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21世紀の大学像と今後の改革方策について ―競争的環境の中で個性が輝く大学― (答申) (平成10年10月26日 大学審議会)

平成10年10月26日
大学審議会

目次

はじめに

第1章 21世紀初頭の社会状況と大学像

1.21世紀初頭の社会状況の展望と高等教育
 (1)高等教育を取り巻く21世紀初頭の社会状況の展望等 -「知」の再構築が求められる時代-
 (2)我が国の発展と高等教育
2.高等教育改革進展の現状と課題
3.21世紀初頭の大学像
 (1)高等教育機関の多様な展開
 (2)高等教育規模の展望
 (3)大学改革の基本理念 -個性が輝く大学-

第2章 大学の個性化を目指す改革方策

1.課題探求能力の育成 -教育研究の質の向上-
 (1)学部教育の再構築
 (2)大学院の教育研究の高度化・多様化

2.教育研究システムの柔構造化 -大学の自律性の確保-
 (1)多様な学習需要に対応する柔軟化・弾力化 -学生の主体的学習意欲とその成果の積極的評価-
 (2)大学の主体的・機動的な取組を可能とするための措置
 (3)地域社会や産業界との連携・交流の推進
 (4)国際交流の推進

3.責任ある意思決定と実行 -組織運営体制の整備-
 (1)責任ある運営体制の確立
 (2)大学情報の積極的な提供

4.多元的な評価システムの確立 -大学の個性化と教育研究の不断の改善-
 (1)自己点検・評価の充実
 (2)第三者評価システムの導入
 (3)資源の効果的配分と評価

5.高等教育改革を進めるための基盤の確立等

別紙1 高等教育改革の進展の状況(概要)
別紙2 高等教育における現状の問題点

はじめに

  1. 高等教育を取り巻く21世紀初頭における社会状況は現状から更に大きく転換し、人類にとって真に豊かな未来の創造、科学と人類や社会さらにそれらを取り巻く自然との調和ある発展等を図るため、多様で新しい価値観や文明観の提示等が強く求められるようになると考えられる。このため、その知的活動によって社会をリードし社会の発展を支えていくという重要な役割を担う大学等が、知識の量だけではなくより幅広い視点から「知」を総合的に捉え直していくとともに、知的活動の一層の強化のための高等教育の構造改革を進めることが強く求められる時代―「知」の再構築が求められる時代―となっていくものと考えられる。
     大学等においては、この10年間において、本審議会答申等を受けて改革が進められ成果をあげてきているが、このような21世紀初頭において、その期待される役割を十分に果たすことができるよう更に大胆な改革を速やかに推進していくことが強く求められている。
  2. 本審議会は、平成9年10月に文部大臣から「21世紀の大学像と今後の改革方策について」諮問を受けて以来、上記のような認識に立って、大学等の多様化・個性化の推進、国際的な通用性の向上などの視点を踏まえつつ、大学等の自主性・自律性を高めるシステムの柔構造化等の一層の推進と、そのための基礎となる基本的枠組み等についての法令上の明確化を含めた整備を図ることを基本として審議を行ってきた。なお、総合的な審議を行うため、新たに基本構想部会を発足させ、大学院部会、大学教育部会、組織運営部会及びマルチメディア教育部会の各部会の密接な連携の下に、関係者からのヒアリングを行うなど精力的な調査審議を重ねた。
     平成10年6月30日に「中間まとめ」をとりまとめ公表した後、「中間まとめ」に対する各界の意見を踏まえつつ、総会及び各部会において更に審議を深めてきたが、ここに「21世紀の大学像と今後の改革方策について」結論を得たので、答申を行うものである。
  3. 答申は、第1章で、高等教育を取り巻く21世紀初頭の社会状況等を展望し、その中での我が国の発展の方向と高等教育の役割について述べている。それを踏まえつつ、これまでの高等教育改革進展の現状と今後の課題を整理した上で、21世紀を迎えるに当たり今何が大学等に求められているか、今何をなすべきかという視点から、高等教育機関の多様化・個性化の必要性や規模の考え方、今後の大学改革の基本理念について述べている。具体的には、1)課題探求能力の育成を目指した教育研究の質の向上、2)教育研究システムの柔構造化による大学の自律性の確保、及びそれを支える3)責任ある意思決定と実行を目指した組織運営体制の整備、さらにこうした大学の取組についての4)多元的な評価システムの確立による大学の個性化と教育研究の不断の改善、という四つの基本理念を提示し、その理念に沿って総合的かつ具体的な改革を実施していく必要があることを提言している。
     第2章では、第1章で提言した四つの基本理念に沿った具体的な改革方策を提言するとともに、それらの改革を進めるための基盤の確立等について提言している。ここで提言した改革の諸方策は一体的に推進されることが必要であるが、個々の具体的方策には、すべての大学等において共通的に取り組んでいくことが必要な事項のほか、各大学等がその理念・目標に沿って自主的に判断することが適切な事項も含まれている。提言した改革方策が適切かつ総合的に推進されることにより、各大学等が、世界的水準の教育研究の展開を目指して不断の向上を図り、切磋琢磨する状況が創出され、それぞれが“個性が輝く”大学等として一層発展していくことを願うものである。
  4. この答申で提言した改革実現のためには、大学等の関係者の努力はもとより、地域社会、産業界等、さらには国民各層の幅広い理解と支援が不可欠であり、広く関係者において、改革への支援が一層積極的かつ具体的に展開されることを強く期待したい。また、特に大学等においては公共的機関としてのその基本的な性格に改めて思いを致し、開かれた大学運営、社会的責任の履行にこれまで以上に努力していくことが求められる。さらに、国においては、各大学等における自己改革の取組を積極的に支援していくため、その基盤整備を積極的に推進する必要がある。人々の知的活動・創造力が最大の資源である我が国にとって、優れた人材の養成と独創的な学術研究の推進等の役割を担う大学等における教育研究の振興は、今後の発展に欠くことのできない未来への先行投資である。このことを踏まえ、高等教育に対する公的支出を先進諸国並に近づけていくよう最大限の努力を強く期待するものである。
     なお、平成10年1月に、文部大臣から学術審議会に対して「科学技術創造立国を目指す我が国の学術研究の総合的推進について」諮問がなされ、現在、審議が行われているところであり、本答申とともに、学術審議会の審議結果も踏まえ、大学等における教育研究の総合的な推進が図られることを期待したい。

第1章 21世紀初頭の社会状況と大学像

1 21世紀初頭の社会状況の展望と高等教育

(1)高等教育を取り巻く21世紀初頭の社会状況の展望等 ―「知」の再構築が求められる時代―

 21世紀初頭における社会状況をどのように展望するかは、様々な変化や要素を考える必要があり一概に言い表すことは難しいが、1)一層流動的で複雑化した不透明な時代、2)地球規模での協調・共生と一方では国際競争力の強化が求められる時代を迎える中で、我が国では3)少子高齢化が進行し生産年齢人口が大幅に減少すると同時に、産業構造や雇用形態に大きな変化が起こり、4)職業人の再学習をはじめ、国民の間に生涯学習需要が増大する、他方、5)豊かな未来を拓く原動力となる学術研究の進歩が加速すると同時に、学際化、総合化の必要性が生じるなど、高等教育を取り巻く状況が大きく転換し、大学等の高等教育機関における「知」の再構築が強く求められる時代となっていくものと考えられる。また、産業や雇用の空洞化、少子高齢化による経済の潜在的な成長力の低下、高齢化に伴う社会保障給付の増大などにより、当面は、引き続き厳しい財政状況が続くことが予想される。

 高等教育を取り巻く21世紀初頭における社会状況をどのように展望するかは、様々な変化や要素を考える必要があり一概に言い表すことは難しいが、以下に述べるように、現状から更に大きく転換し、人類にとって真に豊かな未来の創造、科学と人類や社会さらにそれらを取り巻く自然との調和ある発展等を図るため、多様で新しい価値観や文明観の提示等が強く求められるようになると考えられる。このため、その知的活動によって社会をリードしていくという重要な役割を担う大学等の高等教育機関が、知識の量だけではなくより幅広い視点から「知」というものを総合的に捉え直していくとともに、それを踏まえて知的活動の一層の強化のための高等教育の構造改革を進めることが強く求められる時代となっていくものと考えられる。

1)一層流動的で複雑化した不透明な時代

 追い付き型経済の終焉、大競争時代の到来など、現在、我が国の社会・経済は大きな転換期を迎えている。さらに、情報通信技術の革新や自由貿易体制の拡大に伴い、経済活動をはじめあらゆる側面で世界の一体化が急速に進んでいる。このような社会・経済の急激な変化は今後一層加速され、21世紀初頭は、従来の延長線上の発想では対応が難しい、これまでにも増して流動的な社会、将来予測が明確につかない先行き不透明な時代になると考えられる。また、このような急激な変化の中で、社会はより複雑化し、社会の様々な要素の関連や相互の波及効果が大きくなっていくと考えられる。

2)地球規模での協調・共生と一方では国際競争力の強化が求められる時代

 冷戦構造の終焉や交通手段の発達、マルチメディアの進展などによる高度情報通信社会の実現などを背景に、社会・経済のみならず教育研究や文化の面でも世界的規模での交流が一層進んでいく。高等教育においても、マルチメディアの一層の進展により、国内ばかりでなく国境を越えて地理的な移動を伴うことなく大学等間の教育研究情報の交換や教員・学生の交流が促進され、各大学等が有する知的資源の共有化が進んでいく。このように、国際的な相互依存関係、世界共通標準への準拠や地球規模での協調と共生の必要性がより高まっていくが、一方では地球規模での競争が一層激しくなり、国際競争力の強化が重要な課題となっていく。
 また、自然との共生を進めるために自然へのより深い理解が求められるとともに、地球環境問題、エネルギー問題、人口問題など人類の生存を脅かす問題をはじめとして、地球規模で解決を図らなければならない局面がますます増加していく。

3)少子高齢化の進行と産業構造や雇用形態等の大きな変化

 今後、我が国はいまだ人類が経験したことのない少子高齢化社会を迎えると予測されており、生産年齢人口が大幅に減少していくことに伴い、産業間移動による労働力調整の必要性が増大していくほか、従来の終身雇用の形態が大きく変化し、企業内教育の外部委託化や企業間の労働力の流動化が進行していく。
 同時に、産業構造の大きな変化により、高等教育を必要とする新しい職業も増加し、従来高等教育が対象としてこなかった新しい分野の人材の養成も求められるようになっていく。
 また、社会の高度化、複雑化が進展するため、多くの職業分野において高度な知的能力や専門性を必要とする業務が一層増加していくことに対応して、高度の専門的知識・能力を身に付けた高等教育修了者への人材需要が高まっていく。

4)職業人の再学習など生涯学習需要の増大

 上に述べたことなどを背景として、個人の職業能力等の向上を支援する高等教育の再学習機能の強化が求められるようになっていく。これに伴い、社会人が必要に応じて高等教育機関において学習を行いその成果をもって更に活躍するという、高等教育機関と産業界等との往復型社会へ大きく転換していくと考えられる。
 また、少子化による18歳人口の減少、大学等への進学率の上昇などもあいまって、多様な能力・適性を持つ学生、入学前の履修歴も様々な学生など、学生の多様化が一層進むものと考えられる。大学等の高等教育機関については、このような学生の能力・適性の多様化等を踏まえて、その目的・性格や教育内容・方法の在り方を更に見直していくことが必要となっている。
 さらに、高齢化の進展や、国民一人一人が物質的豊かさから次第にゆとりや心の豊かさなど多様な価値や自己実現を求めるようになっていることなどを背景として、今後一層生涯学習の需要は高まり、高等教育機関は、幅広い年齢層の人々の知的探求心にこたえて必要なときにいつでも学習できる、より開かれた場となることが求められていく。

5)豊かな未来を拓く学術研究の進展

 人類にとって豊かな未来を拓く原動力になる学術研究が、様々な面で著しく進展するとともに、その重要性が一層高まっていく。とりわけ人々の知的活動・創造力が最大の資源である我が国にとって学術研究の発展は重要であり、独創的な学術研究の推進により自らの手で新しい研究領域を開拓し、人類社会の発展に貢献することが一層強く求められるようになる。
 今後、学術研究は高度化・専門化が進み、一つの学問分野の消長の期間が短くなり、変化が激しくなる一方、学際化、総合化の傾向をますます強めていくと考えられ、高等教育においても、学生に対して高度化・専門化した内容を教育するだけでなく、同時に専攻領域の広がりや学際領域への展開を視野に入れた教育を推進していくことが一層求められるようになる。また、学術研究の著しい進展の中で、地球環境や生命倫理などに関する新たな課題が常に生起してくるようになることから、学術研究と人類や社会との調和ある関係を保つことがますます重要となり、研究者の社会的責任も一層重くなっていく。

(2)我が国の発展と高等教育

 人類全体にとって一層困難な課題が生じてくると考えられる21世紀初頭において、我が国が世界と協調しつつ、そのより良い解決に向け貢献していくためには、大学をはじめとする多様な高等教育機関のシステム全体として、その知的活動によって社会をリードし社会の発展を支えていくという重要な役割を十分に果たしていくことが不可欠である。
  大学等の高等教育機関がその求められる役割を十分に果たしてこそ、人々の知的活動・創造力が最大の資源である我が国が、21世紀の国際社会において、知的リーダーシップを発揮できる国、自ら独創的な知的資産を創造し新領域を開拓していくことができる国、真に豊かな社会が実現できる国として、国際貢献を果たしつつ発展していくことが可能となる。  

(ア)高等教育の役割

  1.  大学をはじめとする我が国の高等教育は、戦後著しい量的拡大を遂げ、平成10年度では、大学・短期大学・高等専門学校の合計で見ると、学校数1、254校、進学率48.9%、専門学校まで含めた進学率は68.3%に達している。このように広く普及した高等教育は、伝統的役割である学術研究の創造と発展への貢献や社会の各分野で必要とされる高度の専門的人材の養成のほか、多数の優れた社会人を育成することにより、我が国のみならず人類全体の社会、経済、文化等のあらゆる面における充実・発展に大きく貢献してきた。
  2.  人類全体にとって一層困難な課題が生じてくると考えられる21世紀初頭において、我が国が世界と協調しつつ、そのより良い解決に向け貢献していくためには、知的活動によって社会をリードし社会の発展を支えていくという重要な役割を担う大学をはじめとする多様な高等教育機関が、世界的水準の教育研究や特色ある教育研究をそれぞれ展開していくことが不可欠である。これにより、高等教育システム全体として、我が国のみならず世界の発展の原動力となる優れた人材の養成・確保、人類の知的資産の継承と未来を拓く新しい知の創造、社会の発展や文化創造への積極的貢献、知的資源を活用した国際協力等、様々な面において求められる重要かつ幅広い役割を従来にも増して十分に果たしていかなければならない。

(イ)我が国の発展の方向と高等教育

  1.  我が国は、21世紀の国際社会において、政治・経済面はもとより人類の未来に立ちはだかる地球環境問題など地球規模の諸問題解決への貢献、人類共通の知的資産の創造、新たな文化や価値観の創造等の面において、国際社会で知的リーダーシップを発揮できる国として積極的な役割を果たしていくことが求められている。
  2.  また、人々の知的活動・創造力が最大の資源である我が国にとっては、国民の知的・文化的基盤の一層の充実・向上を図ることが、今後、我が国が活力のある国家として国際社会の中で発展していくための鍵となる。特に、学術研究の推進と科学技術の発展は重要であり、従来の追い付き型の手法から脱却し、人文・社会科学と自然科学の調和ある発展を図る科学技術創造立国を目指して、自ら独創的な知的資産を創造するとともに、新しい領域を開拓し、ひいては人類社会の発展に貢献していくことが求められている。
  3.  さらに、物質的な豊かさのみならず精神的な豊かさが実感できる社会、国民一人一人の個性が尊重され多様な価値観の下に自己実現を図ることのできる社会、女性と男性が社会のあらゆる分野に対等な立場で参画する男女共同参画社会、年齢差などを越えお互いに支え合うことのできる共生社会など、真に豊かな社会が実現できる国として、人類全体の豊かな未来の創造をリードしていかなければならない。
  4.  我が国が21世紀初頭の国際社会において、上記に述べるような国として国際貢献を果たしつつ発展していくことは、大学等の高等教育機関が、(ア)に述べた役割を十分に果たすことによって初めて可能となるものであり、高等教育の役割の重要性が改めて認識されなければならない。

2 高等教育改革進展の現状と課題

 高等教育改革については、本審議会の答申等を踏まえ、教育研究の高度化・多様化・個性化、組織運営の活性化の方針の下に、この10年間において諸制度の大綱化、弾力化等が図られるとともに、高等教育関係者の間に改革の必要性についての意識が覚醒され、改革に向けての具体的な取組が着実に進められてきている。過去10年の間に高等教育全体として改革の動きが始まったことは大きな前進であり高く評価されるべきであるが、その進展の度合いは個々の大学等により様々であり改善すべき問題点も依然として少なくない。
 高等教育関係者は、大学等に対する社会の側からの様々な批判はいまだ完全には払拭されてはいないという現状を重く受け止めつつ、来るべき21世紀初頭の社会状況の展望等の上に立って、我が国の大学等が期待される役割を果たし世界的に評価されるものとなるようにするため、今なすべきことを明確にし、更に大胆かつ積極的に改革を推進していく必要がある。  

1)これまでの改革の進展状況

 高等教育については、本審議会の答申等を踏まえ、この10年間において別紙1のように諸制度の大綱化、弾力化等が図られるとともに、高等教育関係者の間に改革の必要性についての意識が覚醒され、改革に向けての具体的な取組が着実に進められてきている。
 学部段階の教育については各大学等の自由な創意工夫による多様化・個性化の推進と教育研究の質の向上を図るとの基本的な考え方の下に、また、世界的水準の学術研究の推進、優れた研究者及び高度専門職業人の養成の中核的機関である大学院については教育研究の高度化を目指して質・量ともに飛躍的充実を図るとの基本的な考え方の下に、様々な改革が進められてきた。
 また、各大学等の多様化・個性化、質の高い教育研究の推進の基盤である組織運営については、その活性化を図り、大学等をめぐる諸情勢が変化する中で、組織全体としてまとまりを持ち自主的にかつ責任を持って適時・適切な意思決定と実行ができるようにするとの基本的な考え方の下に、様々な改革が進められてきた。
 さらに、大学等が教育研究水準の向上と活性化に努めるとともに、その社会的責任を果たしていくためには、自ら不断に点検・評価を行い改善の努力を重ねていくことが不可欠であり、自己点検・評価をはじめとする評価の充実についても様々な取組が進められてきている。

2)現状の問題点と課題

(ア)現状の問題点

  1. 過去10年の間に高等教育全体として改革の動きが始まったことは大きな前進であり、高く評価されるべきである。しかしながら、その進展の度合いは個々の大学等により様々であり、別紙2のように高等教育関係者のみならず学生、社会、産業界等から今なお教育研究及び組織運営等について厳しい問題点の指摘がある。
  2. 学部段階の教育については、一般に教員は研究重視の意識は強いが教育活動に対する責任意識が十分でない、授業では教員から学生への一方通行型の講義が行われている、授業時間外の学習指導を行っていない、学期末の試験のみで成績評価が行われている、成績評価が甘く安易な進級・卒業認定が行われている、教養教育が軽視されているのではないかとの危惧がある、専門分野の教育が狭い領域に限定されてしまう傾向があるなど、教育内容と教育方法の両面にわたり多くの問題点が厳しく指摘されている。また、学生によっては、授業に出席しない、授業中に質問をしない、授業時間外の学習が不十分である、議論ができないなど、学習態度とその成果の両面について問題点が指摘されている。
  3. 大学院については、各課程において研究者養成、高度専門職業人養成などの目的に即した体系的なカリキュラムが編成されていない、学生の大学間移動が少なく、また、教員についても当該大学出身者が大半を占める場合が多く学問的刺激が十分でない、大学院独自の教員組織が弱い、地域社会との連携・交流や国際交流の推進が十分とは言えない、さらに学部学生も含め学生に対する経済的支援が不十分であるなどの問題点が指摘されている。
  4. 組織運営については、閉鎖的・硬直的であるとの批判がいまだに払拭されていない、学部自治の名の下に学問の進歩や社会の変化に対応した改革の推進に支障が生じている、情報公開や情報発信機能が不十分であるなどの問題点が指摘されている。
  5. 自己点検・評価については、ほとんどの大学等で実施されているものの形式的な評価に陥り教育研究活動や組織運営の改善に十分結び付いていない、外部評価や第三者評価などが十分に行われるに至っていないなどの問題点が指摘されている。

(イ)21世紀への課題

  1. この10年間において高等教育改革に大きな努力が払われているものの、いまだ改善が進んでいない問題点も多い。一方で、大学等の変化に対する社会の要請は改革の進展状況よりもはるかに大きく、また、21世紀を目前に控え、高等教育を取り巻く社会状況の変化は一層激しく、高等教育に対する社会の期待もますます高まっていくものと考えられる。
  2. 今後、これまでの改革の成果と問題点についての厳しい認識を踏まえつつ、21世紀初頭の社会状況の展望等の上に立って、我が国の大学等が期待される役割を果たし世界的に評価されるものとなるようにするため、今なすべきことを明確にし、更に大胆かつ積極的に高等教育改革を推進していかなければならない。

3 21世紀初頭の大学像

 人類の真に豊かな未来の創造に向けて「知」の再構築が求められる21世紀初頭において、我が国の高等教育が世界的水準の教育研究を展開し、その期待される役割を十分に果たしていくためには、この10年間における改革進展の現状を踏まえつつ、更に高等教育改革を進めていくことが必要である。
 このため、高等教育機関全体で社会の多様な期待や要請等に適切にこたえていけるよう各大学等の自律性に基づく多様化・個性化を進めるとともに、卒業時における質の確保のための取組の抜本的充実、大学院の役割の増大に対応する更なる整備充実、国際的通用性・共通性の向上、大学等の社会的責任等を重視しつつ、今後、下記(3)に述べる大学改革の四つの基本理念に沿って、教育研究の見直し等を大胆に進め、新しい高等教育システムを構築していかなければならない。これにより、各大学等が教育研究の質の不断の維持向上を図り、切磋琢磨する状況が創出され、それぞれが個性が輝く大学等として発展していくことが求められる。

(1)高等教育機関の多様な展開

 今後、社会・経済の更なる高度化・複雑化や国際化の進展に伴い、教育研究の質の高度化及び人材養成に対する要請等の多様化への適切な対応が一層求められていく。また、進学率の上昇や生涯学習需要の高まり等に伴い、より幅広い層の国民に対し、それぞれの関心や意欲に応じてその能力を十分に伸ばしていくための多様かつ充実した教育機会の提供が一層重要となっていく。このような高等教育に対する質の高度化への要請や社会の需要の一層の多様化等に適切にこたえるとともに、長期的視点に立った教育研究の展開によって社会をリードしていくという役割を果たすためには、大学・大学院、短期大学、高等専門学校、専門学校が、それぞれの理念・目標を明確にし、それぞれの特色を生かしつつ多様化・個性化を進め、国公私立の各高等教育機関全体で社会の多様な要請等にこたえていく必要がある。
1)各高等教育機関の多様化・個性化
 高等教育に対する社会の多様な要請等に適切にこたえていくためには、大学・大学院、短期大学、高等専門学校、専門学校という各学校種ごとにその求められる役割を果たしていくのみならず、各学校種の中においても、個々の学校がそれぞれの理念・目標に基づき様々な方向に展開しつつ、更にその中での多様化・個性化を進めていかなければならない。
 大学は、それぞれの理念・目標に基づき、総合的な教養教育の提供を重視する大学、専門的な職業能力の育成に力点を置く大学、地域社会への生涯学習機会の提供に力を注ぐ大学、最先端の研究を志向する大学、また、学部中心の大学から大学院中心の大学など、それぞれの目指す方向の中で多様化・個性化を図りつつ発展していくことが重要である。
 短期大学は、高い教養を培うとともに職業における専門的能力を育成する教育機関として多様化・個性化を図り発展していくことが期待されるが、制度上の位置付けなどについて今後検討が必要との意見もあることから、更なる本審議会での検討が必要である。
 高等専門学校は、発想力豊かな実践的技術者を育成する教育機関としての機能を引き続き果たしながら、多様化・個性化を図っていくことが期待されるが、教育の在り方などについて今後検討が必要との意見もあることから、更なる本審議会での検討が必要である。
 専門学校は、実際的な知識・技術等を習得するための実践的な教育機関として定着しており、今後とも社会の変化に機敏に対応しながら、主に産業社会の求める人材の養成機関として一層の多様化・個性化を進め、更に発展していくことが期待される。
1)大学(学部(学士課程)、修士課程、博士課程)

(ア)多様化・個性化の推進

  1. 大学は、高度な研究活動から生涯学習機会の提供に至るまで後期中等教育修了後の教育研究に対する多様な要請を受け止める高等教育の中核的機関として、社会の各分野で活躍できる優れた人材の養成・確保、人類の知的資産の継承と未来を拓く新しい知の創造、社会の発展や文化創造への積極的貢献、知的資源を活用した国際協力等、様々な面において社会をリードし社会の発展を支えていく中心的な役割を果たすことが期待されている。このため、大学は、社会の変化を見通しそれに機動的に対応しつつ、国際的な通用性・共通性の確保にも十分留意しながら一層その教育研究機能を高めていく必要がある。
  2. その際、各大学は、それぞれの教育研究についての理念・目標を明確にし多様化・個性化を進めるとともに、教育研究分野の特質に応じ他の高等教育機関との関連にも留意しつつ高等教育全体のシステムの中でどのような独自の役割を果たすのかを学内外に明らかにする必要がある。その結果として、それぞれの理念・目標に基づき、例えば、総合的な教養教育の提供を重視する大学、専門的な職業能力の育成に力点を置く大学、地域社会への生涯学習機会の提供に力を注ぐ大学、最先端の研究を志向する大学、また、学部中心の大学から大学院中心の大学などが混在する中で、個々の大学が多様かつ個性的な目的・特徴と独自の存立意義を持ちながら教育研究を展開していくことによって、大学全体として社会の多様な要請等にこたえていくことが可能となる。

(イ)学部(学士課程)教育

 学部(学士課程)教育については、21世紀における社会状況等を踏まえ、各大学の理念・目標、専門分野によって違いはあるものの、今後、自ら主体的に学び、考え、柔軟かつ総合的に判断できる能力等の育成が重要であるという観点に立ち、幅広く深い教養、高い倫理観、実践的な語学能力・情報活用能力の育成とともに、専門教育の基礎・基本等を重視するなどの方向で学部の教育機能を組織的・体系的に強化していくことが必要である。さらに、学生の多様な能力・適性や学習意欲に柔軟にこたえていくため、学部・学科を越えた共通授業の開設や転学・転部などについての柔軟な対応など、学生の選択の幅や流動性を拡大する工夫も重要である。

(ウ)大学院における教育研究

 大学院については、学術研究の中心としての発展とともに、今後、社会・経済の高度化・専門化、大学等と社会との往復型の生涯学習社会への転換等が一層進行していくことを踏まえた高度専門職業人養成機能の一層の強化が重要になる。その際、職業上必要な新しい知識・技術を求める者や、実社会で身に付けた実践的な知識・経験を学術的に更に高めていくことを希望する者に対して広く門戸を開き、その需要に十分にこたえ得るようにしていく必要がある。

2)短期大学

(ア)多様化・個性化の推進

  1. 短期大学は、学校教育法において4年制大学と目的及び修業年限を異にする大学として位置付けられ、制度創設以来、私立短期大学を中心に量的整備が図られ、特に女子の高等教育の場として大きな役割を果たしてきたが、近年における科学技術の高度化、国際化・情報化の進展、生涯学習社会への移行などの社会の変化、18歳人口の減少や女子学生の4年制大学指向の高まりなど、短期大学をめぐる状況の変化を踏まえた対応が求められている。
  2. 短期大学が、今後一層、社会において重要な役割を果たしていくためには、その特色を生かしつつ多様化・個性化を図り、1)教養教育と実務教育が結合した専門的職業教育、2)より豊かな社会生活の実現を視野に入れた教養教育、3)地域社会と密着しながら社会人や高齢者などを含む幅広い年齢層に対応した多様な生涯学習機会の提供など、多様な要請等にこたえて教育機能の一層の充実を図ることが必要である。
  3. このため、各短期大学においては、1)時代の要請に合った学科の新設や改組、2)学位授与機構の認定を受けた専攻科の設置、3)入学者選抜方法の多様化、4)平成3年の短期大学設置基準の大綱化を受けたカリキュラムの見直しなど、様々な改革を今後とも積極的に進めていく必要がある。

(イ)制度上の位置付け等についての今後の検討

 世界的には、職業人の再学習をはじめ国民の間の生涯学習需要にこたえるために適した制度として短期高等教育の充実を図る動きが見られるところであり、短期大学については、社会や時代の変化に対応した短期大学の制度上の位置付けや名称などについて今後検討が必要であるとの意見もあることから、更に本審議会で検討を行うことが必要である。

3)高等専門学校

(ア)多様化・個性化の推進

  1. 高等専門学校は、即戦力としての実践的技術者の養成を目指し後期中等教育段階の教育を含む五年一貫の高等教育機関として創設され、その教育成果は産業界等から高い評価を受けてきたところであり、今後とも発想力豊かな実践的技術者を育成する教育機関としての重要な役割を果たしていくことが期待される。
  2. しかし、高等専門学校を取り巻く状況を見ると、1)産業構造や社会環境の変化により、実践的技術者としての高等専門学校卒業生に対して従来に増して自主性・創造性が求められてきていること、2)高等専門学校卒業後、専攻科や大学へ進学する学生が増加してきていること、3)科学技術の進展に対応したより高度の専門職業人の養成のため、教育活動を支える研究活動の推進が求められていること、4)公開講座の開設など生涯学習需要への積極的対応や地域社会との連携協力の推進がますます重要となってきていること、などが挙げられる。このような状況の変化や新たな要請に対応しつつ、多様化・個性化を図っていく必要がある。
  3. また、高等専門学校は全体の規模が小さく情報も少ないことなどから一般の人々の認識は必ずしも十分とは言えない点もあるため、高等専門学校における教育・研究の成果等を広く一般に情報提供していくことが重要である。

(イ)教育の在り方等についての今後の検討

 高等専門学校については、今後の時代の変化等を踏まえ、高等専門学校における教育の在り方、組織運営の在り方、名称を含めた社会的認識の改善の問題等について、更に本審議会で検討を行うことが必要である。

4)専門学校

 専門学校は、実際的な知識・技術等を習得するための実践的な職業教育・専門技術教育機関として定着しており、今後とも社会の変化に機敏に対応しながら、主に産業社会の求める人材の養成機関として一層の多様化・個性化を進め、更に発展していくことが期待される。
 また、生涯学習需要に対応しより地域に密着した高等教育機関として重要な役割を果たしており、今後も、成人・社会人向けの開設科目の多様化や、附帯教育事業を活用した夜間、早朝などの時間帯における様々な期間の学習コースを開設するなどの工夫を一層進め、地域社会の要請に適切にこたえていく必要がある。さらに、平成6年の専修学校設置基準の改正の趣旨に沿った教育内容の充実や教育条件の向上とともに、安定した経営基盤の確立に向けて一層の努力が求められる。
 以上のように、個々の高等教育機関が、その理念・目標に基づき、それぞれの学校種の特色を生かしながら、その中で更に個性を発揮し、自由で多様な発展を遂げることが一層必要である。これにより、高等教育システム全体として、社会や国民の多様な要請等に適切に対応し、高等教育機関として求められる役割を十分に果たしていくことが可能となるものと考えられる。

2)国公私立大学の特色ある発展
 国公私立大学がそれぞれに期待される機能を発揮し特色ある教育研究を展開していくことは、21世紀初頭における社会の多様な要請等に国公私立大学全体で適切にこたえていくというだけでなく、高等教育全体の活性化の上からも必要である。
  国立大学については、国費により支えられているという安定性や国の判断で定員管理が可能であるなどの特性を踏まえ、その社会的責任として、計画的な人材養成の実施など政策目標の実現、社会的な需要は少ないが重要な学問分野の継承、先導的・実験的な教育研究の実施、各地域特有の課題に応じた教育研究とその解決への貢献などの機能を果たすべきことが期待されている。このような機能を十分果たしていない国立大学については、適切な評価に基づき大学の実情に応じた改組転換を検討する必要も出てくると考えられる。
  公立大学については、当該自治体における設置目的に沿って、それぞれの地域の更なる向上発展への貢献のため、地域社会の様々な要請等を踏まえつつ、より一層教育研究機能の強化に努め特色ある教育研究を実施していくことが期待されている。
  私立大学については、各大学がそれぞれの建学の精神にのっとった自主的な運営により、社会の多様な要請等にこたえつつ、より一層教育研究機能の強化に努め特色ある教育研究を実施していくことが期待されている。

(ア)多様な設置形態の意義

  1. 我が国の大学は設置形態上、国立大学、公立大学、私立大学に分けられる。戦後、学校教育法の制定などにより国公私立大学を通じた制度が確立され、また私学の自主性、公共性の保障のために新たに私立学校法が制定されるなど制度整備が進められ、我が国の大学は私立大学を中心に著しい量的拡大を遂げた。このような中で、国立大学についても戦前にあったような国家枢要の人材を育成するという性格は薄れ、現在では、国立、公立、私立大学それぞれに期待される機能を明確に分けることは難しくなっている。しかしながら、特に大きな公的資金を基盤とする国立大学については、国立という設置形態であるがゆえに、その社会的責任として果たすべき機能を明確に示すことが求められる。また、公立・私立大学については、国立大学と同様に公共的機関として大きな社会的責任を有しているものであり、公立大学については当該自治体における設置目的に沿って、私立大学についてはその建学の精神にのっとり、それぞれの設置形態の特色を生かしながら今後の発展を図ることが期待される。
  2. 我が国の大学制度発足以来この約1世紀の間に、国立、公立、私立の諸形態の大学は併存しつつそれぞれの個性・特色を発揮し、高等教育全体として量的にも質的にも大きな発展を遂げてきた。高等教育に対する多様な要請等への対応や各大学の多様化・個性化が求められる21世紀初頭においては、こうした多様な発展を可能とする柔軟な構造の下で、国公私立大学がそれぞれに期待される機能を発揮し特色ある教育研究を展開していくことが重要である。このことは、国公私立大学全体で社会の多様な要請等に適切にこたえていくというだけでなく、高等教育全体の活性化の上からも必要である。

(イ)国立大学が果たすべき機能

  1. 国立大学は、1)国費により支えられているという安定性から、短期的には成果が見えない新たな創造的研究に積極的に挑戦することができること、2)設置者である国の判断により、社会の需要に応じた政策的な定員管理等が可能であること、3)大規模なプロジェクトに取り組むことができることなどの特性を有している。
  2. 現在、各国立大学が果たしている機能は多様であるが、上記のような特性から今後国立大学が特にその社会的責任として果たすべきことが期待される機能としては、1)計画的な人材養成の実施など国の政策目標の実現、2)現時点では社会的な需要は少ないが、我が国の学術・文化等の面から重要な学問分野の継承、3)衛星通信大学間ネットワーク構築事業の実施など、社会の変化や学術研究の進展に応じた先導的・実験的な教育研究の実施、4)各地域特有の課題に応じた教育研究の実施とその解決への貢献及び都市圏のみでなく全国的に均衡のとれた大学配置による教育の機会均等の確保への貢献、5)学生が経済状況に左右されることなく自己の関心・適性に応じて高等教育を受ける機会を確保することへの貢献などが挙げられる。
  3. 各国立大学においては、それぞれの実情を考慮しつつ、これらの社会的責任として果たすべき機能を十分に発揮することが求められており、そのための教育研究の実施や組織運営体制の整備が図られることが必要である。このような機能を十分果たしていない国立大学については、適切な評価に基づき大学の実情に応じた改組転換を検討する必要も出てくると考えられる。

(ウ)公立大学の発展の方向

  1. 公立大学は、特定地域における高等教育機会の提供と地域発展のための研究への貢献にとどまらず、国立・私立大学とともに高等教育における様々な役割を広く担っているところであるが、設置者である各地方自治体により地方財政という公的資金を基盤として設置・運営されるという公立大学の性格から、それぞれの地域における社会、経済、文化の更なる向上発展への貢献のため各地域社会の様々な要請等にこたえることが特に期待されており、より一層教育研究機能の強化を図り各大学が特色ある発展をしていくことが重要である。
  2. 各地域の地方自治体が、公教育の担い手として公立大学の設置を通じて高等教育にも主体的に取り組み、地域の人材養成をはじめとする様々な要請等にこたえ多様かつ個性的な教育研究を展開することは、我が国の高等教育全体における教育研究の活性化のみならず個性ある地域づくりにもつながっていくものである。この点においても、公立大学の果たす役割は大きなものとなっている。

(エ)私立大学の多様な発展

  1. 私立大学は、特に戦後の我が国における高等教育の普及の面において大きな役割を果たしてきた。現在では大学の学生数の約8割を占めるに至っており、我が国の高等教育の普及という面のみならず多様な教育研究活動の展開を通じて社会の発展にとっても重要な貢献をしている。とりわけ、各私立大学における建学の精神を生かした独自の校風による教育研究の実施は、多様性に富んだ個性豊かな優れた人材を育成し、我が国のあらゆる面における発展を支えている。また、近年、国際化・情報化・社会の成熟化などが進む中で、社会や国民の多様化・高度化する要請に応じた特色ある教育研究の展開が強く求められているが、この点においても、それぞれの建学の精神に基づく個性豊かな教育研究活動を積極的に展開している私立大学の果たす役割は大きなものとなっている。
  2. 私立大学は、設置者が国・地方公共団体である国・公立大学とは異なり、建学の精神を生かした独自の校風により各大学が特色ある教育研究を実施している。したがって、各大学の多様な発展を一層促進するためにも、私立大学について特定の固定的な機能を想定することは適当ではなく、各大学がそれぞれの建学の精神にのっとった自主的な運営により、社会の多様な要請等にこたえつつ、人文・社会・自然の諸科学の様々な分野にわたってより一層教育研究機能の強化に努め特色ある教育研究を展開し多様に発展していくことが重要である。

(2)高等教育規模の展望

1)大学(学部)、短期大学の規模
 社会の高度化・複雑化・専門化の進展等に応じ、高度な課題探求能力や専門的知識等を有することが社会生活を送る上で広く求められるようになっていく。また、少子化の進行に伴い若年労働人口が減少していく中で我が国が引き続き発展していくためには、社会の各分野で活躍できる質の高い人材の供給を一定規模確保することが必要である。高等教育の正確な国際比較は困難であるが、概観すれば欧米諸国に比較して日本の大学・短期大学の規模は決して大きいとは言えない。以上の状況を総合的に考えると、平成12年度から16年度までの期間に大学及び短期大学の臨時的定員の半数以上の解消を図りつつ、18歳人口が120万人規模となる平成21年度以降最大70万人程度(平成8年度入学者数から約10万人の減)の入学者数を想定することは適当と考えられる。この場合、進学率は大きく上昇すると予測されている。
  なお、進学率の上昇に伴い学生の多様化が進行していくことにかんがみ、教育機能の強化とともに、より厳格な成績評価の実施など卒業時における学生の質を確保するための取組を抜本的に充実する必要がある。
  18歳人口の減少を踏まえ、大学等の新増設については本審議会答申「平成12年度以降の高等教育の将来構想について」において示したとおり抑制的に対応することとするが、我が国の高等教育の活力を維持し時代の変化に即応するために必要性の極めて高いものについては認めていくことが適当である。

(ア)大学等の規模の試算

  1. 大学等の規模については、今後、国民の間に生涯学習需要が増大し大学等が生涯学習機関としての役割を果たしていくことが強く求められていくことなどを考えると、進学率(社会人学生や留学生を含む入学者数の18歳人口に対する比率)とともに、社会の人的資源を測る指標でもある人口千人当たりの大学等在学者数も考慮する必要がある。
    この点で見ると、我が国の学部段階の人口千人当たり大学等在学者数(通信制を含む。)は平成8年度で25.0人であり、米国(パートタイムの学生を含む。)の47.1人(平成6年度)、英国の24.5人(平成6年度)、仏国の33.4人(平成7年度)に比較して決して高い水準にあるとは言えない。
  2. 今後の高等教育の規模を考える際に、上述のように社会人学生や海外からの留学生など18歳人口層からの進学者以外の要素を考慮する必要があるが、我が国において18歳人口層からの進学者が基本的な要素であることには当面変わりがないと考えられ、現時点においては、18歳人口の動向を中心に社会人学生や留学生の増加を加味しつつ今後の規模を考えることが適当である。
  3. 我が国の18歳人口は平成4年度の約205万人を頂点として減少期に入っており、平成10年度は約162万人となっている。この傾向は今後も続き、平成12年度には約151万人、さらに平成21年度には約120万人となり、その後20年程度は120万人規模で推移するものと予測される。平成9年1月の本審議会答申「平成12年度以降の高等教育の将来構想について」(以下「将来構想」という。)で示した試算によると、大学及び短期大学の臨時的定員を最低半数解消する場合、今後18歳人口が平成21年に約120万人規模まで減少していく中で、大学及び短期大学への入学者数も平成8年度から約10万人減少し約70万人(社会人、留学生約4.5万人を含む)となるが、進学率については18歳人口の減少が入学者の減少よりも急激であるため、8年度の46.2%(平成10年度実績48.2%)から58.8%(社会人・留学生を除く高卒進学率は55.1%)に上昇すると予測されている。また、この場合、全志願者に対する入学者の割合である収容力は100%になると試算されている。
  4. 今後、社会の高度化・複雑化・専門化の進展等に応じ、高等教育を修了し高度な課題探求能力や専門的知識等を有することが、社会生活を送る上で広く求められるようになっていくと考えられる。また、高等教育の普及が我が国の発展に大きく貢献してきたことを踏まえると、少子化の進行に伴い若年労働人口が減少していく21世紀初頭においても我が国が引き続き発展していくためには、社会の各分野で活躍できる高等教育を受けた質の高い人材の供給を一定規模確保することが必要である。さらには、高等教育の正確な国際比較は困難であるが、概観すれば欧米諸国に比較して日本の大学・短期大学の規模は決して大きいとは言えない状況にある。以上のような状況を総合的に考えると、「将来構想」で示した試算のように、平成12年度から16年度までの期間に大学及び短期大学の臨時的定員の最低半数の解消により入学定員の全体規模の減少を図りつつ、18歳人口が120万人規模の場合(平成21年度以降約20年間)に最大70万人程度(平成8年度入学者数約80万人から約10万人の減)の大学及び短期大学への入学者数を想定することは適当と考えられる。
  5. なお、進学率の上昇に伴い学生の多様化が進行していくことにかんがみ、教育機能の強化とともに、より厳格な成績評価の実施など卒業時における学生の質を確保するための取組を抜本的に充実する必要がある。

(イ)今後の設置認可の在り方

  1. 以上の考え方を踏まえると、今後とも高等教育の普及と質の高い人材の確保のため進学意欲を積極的に受け止めることが必要である。現在、進学率の高まりや学生の多様化する要求等に対応するため、各大学等において教育内容・方法の改善や組織の改組転換等の様々な試みが進められつつある。しかし、今後、進学率等の急激な上昇が進み、教育面や組織面での改革がこれに十分対応できなくなり、教育の質の確保を図っていく上で困難が生じることも予想される。したがって、18歳人口の減少期である平成12年度から16年度までの期間においては、全体として進学率等の急激な変化が生じることを避けつつ、各大学等における改革の定着・発展を促し高等教育全体の質の維持向上を図っていく必要がある。
  2. このため、「将来構想」で示したとおり、大学等の入学定員の全体規模を積極的に拡大することは望ましくなく、大学等の新増設の認可は今後とも抑制的に対応し、平成12年度以降は臨時的定員の最低半数の解消により段階的に入学定員の全体規模の減少を図ることが適当である。また、学問の進展や新たな人材養成需要等、時代の要請への対応についても、既設大学等の改組転換を基本としながら、我が国の高等教育の活力を維持し時代の変化に即応するために必要性の極めて高いものについて新増設を認めていくこととし、その具体的な取扱いについては「将来構想」で示した考え方に沿って行われることが適当である。

(ウ)競争的な環境における発展のための取組等

  1. 今後、進学率は上昇するものの、18歳人口の減少に伴い入学者数は減少していくと予測され、個々の大学等によっては定員の充足が困難となるなど厳しい経営状況を迎えることも予想される。短期大学では既にこのような状況を迎えつつあり、学科の改組転換や4年制大学への転換を図る例が見られる。各大学等においては、このような競争的な環境の中で、社会や学生の変化に適切に対応し組織編制や教育内容等の改善・充実を進め個性豊かな魅力ある大学等を実現できるよう、その存立をかけて一層努力することが求められる。
  2. 併せて、特色ある優れた取組を行う私学等に対する重点的な助成についての一層適切な配慮、私学経営に関する相談体制の一層の充実や大学等が廃止される場合の学生の取扱いについて適切な方策を講じることなど、「将来構想」で示した競争的な環境における発展のための取組等を一層推進していく必要がある。
2)大学院の拡充
 これからの大学院には、1)学術研究の高度化と優れた研究者の養成機能の強化、2)高度専門職業人の養成機能、社会人の再学習機能の強化、3)教育研究を通じた国際貢献が特に求められており、いずれの面からも大学院の更なる整備充実が必要である。
  平成22年(西暦2010年)における大学院の在学者数は25万人程度になると推計されるが、今後の制度改正や産業構造の変化などを考慮すると全体としてはそれ以上の規模に拡大していくと見込まれる。国はこの規模を念頭に置きつつ、特に大学院修士課程における高度専門職業人の養成に留意し、量的な拡大を図るとともに、大学院全体の質の維持向上と教育研究条件の充実のための措置を講じる必要がある。
  なお、国立大学については、今後大学院の規模の拡大に重点を置く必要があるが、関連して状況に応じ学部段階の規模の縮小も検討していくことが必要である。

(ア)大学院の役割

 大学院は基礎研究を中心として学術研究を推進するとともに、研究者の養成及び高度の専門的能力を有する人材の養成という役割を担うものである。一層変化が激しく複雑化していく21世紀の社会を迎えるに当たり、これからの大学院に特に求められることは、1)学術研究の高度化と優れた研究者の養成機能の強化、2)高度専門職業人の養成機能、社会人の再学習機能の強化、3)教育研究を通じた国際貢献の3点であり、そのいずれの面からも大学院の更なる整備充実が必要である。

(イ)在学者数の現状

  1. 大学院の在学者数の規模について本審議会は、平成3年11月に「大学院の量的整備について」答申し、平成12年の大学院の規模について「全体としては、少なくとも現在(平成3年)の規模の2倍程度に拡大することが必要である」と提言した。この答申を受けて、新たな大学院(研究科・専攻)の設置や大学院の入学定員増など各般の施策が講じられ、大学院の規模の拡大が図られてきた。
    大学院の在学者は、平成10年5月現在で  178,829人(修士課程123,220人、博士課程55,609人)であり、平成3年の98,650人(修士課程68,739人、博士課程 29,911人)に比べ 1.8倍の規模となっており、平成12年には本審議会の提言は達成される見込みである。
  2. このように我が国の大学院は近年著しく規模を拡大しつつあるが、人口千人当たりの大学院学生数で1.3人、学部学生に対する大学院学生の比率は6.9%(1996年)であり、アメリカの7.7人、16.4%(1994年)、イギリスの4.9人、21.3%
    (1994年)、フランスの3.5人、17.7%(1995年)など、諸外国の状況と比較するとなお大きな隔たりがある。

(ウ)将来推計

  1. 大学院への進学動向及び修了者の雇用機会についての近年の傾向の分析に基づく将来推計によれば、西暦2010年における大学院の在学者数は、これまでの進学動向に基づく試算では約25万人、雇用機会に基づく試算では約22万人から24万人との結果が得られた。なお、この推計は飽くまでも現行の制度をそのまま維持し延長したものであり、平成10年3月に制度化された通信制大学院や今回別に提言をしている修士課程の1年制コースや長期在学コースなどの制度改正等が行われた場合の影響は加味されていない。
  2. 今後の社会・経済の発展の中で、伝統的に意識されてきた大学院修了者の進路の在り方についてはこれまでとは異なる変化が生じざるを得ず、学生側、雇用者側双方の考え方を変えていくことが必要である。

(エ)今後の規模の展望

  1. 今後の大学院の規模については、以上の推計のほか、国際社会で活躍するための基本的な要件として大学院レベルの修了が求められている状況や、21世紀に向けて科学技術創造立国の実現が必要となっていることとともに、特に、急速な技術革新や知識の陳腐化に対応しリフレッシュ教育の機会を求める社会人等が増加する状況において、今後学部教育では専門的素養のある人材として活躍できる基礎的能力を培い専門性の一層の向上は大学院で行う方向が重要となること等を踏まえる必要がある。それとともに今後の産業構造の変化等を勘案する必要があり、新しい産業分野が創出され成長するにつれ高度な知識・能力を備えた人材への新たな需要が生まれてくることも想定すると、全体としては25万人以上の規模に拡大していくことが見込まれる。
  2. 国は、将来におけるこのような大学院の規模を念頭に置きつつ、特に大学院修士課程における高度専門職業人の養成に留意し、量的な拡大を図るとともに、大学院全体の質の維持向上に努めることが必要である。それと同時に、優れた教育研究実績をあげることが期待される大学院や教育研究上の新しい試みに意欲的に取り組もうとする大学院がより一層その特長を発揮できるよう、教育研究条件の充実のための措置を講じる必要がある。
  3. また、諸外国の状況や今後の社会変化等を踏まえると、将来的には諮問において例示されたように大学院の在学者数が30万人規模となることも予想されるところであり、この面からも質の維持向上方策の一層の充実が望まれる。
  4. なお、国立大学については、今後大学院の規模の拡大に重点を置く必要があるが、関連して状況に応じ学部段階の規模の縮小も検討していくことが必要である。

(3)大学改革の基本理念 ―個性が輝く大学―

 「知」の再構築が求められる21世紀初頭において、我が国の高等教育が世界的水準の教育研究を展開し、その求められる役割を十分に果たしていくためには、1)課題探求能力の育成を目指した教育研究の質の向上、2)教育研究システムの柔構造化による大学の自律性の確保、及びそれを支える3)責任ある意思決定と実行を目指した組織運営体制の整備、さらにこうした取組についての4)多元的な評価システムの確立による大学の個性化と教育研究の不断の改善、の四つの基本理念に沿って現行制度を大胆に見直し、各大学が更なる向上を目指して切磋琢磨し発展していくことのできる新しい高等教育システムへ転換していかなければならない。その際、同時に、国際的通用性・共通性を確保しつつ大学等の自律性に基づく多様化・個性化を推進するとともに、公共的機関である大学等が社会的責任を果たしていくことが重要である。
  なお、個々の改革方策には、すべての大学等が取り組むことが必要なもののほか各大学等の自主的判断によるのが適切なものも含まれており、各大学等はその理念・目標を踏まえつつ適切かつ総合的に改革を推進していく必要がある。

(ア)新しい高等教育システムの構築

  1. 「知」の再構築が求められる時代となる21世紀初頭における社会状況の展望と高等教育の現状を踏まえると、高等教育がその期待される役割を十分に果たしていくためには、今後、1)課題探求能力の育成を目指した教育研究の質の向上、2)教育研究システムの柔構造化による大学の自律性の確保、及びそれを支える3)責任ある意思決定と実行を目指した組織運営体制の整備、さらにこうした取組についての4)多元的な評価システムの確立による大学の個性化と教育研究の不断の改善、の四つの基本理念に沿って現行制度を大胆に見直し、各大学が更なる向上を目指して切磋琢磨し、発展していくことのできる新しい高等教育システムへ転換していかなければならない。また、各大学等においてもこれらの基本理念と今後の改革方策を踏まえ不断の自己改革に取り組んでいく必要がある。
  2. この際、21世紀初頭の社会状況の展望においても述べたように、今後、高等教育においても地球規模での協調・共生の必要性が高まっていくが、一方で地球規模での相互の競争が激しくなることなどを考えると、大学等の自律性に基づく多様化・個性化を推進するとともに、我が国の高等教育システム全体として教育研究における国際的な通用性・共通性の確保と国際競争力の強化に努めていかなければならない。また、大学等は、社会的存在としてその責任を十分に果たしていくことを一層重視する必要がある。

(イ)各大学等における取組

 四つの基本理念に沿った改革は一体的に推進されることが必要であるが、個々の具体的改革方策には、すべての大学等において共通的に取り組んでいくことが必要な事項のほか、各大学等がその理念・目標に沿って自主的に判断することが適切な事項も含まれている。各大学等においては、多様化・個性化を一層推進する観点から、その理念・目標を踏まえつつ、以下の具体的改革方策を適切かつ総合的に推進していくことが必要である。

(ウ)短期大学及び高等専門学校についての取扱い

 以下及び第2章に述べる四つの基本理念に沿った改革方策においては、大学学部及び大学院を中心に記述している。短期大学及び高等専門学校については、その特性等を踏まえつつ、大学学部に準じた取組を進めることが基本的には適当であると考えられる。

1)課題探求能力の育成 ―教育研究の質の向上―
 21世紀初頭の社会状況の展望等を踏まえると、今後、高等教育においては、「自ら学び、自ら考える力」の育成を目指している初等中等段階の教育を基礎とし、「主体的に変化に対応し、自ら将来の課題を探求し、その課題に対して幅広い視野から柔軟かつ総合的な判断を下すことのできる力」(課題探求能力)の育成を重視することが求められる。また、学部教育では、教養教育及び専門分野の基礎・基本を重視し専門的素養のある人材として活躍できる基礎的能力等を培うこと、専門性の一層の向上は大学院で行うことを基本として考えていくことが重要となる。さらに、高等教育の普及等に伴う学生の一層の多様化等が進行していくことを踏まえ、卒業時における質の確保、国際的通用性の向上等を重視しつつ、教育研究の質の向上と高度化に一層努めることが必要である。

(ア)求められる人材

  1. 今後、我が国のシステムはあらゆる面において従来の追い付き型のシステムから、世界の先駆者として自ら先頭に立って次代を切り拓いていくことのできるシステムへと大きく転換していかなければならない。このような我が国の状況や将来の社会状況の展望等を踏まえると、今後、高等教育においては、「自ら学び、自ら考える力」の育成を目指している初等中等段階の教育を基礎とし、変化が激しく不透明な時代において「主体的に変化に対応し、自ら将来の課題を探求し、その課題に対して幅広い視野から柔軟かつ総合的な判断を下すことのできる力」(課題探求能力)の育成を重視することが求められる。さらに、自主性と自己責任意識、国際化・情報化社会で活躍できる外国語能力・情報処理能力や深い異文化理解、さらには高い倫理観、自己を理性的に制御する力、他人を思いやる心や社会貢献の精神、豊かな人間性などの能力・態度のかん養が一層求められる。
  2. また、科学技術創造立国の実現や学術研究の推進等のためには、質の高い職業人・技術者、高度な専門的知識・能力を持ち新しい領域を開拓することのできる人材や起業家精神に富んだ人材、創造性・独創性豊かな優れた研究者の養成が一層不可欠となる。さらには世界的な視野での人材養成への貢献も一層重要となってくる。

(イ)学部教育と大学院教育

 生涯学習社会への移行が一層進展する中で、今後、学部段階の教育では、初等中等教育段階からの円滑な移行の観点から、教養教育及び専門分野の基礎・基本を重視した教育を行うことにより専門的素養のある人材として活躍できる基礎的能力や生涯学習の基礎等を培うこと、また、大学院では継続的な専門性の一層の向上を行うことを基本として考えていくことが重要となる。

(ウ)卒業時の質と国際的通用性の確保等

 高等教育の一層の普及、18歳人口の減少等に伴う学生の多様化等が進む中で、高等教育がその役割を十分に果たし教育研究全体の質の維持・向上と世界をリードする教育研究の展開を推進していくためには、現状の問題点を厳しく認識し大胆な改革を進め、課題探求能力の育成を重視しつつ、卒業時における質の確保と教育研究の質の一層の向上、高度化を推進していかなければならない。その際、今後あらゆる側面で地球規模での交流等が急速に拡大していくことを考えれば、大学における教育研究、特に教育活動の内容が国際的な通用性を有することが不可欠となっていく。例えば、工学分野においては、工学教育の国際的通用性を担保する目的で、大学の工学教育の内容を評価し質の維持向上を図るとともに、その評価システムを国際的な共通標準に準拠させようとする仕組みが我が国においても検討されているところであり、今後このような取組なども視野に入れ、改革を進めることが重要となってくる。

2)教育研究システムの柔構造化  ―大学の自律性の確保―
 高等教育の普及等に伴う学生及び学習需要の多様化等の一層の進行、社会の更なる複雑化と変化の一層の加速等が予想される中で、高等教育がその期待に適切にこたえていくためには、学生の主体的学習意欲及びその学習成果を積極的に評価し得るような制度、大学が自律性を確保しながら一層積極的・機動的に社会の要請等に対応できるような制度、国際的な通用性の高い制度へと、教育研究システムをより柔構造化していくことが必要である。

(ア)多様な学習需要への積極的対応

  1.  今後、高等教育の一層の普及に伴い、従来よりも更に多様な能力・適性を持ち入学前の履修歴も様々な学生が増加することが予想される。また、高等教育における再学習を通じた個人の職業能力等の向上の必要性の増大、心豊かな生き方を求める人々の増加などを背景に生涯学習需要は一層高まり、社会人入学も一層増加すると考えられる。さらには、社会の高度化・複雑化の進展に伴って、高度の専門的知識・能力の習得のための学習需要が高まっていく。このような学生と学習需要の一層の多様化が進む中で、高等教育がその求められる役割を果たし社会の期待に適切にこたえていくためには、学生の能力・適性に応じた主体的な学習意欲及びその学習成果を積極的に評価し得るような制度へと、教育研究システムをより柔構造化していかなければならない。
  2. また、生涯学習需要の高まりに対応し、単に社会人も学べる大学ではなく、社会人の再学習を目的とした講座、大学院のコースの開設なども重要である。生涯学習の中核的機関としての役割を担う放送大学においては、衛星通信による全国放送が実現したところであり、国民の生涯学習機会の拡大のため更なる発展が期待される。
     さらに、マルチメディアをはじめとする情報通信技術の活用は高等教育の充実に新たな可能性を開くものであり、各大学において積極的かつ効果的に活用できるように制度面での取扱いを一層柔軟・弾力的にしていかなければならない。外国では情報通信ネットワーク上でのみ授業が展開される、いわゆる「バーチャル・ユニバーシティ」といった新しい形態も現れはじめており、我が国においても今後その制度的な面も含めた検討が必要になると考えられる。

(イ)行財政制度の弾力化等

 組織運営面においても、変化が激しく不透明な時代において、創意工夫を生かした主体的取組を基礎としつつ教育研究の一層の質的向上への各大学の取組を促進するために、国立大学については、講座・学科目の編制の在り方や人事、会計・財務の制度の見直し、公私立大学については、大学設置審査に係る手続きや学科設置の審査の在り方等の見直しを図ることにより、自らの責任で社会の変化等に機動的に対応できるよう行財政制度等の弾力性を一層向上させる必要がある。

(ウ)社会との連携・交流や国際交流の推進

 高等教育が社会に積極的に貢献するためには、大学が地域社会や産業界等の需要等にこれまで以上に積極的に対応していくことが可能となるよう、それらの機関との連携・交流のための柔軟・弾力的な制度の整備を一層促進しなければならない。また、国際交流の拡大に対応するために、留学生交流をはじめとする国際交流や外国人教員を含む多様な教員構成の実現など、高等教育の国際化を一層推進することが必要である。

3)責任ある意思決定と実行 ―組織運営体制の整備―
 上記1)及び2)に述べた取組を推進していくためには、各大学が自らの主体的判断と責任において、社会の期待にこたえ得る効果的な大学運営を行っていくことが求められる。そのためには、学長のリーダーシップの下に、適時適切な意思決定を行い実行できる組織運営システムが確立されなければならない。

(ア)学内の機能分担の明確化等

  1. 上に述べた1)課題探求能力の育成を目指した教育研究の質の向上と、2)社会の多様な需要等にこたえ得る教育研究システムの柔構造化による大学の自律性の確保のためには、各大学が自らの主体的判断と責任において、社会の様々な変化等に機動的に対応し効果的な大学運営を行っていくことが必要である。そのためには、学長のリーダーシップの下に、適時適切な意思決定を行いそれを実行できる責任ある意思決定と実行のシステムが確立されなければならない。
  2. このため、開放的で積極的な新しい自主・自律体制の構築を目指し、学内の意思決定のための機能分担と連携協力の基本的な枠組みを明確化する方向で改革を進めることが求められる。
  3. また、大学は公共的機関としてその社会的責任を一層適切に果たしていくことが求められる。このため、学外の意見の大学運営への反映等を図るなど、社会的存在である大学として十分に社会に開かれ、社会に対して責任を果たすことのできる運営システムを整備していかなければならない。

(イ)社会への積極的情報提供

 さらに、大学の社会的責務として、大学の教育研究活動に関する情報を社会に対して積極的に提供していくことが不可欠である。なお、各大学に関する情報は、日本国内だけでなく、海外からの留学希望者等に対してなど国際的にも発信していく必要がある。

4)多元的な評価システムの確立  ―大学の個性化と教育研究の不断の改善―
 以上の1)から3)についての取組を実効あるものとするためには、各大学が自己点検・評価の恒常的実施とその結果を踏まえた教育研究の不断の改善を図っていくことはもとより、さらに、より透明性の高い第三者評価を実施し、その評価結果を大学の教育研究活動の一層の改善に反映させるなど、各大学の個性を更に伸長し魅力あるものとしていくための多元的な評価システムを速やかに確立することが不可欠である。

 (ア)多元的な評価システム

 各大学がその多様化・個性化を図りつつ世界的水準の教育研究を推進していくためには、大学の自律性に基づく教育研究活動の展開や大学運営が行われているか等の点について常に適切な自己点検・評価を実施し、これを踏まえて各大学が教育研究の不断の改善を図っていくことが不可欠である。さらに、従来の自己点検・評価の充実のみならず、より透明性の高い第三者評価を実施し、その評価結果を大学の教育研究活動の一層の改善に反映させるなど、各大学の個性を更に伸ばし魅力あるものとしていくための多元的な評価システムを早急に確立しなければならない。

(イ)資源の効果的配分と評価

 限りある公的資源の効果的な配分の実施、資源配分における透明性の向上と社会に対する説明責任の観点からも、それぞれの資源配分の目的に応じ、きめ細かな評価情報に基づきより客観的で透明な方法によって適切な資源配分を行う必要がある。

 以上述べた四つの基本理念に沿って、国公私立大学が大胆に改革を進めていくことが必要であるが、とりわけ国立大学については、組織及び運営体制の整備等が焦眉の課題とされていることから、この答申で提言した改革を速やかに実現することが求められている。これにより行政改革会議最終報告や中央省庁等改革基本法で求められている国立大学の改革を実現することになると考えている。また、これらの改革を一体として行うことにより、教育研究における国際的通用性・共通性の向上や大学の社会的責任を十分に果たしていくことを一層重視した21世紀の新しい大学像を構築しようとするものであることにかんがみれば、独立行政法人化をはじめとする国立大学の設置形態の在り方については、これらの改革の進捗状況を見極めつつ、今後さらに長期的な視野に立って検討することが適当である。
 この答申で提言した具体的な改革方策が、国公私立大学において積極的に推進されることにより、各大学が教育研究の質の不断の維持向上を図り、切磋琢磨する状況が創出され、それぞれが“個性が輝く大学”として発展していくことが求められている。

第2章 大学の個性化を目指す改革方策

1 課題探求能力の育成―教育研究の質の向上―

 今後、高等教育の普及が一層進むことを踏まえると、卒業時における質の確保を重視したシステムへの転換が必要である。このため、学部段階においては、初等中等教育における自ら学び、自ら考える力の育成を基礎に「課題探求能力の育成」を重視するとともに、専門的素養のある人材として活躍できる基礎的能力等を培うことを基本として、教育内容の再検討を行い、あわせて教員の意識改革、責任ある授業運営と厳格な成績評価の実施などを推進するための具体的仕組みを整備する必要がある。
  また、今後、専門性の向上は大学院で行うことを基本として考えていくことが重要となることを踏まえ、大学院については、その一層の高度化と機能分化を図っていく観点から、制度上の位置付けの明確化を図るとともに、目的に応じた教育内容・方法等の整備、国際的に評価される卓越した教育研究拠点を形成していくためのシステムの導入等を図る必要がある。

 (1)学部教育の再構築

 今後、高等学校教育における教育課程の基準の改善、選択制の拡大等が進むとともに、大学進学率が一層上昇する中で、進学前に受けた高等学校教育の内容も多様化し、さらに社会人や留学生の増加が進み、興味・関心、履修歴などあらゆる面で多様な学生が大学に進学してくることが予想される。また、時代の変化や社会の要請等に対応した教育研究の展開が一層強く求められるようになっていく。これまでの本審議会答申等を踏まえ、カリキュラム改革の実施、個々の授業科目ごとの詳細な授業計画としてのシラバスの作成・公表など教育の質の確保のための取組が進められているが、いまだに大学教育への批判を払拭するには至っていない現状を重く受け止めつつ、21世紀に向けさらに改革を推進する必要がある。
 1)教育内容の在り方 ―課題探求能力の育成―
 1)教養教育の重視、教養教育と専門教育の有機的連携の確保
 社会の高度化・複雑化等が進む中で、「主体的に変化に対応し、自ら将来の課題を探求し、その課題に対して幅広い視野から柔軟かつ総合的な判断を下すことのできる力」(課題探求能力)の育成が重要であるという観点に立ち、「学問のすそ野を広げ、様々な角度から物事を見ることができる能力や、自主的・総合的に考え、的確に判断する能力、豊かな人間性を養い、自分の知識や人生を社会との関係で位置付けることのできる人材を育てる」という教養教育の理念・目標の実現のため、授業方法やカリキュラム等の一層の工夫・改善、全教員の意識改革と全学的な実施・運営体制を整備する必要がある。
  この際、専門教育においても教養教育の理念・目標を踏まえた教育を展開することにより、教養教育と専門教育の有機的連携の確保を図っていくことが重要であることを十分に認識しなければならない。

(ア)教養教育の重視

 学術研究や技術革新の進展、国際化・情報化の進展等社会の急速な変化が進む中で、これからの社会はより複雑化し社会の様々な要素の関連が強くなり相互の波及効果が大きくなる傾向にあり、一つの角度から物事を見ていたのでは的確な判断はできなくなってきている。このため、「学問のすそ野を広げ、様々な角度から物事を見ることができる能力や、自主的・総合的に考え、的確に判断する能力、豊かな人間性を養い、自分の知識や人生を社会との関係で位置付けることのできる人材を育てる」という教養教育の理念・目標の実現のため、各大学において教養教育の在り方を真剣に考えていくことが必要である。

(イ)教養教育の工夫・改善のための取組

  1. 各大学においては、教養教育の理念・目標の実現のため、かつての一般教育のように独立の科目を設ける、あるいは、専門教育科目の中で学際的な科目を開設するなど、各大学の工夫により教養教育を実施することが必要である。また、教養教育は専門教育と対置されるものではなく、専門教育においても教養教育の理念・目標を踏まえた教育が展開されることが専門教育の充実・強化の上でも一層重要となることを十分に認識しなければならない。
     この際、教養教育の内容については、例えば、1)社会生活を送る上で身に付けておくべき基本的な知識と技能を習得させる(注*1)、2)社会的・学問的に重要な特定の主題や現代社会が直面する基本的な諸課題について授業(テーマ講義やゼミナールなど)を行い、多面的な理解と総合的な洞察力や現代社会の諸課題を総合的に判断し対処する能力を養成する(注*2)、3)体系化された学問を幅広く経験することにより、専攻する学問分野の理解を助けるとともに、専攻する学問分野の違いを越えて共通に必要な複合的視点や豊かな人間性をかん養する、4)専門教育において、関連する分野に関する幅広い視野に立って学際的に取り組むことのできる力を培うなどが考えられる。各大学においては、それぞれの理念・目標に沿って、教養教育の重要性を踏まえた体系的なカリキュラムを工夫していく必要がある。
  2. 教養教育の実施に当たっては、教養教育は従来の専門教育の教員を含め全教員が責任を持って担うべきものであるという認識の下、その実施・運営の責任を持つ組織を明確にするとともに、一部の教員に過度の負担が集中したり、全学的な視点からの調整や学部・学科間の連絡が希薄なために教養教育の実施に支障を来したりすることのないように全学的な実施・運営体制を整備する必要がある。
  3. 教養教育の実施方法等については、学際的・総合的視野に立って、自ら課題を探求し、柔軟かつ総合的な思考、判断によって解決する能力を育成することが重要であることを踏まえ、例えば、環境問題などのような複合的視点から検討が必要な課題を探求、設定して考えるという課題探求型学習の推進が重要である。また、米国の大学における主専攻・副専攻のように、複数の学部・学科の専門科目を同時に履修できるようなカリキュラム上の工夫を行うことも有効である。
    さらに、社会でのボランティア活動や大学と企業が協力して学生に自らの専攻や将来の職業に関連した就業体験を与えるインターンシップ等、学外の体験を取り入れた授業科目の開設などにより社会の実践的な教育力を大学教育に活用するという視点も重要である。

(ウ)正課教育外の指導・相談等

 大学教育においては、学生が高い倫理観や社会貢献の精神、豊かな人間性を身に付けるなど全人格的に成長することが重要である。そのためには、正課教育の内容・方法の改善だけではなく、大学で何を学ぶのかを含め学習上の問題に悩んでいる学生への指導、卒業後に自分の個性と能力を生かせる職業に就くことを助ける就職指導・相談、学生の入学から卒業までの過程における悩み・迷いに対応できる相談・支援機能の充実改善を図る必要がある。また、幅広い知識と豊かな人間性をかん養するためには、授業だけではなく課外活動を含む大学生活全般を通じて学生が学んでいくことが重要であり、サークル活動充実の支援やこれらの施設・設備の整備についても今後十分に配慮する必要がある。

 2)専門教育の見直し
 学部段階の専門教育においては、細分化した狭い分野に限定された知識やそれまでの学問研究の成果を単にそのまま知識として教えることに終始するのではなく、基礎・基本を重視しつつ、関連諸科学との関係、学問と個人の人生及び社会との関係を教えることなどを通じて、学生が主体的に課題を探求し解決するための基礎となる能力を育成するよう配慮し工夫することが必要である。

 (ア)専門教育の見直しが求められる背景

 学術研究の著しい進展や社会・経済の急速な変化を背景として、各学問分野における教育研究対象は増加の一途をたどっている。その結果として、学問分野の専門化や細分化が生じ学科の細分化が進み、ともすれば学生の受ける教育内容が狭い分野に限定されたり、さらにそれまでの学問研究の成果を単にそのまま知識として教えることに終始したりする傾向がある。一方で、地球環境、生命、情報など様々な分野で、自然科学及びそれを基盤とする科学技術と人文・社会科学が共同して取り組む必要がある複合領域が多くなっている。また、高等教育の大衆化の進行と生涯学習体系への移行を踏まえ、学部段階の専門教育には、特定分野における完成教育というよりも、生涯学び続ける基礎を培うより普遍的な教育が求められている。

(イ)専門教育における基礎・基本の重視等

 上記に述べたような状況を踏まえ、各大学においてはその理念・目標に沿って、専門教育について、基礎・基本の重視、学生が主体的に課題を探求し解決する能力の育成という観点から、学部段階における教育内容としてどこまでを対象とするのか、学生にどのような知識・能力を身に付けさせることを目的とすべきなのかを改めて問い直す必要がある。その際、将来新しい領域を開拓していくことのできる専門的素養のある人材、真に社会で伸びていく人材を養成するには、細分化された狭い分野を教えるだけではなく、専門の骨格を正確に把握させると同時に、学生が広い視野を持ち学問を総合的に把握し課題を探求できるような幅広い教育を施すことが重要であるという認識の下に、カリキュラム編成及び個々の授業を実施することが必要である。

 3)学部教育と高等学校教育との関係
 高等学校教育では、生徒の個性を伸ばし進路への自覚を深める等の観点から、今後、選択制の拡大、教育内容の厳選等が更に進められる方向にある。各大学は、大学に入学してくる学生の履修歴の多様化が一層進むことに対応して、入学者選抜において大学教育に必要な科目については高等学校での履修を求めることが考えられる。さらに、入学後に大学教育の基礎を教えるなどの工夫を通じて、後期中等教育から高等教育への移行を円滑に進めることが強く求められる。
  大学入試の在り方については、知識の量だけでなく大学での学習に対する意欲・熱意や入学後の能力の伸長も見据え、多様な個性や能力を適切に評価する必要がある。このため、高等学校における学習指導要領の改訂や学部教育の改善の方向を踏まえ、また、高等学校と大学との接続の在り方についての今後の幅広い検討を視野に入れ、具体的な改善方策を審議する。
  また、大学レベルの教育を受けるのに十分な能力と意欲を有する高等学校の生徒に対し、大学レベルの高度な教育・研究に触れる機会をより広く提供し、生徒の興味や関心を高めその能力の伸長を図っていくことは有意義である。このため、各大学において、大学教育を受けるのに十分な能力と意欲を有する高等学校段階の生徒に対し、大学レベルの教育に触れる機会を広く提供することが望ましい。

 (ア)後期中等教育から高等教育への円滑な移行

  1. 現在、一部の大学関係者その他の有識者等の間に、大学でいわゆる高等学校の補習教育を行っているという現状について、大学教育の質の低下の現れとして批判的にとらえる傾向が見られる。しかし、このような考え方の適否については慎重な検討が必要である。
  2. 高等学校教育については、生徒の個性を伸ばし進路への自覚を深める等の観点から選択制の拡大等が進められており、大学に入学してくる学生が高等学校で履修する学習内容は多様化している。このため、かつてのように高等学校卒業生について一律に一定の履修歴を備えていることを求めることは適切とは言えないのが現状である。このような高等学校卒業生の履修歴の多様化等は、教育課程審議会の答申(平成10年7月29日)を受けて、選択制の拡大や教育内容を厳選し基礎・基本の着実な定着を図ることなどが更に推進されることにより、今後一層進むと考えられる。
  3. 大学は、このような高等学校教育の動向や入学希望者の変化を常に的確に把握し、従来の「現在大学で補習教育を行っている内容は、本来高等学校が行うべきである」という大学中心の考え方から、「高等学校の教育内容が多様化していることを前提として履修歴の多様な高等学校卒業生を受け入れる以上は、大学の教育も当然その変化に対応した内容に変わるべきである」という初等中等教育の現状を見渡した考え方へ発想を転換することが必要である。
  4. 具体的には、各大学においては、高等学校教育の動向や学生の実態を踏まえつつ、大学教育への円滑な移行を図るために、入学前に学生が学習しておくべき内容に関する積極的な情報提供に努め、高等学校の生徒の適切な学習選択を支援することが重要である。また、高等学校における生徒の主体的選択を阻害することのないよう十分な配慮を行いつつ、入学者選抜の段階において、当該大学あるいは学部・学科の授業を受けるために必要な高等学校の科目について入学試験を課す、あるいは、高等学校での履修を求めるなどの措置を講じることが考えられる。さらに、入学後は必要に応じ学生の履修歴等に対応して大学教育の基礎を教えるなど、学生に対するきめ細かな配慮や様々な工夫が必要である。これらの取組を通じて、学生が後期中等教育から高等教育へ円滑に移行できるようにすることが強く求められる。
  5. 同時に、入学者選抜については、専門高校や総合学科の卒業者を対象とした選抜を進めるなど、高等学校における生徒の実情に配慮することが望ましい。
     なお、大学入試の在り方については、知識の量だけでなく大学での学習に対する意欲・熱意や入学後の能力の伸長も見据え、多様な個性や能力を適切に評価する必要がある。このため、高等学校における学習指導要領の改訂や学部教育の改善の方向を踏まえ、また、高等学校と大学との接続の在り方についての今後の幅広い検討を視野に入れ、具体的な改善方策を審議する。

(イ)高校生が大学教育に触れる機会の提供

 大学レベルの教育を受けるのに十分な能力と意欲を有する高等学校の生徒に対し、大学がそのような教育・研究に触れる機会をより広く提供し、生徒の興味や関心を高めその能力の伸長を図っていくことは、一人一人の能力・適性に応じた教育を進める上で大きな意義を有する。このため、生徒がこのような大学レベルの学習を行った場合、各高等学校はそれを単位として認定できることとされている。このことを踏まえ、各大学において、大学教育を受けるのに十分な能力と意欲を有する高等学校段階の生徒に対し、大学レベルの教育に触れる機会を広く提供することが望ましい。

 4)国際舞台で活躍できる能力の育成等

 外国語教育の充実や海外留学の推進等を進めると同時に、我が国の歴史や文化への理解、国際社会の直面する重要課題への認識を深めたり、討論、口頭による意見発表や報告、プレゼンテーション等の訓練を通じて自らの主張を明確に表現する能力を育成するなど、国際舞台で活躍できる人材の養成を図ることが重要である。  

(ア)世界的規模での交流拡大等

 今後、社会・経済のあらゆる場面において世界的規模での交流が一層進むと考えられ、外国語能力の習得など、これに対応していくための知識・技能を身に付けることがすべての学生にとって必須のものとなっていく。また、地球環境問題など地球規模で解決を図らなければならない局面がますます増加し、国際社会で知的リーダーシップを発揮していくことができる専門家の養成が一層重要になっていくと考えられる。このような状況の中で、国際舞台で活躍できる能力の育成を図っていくことがますます重要になっている。

(イ)大学教育全体を通じた取組の必要性

 異文化理解を深める前提として、まず、我が国の歴史や文化への理解、国際社会の直面する重要課題への認識を深めることが重要である。また、国際的な視野を持つにとどまらず、国際社会で信頼され尊敬される人材として知的リーダーシップを発揮できる人材を育成するためには、討論、口頭による意見発表や報告、プレゼンテーション等の訓練を通じて自らの主張を明確に表現する能力を育成する必要がある。各大学においては、全学共通科目、専門科目その他様々な場を通じて、国際舞台で活躍できる人材の養成を図ることが重要である。

(ウ)外国語を聞く力、話す力の向上

 大学における外国語教育は、外国語学部等における教育研究をはじめ多様な形で行われているが、一般に読解力の育成に偏り聞く力、話す力が育成されていないという批判がある。各大学では、読解力の育成のほか聞く力、話す力の一層の向上を図るため、少人数教育や視聴覚機器、マルチメディア機器の利用など教育内容・方法の改善の様々な取組が行われているが、今後一層そのような取組を進めていくことが必要である。

(エ)短期留学の推進

 異なる価値観や視点から学習することを通じて異文化理解を深め、視野を広げて地球的規模で物事を考える基礎を培うという観点から、大学に在籍したまま1年間程度留学を行ういわゆる短期留学を一層推進していくことが必要である。これまでは研究者間の交流から自然に発展した大学間の学生交流が少なくなかったが、特色ある優れた学部教育を行う海外の大学との学生交流協定の締結も組織的に推進すべきである。

2)教育方法等の改善 ―責任ある授業運営と厳格な成績評価の実施―
 1)授業の設計と教員の教育責任
 我が国の大学制度は単位制度を基本としており、単位制度の実質化は教育方法の改善にとって重要な課題である。現在の単位制度は、教室における授業と事前・事後の準備学習・復習を合わせて単位を授与するものであり、学生の自主的な学習が求められる。このため、教室における授業だけでなく、授業の前提として読んでおくべき文献を指示するなど学生が事前に行う準備学習・復習についても指示を与えることが教員の務めである。このことについて、大学当局はもとより各教員が十分自覚して授業の設計と学習指導を行うことが必要である。同時に、学生の側においても主体的に学習に取り組むことが求められる。  

(ア)単位制度の趣旨

 現在の我が国の大学制度は単位制度を基本としており、1単位は、1)教員が教室等で授業を行う時間及び2)学生が事前・事後に教室外において準備学習・復習を行う時間、の合計で標準45時間の学修を要する教育内容をもって構成される。これを基礎とし、授業期間は1学年間におよそ年30週、1学年間で約30単位を修得することが標準とされ、したがって大学の卒業要件は4年間にわたって124単位を修得することを基本として制度設計されている(注*1)。

(イ)授業の準備学習等の現状

  1. 上記のように、単位は教室における授業と事前に行う準備学習・復習を合わせて授与されるものであり、学生の自主的な学習が求められる。このため、教員には教室外の準備学習・復習の指示を与え学生に勉強させる務めがあるが、それが現実には十分果たされていないとの指摘がある。同時に、学生の側についても主体的な学習への取組が十分でないとの指摘もある。
  2. (ア)に述べた大学設置基準における単位制度の制度設計からすれば、授業期間中における学生の1週間の学習時間はおよそ45時間となる。しかしながら、平成7年の文部省調査「大学改革の今後の課題についての調査研究報告書」によると、学生の1週間の平均学習時間は、「授業への出席時間」は19.3時間、「その他の勉強時間」は7.2時間となっている。中でも、自然科学系では、「授業への出席時間」が22.3時間、「その他の勉強時間」が7.9時間であるのに対し、社会科学系については、「授業への出席時間」が15.8時間、「その他の勉強時間」が6.0時間となっている。大学設置基準における単位制度が1週間の学習時間をおよそ45時間として設計されていることからすれば、学生の実際の学習時間はこれよりはるかに少なく、その原因は主に「その他の勉強時間」の学習すなわち授業時間以外の準備学習等が十分確保されていないことにあると考えられる。

(ウ)授業設計における教員の務め

 大学進学率の上昇に伴い大学に入学してくる学生の多様化が進む中で、現在の大学教員にはこれまで以上に個々の学生に学習への動機付けを与え、学生が学習及び研究目標を確立するための指導を行うことが求められている。大学当局はもとより各教員は、教室外の学習は学生の自主性のみに任せるのではなく、例えばシラバスに明記する等の方法により学生が事前に行う準備学習や事後の復習、レポートの提出などについても十分な指示を与えることが教員の務めであることを十分に認識し、自覚して授業の設計を行うことが必要である。また、例えば理工系の学生の研究室における活動など教員の指示により学生に実験や演習を課している部分については、これを単位として適切に評価することも併せて検討される必要がある。

(エ)学習環境の整備

 教室外における学習を徹底させ、学生が主体的な学習に十分取り組むことができるようにするためには、指導を担当する個々の教員の努力に加え、図書館の座席数や必読図書の所要冊数の確保、開館時間や開館日、貸出期間など施設・設備利用の面を含め、学生が学習する場としての大学の学習環境の整備にもこれまで以上に留意する必要がある。

 2)成績評価基準の明示と厳格な成績評価の実施
 大学の社会的責任として、学生の卒業時における質の確保を図るため、教員は学生に対してあらかじめ各授業における学習目標や目標達成のための授業の方法及び計画とともに、成績評価基準を明示した上で、厳格な成績評価を実施すべきである。なお、厳格な成績評価の実施の結果、留年者による収容定員超過が生ずる可能性があるが、こうした定員超過については大学の設置認可や私学助成の際に弾力的に取り扱うことが適当である。

 (ア)卒業時における質の確保

  1. 高等教育の大衆化と学生の多様化が一層進展する中で、各大学はそれぞれの個性・特色を発揮しつつ、学部段階における教育機能の充実強化を通じた卒業生の質の確保を図ることが必要である。
  2. 従来、大学卒業生の質は、大学において何を学んだかということよりも、どこの大学を卒業したか、言い換えればどの大学に入学したかによって判断されているという批判がある。大学は公共的な機関として、社会に貢献する人材の養成に当たるという役割を担っており、学生に高い付加価値を身に付けさせた上で卒業生として送り出すことは大学の社会的責任であるということを十分認識する必要がある。

(イ)成績評価基準の明示等

  1. 学生の卒業時における質の確保を図るため、教員は学生に対してあらかじめ各授業における学習目標や目標達成のための授業の方法及び計画とともに、成績評価基準をシラバスなどに明示した上で、厳格な成績評価を実施すべきである。成績評価基準は各授業科目を担当する教員が授業の目的等に沿って適切に定めるべきものであり、学期末の試験のみでなく学生の授業への出席状況、宿題への対応状況、レポート等の提出状況等、日常の学生の授業への取組と成果を考慮して多元的な基準を設定することが望ましい。
  2. 学生の学習効果を高めるためには、1学期の中で少数の授業科目を集中的に履修し学期ごとに完結させる制度であるいわゆるセメスター制等の導入を促進し、学期の区分ごとに授業科目を完結させて成績評価を行い次の学期の学習につないでいくことが重要である。

(ウ)厳格な成績評価

 厳格な成績評価については、例えばGPAと呼ばれる制度を活用した取組を行っている大学(注※1)もある。
 各大学においては、このような例も参考としつつ、各大学の状況に応じた厳格な成績評価の仕組みを整備していくことが必要である。なお、厳格な成績評価の実施により最低限の質の確保を行うと同時に、優秀な成績を修めた学生には表彰を行うなど、学生の学習意欲を刺激するような仕組みを導入することも重要である。

(エ)留年者の定員上の取扱いにおける配慮
 大学が責任ある授業運営により学生に対する学習指導の充実等に一層努めた上でも、学生において主体的な学習への取組が不十分な場合には、厳格な成績評価を実施し安易な進級や卒業を抑制することにより学問分野によっては留年者が増加することも予想される。大学において教育責任を果たすことが大学の設置認可や私学助成の上で不利にならないよう、留年者の定員上の取扱いについては弾力的に取り扱うことが適当である。具体的には、大学の設置認可における定員超過率の算定については、収容定員に対する在学者の割合ではなく入学定員に対する入学者の割合で算定すること、私学助成に関しては、定員超過率に基づく経常費補助金の傾斜配分について、修業年限を超えて在学している者がいる場合に一定の条件下で在学生数から当該留年者を減ずることができるようにする方向で検討することが適当である。

 3)履修科目登録の上限設定と指導
 学生の履修科目の過剰登録を防ぐことを通じて、教室における授業と学生の教室外学習を合わせた充実した授業展開を可能とし、少数の授業科目を実質的に学習できるようにすることにより、単位制度の実質化を図る必要がある。このため学生が1年間あるいは1学期間に履修科目登録できる単位数の上限を各大学が定めるものとする旨を大学設置基準において明確にする必要がある。また、個々の学生に対して履修指導を行う指導教員等を置くことも重要である。

(ア)履修科目登録の現状

  1. すでに述べたような単位制度の本来の趣旨にもかかわらず、学生の授業科目の履修については、講義等において必ずしも準備学習が要求されない、授業への出席状況が確認されない、学期末の試験結果のみで単位認定が行われるなどの理由から、学生が過剰な履修科目登録をし安易に単位を修得するという現象が生じ、その結果十分な学習を行わないまま3年で124単位近くを修得してしまうという指摘がある。この点に関しては、平成7年の文部省調査「学生の学習と生活に関する調査」によると、学部学生の1学期間の平均履修登録授業科目は14.5科目であり、これを1年間の履修登録単位数に換算するとおよそ58単位に相当することとなる。
  2. このことは、単に学生の個々の科目に対する取組方の問題というだけでなく、個々の授業の要求する学習量が単位制度の趣旨である1単位当たり45時間相当に満たないことを示すものであり、個々の授業に問題があると同時に、単位制度の趣旨からは標準的には実行不可能な学習量に相当する履修科目登録を認めている大学の指導に問題があることを、各大学は深刻に受け止めなくてはならない。

(イ)履修科目登録の上限設定による単位制度の実質化

  1. 上記のような単位制度の趣旨の逸脱を改め、学生の主体的学習を促し教室における授業と学生の教室外学習を合わせた充実した授業展開を実現するためには、少数の授業科目を集中的に学習することが必要である。このため、各大学においては現行の単位制度の下における本来的責務として、1年間あるいは1学期間に履修科目登録できる単位数に上限を設けると同時に、個々の授業において1単位45時間という単位制度の趣旨に沿った十分な学習量を確保することにより単位制度の実質化を図ることが必要である。このような取組は、我が国の単位の国際的評価を確立し、今後、我が国の大学が外国の大学との留学生交流や単位互換等をはじめとした国際交流を円滑に進めていく上でも重要である。
  2. このため、大学設置基準において、1年間あるいは1学期間に履修科目登録できる単位数の上限を各大学が学則等において定めるものとすることを明確にする必要がある。なお、単位数の上限をどのように定めるかなどの取扱いの詳細については、各大学がそれぞれの状況を踏まえて自主的に判断することとするのが適当である。
     各大学は、それぞれの卒業要件単位数を考慮して履修科目登録できる単位数の上限を定めることとなるが、3年間で卒業に必要な単位数を修得できるような上限設定では単位制度の実質化につながらないということに留意する必要がある。

(ウ)実施上の配慮事項

 登録単位数に上限を設ける対象となる履修科目は、卒業要件単位数に組み込み得る授業科目に限ることとするのが適当である。また、個々の学生についての単位数の上限の取扱いにおいては、厳格な成績評価等の下で上限一杯の単位数を優れた成績で修得した者が、次の学期又は学年において上限を超えた履修を希望しかつ各大学においてそのような例外的取扱いをすることが適切と判断した場合には、上限を超えた履修登録を可能とすることが適当である。

(エ)履修指導の充実

 授業科目の多様化が進む中で、学生が各々の学習目標に沿って適切に履修科目の選択を行うことができるよう、一定の科目群の中から選択を求める、科目相互の履修順序を明確にする、モデル的なコースを示すなどの工夫に努めるとともに、個々の学生に対して履修指導を行う指導教員等を置くことも重要である。

(オ)高等専門学校における取扱い

 高等専門学校については、学年制を採用し、各授業科目を各学年に配当してカリキュラムを編成していることから、大学に準じた取扱いを行うことは適当でないと考えられる。

 4)教員の教育内容・授業方法の改善
 各大学は、個々の教員の教育内容・方法の改善のため、全学的にあるいは学部・学科全体で、それぞれの大学等の理念・目標や教育内容・方法についての組織的な研究・研修(ファカルティ・ディベロップメント)の実施に努めるものとする旨を大学設置基準において明確にすることが必要である。
  なお、個々の授業の質の向上を図るに当たっては、シラバスの充実等の取組が重要である。

(ア)組織的な研究・研修の実施

  1. カリキュラム編成、履修や単位認定の取扱い等の制度的な改革も重要であるが、真に教育の質の充実を図るためには、教員自身が教育者としての責任をこれまで以上に自覚し、自己の教授能力の向上のために不断の努力を重ね、学生の学習意欲を喚起するような授業を展開していくことが必要である。
  2. 大学進学率の上昇に伴い、大学に入学してくる学生の多様化が進むとともに、生涯学習機関としての大学に対する期待がこれまでになく高まっている。大学がこれらの多様な要請等にこたえ、より質の高い教育を提供していくためには、個々の教員の努力はもとより、大学あるいは学部・学科としての教育目標を明確に示し、その目標実現のための授業科目の開設及びカリキュラムの編成を行い、各教員はその趣旨に沿った授業内容・方法を決定するという一連の取組が必要である。
  3. そのような組織的な教育体制の構築の一環として、個々の教員の教育内容・授業方法の不断の改善のため、全学的あるいは学部・学科全体で、それぞれの大学の理念・目標や教育内容・方法についての組織的な研究・研修(ファカルティ・ディベロップメント)を実施することが重要になっている。一部大学でこうした取組が緒についたところであるが、大学全体としてはいまだ不十分な状況にある。このような取組を行うことは、教育研究の不断の向上を図るために大学が本来的にその責務として行うべきものであり、各大学の一層の取組を促すためにも大学設置基準において各大学はファカルティ・ディベロップメントの実施に努めるものとする旨の規定を設けることが必要である。

(イ)学協会等における取組

 教育内容・方法の改善のための研究・研修については、大学ごとに実施に努めるほか、専攻分野ごとに学協会等においても積極的に取り組みその結果を大学教育に反映させることが期待される。
 さらに、大学団体や学協会等において大学教員の教育能力向上のための研究・研修プログラムの研究開発を進め、各大学においてその活用を図っていくことも有効である。

(ウ)シラバスの活用

 個々の授業の質の向上を図るに当たっては、効果的なシラバスの活用が重要である。現在、各大学で作成されているシラバスの多くは、全学的にあるいは学部・学科ごとに履修科目選択のための一覧として作成されていることが多い。しかしながら、個々の授業の質の向上のためには、個々の教員がその授業科目を履修する学生を対象として、毎回の授業を迎えるに当たってあらかじめ読んでおく文献の提示等準備学習の指示や成績評価基準などを示したシラバスを作成することが重要である。

(エ)マルチメディアの効果的な活用

 教育方法の改善に当たっては、マルチメディアの効果的な活用にも十分配慮する必要がある。マルチメディア機器の活用による授業方法の改善、コンピュータ・ネットワークを活用した授業に対する学生の質問等の受付や教材提供など学生の授業外における学習促進のためのパソコン等の活用、ビデオを活用した授業参観によるファカルティ・ディベロップメントなど、各大学における積極的な取組の推進が望まれる。

5)教育活動の評価の実施
 教育の質の向上のため、自己点検・評価や学生による授業評価の実施など様々な機会を通じて、継続的に大学の組織的な教育活動に対する評価及び個々の教員の教育活動に対する評価の両面から評価を行うことが重要である。その際、教室における授業及び教室外の準備学習等の指示、成績評価などの具体的実施状況を評価の対象とすることにより、単位制度の実質化と教育内容の充実を図ることが重要である。
 また、教育活動の在り方については、卒業生が働いている職場など外部の意見も聞き、それを踏まえて更なる改善につなげていくことが有効である。

(ア)評価者、評価の視点、評価項目等

 これまでに述べた授業の設計と教員の教育責任、成績評価基準の明示と厳格な成績評価の実施、履修科目登録の上限設定と指導などを通じた教育方法の改善を推進するに当たっては、ファカルティ・ディベロップメントと同時に、教育活動について自己評価を行うあるいは学生の評価や外部の意見を求めていくことによってその実効性を担保し、更なる改善のための材料とすることが重要である。また、教育活動の評価に当たっては、大学の組織的な教育活動に対する評価及び個々の教員の教育活動に対する評価の両面から行われることが重要である。
 具体的には、例えば授業の設計について教室における授業と教室外における準備学習・復習の配分や教室外の学習の指示等がシラバス等によって明示され実行されているか、成績評価基準についての情報がシラバス等によって明示されているか、成績評価について安易な単位認定が行われていないか、個々の学生への履修指導を行っているかといった評価項目について、大学の組織及び各教員がその活動状況を公表した上で自己評価を行うほか、学生の評価などを求めるとともに、学内だけでなく卒業生が働いている職場や社会など外部の意見を聞いて、その後の授業の改善に役立てることが有効である。
 さらに、教育活動の評価に当たっては、教育内容についても学部教育として適切なものかどうかという視点から評価を行い、改善充実に役立てることが有効である。

(イ)実施上の留意点

 教養教育に関しては、「1)1)教養教育の重視、教養教育と専門教育の有機的連携の確保」で述べた「学問のすそ野を広げ、様々な角度から物事を見ることができる能力や、自主的・総合的に考え、的確に判断する能力、豊かな人間性を養い、自分の知識や人生を社会との関係で位置付けることのできる人材を育てる」という教養教育の理念・目標が、教育課程の編成や教育活動の実施において十分考慮されているかという視点から評価を行う必要がある。その際、専門教育についても、将来新しい領域を開拓していくことのできる専門的素養のある人材、真に社会で伸びていく人材を養成するため、細分化された専門だけではなく学生が幅広い視野を持ち得るような教育を施すことに十分な配慮がなされているかどうかについて評価を行うことが必要である。

(ウ)優れた教育活動を行っている教員の顕彰

 教育活動の改善充実を図るに当たっては、評価の一環として、優れた教育活動を行っている教員に対する顕彰を行うことも考えられる。

6)学生の就職・採用活動に当たっての大学及び産業界の取組
 大学と産業界は、学生の就職・採用活動が秩序ある形で行われるよう、適時、情報交換等を行うとともに、それぞれ適切な取組を進めることが重要である。大学は、学生の卒業時における質の確保を図るため、教育内容及び教育方法の改善を進め責任ある授業運営を行うとともに、学生が自己の責任において主体的に就職活動を行えるよう就職指導の充実に努める必要がある。また、産業界においては、大学の教育活動を尊重し、可能な限り休日や祝日等に採用活動を実施するとともに、過度に早期の採用活動を行わないよう期待する。さらに、採用に当たっては、学校歴ではなく学生の大学における学習歴を一層重視した人物・能力本位の採用の取組が更に進められるとともに、男女雇用機会均等法に沿い、女子学生の雇用の機会均等が図られることを期待する。

(ア)就職・採用活動の現状等

  1.  大学の卒業予定者のいわゆる「青田買い」を改め、就職活動が学生の学習に支障なく秩序ある形で行われかつ学生が適切な職業を選択する公平な機会が得られるようにするため、昭和63年から平成8年までの間、大学側と産業界側による就職協定協議会において就職協定が締結され、就職・採用活動の日程について一定のルールが設けられてきた。しかしながら、就職協定と実態とのかい離、通年採用など新たな採用動向の拡大等の社会状況の変化にかんがみ、平成9年度からは就職協定に代わるものとして、大学側が「申合せ」を行い、産業界側は「倫理憲章」を定め、双方がこれらを尊重するという方法が採られている。
  2.  現在は、学生の就職活動や企業の採用活動が以前に比べ早期化・長期化の傾向にあり、学生が最終学年の当初から授業に出席しないため、大学における責任ある授業運営等に影響が生じている。一方、企業側における通年採用の導入等採用方法の変化により学生の就職活動の機会が拡大している。
     また、学生が在学中に自らの専攻、将来の職業に関連した就業体験を行うインターンシップが大学と産業界との協力の下に進展している。インターンシップについては、採用の早期化や特定の企業等との結びつきによりいわば指定校のような形となることへの懸念も指摘されているが、大学にとっては教育内容・方法の改善、産業界にとっては大学教育への要請等の反映、さらに学生にとっては高い職業意識のかん養等の観点から意義を有しており、その推進が求められている。

(イ)就職・採用活動の改善

  1.  大学は、学生の卒業時における質の確保を図るため、教育内容及び教育方法の改善を進め責任ある授業運営を行うとともに、学生が自己の責任において主体的に就職活動を行えるよう就職指導の充実等に努める必要がある。
  2.  産業界においては、大学の教育活動を尊重し、学生の勉学に影響を与えることのないよう「倫理憲章」に従い可能な限り休日や祝日等に採用活動を実施するとともに、過度に早期の採用活動を行わないよう期待する。さらに、採用に当たっては、学校歴ではなく学生の大学における学習歴を一層重視した人物・能力本位の採用が進んでいるが、このような取組が更に進められるとともに、男女雇用機会均等法に沿い、女子学生の雇用の機会均等が図られることを期待する。
  3.  大学と産業界は、学生の就職・採用活動が秩序ある形で行われるよう、適時、情報交換や連絡協議を実施することが必要である。それぞれが上記に述べたような適切な取組を進めていけば、大学における責任ある授業運営による卒業生の質の向上をもたらすことになり、学生はもとより大学及び産業界の双方にとっても望ましいという共通の認識を持つことが重要である。

(2)大学院の教育研究の高度化・多様化

 大学院は、あらゆる学問分野にわたり基礎研究を中心とした学術研究の推進とともに、研究者の養成及び高度の専門的能力を有する人材の養成という役割を担うものであり、将来にわたって我が国の学術研究水準の向上や社会・経済・文化の発展を図る上で極めて重要な使命を負っている。21世紀初頭の社会状況の展望等を踏まえると、これからの社会が特に必要としているのは、細分化された個々の領域における研究とそれらを統合・再編成した総合的な学問とのバランスのとれた発展であり、学術研究の著しい進展や社会・経済の変化に対応できる幅の広い視野と総合的な判断力を備えた人材の養成である。社会の高度化・複雑化が進む中で、主体的に変化に対応し、自ら将来の課題を探求し、その課題に対して幅広い視野から柔軟かつ総合的な判断を下して解決する能力を育成することは、研究者の養成あるいは高度専門職業人の養成や社会人の再教育など、いずれの方向性を目指すにせよ大学院においても等しく強く求められるところであり、教育研究の高度化・多様化を更に推進していかなければならない。
1)大学院の組織編制の在り方
 1)大学院の制度上の位置付けの明確化
 大学においては、学部が教育研究上の基本的な組織とされており、学部を基礎としている研究科については、その運営を学部に依存している。今後、大学院がより一層充実した教育研究を実施していくようにするためには、学部を基礎としている研究科にも、大学が運営上の必要性等を判断した上、研究科のカリキュラムや学生の入退学の決定など大学院固有の事項について独自の立場から審議を行うため、研究科委員会に代えて、研究科教授会を置き得ることを明確にする必要がある。
 大学の多様な組織形態を許容していく観点から、大学院の教育研究活動の比重が高まり、これが中心的役割を果たすに至っている大学においては、当該大学の教育研究目的を効果的に達成する責任ある組織の体制を整備するため、研究科と学部とを同等の基本的な組織として、当該学部とともに当該研究科に教員を所属させ、研究科教授会を置くのみならず、人事についても審議を行うとともに、全学的な運営に関与し得るような仕組みを法令上明確化する必要がある。  
 また、学部や研究科を置きつつも学系と同様に研究上の目的から編制される組織を設ける方式など、多様な組織形態を採り得る制度的枠組みを考慮していく必要がある。

(ア)学部を基礎とした大学院研究科の位置付けの明確化

  1. 大学院の研究科は、制度上、学部とは別の組織と位置付けられ、独自の教育課程などを持っているものの、その多くは学部・学科を基礎として組織編制が行われ、教員組織、施設・設備について学部に依存している。
     すなわち、学部は大学の基本的な組織とされ、大学院設置基準においては、大学院には研究科・専攻の種類・規模に応じて教育研究上必要な教員を置くものとしつつ、教育研究上支障のない場合には、学部、研究所等の教員等がこれを兼ねることができることとしている。また、施設・設備についても大学院の教育研究に必要な施設・設備を備えるものとしつつ、支障のない場合には、学部等の施設・設備を共有できることとしている。その場合、通常、研究科には教授会が置かれず、学部教授会の委任を受け研究科委員会が運営組織としてカリキュラム等を審議し、大学院専任の教員の人事も多くは学部教授会が審議するなど、組織運営においても独自の位置付けがなされていない。
  2. しかし、大学院研究科のカリキュラムや学生の入退学の決定など組織としても学部とは独立して審議を行う必要があるのみならず、学部を基礎とした一般研究科であっても学部の教員と研究科の教員はその構成において必ずしも同一ではなく、今後大学院の専任教員が増加すればその違いはなお大きくなることが見込まれることから、専任教員の人事についても学部からの「委任」を受けなければ研究科は審議できないこととするのは運営上問題があるのではないかと考えられる。
  3. このように、組織論として、大学院の研究科が大学院固有の事項について独自の立場からも審議を行う必要性が大きくなってきており、その教育研究の機能を十全に発揮していくために当該研究科の教育研究にかかわる審議を主体的に行い得る仕組みを整える必要がある。
     したがって、学部を基礎としている研究科であっても、大学が運営上の必要性等について判断の上、研究科委員会に代えて研究科教授会を置くことができることを明確にする必要がある。この場合、学部との連携・調整に十分な配慮が必要である。
     なお、研究科教授会を置かない場合にあっても、教育研究の機能を十全に発揮できるように研究科委員会についての運営の工夫が必要である。

(イ)大学院中心の研究科の制度上の位置付けの明確化

  1. また、近年、大学院に対する社会的な需要の増大に伴い、大学院の在学者数は大幅に増加している。独立研究科や独立専攻など大学院固有の教員組織や施設・設備を備えた大学院の整備が徐々に進み始めており、学部を置くことなく大学院のみを置く大学(大学院大学)も、現在、国立私立を合わせ6校が設置されている。大学院大学においては、既に、研究科が当該大学の基本的な組織として機能している。
     さらに、大学院研究科の学生数が学部の学生数に拮抗したり分野によっては大学院研究科の学生数が学部の学生数を上回るといったように、大学院の教育研究活動の比重が高まり、これが中心的な役割を果たしつつある大学においては、大学院を大学運営上の基本的な単位としてとらえ、人事や予算配分などの面においても大学院をそのように位置付ける必要が生じてきている。
  2. したがって、今後、大学院における教育研究活動が中心的役割を果たすに至っている大学においては、当該大学の教育研究目的を効果的に達成する責任ある組織の体制の整備を図るという観点から、研究科と学部とを同等の基本的な組織として、当該学部とともに当該大学院研究科に教員を所属させ研究科教授会を置くのみならず、国公立大学にあっては人事についても審議を行い、さらに、全学的な事項を審議するために置かれている審議機関(例えば、国立大学の評議会)には研究科長などが研究科の立場から参加し、全学的な運営に関与し得るような仕組みを法令上明確化する必要がある。
     なお、私立大学における教員人事については、大学により選考の過程は様々であろうが、建学の精神に基づく学校法人経営という観点から、学校法人の理事会が審議の上、最終的に決定することとなる。
  3. その際、それぞれの大学の教育研究を円滑かつ適切に遂行するためにふさわしい運営の仕組みを整えるという趣旨からは、学生の規模等をはじめ当該研究科が大学における教育研究活動の中心的役割を果たしており、これを運営面においても明確にすることが必要であると認められる場合に限ることが適当である。
  4. この場合の当該学部については、これまでと同様に、教育研究上の基本的な組織として引き続き教育と研究を一体的に遂行する教員組織を有し、所属する学生の入退学、教育課程、人事等の重要事項を審議する学部教授会が置かれ、全学的な組織運営の基本単位としての機能を果たすものである。
  5. また、現在、学術研究の進展や複雑化している社会の要請に敏速に対応するため、教育組織と研究組織を分離し、学部に代わる教育研究上の基本組織として学群及び学系を設置している大学がある。今後、大学院大学や大学院における教育研究活動が中心的役割を果たす大学などが増加し、大学の組織形態は多様になっていくと考えられるところであり、それぞれの大学がその発展の方向を選択し、大学院の質的充実を図ることができるようにすべきである。この観点から、このような組織の在り方を各大学が選択しやすくするとともに、例えば、学部や研究科を置きつつも学系と同様に研究上の目的から編制される組織を設ける方式など、多様な組織形態を採り得る制度的枠組みを考慮していく必要がある。
2)一定規模以上の学生を擁する大学院の専任教員等
 大学院の多様な発展を可能にしかつ各大学院が質的にも充実した教育研究を実施していくためには、一定の規模以上の学生を擁する大学院にあっては大学院専任の教員や大学院専用の施設・設備を備えるべきことを大学院設置基準上明確にする必要がある。

 (ア)大学院の量的拡大と教育研究条件

  1. 現在、大学院は急速に量的拡大を遂げているが、一方で学生数の増加に見合うだけの教員数の整備が行われていないなど教育研究環境の十分な改善がなされないまま量的拡大が進み、結果として教育研究環境が劣化しているとの指摘もある。現行の大学院設置基準では専任教員数について定量的な基準が定められていないこともあり、大学院の量的拡大が進むにつれ教育研究条件に影響が生じていると考えられる。
  2. 大学院の一層の高度化・活性化を図っていくためには、大学院の人的・物的条件の改善が急務である。とりわけ、大学院学生数の増加及び留学生、社会人等の多様な学生の受入れにより教育研究指導の負担が重くなっていることに伴い、教員組織と大学院専用の施設・設備の充実が重要である。

 (イ)一定規模以上の大学院の専任教員等

  1. このことは、今後の大学院の多様な形態を可能にしかつそれぞれの大学院が質的にも充実した教育研究活動を展開していくためにも重要であり、一定の規模以上の学生を擁する大学院にあっては大学院専任の教員や大学院専用の施設・設備を備えるべきことを大学院設置基準上明らかにする必要がある。
  2. また、従来、「大学院の教員は、教育研究上支障を生じない場合には、学部、研究所の教員等がこれを兼ねることができる」(大学院設置基準第8条第2項)こととされているが、大学院への専任教員の配置に伴い、今後は大学院の教員が学部等の教員を兼ねることができることも制度上明確にする必要がある。
2)大学院の課程の目的・役割の明確化
 大学院は、高度の専門的知識・能力を有する人材の養成への需要や、職業上必要な新しい知識・技術を求める者等の要請に適切に対応していくことがより一層求められている。
  大学院は、それぞれの課程の目的・役割を明確化していくことが課題となっており、とりわけ、修士課程にあっては、研究者養成の一段階又は高度専門職業人の養成などその役割の方向性を明らかにし、それに即して、学部教育で培われた専門的素養のある人材として活躍できる基礎的能力に立ち、専門性を一層向上させていくことが重要である。また、博士課程にあっては、基礎的・先駆的な学術研究の推進、世界的な学術研究の拠点、優れた研究者の養成などの中核的機関としての基本的な役割が極めて重要である。
  今後の大学院の在り方としては、その教育研究水準の質的向上とあいまって、全体として研究者養成に加え、高度専門職業人養成の役割をもより重視した、多様で活力あるシステムを目指すことが重要である。
  そのためには、各大学が修士課程と博士課程を別々に設置する並列方式を採用しやすくなるように、設置審査の取扱いを弾力化することが適当である。

(ア)大学院の目的・役割の明確化

  1. これからの大学院に特に求められることは、1)学術研究の高度化と優れた研究者の養成機能の強化、2)高度専門職業人の養成機能、社会人の再学習機能の強化、3)教育研究を通じた国際貢献の3点であり、そのいずれの面からも大学院の一層の整備充実が必要となっている。
  2. 大学院への進学動向に基づく推計においては、平成22年(2010年)の修士課程の入学者の規模は約87、000人、博士課程は約23、000人となり、うち社会人学生の占める割合はそれぞれの17~18%を占めるとされている。また、雇用機会の試算では、雇用市場のうち「大学・短大の教員」の拡大は期待できないが、研究者として企業等に雇用される者も含め全体として「企業等」への就職がその大半を占めることになると推定されている。
  3. 現在、我が国では産業界をはじめとして社会の各分野において構造変化が進行しており、我が国社会・経済の在り方もまた国際的な関係・枠組みを抜きに考えることができなくなってきている。国際的な相互依存が強まる一方、世界的規模での競争が激化し解決を図らなければならない課題が増える中で、研究者にしても高度専門職業人にしても今後はますます国際的にも活躍し得る高度な専門的知識・能力を持つ者が広く求められるようになると予想される。このような高度の専門的知識・能力を持つ人材の養成・再学習については、大学院の果たす役割がますます大きくなっている。
  4. 今後、大学等と社会とを往復しながら職業能力等の成長を自ら図っていけるような社会への転換が一層進行していくことを踏まえると、大学院は、職業上必要な新しい知識・技術を求める者、実社会で身に付けた実践的な知識・経験を学問的に検証しつつさらに高めていくことを希望する者や留学生に対し広く門戸を開き、それらの要請に適切に対応していくことがより一層求められる。
  5. このため、大学院は、学問分野の特質、5年一貫制や区分制(注*1)の違いに留意しつつ、それぞれの課程の目的・役割を明確化していくことが課題となっている。とりわけ、修士課程にあっては、研究者養成の一段階又は高度専門職業人の養成などその役割の方向性を明らかにし、それに即して、学部教育で培われた専門的素養のある人材として活躍できる基礎的能力に立ち、専門性を一層向上させていくことが重要である。また、博士課程にあっては、基礎的・先駆的な学術研究の推進、世界的な学術研究の拠点、我が国の産官学を通じたあらゆる研究機関を担う優れた研究者の養成などの中核的機関としての基本的な役割が極めて重要である。
  6. 今後の大学院の在り方としては、その教育研究水準の質的向上とあいまって、全体として、研究者養成に加え、高度専門職業人養成の役割をもより重視した、多様で活力あるシステムを目指すことが必要である。

(イ)積み上げ方式と並列方式

  1. 現在、大学院については、博士課程を前期と後期に分ける積み上げ方式と、修士課程と博士課程を別々に設置する並列方式の両方式があり、いずれを採用することも制度上は可能となっている。並列方式には、研究者養成、高度専門職業人養成などの目的を研究科又は専攻ごとに明確にし、目的に沿ったカリキュラムが編成しやすくなるという利点がある。しかしながら、並列方式は大学院を担当する教員をそれぞれの研究科又は専攻ごとに配置する必要があることから積み上げ方式に比べより多くの教員が必要となるため、現実には多くの大学院が積み上げ方式を選択している。
  2. 今後、それぞれの大学院の課程の目的・役割の明確化とそれに沿った教育研究組織体制の整備を図るという観点から、各大学が並列方式を採用しやすくなるように、大学院を担当する教員についての現在の設置審査の際の専任としての取扱いを弾力化することが適当である。
3)高度専門職業人養成に特化した実践的教育を行う大学院の設置促進
 国際的にも社会の各分野においても指導的な役割を担う高度専門職業人の養成に対する期待にこたえ、大学院修士課程は、その目的に即した教育研究体制、教育内容・方法等の整備を図り、その機能を一層強化していくことが急務となっている。
  そのため、これまでの高度専門職業人の養成の充実と併せて、これを更に進め、特定の職業等に従事するのに必要な高度の専門的知識・能力の育成に特化した実践的な教育を行う大学院修士課程の設置を促進することとし、制度面での所要の整備を行い教育研究水準の向上を図っていく必要がある。
  高度専門職業人の養成に特化した大学院修士課程は、カリキュラム、教員の資格及び教員組織、修了要件などについて、大学院設置基準等の上でもこれまでの修士課程とは区別して扱い、経営管理、法律実務、ファイナンス、国際開発・協力、公共政策、公衆衛生などの分野においてその設置が期待される。
  この場合の学位については、国際的な通用性も考慮し、修士とすることが適当である。なお、修士(「専攻分野」)と表記する際の専攻分野の名称について各大学において工夫する必要がある。
  なお、大学院の修了と資格制度との関係では、現在、法曹養成制度の改革が進行中であり、今後、法曹養成のための専門教育の課程を修了した者に法曹への道が円滑に開ける仕組み(例えばロースクール構想など)について広く関係者の間で検討していく必要がある。
  さらに、幅広い分野の学部の卒業者を対象として高度専門職業人の養成を目的とする新しい形態の大学院の在り方等についても、今後関係者の間で検討が行われることが必要である。

(ア)高度専門職業人の養成と大学院修士課程

  1. 近年、一部の大学では、社会の要請に対応して修士課程に高度専門職業人の養成やリフレッシュ教育を行ういわゆる専修コースや実務能力の育成を重視した社会人向けの研究科が設置されつつあるが、修士課程全体としては従来の研究者養成のための教育内容・方法からあまり変わっていないとの指摘がある。他方、社会人の受入れの進行に伴って、学生間の当該分野の習熟の水準の差の広がりが生じており、学生が大学院教育に求めるものも、先端的な知識であったり幅広い知識であったり、その一方、問題解決能力から実践的能力、実務的能力に至るまで、様々に分化してきている。
  2. 国際的にも社会の各分野においても指導的な役割を担う高度の専門的な知識・能力を有する者の養成や再学習などに対する期待にこたえ、大学院修士課程は、今後、高度専門職業人養成の目的に即した教育研究体制、教育内容・方法等の整備を図り、その機能を一層強化していくことが急務となっている。
  3. すなわち、各大学院の修士課程が、その分野において職業人等が当面している課題や求められる職能、資格制度との関係や大学院がそこで果たすべき役割などを踏まえ、養成しようとする人材を念頭に学生にどのような知識・能力を身につけさせることを目的とするかを改めて問い直し、その目的・役割を明確化し教育研究体制の整備を図る必要がある。さらに、それに即した体系的カリキュラムの開発・工夫を関係大学院等が共同して行うなどの取組を一層推進する必要がある。
  4. 修士課程における高度専門職業人の養成を考える場合、大学における教育研究と社会における実践・実務との関係が重要な課題であり、教員養成分野をはじめとする各分野において、実践・実務とのよりよい相互作用を目指し様々な交流が行われ、それが人材の養成のみならず大学における教育研究の広がり、豊富化につながっていくことが期待される。

(イ)高度専門職業人養成に特化した実践的な教育を行う大学院修士課程の設置促進

  1. 今後、高度専門職業人養成の目的に即した教育研究体制等の整備を推進しその機能を一層強化するという観点から、制度面でも所要の整備を行い、大学院修士課程におけるこれまでの高度専門職業人の養成を更に進めて、特定の職業等に従事するのに必要な高度の専門的知識・能力の育成に特化した実践的な教育を行う大学院の設置を促進し、かつそれぞれの大学院が質的に充実した教育研究を展開していくようにすることが必要である。
  2. 高度専門職業人の養成に特化した実践的な教育を行う大学院修士課程については、その目的に即した質の高い教育研究を確保するために、大学院設置基準等の上でも、1)授業・研究指導の柱としてケ-ススタディ、フィールドワ-クなどを取り入れることにより実践性を担保するカリキュラムの工夫、2)実務経験のある社会人を相当数教員として迎えるなど教員の資格や教員組織の在り方についての配慮、3)修了要件として、修士論文に代えて特定課題研究を原則とすることや課程制大学院の趣旨を重視する観点から30単位を超える単位数を課すことなど、一般の修士課程とは区別して扱うことが必要である。また、一定の規模以上の学生を擁する大学院にあっては、専任教員の配置等が必要である。
  3. この大学院修士課程においては、当該研究科等の目的・趣旨を学則等において例えば「○○等の高度の専門性を要する職業等に必要な高度の能力を養うことを目的とする」と規定するなど、自らが高度専門職業人の養成に特化した大学院であることを対外的に明らかにすることが必要である。
  4. 高度専門職業人の養成に特化した実践的な教育を行う大学院修士課程は、例えば経営管理、法律実務、ファイナンス、国際開発・協力、公共政策、公衆衛生などの分野においてその設置が期待される。
    それは、これらの分野にあっては、
     1)  近年、我が国社会・経済の構造変化と国際的な相互依存、世界的規模での競争の中で、金融・経済・法制など各般の分野で国際社会の直面する新たな課題の解決と公正な国際的ルール作りや合意の形成に積極的に参画し得る人材の育  成がとりわけ求められていること
     2)  これらの分野において、我が国大学院修士課程は、理論と実務との関係あるいは資格制度と学部・大学院教育との関係などから、世界的に高い評価を得ている米国等のいわゆるビジネススクール、ロースクール等と比較すると、その目的・役割としてそのような志向は薄かったが、近年変化が生じてきていること
     3)  国際標準・ルールとその形成をめぐり、我が国あるいはアジア地域の特性に応じた枠組みの形成に向けた我が国としての努力が課題となっていることなどから、大学院修士課程は、このような要請に対応し、これらの分野において国際的にも指導的な役割を担う高度の専門的な職業人の養成を行っていくことが特に必要と考えられるからである。
  5. 高度専門職業人の養成に特化した大学院の修了者に授与される学位の在り方については、現行の修士とは異なる別種の学位(専門職学位)とすべきであるとの意見もあるが、国際的な通用性を考慮し、修士とすることが適当である。
     なお、修士(「専攻分野」)と表記する際の専攻分野の名称について各大学において工夫する必要がある。

(ウ)配慮事項

 高度専門職業人の養成に特化した大学院の設置が期待される分野としては、当面、先に触れた分野が考えられるところであるが、今後の我が国社会の進展、当該分野における取組の状況等に応じ対応することが必要である。
 また、後に2(1)2)で述べる修士課程1年制コースを高度専門職業人の養成に特化した修士課程に適用することについては、高度専門職業人の養成に特化した修士課程の設置状況等に配慮しつつ検討することが必要である。
 なお、高度専門職業人の養成に特化した修士課程の設置促進に当たっては、教育研究における理論と実務との接点という観点から、大学の教員と実務家との共同研究や大学の教員が一定期間実務を経験することの奨励・支援が必要であり、これらにより当該学問分野の発展に新たな可能性を開くことにもなることが期待される。

(エ)今後の検討事項

  1. 我が国の実情においては、米国等と違って大学院の修了が職業資格と直接的に結び付いていないことなどから、課程の目的と養成される人材との関係は必ずしも明確でないとの指摘もある。これに関して、現在、法曹養成制度の改革が進行中であり、今後、資格制度と関連して、法曹養成のための専門教育の課程を修了した者に法曹への道が円滑に開ける仕組み(例えばロースクール構想など)について広く関係者の間で検討していく必要がある。 さらに、幅広い分野の学部の卒業者を対象として高度専門職業人の養成を目的とする新しい形態の大学院の在り方等についても、今後関係者の間で検討が行われることが必要である。
  2. また、高度専門職業人の養成に特化した実践的な教育を行う博士課程に関しては、その在り方について今後検討することが適当である。
4)卓越した教育研究拠点としての大学院の形成、支援
 世界の第一線に伍した水準の高い教育研究の積極的な展開、我が国の社会や国際社会の期待にこたえ様々な分野で積極的に活躍する優れた人材の養成の観点から、卓越した教育研究拠点としての大学院の形成、支援を図っていく必要がある。そのためには、専攻(分野によっては研究科)を単位とし、客観的で公正な評価に基づき、一定期間、研究費や施設・設備費等の資源を集中的・重点的に配分することが必要である。

 (ア)評価に基づく重点整備

  1. 世界の第一線に伍した水準の高い教育研究を積極的に展開していくことや、我が国の社会や国際社会の期待にこたえ様々な分野で積極的に活躍する優れた人材を養成していくことが必要である。そのためには、卓越した教育研究実績をあげることが期待される大学院や教育研究上の新しい試みに意欲的に取り組もうとしている大学院に対し、客観的で公正な評価を行うための適切な仕組みを工夫し、そのような評価を踏まえて、重点的な整備を行っていく必要がある。
  2. このような卓越した教育研究拠点としての大学院については、研究者養成を志向する大学院として高い評価を得たものをより一層充実していくことはもちろんのこと、高度専門職業人養成を志向する大学院の形成、支援も考える必要がある。また、我が国にとって人材こそが今後の発展の原動力であることにかんがみ、形成、支援しようとする大学院がどのような点で卓越しているのかを考える際は、実績としてあげられる具体的な研究成果等に着目することはもとより、優れた人材を養成するためのカリキュラムや教育方法等の工夫がどのようになされているかといった観点や、将来的に大きな成果をあげると期待される教育研究プログラムを育てていくという配慮が必要である。
  3. 卓越した教育研究拠点としての大学院の形成、支援のためには、各資源配分機関は、専攻(分野によっては研究科)を単位とし、客観的で公正な評価に基づき、一定期間、研究費や施設・設備費等の資源を集中的・重点的に配分することが必要である。

(イ)評価に当たっての留意事項等

  1. 評価の項目としては、例えば、学生の入学状況、学位の授与状況、修了者の進路の状況などの学生の教育面に関する項目、教員の論文発表状況、学会での活動状況、国際的な学会や学術誌等における論文の発表や被引用状況、科学研究費補助金の採択状況などの教員の研究面に関する項目等を勘案しつつ、新しい試みや将来的な発展の可能性などの定性的な側面にも十分留意することが必要である。
  2. また、評価を行うに当たっては、教育機関の評価としての修了者に対する評価も含め、様々な評価に関する必要なデータを集めたり評価の内容を検証したりすることが必要であり、評価自体の客観性・透明性を確保することが重要である。

2 教育研究システムの柔構造化―大学の自律性の確保―

 大学における履修・修了のシステムについて、従来の過度の平等主義を改め、学生の能力・適性に応じ学生の主体的学習意欲及びその学習成果を積極的に評価し得る柔軟で弾力的なシステムに転換していくことが必要である。また、大学が教育研究上の要請にこたえて自律的かつ機動的に運営されるためには、大学自らが定めた教育研究目標をその主体的な取組によって実現し得るよう、各種制度の柔軟化を図ることが必要である。さらに、地域社会や産業界との積極的な連携・交流、国際交流推進のためのシステム整備が求められる。
  なお、(1)多様な学習需要に対応する柔軟・弾力化において提言する様々な制度の導入等については、各大学において、その理念・目標に沿って自主的に判断することが必要である。

(1)多様な学習需要に対応する柔軟化・弾力化 ―学生の主体的学習意欲とその成果の積極的評価―

1)学部段階
 学生が意欲的に学習に取り組み自らの関心や卒業後の進路の希望等を踏まえて主体的に履修内容等を選択できるよう、制度の一層の柔軟化を進め、各大学の創意工夫の可能性をできるだけ広げておくことが必要である。
  なお、高等専門学校については、後期中等教育段階の教育を含み、学年制を採用していることから、以下の1)~3)につき大学に準じた取扱いを行うことは適当でないと考えられる。
1)4年未満の在学で学部を卒業できる例外措置の導入
 現在、優れた成績を修めた者については、学部3年修了時から大学院に進学する道が開かれているが、さらに、我が国の学位水準の国際的通用性を維持するため大学の修業年限は原則4年としつつ、例外措置として、早期卒業の希望を持ち厳格な成績評価の下で通常の学生よりも多くの授業科目を優れた成績で修得できる者については、大学が適切と判断した場合には3年以上4年未満の在学での卒業を認めることができるよう法改正を行うことが必要である。

(ア)例外措置導入の趣旨

  1. 学部教育についての最大の課題は質の向上であり、各大学が単位制度の趣旨に従って教室外における学習を確保した形での授業の充実を実現することが重要である。そのような充実した授業を前提とする単位制度の下、大学の修業年限は4年とされている。世界的に見ても学士課程教育の年限は4年とされる方向にあり、我が国の学位水準の国際的通用性を確保する上で、大学の修業年限は4年という原則は維持していく必要がある。
    しかしながら、一方で、早期卒業の希望を持ち厳格な成績評価の下で通常の学生よりも多くの授業科目を優れた成績で修得できる者については、その能力・適性に応じた教育を行い優れた才能を一層伸長できるようにすることが重要である。
  2. 現在、我が国の大学院への進学という点では、学部に3年以上在学し優れた成績を修めたと大学院が認めた者について大学院進学の道が開かれている。しかし、この場合、学部教育の全課程を修了するものではないため学部卒業とはならず、学士号を取得できない。
  3. このため、学部教育の全課程を修了することの意義を踏まえつつ能力・適性に応じた教育を行うという観点から、一律に在学期間を4年とするのではなく、大学が適切と認めた学生が早期に大学を卒業して我が国の大学院のみならず諸外国の大学院にも進学しあるいは社会の各方面で活躍できるよう、大学の責任ある授業運営と厳格な成績評価を前提として例外的に4年未満の在学で卒業を認め得る道を新たに開くこととし、所要の法改正を行うことが必要である。

(イ)例外措置の基本的な取扱い

  1. この例外措置については、単位の実質化を図ることなく、履修登録科目数についての指導を行わず授業への参加状況も考慮せず単に期末試験の結果のみで成績評価を行うことで4年未満での卒業を認めることになれば、単位制度の空洞化を是認するばかりでなく、我が国の学位水準が低下したという国際的な評価を受けることになる。このような認識に立ち、特に早期卒業の希望を持ち厳格な成績評価の下に優れた成績で卒業に必要な単位数を修め、大学として卒業を認定することが適切と認められた例外的な者についてのみ3年以上4年未満の在学で卒業できることとするのが適当である。
  2. このため、大学において教室外における学習の確保や厳格な成績評価、適切な履修指導など単位の実質化のための措置を講じるとともに、各学期又は学年ごとの履修登録単位数に上限を設けた上で、各学期において上限単位数を優れた成績で修得した者が次の学期又は学年に上限を超えた履修登録を希望し各大学が適切と判断した場合には、例外的に通常の上限を超えて履修登録することを可能とする。このような取扱いにより、3年以上4年未満の期間で卒業に必要な単位数を優れた成績で修得できた者については、本人が希望しかつ大学が適切と認める場合に例外的に4年未満の在学での卒業ができることとする。

(ウ)実施上の留意点

 このような例外的な措置として卒業の認定を各大学が行うに際しては、例えば学部長、学務担当・学生担当教員等が学生に対して適切な学習指導・相談等を行い、学生の意思や必要性等の確認を行うなど十分な教育的配慮を行った上で、厳格な成績評価に基づき各大学が適切と判断した場合にのみ例外的に卒業を認めることにより、適切な運用が確保されるものと考えられる。

(エ)短期大学における取扱い 

 なお、短期大学について、大学におけると同様に修業年限未満の在学により卒業できる例外措置を導入することについては、大学における実施状況を踏まえて、検討していくことが適当である。  

2)秋季(9月)入学の拡大等
 学年暦の異なる諸外国への留学及び我が国への留学生の受入れを促進するため、また、秋季(9月)入学をより柔軟に導入できるようにするため、学年の途中における入学に関する学校教育法施行規則の規定を改正するとともに、学習効果の高いセメスター制を、これまで以上に積極的に推進していく必要がある。

(ア)秋季(9月)入学拡大の趣旨

  1. 我が国では、大学の学年の始期は4月とされているが、諸外国においては学年の始期は9月あるいは10月が多い。現在の我が国の制度では、「特別の必要があり、かつ、教育上支障がないとき」には、学年の途中においても、学期の区分に従い、学生を入学させることができることとされているが、現在のところ、秋季(9月)入学はごく一部の大学が取り組んでいるにとどまっている。今後、我が国の学生の外国への留学、外国の学生の我が国の大学への留学、帰国子女の我が国の大学への入学など、我が国の大学と我が国と学年暦の異なる諸外国の学校との間を学生が円滑に移動できるよう、各大学における秋季(9月)入学の一層の推進を図ることが重要である。
  2. また、大学入学機会の複数回化という観点から、秋季(9月)入学の導入の促進を求める声もある。受験者の選択の幅を広げ、多様な学習計画を可能とするという点で秋季(9月)入学の導入による入学機会を拡大することも有効である。

(イ)実施に際しての配慮事項等

  1. このため、学年の始期と終期を定める学校教育法施行規則を改正して、各大学がより柔軟に秋季(9月)入学を導入できるようにすることが必要である。なお、秋季(9月)入学者については、大学を卒業する時点が他の学生と異なる場合を考慮し、企業の採用活動における配慮を期待したい。
  2. この点に関連して、学期ごとに授業が完結するセメスター制は、学習上の効果が高いだけでなく、外国を含めた他の大学との交流を容易にする一つの方策として有効であり、各大学における積極的な活用を推進していく必要がある。
 3)単位互換及び大学以外の教育施設等における学修の単位認定の拡大
 単位互換及び大学以外の教育施設等における学修について単位認定できる単位数の上限については、現在の入学前と入学後それぞれについて30単位とされている取扱いを改め、今後は入学前、入学後にかかわらず合わせて60単位に拡大するよう大学設置基準を改正することが必要である。また、大学以外の教育施設等における学修を自大学の単位としてみなし得る範囲をより拡大することが必要である。併せて、「遠隔授業」によることができる単位数の上限も30単位から60単位に拡大するよう大学設置基準を改正することが必要である。

 (ア)単位互換制度等の現状

  1. 大学は、学生に対する教育を実施する際に、すべての局面にわたって責任を有すべきことは当然であるが、教育内容の充実に資するため、現在、学生が他の大学又は短期大学において授業科目を履修し、単位を修得した場合、一定の範囲内で自大学の単位としてみなし得る旨のいわゆる単位互換制度が設けられている。
    また、同様の考え方から、学生が行う高等専門学校や専門学校における学修、技能審査の合格に係る学修など、大学教育に相当する一定水準以上のものとして文部大臣が定める学修を、自大学における授業科目の履修とみなし、単位を授与することができる。
  2. これらの自大学以外の教育施設等における学修について単位認定できる単位数の上限は、合計30単位と定められている。また、学生が入学前に行った当該大学以外の教育施設等における学修についても、単位認定できる単位数は、前述の30単位とは別に、上限30単位と定められている。

(イ)単位認定の範囲・上限の拡大

  1.  大学以外の教育施設等における学修については、学修選択の多様化・柔軟化のため、大学が単位認定できる学修の範囲について、文部大臣が定める範囲という枠をなくして完全に大学の判断にゆだねるべきであるという考え方がある。しかしながら、国内及び海外の大学間の連携が進み、学生の流動性が高まり、選択の幅が広がっていく中で、国内及び海外の大学が単位互換や転編入学等を推進していく上で、学生の履修の成果を判断する指標となる単位については、1単位の内容が全国共通の一定水準以上の内容を持つものとして標準化され、明確化されていることが望ましい。
    したがって、大学以外の教育施設等における学修を単位認定できる範囲についても、大学教育に相当する一定水準以上の内容を持つものとして全国共通的に文部大臣が定めるという現行制度の枠組みを維持することが必要であるが、その範囲については、TOEFLやTOEIC等社会的評価が高いと認められる資格試験に係る学修について単位認定が認められるべきとの指摘なども踏まえ、逐次適切に見直しを行う必要がある。
  2. また、単位互換や大学以外の教育施設等における学修の単位認定など、自大学以外の教育施設等における学修を単位認定できる単位数の上限を拡大すべきとの指摘がある。この点については、学生の選択の幅を広げ、国内及び海外の大学間のより一層の連携・交流を可能とするため、一層の拡大を図ることが必要と考えられる。一方、大学は、本来的には、学生に対する教育を実施する際に、すべての局面にわたって責任を有すべきであることを踏まえると、卒業要件単位数の半分以上について他大学で修得することを認めることは適当ではない。
    以上のことから、自大学以外の教育施設等における学修について単位認定できる単位数の上限については、現在の入学前と入学後それぞれについて30単位とされている取扱いを改め、今後は入学前、入学後にかかわらず合わせて60単位に拡大するよう大学設置基準を改正することが必要である。

(ウ)「遠隔授業」の取扱い

 マルチメディアを活用した「遠隔授業」については、同一大学内の分散キャンパス間で行われるほか、他大学との間で単位互換として行われる場合が少なくないと考えられることから、単位互換等の単位数の上限を拡大するに当たっては、併せて、「遠隔授業」により修得することができる単位数の上限についても、現行の30単位から拡大を図り、60単位まで認め得るよう大学設置基準を改正することが必要である。

4)単位累積加算制度の創設の検討
 単位累積加算制度について、その実施に向けて学位授与にふさわしい履修の体系性の確保等に関し、学位授与機構における調査研究の成果を踏まえ、本審議会において検討を続けることが適当である。

  生涯学習体系への移行、多様な高等教育機関の発展等の観点から、いわゆる単位累積加算制度(複数の高等教育機関で随時修得した単位を累積して加算し、一定の要件を満たした場合、大学卒業の資格を認定し、学士の学位を授与する制度)を設けることを検討する必要がある。
 しかしながら、その実現に向けては、学位授与にふさわしい履修の体系性の確保等更に検討すべき問題点もある。このため、学位授与機構における制度化に向けた調査研究の成果を踏まえて、本審議会において検討を続けることが適当である。

2)大学院段階
 職業を持つ社会人の再学習の需要にこたえるため、勤務の都合や通学の便宜など社会人の多様な状況に柔軟に対応し得るよう修士課程の修業年限について一層の弾力化を進めることが適当である。
  1)修士課程1年制コースの制度化
 社会人の大学院修士課程への積極的な受入れを図っていくため、各大学の選択により、通常の教育方法に加え週末や夏休み期間中などにおいて集中して授業又は研究指導を行うなどの履修形態の工夫や、一定の職業経験の成果を生かした特定課題研究・修士論文の作成の指導などのカリキュラムの工夫により、1年以上2年未満の修業年限でも修了することが可能なコースを設けることができるような仕組みを導入し、大学院で高度な知識・能力を身に付け社会の各分野で指導的な役割を担う人材の養成に資することが必要である。
  その際、導入の趣旨から、社会人を対象とすることを原則とすること、及び現行の修士の学位を授与するにふさわしい水準を確保することが必要である。  

(ア)大学院における社会人受入れのための制度の現状等

  1. 大学院においては、社会人の積極的な受入れを進めるため、社会人を対象とした特別選抜制度の導入、科目等履修生制度の活用、昼夜開講制の採用や夜間大学院の設置など、様々な取組が行われている。
  2. また、職業を持つ社会人の通学を考えた場合、自宅や職場から通える範囲に必ずしも希望する大学院がないといったことや、職場環境等によって通学可能な時間帯が限られることなど、地理的・時間的制約等から大学院レベルの学習を希望しながらも実現が困難な社会人等の学習需要により適切にこたえていくため、平成10年3月に通信制の大学院の制度が創設された。
  3. 現行制度においては、修士課程の修業年限は標準2年とされ、優れた業績をあげた者については最短1年で修了することも認め得ることとされている。

(イ)修士課程1年制コースについての社会的要請

  1. 文部省が平成9年度に行った「生涯学習活動の促進のための大学院制度の弾力化に関する調査研究」のうち企業の人事担当責任者に対するアンケート調査の結果によれば、1年制修士課程の必要性については、回答企業の71.8%が「必要である」又は「ある程度必要である」と答えている。また、1年制の修士課程は特定の専門分野に限るべきかとの設問に対しては、限るべきであると回答した企業はわずか2%にすぎず、おのずと限定されるという企業を加えても全体の20%に満たないという結果が出ている。
  2. 大学院に対するこのような社会的要請を踏まえ期待にこたえていくためには、とりわけ、職業を持つ社会人のリフレッシュ教育を推進することが重要である。そのためには、勤務の都合や通学の便宜など社会人の多様な状況に柔軟に対応し得る体制を整備するとともに、修業年限についても弾力化を図ることが必要である。

(ウ)修士課程1年制コースの制度化

 社会人の大学院修士課程への積極的な受入れを図っていくため、今後は、各大学の選択により、社会人の再学習などの実際の需要に応じ通常の教育方法に加え週末や夏休み期間中などにおいて集中して授業又は研究指導を行うなどの履修形態の工夫や、一定の職業経験等の成果を生かした特定課題研究・修士論文の作成の指導などのカリキュラムの工夫により、1年以上2年未満の修業年限でも修了することが可能なコースを設けることができるような仕組みを導入し、大学院で高度な知識・能力を身に付け社会の各分野で指導的な役割を担う人材の養成に資することが必要である。
 その際、導入の趣旨から、社会人を対象とすることを原則とすること、及び現行の修士の学位を授与するにふさわしい水準を確保することが必要であり、教員数の増などこれを実施するための研究指導体制、教育環境の整備を求めたい。

 2)修士課程長期在学コースの制度化
 社会人学生等の多様な需要にこたえるため、あらかじめ標準修業年限を超える期間を在学予定期間として在学できる長期在学コースを各大学院の運用により設けることができることを明確にする必要がある。

  社会人学生等の中には、修士課程において3~4年の履修計画を立て学修する者がいる現状にかんがみ、修士課程について、あらかじめ標準修業年限を超える期間を在学予定期間として在学できる長期在学コースを各大学院の運用により設けることができることを明確にする必要がある。
 この場合の授業料等については、長期在学コースの在学予定期間に応じ減額した授業料年額を設定するなどの配慮が必要である。
 なお、正規の学生としてあらかじめ期間を定めず、ある程度長期にわたって授業科目を系統的に履修して単位を修得し、かつ、必要な研究指導を受けることにより学位を取得する履修形態(パートタイム修学)も考えられるが、履修する授業科目及び研究指導の系統性の確保の困難などを考慮すると、あらかじめ期間を定めないという在り方は必ずしも適切なものとは考えられない。したがって、あらかじめ在学期間を定める長期在学コースと同種のものととらえることが適当である。

(2)大学の主体的・機動的な取組を可能とするための措置

 大学が、教育研究上の要請、あるいは社会的な要請にこたえて、自律的かつ機動的に運営されるためには、大学の教育研究組織の柔軟な設計、行財政の弾力性の向上などを進め、大学自らが定めた教育研究目標を自らの主体的な取組によって実現し得る道を拡大することが重要である。
 1)教育研究組織の柔軟な設計
 教育研究の進展や社会的需要にこたえて教育研究活動を効果的に進めるため、国立大学については、講座・学科目の編制について各大学の柔軟な設計や機動的な対応を可能とする方向で検討することが適当である。
  また、公私立大学については、社会等のニーズに迅速に対応できるよう、同一設置者内の大学・短期大学全体の定員の増加を伴わない範囲の、収容定員の変更及び学部の学科の設置審査について、教育課程の審査を省略するなど大幅に審査を弾力化し、各大学が自らの判断と責任により、教育研究組織をより柔軟に設計できるようにすることが適当である。

(ア)制度の現状   

 大学の教育研究組織の編制については、これまでにも、大学に学部以外の教育研究上の基本組織を置くこと、大学院のみを置く大学を設置することなどが制度上可能とされ、また、講座制の弾力的な運用を図るため大講座制を導入できることとなるなどの改善が図られてきている。
 公私立大学の設置認可については、平成3年の本審議会の答申により、教育研究の個性化を進めるため、大学の設置基準の大綱化が行われ、教員組織の面でも、一般教育と専門教育の区分が取り払われるなど、弾力化が図られた。また、平成10年3月には、本審議会の答申に基づき、校地基準面積の緩和が行われた。

(イ)改善の方向

  1. 大学の教育研究組織は、大学の教育研究活動を効果的に実施していく上で重要な機能を果たすものであるが、従来、教育研究の進展や社会的需要に対する取組が遅れがちであるとの指摘もある。教育研究の進展や社会的需要にこたえて教育研究活動を効果的に進めるため、国立大学については、教員組織としての講座・学科目の編制について各大学の柔軟な設計や機動的な対応を可能とする方向で検討することが適当である。
     また、公私立大学については、社会等のニーズに迅速に対応できるよう、同一設置者内の大学・短期大学全体の定員の増加を伴わない範囲の、収容定員の変更及び学部の学科の設置審査について、教育課程の審査を省略するなど大幅に審査を弾力化し、各大学が自らの判断と責任により、教育研究組織をより柔軟に設計できるようにすることが適当である。また、このことにより審査期間を短縮することも可能になると考えられる。
  2. なお、現在、工業(場)等制限法により、首都圏等の既成市街地での大学の新増設等に伴う教室増が規制を受けている。政府の規制緩和推進3か年計画では、この制度の抜本的見直しについて、平成10年度中に結論を得ることを予定しているが、大都市部においても、大学の創意・工夫が十分発揮され、社会のニーズに対応した教育研究の機動的な対応が可能となるよう、例えば、大学院についてその整備充実の政策的重要性にかんがみ規制の対象から除外するなど、同法の大学に対する規制の在り方を見直すことが必要である。
2)行財政上の弾力性の向上
 1)国立大学の人事、会計・財務の柔軟性の向上
 国立大学の人事、会計・財務などについて、大学における教育研究活動をより柔軟で機動的に行うことができるよう、国立学校特別会計における教育研究経費の使途や繰越しの取扱い、大学教員の給与決定や兼職兼業の取扱い等について柔軟性の向上を図る方向で検討することが適当である。また、その際、特に大学と産業界等の交流が積極的かつ機動的に行えるようにすることが重要である。
  また、これまでに行われた諸制度の弾力化についての内容を大学の教職員に対して一層の周知を図るため、マニュアルを作成するとともに、研修の充実を図る必要がある。

(ア)制度の現状   

 国立大学の人事、会計制度に関しては、教員人事の面については国家公務員としての制約があり、会計の面については国の財政処理に関する諸制度からの制約があるが、国立大学は他の行政官庁と異なり、教育研究活動を行う組織としての特質を有していることから、教育公務員特例法、国立学校特別会計法等において各種の特例が設けられている。
 また、近年、各国立大学からの要望を受けて、人事、会計・財務関係の制度の弾力化が進められている。例えば、人事面では、国立大学の教授・助教授の任命権の学長への委任、学外との連携を進めるための兼業の許可・承認基準の緩和などの改善が図られている。会計面では、寄附講座制の導入など奨学寄附金の取扱いの弾力化、受託研究や民間との共同研究の制度の弾力化が行われ、更に、国立学校特別会計に特別施設整備資金という弾力的な仕組みが設けられ、最近でも平成10年度から受託研究関係経費について民間資金の弾力的な運用が可能となるなど、改善が図られている。

(イ)改善の方向

  1. このような改善は進んでいるものの、学問研究の高度化・複雑化や社会の急速な変化、大学と大学外の機関との連携の緊密化等の状況の中で、教育研究の柔軟かつ機動的な運営を行うためには、国家公務員の人事制度や国の財政処理に関する基本原則を踏まえつつも、制度の思い切った見直しが求められる。このことは、我が国の大学が国際的な競争力を確保する上でも是非とも改善が望まれる課題である。
     実際に教育研究や事務執行の任に当たっている教職員からも、人事、会計・財務等の改善に関しては、学外で仕事をする際の兼職兼業の取扱いの弾力化、学外の教員を招聘する際の給与決定の弾力化、大学教員の職務の特殊性に配慮した勤務時間の弾力化、旅費・研究費などの予算の使途の弾力化、翌年度への予算の繰越し、奨学寄附金・受託研究費など外部資金の受入れ手続きの簡素化、国有財産・物品・債権管理など経理関係の手続きの簡素化などの点について改善を求める声がある。
     また、この点に関しては、国の行政改革会議最終報告においても、国立大学の組織運営体制の整備のための一方策として、外部との交流の促進を含めた人事制度及び会計・財務面での柔軟化を図る必要があると指摘されており、その内容を盛り込んだ関連の法律が制定されたところである。
  2. このような状況を踏まえて、大学における教育研究活動の特質を考慮しつつ、教育研究活動をより柔軟で機動的に行うことができるよう、国立学校特別会計における教育研究経費の使途や繰越しの取扱い、大学教員の給与決定や兼職兼業の取扱い等について柔軟性の向上を図る方向で検討することが適当である。
     また、その際、特に大学と社会との連携協力関係の進展に伴い、産業界や地域社会などとの交流や国際的な交流が積極的かつ機動的に行えるようにすることが重要である。このため、民間から優れた教員や研究者を招聘する場合の給与決定の弾力化、公務部門での調査研究への協力など大学教員の有する知識技能を社会的に有効かつ積極的に活用する場合の取扱いの弾力化、大学の社会貢献に資する業務を行う民間企業の役員等に就任する場合の兼職兼業の取扱いの弾力化、受託研究費等の外部資金を提供者の意図に即して有効に活用できるよう受入れ手続きの簡素化等について改善を図る方向で検討することが適当である。
     国立大学の人事、会計・財務の柔軟性の向上については、実際に教育研究や事務執行の任に当たっている教職員の意見を把握しつつ、制度の柔軟性を向上させる方向で改善を図ることが必要である。
     なお、公立大学に関しても、国立大学に準じて制度の改善を図ることが必要である。
  3. 一方、各大学では、人事、会計・財務の制度について、理解が十分でないなどのために、必ずしも本来の趣旨に沿った運用が行われていないケースも見受けられる。その背景としては、特に、近年、制度の改善や運用の弾力化が頻繁に行われているため、実際に教育研究や事務に当たる教職員にとって、その内容を十分に把握することが困難になっていることもある。
     このため、分かりやすいマニュアルの作成や研修の充実などを通じて、制度についての教職員の理解を深める必要がある。
  4. なお、国立大学については、教育研究活動の特質を踏まえたとしても教育研究の成果が国民にとって見えにくいのではないか、あるいは国の機関としてより効率性を高める余地があるのではないかなどの指摘もある。各種制度の弾力化を進めるに当たっては、大学自身が、学内における事務の合理化、簡素化などの運営改善を行い、自らの教育研究活動の成果や組織運営の効率性について明らかにしていく必要がある。また、責任ある管理運営の観点から、大学の財務運営の状況に関する情報を公表したり、後述の大学運営協議会(仮称)等の活用により、学外の有識者から意見を求める機会を設けることも必要である。
2)公私立大学に係る認可手続き等の簡素化
 公私立大学に係る認可手続きについては、これまでも逐次改善がなされているが、今後、大学の教育研究水準の維持向上を図りつつ、大学改革を進め、社会の変化に機動的に対応していくため、兼担、兼任の教員の資格審査の省略及び申請書類の見直し等による負担軽減など、更に簡素化を図ることが適当である。

 公私立大学の設置認可の審査手続きについては、平成7年度申請分から、審査期間の約半年間の短縮、大学院の認可時期の早期化、申請書類の大幅な軽減などの改善が図られ、また、平成9年2月及び平成10年2月には、申請者の負担軽減のため、教員審査の簡素化、短期大学の学科増の審査期間の短縮等の改善が図られた。
 大学の設置認可手続きについては、大学の教育研究水準の維持向上を図りつつ、大学改革を進め、社会の変化に機動的に対応していくため、更に簡素化を進めることが適当である。具体的には、現在、専任のみならず兼担、兼任(注*1)の教員の資格審査を行っているところであるが、今後は、教員の資格審査の対象を専任教員のみとし、兼担、兼任教員の採用を各大学の自主的判断・責任で行えるようにするとともに、申請書類の見直し、電子化による負担軽減などを行うことが適当である。

(3)地域社会や産業界との連携・交流の推進

 大学は、今後、その知的資源等をもって積極的に社会発展に資する開かれた教育機関となることが一層重要となる。
  各大学が地域社会や産業界の要請等に積極的に対応し、それらの機関との連携・交流を通じて社会貢献の機能を果たしていくため、リフレッシュ教育の実施、国立試験研究機関や民間等の研究所等との連携大学院方式の実施、共同研究の実施、受託研究や寄附講座の受入れなど産学連携の推進を図っていく必要がある。
  企業と大学が共同した教育プログラムの開発や、本校以外の教育研究の場の設定などを通じて、社会人が企業と大学を往復して学習するための環境の整備を図っていくことが必要である。その際、テレビ会議システム等により大学の授業を社会人が企業の会議室等で受講できるようにするなど、発展の著しい情報通信技術を効果的に利用する試みも大学の授業の将来的可能性を広げるものとして積極的に推進する必要がある。
  また、インターンシップ制度の積極的な導入や、学生のボランティア活動等地域社会に貢献する活動の促進に積極的に取り組むことも重要である。

 (ア)連携・交流推進の意義等

  1. 大学と地域社会や産業界の連携・交流の強化を図ることは、大学がその知的資源をもって積極的に社会の発展に貢献するために極めて重要である。また、これにとどまらず、社会との連携・交流を通じて大学の教育研究が活性化することにもつながるものである。
  2. 大学の教育研究機能に対する社会の要請の高まりに積極的に対応するためには、大学が受け身の姿勢ではなく、種々の形態による社会人の受入れをはじめとして、大学の社会貢献を強化する姿勢を積極的に地域社会や産業界に対し訴え掛けることが重要である。
  3. 特に、地域社会においても様々な知的活動の場の形成が進展していくと考えられる21世紀初頭において、大学が教育研究の一層の向上を図り、引き続き地域社会における知的活動の中心的拠点としてその存在意義を保っていくためには、上記に述べた意義等を踏まえて地域社会との連携・交流を積極的に推進し、地域社会との繋がりを強めることにより、大学の発展を図っていくことが一層重要になると考えられる。

(イ)連携・交流のための具体的取組の推進

  1. これまでも、社会人に対するリフレッシュ教育の実施、共同研究の実施、寄附講座の受入れ等により、大学の学部や大学院と企業等との連携が進められ、国や地方公共団体等からの委託研究を通じた連携も行われている。さらに、学外における高度な研究水準を持つ国立試験研究機関や民間等の研究所等と大学院が事前に協定を結ぶことによって組織的に連携し、双方の交流の促進や共同研究の推進を目指す、いわゆる「連携大学院」も積極的に行われている。
  2. 各大学においては、これまでの成果を踏まえ、これらの方向を一層進める必要がある。特に、我が国が先進諸外国の先頭に立って経済競争力を向上させていくため、新たな産業の創出、新たな社会経済システムの創造などの面での独創的な研究開発を推進するとともに、自ら新しい研究領域を開拓することのできる創造性豊かな人材、起業家精神に富んだ人材を養成するために、地域社会や産業界との密接な交流が必要である。各大学においては、引き続き共同研究センターの整備・拡充、受託研究の受入れ、寄附講座・寄附研究部門の設置など産学連携の推進を図っていく必要がある。
  3. 企業と大学の学部や大学院が共同して教育プログラムを開発することなどを通じて、社会人が企業と大学を往復して学習するための環境の整備を図っていくことが必要である。その際、テレビ会議システム等の活用により、社会人が企業の会議室等で大学の授業を双方向で受講したり、大学院については密度の濃い研究指導を受けることができるようにするなど、発展の著しい情報通信技術を効果的に利用する試みも大学の授業の将来的可能性を広げるものとして積極的に推進する必要がある。

(ウ)社会人の学習環境の整備

  1. 社会人が大学院において学習しやすくするため、郊外に設置されている大学院が、企業等が多数存在している地域に本校とは別に教育研究の場(サテライト教室)を設けることについては、大学設置・学校法人審議会において、一定の施設・設備が整備されていること等を条件として認められている。しかしながら、現在は、夜間大学院や昼夜開講制の大学院についてのみの弾力的な取扱いであるため、平成9年度現在、国立3大学、私立5大学の実施にとどまっている。
  2. 今後、各大学院が本校とは別に教育研究の場(サテライト教室)を設けることに関しては、現在の取扱いを改め、社会人を受け入れている大学院について広く認めることや、大学院あるいは大学院が連合して企業や地方公共団体等との連携により、職場や地域の身近な場所において授業又は研究指導を認めることなど、より弾力的な対応を可能とすることが適当である。また、これらの場合にマルチメディアを効果的に活用することが考えられる。

 (エ)学生の多様な体験活動の充実

 大学と企業とが協力して学生に自らの専攻や将来の職業に関連した就業体験を与えるインターンシップ制度を積極的に導入すること、ボランティア活動等地域社会に貢献する活動を授業に取り入れたり学生の自主的活動を支援することに大学が積極的に取り組むことも重要である。

(4)国際交流の推進

 大学の国際化を進め、国際交流を進めていくため、セメスター制の導入等を通じて大学の学部や大学院の仕組みを国際的通用性の高いものとしていくと同時に、奨学金の充実や外国語によるプログラムの実施などを通じて海外の留学生の受入れ先として魅力ある国際競争力の高い大学を目指すことが必要である。

 (ア)大学の国際的通用性の向上等

 大学の国際化を促進するためには、留学生受入れをはじめとする国際交流をより機能的に推進するための学内体制の整備充実に努めるほか、外国人教員を含めた多様な教員構成とすること、海外との情報ネットワークを整備することなどが必要である。また、セメスター制の導入などにより大学の学部や大学院の仕組みについての国際的な通用性を高めていくことなどを通じて、研究者交流や国際共同研究を一層進め、研究水準や教育内容において国際的競争力の高い魅力ある大学を目指し努力していく必要がある。

(イ)留学生受入れの推進

 留学生受入れの推進を図るためには、企業名や個人名を冠した奨学金支給事業や民間が保有する宿舎の留学生への提供事業の実施、大学と地方自治体、地域の民間団体や企業が連携した留学生受入れの推進、留学生のインターンシップ・プログラムの実施体制の整備、外国語によるプログラムなど留学生にとって魅力ある教育プログラムの実施、外国の高等教育機関からの編入学や転入学による留学生受入れの推進、私立大学の留学生別科による留学生受入れの拡大、出入国手続き、特に日本への入国の際の在留資格認定の迅速化・円滑化などを更に進めることが必要である。

(ウ)学生の海外留学の推進

 外国人を受け入れることだけでなく、我が国の学生が、在学中に、短期間であってもできるだけ外国に留学する機会を得られるようにすることが望ましい。その際、UMAP(アジア太平洋大学交流機構)等の国際交流の仕組みを利用した短期留学の推進も考えられる。

3 責任ある意思決定と実行-組織運営体制の整備-

(1)責任ある運営体制の確立

 1)新しい自主・自律体制の構築
 21世紀の大学には、社会の知的分野での中核的機関として、教育研究を高度化し、新しい知識・技術や学問・文化を創造していくことが期待される。このため、大学の組織運営については、大学の主体性と責任を基本としつつ、教育研究の学際化・総合化、社会との関係の緊密化等の大学に対する今日的要請にこたえ得る、開放的で積極的な新しい自主・自律体制を構築することが重要である。
  具体的には、1)大学運営をより充実した機能的なものとするため、学内の意思決定の機能分担と連携協力の基本的な枠組みを明確化する、2)社会の意見を聴取し、社会に対して責任を明らかにする仕組みを整備する、という方向で、法改正を含め必要な改革を進めることが適当である。  

(ア)大学運営の課題

 21世紀の我が国の大学には、既成の教育研究の枠組みにとらわれずに、教育研究の高度化を図り、新しい知識・技術や学問・文化を創造していくことが期待されている。
 例えば、環境科学、情報科学、生命科学などの新分野・学際分野における教育研究を推進すること、学生の課題探求能力を高める上でその基礎となる教養教育の充実などの全学的な教育課題に対応することなどが大きな課題となっている。
 一方、大学と社会との関係についても、我が国の大学が、生涯学習機関、学術研究の中核的機関として発展するにつれて、その緊密化が進んでおり、国公立や民間の研究機関との連携協力、生涯学習への取組、国際協力・国際交流の推進、国民に対する情報公開など、大学として対外的に責任ある活動を進めていくことが重要な課題となっている。
 また、こうした諸課題に積極的に対応していくためには、教育研究組織の改編やキャンパスの移転・再開発整備など予算・定員・施設等の各種資源の効果的配置や再配置の問題、各種基盤整備の問題についても、大学が全学的な見地から取り組み一個の組織体として意思決定を行うことが求められる。

(イ)新しい自主・自律体制の構築

  1. 大学運営の現状については、各大学の理念・目的やそれに基づく教育研究の在り方が明確でなく、大学全体としての取組や体系的なカリキュラム作りが十分でないとの指摘がある。また、学部自治の名の下に新たな学問分野や社会的需要に対する取組が遅れがちであるとの指摘もある。
     例えば、大学が、知的な分野での国際的な競争力をつけ将来に向かって大きく飛躍するための基礎作りをするために学部を越えた全学的な改革を断行しようとした場合、現行のシステムでは全学的な改革が円滑に行われにくいことは、大学の内外を問わず多くの識者が指摘するところである。
  2. これまでの学部中心の自治は、個々の専門分野ごとの意思決定を重視するものであり、大学を外部の関与から守るための仕組みとして機能してきた。しかし、現在では、この仕組みはむしろ大学自身が内に閉じこもる方向に作用し、知の拠点としての大学が未知の領域へと展開し飛躍する芽を摘んでしまっている状況をもたらしていると見られる。
     また、現行の大学における意思決定に関しては、学問の進展や社会状況の変化・複雑化が進むにつれて、意思決定の担い手である教員の過重な負担や本務である教育研究への支障を来しており、機動的な意思決定が困難となっているとの指摘もある。今後、複雑で困難な課題が増加すれば、意思決定自体の適切性にも問題は及ぶと考えられる。例えば、今後必要性が増すと予想される学内での資源の再配置等の問題を考えるとき、現行の意思決定の在り方には限界があることも確かなことと思われる。
     21世紀の大学には、大学の組織目標を明確化した上で、学内の各機関の機能分担と連携協力により、大学としての合理的で責任ある意思決定の体制を作ることが求められる。
  3. 大学と社会との関係について見ると、社会の高学歴化や知的分野の拡大、いわゆる大学の大衆化の進行等に伴ってその相対的な関係が変化しているにもかかわらず、大学には依然として社会に対して閉鎖的な面が見られる。積極的に社会との連携を深め、自らの教育研究活動の成果を社会に対して発信し、社会に寄与していくことへの取組が十分でないとの指摘がある。また、近年、公共的な組織について、社会的存在としてその活動状況等を社会に対して明らかにしていくことが求められているが、大学はこの点についても十分でないとの指摘がある。
    大学は学術研究の中核的機関であり、社会の知的分野の中心にある。また、大学は公共的な機関であり、公財政の支援を受ける対象でもある。大学は、自らが社会とともにあることを正面から認めて、主体性を持って学外と交流協力し、教育研究の面でそれぞれの独自の個性を打ち出し社会に問うていく積極的な姿勢を持たなければならない。
  4. 21世紀を迎えるに当たり、我が国は大きな転換点に立っている。行政も民間企業も、それぞれが、厳しい環境の中で組織運営の在り方の見直しを迫られており、大学もその例外ではない。大学は、21世紀の新しい知識・技術や学問・文化を創造する役割を担う機関である。既成観念にとらわれずに真理探究を行うことを目的とする機関であればこそ、自らの組織運営についても、旧来の慣行にとらわれない新しい自主・自律体制を構築していくことが求められる。
    このことは、各大学における教育研究の自主的な取組が十二分にその機能を発揮し、大学が真に学問の府としての役割を果たしていく上で避けて通ることのできない道筋である。もちろん、改革には痛みを伴うが、その痛みを乗り越えて自ら改革を進め得るような運営システムが求められているのである。
  5. 大学の組織運営については、21世紀の大学像や大学を取り巻く環境を考えたときに、1)大学運営の複雑化や大学を取り巻く状況の変化の中で、大学の意思決定の機動性や責任性を高める必要があること、2)成熟社会としての我が国において、大学外の様々な知恵を大学運営に生かしていく必要があること、3)公共的な機関として、活動の成果を社会に発信し、自主性に伴う責任を社会に対して明らかにしていく必要があること、などの観点に立って見直す必要がある。
    その際、各大学の自主的な対応を求めることが重要であるが、例えば、大学運営に関する基本的な枠組みに関して、法制度が不明確であるために関係者の理解が十分なものとならず、機能分担が適切になされないことも見受けられるので、制度の明確化など法改正を含め必要な措置を講じた上で、各大学の取組を求めていくことが必要である。
    また、法制度の明確化は、各大学が責任ある組織運営を行うための基本的な枠組みを明らかにすることを目的とするものであり、各大学においては、その趣旨に即した組織運営の適正化を図ることが求められる。その際、各大学においては、それぞれの状況に応じた運営上の創意工夫を行うことが重要であり、その状況については公表し学内外の評価を求めることが適当である。
    なお、見直しに当たっては、国公私立大学のそれぞれの特質や社会的使命を踏まえて検討することが必要である。
 2)学内の機能分担の明確化
 大学が一体的・機能的に運営され、また、教員が教育研究に専念できる体制を作るため、学内の機能分担を明確にした上で、学内において意見聴取や説明を十分行い、それぞれの連携協力の下で質の高い意思決定を行い得るような基本的な枠組みを整備することが必要である。
  このため、学内の意思決定に関する基本的な枠組みとして、大学の運営と教育研究に関する機能分担と連携協力の関係を明らかにするという観点から、学長を中心とする大学執行部の機能、全学と学部の各機関の機能、執行機関と審議機関との分担と連携の関係、審議機関の運営の基本、事務組織と教員組織の連携の在り方等を明確化する必要がある。

(ア)全学の意思決定の基本的な枠組み

  1. 大学は、教育研究活動を進め、その水準の向上を目指す自律的な機関である。
     我が国の大学が、教育研究の各場面で飛躍的な充実を遂げ、社会からの理解と支持を得るためには、それぞれの大学が、一個の教育研究機関として一体的・機能的に運営されることが必要である。
     また、現在、多くの大学において、教授等が学内の各種会議に大変多くの時間を取られ、本務である教育研究活動の遂行に大きな支障を生じているとの指摘が数多くある。教学組織内における意思決定機能の分担と連携の関係を明確化するとともに、専門的業務や事務執行を事務組織に任せることによって教員の教育研究に当てる時間を確保し、教育研究に専念できる体制を作ることも重要である。
  2. このため、学長を中心とする大学執行部、評議会等の全学的な審議機関、学部長、学部の教授会等が、それぞれの機能分担を明確にした上で、学内において意見聴取や説明を十分に行い、それぞれの連携協力の下で質の高い意思決定を行い得るような基本的な枠組みを整備することが必要である。
     その際、大学により様々な工夫の余地はあるが、学長等の執行機関が、学内のコンピュータネットワークやホームページ、広報誌の活用、若手やベテランなど各年代の教員との懇談などを通じ、大学運営の諸問題について、広く教職員の意見を聞くとともに、学長等の考え方を十分説明することが必要である。
     また、学生は、教員等とは立場が異なるが、特に教育内容や学習環境などの関係の深い事項については、学習する側の立場の意見が重要であり、授業評価やアンケート調査などを通じ、広く学生の意向を把握するよう努める必要がある。
  3. 学内の意思決定に関する基本的な枠組みとして、大学の運営と教育研究に関する機能分担と連携協力の関係を明らかにするという観点から、学長を中心とする大学執行部の機能、全学と学部の各機関の機能、執行機関と審議機関の分担と連携の関係、審議機関の運営の基本、事務組織と教員組織の連携の在り方等を明確化する必要がある。

(イ)学部の組織運営

 大学全体の意思決定が直面している課題については、学部の段階でも、同様であることがしばしば見受けられる。学科の枠を超えた教育研究活動の必要性や対外的な連携協力の必要性が増大していることにかんがみ、学部段階においても、意思決定の機能の明確化が求められる。

1)学長を中心とする全学的な運営体制の整備
 大学として取り組むべき全学的な課題については、学長が中心となって全学的な教育研究目標・計画(例えば、将来計画など)を策定し、それを学内外に明らかにすることが必要である。また、大学運営を責任をもって遂行する上で必要な企画立案や学内の意見調整を行うための学長補佐体制を整備することとし、例えば、運営会議(仮称)(副学長、学長の指名する教員、事務局長等)を設けるなどの方向で考えることが適当である。
  国公立大学の学長の選考方法については、責任ある大学運営を行う上で適切なものとするため、評議会の責任において委員会を設けるなどして適任者を事前に絞り込むなどの改善が必要である。
  学部の運営体制については、学部長の職務の明確化を含めて、全学運営体制の整備に準じて整備する方向で考えることが適当である。

(ア)制度の現状

 学長、副学長の設置や職務については、学校教育法では、「大学には、学長・・・を置かなければならない。大学には、副学長・・・を置くことができる。」「学長は、校務を掌り、所属職員を統督する。」「副学長は、学長の職務を助ける。」等を規定している。
 学長の職務については、学校教育法では他の学校種の校長とほぼ同様の規定となっているが、一方で、評議会や学部教授会が置かれ、大学運営や学部の教育研究に関する重要事項を審議することとされている。このため、学長の役割や機能は、審議機関との関係で必ずしも運用上明確でない面がある。

(イ)大学の教育研究目標・計画の策定・公表

 大学運営を円滑に進めるためには、まず、大学運営の基本方針を明らかにすることが重要であり、全学の教育研究目標・計画を学長が中心となって責任を持って策定し、それを学内外に明示する仕組みを設ける必要がある。
 この教育研究目標・計画は、例えば、大学の将来計画などの形で策定されることが考えられるが、その内容としては、全学的な教育研究上の重要課題や学部の枠を越えた教育研究上の課題への対応方針を含む全学的な目標及びその目標を達成するために必要な学内の予算・定員・施設等の資源の効果的配置・再配置の計画等が含まれる。また、目標・計画の策定に当たっては、評議会や後述の大学運営協議会(仮称)の意見を聞いたり、その実施状況を報告したりすることが適当である。

(ウ)学長補佐体制

 複雑・高度化する教育研究課題を抱える中で、円滑な大学運営を行うためには、全学的な課題についての企画立案や学内の意見の調整の機能が重要である。学長には、責任ある強いリーダーシップの発揮が求められるが、対外的活動を含めて大学運営の機能を担っている学長一人で、このような機能を十二分に発揮することは今や困難な状況が見られる。
 このため、大学運営を責任を持って遂行する上で必要な企画立案や学内の意見調整を行うための学長補佐体制を整備することとし、例えば、運営会議(仮称)(副学長、学長が指名する教員、事務局長等)を設けるなどの方向で考えることが適当である。

(エ)学長の選考方法・任期

 学長の選考は、国公立大学においては、評議会が責任を持って行うこととされ、そこで選ばれた候補者を学長が文部大臣又は地方公共団体の長に申し出、文部大臣又は地方公共団体の長が任命する。
 学長候補者の具体的な選考に当たっては、評議会の定めるところにより、多くの大学で教員による投票が行われるが、その場合に、投票者である教員にとって候補者についての十分な情報のないままに投票が行われて当選者が決まっているのではないかとの指摘がある。
 今後予想される複雑な状況の中では、リーダーシップを発揮しつつ責任を持って適確な大学運営を行うことのできる適任者を学長に選任することが重要である。適任者を選ぶためには、教員による投票を行う場合、評議会の責任において委員会を設けるなどして数名の適任者を事前に絞り候補者として示した上で投票を行うこと、その際、学外からの候補者を含めて検討すること、投票に参加する教員の範囲について大学運営の最高責任者を選ぶ上で適切なものとすることなどが必要である。
 なお、学長の任期については、責任ある大学運営を行う上で余りに短いことは適当でなく、例えば、短くとも4年以上とすることや再任を認めることが適当である。

(オ)学部の運営体制

 学部長については、法律上の根拠となる規定がなく、その職務や機能は定められていない。しかし、学部の運営については、学部内での学科間の調整の必要性、学外の組織との連携の必要性など、全学と同様の問題が見られる。このため、学部長の職務を明確化するとともに、学長を中心とする全学運営体制の整備に準じて、学部長を中心とする学部の運営体制について所要の整備を図る方向で考えることが適当である。
 なお、学部長の任期については、責任ある学部運営を行う上で余りに短いことは適当でなく、例えば、2年以上とすることや再任を認めることが適当である。

2)全学と学部の各機関の機能
 評議会等と学部教授会のそれぞれの機能については、評議会は、大学としての教育課程編成の基本方針の策定、全学的教育に関する教育課程の編成などを含め、大学運営に関する重要事項について審議する機能を担うこととする。学部教授会は、学部の教育課程の編成などの学部の教育研究に関する重要事項について審議する機能を担うこととする。このように、それぞれの基本的な機能を明確化することが必要である。
  学長や学部長(執行機関)と評議会等や学部教授会(審議機関)との関係については、審議機関は学部の教育研究あるいは大学運営の重要事項について基本方針を審議することとする。執行機関は企画立案や調整を行うとともに、重要事項については審議機関の意見を聞きつつ最終的には自らの判断と責任で運営を行うこととする。このように、機能分担と連携協力の関係の基本を明確化することが必要である。
  審議機関については、学長や学部長が議長として議案の発議や議事の整理を行うこと、事柄に応じ必要な場合には多数決で議事を決することなど、審議の基本的な手続きを明確化することが必要である。
  なお、各審議機関が必ず審議すべき事項等については、法制度上の明確化を図る方向でその整理について検討することが適当である。  

(ア)学部教授会 

 教授会については、学校教育法において、「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない。」と定められている。
 学部教授会については、国公立大学の教員等の人事に関する規定を除けば法令の規定が簡潔であるために、実際の審議事項が多くなりすぎたり、本来執行機関が行うべき大学運営に関する事項や執行の細目にわたる事項についても、学部教授会の審議や了解を得なければならないといったような運用が行われている場合が見受けられる。

(イ)評議会等の全学的な審議機関

 国公立大学には、原則として、複数の学部を置く大学に、全学的な審議機関としての評議会が置かれている。私立大学については、法令上の規定はないが、大学評議会などの全学的な審議機関が設けられている例がかなり見られる。
 国立大学の評議会については、「国立大学の評議会に関する暫定措置を定める規則」(省令)により定められており、公立大学の評議会については、各地方公共団体ごとに条例・規則により定められている。
 国立大学の場合、具体的には、数個の学部を置く大学には評議会を置くこととされ、一個の学部を置く大学においても、当該大学の事情により、評議会を置くことができることとされている。評議会は、原則として、学長、各学部長、各学部ごとに教授2人、各附置研究所の長で構成され、審議事項については、学長の諮問に応じ、学則その他重要な規則の制定改廃、予算概算の方針、学部等の教育研究組織や重要な施設の設置廃止に関する事項などの大学の運営に関する重要事項を審議することとされている。
 国立大学の評議会については、昭和28年以来、当分の間の暫定措置として設けられたまま現在に至っており、学長と評議会との機能分担が必ずしも明確でない面がある。

(ウ)審議機関の機能の明確化

 評議会は、大学運営に関する重要事項について、具体的には、大学としての教育課程編成の基本方針の策定、全学的教育に関する教育課程の編成などを含め、全学的な運営上の重要課題、学部間の調整を必要とする事項などについて審議する機能を担うことが適当である。(教員人事については3)で後述する。学部教授会についても同じ。)
 学部教授会は、学部の教育研究に関する重要事項について、具体的には、学部の教育課程の編成、学生の入学、退学、卒業、学位の授与などについて審議する機能を担うことが適当である。
 このような分担と連携の関係の整理を行うことによって、大学として、教養教育の充実、学部段階の専門教育の過度の専門化の改善、国際化・情報化など現代社会の課題に対応した教育の実施、学際的分野の研究推進などの課題に積極的に対応していくことが求められる。

(エ)審議機関相互の関係

 審議機関相互の関係としては、全学的な重要事項については、関係の学部教授会の意見を参考としつつ、評議会等の全学的審議機関において審議するものである。その際、評議会等の全学的審議機関の構成員は、自らが所属する部局の意見を踏まえつつ、最終的には全学の教育研究の水準向上の観点から、審議に参画することが求められる。

(オ)執行機関と審議機関の関係

  1. 執行機関と審議機関との関係については、審議機関は、教育研究あるいは運営の重要事項について基本方針を審議することが適当である。一方、執行機関は、教育研究上の課題についての企画立案や関係者の意見の総合調整を行い、円滑で充実した運営を行うことが求められる。また、執行機関は、重要事項については審議機関の意見を聞きつつ、最終的に自らの判断と責任で運営を行うことが適当である。
  2. なお、予算の運用に当たって、設置者からその権限の一部が大学執行部にゆだねられることがある。このような場合において、大学によっては、審議機関において大学執行部の裁量を事実上制約している例があると言われるが、大学執行部は、必要に応じて審議機関の意見を徴するとしても、自らの判断で決定する必要がある。

(カ)審議機関の運営の基本等

  1. 評議会や学部教授会については、大規模な大学・学部の場合、会議として規模が大きすぎて実質的な討議が行われることが難しい状況がある。教育研究の進展や社会状況の複雑化が予想される中で、責任ある意思決定を行うためには、評議会、教授会について規模の見直しや審議事項の性質や責任の度合いに応じた適切な構成とする必要がある。
     また、評議会や学部教授会の運営に当たって、全学や学部への説明と意見聴取の機会を工夫しながら、学部長会議、代議員会等の仕組みを活用することにより、あるいは、例えば教育課程の審議をカリキュラム委員会に委任するなど専門委員会を活用することにより、代表者による実質的な討議ができるような仕組みを設けることが必要である。
  2. 大学における意思決定の機能性を高めるとともに、個々の教員が教育研究に専念できる環境を整えるため、合議制の審議機関の審議事項を精選し、審議の基本的な手続きを明確化する必要がある。
     学長や学部長は、会議の議長として、議案を発議するとともに議事の整理を行い、合意形成に力を尽くすことはもちろんであるが、事柄に応じ必要な場合には多数決によることも含めて、審議決定の手続きを明確化することが必要である。
  3. なお、単科大学においては、総合大学では評議会等が担当する予算概算や教員選考の方針・基準等の事項を含めて教授会が審議しているが、相当規模の研究科や研究所などを有する大学にあっては評議会等を置くことや、教授会が相当規模である場合には教授会に代議員会を置くことなど、各大学の事情に応じて審議機関の円滑な運営に積極的に取り組むことが望ましい。

(キ)法制度の明確化

 各審議機関が必ず審議すべき事項等については、法制度上の明確化を図る方向でその整理について検討することが適当である。また、各大学においては、明確化の趣旨に即して各審議機関の機能の適正化を図るとともに、その状況を公表することにより学内外の評価を求めることが適当である。

3)教員人事に関する意思決定の在り方

 教員の採用については、大学・学部の理念・目標や将来構想に応じた選考を行うことが必要と考えられるので、教育面への配慮など選考基準をより実質化すること、全学的な人事の方針・基準を定めるに当たって、必要に応じて学長が大所高所からの方向性を示すことなどが適当である。
  教員選考の手続きについては、幅広い視点に立って検討を行うため、必要に応じて学部長が意見を述べること、また、公募制の積極的導入や選考委員会の構成の改善などにより選考過程の客観性・透明性を高めることが必要である。

(ア)制度の現状

  1. 国公立大学の教員等の人事については、昭和24年に制定された教育公務員特例法の規定により、大学管理機関が権限を担うこととなっているが、大学管理機関が具体的に法定されなかったため、同法により、学長、評議会、教授会などがその権限を分担する仕組みとして今日に至っている。具体的には、国公立大学の教員の選考、採用の仕組みについては、教授会の議に基づき学長が選考すること、選考は評議会の議に基づき学長が定める基準により行うことが定められている。
    国公立大学の教員人事の運用については、大学・学部により異なるが、例えば、
     1)採用すべき教員の担当する授業・研究分野を決定する
     2)公募や推薦依頼により候補者を探す
     3)選考委員会で候補者を絞り込む
     4)絞り込んだ候補者を学部の教授会に推薦する
     5)教授会の投票等により採用候補者を決定する
     6)学長の承認を得て採用候補者を最終決定し、発令する
    などの過程により行われている。
    私立大学については、大学により選考の過程は様々であろうが、建学の精神に基づく学校法人経営という観点から、学校法人の理事会が審議の上、最終的に決定することとなる。
  2. 21世紀の大学は、高等教育の普及に伴い、多様な学生を教育する必要が生じるため、学部教育における幅の広さや教育機能の強化が強く要請される。しかし、教員人事等の現状は、講座や研究室などの単位で狭い視野から研究業績等を中心に専門分野の研究能力が評価されるとの傾向が見られ、教育能力や研究能力の幅の広さが十分評価されていないのではないかとの指摘がある。
     また、教員採用に関して公募制を採っている場合も、その選考の基準や過程が透明でない場合が多いとの指摘がある。

(イ)改善の方向

  1. 教員人事については、本審議会においては、これまでに、他校出身者の採用、女性の教員の採用、社会人の採用、外国人の採用等を促進することを求めてきたが、今後とも各大学においてこれらについての配慮がなされることが必要である。
     また、教員選考の基準については、現状ではかなり形式的なものとなっている例が見られることから、当該大学・学部の教育研究の理念・目標や将来構想に即して、水準の向上に実質的に資する内容からなる基準を示すことが必要である。その際、研究面のみでなく教育の担当者として求められる資質についても、明らかにすることが適当である。
     このように全学的な視点から教員人事の在り方や基準の改善を進めるためには、全学的な人事の方針・基準を設定するに当たって、必要に応じて学長が大所高所からの方向性を示すことが適当である。
  2. 選考の手続きについては、採用すべき教員の担当する授業・研究分野の決定や具体的に候補者を絞り込むなどの過程において、幅広い視点に立って教育研究の進展や社会的要請を踏まえた検討を行うことが重要である。このため、学部長が、上記の全学的な人事の方針・基準を踏まえて、教員の採用選考に関して必要に応じて意見を述べることが適当であるが、現行の仕組みでは、教員選考の過程で学部長の果たす機能が必ずしも明らかではないので、この点を明確化する必要がある。
     また、各方面から広く優れた人材を求めるために、公募制を一層積極的に活用するとともに、選考委員会に学内外の関連分野の教員の参加を求めたり、学外の専門家による評価・推薦を求め参考にするなどの方法により、外部の意見を聴取し、より総合的な判断を可能とする客観性・透明性の高い仕組みを設けることが必要である。
 4)学校法人の理事会と教学組織との関係
 学校法人理事会と大学の教学組織との機能分担と連携協力の在り方については、教学組織における学長、教授会等の役割や機能を明確化するほか、両者の連携・意思疎通を十分に行うため、理事会の構成の工夫、あるいは理事会と教学組織の代表者との合同会議を設置するなどの方向で、改善を図ることが適当である。

(ア)私立大学の運営

 私立大学の運営について重要なことは、各大学の自主性を尊重するとともに、その公共性が確保されることである。私立大学は学校法人がこれを設置する。学校教育法においては、設置者である学校法人が学校を管理し、経費を負担するとされており、また、私立学校法においては、学校法人はその設置する私立学校の経営に必要な財産を有しなければならないとされているなど、学校法人はその設置する私立大学の管理運営に責任を有する。私立大学は、運営実態も様々であるが、その建学の精神を実現し、大学改革を推進していくためには、大学の設置者である学校法人が大学の在り方全体について責任を持ち、かつ円滑な運営を行わなければならない。

(イ)学校法人理事会と教学組織との関係

  1. 学校法人の理事会と大学の教学組織との関係を明確化するためには、まず、教学組織内部における学長、教授会等の機能分担を明確化することが重要である。学内における機能の分担と連携の関係が整理されることによって、設置者と大学の各組織の協働関係が機能するものと考えられる。
  2. 大学によっては、設置者が決定すべき予算などの学校法人経営に関する事項についてまで教学組織の審議機関が具体的に審議決定し、設置者の裁量を事実上制約している例が見受けられる。
    設置者は予算や定員などの学校法人経営に関する事項についても、教学組織の意見を聞くことは大切なことであるが、教学組織の役割は、理事会の構成員として参加している場合は別として、飽くまでも教育研究上の観点から、予算に関する方針について意見を述べるにとどまるものである。
  3. 学校法人の設立目的は、建学の精神に基づき大学を設置運営することであり、より良き教育研究を実現するためである。本来、理事会と教学組織は、共通の目的の実現のために役割分担をするものであり、こうした両者の基本的な関係を相互に理解した上で意思疎通を十分に図っていくことが大切である。
    学校法人の理事会と教学組織との間の意思疎通を十分に行うためには、例えば、教学側に配慮した理事会の構成の工夫、あるいは理事会と教学組織の代表者との合同会議の設置、理事会側が経営方針や経営上の課題を教学組織に説明したりする努力をすることなどの工夫を行う方向で改善を図ることが適当である。
5)大学の事務組織等
 大学の事務組織については、教学組織との機能分担の明確化と連携協力の関係の確立が求められる。このため、学長、学部長等の行う大学運営業務についての事務組織による支援体制を整備すること、国際交流や大学入試等の専門業務については一定の専門化された機能を事務組織にゆだねることが適当である。また、大学運営の複雑化、専門化に対応するために、全学的な観点からの適正な職員配置、学部や大学の枠を越えた人事交流、民間企業での研修の機会の充実など、職員の研修や処遇等について改善する必要がある。

(ア)大学の事務組織

  1. 大学の事務組織については、大学における主体的・機動的な改革の推進や教育研究機能の一層の充実に貢献できるよう、教学組織との連携協力の関係の確立を図るとともに、業務の専門性や効率性を向上させる必要がある。
    事務職員は、教育研究の支援をして、その充実・高度化を図る上で不可欠の存在である。科学技術基本計画においても、事務系職員の資質向上を図る必要があるとの指摘がある。
    また、学長、学部長等の行う大学運営業務についての事務組織による支援体制が十分でないとの指摘もある。
  2. このため、学長、学部長の職務を助けるとの観点から、前述の運営会議(仮称)に事務局長等を参加させること、企画や補佐機能を担う職員の適切な配置を行うことなどが適当である。また、国立大学の事務局幹部職員については、在任期間の長期化等により当該大学の職員として十分に手腕を発揮できる体制を作ることが求められる。公立大学の事務局幹部職員については、大学の事務に精通した人材を確保することへの配慮が求められる。
    また、国際交流や大学入試等の専門業務について教育と事務の中間的な領域が広がっていること、大学の情報発信や地域との連携機能の充実が求められていることなどから、一定の専門化された機能を事務組織にゆだねることが適当である。
  3. 大学の事務組織と教学組織との機能分担と連携協力を進めていくためには、事務処理の業務の高度化のための条件整備が必要である。
    職員一般の問題としては、全学的な観点からの適正な職員配置を行うとともに、採用後比較的早期の段階から学部や大学の枠を越えた人事交流を行い各種の業務経験を積ませることや、民間企業等での研修の機会を充実することが必要である。また、業務の効率性を高め必要な業務を充実していくため、人事、会計・財務の柔軟性の向上や公私立大学に係る設置認可等の手続きの簡素化を図るとともに、事務処理の電算化や業務の外部委託を進めることも必要である。
    また、専門的な業務との関係では、大学の各種業務の情報化、国際化への対応、入試などの専門業務の高度化への対応という観点から、専門的素養のある人材の養成を含め、専門分野ごとの研修を充実するとともに、適切な処遇が求められる。また、外部の優れた人材の登用も考慮すべきである。
  4. 国立大学の事務組織については、近年、学生数が増加し、教育研究の進展により教員数が増加し、事務の内容も複雑多岐なものとなっているにもかかわらず、事務職員等の定員が減少している状況がある。大学における教育研究条件が低下することのないよう、人事、会計・財務の柔軟性の向上等事務の合理化を進め、専門化を図ることが特に重要である。

(イ)技術職員

 教育研究の支援体制の充実という点では、技術職員の充実も重要な課題である。科学技術基本計画においては、我が国においては研究支援業務に対する社会的な評価や認識が十分でなく研究支援者が十分確保されていないとの指摘がある。近年、定員の減少等厳しい状況にあるが、科学技術創造立国を目指す我が国が、大学における教育研究の質的充実を進めていくためには、優れた技術職員の確保を図ることが重要であり、要員の確保、資質の向上等が必要である。

 3)社会からの意見聴取と社会に対する責任
 大学が社会からの意見を聴取し社会的存在としてその責任を明らかにするとの観点から、大学の教育研究目標・計画(例えば、将来計画など)、予算、自己評価などの事項について外部有識者の意見を聞くため、大学運営協議会(仮称)を設けることが必要である。
  大学運営協議会(仮称)は、必要に応じて助言・勧告を行うことが適当である。  

 (ア)参与会等

 大学運営に当たって、学外の有識者の意見を聞く仕組みについては、昭和48年以降に設置された国立大学には、参与会又は参与が置かれている。参与会については、「大学の運営に関する重要事項について、学長の諮問に応じて審議し、及び学長に対して助言又は勧告を行う」ことが定められている。また、参与会の構成員については、当該大学の卒業者、当該大学の所在地域の関係者、大学その他の教育研究機関の教職員、大学に関する識見を有する者とすることが定められている。また、参与については、「大学の運営に関し学外の有識者の意見を求めるため」の組織として設けられている。
 このような参与会や参与の仕組みについては、審議事項が具体的でないことや構成員が学外者であるため実際上審議回数が限られていることもあり、その意見が大学運営にどのように寄与しているかが必ずしも明確でなく、その実質化を図る必要があるなどの指摘がある。

(イ)大学運営協議会(仮称)

  1. 大学と社会との関係が密接化する中で、教育研究活動の自律的な運営や公財政の支出の必要性について社会的に十分な理解を得るためには、大学が社会からの意見を聴取し社会的存在としてその責任を明らかにすることが求められている。
    このため、大学の教育研究目標・計画(例えば、将来計画など)、予算、自己評価、地域社会や産業界との連携・交流や社会貢献の状況等の事項について外部有識者の意見を聞くための組織として、大学運営協議会(仮称)を設置することが必要である。
  2. 大学運営協議会(仮称)は、大学の運営体制や運営状況について、必要に応じて助言・勧告を行うことが適当である。
    大学は、大学運営協議会(仮称)の助言・勧告については、それに従わなければならないわけではないが、その内容を十分踏まえた上で、大学としての主体的な意思決定を行うとともに、その結果を大学運営協議会(仮称)に報告することが適当である。
  3. 大学運営協議会(仮称)の構成については、教育面では卒業生を雇用している企業等の関係者、研究面では当該分野で高い水準にある研究者、連携協力の相手方となる地域の関係者のほか、他大学の教職員、当該大学の教職員OB等で構成することが考えられる。
    なお、具体的な人選に当たっては、形式的な委嘱を避け、当該大学の教育研究の改善に関して、実質的な討議がなされるよう留意することが必要である。
  4. 大学運営協議会(仮称)については、国の機関として国民に対して教育研究活動の成果を示す責務を負う国立大学について設置することとし、公私立大学については、設置者である地方公共団体や学校法人の判断にゆだねることが適当である。
  5. なお、大学運営協議会(仮称)の名称については、法制度化に当たってその性格を適切に表すものとすることが望ましい。

(2)大学情報の積極的な提供

 大学入学希望者などの直接の利用者や一般の国民が必要とする大学情報を分かりやすく提供することは、公共的な機関としての大学の社会的な責務である。このため、大学が、その教育研究目標・計画(例えば、将来計画など)、大学への入学や学習機会に関する情報、学生の知識・能力の修得水準に関する情報(成績評価方針・基準等)、卒業生の進路状況に関する情報、大学での研究課題に関する情報を広く国民に対して提供するものとすることとし、それを制度上位置付けることが必要である。また、大学の財務状況に関する情報についても公表を促進することが必要である。

(ア)大学情報の提供の意義

  1. 大学は公共的な機関であり、大学の教育研究活動に関する情報を社会に対して提供することは、大学の社会的な責務である。
     近年、高等教育が普及し、我が国の大学が生涯学習機関、学術研究の中核的機関として発展する中で、大学と社会との関係は更に緊密化するものと考えられる。
     大学における教育研究活動については、かねてから、閉鎖的で国民に対して開かれたものとなっていないとの指摘がある。もちろん、各大学において、大学の教育研究状況を知らせるための広報資料やホームページの作成など、「開かれた大学」に向けての努力も見られるが、情報の取捨選択が必ずしも適切でなかったり、分かりやすくなかったりするなど、一般的には十分なものとなっていない。
  2. 近年、大学の教育研究活動について正確な情報を知りたいという社会的な関心は急速に高まっている。その関心には、自分が入学を希望している大学の教育研究活動が活発に行われているかどうかといった個別的なものから、我が国の大学が国際的に通用する教育研究水準にあるか、公財政が支出される組織として効果的に運営されているかといった一般的なものまで、幅広いものがある。
     各大学は、国民の適切な理解を得るために、教育研究活動の状況やその成果、教育研究活動の改革充実に向けた取組の状況を広く社会に対して積極的に公表していくことが必要である。

(イ)大学情報の積極的提供

  1. 大学の提供するサービスを直接利用する者や国民一般にとって関心が高いと考えられる大学の教育研究目標・計画(例えば、将来計画など)、大学への入学や学習機会に関する情報、学生の知識・能力の修得水準に関する情報(成績評価方針・基準等)、卒業生の進路状況に関する情報、大学での研究課題に関する情報を提供することは、公共的な機関としての大学の社会的な責務である。このため、大学が、これらの情報を広く国民に対して提供するものとすることとし、それを制度上位置付けることが必要である。また、大学の財務状況に関する情報についても公表を促進することが必要である。
  2. 各大学の情報提供の内容、方法については、現在、各大学の大学要覧やホームページにおいて公表されている情報の内容や提示の方法について利用者等の意見を聞いて見直し、索引を工夫するなどにより、分かりやすいものとする必要がある。
     また、文部省や大学入試センター、学位授与機構、学術情報センター、日本私立学校振興・共済事業団等においては、各大学の提供する各種の情報を集約提供する立場にあることから、これらの情報を整理し、国民にとって分かりやすい形で提供する仕組みを充実する必要がある。

4 多元的な評価システムの確立 -大学の個性化と教育研究の不断の改善-

 21世紀において、我が国の大学が教育研究の水準向上を進め、世界のトップレベルの大学と伍して発展していくためには、社会の理解と支援の下、それぞれの大学が、教育研究の個性を伸ばし質を高めるための環境を整備することが重要である。
  このため、自己点検・評価の充実を図るとともに、第三者評価システムの導入などを通じて多元的な評価を行い、大学の個性を伸ばし、教育研究の内容・方法の改善につなげるシステムを確立する必要がある。

 我が国の大学が、今後とも、教育研究の水準向上を進め、世界のトップレベルの大学と伍して発展していくためには、教育研究活動の水準向上の目標を定め、その達成状況を評価し、評価結果に基づく改善を進めていくことが求められている。
 大学評価の取組の基本は、各大学が自らの教育研究水準の一層の向上を図るために、自らの教育研究活動の点検・評価を行う「自己点検・評価」にある。その実施と結果の公表は、大学の教育研究活動が自主的に行われることに対する社会の信頼を確保する上でも重要である。その上で、大学の教育研究活動の評価については、その客観性・透明性を高め、評価としての実質化を図ることが強く要請されている。
 本審議会の審議の参考とするために、広島大学大学教育研究センターに対して「大学の評価システムに関する全国調査」(平成10年4月)が委託された。その調査結果によれば、大学評価の問題点として、学内に評価の専門家がいないこと、他の大学との比較ができないこと、実態での改革が先に進み評価が後付けになっていること、社会や産業のニーズに合った評価がなされていないこと、評価の結果や存在が学内で知られていないこと、評価の在り方が形骸化していること、点検・評価の方法や技術に進歩が見られないこと等が指摘されている。
 また、今後の点検・評価の在り方についても、現行の自己点検・評価の在り方が望ましいとは必ずしも認識されておらず、評価の結果を改革に結び付ける政策的な仕組みが必要である、外部の第三者が検証する仕組みが必要である等の意見が多数見られる。
 大学評価についての情報は、現在でも社会に多数流通しており、このことは大学等における教育研究活動の充実に対する社会的要請の反映であると見ることができる。しかし、その中には、根拠が明らかでないものや、入学者選抜に関する偏差値情報のように、教育研究活動の特定の部分だけを取り出した偏ったものも見られる。
 このように、大学の教育研究に対する社会的評価の現状は必ずしも十分なものではなく、こうした環境の下で行われる大学間の競争は、大学の教育研究の水準向上や社会的要請への適切な対応につながるものとはなり難い。大学の教育研究の個性を伸ばし、質を高めていくためには、その基礎となる評価の内容・方法・基準等がその目的に照らして適切なものであることが不可欠である。
 また、大学は公共的機関であり、公財政の支援を受ける対象である。大学が社会的存在としてその活動状況等を社会に対して一層明らかにしていくためには、より透明性・客観性の高い第三者評価を推進し、広く社会に公表することが必要である。
 これらの点を考慮すると、教育研究活動の質について、教育研究活動の多様性を保障しつつ公正に評価する第三者評価システムを導入し、組織的、恒常的にこれを運営していくことが求められる。
 短期大学及び高等専門学校の評価の在り方については、その制度上の位置付けなどの問題と併せて更に本審議会で検討することが適当である。

(1)自己点検・評価の充実

 自己点検・評価の一層の充実を図るため、自己点検・評価の実施及びその結果の公表を大学の義務とし、学外者による検証を大学の努力義務として位置付けることが必要である。

(ア)現状

 大学の自己点検・評価については、平成3年の大学設置基準における制度化以降、順次定着しており、文部省の調査では、平成9年10月現在、国公私立大学全587校のうち、88%の大学で自己点検・評価を実施し、65%の大学でその結果を公表している。
 また、「大学の評価システムに関する全国調査」によれば、回答した418校のうち、平成9年度までに全学的に実施した大学は83.7%であり、2度以上実施した大学も56.4%となっている。自己点検・評価の結果を他大学等に公表した大学は、69.9%となっている。

(イ)実施と結果の公表

  1. 大学の自己点検・評価については、「点検あって評価なし」との厳しい指摘があることに見られるように、形式的な評価に陥り教育研究活動の改善に十分結び付いていない、外部への情報発信が足りないとの状況がある。このような状況等を踏まえて、大学における教育研究水準の一層の向上を図る観点から、大学自らが教育研究の質的充実を進める責任があることを明確にするとともに、大学の教育研究活動の透明性を高めるため、現在は努力義務である自己点検・評価の実施とその結果の公表を各大学の義務として位置付けることが必要である。
  2. 自己点検・評価は、各大学が自らの教育研究の理念・目標に照らして、教育活動及び研究活動の状況を点検・評価することが基本である。
     各大学においては、実際に評価を行う際に、国公私立の別や専門分野の別、新設、既設の別等の実情に応じ、教員組織、施設・設備、管理運営・財政、自己評価体制、国際交流や社会との連携等、各大学等の判断により適切な項目が設定されることが望ましい。
     もちろん、自己点検・評価は、不断に行われるべきであるが、教育研究活動に関する総括的な点検・評価の実施は、学問の進展や社会の変化に対応しつつ、充実した内容とするため、少なくとも4年に1回は実施することが適当である。
     また、自己点検・評価の実施組織の単位については、「全学」及び専門分野での教育研究上の基本的な組織である「学部」(必要に応じて大学院研究科)を単位とすることが適当である。
  3. 現在行われている自己点検・評価を中心とする大学評価については、先に示した調査においても、評価の内容・方法等について十分ではないことが問題であると認識されている。各大学においては、教育研究活動の内容・方法に関する評価の在り方等についての議論を積み上げ、専門的な調査研究を充実することが求められる。
     また、自己点検・評価の結果については、各大学の自己点検・評価委員会等で検討が行われているが、現状では必ずしも十分なものと言えない。大学改革に当たって、企画→実行→評価という「改革サイクル」を適切に機能させるためにも、各大学において、学長のリーダーシップの下、自己点検・評価を実施し、その結果を教育研究活動の内容・方法等の改善に結び付ける仕組みを整備することが必要である。
  4. 自己点検・評価の結果の公表については、分厚い報告書を作成しても、学内の関係者以外には読まれていないとの厳しい指摘もある。各大学が教育研究活動の改善に取り組んでいる状況を学生や国民に対して分かりやすく示すために、自己点検・評価報告書の概要を要約した資料を作成して広く提供するなど、工夫することが望ましい。

(ウ)学外者による検証

  1. 自己点検・評価という形式には、実質的な評価を行う上で限界があり、実際、各大学の教育研究活動の質的な充実につながっていないとの指摘もある。そこで、自己点検・評価をより一層効果的に実施し、公共的な機関である大学としての責務を果たしていくために、自己点検・評価の結果について学外者による検証を行うことを大学の努力義務として位置付けることが必要である。
  2. その際、学外者の具体的人選については、学外者による検証が、大学の自己点検・評価制度を効果的に実施するための仕組みであることから、各大学にゆだねることが適当である。なお、人選の客観性を高めるために、検証を行う学外者を大学団体等が推薦することも考えられる。
     また、学外者による検証については、大学基準協会の機能の活用を図ることによって充実を図る方向で検討することが適当である。

(2)第三者評価システムの導入

 大学における教育研究活動について第三者としての客観的な立場から評価を行う組織としては、大学団体、学協会、大学基準協会等が考えられ、それぞれの機関がその特質に応じた多面的な評価を行うことや、各大学が多様な個性を存分に発揮できるような評価が行われることが期待される。
  しかし、大学が社会的存在としてその活動状況等を社会に対して一層明らかにしていくためには、透明性の高い第三者評価を行うとともに、大学評価情報の収集提供、評価の有効性等の調査研究を推進するための第三者機関を設置する必要がある。第三者機関は、大学共同利用機関と同様の位置付けとし、大学関係者の参画を得て運営を行い、その専門的な判断に基づき自律的に評価を実施することが適当である。
  第三者機関による評価は、その結果が各大学にフィードバックされることにより、教育研究活動の個性化や質的充実に向けた各大学の主体的な取組を支援・促進することなどを目的とする。
  第三者機関による評価については、その主たる対象を国立大学とし、公私立大学については、設置者である地方公共団体や学校法人の希望により評価を受けることができるとすることが適当である。
  第三者機関による評価の内容、方法等については、大学の行う諸活動について、各大学の(事柄に応じ学部・学科単位での)個性や特色が十二分に発揮できるよう、複数の評価手法に基づき多面的な評価を行うこと、評価の結果については、国民に対して分かりやすい形で公表されること、被評価者に対して評価の結果及び理由が示され、それに対して意見を提出する機会が設けられることが適当である。

(ア)多様な主体による評価

  1. 各大学の教育研究活動の個性を伸ばし質を高める努力を促進するためには、各大学の教育研究活動に関して、第三者としての客観的な立場からの評価を充実することが望まれる。第三者評価を行う主体としては、ピア・レビュー(対象分野の専門家による評価)の観点からは、大学団体、学協会、大学基準協会等の大学における教育研究活動の質的向上を目指す自主的団体が考えられる。
     大学が行う教育、研究、組織運営などの諸活動について、それぞれの評価主体の特質を生かした多面的な評価が実施されることが期待される。
     例えば、大学団体においては設置形態の特性を考慮した上での評価が、学協会においては専門分野別の評価が、大学基準協会においては維持会員校としての加盟判定審査、教育研究水準の向上への取組状況等についての相互評価等の評価が、それぞれ期待される。特に、大学基準協会は、戦後発足して以来、会員制のアクレディテーション(適格認定)団体として活動を実施してきている。今後、相互評価の充実などアクレディテーション機能を一層強化することが期待される。
  2. 第三者評価を進めるに当たっては、それぞれの大学によって、研究を重視する方向、専門教育を重視する方向、教養教育を重視する方向など、それぞれの個性や建学の理念・目標があるので、一律の尺度で評価することは適当でない。第三者評価に当たっては、各大学の多様な個性が存分に発揮されることや、国公私立の別、国際的な通用性など、多様な観点に留意した評価が求められる。

(イ)評価と情報収集・提供、調査研究の第三者機関

  1. 大学は公共的機関であり、公財政の支援を受ける対象である。大学が社会的存在としてその活動状況等を社会に対して一層明らかにしていくためには、より透明性・客観性の高い第三者評価を推進し、広く社会に公表することが必要である。
     このため、大学の教育研究活動について、ピア・レビューを基本としつつも、教育を受ける学生自身、卒業生を雇用している企業、共同研究を行う企業の研究開発担当者などの利用者の視点等も加味した多様な観点からの第三者評価を実施することが求められる。
     また、大学評価を真に大学の教育研究の質の向上や個性化につなげていくためには、広く社会で行われている大学評価を含めて、多岐にわたる大学評価に関する情報の収集・分析・提供を行うとともに、大学評価の各種指標の有効性等に関する調査研究を進め、これらの情報や研究成果を積極的に社会に公表する必要がある。
  2. こうした第三者評価や大学評価の情報収集・提供、調査研究などの諸活動を進めるに当たっては、教育研究上の専門的な判断を基礎としつつ、評価の多様性、各専門分野ごとのきめの細かさだけでなく、評価の透明性や説明責任を確保するために、相当数の専門スタッフが必要となる。このため、第三者機関を設置する必要があり、速やかな対応が望まれる。
     第三者機関による評価は、(c)で後述するように、本来各大学が行うべき教育研究活動の質的充実や国民に対する説明などの取組を一体となって促進するとの性格を有する。こうした評価の基本的な性格にかんがみ、第三者機関は、大学共同利用機関と同様の位置付けとし、大学関係者の参画を得て運営を行い、その専門的な判断に基づいて自律的に評価を実施することが適当である。
  3. 第三者機関による評価については、その結果が各大学にフィードバックされることにより、教育研究活動の個性化や質的充実に向けた各大学の主体的な取組を支援・促進するものとなることが期待される。また、第三者機関による評価の実施により、入学試験の偏差値情報などの偏った評価情報ではなく、学術・文化面での貢献等の公共的な側面を含めて、教育研究機関としての特質を踏まえた適切な手法により大学の諸活動の状況を多面的に明らかにすること、各大学や大学全体の教育研究活動の状況や成果を分かりやすく示し、公共的な機関として大学が設置・運営されている点について広く国民の理解と支持が得られるよう支援・促進することが必要である。
  4. 第三者機関による評価については、特に国立大学が国の機関として国民に対して教育研究活動の成果を分かりやすく示していく責務を負うと考えられることなどから、その主たる対象を国立大学とすることが必要である。また、公私立大学については、設置者である地方公共団体や学校法人の希望により第三者機関の評価を受けることができるとすることが適当である。
     また、第三者機関による評価の内容、方法等については、専門的な調査研究の成果を踏まえつつ、各大学・学部等の目的や将来計画なども考慮しながら、教育活動、研究活動、地域社会や産業界との連携・交流、社会貢献など、大学の行う諸活動について、各大学の(事柄に応じ学部・学科単位での)個性や特色が十二分に発揮できるよう、複数の評価手法に基づき多面的な評価を行うことが適当である。
     第三者機関による評価の結果については、国民に対して分かりやすい形で公表されること、被評価者に対して評価の結果及び理由が示され、それに対して意見を提出する機会が設けられることが適当である。

(ウ)教育活動の評価

 教育活動の評価については、教育の成果が対象となる学生の資質能力に負うところがあることなどから、研究活動の評価に比して難しい点があると考えられる。しかしながら、大学教員の中に見られる、教育よりも研究を重視する考え方を改めるとともに、教育活動をより充実させるためには、教育についても評価の対象とすることが適当である。
 教育評価については、各大学の教育目標に照らし、実際の教育課程や授業の設計、成績の評価など教育方法が適切で責任のあるものとなっているかなどの観点について、各大学が行う自己評価などを基に評価を行うことが考えられる。また、各大学の教育方法改善の取組状況について、自己評価や学生の授業評価の結果が教育の改善にフィードバックされているかといった点や、シラバス作成、ファカルティ・ディベロップメントの実施、少人数教育の実施などの具体的改善方策の実施状況の評価を行う方法も考えられる。
 いずれの方法を採るにしても、教育活動の評価に当たっては、各大学の教育活動における個性を伸ばし優れた取組を促進することによって質的な向上を図る観点から評価を行うことが重要である。

(3)資源の効果的配分と評価

 各資源配分機関は、大学の教育研究の個性を伸ばし、質を高める適切な競争を促進し、効果的な資源配分を行うため、きめ細かな評価情報に基づき、より客観的で透明な方法によって適切な資源配分を行う必要がある。

 各資源配分機関は、これまでも大学審議会の答申等に基づいて、評価に基づく予算配分を行ってきているが、今後は、それぞれの予算の趣旨目的をより効果的に達成するよう、きめ細かな評価情報に基づき、より客観的で透明な方法によって適切な資源配分を行う必要がある。各大学の教育研究活動の個性を尊重しつつ、国際標準を確保するためには、教育研究上の優れた取組や教育研究活動の水準向上の努力が正当に評価され、より多くの資源が配分されることが必要である。
 資源配分を行う際に、その基礎となる評価については、学部ごとの(大学院については専攻ごと、分野によっては研究科ごとの)教育研究の特質に十分留意することが必要である。
 また、評価に当たっては、研究評価、教育評価を通じて、評価委員による評価点を加味するなどの方法によって、過去の業績、教育研究の改革への努力、将来への展望などについて定性的な側面を評価していく工夫が必要である。
 なお、評価に基づく資源配分を行うに当たっては、各資源配分機関は予算等の趣旨目的を考慮しつつ、配分の基本的な方針・基準を専門分野の教育研究に識見の深い者等の意見を聴取して作成・公表するなど、客観性・透明性を確保する工夫が必要である。
 第三者機関による評価と資源配分との関係では、国立大学の予算配分に際して第三者機関による評価が参考資料の一部として活用されることが考えられる。

5 高等教育改革を進めるための基盤の確立等

 高等教育改革を継続的に推進していくためには、各大学等における自己改革の取組とともに、これを各大学等及び教職員の負担に任せるだけではなく、国としても、施設・設備の整備や教職員の配置、教育研究経費の充実などについて必要な財政上の措置を講ずるなど、この答申で示した具体的改革方策のための基盤整備を積極的に推進していくことが不可欠である。そのための経費負担については、教育への投資は我が国の今後の発展に欠かすことのできない未来への先行投資であること、現状では、高等教育についての学生や親の家計負担が重いものとなっていること、さらに我が国は先進諸国と比較して国内総生産(GDP)や公財政支出全体に占める高等教育に対する公財政支出の割合が少ないことを踏まえ、公的支出を先進諸国並に近づけていくよう最大限の努力が払われる必要がある。その際、厳しい財政状況や大学等に期待される役割等も踏まえつつ、積極的に改革に取り組んで成果をあげている大学等を重点的に支援していくことが必要である。
  各大学等において民間資金の導入等による財源の多様化・充実を図るとともに、国公私立大学等の授業料については、物価水準等を考慮した程度の改訂など、学生や親の家計の負担が余り重くならないよう努力する必要がある。
  奨学金については、高等教育についての学生や親の家計負担が重くなっていることを考慮し、今後、主に経済的困難度を重視する観点から抜本的拡充を図ることが必要である。また、大学院学生に対する奨学金については、学生が自立した家計を持つ場合が多いことを考慮し更に拡充することが必要である。
  このほか、ティーチング・アシスタントやリサーチ・アシスタント、日本学術振興会の特別研究員制度についても更に拡充を図る必要がある。
  私学助成については、今後、社会における人材養成需要を考慮するとともに、社会的要請の強い特色ある教育研究プロジェクトに対する重点的配分を一層図る必要がある。また、私立大学等の収入源の多様化等を図るための税制改正を更に進めることも重要である。

(ア)国における基盤整備の推進

  1. 人々の知的活動・創造力が最大の資源である我が国にとって、優れた人材の養成は更なる発展のために不可欠のものであり、今後、我が国の社会が活力ある発展を続けていく上で、高等教育の果たす役割は極めて大きい。特に、今後の進学率の上昇を考慮すると、その質的向上を図っていくことが重要な課題であり、各大学等において、自らがそれぞれの理念・目標に沿って自己改革を図っていくことを基本としつつ、この答申で提言した具体的改革方策を実効あるものとして継続的に推進していく必要がある。そのためには、これを各大学等及び教職員の負担だけに任せるのではなく、国としても、老朽化・狭隘化等が指摘される施設・設備の整備や教職員の配置、教養教育をはじめとする教育内容・方法の改善・充実や学長のリーダーシップ発揮等のための教育研究経費の充実などについて必要な財政上の措置を講じるなど、この答申で示した具体的改革を進めるための基盤整備を積極的に推進していくことが不可欠である。
  2. 各大学等において、高等教育を取り巻く状況に即応しつつ必要な改革を適切に推進していくためには、高等教育の改革の課題や方法を明らかにするとともに、国においては、必要な情報を各大学等に十分に提供していくことが求められる。このため、教育内容や教授法のみならず教育研究推進のための条件整備など、高等教育改革のための教育研究体制を充実するとともに、カリキュラム開発への支援や改革に関する情報等を積極的に提供していくことが必要である。
  3. そのための経費負担については、現状において、国公私立大学等を問わず、高等教育についての学生や親の家計負担は重いものとなっており、我が国は他の先進諸国と比較しても、国内総生産(GDP)や公財政支出全体に占める高等教育に対する公財政支出の割合が少ないなどの状況にある。このような状況及び教育への投資は我が国の今後の発展に欠かすことのできない未来への先行投資であることを踏まえると、今後、学部教育の質的向上、大学院の高度化・多様化等の改革を推進するために、高等教育に対する公的支出を先進諸国並に近づけていくよう最大限の努力が払われる必要がある。その際、厳しい財政状況や大学等に期待される役割等も踏まえつつ、積極的に改革に取り組んでその成果をあげている大学等を重点的に支援していくことが必要である。

(イ)授業料

 国公私立大学等の授業料については、高等教育費に対する学生や親の家計負担が重くなっていることや、今後の進学率の上昇に伴い多様な所得層の学生が入学してくるようになることを考慮すると、各大学等において、民間資金の積極的導入等の財源の多様化と充実に一層努力するとともに、授業料については物価水準等を考慮した程度の改訂など、学生や親の家計負担が余り重くならないよう努力する必要がある。

(ウ)奨学金等

  1. 高等教育についての学生や親の家計負担が重くなっていることを考慮し、能力と意欲を持つ者に経済的援助を与えるため奨学金の拡充を図る必要がある。特に日本育英会の奨学金については、今後は主に経済的困難度を重視する観点から抜本的拡充を図り、学生の経済的必要度に応じて貸与することが必要である。
     学生自身が高等教育に必要な経費の貸与を受け、将来返還するという日本育英会の奨学金制度は、単に資金の効率的な運用のみならず、貸与を受ける学生の自立心や自己責任、さらには社会還元の意識のかん養に資するものと考えられる。
     また、大学院学生に対する奨学金については、大学院学生が親から経済的に自立している場合が多いことを考慮し、貸与人員、貸与月額の拡充・改善を更に図るとともに、優秀な大学院学生に対する給費制の導入についても今後検討する必要がある。
     奨学事業の実施に当たっては、その資金を確保するため、一般会計財源及び財政投融資を適切に活用するとともに、返還金回収業務の一層の効果的・効率的実施を図る必要がある。なお、奨学金の拡充に伴い不可避となる回収不能に対応するため、奨学金受給者が受益者として適正かつ応分の負担をする仕組みについて、今後、検討する必要がある。
  2. このほか、ティーチング・アシスタントやリサーチ・アシスタント、日本学術振興会の特別研究員制度も、学生に対する経済的支援策として重要な役割を果たしており、更にその拡充を図る必要がある。

(エ)私学助成

  1. 私立大学等については、既に学生や親の家計にとって大きな負担となっている授業料等の学生納付金の上昇を抑制しつつ、それぞれの理念・目標に基づき、より質の高い教育を提供していくため、私学助成の推進を図る必要がある。この際、私学が社会の要請にこたえる教育研究を積極的に推進し得るよう、社会における人材養成需要を考慮するとともに、社会的要請の強い特色ある教育研究プロジェクトに対する重点的配分を一層図る必要がある。
  2. また、私立大学等の収入源の多様化を図る観点から、寄附金収入の増加、資産運用の改善、奨学や研究などのための基金の拡充等に努めるとともに、私立大学等の教育研究の取組状況や学校法人の経営内容が一層透明性の高いものとなることが求められることから、教学面及び経営面を通じて情報公開を促進していく必要がある。さらに、親の家計負担の軽減や財源の多様化を図るため、寄附金等の外部資金の受入れを促進する等の税制改正を図ることも重要である。

(別紙1) 高等教育改革の進展の状況(概要)

 高等教育改革については、本審議会の答申等を踏まえ、教育研究の高度化・多様化・個性化、組織運営の活性化の方針の下に、諸制度の大綱化、弾力化等が図られてきた。また、この10年間において、大学関係者の間に大学改革の必要性についての意識が覚醒され、改革に向けての具体的な取組が着実に進められている。

1 教育研究面の改革

 1)学部段階の教育の改革
  1. 各大学が、自らの教育理念・目標に基づいてカリキュラムを自由に編成できるようにするため、平成3年、大学設置基準の改正により、従来の一般教育科目、専門教育科目等の科目区分等を廃止するとともに、単位の計算方法や授業期間等の基準の弾力化が行われた。また、同年、社会に開かれた大学の観点から、昼夜開講制の設置基準上の位置付けの明確化、科目等履修生制度の導入、大学以外の教育施設等の学習成果の単位認定の制度化も図られたほか、平成10年には、教育方法の多様化等の観点から、マルチメディアを活用した「遠隔授業」が設置基準上に位置付けられた。このほか、様々な履修形態による多様な学習の成果を適切に評価する観点から、平成3年に学位授与機構が創設され、大学以外での学位取得の道が開かれた。
  2. これらの制度改正とともに、多岐にわたる教育の改善方策についての本審議会の提言を受け、各大学においては様々な取組が進められてきた。平成10年7月に公表された「大学におけるカリキュラム等の改革状況について」の文部省調査(以下「改革状況調査」という。)によれば、平成9年度までに全体の9割以上の大学が科目区分や必修・選択科目の見直し等を実施しているほか、全体の9割以上の大学が授業計画(シラバス)の作成を行っている。その他、少人数教育の実施、ティーチング・アシスタントの活用、学生による授業評価の導入、セメスター制の採用等、教育の質的向上のための様々な具体的取組が進展してきている。
  3. 短期大学及び高等専門学校についても、上記の事項に関し、それぞれの特色に応じた制度改正等が実施され、これらを踏まえた改革への取組が進められてきている。
 2)大学院の改革
  1. 平成元年、大学院設置基準等の改正により、優秀な学生の学部3年次からの大学院入学、修士課程の最短1年での修了や昼夜開講制の制度化、科目等履修生制度の導入、広く社会人登用を図るための教員基準の弾力化、独立大学院の組織編制等に係る大綱的基準の制定等が行われた。また、平成5年には夜間大学院の制度化が、さらに、平成10年には通信制大学院の制度化が図られた。
  2. 改革状況調査によれば、平成9年度現在で、学部3年次から大学院に入学した者は48大学・237人に上っているほか、開かれた大学院づくりの観点からの社会人特別選抜入学者数は219大学院・6、112人に拡大してきている。その他、昼夜開講制の実施や夜間大学院の開設、科目等履修生の受入れ等も進んできている。
  3. 複数の大学院が協力して教育研究を実施する大学院(連合大学院)、学外の研究所等と連携して教育研究を実施する大学院(連携大学院)等新しいタイプの大学院や、学部を持たない大学院だけの大学(独立大学院)、特定の学部を母体としない先端的・学際的分野を対象とする大学院(独立研究科・専攻)の開設が増えてきている。

2 組織運営等についての改革

  1. 大学等が、教育研究水準の向上と活性化に努めるとともに、その社会的責任を果たしていくためには、大学等が自ら不断に自己点検・評価を行い、改善への努力を行っていくことが不可欠であるとの観点から、平成3年に大学等の設置基準の改正が行われ、自己点検・評価に関する努力義務が明示された。改革状況調査によれば、平成9年度現在、約9割の大学が自己点検・評価を実施しているほか、結果の公表や外部評価を実施する大学も増えてきている。
  2. 平成7年には、教授会に代議員会や専門委員会を設けることが可能であることを制度上明確化したほか、平成9年には、大学教員の選択的任期制の導入が行われた。
  3. これらの制度改善のほか、学長・学部長等のリーダーシップの確立の推進、学長補佐体制の整備、教員採用における公募制の活用など、組織運営の活性化のための様々な改善方策が進められてきている。
(備考)

○ 大学・大学院、短期大学、高等専門学校におけるカリキュラム等の改革状況に係る文部省調査の結果については、参考資料27、28、29を参照。

(別紙2) 高等教育における現状の問題点

 高等教育における現状の問題点としては、大学関係者のみならず、学生、社会、産業界等から次のような点が指摘されている。

1 教育研究面の問題点

1) 学部段階の教育の問題点

(ア)学部段階の教育の位置付けの問題

 いわゆる高等教育の大衆化、学生の多様化等の変化にもかかわらず、多くの大学等の教員の意識は、従来の大学等における教育の概念から抜け切れていないため、研究重視の意識は強いが教育活動に対する責任意識が十分でない。また、カリキュラム改革や学習指導の改善が、個々の教員レベルに任せられており、組織全体としての責任意識が十分でない。

(イ)カリキュラム改革の問題

  1. カリキュラム改革については、各大学等において学部・学科等の教育理念・目標を明確にした上で、学生の多様な能力・適性にこたえ、学生が自らの関心や将来の進路希望等を踏まえ主体的に学習することや自主性の確立を促すことなど学生の視点に立った改革を進める必要がある。しかしながら、このような取組は十分とは言えない。
  2. 平成3年に大学設置基準等が大綱化されて以来、多くの大学等でいわゆる教養教育と専門教育の連携に配慮したカリキュラム改革が進められているが、大綱化に当たって本審議会としても教養教育の重要性を指摘し、各大学等の取組を期待したにもかかわらず、教養教育の取り扱い方についての学内の議論が十分でなく、教養教育の軽視が進んでいるのではないかとの危惧がある。さらに、学問分野の専門化や細分化に伴い、専攻分野の教育内容が狭い領域に限定されてしまう傾向や、分野を越えた教員や学生の交流が乏しいなどの問題点がある。

(ウ)教育方法等の問題

  1. 各大学等では、学生の多様化の状況を具体的に把握できていないことから、高等学校教育の改革等を踏まえたきめ細かな指導が不十分であるほか、少人数教育やセミナー形式の授業の導入など、具体的な教育方法の改善も必ずしも十分でない。
  2. 「1単位は教室内外の学習を合わせた標準45時間の学習を要する内容をもって構成する」という単位制度の趣旨が徹底せず、学生の教室外での学習を確保するための指導上の工夫が不足している。これに関連して、1年間あるいは1学期間における学生の履修科目の過剰登録という問題もある。
  3. 学部段階の教育の質の確保や学生の質の保証が社会から厳しく求められているにもかかわらず、現状では、学生の成績評価は担当教員の個々の主観的基準に基づく判定に任されている場合がほとんどである。

(エ)施設・設備と教育支援の問題

 教育機能の充実・向上のためには、必要な教室や図書館、学生生活のための施設や設備の整備、教員の確保など、様々な条件整備が不可欠であり、施設の老朽・狭隘化の問題をはじめ、これらの基盤的な条件について十分に配慮される必要がある。また、大学生を持つ家計の教育費負担が重くなっているが、この負担を軽減するための施策は十分とは言えない。

2)大学院の問題点

(ア)目的に沿った体系的カリキュラム編成等の問題

  1. 大学院の目的や役割が多様化しているにもかかわらず、研究者養成が中心であるという従来の意識があり、研究者養成、高度専門職業人養成それぞれの目的に沿った体系的なカリキュラムの整備が十分でない。
  2. 研究者養成の機能面では、早期に高度な研究を遂行することが重視される余り、狭い専門に閉じこもりがちで、豊かな学識などを培う教育の機会や場の配慮が十分でない。大学等の教員となることを意識した教育も行われていない。また、人文・社会系における博士学位の授与が進んでいない。このため、我が国の人文・社会系の大学院教育は、留学により学位取得を希望する外国人学生にとって魅力のないものとなってしまっている。  
  3. 高度専門職業人養成の機能面では、教育研究の内容や開設科目が必ずしも社会の要請等に合っていないほか、実践的教育の視点等が十分でない。また、土曜日開講など社会人にとって学習しやすい条件整備、実社会での経験の豊富な教員の採用等が十分ではない。
  4. 大学院の整備は進んできているが、なかには形式的な存在となっている大学院も見られる。

(イ)教員組織等の問題

 同質的な学生・教員の間では学問的刺激も弱く、新しい学問分野の創成も難しいが、我が国の大学等では、学生が大学等間を移動することはまだ少なく、また、教員についても、同一大学出身者が大半を占める学部・大学院があるなどの問題点がある。学内においても、異なる研究室間の対話や交流が十分でない。また、大学院独自の教員組織が弱く、量的拡大に伴う学生の急増により、大学院担当教員の負担の増加などの問題が生じている。

(ウ)社会との連携・交流、国際交流等の問題

  1. 社会と大学等の連携・交流が進みつつあるが、新しい需要への大学等の側の対応が必ずしも迅速ではない、人材交流や人材育成面での連携協力もまだ十分とは言えない、さらに、大学院を修了したことが社会で広く評価されるに至っていないなどの問題点がある。
  2. これからは国際的規模で大学等間の相互交流を深めることがますます重要となるが、現状では、学期の区分が外国とは異なることが一因となって学生や教員の異動が容易でないほか、教員の派遣や受入れ条件などの問題のため交流が円滑にできないという問題点もある。さらに、留学生の受入れ態勢の整備等も十分とは言えない。

(エ)学生の経済的自立等の問題

 学部学生に比べ経済的独立性が強い大学院学生に対する奨学金について、貸与人数や金額は逐年拡充されているものの、学生増等に追い付いていない。また、ティーチング・アシスタント制度、リサーチ・アシスタント制度、日本学術振興会特別研究員制度が整備充実されてきているが、安定して勉学に専念するには必ずしも十分とは言えない。

2 組織運営等の問題点

1)大学の組織運営の問題点

(ア)意思決定の仕組み等の問題

  1. 大学等の組織運営については、閉鎖的・硬直的であるとの批判がいまだに払拭されていない、意思決定や責任の主体が不明確である、変化への対応が遅いなどの問題がある。
  2. 具体的には、全学的な視点から大学像や将来構想などについての明確な構想を提示する調査・企画機能が十分でない、旧来の「学部自治」という名の下に学問の進歩や社会の変化に対応した改革の推進に支障が生じている、学部の壁を越えた自由な議論の場の形成や円滑な合意形成が進んでいない、外部の声を積極的に取り入れ改革につなげる仕組みが十分でない、改革状況の社会への積極的情報発信が行われていないなどが挙げられる。

(イ)教員人事等の問題

 教員人事についても、全学的視点に立った基準・方針の明確化とそれに沿った人事が適切に行われておらず、学部全体の方針と関連なく学科ごとに人事が行われるなど、学部全体として組織を構築しているという意識に欠けている。教員に占める女性教員の割合は近年少しずつ増加しているものの、全体として1割程度にしか達していない。また、学内における予算配分についても、特色ある教育研究を伸ばすような重点的配分が行われにくく、一律的で過度の平等主義的な考え方や慣行が優先されがちである。

2)評価システム等の問題点

 平成3年以後、各大学等で自己点検・評価への取組が進み、約9割の大学で実施されているが、一部には、形式的な評価に陥り、教育研究活動や組織運営の改善に十分結び付いていないという批判もある。また、第三者評価など、より透明性の高い評価システムが十分でない。さらに、特色ある教育研究の取組等を更に伸ばすような資源の重点的配分等が十分でないほか、教育研究水準の向上を目指し、切磋琢磨する状況がない。

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