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21世紀の大学像と今後の改革方策について ―競争的環境の中で個性が輝く大学― (答申要旨) (平成10年10月26日 大学審議会)

平成10年10月26日
大学審議会

目次

はじめに

第1章 21世紀初頭の社会状況と大学像
 1 21世紀初頭の社会状況の展望と高等教育
 2 高等教育改革進展の現状と課題
 3 21世紀初頭の大学像

第2章 大学の個性化を目指す改革方策
 1 課題探求能力の育成 ―教育研究の質の向上―
 2 教育研究システムの柔構造化 ―大学の自律性の確保―
 3 責任ある意思決定と実行 -組織運営体制の整備-
 4 多元的な評価システムの確立 -大学の個性化と教育研究の不断の改善-
 5 高等教育改革を進めるための基盤の確立等

はじめに

1 高等教育を取り巻く21世紀初頭における社会状況は現状から更に大きく転換し、人類にとって真に豊かな未来の創造、科学と人類や社会さらにそれらを取り巻く自然との調和ある発展等を図るため、多様で新しい価値観や文明観の提示等が強く求められるようになると考えられる。このため、その知的活動によって社会をリードし社会の発展を支えていくという重要な役割を担う大学等が、知識の量だけではなくより幅広い視点から「知」を総合的に捉え直していくとともに、知的活動の一層の強化のための高等教育の構造改革を進めることが強く求められる時代―「知」の再構築が求められる時代―となっていくものと考えられる。
 大学等においては、この10年間において、本審議会答申等を受けて改革が進められ成果をあげてきているが、このような21世紀初頭において、その期待される役割を十分に果たすことができるよう更に大胆な改革を速やかに推進していくことが強く求められている。

2 本審議会は、平成9年10月に文部大臣から「21世紀の大学像と今後の改革方策について」諮問を受けて以来、上記のような認識に立って、大学等の多様化・個性化の推進、国際的な通用性の向上などの視点を踏まえつつ、大学等の自主性・自律性を高めるシステムの柔構造化等の一層の推進と、そのための基礎となる基本的枠組み等についての法令上の明確化を含めた整備を図ることを基本として審議を行ってきた。なお、総合的な審議を行うため、新たに基本構想部会を発足させ、大学院部会、大学教育部会、組織運営部会及びマルチメディア教育部会の各部会の密接な連携の下に、関係者からのヒアリングを行うなど精力的な調査審議を重ねた。
 平成10年6月30日に「中間まとめ」をとりまとめ公表した後、「中間まとめ」に対する各界の意見を踏まえつつ、総会及び各部会において更に審議を深めてきたが、ここに「21世紀の大学像と今後の改革方策について」結論を得たので、答申を行うものである。

3 答申は、第1章で、高等教育を取り巻く21世紀初頭の社会状況等を展望し、その中での我が国の発展の方向と高等教育の役割について述べている。それを踏まえつつ、これまでの高等教育改革進展の現状と今後の課題を整理した上で、21世紀を迎えるに当たり今何が大学等に求められているか、今何をなすべきかという視点から、高等教育機関の多様化・個性化の必要性や規模の考え方、今後の大学改革の基本理念について述べている。具体的には、1)課題探求能力の育成を目指した教育研究の質の向上、2)教育研究システムの柔構造化による大学の自律性の確保、及びそれを支える3)責任ある意思決定と実行を目指した組織運営体制の整備、さらにこうした大学の取組についての4)多元的な評価システムの確立による大学の個性化と教育研究の不断の改善、という四つの基本理念を提示し、その理念に沿って総合的かつ具体的な改革を実施していく必要があることを提言している。
 第2章では、第1章で提言した四つの基本理念に沿った具体的な改革方策を提言するとともに、それらの改革を進めるための基盤の確立等について提言している。ここで提言した改革の諸方策は一体的に推進されることが必要であるが、個々の具体的方策には、すべての大学等において共通的に取り組んでいくことが必要な事項のほか、各大学等がその理念・目標に沿って自主的に判断することが適切な事項も含まれている。提言した改革方策が適切かつ総合的に推進されることにより、各大学等が、世界的水準の教育研究の展開を目指して不断の向上を図り、切磋琢磨する状況が創出され、それぞれが“個性が輝く”大学等として一層発展していくことを願うものである。

4 この答申で提言した改革実現のためには、大学等の関係者の努力はもとより、地域社会、産業界等、さらには国民各層の幅広い理解と支援が不可欠であり、広く関係者において、改革への支援が一層積極的かつ具体的に展開されることを強く期待したい。また、特に大学等においては公共的機関としてのその基本的な性格に改めて思いを致し、開かれた大学運営、社会的責任の履行にこれまで以上に努力していくことが求められる。さらに、国においては、各大学等における自己改革の取組を積極的に支援していくため、その基盤整備を積極的に推進する必要がある。人々の知的活動・創造力が最大の資源である我が国にとって、優れた人材の養成と独創的な学術研究の推進等の役割を担う大学等における教育研究の振興は、今後の発展に欠くことのできない未来への先行投資である。このことを踏まえ、高等教育に対する公的支出を先進諸国並に近づけていくよう最大限の努力を強く期待するものである。
 なお、平成10年1月に、文部大臣から学術審議会に対して「科学技術創造立国を目指す我が国の学術研究の総合的推進について」諮問がなされ、現在、審議が行われているところであり、本答申とともに、学術審議会の審議結果も踏まえ、大学等における教育研究の総合的な推進が図られることを期待したい。

第1章 21世紀初頭の社会状況と大学像

1 21世紀初頭の社会状況の展望と高等教育

(1)高等教育を取り巻く21世紀初頭の社会状況の展望等 ―「知」の再構築が求められる時代―

● 21世紀初頭における社会状況をどのように展望するかは、様々な変化や要素  を考える必要があり一概に言い表すことは難しいが、1)一層流動的で複雑化した不透明な時代、2)地球規模での協調・共生と一方では国際競争力の強化が求められる時代を迎える中で、我が国では3)少子高齢化が進行し生産年齢人口が大幅に減少すると同時に、産業構造や雇用形態に大きな変化が起こり、4)職業人の再学習をはじめ、国民の間に生涯学習需要が増大する、他方、5)豊かな未来を拓く原動力となる学術研究の進歩が加速すると同時に、学際化、総合化の必要性が生じるなど、高等教育を取り巻く状況が大きく転換し、大学等の高等教育機関における「知」の再構築が強く求められる時代となっていくものと考えられる。また、産業や雇用の空洞化、少子高齢化による経済の潜在的な成長力の低下、高齢化に伴う社会保障給付の増大などにより、当面は、引き続き厳しい財政状況が続くことが予想される。

(2)我が国の発展と高等教育

● 人類全体にとって一層困難な課題が生じてくると考えられる21世紀初頭において、我が国が世界と協調しつつ、そのより良い解決に向け貢献していくためには、大学をはじめとする多様な高等教育機関のシステム全体として、その知的活動によって社会をリードし社会の発展を支えていくという重要な役割を十分に果たしていくことが不可欠である。
 大学等の高等教育機関がその求められる役割を十分に果たしてこそ、人々の知的活動・創造力が最大の資源である我が国が、21世紀の国際社会において、知的リーダーシップを発揮できる国、自ら独創的な知的資産を創造し新領域を開拓していくことができる国、真に豊かな社会が実現できる国として、国際貢献を果たしつつ発展していくことが可能となる。

2 高等教育改革進展の現状と課題

● 高等教育改革については、本審議会の答申等を踏まえ、教育研究の高度化・多様化・個性化、組織運営の活性化の方針の下に、この10年間において諸制度の大綱化、弾力化等が図られるとともに、高等教育関係者の間に改革の必要性についての意識が覚醒され、改革に向けての具体的な取組が着実に進められてきている。過去10年の間に高等教育全体として改革の動きが始まったことは大きな前進であり高く評価されるべきであるが、その進展の度合いは個々の大学等により様々であり改善すべき問題点も依然として少なくない。
 高等教育関係者は、大学等に対する社会の側からの様々な批判はいまだ完全には払拭されてはいないという現状を重く受け止めつつ、来るべき21世紀初頭の社会状況の展望等の上に立って、我が国の大学等が期待される役割を果たし世界的に評価されるものとなるようにするため、今なすべきことを明確にし、更に大胆かつ積極的に改革を推進していく必要がある。

3 21世紀初頭の大学像

● 人類の真に豊かな未来の創造に向けて「知」の再構築が求められる21世紀初頭において、我が国の高等教育が世界的水準の教育研究を展開し、その期待される役割を十分に果たしていくためには、この10年間における改革進展の現状を踏まえつつ、更に高等教育改革を進めていくことが必要である。
 このため、高等教育機関全体で社会の多様な期待や要請等に適切にこたえていけるよう各大学等の自律性に基づく多様化・個性化を進めるとともに、卒業時における質の確保のための取組の抜本的充実、大学院の役割の増大に対応する更なる整備充実、国際的通用性・共通性の向上、大学等の社会的責任等を重視しつつ、今後、下記(3)に述べる大学改革の四つの基本理念に沿って、教育研究の見直し等を大胆に進め、新しい高等教育システムを構築していかなければならない。これにより、各大学等が教育研究の質の不断の維持向上を図り、切磋琢磨する状況が創出され、それぞれが個性が輝く大学等として発展していくことが求められる。

(1)高等教育機関の多様な展開

● 今後、社会・経済の更なる高度化・複雑化や国際化の進展に伴い、教育研究の質の高度化及び人材養成に対する要請等の多様化への適切な対応が一層求められていく。また、進学率の上昇や生涯学習需要の高まり等に伴い、より幅広い層の国民に対し、それぞれの関心や意欲に応じてその能力を十分に伸ばしていくための多様かつ充実した教育機会の提供が一層重要となっていく。このような高等教育に対する質の高度化への要請や社会の需要の一層の多様化等に適切にこたえるとともに、長期的視点に立った教育研究の展開によって社会をリードしていくという役割を果たすためには、大学・大学院、短期大学、高等専門学校、専門学校が、それぞれの理念・目標を明確にし、それぞれの特色を生かしつつ多様化・個性化を進め、国公私立の各高等教育機関全体で社会の多様な要請等にこたえていく必要がある。

1)各高等教育機関の多様化・個性化

● 高等教育に対する社会の多様な要請等に適切にこたえていくためには、大学・大学院、短期大学、高等専門学校、専門学校という各学校種ごとにその求められる役割を果たしていくのみならず、各学校種の中においても、個々の学校がそれぞれの理念・目標に基づき様々な方向に展開しつつ、更にその中での多様化・個性化を進めていかなければならない。
 大学は、それぞれの理念・目標に基づき、総合的な教養教育の提供を重視する大学、専門的な職業能力の育成に力点を置く大学、地域社会への生涯学習機会の提供に力を注ぐ大学、最先端の研究を志向する大学、また、学部中心の大学から大学院中心の大学など、それぞれの目指す方向の中で多様化・個性化を図りつつ発展していくことが重要である。
 短期大学は、高い教養を培うとともに職業における専門的能力を育成する教育機関として多様化・個性化を図り発展していくことが期待されるが、制度上の位置付けなどについて今後検討が必要との意見もあることから、更なる本審議会での検討が必要である。
 高等専門学校は、発想力豊かな実践的技術者を育成する教育機関としての機能を引き続き果たしながら、多様化・個性化を図っていくことが期待されるが、教育の在り方などについて今後検討が必要との意見もあることから、更なる本審議会での検討が必要である。
 専門学校は、実際的な知識・技術等を習得するための実践的な教育機関として定着しており、今後とも社会の変化に機敏に対応しながら、主に産業社会の求める人材の養成機関として一層の多様化・個性化を進め、更に発展していくことが期待される。

2)国公私立大学の特色ある発展

● 国公私立大学がそれぞれに期待される機能を発揮し特色ある教育研究を展開していくことは、21世紀初頭における社会の多様な要請等に国公私立大学全体で適切にこたえていくというだけでなく、高等教育全体の活性化の上からも必要である。
 国立大学については、国費により支えられているという安定性や国の判断で定員管理が可能であるなどの特性を踏まえ、その社会的責任として、計画的な人材養成の実施など政策目標の実現、社会的な需要は少ないが重要な学問分野の継承、先導的・実験的な教育研究の実施、各地域特有の課題に応じた教育研究とその解決への貢献などの機能を果たすべきことが期待されている。このような機能を十分果たしていない国立大学については、適切な評価に基づき大学の実情に応じた改組転換を検討する必要も出てくると考えられる。
 公立大学については、当該自治体における設置目的に沿って、それぞれの地域の更なる向上発展への貢献のため、地域社会の様々な要請等を踏まえつつ、より一層教育研究機能の強化に努め特色ある教育研究を実施していくことが期待されている。
 私立大学については、各大学がそれぞれの建学の精神にのっとった自主的な運営により、社会の多様な要請等にこたえつつ、より一層教育研究機能の強化に努め特色ある教育研究を実施していくことが期待されている。

(2)高等教育規模の展望

1)大学(学部)、短期大学の規模

● 社会の高度化・複雑化・専門化の進展等に応じ、高度な課題探求能力や専門的知識等を有することが社会生活を送る上で広く求められるようになっていく。また、少子化の進行に伴い若年労働人口が減少していく中で我が国が引き続き発展していくためには、社会の各分野で活躍できる質の高い人材の供給を一定規模確保することが必要である。高等教育の正確な国際比較は困難であるが、概観すれば欧米諸国に比較して日本の大学・短期大学の規模は決して大きいとは言えない。以上の状況を総合的に考えると、平成12年度から16年度までの期間に大学及び短期大学の臨時的定員の半数以上の解消を図りつつ、18歳人口が120万人規模となる平成21年度以降最大70万人程度(平成8年度入学者数から約10万人の減)の入学者数を想定することは適当と考えられる。この場合、進学率は大きく上昇すると予測されている。
 なお、進学率の上昇に伴い学生の多様化が進行していくことにかんがみ、教育機能の強化とともに、より厳格な成績評価の実施など卒業時における学生の質を確保するための取組を抜本的に充実する必要がある。

● 18歳人口の減少を踏まえ、大学等の新増設については本審議会答申「平成12年度以降の高等教育の将来構想について」において示したとおり抑制的に対応することとするが、我が国の高等教育の活力を維持し時代の変化に即応するために必要性の極めて高いものについては認めていくことが適当である。

2)大学院の拡充

● これからの大学院には、1)学術研究の高度化と優れた研究者の養成機能の強化、2)高度専門職業人の養成機能、社会人の再学習機能の強化、3)教育研究を通じた国際貢献が特に求められており、いずれの面からも大学院の更なる整備充実が必要である。
 平成22年(西暦2010年)における大学院の在学者数は25万人程度になると推計されるが、今後の制度改正や産業構造の変化などを考慮すると全体としてはそれ以上の規模に拡大していくと見込まれる。国はこの規模を念頭に置きつつ、特に大学院修士課程における高度専門職業人の養成に留意し、量的な拡大を図るとともに、大学院全体の質の維持向上と教育研究条件の充実のための措置を講じる必要がある。
 なお、国立大学については、今後大学院の規模の拡大に重点を置く必要があるが、関連して状況に応じ学部段階の規模の縮小も検討していくことが必要である。

(3)大学改革の基本理念 ―個性が輝く大学―

● 「知」の再構築が求められる21世紀初頭において、我が国の高等教育が世界的水準の教育研究を展開し、その求められる役割を十分に果たしていくためには、1)課題探求能力の育成を目指した教育研究の質の向上、2)教育研究システムの柔構造化による大学の自律性の確保、及びそれを支える3)責任ある意思決定と実行を目指した組織運営体制の整備、さらにこうした取組についての4)多元的な評価システムの確立による大学の個性化と教育研究の不断の改善、の四つの基本理念に沿って現行制度を大胆に見直し、各大学が更なる向上を目指して切磋琢磨し発展していくことのできる新しい高等教育システムへ転換していかなければならない。その際、同時に、国際的通用性・共通性を確保しつつ大学等の自律性に基づく多様化・個性化を推進するとともに、公共的機関である大学等が社会的責任を果たしていくことが重要である。
 なお、個々の改革方策には、すべての大学等が取り組むことが必要なもののほか各大学等の自主的判断によるのが適切なものも含まれており、各大学等はその理念・目標を踏まえつつ適切かつ総合的に改革を推進していく必要がある。

1)課題探求能力の育成 ―教育研究の質の向上―

● 21世紀初頭の社会状況の展望等を踏まえると、今後、高等教育においては、「自ら学び、自ら考える力」の育成を目指している初等中等段階の教育を基礎とし、「主体的に変化に対応し、自ら将来の課題を探求し、その課題に対して幅広い視野から柔軟かつ総合的な判断を下すことのできる力」(課題探求能力)の育成を重視することが求められる。また、学部教育では、教養教育及び専門分野の基礎・基本を重視し専門的素養のある人材として活躍できる基礎的能力等を培うこと、専門性の一層の向上は大学院で行うことを基本として考えていくことが重要となる。さらに、高等教育の普及等に伴う学生の一層の多様化等が進行していくことを踏まえ、卒業時における質の確保、国際的通用性の向上等を重視しつつ、教育研究の質の向上と高度化に一層努めることが必要である。

2)教育研究システムの柔構造化  ―大学の自律性の確保―

● 高等教育の普及等に伴う学生及び学習需要の多様化等の一層の進行、社会の更なる複雑化と変化の一層の加速等が予想される中で、高等教育がその期待に適切にこたえていくためには、学生の主体的学習意欲及びその学習成果を積極的に評価し得るような制度、大学が自律性を確保しながら一層積極的・機動的に社会の要請等に対応できるような制度、国際的な通用性の高い制度へと、教育研究システムをより柔構造化していくことが必要である。

3)責任ある意思決定と実行 ―組織運営体制の整備―

● 上記1)及び2)に述べた取組を推進していくためには、各大学が自らの主体的判断と責任において、社会の期待にこたえ得る効果的な大学運営を行っていくことが求められる。そのためには、学長のリーダーシップの下に、適時適切な意思決定を行い実行できる組織運営システムが確立されなければならない。

4)多元的な評価システムの確立  ―大学の個性化と教育研究の不断の改善―

● 以上の1)から3)についての取組を実効あるものとするためには、各大学が自己点検・評価の恒常的実施とその結果を踏まえた教育研究の不断の改善を図っていくことはもとより、さらに、より透明性の高い第三者評価を実施し、その評価結果を大学の教育研究活動の一層の改善に反映させるなど、各大学の個性を更に伸長し魅力あるものとしていくための多元的な評価システムを速やかに確立することが不可欠である。

第2章 大学の個性化を目指す改革方策

1 課題探求能力の育成 ―教育研究の質の向上―

● 今後、高等教育の普及が一層進むことを踏まえると、卒業時における質の確保を重視したシステムへの転換が必要である。このため、学部段階においては、初等中等教育における自ら学び、自ら考える力の育成を基礎に「課題探求能力の育成」を重視するとともに、専門的素養のある人材として活躍できる基礎的能力等を培うことを基本として、教育内容の再検討を行い、あわせて教員の意識改革、責任ある授業運営と厳格な成績評価の実施などを推進するための具体的仕組みを整備する必要がある。
 また、今後、専門性の向上は大学院で行うことを基本として考えていくことが重要となることを踏まえ、大学院については、その一層の高度化と機能分化を図っていく観点から、制度上の位置付けの明確化を図るとともに、目的に応じた教育内容・方法等の整備、国際的に評価される卓越した教育研究拠点を形成していくためのシステムの導入等を図る必要がある。

(1)学部教育の再構築

● 今後、高等学校教育における教育課程の基準の改善、選択制の拡大等が進むとともに、大学進学率が一層上昇する中で、進学前に受けた高等学校教育の内容も多様化し、さらに社会人や留学生の増加が進み、興味・関心、履修歴などあらゆる面で多様な学生が大学に進学してくることが予想される。また、時代の変化や社会の要請等に対応した教育研究の展開が一層強く求められるようになっていく。これまでの本審議会答申等を踏まえ、カリキュラム改革の実施、個々の授業科目ごとの詳細な授業計画としてのシラバスの作成・公表など教育の質の確保のための取組が進められているが、いまだに大学教育への批判を払拭するには至っていない現状を重く受け止めつつ、21世紀に向けさらに改革を推進する必要がある。

1)教育内容の在り方 ―課題探求能力の育成―

1)教養教育の重視、教養教育と専門教育の有機的連携の確保
● 社会の高度化・複雑化等が進む中で、「主体的に変化に対応し、自ら将来の課題を探求し、その課題に対して幅広い視野から柔軟かつ総合的な判断を下すことのできる力」(課題探求能力)の育成が重要であるという観点に立ち、「学問のすそ野を広げ、様々な角度から物事を見ることができる能力や、自主的・総合的に考え、的確に判断する能力、豊かな人間性を養い、自分の知識や人生を社会との関係で位置付けることのできる人材を育てる」という教養教育の理念・目標の実現のため、授業方法やカリキュラム等の一層の工夫・改善、全教員の意識改革と全学的な実施・運営体制を整備する必要がある。
 この際、専門教育においても教養教育の理念・目標を踏まえた教育を展開することにより、教養教育と専門教育の有機的連携の確保を図っていくことが重要であることを十分に認識しなければならない。

2)専門教育の見直し
● 学部段階の専門教育においては、細分化した狭い分野に限定された知識やそれまでの学問研究の成果を単にそのまま知識として教えることに終始するのではなく、基礎・基本を重視しつつ、関連諸科学との関係、学問と個人の人生及び社会との関係を教えることなどを通じて、学生が主体的に課題を探求し解決するための基礎となる能力を育成するよう配慮し工夫することが必要である。

3)学部教育と高等学校教育との関係
● 高等学校教育では、生徒の個性を伸ばし進路への自覚を深める等の観点から、今後、選択制の拡大、教育内容の厳選等が更に進められる方向にある。各大学は、大学に入学してくる学生の履修歴の多様化が一層進むことに対応して、入学者選抜において大学教育に必要な科目については高等学校での履修を求めることが考えられる。さらに、入学後に大学教育の基礎を教えるなどの工夫を通じて、後期中等教育から高等教育への移行を円滑に進めることが強く求められる。
 大学入試の在り方については、知識の量だけでなく大学での学習に対する意欲・熱意や入学後の能力の伸長も見据え、多様な個性や能力を適切に評価する必要がある。このため、高等学校における学習指導要領の改訂や学部教育の改善の方向を踏まえ、また、高等学校と大学との接続の在り方についての今後の幅広い検討を視野に入れ、具体的な改善方策を審議する。
 また、大学レベルの教育を受けるのに十分な能力と意欲を有する高等学校の生徒に対し、大学レベルの高度な教育・研究に触れる機会をより広く提供し、生徒の興味や関心を高めその能力の伸長を図っていくことは有意義である。このため、各大学において、大学教育を受けるのに十分な能力と意欲を有する高等学校段階の生徒に対し、大学レベルの教育に触れる機会を広く提供することが望ましい。

4)国際舞台で活躍できる能力の育成等
● 外国語教育の充実や海外留学の推進等を進めると同時に、我が国の歴史や文化への理解、国際社会の直面する重要課題への認識を深めたり、討論、口頭による意見発表や報告、プレゼンテーション等の訓練を通じて自らの主張を明確に表現する能力を育成するなど、国際舞台で活躍できる人材の養成を図ることが重要である。

2)教育方法等の改善 ―責任ある授業運営と厳格な成績評価の実施―

1)授業の設計と教員の教育責任
● 我が国の大学制度は単位制度を基本としており、単位制度の実質化は教育方法の改善にとって重要な課題である。現在の単位制度は、教室における授業と事前・事後の準備学習・復習を合わせて単位を授与するものであり、学生の自主的な学習が求められる。このため、教室における授業だけでなく、授業の前提として読んでおくべき文献を指示するなど学生が事前に行う準備学習・復習についても指示を与えることが教員の務めである。このことについて、大学当局はもとより各教員が十分自覚して授業の設計と学習指導を行うことが必要である。同時に、学生の側においても主体的に学習に取り組むことが求められる。

2)成績評価基準の明示と厳格な成績評価の実施
● 大学の社会的責任として、学生の卒業時における質の確保を図るため、教員は学生に対してあらかじめ各授業における学習目標や目標達成のための授業の方法及び計画とともに、成績評価基準を明示した上で、厳格な成績評価を実施すべきである。なお、厳格な成績評価の実施の結果、留年者による収容定員超過が生ずる可能性があるが、こうした定員超過については大学の設置認可や私学助成の際に弾力的に取り扱うことが適当である。

3)履修科目登録の上限設定と指導
● 学生の履修科目の過剰登録を防ぐことを通じて、教室における授業と学生の教室外学習を合わせた充実した授業展開を可能とし、少数の授業科目を実質的に学習できるようにすることにより、単位制度の実質化を図る必要がある。このため学生が1年間あるいは1学期間に履修科目登録できる単位数の上限を各大学が定めるものとする旨を大学設置基準において明確にする必要がある。また、個々の学生に対して履修指導を行う指導教員等を置くことも重要である。

4)教員の教育内容・授業方法の改善
● 各大学は、個々の教員の教育内容・方法の改善のため、全学的にあるいは学部・学科全体で、それぞれの大学等の理念・目標や教育内容・方法についての組織的な研究・研修(ファカルティ・ディベロップメント)の実施に努めるものとする旨を大学設置基準において明確にすることが必要である。
 なお、個々の授業の質の向上を図るに当たっては、シラバスの充実等の取組が重要である。

5)教育活動の評価の実施
● 教育の質の向上のため、自己点検・評価や学生による授業評価の実施など様々な機会を通じて、継続的に大学の組織的な教育活動に対する評価及び個々の教員の教育活動に対する評価の両面から評価を行うことが重要である。その際、教室における授業及び教室外の準備学習等の指示、成績評価などの具体的実施状況を評価の対象とすることにより、単位制度の実質化と教育内容の充実を図ることが重要である。
 また、教育活動の在り方については、卒業生が働いている職場など外部の意見も聞き、それを踏まえて更なる改善につなげていくことが有効である。

6)学生の就職・採用活動に当たっての大学及び産業界の取組
● 大学と産業界は、学生の就職・採用活動が秩序ある形で行われるよう、適時、情報交換等を行うとともに、それぞれ適切な取組を進めることが重要である。大学は、学生の卒業時における質の確保を図るため、教育内容及び教育方法の改善を進め責任ある授業運営を行うとともに、学生が自己の責任において主体的に就職活動を行えるよう就職指導の充実に努める必要がある。また、産業界においては、大学の教育活動を尊重し、可能な限り休日や祝日等に採用活動を実施するとともに、過度に早期の採用活動を行わないよう期待する。さらに、採用に当たっては、学校歴ではなく学生の大学における学習歴を一層重視した人物・能力本位の採用の取組が更に進められるとともに、男女雇用機会均等法に沿い、女子学生の雇用の機会均等が図られることを期待する。

(2)大学院の教育研究の高度化・多様化

● 大学院は、あらゆる学問分野にわたり基礎研究を中心とした学術研究の推進とともに、研究者の養成及び高度の専門的能力を有する人材の養成という役割を担うものであり、将来にわたって我が国の学術研究水準の向上や社会・経済・文化の発展を図る上で極めて重要な使命を負っている。21世紀初頭の社会状況の展望等を踏まえると、これからの社会が特に必要としているのは、細分化された個々の領域における研究とそれらを統合・再編成した総合的な学問とのバランスのとれた発展であり、学術研究の著しい進展や社会・経済の変化に対応できる幅の広い視野と総合的な判断力を備えた人材の養成である。社会の高度化・複雑化が進む中で、主体的に変化に対応し、自ら将来の課題を探求し、その課題に対して幅広い視野から柔軟かつ総合的な判断を下して解決する能力を育成することは、研究者の養成あるいは高度専門職業人の養成や社会人の再教育など、いずれの方向性を目指すにせよ大学院においても等しく強く求められるところであり、教育研究の高度化・多様化を更に推進していかなければならない。

1)大学院の組織編制の在り方

1)大学院の制度上の位置付けの明確化
● 大学においては、学部が教育研究上の基本的な組織とされており、学部を基礎としている研究科については、その運営を学部に依存している。今後、大学院がより一層充実した教育研究を実施していくようにするためには、学部を基礎としている研究科にも、大学が運営上の必要性等を判断した上、研究科のカリキュラムや学生の入退学の決定など大学院固有の事項について独自の立場から審議を行うため、研究科委員会に代えて、研究科教授会を置き得ることを明確にする必要がある。
 大学の多様な組織形態を許容していく観点から、大学院の教育研究活動の比重が高まり、これが中心的役割を果たすに至っている大学においては、当該大学の教育研究目的を効果的に達成する責任ある組織の体制を整備するため、研究科と学部とを同等の基本的な組織として、当該学部とともに当該研究科に教員を所属させ、研究科教授会を置くのみならず、人事についても審議を行うとともに、全学的な運営に関与し得るような仕組みを法令上明確化する必要がある。
 また、学部や研究科を置きつつも学系と同様に研究上の目的から編制される組織を設ける方式など、多様な組織形態を採り得る制度的枠組みを考慮していく必要がある。

2)一定規模以上の学生を擁する大学院の専任教員等

● 大学院の多様な発展を可能にしかつ各大学院が質的にも充実した教育研究を実施していくためには、一定の規模以上の学生を擁する大学院にあっては大学院専任の教員や大学院専用の施設・設備を備えるべきことを大学院設置基準上明確にする必要がある。

2)大学院の課程の目的・役割の明確化
● 大学院は、高度の専門的知識・能力を有する人材の養成への需要や、職業上必要な新しい知識・技術を求める者等の要請に適切に対応していくことがより一層求められている。
 大学院は、それぞれの課程の目的・役割を明確化していくことが課題となっており、とりわけ、修士課程にあっては、研究者養成の一段階又は高度専門職業人の養成などその役割の方向性を明らかにし、それに即して、学部教育で培われた専門的素養のある人材として活躍できる基礎的能力に立ち、専門性を一層向上させていくことが重要である。また、博士課程にあっては、基礎的・先駆的な学術研究の推進、世界的な学術研究の拠点、優れた研究者の養成などの中核的機関としての基本的な役割が極めて重要である。
 今後の大学院の在り方としては、その教育研究水準の質的向上とあいまって、全体として研究者養成に加え、高度専門職業人養成の役割をもより重視した、多様で活力あるシステムを目指すことが重要である。
 そのためには、各大学が修士課程と博士課程を別々に設置する並列方式を採用しやすくなるように、設置審査の取扱いを弾力化することが適当である。

3)高度専門職業人養成に特化した実践的教育を行う大学院の設置促進
● 国際的にも社会の各分野においても指導的な役割を担う高度専門職業人の養成に対する期待にこたえ、大学院修士課程は、その目的に即した教育研究体制、教育内容・方法等の整備を図り、その機能を一層強化していくことが急務となっている。

● そのため、これまでの高度専門職業人の養成の充実と併せて、これを更に進め、特定の職業等に従事するのに必要な高度の専門的知識・能力の育成に特化した実践的な教育を行う大学院修士課程の設置を促進することとし、制度面での所要の整備を行い教育研究水準の向上を図っていく必要がある。
 高度専門職業人の養成に特化した大学院修士課程は、カリキュラム、教員の資格及び教員組織、修了要件などについて、大学院設置基準等の上でもこれまでの修士課程とは区別して扱い、経営管理、法律実務、ファイナンス、国際開発・協力、公共政策、公衆衛生などの分野においてその設置が期待される。
 この場合の学位については、国際的な通用性も考慮し、修士とすることが適当である。なお、修士(「専攻分野」)と表記する際の専攻分野の名称について各大学において工夫する必要がある。

● なお、大学院の修了と資格制度との関係では、現在、法曹養成制度の改革が進行中であり、今後、法曹養成のための専門教育の課程を修了した者に法曹への道が円滑に開ける仕組み(例えばロースクール構想など)について広く関係者の間で検討していく必要がある。
 さらに、幅広い分野の学部の卒業者を対象として高度専門職業人の養成を目的とする新しい形態の大学院の在り方等についても、今後関係者の間で検討が行われることが必要である。

4)卓越した教育研究拠点としての大学院の形成、支援
● 世界の第一線に伍した水準の高い教育研究の積極的な展開、我が国の社会や国際社会の期待にこたえ様々な分野で積極的に活躍する優れた人材の養成の観点から、卓越した教育研究拠点としての大学院の形成、支援を図っていく必要がある。そのためには、専攻(分野によっては研究科)を単位とし、客観的で公正な評価に基づき、一定期間、研究費や施設・設備費等の資源を集中的・重点的に配分することが必要である。

2 教育研究システムの柔構造化 ―大学の自律性の確保―

● 大学における履修・修了のシステムについて、従来の過度の平等主義を改め、学生の能力・適性に応じ学生の主体的学習意欲及びその学習成果を積極的に評価し得る柔軟で弾力的なシステムに転換していくことが必要である。また、大学が教育研究上の要請にこたえて自律的かつ機動的に運営されるためには、大学自らが定めた教育研究目標をその主体的な取組によって実現し得るよう、各種制度の柔軟化を図ることが必要である。さらに、地域社会や産業界との積極的な連携・交流、国際交流推進のためのシステム整備が求められる。

● なお、(1)多様な学習需要に対応する柔軟・弾力化において提言する様々な制度の導入等については、各大学において、その理念・目標に沿って自主的に判断することが必要である。

(1)多様な学習需要に対応する柔軟化・弾力化 ―学生の主体的学習意欲とその成果の積極的評価―

1)学部段階

● 学生が意欲的に学習に取り組み自らの関心や卒業後の進路の希望等を踏まえて主体的に履修内容等を選択できるよう、制度の一層の柔軟化を進め、各大学の創意工夫の可能性をできるだけ広げておくことが必要である。
 なお、高等専門学校については、後期中等教育段階の教育を含み、学年制を採用していることから、以下の1)~3)につき大学に準じた取扱いを行うことは適当でないと考えられる。

1)4年未満の在学で学部を卒業できる例外措置の導入
● 現在、優れた成績を修めた者については、学部3年修了時から大学院に進学する道が開かれているが、さらに、我が国の学位水準の国際的通用性を維持するため大学の修業年限は原則4年としつつ、例外措置として、早期卒業の希望を持ち厳格な成績評価の下で通常の学生よりも多くの授業科目を優れた成績で修得できる者については、大学が適切と判断した場合には3年以上4年未満の在学での卒業を認めることができるよう法改正を行うことが必要である。

2)秋季(9月)入学の拡大等
● 学年暦の異なる諸外国への留学及び我が国への留学生の受入れを促進するため、また、秋季(9月)入学をより柔軟に導入できるようにするため、学年の途中における入学に関する学校教育法施行規則の規定を改正するとともに、学習効果の高いセメスター制を、これまで以上に積極的に推進していく必要がある。

3)単位互換及び大学以外の教育施設等における学修の単位認定の拡大
● 単位互換及び大学以外の教育施設等における学修について単位認定できる単位数の上限については、現在の入学前と入学後それぞれについて30単位とされている取扱いを改め、今後は入学前、入学後にかかわらず合わせて60単位に拡大するよう大学設置基準を改正することが必要である。また、大学以外の教育施設等における学修を自大学の単位としてみなし得る範囲をより拡大することが必要である。併せて、「遠隔授業」によることができる単位数の上限も30単位から60単位に拡大するよう大学設置基準を改正することが必要である。

4)単位累積加算制度の創設の検討
● 単位累積加算制度について、その実施に向けて学位授与にふさわしい履修の体系性の確保等に関し、学位授与機構における調査研究の成果を踏まえ、本審議会において検討を続けることが適当である。

2)大学院段階

● 職業を持つ社会人の再学習の需要にこたえるため、勤務の都合や通学の便宜など社会人の多様な状況に柔軟に対応し得るよう修士課程の修業年限について一層の弾力化を進めることが適当である。

1)修士課程1年制コースの制度化
● 社会人の大学院修士課程への積極的な受入れを図っていくため、各大学の選択により、通常の教育方法に加え週末や夏休み期間中などにおいて集中して授業又は研究指導を行うなどの履修形態の工夫や、一定の職業経験の成果を生かした特定課題研究・修士論文の作成の指導などのカリキュラムの工夫により、1年以上2年未満の修業年限でも修了することが可能なコースを設けることができるような仕組みを導入し、大学院で高度な知識・能力を身に付け社会の各分野で指導的な役割を担う人材の養成に資することが必要である。
 その際、導入の趣旨から、社会人を対象とすることを原則とすること、及び現行の修士の学位を授与するにふさわしい水準を確保することが必要である。

2)修士課程長期在学コースの制度化
● 社会人学生等の多様な需要にこたえるため、あらかじめ標準修業年限を超える期間を在学予定期間として在学できる長期在学コースを各大学院の運用により設けることができることを明確にする必要がある。

(2)大学の主体的・機動的な取組を可能とするための措置  

● 大学が、教育研究上の要請、あるいは社会的な要請にこたえて、自律的かつ機動的に運営されるためには、大学の教育研究組織の柔軟な設計、行財政の弾力性の向上などを進め、大学自らが定めた教育研究目標を自らの主体的な取組によって実現し得る道を拡大することが重要である。

1)教育研究組織の柔軟な設計

● 教育研究の進展や社会的需要にこたえて教育研究活動を効果的に進めるため、国立大学については、講座・学科目の編制について各大学の柔軟な設計や機動的な対応を可能とする方向で検討することが適当である。
 また、公私立大学については、社会等のニーズに迅速に対応できるよう、同一設置者内の大学・短期大学全体の定員の増加を伴わない範囲の、収容定員の変更及び学部の学科の設置審査について、教育課程の審査を省略するなど大幅に審査を弾力化し、各大学が自らの判断と責任により、教育研究組織をより柔軟に設計できるようにすることが適当である。

2)行財政上の弾力性の向上

1)国立大学の人事、会計・財務の柔軟性の向上
● 国立大学の人事、会計・財務などについて、大学における教育研究活動をより柔軟で機動的に行うことができるよう、国立学校特別会計における教育研究経費の使途や繰越しの取扱い、大学教員の給与決定や兼職兼業の取扱い等について柔軟性の向上を図る方向で検討することが適当である。また、その際、特に大学と産業界等の交流が積極的かつ機動的に行えるようにすることが重要である。
 また、これまでに行われた諸制度の弾力化についての内容を大学の教職員に対して一層の周知を図るため、マニュアルを作成するとともに、研修の充実を図る必要がある。

2)公私立大学に係る認可手続き等の簡素化
● 公私立大学に係る認可手続きについては、これまでも逐次改善がなされているが、今後、大学の教育研究水準の維持向上を図りつつ、大学改革を進め、社会の変化に機動的に対応していくため、兼担、兼任の教員の資格審査の省略及び申請書類の見直し等による負担軽減など、更に簡素化を図ることが適当である。

(3)地域社会や産業界との連携・交流の推進

● 大学は、今後、その知的資源等をもって積極的に社会発展に資する開かれた教育機関となることが一層重要となる。
 各大学が地域社会や産業界の要請等に積極的に対応し、それらの機関との連携・交流を通じて社会貢献の機能を果たしていくため、リフレッシュ教育の実施、国立試験研究機関や民間等の研究所等との連携大学院方式の実施、共同研究の実施、受託研究や寄附講座の受入れなど産学連携の推進を図っていく必要がある。
 企業と大学が共同した教育プログラムの開発や、本校以外の教育研究の場の設定などを通じて、社会人が企業と大学を往復して学習するための環境の整備を図っていくことが必要である。その際、テレビ会議システム等により大学の授業を社会人が企業の会議室等で受講できるようにするなど、発展の著しい情報通信技術を効果的に利用する試みも大学の授業の将来的可能性を広げるものとして積極的に推進する必要がある。
 また、インターンシップ制度の積極的な導入や、学生のボランティア活動等地域社会に貢献する活動の促進に積極的に取り組むことも重要である。

(4)国際交流の推進

● 大学の国際化を進め、国際交流を進めていくため、セメスター制の導入等を通じて大学の学部や大学院の仕組みを国際的通用性の高いものとしていくと同時に、奨学金の充実や外国語によるプログラムの実施などを通じて海外の留学生の受入れ先として魅力ある国際競争力の高い大学を目指すことが必要である。

3 責任ある意思決定と実行 -組織運営体制の整備-

(1)責任ある運営体制の確立

1)新しい自主・自律体制の構築

● 21世紀の大学には、社会の知的分野での中核的機関として、教育研究を高度化し、新しい知識・技術や学問・文化を創造していくことが期待される。このため、大学の組織運営については、大学の主体性と責任を基本としつつ、教育研究の学際化・総合化、社会との関係の緊密化等の大学に対する今日的要請にこたえ得る、開放的で積極的な新しい自主・自律体制を構築することが重要である。
 具体的には、1)大学運営をより充実した機能的なものとするため、学内の意思決定の機能分担と連携協力の基本的な枠組みを明確化する、2)社会の意見を聴取し、社会に対して責任を明らかにする仕組みを整備する、という方向で、法改正を含め必要な改革を進めることが適当である。

2)学内の機能分担の明確化

● 大学が一体的・機能的に運営され、また、教員が教育研究に専念できる体制を作るため、学内の機能分担を明確にした上で、学内において意見聴取や説明を十分行い、それぞれの連携協力の下で質の高い意思決定を行い得るような基本的な枠組みを整備することが必要である。
 このため、学内の意思決定に関する基本的な枠組みとして、大学の運営と教育研究に関する機能分担と連携協力の関係を明らかにするという観点から、学長を中心とする大学執行部の機能、全学と学部の各機関の機能、執行機関と審議機関との分担と連携の関係、審議機関の運営の基本、事務組織と教員組織の連携の在り方等を明確化する必要がある。

1)学長を中心とする全学的な運営体制の整備
● 大学として取り組むべき全学的な課題については、学長が中心となって全学的な教育研究目標・計画(例えば、将来計画など)を策定し、それを学内外に明らかにすることが必要である。また、大学運営を責任をもって遂行する上で必要な企画立案や学内の意見調整を行うための学長補佐体制を整備することとし、例えば、運営会議(仮称)(副学長、学長の指名する教員、事務局長等)を設けるなどの方向で考えることが適当である。

● 国公立大学の学長の選考方法については、責任ある大学運営を行う上で適切なものとするため、評議会の責任において委員会を設けるなどして適任者を事前に絞り込むなどの改善が必要である。

● 学部の運営体制については、学部長の職務の明確化を含めて、全学運営体制の整備に準じて整備する方向で考えることが適当である。

2)全学と学部の各機関の機能
● 評議会等と学部教授会のそれぞれの機能については、評議会は、大学としての教育課程編成の基本方針の策定、全学的教育に関する教育課程の編成などを含め、大学運営に関する重要事項について審議する機能を担うこととする。学部教授会は、学部の教育課程の編成などの学部の教育研究に関する重要事項について審議する機能を担うこととする。このように、それぞれの基本的な機能を明確化することが必要である。

● 学長や学部長(執行機関)と評議会等や学部教授会(審議機関)との関係については、審議機関は学部の教育研究あるいは大学運営の重要事項について基本方針を審議することとする。執行機関は企画立案や調整を行うとともに、重要事項については審議機関の意見を聞きつつ最終的には自らの判断と責任で運営を行うこととする。このように、機能分担と連携協力の関係の基本を明確化することが必要である。

● 審議機関については、学長や学部長が議長として議案の発議や議事の整理を行うこと、事柄に応じ必要な場合には多数決で議事を決することなど、審議の基本的な手続きを明確化することが必要である。

● なお、各審議機関が必ず審議すべき事項等については、法制度上の明確化を図る方向でその整理について検討することが適当である。

3)教員人事に関する意思決定の在り方
● 教員の採用については、大学・学部の理念・目標や将来構想に応じた選考を行うことが必要と考えられるので、教育面への配慮など選考基準をより実質化すること、全学的な人事の方針・基準を定めるに当たって、必要に応じて学長が大所高所からの方向性を示すことなどが適当である。
 教員選考の手続きについては、幅広い視点に立って検討を行うため、必要に応じて学部長が意見を述べること、また、公募制の積極的導入や選考委員会の構成の改善などにより選考過程の客観性・透明性を高めることが必要である。

4)学校法人の理事会と教学組織との関係
● 学校法人理事会と大学の教学組織との機能分担と連携協力の在り方については、教学組織における学長、教授会等の役割や機能を明確化するほか、両者の連携・意思疎通を十分に行うため、理事会の構成の工夫、あるいは理事会と教学組織の代表者との合同会議を設置するなどの方向で、改善を図ることが適当である。

5) 大学の事務組織等
● 大学の事務組織については、教学組織との機能分担の明確化と連携協力の関係の確立が求められる。このため、学長、学部長等の行う大学運営業務についての事務組織による支援体制を整備すること、国際交流や大学入試等の専門業務については一定の専門化された機能を事務組織にゆだねることが適当である。また、大学運営の複雑化、専門化に対応するために、全学的な観点からの適正な職員配置、学部や大学の枠を越えた人事交流、民間企業での研修の機会の充実など、職員の研修や処遇等について改善する必要がある。

3)社会からの意見聴取と社会に対する責任

● 大学が社会からの意見を聴取し社会的存在としてその責任を明らかにするとの観点から、大学の教育研究目標・計画(例えば、将来計画など)、予算、自己評価などの事項について外部有識者の意見を聞くため、大学運営協議会(仮称)を設けることが必要である。
 大学運営協議会(仮称)は、必要に応じて助言・勧告を行うことが適当である。

(2)大学情報の積極的な提供

● 大学入学希望者などの直接の利用者や一般の国民が必要とする大学情報を分かりやすく提供することは、公共的な機関としての大学の社会的な責務である。このため、大学が、その教育研究目標・計画(例えば、将来計画など)、大学への入学や学習機会に関する情報、学生の知識・能力の修得水準に関する情報(成績評価方針・基準等)、卒業生の進路状況に関する情報、大学での研究課題に関する情報を広く国民に対して提供するものとすることとし、それを制度上位置付けることが必要である。また、大学の財務状況に関する情報についても公表を促進することが必要である。

4 多元的な評価システムの確立 -大学の個性化と教育研究の不断の改善-

● 21世紀において、我が国の大学が教育研究の水準向上を進め、世界のトップレベルの大学と伍して発展していくためには、社会の理解と支援の下、それぞれの大学が、教育研究の個性を伸ばし質を高めるための環境を整備することが重要である。
 このため、自己点検・評価の充実を図るとともに、第三者評価システムの導入などを通じて多元的な評価を行い、大学の個性を伸ばし、教育研究の内容・方法の改善につなげるシステムを確立する必要がある。

(1)自己点検・評価の充実

● 自己点検・評価の一層の充実を図るため、自己点検・評価の実施及びその結果の公表を大学の義務とし、学外者による検証を大学の努力義務として位置付けることが必要である。

(2)第三者評価システムの導入

● 大学における教育研究活動について第三者としての客観的な立場から評価を行う組織としては、大学団体、学協会、大学基準協会等が考えられ、それぞれの機関がその特質に応じた多面的な評価を行うことや、各大学が多様な個性を存分に発揮できるような評価が行われることが期待される。

● しかし、大学が社会的存在としてその活動状況等を社会に対して一層明らかにしていくためには、透明性の高い第三者評価を行うとともに、大学評価情報の収集提供、評価の有効性等の調査研究を推進するための第三者機関を設置する必要がある。第三者機関は、大学共同利用機関と同様の位置付けとし、大学関係者の参画を得て運営を行い、その専門的な判断に基づき自律的に評価を実施することが適当である。
 第三者機関による評価は、その結果が各大学にフィードバックされることにより、教育研究活動の個性化や質的充実に向けた各大学の主体的な取組を支援・促進することなどを目的とする。
 第三者機関による評価については、その主たる対象を国立大学とし、公私立大学については、設置者である地方公共団体や学校法人の希望により評価を受けることができるとすることが適当である。
 第三者機関による評価の内容、方法等については、大学の行う諸活動について、各大学の(事柄に応じ学部・学科単位での)個性や特色が十二分に発揮できるよう、複数の評価手法に基づき多面的な評価を行うこと、評価の結果については、国民に対して分かりやすい形で公表されること、被評価者に対して評価の結果及び理由が示され、それに対して意見を提出する機会が設けられることが適当である。

(3)資源の効果的配分と評価

● 各資源配分機関は、大学の教育研究の個性を伸ばし、質を高める適切な競争を促進し、効果的な資源配分を行うため、きめ細かな評価情報に基づき、より客観的で透明な方法によって適切な資源配分を行う必要がある。

5 高等教育改革を進めるための基盤の確立等

● 高等教育改革を継続的に推進していくためには、各大学等における自己改革の取組とともに、これを各大学等及び教職員の負担に任せるだけではなく、国としても、施設・設備の整備や教職員の配置、教育研究経費の充実などについて必要な財政上の措置を講ずるなど、この答申で示した具体的改革方策のための基盤整備を積極的に推進していくことが不可欠である。そのための経費負担については、教育への投資は我が国の今後の発展に欠かすことのできない未来への先行投資であること、現状では、高等教育についての学生や親の家計負担が重いものとなっていること、さらに我が国は先進諸国と比較して国内総生産(GDP)や公財政支出全体に占める高等教育に対する公財政支出の割合が少ないことを踏まえ、公的支出を先進諸国並に近づけていくよう最大限の努力が払われる必要がある。その際、厳しい財政状況や大学等に期待される役割等も踏まえつつ、積極的に改革に取り組んで成果をあげている大学等を重点的に支援していくことが必要である。

● 各大学等において民間資金の導入等による財源の多様化・充実を図るとともに、国公私立大学等の授業料については、物価水準等を考慮した程度の改訂など、学生や親の家計の負担が余り重くならないよう努力する必要がある。

● 奨学金については、高等教育についての学生や親の家計負担が重くなっていることを考慮し、今後、主に経済的困難度を重視する観点から抜本的拡充を図ることが必要である。また、大学院学生に対する奨学金については、学生が自立した家計を持つ場合が多いことを考慮し更に拡充することが必要である。
 このほか、ティーチング・アシスタントやリサーチ・アシスタント、日本学術振興会の特別研究員制度についても更に拡充を図る必要がある。

● 私学助成については、今後、社会における人材養成需要を考慮するとともに、社会的要請の強い特色ある教育研究プロジェクトに対する重点的配分を一層図る必要がある。また、私立大学等の収入源の多様化等を図るための税制改正を更に進めることも重要である。

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高等教育局企画課