学院入学資格を認めることができる旨の包括的な規定を新たに置く方向で考えることが適当である。
 また、この規定は、学校制度における制度的な接続という原則の例外取扱であると同時に、異能の才能の早期伸長を目的とするものではないことから、現行の学校制度との整合性を確保する観点を踏まえると、22才に達したものであることを入学資格要件とすることが適当である。

(f) また、このような規定の整備は、大学院博士後期課程の入学資格についても同様の方向で行うことが適当である。

(g) なお、上記 (a)で述べたように、大学の多様化・個性化が進む中で、学部段階における教育内容等は各大学によって様々であることや大学院の教育研究の特性などを踏まえると、大学院入学資格が認められる者の具体的内容・範囲について制度上の接続の観点から一律に規定するだけでなく、これに加えて各大学院において個人の能力の個別審査により入学資格を認めることができるようにすることが今後の大学院の発展のためにも必要である。
 これに対し大学(学部段階)の入学資格については、学部段階の教育が初等中等教育段階における学習指導要領を踏まえた体系的なカリキュラムに基づく基礎的な学力の修得を基礎に展開されるものであることなどから、その修得がなされているか否かの判断について、高等学校の卒業又は公的な試験の合格など統一的な取扱いをすることが求められることを考慮すると、大学院入学資格と同様に各大学において個人の能力の個別審査により入学資格を認める措置を講じることは適当でないと考えられる。

2 大学院の入学者選抜実施方法等の在り方

(1)大学院の理念・目標に応じた入学者選抜の実施

(a) 大学院は、優れた研究者の養成とともに、今後、高度の専門的知識・能力を有する人材養成への需要や職業上必要な新しい知識・技術を求める者等の要請に一層適切に対応していくことが求められている。このため、学問分野の特質、5年一貫制や区分制(博士課程を前期2年と後期3年に区分するもの)の違い、学部を基礎とする大学院であるか、大学院の教育研究活動の比重が高まりこれが中心的な役割を果たすに至っている大学であるか、学部を持たない大学院だけの大学(大学院大学)であるかの違い、大学の設置者や設置理念の違いなどに留意しつつ、それぞれの大学院の課程の目的・役割を明確化していくことが課題となっている。

(b) また、今後、大学院の修士課程にあっては、研究者養成の一つの段階又は高度専門職業人養成などその役割に即して、大学院入学時までに培われた専門的素養のある人材として活躍できる基礎的能力を基礎に専門性を一層向上させていくことが重要であり、博士課程にあっては、我が国のあらゆる研究機関を担う優れた研究者の養成などの中核的機関としての基本的な役割が極めて重要となっている。

(c) 各大学院においては、このような点に留意しつつ、それぞれの大学院の理念・目標や求める学生像を明確に示した上で、それに応じた大学院入学者選抜実施方法等を工夫改善することが求められている。この際、特に、今後大学院の一層の多様化・個性化の推進が求められていることを踏まえると、大学院教育を受けるに必要な専門的素養のある人材として活躍できる基礎的能力を有していることを基礎としつつ、入学希望者の志望理由を一層重視した入学者選抜を実施していくことが重要である。

(d) また、今後の大学院入学者選抜においては、各大学院の理念・目標、教育研究活動の状況、どのような学生を求めているのか、具体的な入学者選抜試験の方法などについて、入学希望者に対しインターネットの活用を含め十分な情報提供に努めることが必要である。

(e) なお、大学院教育を受けるに必要な基礎的能力に関しては、今後、特に大学院修了者はそれぞれの分野において国際社会で知的リーダーシップを発揮していくことができる専門家として活躍することが期待されることから、大学院入学者選抜において専門分野に関する外国語の知識・能力のみならず一定水準以上の外国語によるコミュニケーション能力等を有していることを求めていくことも重要になると考えられる。この際、例えば、英語についてはTOEFLやTOEICを活用することを考慮することも有効である。

(2)学生の流動性の向上

(a) 学生の自由な進路選択の保障、専門分野に関する幅広い基盤の形成や専門分野における能力の向上、大学院の活性化等の観点からは、各大学院において他の大学・大学院の出身者に広く門戸を開くなど学生の流動性を一層高め、学生の構成を多様なものとしていくことが重要である。

(b) このため、各大学院においては、学生の流動性向上の必要性についての教員の意識改革を進めるとともに、次のような方向で大学院入学者選抜実施方法等の一層の改善を進める必要がある。

  1. 大学(学部)卒業段階で、学生の専攻分野や適性に応じ、他大学の大学院への進学の積極的な促進などに努める。
  2. 他大学の卒業生が大学院入学者選抜試験の受験で不利にならないように、面接の実施や受験技術のみでは対応できない論理的思考力を試す問題を工夫するなど改善に努める。
  3. 推薦状の作成や調査書の指導教員の所見欄への記入につき指導教員の協力が得られないために他大学院への進学が事実上選択できないといった事態の改善を図るため、指導教員の推薦状については、これを入学者選抜の必須資料とはせず、任意提出資料とすることが適当である。また、調査書については、現行の大学院入学者選抜実施要項を見直し、調査書を選抜資料とするとの取扱いを改めることが必要である。今後は調査書の様式は廃止し、従来調査書により確認を行っていた事項についてはこれに替えて個別に志望理由書や成績証明書等、各大学院において特に必要と考える書類の提出を求め、それらを参考として面接等の多様な方法による入学者選抜を行う方向とすることが重要である。
     なお、現行の実施要項の見直しに当たっては、選抜期日についても併せて検討することが必要である。
  4. 他大学出身者の比率を高めることは、上述したとおり大学院の教育研究の活性化等の観点から重要である。そのため、各大学院においては、それぞれの状況に応じ入学者選抜において工夫を図り、他大学出身者の比率を高める一層の努力を行うことが必要である。例えば、学部に比べ大学院の教育研究活動の比重を高めようとする大学において、その判断により学生の一定割合以上を他の大学や大学院から受け入れることを考慮し、関係大学間で具体化の方法について検討することなどが考えられる。

(c) また、大学院の学生の構成を多様なものとし、大学院の活性化を図るためにも、社会人や留学生を対象とする特別選抜の拡大などの入学者選抜実施方法等の一層の改善が必要である。特に社会人入学に関しては、一部の大学において、官公庁、民間企業等の在職者を受け入れるに際して退職又は休職することを出願又は入学許可の条件とする取扱いが見られるが、積極的に社会人の受け入れを図ることが大学院の更なる発展にとって重要であるという今後の大学院の在り方を踏まえれば、このような取扱は早急に見直しを図る必要がある。また、留学生については、書類選考の重視や海外での入学試験の実施等を通じた渡日前の入学許可の拡大など、その円滑な受入れに努めることが必要である。なお、留学生の書類選考に関しては、成績評価などが国等によって異なり、他の学生との比較が困難であるとの指摘もあるため、今後元留学生の成績などをデータベース化するなどの工夫についても検討が必要であろう。

3 大学院入学者選抜についての評価の実施

(a) 今後の大学院の在り方を考えると、大学院入学者選抜については上述したような方向で大学院入学資格の一層の弾力化と入学者選抜実施方法等の改善を推進していくことが重要である。一方、これらの改革と同時に今後とも大学院の量的な拡大が進んでいくことを踏まえると、大学院入学者の多様化による大学院の教育研究水準の低下を招くことのないよう、個々の大学院における入学資格付与に際しての個別審査の判断が本来の趣旨に沿って適切に運用されるようにするとともに、学生の流動性の向上などを図るためにも入学者選抜実施方法等の改善のための取組を継続的に推進していく必要がある。同時に、大学院において課程制大学院の趣旨を踏まえた責任ある教育研究を推進するとともに、学生の側においても目的意識を持ち主体的に学修に取り組んでいくことが求められる。

(b) 現在、大学院においては、教育研究活動の質的向上を図る観点から自己点検・評価の取組が進んでいる。今後の実施に当たっては、教育研究活動の質的向上を図る観点から、カリキュラム編成、学位の授与状況や研究成果など教育研究活動等の状況についての自己点検・評価の一層の充実を図るとともに、大学院入学者選抜についても、例えば、大学院入学資格の個別審査の方法やその判断基準、学生の流動化の状況やそのための取組の推進状況などその具体的な在り方を点検・評価の対象としていくことが必要である。また、このような自己点検・評価の結果については、積極的に外部に公表していくとともに、学外者による検証の実施などにより、より客観性を高めつつ教育研究の質の向上と更なる改善の継続的推進に生かしていくことが必要である。このような取組が各大学院や大学院相互間で推進されることにより、大学院全体として、入学者選抜の改善を含め教育研究の質の更なる向上が図られることを強く期待したい。

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