ここからサイトの主なメニューです

21世紀の大学像と今後の改革方策について -競争的環境の中で個性が輝く大学- (中間まとめ) (平成10年6月30日 大学審議会)

平成10年6月30日
大学審議会

目次

はじめに

1.高等教育改革進展の現状と問題点

1 これまでの改革の進展状況
(1)教育研究面の改革
 1) 学部(学士課程)教育の改革
 2) 大学院の改革
(2)組織運営等についての改革

2 高等教育における現状の問題点
(1)教育研究面の問題点
 1) 学部段階の教育の問題点
 2) 大学院の問題点
(2)組織運営等の問題点
 1) 大学の組織運営の問題点
 2) 評価システム等の問題点

2.21世紀の社会状況の展望と高等教育

1 高等教育を取り巻く21世紀の社会状況の展望等
(1)一層変化が激しく複雑化した不透明な時代
(2)地球規模での競争と協調・共生が求められる時代
(3)少子高齢化の進行と産業構造や雇用形態等の大きな変化
(4)職業人の再学習など生涯学習ニーズの増大
(5)学術研究の進展
2 我が国の発展と高等教育の役割
(1)我が国発展の方向と高等教育の役割
(2)高等教育機関の多様な展開
 1)各高等教育機関の多様な発展
 1)  大学(学部(学士課程)、修士課程、博士課程)
 2) 短期大学
 3) 高等専門学校
 4) 専門学校
 2)国公私立大学の特色ある発展
3 高等教育の規模
(1)大学(学部)、短期大学の規模
(2)大学院の拡充

3.21世紀の大学像と今後の改革方策
 1 大学改革の基本理念
 1) 課題探求能力の育成 -教育研究の質の向上-
 2) 教育研究システムの柔構造化 -大学の自律性の確保-
 3)責任ある意思決定と実行 -組織運営体制の整備-
 4) 多元的な評価システムの確立 -大学の個性化と教育研究の不断の改善-

2 課題探求能力の育成 -教育研究の質の向上-
(1)学部教育の再構築
 1)教育内容の在り方 -課題探求能力の育成-
 1) 教養教育の重視、教養教育と専門教育の有機的連携の確保
 2) 学部専門教育の見直し
 3)学部教育と高等学校教育との関係
 4) 国際舞台で活躍できる能力の育成等
 2)教育方法等の改善 -責任ある授業運営と厳格な成績評価の実施-
 1) 授業の設計と教員の教育責任
 2) 成績評価基準の明示と厳格な成績評価の実施
 3)履修科目登録の上限設定と指導
 4) 教員の教育内容・授業方法の改善
 5) 教育活動の評価の実施
(2)大学院の教育研究の高度化・多様化
 1)大学院の組織編制の在り方
 1) 大学院の制度上の位置付けの明確化
 2) 一定規模以上の学生を擁する大学院の専任教員等
 2)高度専門職業人養成のための実践的教育を行う大学院の設置促進
 3)卓越した教育研究拠点としての大学院の形成、支援

3 教育研究システムの柔構造化 -大学の自律性の確保-
(1)多様な学習ニーズに対応する柔軟・弾力化 -学生の主体的学習意欲とその成果の積極的評価-
 1)学部段階
 1) 3年以上の在学で学部を卒業できる例外措置の導入
 2) 秋季(9月)入学の拡大等
 3)単位互換及び大学以外の教育施設等における学修の単位認定の拡大
 4) 単位累積加算制度の創設の検討
 2)大学院段階
 1) 修士課程1年制コースの制度化
 2) 修士課程長期在学コースの制度化

(2)大学の主体的・機動的な取組みを可能とするための措置
 1)教育研究組織の柔軟な設計
 2)行財政上の弾力性の向上
 1) 国立大学の人事、会計・財務の柔軟性の向上
 2) 公私立大学に係る認可手続き等の簡素化
(3)地域社会や産業界との連携の推進
(4)国際交流の推進

4 責任ある意思決定と実行 -組織運営体制の整備-
(1)責任ある運営体制の確立
 1)新しい自主・自律体制の構築
 2)学内の機能分担の明確化
 1) 学長を中心とする全学的な運営体制の整備
 2) 全学と学部の各機関の機能
 3)教員人事に関する意思決定の在り方
 4) 学校法人の理事会と教学組織との関係
 5) 大学の事務組織等
 3)社会からの意見聴取と社会に対する責任
(2)大学情報の積極的な提供

5 多元的な評価システムの確立 -大学の個性化と教育研究の不断の改善-
(1)自己点検・評価の充実
(2)客観的な評価システムの導入
(3)資源の効果的配分と評価

6 高等教育改革を進めるための基盤の確立等

付属資料
今後の具体的改革方策(概要)
1 学部段階の改革
2 大学院の改革
3 大学の組織運営システムの改革
4 多元的な評価システムの確立

 大学審議会では、今後の審議の参考とするため、「21世紀の大学像と今後の改革方策について-競争的環境の中で個性が輝く大学-」(中間まとめ)に関し、皆様の御意見をお聞かせいただきたいと考えております。
  皆様の御意見をお寄せ下さい。
  なお、いただいた御意見は、とりまとめて大学審議会に報告しますが、個々の御意見に直接回答することはありません。
  また、個人の氏名等は公表しません。団体名は公表しますが、差し支えのある場合は、その旨併せてお知らせ下さい。

あて先
文部省高等教育局企画課大学審議会室内
  「大学審議会意見」係
<郵便>〒100-0013 東京都千代田区霞が関3-2-2
<電子メール> daigaku@monbu.go.jp

はじめに

 本審議会は、昭和62年の創設時に、「大学等における教育研究の高度化、個性化及び活性化等のための具体的方策について」諮問を受けて以後、多岐にわたる高等教育改革の課題について検討を進め、21の答申・報告を逐次行ってきた。これらの答申等を受けて、過去10年の間に各大学等においてかつてない規模で改革の取組が行われてきたが、一方で、改革の成果が不十分な点や教育研究環境の不備など、大学等の在り方について未だ多くの改善すべき点が見られる。このような状況を踏まえ、平成9年10月31日、文部大臣から新たに「21世紀の大学像と今後の改革方策について」諮問を受け、これまでの改革を総括した上で、21世紀の大学像を明確に示すとともに、今後の改革方策として、1)大学院制度の改革、2)学部段階の改革、3)大学の組織運営システムの改革、について、総合的かつ具体的に調査審議するよう要請された。
 本審議会では、今回の諮問事項について総合的な審議を行うため、新たに基本構想部会を発足させ、大学院部会、大学教育部会、組織運営部会及びマルチメディア教育部会の各部会の密接な連携の下に精力的に調査審議を重ねてきた。
 このたび、諮問事項について、現段階における審議の概要を以下のとおりとりまとめたので、「中間まとめ」として公表することとした。今後、本審議会としては、今回の「中間まとめ」に対する各界の意見を踏まえつつ、さらに審議を深めることとしており、この「中間まとめ」に関連して、各大学等においても、21世紀の大学像と今後の改革方策についての活発かつ積極的な検討が行われることを期待するものである。
 なお、大学入試の在り方についても、この「中間まとめ」の方向等を視野に入れつつ、別途、大学入試に関する専門委員会において、引き続き検討を進めているところである。

1.高等教育改革進展の現状と問題点

1 これまでの改革の進展状況

 高等教育改革については、本審議会の答申等を踏まえ、教育研究の高度化・個性化・多様化、組織運営の活性化の方針の下に、諸制度の大綱化、弾力化等が図られた。この10年間において、大学関係者の間に大学改革の必要性についての意識が覚醒され、改革に向けての具体的な取組が着実に進められている。

(1)教育研究面の改革

1)学部(学士課程)教育の改革

ア.学部(学士課程)教育については、各大学の自由な創意工夫による質の向上を図るとの基本的な考え方の下に、次のような改革が進められてきた。

イ.各大学が、自らの教育理念・目標に基づきカリキュラムを自由に編成できるようにするため、平成3年、大学設置基準の改正により、従来の一般教育科目、専門教育科目等の科目区分等を廃止するとともに、単位の計算方法や授業期間等の基準の弾力化が行われた。また、同年、社会に開かれた大学の観点から、昼夜開講制の設置基準上の位置付けの明確化、科目等履修生制度の導入、大学以外の教育施設等の学習成果の単位認定の制度化も図られたほか、平成10年には、教育方法の多様化等の観点から、マルチメディアを活用した「遠隔授業」が設置基準上に位置付けられた。この他、様々な履修形態による多様な学習の成果を適切に評価する観点から、平成3年に学位授与機構が創設され、大学以外での学位取得の道が開かれた。

ウ.これらの制度改正とともに、多岐にわたる教育の改善方策についての本審議会の提言を受け、各大学においては様々な取組が進められてきた。平成9年10月に公表された「大学におけるカリキュラム等の改革状況について」の文部省調査(以下「改革状況調査」という。)によれば、平成8年度までに全体の9割以上の大学が科目区分や必修・選択科目の見直し等を実施しているほか、全体の約9割の大学が授業計画(シラバス)の作成を行っている。その他、少人数教育の実施、ティーチング・アシスタントの活用、学生による授業評価の導入、セメスター制の採用等、教育の質的向上のための様々な具体的取組が進展してきている。

エ.また、短期大学及び高等専門学校についても、上記の事項に関し、それぞれの特色に応じた制度改正等が実施され、これらを踏まえた改革への取組が進められてきている。

2) 大学院の改革

ア.世界的水準の学術研究の推進、優れた研究者及び高度専門職業人の養成の中核的機関である大学院については、質・量ともに飛躍的充実を図る必要があるとの基本的な考え方の下に、次のような改革が進められてきた。

イ.平成元年、大学院設置基準等の改正により、優秀な学生の学部3年次からの大学院入学、修士課程の最短1年での修了や昼夜開講制の制度化、科目等履修生制度の導入、広く社会人登用を図るための教員基準の弾力化、独立大学院の組織編制等に係る大綱的基準の制定等が行われた。また、平成5年には、夜間大学院の制度化が、更に、平成10年には通信制大学院の制度化が図られた。

ウ.改革状況調査によれば、平成8年度現在で、学部3年次から大学院に入学した者は45大学・224人にのぼっているほか、開かれた大学院づくりの観点からの社会人特別選抜入学者数は194大学院・5、317人に拡大してきている。その他、昼夜開講制の実施や夜間大学院の開設、科目等履修生の受入れ等も進んできている。

エ.さらに、複数の大学が協力して教育研究を実施する大学院(連合大学院)、学外の研究所等と連携して教育研究を実施する大学院(連携大学院)等新しいタイプの大学院や、学部を持たない大学院だけの大学(独立大学院)、特定の学部を母体としない先端的・学際的分野を対象とする大学院(独立研究科・専攻)の開設が増えてきている。

(2)組織運営等についての改革

ア.各大学等の個性化・多様化、質の高い教育研究の推進の基盤である組織運営については、大学等をめぐる諸情勢が変化する中で、組織全体としてまとまりを持ち、自主的かつ責任を持って、理念・目標を明確にし、その実現のための具体的方策を組織として適時・適切に意思決定し、実行できる体制を整える必要があるとの基本的な考え方の下に、次のような改革が進められてきた。

イ.大学が、教育研究水準の向上と活性化に努めるとともに、その社会的責任を果たしていくためには、大学自らが不断に自己点検・評価を行い、改善への努力を行っていくことが不可欠であるとの観点から、平成3年に大学等の設置基準の改正が行われ、自己点検・評価に関する努力義務が明示された。改革状況調査によれば、平成8年度現在、8割以上の大学が自己点検・評価を実施しているほか、外部評価を実施する大学も増えてきている。

ウ.また、平成7年には、教授会に代表者会や専門委員会を設けることが可能であることを制度上明確化したほか、平成9年には、大学教員の選択的任期制の導入が行われた。

エ.これらの制度改善のほか、学長・学部長等のリーダーシップの確立の推進、学長補佐体制の整備、教員採用における公募制の活用など、組織運営の活性化のための様々な改善方策が進められてきている。

2 高等教育における現状の問題点

 過去10年の間に、高等教育全体として改革の動きが始まったことは大きな前進であり、評価されるべきであるが、その進展の度合いは個々の大学により様々である。 また、大学としては改革の取組を始めているものの、個々の教員の意識改革が不十分であるために、大学として考えていたようには進まないという例も少なくない。また、現在進みつつある改革の状況が社会の側から見えないという大学の情報発信の面からの問題もある。
 これまで大学改革のために大きな努力が払われてきたが、改めて、大学の変化に対する社会の要請はそれよりも遙かに大きいことを自覚しなければならない。大学関係者は、大学に対する社会の側からの様々な批判は未だ完全に払拭されてはいないという現状を重く受け止め、来るべき21世紀において大学に期待される役割を果たしていくことができるよう、更に積極的な改革を推進していく必要がある。

(1)教育研究面の問題点

 学部段階の教育については、一般に、大学教員は研究重視の意識が強すぎて教育活動に対する責任意識が低い、授業では教員から学生への一方通行型の講義が行われている、授業時間外の学習指導を行っていない、学期末の試験のみで成績評価が行われている、成績評価が甘く安易な進級・卒業認定が行われている、教養教育が軽視されている、視野の狭い専門教育が行われていることが多いなど、教育内容と教育方法の両面にわたり厳しい問題点が数多く指摘されている。また、学生によっては、授業に出席しない、授業中に質問をしない、授業時間外の学習が不十分である、議論ができないなど、学習態度とその成果の両面について問題点が指摘されている。
 大学院については、各課程において研究者養成、高度専門職業人養成などの目的に即した体系的なカリキュラムが編成されていない、学生が大学間を移動することはまだ少なく、また、教員の人事についても、同一大学出身者が教員の大半を占める学部・大学院などが多く学問的刺激が十分でない、大学院独自の教員組織が弱い、さらに学部学生も含め学生に対する経済的支援が不十分であるなどの問題点が指摘されている。
1)学部段階の教育の問題点

(学部教育の位置付けの問題)
 いわゆる高等教育の大衆化、学生の多様化等の変化にもかかわらず、多くの大学教員の意識は、従来の大学教育の概念から抜け切れていないため、研究重視の意識が強すぎる一方で教育活動に対する責任意識が低い。また、カリキュラム改革や学習指導の改善が、個々の教員レベルに任せられており、組織全体としての責任意識が十分でない。

(カリキュラム改革の問題)
 カリキュラム改革については、各大学等において学部・学科等の教育理念・目標を明確にした上で、学生の多様な能力・適性に応え、学生が自らの関心や将来の進路希望等を踏まえ主体的に学習することや自主性の確立を促すことなど学生の視点に立った改革を進める必要がある。しかしながら、このような取組は十分とはいえない。
 また、平成3年に大学設置基準が大綱化されて以来、多くの大学でいわゆる教養教育と専門教育の連携に配慮したカリキュラム改革が進められているが、大綱化に当たって本審議会としても教養教育の重要性を指摘し、各大学の取組を期待したにもかかわらず、教養教育の取り扱い方についての学内の議論が十分でなく、教養教育の軽視が進んでいるのではないかとの危惧がある。さらに、学問分野の専門化や細分化に伴い、専攻分野の教育内容が狭い領域に限定されてしまう傾向や、分野を越えた教員や学生の交流が乏しいなどの問題点がある。

(教育方法等の問題)
 各大学では、学生の多様化の状況を具体的に把握できていないことから、高等学校教育の改革等を踏まえたきめ細かな指導が不十分であるほか、少人数教育やセミナー形式の授業の導入など、具体的な教育方法の改善も必ずしも十分でない。
 また、「1単位は教室内外の学習を合わせた標準45時間の学習を要する内容をもって構成する」という単位制度の趣旨が徹底せず、学生の教室外での学習を確保するための指導上の工夫が不足している。これに関連して、1年間あるいは1学期間における学生の履修科目の過剰登録という問題もある。
 さらに、学部教育の質の確保や学生の質の保証が、社会から厳しく求められているにもかかわらず、現状では、学生の成績評価は、担当教員の個々の主観的基準に基づく判定に任されている場合がほとんどである。

(施設設備と教育支援の問題)
 教育機能の充実・向上のためには、必要な教室や図書館、学生生活のための施設や設備の整備、教員の確保など、様々な条件整備が不可欠であり、施設の老朽・狭隘化の問題をはじめ、これらの基盤的な条件についての十分な配慮がなされる必要がある。また、大学生を持つ家計の教育費負担が重くなっているが、この負担を軽減するための施策は十分とは言えない。

2)大学院の問題点

(目的に沿った体系的カリキュラム編成等の問題)
 大学院の目的や役割が多様化しているにもかかわらず、研究者養成が中心であるという従来の意識があり、研究者養成、高度専門職業人養成それぞれの目的に沿った体系的なカリキュラムの整備が十分でない。
 研究者養成の機能面では、早期に高度な研究を遂行することが重視されるあまり狭い専門に閉じこもりがちで、豊かな学識などを培う教育の機会や場の配慮が十分でない。大学等の教員となることを意識した教育も行われていない。また、人文・社会系における博士学位の授与が進んでいない。このため、人文・社会系の我が国の大学院教育は、留学により学位取得を希望する外国人学生にとって魅力のないものとなってしまっている。
 高度専門職業人養成の機能面では、教育研究の内容や開設科目が必ずしも社会のニーズに合っていないほか、実践的教育の視点等が十分でない。また、土曜日開講など社会人にとって学習しやすい条件整備、実社会での経験の豊富な教員の採用等が一層求められている。
 また、大学院の整備は進んできているが、大学院によっては形式的な存在となっているものも見られる。

(教員組織等の問題)
 同質的な学生・教員の間では学問的刺激も弱く、新しい学問分野の創成も難しいが、我が国の大学では、学生が大学間を移動することはまだ少なく、また、教員人事についても、同一大学出身者が大半を占める学部・大学院などが多く、学内においても異なる研究室間の対話や交流が十分でない。また、大学院独自の教員組織が弱く、量的拡大に伴う学生の急増により、大学院担当教員の負担の増加などの問題が生じている。

(学生の経済的自立等の問題)
 学部学生に比べ経済的独立性が強い大学院学生に対する奨学金について、貸与人数や金額は逐年拡充されているものの、学生増等に追いついていない。また、ティーチング・アシスタント制度、リサーチ・アシスタント制度、日本学術振興会特別研究員制度が整備充実されてきているが、安定して勉学に専念するには必ずしも十分とは言えない。

(2)組織運営等の問題点

 組織運営については、閉鎖的・硬直的であるとの批判が未だに払拭されていない、学部自治の名の下に学問の進歩や社会の変化に対応した改革の推進に支障を生じている、情報公開や情報発信機能が不十分であるなどの問題点も指摘されている。また、自己点検・評価について、ほとんどの大学で実施されているものの、形式的な評価に陥り、教育研究活動や組織運営の改善に十分結びついていないという問題や外部評価や第三者評価などの客観性のある評価が十分に行われるに至っていないなどの問題が指摘されている。
1)大学の組織運営の問題点

 大学の組織運営については、閉鎖的・硬直的であるとの批判が未だに払拭されていない、意思決定や責任の主体が不明確である、変化への対応が遅いなどの問題がある。
 具体的には、全学的な視点から大学像・将来構想などについての明確なビジョンを提示する調査・企画機能が十分でない、旧来の「学部自治」という名の下に学問の進歩や社会の変化に対応した改革の推進に支障が生じている、学部の壁を越えた自由な議論の場の形成や円滑な合意形成が進んでいない、外部の声を積極的に取り入れ改革につなげる仕組みが十分でない、改革状況の社会への積極的情報発信が行われていないなどが挙げられる。
 また、教員人事についても、全学的視点に立った基準・方針の明確化とそれに沿った人事が適切に行われておらず、学部全体の方針と関連無く学科ごとに人事が行われるなど学部全体として組織を構築しているという視点に欠けている。学内における予算配分についても、特色ある教育研究を伸ばすような重点的配分が行われにくく、一律的で過度の平等主義的な考え方や慣行が優先されがちである。

2)評価システム等の問題点

 平成3年以後、各大学等で自己点検・評価への取組が進み、8割以上の大学で実施されているが、一部には、形式的な評価に陥り、教育研究活動や組織運営の改善に十分結びついていないという批判もある。また、第三者評価など、より客観性の高い評価システムが十分でない。さらに、特色ある教育研究の取組等をさらに伸ばすような資源の重点的配分等が十分でないほか、教育研究水準の向上を目指し、切磋琢磨する状況がない。
 以上、高等教育における現状の問題点として、大学関係者のみならす、学生、社会、産業界等から指摘を受けている主な問題点について見てきた。
 この10年間において、改革は動き始めたものの、上記のように未だ改善が進んでいない問題点は多い。また、21世紀を目前に控え、高等教育を取り巻く社会状況の変化は一層激しく、高等教育に対する社会の期待も一層高まっていくものと考えられる。
 今後、これまでの改革の成果を踏まえつつも、未だ改善するに至っていない問題点が多くあることを厳しく認識し、21世紀の社会状況の展望等の上に立って、更に大胆に改革を推進していかなければならない。

2.21世紀の社会状況の展望と高等教育

1 高等教育を取り巻く21世紀の社会状況の展望等

これからの社会をどのように展望するかは、様々な変化や要素を考える必要があり一概に言い表すことは難しいが、1)一層変化が激しく複雑化した不透明な時代、2)地球規模での競争と協調・共生が求められる時代を迎える中で、3)少子高齢化が進行し、生産年齢人口が大幅に減少すると同時に、産業構造や雇用形態に大きな変化が起こり、4)職業人の再学習をはじめ、国民の間に生涯学習ニーズが増大する、他方、5)学術研究についても進歩の速度が加速されると同時に学際化・総合化の必要性が生ずるなど、高等教育を取り巻く状況が大きく転換していくものと考えられる。また、産業や雇用の空洞化、少子高齢化による経済の潜在的な成長力の低下、高齢化に伴う社会保障給付の増大などにより、当面は、引き続き厳しい財政状況が続くことが予想される。

(1)一層変化が激しく複雑化した不透明な時代

 キャッチアップ経済の終焉、大競争時代の到来など、現在、我が国の社会・経済は大きな転換期を迎えている。さらに、情報通信技術の革新や自由貿易体制の拡大に伴い、経済活動をはじめあらゆる側面でグローバリゼーションが急速に進んでいる。このような社会・経済の急激な変化は、今後一層加速され、21世紀は、従来の延長線上の発想では対応が難しい一層変化の激しい社会、将来予測が明確につかない先行き不透明な時代になると考えられる。また、このような急激な変化の中で、社会はより複雑化し、社会の様々な要素の関連や相互の波及効果が大きくなる傾向が強まると考えられる。

(2)地球規模での競争と協調・共生が求められる時代

 冷戦構造の終焉や交通手段の発達、マルチメディアの進展などによる高度情報通信社会の実現などを背景に、社会・経済のみならず教育研究・文化の面でも世界的規模での交流が一層進んでいく。高等教育面においても、マルチメディアの一層の進展により、地理的な移動を伴うことなく、国境を越えて、大学等間の教育研究情報の交換や、教員・学生の交流が促進され、各大学等が有する知的資源の共有化が進んでいく。このように、国際的な相互依存関係、世界共通標準準拠の必要性、世界的規模での協調と共生の必要性がより高まるほか、一方では世界的規模での競争が一層激しくなり、国際競争力の強化が重要な課題となっていく。
 また、地球環境問題、エネルギー問題、人口問題など人類の生存を脅かす問題をはじめとして、地球的規模で解決を図らなければならない局面がますます増加していく。

(3)少子高齢化の進行と産業構造や雇用形態等の大きな変化

 今後、我が国は未だ人類が経験したことのない少子高齢化社会を迎えると予測されており、生産年齢人口が大幅に減少していくことに伴い、産業間移動による労働力調整の必要性が増大していくほか、従来の終身雇用の形態が大きく変化し、企業内教育のアウトソーシング化や企業間の労働力の流動化が進行していく。
 同時に、産業構造が大きく変化することに伴い、高等教育を必要とする新しい職業も増加し、従来高等教育が対象としてこなかった新しい分野の人材の養成も求められるようになっていく。
 また、社会の高度化、複雑化の進展に伴って、多くの職業分野において高度な知的能力や専門性を必要とする業務が一層増加していくことに対応して、高度の専門的知識・能力を身に付けた高等教育修了者への人材需要が高まっていく。

(4)職業人の再学習など生涯学習ニーズの増大

 上に述べたことなどを背景として、個人のキャリア・アップを支援する高等教育の再学習機能の強化が求められるようになっていく。このような状況の進展に伴い、社会人が必要に応じて高等教育機関において学習を行い、その成果をもってさらに活躍するという高等教育機関と産業界等との往復型社会へ大きく転換していくと考えられる。
 また、少子化による18歳人口の減少に加え、大学等への進学率が上昇することなどに伴い、多様な能力・適性を持つ学生、入学前の履修歴も様々な学生など、学生の多様化が一層進むものと考えられる。大学等の高等教育機関は、このような学生の能力・適性の多様化等を踏まえて、その目的・性格や、教育内容・方法の在り方を、更に見直していくことが必要となっている。
 さらに、高齢化の進展や国民一人一人が物質的豊かさから次第にゆとりや心の豊かさなど多様な価値や自己実現を求めるようになっていることなどを背景として、今後一層生涯学習需要は高まり、高等教育は、幅広い年齢層の人々に対し、その知的探求心に応えるとともに、必要なときにいつでも学習できる場へと、より開かれたものとなることが求められていく。

(5)学術研究の進展

 人類にとって豊かな未来を拓く原動力になる学術研究が、様々な面で著しく進展するとともに、その重要性が一層高まっていく。とりわけ人々の知的創造力が最大の資源である我が国にとって、学術研究の発展は重要であり、独創的な学術研究の推進により自らの手で新しいフロンティアを開拓し、人類社会の発展に貢献することが一層強く求められるようになる。
 今後、学術研究は高度化・専門化が進み、一つの学問分野のライフサイクルが短くなり、変化が激しくなる一方、学際化、総合化の傾向をますます強めていくと考えられ、高等教育においても、学生に対して高度化・専門化した内容を教育するだけでなく、同時に、専攻領域の広がりや学際領域への展開を視野に入れた教育を推進していくことが一層求められるようになる。また、学術研究の著しい進展の中で、地球環境や生命倫理などに関する新たな課題が常に生起してくるようになることから、学術研究と人類や社会との調和ある関係を保つことがますます重要となり、研究者の社会的責任も一層重くなっていく。

2 我が国の発展と高等教育の役割

(1)我が国発展の方向と高等教育の役割

 21世紀において、国土も狭く、資源小国である我が国が、今後、国際社会で知的リーダーシップを発揮できる国、科学技術創造立国を目指し、真に豊かな国民生活が送れる国として発展していくためには、社会の各分野で活躍し、我が国発展の原動力となる優れた人材の養成・確保、未来を拓く新しい知の創造、知的資源を活用した国際貢献等の高等教育に求められる役割を、大学をはじめとする多様な高等教育機関が、そのシステム全体として、十分に果たしていくことが不可欠である。

ア.我が国は、21世紀の国際社会において、政治・経済面はもとより、人類の未来に立ちはだかる地球環境問題など地球規模の諸問題解決への貢献、人類共通の知的資産の創造、新たな文化や価値観の創造等の面において、国際社会で知的リーダーシップを発揮できる国として積極的な役割を果たしていくことが求められている。

イ.また、国土も狭く、天然資源も少ない我が国にとっては、人々の知的創造力が最大の資源であり、国民の間の知的・文化的基盤の一層の充実・向上を図ることが、今後我が国が活力のある国家として発展していく鍵となる。特に、諸外国以上に学術研究の推進と科学技術の発展は重要であり、科学技術創造立国を目指して、従来の追いつき追い越せ型の手法から脱却し、自ら独創的な知的資産を創造し、新しいフロンティアを開拓していくことが重要である。

ウ.さらに、物質的な豊かさのみでなく精神的な豊かさが実感できる社会、国民一人一人の個性が尊重され多様な価値観のもとに自己実現を図ることのできる社会、女性と男性が社会のあらゆる分野に対等なパートナーとして参画する男女共同参画社会、年齢差などを超え国民がお互いに支え合うことのできる共生社会の実現など、真に豊かな国民生活が送れる国となっていかなければならない。

エ.社会状況の大きな変化が予想される21世紀において、我が国がこのような望ましい社会の実現を図っていくためには、大学をはじめとする多様な高等教育機関が世界的水準の教育研究や特色ある教育研究をそれぞれ展開することにより、高等教育システム全体として、我が国発展の原動力となる優れた人材の養成・確保、人類の知的資産の継承と未来を拓く新しい知の創造、社会の発展や文化創造への積極的貢献、知的資源を活用した国際協力等の高等教育に求められる幅広い役割を十分に果たしていくことが求められている。

(2)高等教育機関の多様な展開

1)各高等教育機関の多様な発展
 今後、社会・経済の一層の高度化・複雑化に伴い、教育研究の質の高度化及び人材養成に対するニーズの多様化への対応が一層求められていく。また、進学率の上昇や生涯学習ニーズの高まり等に伴い、より幅広い層の国民に対し、それぞれの関心や意欲に応じ、その能力を十分に伸ばしていくための多様かつ充実した教育機会の提供が一層重要となっていく。このような高等教育に対する質の高度化への要請や社会のニーズの一層の多様化等に適切に応えていくためには、大学・大学院、短期大学、高等専門学校、専門学校が、それぞれの理念・目標を明確にし、それぞれの特色を生かしつつ個性化・多様化を進め、国公私立の高等教育機関全体で社会の多様なニーズに応えていく必要がある。
 なお、短期大学は、高い教養を培うとともに職業における専門的能力を育成する教育機関として、また、高等専門学校は、発想力豊かな実践的技術者を育成する教育機関としての機能をそれぞれ引き続き果たしていくことが期待されるが、制度上の位置付けなどについて今後検討が必要との意見もあることから、別途専門的な調査検討を進めることが必要である。専門学校は、実際的な知識・技術等を修得するための実践的な教育機関として定着しており、今後とも、社会の変化に機敏に対応しながら、主に産業社会の求める人材の養成機関として更に発展していくことが期待される。
1)大学(学部(学士課程)、修士課程、博士課程)

ア.大学は、高度な研究活動から生涯学習機会の提供に至るまで、中等教育終了後の教育研究に対する多様なニーズを受け止める高等教育の中核的機関として、社会の各分野で活躍できる優れた人材の養成・確保、人類の知的資産の継承と未来を拓く新しい知の創造、社会の発展や文化創造への積極的貢献を果たすことが期待されており、社会の変化に機動的に対応しつつ、一層その教育研究機能を高めていく必要がある。

イ.その際、各大学は、それぞれの教育研究についての理念・目標を明確にし、個性化を進めるとともに、教育研究分野の特質に応じ、他の高等教育機関との関連にも留意しつつ、高等教育全体のシステムの中で各大学はどのような役割を果たすのかを学内外に明らかにする必要がある。その結果として、それぞれの理念・目標に基づき、総合的な教養教育の提供を重視する大学、専門的な職業能力の育成に力点を置く大学、地域社会への生涯学習機会の提供に力を注ぐ大学、最先端の研究を志向する大学、また、学部中心の大学から大学院中心の大学など、多様な目的、特徴を持つ大学がそれぞれの存立意義を持ちながら混在することによって、多様なニーズに大学全体として応えていくことが可能となる。

ウ.学部(学士課程)教育については、21世紀における社会状況等を踏まえ、各大学の理念・目標、専門分野によって違いはあるものの、今後、自ら主体的に学び、考え、柔軟かつ総合的に判断できる能力等の育成、幅広く深い教養、高い倫理観、実践的な語学能力・情報活用能力の育成とともに、専門教育の基礎基本等を重視するなどの方向で、学部の教育機能を組織的・体系的に強化していくことが重要である。さらに、学生の多様な能力・適性や学習意欲に柔軟にこたえていくため、学部・学科を越えた共通授業の開設や転学・転部などについての柔軟な対応など、学生の選択の幅や流動性を高める工夫も重要である。

エ.大学院については、学術研究の中心として発展を続けるほか、今後、社会・経済の高度化・専門化、大学等と社会との往復型のキャリア・アップ社会への転換等が一層進行していくことを踏まえると、高度専門職業人養成の機能を一層強化していくことが重要になる。その際、職業上必要な新しい知識・技術を求める者や、実社会で身に付けた実践的な知識・経験を学術的に更に高めていくことを希望する者に対し広く門戸を開き、そのニーズに十分に応え得るよう機能の強化を図っていくことが必要である。

2)短期大学

ア.短期大学は、学校教育法において4年制大学と目的及び修業年限を異にする大学として位置付けられ、制度創設以来、特に女子の高等教育の場として大きな役割を果たしてきたが、近年における、科学技術の高度化、国際化・情報化の進展、生涯学習社会への移行などの社会の変化、18歳人口の減少傾向や女子学生の4年制大学指向の高まりなど、短期大学をめぐる状況の変化を踏まえた対応が求められている。

イ.短期大学が、今後一層、社会において重要な役割を果たしていくためには、その特色を生かしつつ個性化を図り、1)教養教育と実務教育が結合した専門的職業教育、2)より豊かな社会生活の実現を視野に入れた教養教育、3)地域社会と密着しながら社会人や高齢者などを含む幅広い年齢層に対応した多様な生涯学習機会の提供など、多様なニーズに応える教育機能の一層の充実を図ることが必要である。

ウ.このような観点から、各短期大学においては、a)時代のニーズに合った学科の新設や改組、b)学位授与機構の認定を受けた専攻科の設置、c)入学者選抜方法の多様化、d)平成3年の短期大学設置基準の大綱化を受けたカリキュラムの見直し、など様々な改革を今後とも積極的に進めていく必要がある。

エ.短期大学については、社会や時代の変化に対応した短期大学の制度上の位置付けなどについて今後検討が必要であるとの意見もあることから、別途専門的な調査検討を進めることが必要である。

3)高等専門学校

ア.高等専門学校は、即戦力としての実践的技術者の養成をめざし、後期中等教育段階の教育を含む五年一貫の高等教育機関として創設され、その教育成果は産業界等から高い評価を受けてきたところであり、今後とも重要な役割を果たしていくと考えられる。

イ.しかし、1)産業構造や社会環境の変化により、実践的技術者としての高等専門学校卒業生に対して、従来に増して自主性・創造性が求められてきている。2)高等専門学校卒業後、専攻科や大学へ進学する学生が増加してきている。3)科学技術の進展に対応したより高度の専門職業人を養成していくための教育活動を支える研究活動の推進が求められている。4)公開講座の開設など生涯学習ニーズに対応した積極的な対応や地域社会との連携協力を推進することがますます重要となってきている。このように、高等専門学校を取り巻く状況が変化してきている。

ウ.また、高等専門学校は、全体の規模が小さいことなどから、一般の人々の認識は必ずしも十分とは言えない点もあるため、引き続き高等専門学校における教育・研究の成果等を広く一般に情報提供していくことが重要である。

エ.高等専門学校については、今後の時代の変化等を踏まえ、高等専門学校における教育の在り方、組織運営の在り方、名称を含めた社会的認識の改善の問題等について、別途専門的な調査検討を改めて進めることが必要である。

4)専門学校

ア.専門学校は、実際的な知識・技術等を習得するための実践的な職業教育・専門技術教育機関として定着しており、今後とも、社会の変化に機敏に対応しながら、主に産業社会の求める人材の養成機関として更に発展していくことが期待される。

イ.また、生涯学習のニーズに対応し、より地域に密着した高等教育機関として重要な役割を果たしており、今後も、成人・社会人向けの開設科目を多様化することや、附帯教育事業を活用し、夜間、早朝などの時間帯における様々な期間の学習コースを設けるなどの工夫を一層進め、地域社会の要請に適切にこたえていく必要がある。さらに、平成6年の専修学校設置基準の改正の趣旨に沿った教育内容の充実や教育条件の向上とともに、安定した経営基盤の確立に向けて、一層の努力が求められる。
 以上のように、個々の高等教育機関が、その理念・目標に基づき、それぞれの学校種別の特色を生かしながら、個性を発揮し、自由で多様な発展を遂げることが必要である。これにより、高等教育システム全体として、社会や国民の多様な要請に適切に対応していくことが可能となるものと考えられる。

2)国公私立大学の特色ある発展
 国立大学については、国費により支えられているという安定性や国の判断で定員管理が可能であるなどの特性を踏まえ、例えば理工系人材の養成など政策目標に沿った教育研究の実施、社会的な需要は少ないが重要な学問分野の継承、先導的・実験的な教育研究の実施、各地域特有の課題に応じた教育研究とその解決への貢献などの機能を果たすべきことが期待されている。このような機能を十分果たしていない国立大学については、適切な評価に基づき大学の実状に応じた改組転換を検討する必要も出てくるものと考えられる。公立大学については当該自治体における設置目的に沿って、私立大学についてはその建学の精神に則り、それぞれがより一層教育研究機能の強化に努め、特色ある教育研究を実施していくことが期待されている。
 国公私立大学が、このようなそれぞれの機能を発揮していくことが、多様な教育研究の展開という観点からも必要である。

ア.我が国の大学は設置形態上、国立大学、公立大学、私立大学に分けられる。戦前の国立大学にあったような国家枢要の人材を育成するという性格は薄れ、私立大学が目覚ましい発展を遂げた結果、現在では、国立、公立、私立大学の役割は明確に分けがたくなっているが、特に大きな公的資金を基盤とする国立大学については、国立であるが故に果たすべき機能を明確に示すことが求められる。また、公私立大学については、国立大学と同様に公共的機関として大きな社会的責任を有しているものであり、公立大学については当該自治体における設置目的に沿って、私立大学についてはその建学の精神に則り、それぞれの設置形態の特色を生かしながら、今後の発展を図ることが期待される。

イ.国立大学については、(1)国費により支えられているという安定性により成果が見えない新たな創造的研究に積極的にチャレンジすることができること、(2)設置者である国の判断により社会の需要に応じた政策的な定員管理が可能であること、(3)大規模なプロジェクトに取り組むことができること、などの特性を有している。このような特性を踏まえると、今後、国立大学が果たすべき機能として期待されることとして、1)例えば科学技術創造立国に対応した理工系人材の養成など国家の政策目標に沿った教育研究の推進、2)現時点では社会的に大きな需要があるわけではないが、我が国の学術・文化等の面からみれば重要な学問分野の継承、3)例えば通信衛星大学間ネットワーク構築事業の実施など社会の変化や学術研究の進展に応じた先導的・実験的な教育研究の実施、6)各地域特有の課題に応じた教育研究の実施及び都市圏のみでなく全国的にバランスのとれた大学配置による教育の機会均等の確保への貢献、5)学生が経済状況に左右されることなく、自己の関心・適性に応じて高等教育を受ける機会を確保することへの貢献、などが挙げられる。国立大学においては、これらの果たすべき機能を踏まえつつ、教育研究の実施や整備が図られることが必要であり、このような機能を十分果たしていない大学については、適切な評価に基づき大学の実情に応じた改組転換を検討する必要も出てくると考えられる。

ウ.公立大学については、設置者である各地方自治体において、それぞれの地域における文化・経済・社会の向上発展を図る観点から、各地域社会のニーズ等を踏まえつつ、教育研究の充実を図り、各大学が特色ある発展をしていくことが重要である。

エ.私立大学は、高等教育の普及の面において大きな役割を果たしており、現在では、学生数の約8割を占めるに至っている。私立大学は、設置者が国・地方公共団体である国・公立大学とは異なり、建学の精神を生かした独自の校風により、特色ある教育研究を行うところに特色があると考えられるため、特定の固定的な機能を想定することは適当ではない。各大学がそれぞれの建学の精神に則り、社会のニーズに応えつつ、自主的に運営され、各大学が特色ある発展をしていくことが重要である。

オ.我が国の大学制度発足以来、この約1世紀の間に、国立、公立、私立の諸形態の大学は併存しつつそれぞれの個性・特色を発揮し、高等教育全体として量的にも質的にも大きな発展を遂げた。各大学の個性化・多様化が求められる21世紀においても、こうした多様な発展を可能とする柔軟な構造のもとで、国公私立大学がそれぞれの機能を発揮していくことが重要であり、このことは、多様な教育研究の展開という観点からも必要である。

3 高等教育の規模

(1)大学(学部)、短期大学の規模

 社会の高度化・複雑化・専門化の進展等に応じ、高度の課題探求能力や専門的知識等を有することが、社会生活を送る上で広く求められるようになっていく。また、少子化の進行に伴い若年労働人口が減少していく中で、我が国が引き続き発展していくためには、社会の各分野で活躍できる質の高い人材の供給を一定規模確保することが必要である。高等教育の正確な国際比較は困難であるが、概観すれば、欧米諸国に比較して日本の大学・短期大学の規模は決して大きいとは言えない。以上の状況を総合的に考えると、平成12年度から16年度までの期間に、大学及び短期大学の臨時的定員の半数以上の解消を図りつつ、18歳人口が120万人規模となる平成21年度以降最大70万人程度(平成8年度入学者数から約10万人の減)の入学者数を想定することは適当と考えられる。
 同時に、このような進学率の上昇は学生の多様化の進行を伴うことに鑑み、卒業生の質を確保する観点から、教育機能の強化とともに、より厳格な成績評価が必要である。
 したがって、18歳人口の減少を踏まえ、大学等の新増設についても「将来構想」において示したとおり抑制的に対応することとし、我が国の高等教育の活力を維持し、時代の変化に即応して発展していくために必要性の極めて高いものについて認めていくことが適当である。

ア.大学等の規模については、今後、国民の間に生涯学習ニーズが増大し、大学等が生涯学習機関としての役割を果たしていくことが強く求められていくことなどを考えると、社会人学生や留学生を含む入学者数の18歳人口に対する比率である進学率だけではなく、社会のマン・パワーを測る指標でもある人口千人当たりの高等教育機関在学者数も一つの指標として見ることも重要である。
 この点で見ると、我が国の学部段階の人口千人当たり高等教育機関在学者数(通信制を含む。)は平成8年度で25.0人であり、米国(パートタイムを含む。)の47.1人(平成6年度)、英国の24.5人(平成6年度)、仏国の33.4人(平成7年度)に比較して決して高い水準にあるとは言えない。

イ.今後の高等教育の規模を考える際に、上述のように社会人学生や海外からの留学生など18歳人口層からの進学者以外の要素を考慮することも必要性であるが、我が国において18歳人口層からの進学者が基本的な要素であることには当面変わりがないと考えられ、18歳人口の動向を中心に今後の規模を考えることが適当と思われる。

ウ.我が国の18歳人口は平成4年度の約205万人をピークに減少を続けており、平成8年度は約173万人となっている。この傾向は今後も続き、平成12年度には約151万人、さらに平成21年度には約120万人となり、その後20年程度は120万人規模で推移するものと予測される。平成9年1月の本審議会答申「平成12年度以降の高等教育の将来構想について」(以下「将来構想」という。)で示した試算によると、大学及び短期大学の臨時的定員を最低半数解消する場合、今後18歳人口が平成21年に約120万人規模まで減少していく中で、大学及び短期大学への入学者数も平成8年度から約10万人減少し約70万人(社会人、留学生約4.5万人を含む)となるが、入学者数の対18歳人口比率である進学率については18歳人口の減少が入学者の減少よりも急激であるため、8年度実績の46.2%から58.8%(社会人・留学生を除く高卒進学率は55.1%)に上昇すると予測されている。

エ.今後、社会の高度化・複雑化・専門化の進展等に応じ、高等教育を修了し、高度の課題解決能力や専門的知識等を有することが、社会生活を送る上で広く求められるようになっていくと考えられる。また、21世紀においては、少子化の進行に伴い若年労働人口が減少していく中で、我が国が引き続き発展していくためには、社会の各分野で活躍できる質の高い人材の供給を一定規模確保することが必要である。さらには、高等教育の正確な国際比較は困難であるが、概観すれば、欧米諸国に比較して日本の大学・短期大学の規模は決して大きいとは言えない状況にある。以上のような状況を総合的に考えると、「将来構想」で示した試算のように、平成12年度から16年度までの期間に、大学及び短期大学の臨時的定員の最低半数の解消による入学定員規模の減少を図りつつ、18歳人口が120万人規模の場合(平成21年度以降約20年間)に最大70万人程度(平成8年度入学者数約80万人から約10万人の減)の大学及び短期大学への入学者数を想定することは適当と考えられる。

オ.同時に、このような進学率の上昇は学生の多様化の進行を伴うことに鑑み、卒業生の質を確保する観点から、教育機能の強化とともに、より厳格な成績評価を実施することが必要である。

カ.以上の考え方を踏まえると、今後、高等教育の普及の観点から進学意欲を積極的に受け止めることが必要である。現在、各大学等において、進学率の高まりや学生のニーズの多様化に対応するため、教育内容・方法の改善や組織の改組転換等の様々な試みが進められつつあるが、今後、進学率等の急激な上昇が進み、教育面や組織面での改革がこれに十分対応しきれない状況になり、教育の質の確保を図っていく上で困難が生じることも予想される。したがって、18歳人口の減少期である平成12年度から16年度までの期間においては、全体として進学率等の急激な変化が生じることを避けつつ、各大学等における改革の定着・発展を促し、高等教育全体の質の維持と一層の向上を図っていく必要がある。このため、「将来構想」で示したとおり、大学等の入学定員の全体規模を積極的に拡大することは望ましくなく、大学等の設置認可は今後とも抑制的に対応し、平成12年度以降は臨時的定員の最低半数の解消により段階的に入学定員の減少を図ることが適切である。
 また、学問の進展や新たな人材養成需要等、時代の要請への対応についても、既設大学等の改組転換を基本としながら、我が国の高等教育の活力を維持し、時代の変化に即応するために極めて必要性の高いものについて新増設を認めていくこととし、その具体的な取扱いについては、「将来構想」で示した考え方に沿って行われることが適当である。

キ.なお、今後、進学率は上昇するものの、18歳人口の減少に伴い、入学者数は減少していくと予測され、個別の大学等によっては、定員の充足が困難となるなど厳しい経営状況を迎えるものが生ずることも予想される。短期大学については、既にこのような状況を迎えつつあり、学科の改組転換や4年制大学への転換を図る例が見られる。今後、各大学等において、社会や学生の変化に適切に対応し、組織編制や教育内容等の改善・充実を進め、個性豊かな魅力ある大学等を実現できない場合には、その存立基盤自体が危機的な状況に陥ることも予想される。したがって、各高等教育機関は、今後、このような競争的な環境の中で、将来の人材需要も踏まえつつ、自らの責任において、それぞれの教育研究の在り方を工夫していくことが求められる。また、併せて、特色ある優れた取組を行う私学等に対する重点的な助成についての一層適切な配慮、私学経営に関する相談体制の一層の充実や大学等が廃止される場合の学生の取扱いについて適切な方策を講じることなど、「将来構想」で示した競争的な環境における発展のための取組等を一層推進していく必要がある。

(2)大学院の拡充

 平成22年(西暦2010年)における大学院の在学者数は25万人程度になると推計されるが、今後の制度改正や産業構造の変化などを考慮すると、全体としてはそれ以上の規模に拡大していくと見込まれる。国は、この規模を念頭に置きつつ、特に大学院修士課程における高度専門職業人の養成を中心に量的な拡大を図り、大学院の質の維持向上と教育研究条件の充実のための措置を講じる必要がある。
 なお、国立大学については、今後大学院の規模の拡大に重点を置く必要があるが、関連して状況に応じ学部段階の規模の縮小も検討していくことが必要である。

(在学者数の現状)
ア.大学院の在学者数の規模について本審議会は、平成3年11月に「大学院の量的整備について」答申し、平成12年の大学院の規模について「全体としては、少なくとも現在(平成3年)の規模の2倍程度に拡大することが必要である」と提言した。この答申を受けて、新たな大学院(研究科・専攻)の設置や大学院の入学定員増など各般の施策が講じられ、大学院の規模の拡大が図られてきた。
 大学院の在学者は、平成9年5月現在で 171、547人(修士課程119、406人、博士課程52、141人)であり、平成3年の98、650人(修士課程68、739人、博士課程29、911人)に比べ  1.7倍の規模となっており、平成12年には大学審議会の提言は達成される見込みである。

イ.このように我が国の大学院は近年著しく規模を拡大しつつあるが、人口千人当たりの大学院学生数で1.3人、学部学生に対する大学院学生の比率は6.9%(1996年)であり、アメリカの7.7人、16.4%(1994年)、イギリスの4.9人、21.3%(1994年)、フランスの3.5人、17.7%(1995年)など、諸外国の状況と比較すると、なお大きな隔たりがある。

ウ.大学院は基礎研究を中心として学術研究を推進するとともに、研究者の養成及び高度の専門的能力を有する人材の養成という役割を担うものである。一層変化が激しく複雑化していく21世紀の社会を迎えるにあたり、これからの大学院に特に求められることは、1)学術研究の高度化と優れた研究者の養成機能の強化、2)高度専門職業人の養成機能・社会人の再学習機能の強化、3)教育研究を通じた国際貢献の3点であり、そのいずれの面からも大学院のさらなる整備充実が必要である。

(将来推計)
エ.大学院への進学動向及び修了者の雇用機会についての近年の傾向の分析に基づく将来推計によれば、西暦2010年における大学院の在学者数は、これまでの進学動向に基づく試算では約25万人、雇用機会に基づく試算では約22万人から24万人との結果が得られた。なお、この推計はあくまでも現行の制度をそのまま維持し延長したものであり、本年3月に制度化された通信制大学院や今回別に提言をしている修士課程の1年制コースや長期在学コースなどの制度改正が行われた場合の影響は加味されていない。

オ.今後の社会経済の発展の中で、伝統的に意識されてきた大学院修了者の進路の在り方についてはこれまでとは異なる変化が生じざるを得ず、学生側、雇用者側、双方の考え方を変えていくことが必要である。

(今後の規模の在り方)
カ.今後の大学院の規模の在り方については、以上の推計のほか、国際社会で活躍するための基本的な要件として大学院レベルの修了が求められている状況や、21世紀に向けて科学技術創造立国を実現していく必要、また、急速な技術革新や知識の陳腐化に対応しリフレッシュ教育の機会を求める社会人等が増えると考えられること等を踏まえるとともに、今後の産業構造の変化等を勘案する必要があり、新しい産業分野が創出され成長するにつれ、高度な知識・能力を備えた人材への新たな需要が生まれてくることを想定すると、全体としては、25万人以上の規模に拡大していくことが見込まれる。

キ.国は、この規模を念頭に置きつつ、特に大学院修士課程における高度専門職業人の養成を中心に量的な拡大を図り、大学院の質の維持向上と優れた教育研究実績をあげることが期待される大学院や教育研究上の新しい試みに意欲的に取り組もうとしている大学院が、より一層その特長を発揮できるよう、教育研究条件の充実のための措置を講じる必要がある。

ク.また、諸外国の状況や今後の社会変化等を踏まえると、将来的には、諮問において例示されたように、大学院の在学者数が30万人規模となることも予想されるところであり、この面からも質の維持向上方策の一層の充実が望まれる。

ケ.なお、国立大学については、今後大学院の規模の拡大に重点を置く必要があるが、関連して状況に応じ学部段階の規模の縮小も検討していくことが必要である。

3.21世紀の大学像と今後の改革方策

1 大学改革の基本理念

 21世紀において、我が国の高等教育が世界的水準の教育研究を展開し、その求められる役割を十分に果たしていくために、1)課題探求能力の育成―教育研究の質の向上、2)教育研究システムの柔構造化―大学の自律性の確保―、3)責任ある意思決定と実行―組織運営体制の整備―、4)多元的な評価システムの確立―大学の個性化と教育研究の不断の改善―の4つの基本理念に沿って、国際的通用性・共通性の確保、大学等の自律性に基づく個性化・多様化の推進の観点を踏まえつつ、現行の高等教育システム全体を大胆に見直し、各高等教育機関が魅力ある個性の発揮と世界的水準の教育研究の展開を目指して切磋琢磨し合うような新しい高等教育システムへと転換していかなければならない。

 これまで見てきた現状の問題点、21世紀における社会状況の展望等を踏まえると、高等教育がその期待される役割を充分に果たしていくためには、今後、次の4つの基本理念のもとに、新しい高等教育システムの構築と教育研究の見直し等を大胆に進めるとともに、各高等教育機関においても、これらの基本的理念と今後の改革方策を踏まえ、不断の自己革新に取り組んでいかなければならない。
 この際、21世紀の社会状況の展望においても述べたように、今後、高等教育分野においても世界的規模での競争と協調・共生が強まっていくことなどを考えると、我が国の高等教育システム全体が、大学等の自律性に基づく個性化・多様化を進め、教育研究の国際競争力を一層高めていくようなものになるとともに、国際的な通用性・共通性が一層高いものとなっていかなければならない。
 なお、以下においては、大学学部及び大学院を中心に記述しているが、短期大学及び高等専門学校についても、その特性を踏まえつつ、大学に準じた取組を進めることが必要である。

1)課題探求能力の育成 ―教育研究の質の向上―

 今後、我が国は、あらゆる面において、従来のキャッチアップ型のシステムから、世界のフロントランナーとして、自らの手でフロンティアを開拓していくことのできるシステムへと大きく転換していかなければならない。このような我が国の状況や将来の社会状況の展望等を踏まえると、今後高等教育において育成する全ての人材には、変化が激しく不透明な時代において、主体的に変化に対応し、自ら将来の課題を探求し、その課題に対して幅広い視野から柔軟かつ総合的な判断を下すことのできる力、自主性と自己責任意識、国際化・情報化社会で活躍できる外国語能力・情報処理能力や深い異文化理解、さらには高い倫理観、自己を理性的にコントロールする力、他人を思いやる心や社会貢献の精神、豊かな人間性などの能力・態度が一層求められる。
 また、科学技術創造立国の実現や学術研究の推進等の観点からは、質の高い職業人・技術者、高度な専門的知識・能力を持ちフロンティアを開拓することのできる人材や起業家精神に富んだ人材、創造性・独創性豊かな優れた研究者の養成が一層不可欠となろう。さらには世界の人材養成面への貢献も一層重要となってくる。
 18歳人口の減少等に伴う学生の多様化等が進む中で、高等教育がこのような役割を十分に果たし、教育研究全体の質の維持・向上と世界をリードする教育研究の展開を推進していくためには、現状の問題点を厳しく認識し、大胆な改革を進め、課題探求能力の育成の観点を重視しつつ、そのための教育研究の質の一層の向上と高度化を推進していかなければならない。

2) 教育研究システムの柔構造化 ―大学の自律性の確保―

 今後、少子化の進行と高等教育の大衆化に伴い、従来よりも一層多様な能力・適性をもち、入学前の履修歴も様々な学生の入学が増加する。また、高等教育における再学習を通じた個人のキャリア・アップの必要性の増大、豊かな生き方を求める人々の増加などを背景に、生涯学習需要は一層高まり、社会人入学も一層増加すると考えられる。このような学生の一層の多様化と学習ニーズの多様化が進む中で、高等教育がその求められる役割を果たし、期待に応えていくためには、学生の能力・適性に応じた、また、学生の主体的学習意欲と成果を積極的に評価し得るような制度へと、教育研究システムの一層の柔構造化を推進していかなければならない。
 また、生涯学習需要の高まりに対応し、単に社会人も学べる大学ではなく、社会人の再学習を目的とした講座、大学院のコースの開設なども重要である。生涯学習の中核的機関としての役割を担う放送大学においては、衛星通信による全国化が実現したところであり、国民の生涯学習機会の拡大のため更なる発展が期待される。
 さらに、マルチメディアをはじめとする情報通信技術の活用は、高等教育の充実に新たな可能性を開くものであり、高等教育機関において積極的かつ効果的に活用できるように、制度面での取扱いを一層柔軟・弾力的にしていかなければならない。将来的には、情報通信ネットワーク上でのみ授業が展開される、いわゆる「ヴァーチャル・ユニバーシティ」といった新しい形態も現れてくると考えられ、今後その制度的な面も含めた検討が必要になると考えられる。
 組織運営面においても、変化が激しく不透明な時代において、各大学等がその創意工夫を生かした自主的取組を基礎としつつ、教育研究の一層の質的向上を図っていくために、国立大学の講座・学科目の編制の在り方や人事・会計・財務の制度の見直し、公私立大学の学科設置等の審査の在り方や大学設置に係る手続き等の見直しを図り、自らの責任で社会の変化等に機動的に対応できるよう行財政制度の弾力性を一層向上させていかなければならない。
 高等教育の社会への積極的貢献の観点からは、地域社会や産業界等のニーズに積極的に対応し、それらの機関との連携・交流を推進しやすい柔軟・弾力的な制度の整備を一層推進していかなければならない。また、留学生交流をはじめとする国際交流や外国人教員を含む多様な教員構成の実現など、高等教育の国際化を一層推進することが必要になる。

3)責任ある意思決定と実行 ―組織運営体制の整備―

 以上述べたような課題探求能力の育成を目指した教育研究の質の向上と、社会の多様なニーズに応え得る教育研究システムの柔構造化による大学の自律性の確保を図っていくためには、各大学が、自らの主体的判断と責任において、変化に機動的に対応し、効果的運営を行っていくことが必要であり、そのためには学長のリーダーシップのもとに、適時適切な意思決定を行い、実行ができる、責任ある意思決定と実行のシステムが確立されなければならない。
 また、高等教育機関は公共的機関として社会に対する十分な説明責任(アカウンタビリティ)を一層適切に果たしていくことが求められる。このため、学外の意見の大学運営への反映等を図るなど、社会的存在である大学として十分に社会に開かれ、社会に対して責任を果たすことのできる運営システムを整備していかなければならない。また、大学の社会的責務として、大学の教育研究活動に関する情報を社会に対して積極的に提供していくことが不可欠である。なお、各大学に関する情報は、日本国内だけでなく、海外の留学希望者等に対してなど国際的にも発信される必要がある。

4)多元的な評価システムの確立 ―大学の個性化と教育研究の不断の改善―

 各大学等が、その個性化・多様化を図りつつ、世界的水準の教育研究の推進を図っていくためには、教育研究の質の向上に向けて大学の自律性に基づく教育研究活動の展開や大学運営が行われているか、常に適切な自己点検・評価を実施し、これを踏まえて各大学等が教育研究の不断の改善を図っていくことが不可欠である。更に、従来の自己点検・評価の充実のみならず、より客観性の高い第三者評価を充実していくなど、各大学等の個性を更に伸ばし魅力あるものとしていくための多元的な評価システムを今後早急に確立しなければならない。
 また、限りある公的資源の効果的な配分の実施、資源配分における透明性の向上と社会に対する説明責任の観点からも、それぞれの資源配分の目的に応じ、多元的な評価の結果を反映した資源配分が一層推進されることが重要である。
 以上述べたように、1)課題探求能力の育成を目指した教育研究の質の向上、2)教育研究システムの柔構造化による大学の自律性の確保及びそれを支える3)責任ある意思決定と実行を目指した組織運営体制の整備、さらにこうした大学の取組みについての4)多元的な評価システムの確立による大学の個性化と教育研究の不断の改善を通じて、各大学等の個性化・多様化が一層伸張されるとともに、世界的水準の教育研究の展開を目指して各大学等が不断の維持向上を図り、発展していくという真に大学等が切磋琢磨しあう状況を創出していくことが求められている。同時に、このような状況においては、教育研究の質の向上と魅力ある個性化が実現できず、社会の期待に適切に応えられない大学等においては、その存立基盤自体が危機的な状況に陥ることも予想される。

2 課題探求能力の育成 ―教育研究の質の向上―

 今後、高等教育の普及が一層進むことを踏まえると、卒業時における質の確保を重視したシステムへの転換が必要である。このため、学部段階においては、求められる人材像の観点から共通に必要とされる教育内容の再検討を行うほか、教員の意識改革、責任ある授業運営と厳格な成績評価の実施などを推進するための具体的仕組みを整備する必要がある。また、大学院については、その一層の高度化と機能分化を図っていく観点から、目的に応じた教育内容・方法等の整備、国際的に評価される教育研究の卓越した拠点を形成していくためのシステムの導入等を図ることが必要である。

(1)学部教育の再構築

 今後、大学進学率が一層高まるなかで、進学前に受けた高等学校教育の内容も多様化し、さらに、社会人や留学生の増加が進み、興味・関心、履修歴など、あらゆる面で多様な学生が大学に進学してくることが予想される。また、時代の変化や社会のニーズに対応した教育研究の展開が一層強く求められるようになっていく。各大学においては、本審議会答申等を踏まえ、カリキュラム改革の実施、シラバスの作成・公表など教育の質の確保のための取組が進められているが、未だに大学教育への批判を払拭するには至っていない現状を重く受け止め、さらに改革を推進する必要がある。
1)教育内容の在り方 ―課題探求能力の育成―

1)教養教育の重視、教養教育と専門教育の有機的連携の確保

 社会の高度化・複雑化が進む中、自ら課題を探求し、柔軟かつ総合的に思考し、判断し、解決する能力の育成が重要であるという観点に立ち、「学問のすそ野を広げ、様々な角度から物事を見ることができる能力、自主的・総合的に考える力、的確な判断力を養い、自分の知識や人生を社会との関係で位置付けることのできる人材を育てる」という教養教育の理念・目標を踏まえ、授業方法やカリキュラム等の一層の工夫・改善、教員の意識改革と実施・運営体制の明確化を図ることが重要である。

ア.学術研究や技術革新の進展、国際化・情報化の進展等社会の急速な変化が進む中、これからの社会はより複雑化し、社会の様々な要素の関連が強くなり、相互の波及効果が大きくなる傾向にあり、一つの角度から物事を見ていたのでは的確な判断はできないという認識が必要である。このため、「学問のすそ野を広げ、様々な角度から物事を見ることができる能力、自主的・総合的に考える力、的確な判断力を養い、自分の知識や人生を社会との関係で位置付けることのできる人材を育てる」という教養教育の理念・目標を踏まえ、各大学において教養教育の在り方を真剣に考えていくことが必要である。

イ.教養教育の内容については、

1)社会生活を送る上で身につけておくべき基本的な知識と技能を修得させる
 例えば、日本語及び外国語による文章作成、ディスカッション、スピーチ、プレゼンテーション等の訓練、コンピューター・リテラシーの育成、数量的・科学的思考法、専門科目や関連専門科目などの理解の基礎となる専門基礎教育、心身の健康に関する教育など

2)社会的・学問的に重要な特定の主題や現代社会が直面する基本的な諸課題について授業(テーマ講義やゼミナールなど)を行い、多面的な理解と総合的な洞察力や、現代社会の諸課題を総合的に判断し対処する能力を養成する
 (例)「環境問題と社会」、「現代社会と法」、「人間生活と現代分子生物学」、「地球環境と生物の多様性」

3)体系化された学問を幅広く経験することにより、専攻する学問分野の理解を助けるとともに、複合的視点を養う
 (例) 「思想史・科学史」、「心理学」、「認知行動科学」

4)専門教育について、関連する分野に関する幅広い視野に立って学際的にアプローチすることのできる力を培う

などが考えられる。かつての一般教育のように独立の科目を設ける、あるいは、専門教育科目の中で学際的な科目を開設するなど、各大学の工夫により教養教育を実施することが有効である。また、教養教育の実施に当たっては、教養教育は、従来からの専門教育の教員を含め、全教員が責任を持って担うべきものであるという認識の下、その実施・運営の責任を持つ組織を明確にするとともに、一部の教員に過度の負担が集中することのないようにする必要がある。

ウ.教養教育の実施に当たっては、学際的・総合的視野に立って、自ら課題を探求し、柔軟かつ総合的に思考し、判断し、解決する能力の育成が重要であるという観点に立ち、例えば、環境問題などのように、複合的視点から検討が必要な課題を探求、設定し、考えるという課題探求・解決型学習の推進が重要である。同様の観点から、米国の大学における主専攻、副専攻のように、複数の学部・学科の専門科目を同時に履修できるようなカリキュラム上の工夫を行うことも有効である。
 また、社会でのボランティア活動や企業でのインターンシップ等学外の体験を取り入れた授業科目の開設などにより社会の実践的な教育力を大学教育に活用するという視点も重要である。

エ.さらに、学生が、高い倫理観や社会貢献の精神、豊かな人間性を身につけるなど、全人格的に成長するためには、正課教育の内容・方法の改善だけではなく、大学で何を学ぶのかを含め学習上の問題に悩んでいる学生への指導、卒業後に自分の個性と能力を活かせる職業につくことを助ける就職指導・相談、学生の入学から卒業までの過程における悩み・迷いに対応できる相談・支援機能の充実改善が重要である。また、幅広い知識と豊かな人間性を涵養するためには、授業だけではなく、課外活動を含む大学生活全般を通じて学生が学んでいくことの意義についても十分配慮することが必要であり、サークル活動充実の支援や、これらの施設設備の整備についても、今後十分に配慮する必要がある。

2)学部専門教育の見直し
 学部専門教育においては、細分化した狭い分野や単にこれまでの学問研究の成果をそのまま知識として教えるのではなく、基礎・基本を重視しつつ、関連諸科学との関係、学問と個人の人生及び社会との関係を教えることなどを通じて、学生が主体的に課題を探求し解決するための基礎となる能力を育成するよう配慮し工夫することが重要である。

ア.学術研究の著しい進展や社会経済の急速な変化を背景として、各学問分野における教育研究対象は増加の一途をたどっている。その結果として、学問分野の専門化や細分化が生じ、学科の細分化が進み、ともすれば学生の受ける教育内容が狭い分野に限定されたり、更にこれまでの学問研究の成果をそのまま知識として教えてしまう傾向がある。一方で、地球環境、生命、情報など様々な分野で、自然科学及びそれを基盤とする科学技術と人文・社会科学が共同して取り組む必要がある複合領域が多くなっている。また、教育を受ける学生の変化という観点からみると、大学・短大への進学率が47.3%(平成9年)という高等教育の大衆化と生涯学習体系への移行を踏まえ、学部段階の専門教育には、特定分野における完成教育というよりも、生涯学び続ける基礎を培う、より普遍的な教育が求められている。

イ.このような状況を踏まえ、各大学においては、その理念・目標を踏まえつつ、専門教育について、基礎・基本の重視、学生が主体的に課題を探求し解決する能力を育成するという観点から、学部段階における教育内容としてどこまでを対象とするのか、学生にどのような知識・能力を身につけさせることを目的とすべきなのかを、改めて問い直す必要がある。その際、真に社会で伸びていく専門家を養成するには、細分化された狭い分野を教えるだけではなく、一方で専門の骨格を正確に把握させると同時に、学生が広い視野を持ち、学問を総合的に把握し、課題を探求できるような幅広い教育を施すことが必要であるという認識の下に、カリキュラム編成及び個々の授業を実施することが重要である。

3)学部教育と高等学校教育との関係
 高等学校教育では、生徒の個性を伸ばし、進路への自覚を深めるという観点から、選択制の拡大等が進められている。各大学は、大学に入学してくる学生の履修歴の多様化に対応して、入学者選抜において大学教育に必要な科目については高等学校での履修を求めることが考えられるほか、入学後に大学教育の基礎を教えるなどの工夫を通じて、後期中等教育から高等教育への移行を円滑に進めることが求められる。
  また、大学レベルの教育を受けるのに十分な能力と意欲を有する高等学校の生徒に対し、大学レベルの高度な教育・研究に触れる機会をより広く提供し、生徒の興味や関心を高め、その能力の伸長を図っていくことは有意義であり、各大学において、大学教育を受けるのに十分な能力と意欲を有する高等学校段階の生徒に対し、当該教育に触れる機会を広く提供することが望ましい。

  大学入試の在り方については、知識の量だけでなく、大学での学習に対する意欲・熱意や入学後の能力の伸長ということも見据え、多様な個性や能力を適切に評価する必要があり、高等学校における学習指導要領の改訂や学部教育の在り方についての審議を踏まえて、高等学校と大学との接続の在り方についての今後の幅広い検討を視野に入れ、具体的な改善方策を引き続き審議する。

ア.現在、一部の大学関係者その他の有識者等の間に、大学で高校の補習教育を行っているという現状について、大学教育の質の低下の現れとして批判的に捉える傾向がみられるが、そのような考え方の適否については慎重な検討が必要である。

イ.高等学校教育については、生徒の個性を伸ばし、進路への自覚を深めるという観点から、選択制の拡大等が進められており、大学に入学してくる学生が高校で履修する学習内容は多様化している。このため、かつてのように、高校卒業生について一律に一定の履修歴を備えていることを求めることは適切とは言えないのが現状である。

ウ.大学はこのような高等学校教育や入学希望者の変化を的確に把握し、従来の「現在大学で補習教育を行っている内容は、本来高校が行うべきもの」という大学中心の考え方から、「高等学校の教育内容が多様化していることを前提として、履修歴の多様な高等学校卒業生を受け入れる以上は、大学の教育も当然その変化に対応した内容に変わるべき」という初等中等教育の現状を見渡した考え方へ発想を転換することが必要である。

エ.具体的には、各大学等においては、高等学校のカリキュラムの動向や学生の実態を踏まえ、入学前に学生が学習しておくべき内容に関する積極的な情報提供に努め、入学者選抜の段階において、当該大学あるいは学部・学科の授業を受けるために必要な高等学校の科目について、入学試験を課す、あるいは、高等学校での履修を求めるなどの措置をとることが考えられるほか、入学後は、必要に応じ、学生の履修歴等に対応して大学教育の基礎を教えるなど、学生に対するきめ細かな配慮や様々な工夫が必要である。これらの取組を通じて、学生が後期中等教育から高等教育へ円滑に移行することができるようにすることが求められる。

オ.同時に、入学者選抜については、専門高校や総合学科の卒業者を対象とした選抜を進めるなど、高等学校における学生の実情に配慮することが望ましい。

カ.また、大学レベルの教育を受けるのに十分な能力と意欲を有する高等学校の生徒に対し、大学レベルの高度な教育・研究に触れる機会をより広く提供し、生徒の興味や関心を高め、その能力の伸長を図っていくことは、一人一人の能力・適性に応じた教育を進める上で大きな意義を有する。このため、生徒がこうした大学レベルの学習を行った場合、各高等学校の措置により、高等学校の単位として認定できることとされている。このことを踏まえ、各大学において、大学教育を受けるのに十分な能力と意欲を有する高等学校段階の生徒に対し、当該教育に触れる機会を広く提供することが望ましい。

キ.大学入試の在り方については、知識の量だけでなく、大学での学習に対する意欲・熱意や入学後の能力の伸長ということも見据え、多様な個性や能力を適切に評価する必要があり、高等学校における学習指導要領の改訂や学部教育の在り方についての審議を踏まえて、高等学校と大学との接続の在り方についての今後の幅広い検討を視野に入れ、具体的な改善方策を引き続き審議する。

4)国際舞台で活躍できる能力の育成等
 外国語教育の充実や海外留学の推進等を進めると同時に、我が国の歴史や文化への理解、国際社会の直面する重要課題への認識を深めたり、ディスカッション、ディベート等の訓練を通じて自らの主張を明確に表現する能力を育成するなど、国際舞台で活躍できる人材の養成を図ることが重要である。

ア.今後、社会・経済のあらゆる場面において、世界的規模での交流が一層進むと考えられ、外国語能力の修得など、これに対応していくための知識・技能を身に付けることが全ての学生にとって必須のものとなっていく。また、地球環境問題など地球規模で解決を図らなければならない局面がますます増加し、国際社会で知的リーダーシップを発揮していくことができる専門家の養成が一層重要になっていくと考えられる。このような状況の中で、国際舞台で活躍できる能力の育成を図っていくことがますます重要になっている。

イ.大学・短期大学における外国語教育は、外国語学部等における教育・研究をはじめ多様な形で行われているが、一般に読解力の育成に偏り、コミュニケーション能力が育成されていないという批判がある。各大学では、教育内容・方法の改善のため、少人数教育やLL、ビデオ等の教育機器の利用など、コミュニケーション能力の向上に向け、様々な取組が行われているが、今後一層そのような取組を進めていくことが必要である。

ウ.また、異なる価値観や視点から学習することを通じて異文化理解を深め、視野を広げて、グローバルに物事を考える基礎を培うという観点から、大学等に在籍したまま1年間程度留学を行う、いわゆる短期留学を一層推進していくことが必要である。これまで研究者間の交流から自然に発展した大学間の学生交流が少なくなかったが、特色ある優れた学部教育を行う海外の大学との学生交流協定の締結も組織的に推進するべきである。

エ.さらに、異文化理解を深める前提として、まず、我が国の歴史や文化への理解、国際社会の直面する重要課題への認識を深めることが重要である。また、国際的な視野を持つに止まらず、国際社会で信頼され、尊敬される人材として知的リーダーシップを発揮できる人材を育成するためには、ディスカッション、ディベート、プレゼンテーション等の訓練を通じて自らの主張を明確に表現する能力を育成する必要がある。各大学においては、全学共通科目、専門科目、その他様々な場を通じて、国際舞台で活躍できる人材の養成を図ることが重要である。

2)教育方法等の改善 ―責任ある授業運営と厳格な成績評価の実施―

1) 授業の設計と教員の教育責任

 現在の単位制度は、教室における授業と事前に行う準備学習・事後に行う復習を合わせて単位を授与することとされており、学生の自主的な学習を重視するものである。したがって、教室における授業だけでなく、授業の前提として読んでおくべき文献を指示するなど、学生が事前に行う準備学習・復習についても指示を与えることが教員の責務とされている。このことについて、大学当局はもとより各教員が十分自覚して授業の設計と学習指導を行うことが必要である。

ア.現在の単位制度では、1単位は、1)教員が教室等で授業を行う時間及び2)学生が事前・事後に教室外において準備学習・復習を行う時間の合計で標準45時間の学習を要する教育内容をもって構成されるものである(大学設置基準第21条)。すなわち、教室における授業と事前に行う準備学習・復習を合わせて単位を授与することとされており、学生の自主的な学習を重視するものとなっている。したがって、教員には2)の教室外の準備学習等の指示を与え、学生に勉強させる責務があるが、それが現実には十分行われていないとの指摘がある。一方で学生の側についても自ら学習する責任を十分に果たしていないとの指摘もある。

イ.大学設置基準における(1)1単位は標準45時間、(2)授業期間はおよそ年30週、(3)卒業要件は4年で124単位、1年間でおよそ30単位という制度設計からすれば、授業期間中における学生の1週間の学習時間はおよそ45時間となる。しかしながら、平成7年の文部省調査「大学改革の今後の課題についての調査研究報告書」によると、学生の1週間の学習時間は、平均で、「授業への出席時間」は19.3時間、「その他の勉強時間」は7.2時間となっている。中でも、自然科学系では、「授業への出席時間」が22.3時間、「その他の勉強時間」が7.9時間であるのに対し、社会科学系については、「授業への出席時間」が15.8時間、「その他の勉強時間」が6.0時間となっている。大学設置基準における単位制が、1週間の学習時間をおよそ45時間として設計されていることに鑑みれば、学生の実際の学習時間はこれよりはるかに少なく、その原因は主に「その他の勉強時間」の学習、すなわち授業時間以外の準備学習等が十分確保されていないことにあると考えられる。

ウ.大学進学率の上昇に伴い、大学に入学してくる学生の多様化が進む中、現在の大学教員にはこれまで以上に、個々の学生に学習へのモチベーションを与え、学生が学習及び研究目標を確立するための指導を行うことが求められている。このような現状を踏まえ、教室外の学習は学生の自主性のみに任せるということではなく、例えば、シラバスに明記する等の方法により、学生が事前に行う準備学習や事後の復習、レポートの提出などについても、十分な指示を与えることが教員の責務とされていることを、大学当局はもとより各教員が十分に認識し自覚して授業の設計を行うことが必要である。また、例えば理工系の学生の研究室における活動など、教員の指示により学生に実験や演習を課している部分については、これを単位として適切に評価することも併せて検討される必要がある。

エ.なお、教室外における学習を徹底させるためには、指導を担当する個々の教員の努力に加え、図書館の座席数や必読図書の所要冊数の確保、開館時間、貸出期間など施設設備利用の面を含め、学生が学習する場としての大学の学習環境の整備にも留意する必要がある。

2)成績評価基準の明示と厳格な成績評価の実施

 大学の社会的責任として、卒業生の質を確保するという観点から、教員は、あらかじめ学生に対して、各授業における学習目標や目標達成のための授業の方法及び計画とともに、成績評価基準を明示した上で、厳格な成績評価を実施するべきである。同時に、産業界においては、採用活動において学生の学習歴を重視した人物・能力本位の採用を行うことを要請したい。なお、厳格な成績評価の実施の結果、留年生による収容定員超過が生ずる可能性があるが、こうした定員超過については大学の設置認可等の際に弾力的に取り扱うことの検討が望まれる。

ア.高等教育の大衆化と学生の多様化が一層進展すると考えられる21世紀において、各大学がそれぞれの個性・特色を発揮しつつ、学部段階における教育機能の充実強化を通じた卒業生の質の確保を図ることが必要である。

イ.従来、大学卒業生の質は、大学において何を学んだかということよりも、どこの大学を卒業したか、すなわち入学時点の学力によって判断されているという批判がある。しかしながら、大学は国公私立を問わず、公共的なものであり、社会に貢献する人材の養成に当たるという観点から、学生に高い付加価値を身に付けさせた上で卒業生として送り出すことは大学の社会的責任である。

ウ.したがって、卒業生の質を確保するという観点から、教員は、あらかじめ学生に対して、各授業における学習目標や目標達成のための授業の方法及び計画とともに、成績評価基準をシラバスなどに明示した上で、厳格な成績評価を実施するべきである。成績評価基準については各授業科目を担当する教員が授業の目的等に沿って適切に定めるべきものであるが、学期末の試験のみでなく、学生の授業への出席状況、宿題への対応状況、レポート等の提出状況等、日常の学生の授業への取組と成果を考慮して多元的な基準を設定することが望ましい。

エ.学生の学習効果を高めるためには、セメスター制等の導入を促進し、学期の区分ごとに授業科目を完結させて成績評価を行い、次の学期の学習につなげていくことが重要である。

オ.また、厳格な成績評価という視点から、次のような取組を行っている大学もある。

 1) 学生の評価方法として、授業科目ごとの成績評価を5段階(A、B、C、D、F)で評価し、それぞれに対して、4・3・2・1・0のグレード・ポイントを付与し、この単位当たりの平均(GPA、グレード・ポイント・アベレージ)を出す。
 2) 単位修得はDでも可能であるが、卒業のためには通算のGPAが2.0以上であることが必要とされる。
 3) 3セメスター(1年半)連続して、GPAが2.0未満の学生に対しては、退学勧告がなされる。(ただし、これは突然退学勧告がなされるわけではなく、学部長等から学習指導・生活指導等を行い、それでも学力不振が続いた場合に退学勧告となる。)
 各大学においては、このような方法もあることを踏まえ、厳格な成績評価の仕組みを整備していくことが必要である。なお、厳格な成績評価の実施により最低限の質の確保を行うと同時に、優秀な成績を修めた学生には表彰を行うなど、学生の学習のインセンティブとなるような仕組みを導入することも重要である。

カ.一方、産業界においても、採用活動の早期化が、学生の授業の欠席など学業に支障を及ぼすことのないように配慮すると同時に、採用に当たっては、学校歴ではなく、学生の大学等における学習歴を重視した人物・能力本位の採用を行うことを要請したい。

キ.なお、厳格な成績評価を実施し、安易な進級・卒業を抑制することにより、学問分野によっては、留年生が増加することも予想されるが、そのことが大学等の設置認可や私学助成の上で不利にならないよう、留年者の定員上の取扱いについての配慮を検討することが望まれる。

3)履修科目登録の上限設定と指導

 学生の履修科目の過剰登録を防ぐことを通じて、教室における授業と学生の教室外学習を合わせた充実した授業展開を可能とし、少数の授業科目を実質的に学習できるようにするためには、学生が1年間あるいは1学期間に履修科目登録できる単位数の上限を各大学が定める必要があり、その旨を大学設置基準において明確にする必要がある。また、個々の学生に対して履修指導を行う指導教員等を置くことも重要である。

ア.学生の授業科目の履修については、授業において必ずしも準備学習が要求されない、授業への出席状況が確認されない、学期末の試験結果のみで単位認定が行われる、などの理由から、単位制の本来の趣旨にも拘わらず、学生が過剰な科目履修をし、安易に単位を修得するという現象が生じ、その結果、十分な学習を行わないまま、3年で124単位近くを修得してしまうという指摘がある。

イ.このことは、単に学生の個々の科目に対する取り組み方の問題というだけでなく、個々の授業の要求する学習量が単位制度の趣旨である1単位当たり45時間相当に満たないことを示すものであり、個々の授業に問題があると同時に、単位制度の趣旨からは実行不可能な学習量の科目履修と単位修得を認めている大学の指導に問題があることを、各大学は深刻に受け止めなくてはならない。

ウ.上記のような授業の形骸化を改め、学生の主体的学習を促し、教室における授業と学生の教室外学習を合わせた充実した授業展開を実現するためには、少数の授業科目を集中的に学習することが必要である。このため1年間あるいは1学期間に履修科目登録できる単位数に上限を設けると同時に、個々の授業において1単位45時間という単位制の趣旨に沿った十分な学習量を確保することが必要である。

エ.このため、大学設置基準において、1年間あるいは1学期間に履修科目登録できる単位数の上限を、各大学が学則等において定めることを明確にするとともに、単位数の上限の取扱いの詳細については各大学が、それぞれの状況を踏まえて、自主的に判断することとするのが適当である。

オ.その際、卒業要件単位数が124単位の場合には、1年間当たりの単位数は4単位科目9科目分に当たる36単位が標準となることを踏まえ、各大学がそれぞれの卒業要件単位数を考慮して履修科目登録できる単位数の上限を定めることとするのが適当である。例えば、卒業要件単位数を124単位とし、各科目を4単位科目に単純化して考えると、1)8科目分32単位を上限とすると、卒業するためには、4年次にも7科目分28単位の修得が必要であり、3年次までの間に1科目しか落とせないということになり、厳しすぎること、2)10科目分40単位とすると、3年で120単位を修得できることとなり、単位の実質化にならないこと、から9科目分36単位を上限の標準とすることが考えられる。

カ.なお、登録単位数に上限を設ける対象となる履修科目は、卒業要件単位数に組み込み得る授業科目に限ることとするのが適当である。

キ.また、授業科目の多様化が進む中、学生が各々の学習目標に沿って適切に履修科目の選択を行うことができるよう、一定の科目群の中から選択を求める、科目相互の履修順序を明確にする、あるいは、モデル的なコースを示すなどの工夫に努めるとともに、個々の学生に対して履修指導を行う指導教員等を置くことも重要である。

4)教員の教育内容・授業方法の改善

 個々の教員の教育内容・方法の改善のため、全学的に、あるいは学部・学科全体で、それぞれの大学等の理念・目標や教育内容・方法についての組織的な研究・研修(ファカルティ・ディベロップメント)を実施することを各大学の努力義務とすることを大学設置基準において明確にすることが必要である。
  なお、個々の授業の質の向上を図るに当たっては、シラバスの充実等の取組が重要である。

ア.カリキュラム編成の改革、履修システムの改革、単位認定の枠組みの改革等の制度的な改革も重要であるが、真に教育の充実を図るためには、これまで以上に、教員自身が教育者としての責任を自覚し、自己の教授能力の向上のための不断の努力を重ねていくことが必要である。

イ.大学進学率の高まりに伴い、大学に入学してくる学生の多様化が進むとともに、生涯学習機関としての大学に対する期待がこれまでになく高まっている。大学がこれらの多様なニーズにこたえ、より質の高い教育を提供していくためには、個々の教員の努力はもとより、大学として、あるいは学部・学科としての教育目標を明確に示し、その目標実現のための授業科目の開設及びカリキュラムの編成を行い、各教員はその趣旨に沿った授業内容・方法を決定するというプロセスが必要である。

ウ.そのような組織的な教育体制の構築の一環として、個々の教員の教育内容・方法の改善のため、全学的に、あるいは学部・学科全体で、それぞれの大学等の理念・目標や教育内容・方法についての組織的な研究・研修(ファカルティ・ディベロップメント)を実施することが重要になっている。一部大学でこうした取組が緒についたところであるが、大学全体として未だ不十分な状況にある。したがって、大学設置基準において、ファカルティ・ディベロップメントの実施を各大学の努力義務とする規定を設けることにより、各大学の一層の取組を促すことが必要である。

エ.教育内容・方法の改善については、大学ごとに行うほか、専攻分野ごとに学協会等において実施した方が効果的な場合、その結果を大学教育に反映させることにも留意することが必要である。

オ.更に、大学の教員訓練プログラムの研究開発を進め、その活用を図っていくことも有効である。

カ.個々の授業の質の向上を図るに当たっては、効果的なシラバスの活用が重要である。現在、各大学で作成されているシラバスの多くは、全学的に、あるいは、学部ごとに、履修科目選択のための一覧として作成されていることが多い。しかしながら、個々の授業の質の向上のためには、個々の教員が、その授業科目を履修する学生を対象として、毎回の授業を迎えるに当たってあらかじめ読んでおく文献の提示等準備学習の指示を示したシラバスを作成することが重要である。

キ.なお、教育方法の改善に当たっては、マルチメディアの効果的な活用にも十分配慮する必要があり、マルチメディア機器の活用による授業方法の改善、学生の授業外における学習促進のためのパソコン活用、ビデオを活用した授業参観によるファカルティ・ディベロップメントなど各大学の積極的な取組を推進することが求められる。

5)教育活動の評価の実施

 教育の質の向上のため、自己点検・評価や学生による授業評価の実施など様々な機会を通じて継続的に大学等の組織的な教育活動に対する評価及び個々の教員の教育活動に対する評価の両面から評価を行うことが重要である。その際、教室における授業及び教室外の準備学習等の指示、成績評価などの具体的実施状況を評価の対象とすることにより、単位制の実質化と教育内容の充実を図ることが重要である。
  また、教育活動の在り方については、外部の意見も聞き、それを踏まえて、更なる改善につなげていくことが有効である。

ア.授業の設計と教員の教育責任、成績評価基準の明示と厳格な成績評価の実施、履修科目登録の上限設定と指導などを通じた教育方法の改善を推進するに当たっては、ファカルティ・ディベロップメントによる教員自身の努力と同時に、教育活動について、自己評価を行う、あるいは、学生の評価や外部の第三者の意見を求めていくことによって、その実効性を担保し、さらなる改善のための材料とすることが重要である。また、教育活動の評価に当たっては、大学等の組織的な教育活動に対する評価及び個々の教員の教育活動に対する評価の両面から行われることが重要である。

イ.具体的には、例えば、授業の設計について、教室における授業と教室外における準備学習・復習の配分や教室外の学習の指示等がシラバス等によって明示され、実行されているか、成績評価基準についての情報がシラバス等によって明示されているか、成績評価について安易な単位認定が行われていないか、個々の学生への履修指導を行っているか、といった評価項目について、大学等の組織及び各教員がその活動状況を公表した上で自己評価を行うほか、学生の評価などを求めるとともに、学内だけでなく、卒業生が働いている職場や社会など外部の第三者の意見を聞いて、その後の授業の改善に役立てることが有効である。

ウ.さらに、教育活動の評価に当たっては、教育内容についても、学部教育として適切なものかどうかという観点から評価の対象とし、改善充実に役立てることが有効である。

エ.その際、教養教育に関しては、教育課程の編成についての大学設置基準の規定において「幅広く深い教養及び総合的な判断力を培い、豊かな人間性を涵養するよう適切に配慮」することとされていることを十分考慮し、専門教育についても、真に社会で役立つ専門家を養成するには、細分化された専門だけではなく、同時に、学生が幅広い視野を持ち得るような教育を施すことが必要であるという観点から十分な配慮がなされているかどうかについて、評価を行うことが必要である。

オ.教育活動の改善充実を図るに当たっては、評価によるだけでなく、優れた教育活動を行っている教員に対する顕彰ということも考えられてよい。

(2)大学院の教育研究の高度化・多様化

 大学院は、あらゆる学問分野にわたり基礎研究を中心とした学術研究の推進とともに、研究者の養成及び高度の専門的能力を有する人材の養成という役割を担うものであり、将来にわたって我が国の学術研究水準の向上や社会・経済・文化の発展を図る上で、極めて重要な使命を負っている。21世紀の社会状況の展望等を踏まえると、これからの社会が特に必要としているのは、細分化された個々の領域における研究と、それらを統合・再編成した総合的な学問とのバランスのとれた発展であり、学術研究の著しい進展や社会経済の変化に対応できる、幅の広い視野と総合的な判断力を備えた人材の養成である。社会の高度化・複雑化が進む中、自ら課題を探求し、柔軟かつ総合的に思考し、判断し、解決する能力の育成は、研究者の養成、あるいは高度専門職業人の養成や社会人の再教育など、いずれの方向性を目指すにせよ、大学院においても等しく強く求められるところであり、教育研究の高度化・多様化をさらに推進していかなければならない。

1)大学院の組織編制の在り方

1)大学院の制度上の位置付けの明確化

 大学においては、学部が教育研究上の基本組織とされており、学部を基礎としている研究科については、その運営を学部に依存している。今後、大学院がより一層充実した教育研究を実施していくようにするためには、学部を基礎としている研究科にも、大学が、その運営上の必要性等を判断の上、研究科のカリキュラムや学生の入退学の決定など大学院固有の事項について独自の立場から審議を行うため、研究科委員会に代えて、研究科教授会を置き得ることを明確にする必要がある。
  大学の多様な組織形態を許容していくため、大学院の教育研究活動の比重が高まり、これが中心的な役割を果たしつつある大学において、当該大学の教育研究目的を効果的に達成する責任ある組織の体制を整備するという観点から、当該学部とともに、研究科を学部と同等の基本組織に位置付け、当該研究科に教員を所属させ、研究科教授会を置くのみならず、人事は研究科が審議するとともに、全学的な運営に関与し得るような仕組みを法令上明確化する必要がある。

(学部を基礎とした大学院研究科の位置付けの明確化)

ア.大学院の研究科は、制度上、学部とは別の組織と位置付けられ、独自の教育課程などを持っているものの、その多くは学部・学科を基礎として組織編制が行われ、教員組織、施設・設備について学部に依存している。
 すなわち、学校教育法及び大学院設置基準においては、学部が大学の教育研究上の基本組織とされるとともに、大学院には研究科・専攻の種類・規模に応じて教育研究上必要な教員を置くものとしつつ、教育研究上支障のない場合には、学部、研究所等の教員等がこれを兼ねることができることとしている。また、施設・設備についても大学院の教育研究に必要な施設・設備を備えるものとしつつ、支障のない場合には、学部等の施設・設備を共有できることとしている。その場合、通常、研究科には教授会が置かれず、学部教授会の委任を受け研究科委員会が運営組織としてカリキュラム等を審議し、大学院専任の教員の人事も、多くは、学部教授会が審議するなど、組織運営においても独自の位置付けがなされていない。

イ.しかし、
 1) 大学院研究科のカリキュラムや学生の入退学の決定など組織としても学部とは独立して審議を行う必要があるのではないか
 2) 現実にも、学部を基礎とした一般研究科であっても学部の教員と研究科の教員はその構成において必ずしも同一ではなく、今後大学院の専任教員が増加すれば、その違いはなお大きくなることが見込まれ、専任教員の人事についても学部からの「委任」をうけなければ研究科は審議できないとするのは、運営上問題はないか
といった点を踏まえれば、組織論として、大学院の研究科は大学院固有の事項について独自の立場からも審議を行う必要性が大きくなってきており、その教育研究の機能を十全に発揮していくために当該研究科の教育研究に関わる審議を主体的に行い得る仕組みを整える必要がある。従って、学部を基礎とした研究科であっても、大学が、運営上の必要性等について判断の上、研究科委員会に代えて、研究科教授会を置くことができることを明らかにする必要がある。この場合、学部との連携・調整に十分な配慮が必要である。
 なお、研究科教授会を置かない場合にあっても、教育研究の機能を十全に発揮できるような研究科委員会についての運営の工夫が必要である。

(大学院中心の研究科の制度上の位置付けの明確化)

ウ.また、近年、大学院に対する社会的な需要の増大に伴い、大学院の在学者数は大幅に増加している。独立研究科や独立専攻など大学院固有の教員組織や施設・設備を備えた大学院の整備が徐々に進み始めており、学部を置くことなく大学院のみを置く大学(大学院大学)も、現在、国立私立を合わせ6校が設置されている。大学院大学においては、既に、研究科が当該大学の教育研究上の基本組織として機能している。
 さらに、大学院研究科の学生数が学部の学生数に拮抗したり、分野によっては大学院研究科の学生数が学部の学生数を上回るといったように大学院の教育研究活動の比重が高まり、これが中心的な役割を果たしつつある大学においては、教員の所属を学部から大学院に移すことにより、大学院を教育研究組織の基本単位としてとらえ、人事や予算配分などの面においても大学院を大学運営の中心に位置付ける必要が生じてきている。

エ.したがって、今後、大学院における教育研究活動が中心的役割を果たすに至っている大学においては、当該大学の教育研究目的を効果的に達成する責任ある組織の体制の整備を図るという観点から、研究科を学部と同等の基本組織として、当該大学院研究科に教員を所属させ、研究科教授会を置くのみならず、国公立大学にあっては人事は研究科が審議することとし、さらに、全学的な事項を審議するために置かれている審議機関(例えば、国立大学の評議会)には、研究科長などが研究科の立場から参加し、全学的な運営に関与し得る仕組みを法令上明確化する必要がある。
 なお、私立大学における教員人事については、大学により選考の過程は様々であろうが、建学の精神に基づく学校法人経営という観点から、学校法人の理事会が審議の上、最終的に決定することとなる。

オ.その際、それぞれの大学の教育研究を円滑かつ適切に遂行するためにふさわしい運営の仕組みを整えるという趣旨から、研究科を基本組織と位置付け得るのは、学生の規模等をはじめ当該研究科が、大学における教育研究活動の中心的役割を果たしており、これを運営面においても明確にすることが必要であると認められる場合に限ることが適当である。

カ.なお、研究科が基本組織と位置付けられた大学における当該学部については、引き続き教育と研究を一体的に遂行する教員組織や所属する学生の入退学、教育課程等の重要事項を審議する学部教授会が置かれるとともに、全学的な組織運営の基本単位としての機能を果たすことが必要であり、また、大学における学部教育の重要性を踏まえれば、研究科が学部を包摂して、その機能を担うことには無理があることから、これまでと同様に、教育研究上の基本組織とする必要がある。

(より多様な組織形態)
キ.今後、このような大学院大学や大学院における教育研究活動が中心的役割を果たす大学などが増加し、大学の組織形態は多様になっていくと考えられるところであり、それぞれの大学がその発展の方向を選択し、大学院の質的充実を図ることができるようにすべきである。

ク.学術研究の進展や複雑化している社会の要請に敏速に対応するため、教育組織と研究組織の分離の観点から、学部に代わる教育研究上の基本組織として学群及び学系を設置している大学があるが、このような組織の在り方を各大学が選択し易くするとともに、例えば、学部や研究科を置きつつも、学系と同様に研究上の目的から編制される組織を設ける方式など多様な組織形態をとり得る制度的枠組みについて、さらに今後、検討を進める必要がある。   

2)一定規模以上の学生を擁する大学院の専任教員等

 大学院の多様な発展を可能にし、かつ各大学院が質的にも充実した教育研究を実施していくためには、一定の規模以上の学生を擁する大学院にあっては、大学院専任の教員や大学院専用の施設・設備を備える必要があることを大学院設置基準上明確にする必要がある。

ア.現在、大学院は、急速に量的拡大を遂げているが、一方で、学生数の増加に見合うだけの教員数の整備が行われていないなど、教育研究環境の十分な改善がなされないまま量的拡大が進み、結果として教育研究環境が劣化しているとの指摘もある。現行の大学院設置基準では、専任教員数について定量的な基準が定められていないこともあり、大学院の量的拡大が進むにつれ、教育研究条件に影響が生じていると考えられる。

イ.大学院の一層の高度化・活性化を図っていくためには、大学院の人的・物的条件の改善が急務である。とりわけ、大学院学生数の増加及び留学生、社会人等の多様な学生の受入れにより、教育研究指導の負担が重くなっていることに伴い、教員組織と大学院専用の施設・設備の充実が重要である。

ウ.このことは、今後の大学院の多様な形態を可能にし、かつそれぞれの大学院が質的にも充実した教育研究活動を展開していくようにするという観点からも重要であり、一定の規模以上の学生を擁する大学院にあっては、大学院専任の教員や、大学院専用の施設・設備を備える必要があることを大学院設置基準上明らかにする必要がある。

エ.また、従来、「大学院の教員は、教育研究上支障を生じない場合には、学部、研究所の教員等がこれを兼ねることができる」(大学院設置基準第8条第2項)こととされていたが、大学院への専任教員の配置に伴い、今後は大学院の教員が学部等の教員を兼ねることができることも制度上明確にする必要がある。

2)高度専門職業人養成のための実践的教育を行う大学院の設置促進

大学院の高度化、多様化を図っていくためには、大学院の各課程の目的を明確にし、それに沿った教育研究組織、体制の整備を図っていくことが重要である。

  社会の各分野における構造変化の進行に伴い、ますます高度な専門的知識・能力を持つ者が広く求められる状況に対応し、これまでの高度専門職業人の養成をさらに進めて特定の職業等に従事するに必要な高度の専門的知識・能力の育成に特化した実践的な教育を行う大学院修士課程の設置を促進するため、制度面での所要の整備を行い、教育研究水準の向上を図っていく必要がある。
  例えば経営管理、法律実務、ファイナンス、国際開発・協力、公共政策、公衆衛生、教員養成などの分野における高度専門職業人の養成に特化した大学院修士課程については、大学院設置基準等の上でもカリキュラム、教員の資格及び教員組織、修了要件などについて、これまでの修士課程とは区別して扱う必要がある。
  この場合の学位については、国際的な通用性も考慮し、修士とすることが適当である。なお、修士(「専攻分野」)と表記する際の専攻分野の名称について工夫することが必要である。

  なお、大学院の修了と資格制度との関係では、現在、法曹養成制度の改革が進行中であり、今後、法学系学部・大学院教育の在り方や内容を広く関係者の間で検討していく必要がある。
  さらに、幅広い分野の学部の卒業者を対象として高度専門職業人の養成を目的とする新しい形態の大学院の在り方等についても、今後関係者の間で検討が行われることが必要である。

(大学院の役割・機能)
ア.現在、我が国では産業界をはじめとして社会の各分野において構造変化が進行しており、今後はますます高度な専門的知識・能力を持つ者が広く求められるようになると考えられる。このような高度の専門的知識・能力を持つ人材の養成・再学習については、大学院の果たす役割がますます大きくなっている。

イ.今後、社会・経済の高度化・専門化、大学等と社会との往復型キャリア・アップ社会への転換等が一層進行していくことを踏まえると、大学院は、職業上必要な新しい知識・技術を求める者や、実社会で身につけた実践的な知識・経験を学問的に検証しつつさらに高めていくことを希望する者に対し広く門戸を開くことが求められる。大学院はこのようなニーズに対応し、社会の各分野において指導的な役割を担う高度の専門的な職業人の養成の目的に即した教育方法・内容等の整備を推進し、大学院の機能を一層強化していくことが重要になる。

ウ.現在、修士課程、博士課程の目的として、従来の研究者養成のみならず、高度専門職業人養成も行い得るものであることが設置基準上明示されている。近年、一部の大学では、社会のニーズに対応して、修士課程に高度専門職業人の養成やリフレッシュ教育を行う、いわゆる専修コースや実務能力の育成を重視した社会人向けの研究科が設置されつつあるが、その実態については従来の研究者養成のための教育内容や方法からあまり変わっていないとの指摘がある。

(課程の目的・性格の明確化)
エ.このような状況の改善を図るためには、修士課程の目的、性格を明確化し、これまでの高度専門職業人の養成をさらに進めて特定の職業等に従事するに必要な高度の専門的知識・能力の育成に特化した実践的な教育を行う大学院の設置を促進し、かつそれぞれの大学院が質的に充実した教育研究を展開していくようにすることが必要である。
 なお、高度専門職業人の養成に特化した実践的な教育を行う博士課程の在り方については、今後検討することが適当である。

(高度専門職業人の養成に特化した大学院修士課程)
オ.高度専門職業人の養成に特化した実践的な教育を行う大学院修士課程の設置を促進することは、課程の目的の明確化とともに、大学院の教育研究の質的な充実を図っていく観点からも重要である。例えば、経営管理、法律実務、ファイナンス、国際開発・協力、公共政策、公衆衛生、教員養成などの分野において、高度専門職業人の養成に特化した実践的な教育を行う大学院の設置が期待されるが、人材養成の目的に即した質の高い教育研究を確保するためには、大学院設置基準等の上でも、1)授業・研究指導の柱としてケ-ススタディ、フィールドワ-クなどを取り入れることにより実践性を担保するカリキュラムの工夫、2)実務経験のある社会人を相当数教員として迎えるなど教員の資格や教員組織の在り方についての配慮、3)修了要件として、修士論文に代えて特定課題研究を原則とすることや、コースワークを重視する観点から30単位を超える単位数を修了要件として課すことなど、一般の修士課程とは区別して扱うことが必要である。また、4)一定の規模以上の学生を擁するものにあっては、専任教員の配置等が必要である。

カ.高度専門職業人の養成に特化した実践的な教育を行う大学院は、上記の要件を満たすとともに、当該研究科等の目的・趣旨を学則等において、例えば、「○○等の高度の専門性を要する職業等に必要な高度の能力を養うことを目的とする」などとして、自らが高度専門職業人の養成に特化した大学院であることを対外的に明らかにすることが必要である。

キ.高度専門職業人の養成に特化した大学院の修了者に授与される学位の在り方については、現行の修士とは異なる別種の学位(専門職学位)とすべきであるとの意見もあるが、国際的な通用性を考慮し、修士とすることが適当である。
 なお、修士(「専攻分野」)と表記する際の専攻分野の名称について工夫する必要がある。

(配慮事項)
ク.なお、高度専門職業人の養成に特化した大学院の設置促進に当たっては、教育研究における理論と実務との接点という観点から、大学の教員と実務家との共同研究や、大学の教員が一定期間実務を経験することの奨励・支援が必要であり、これらにより当該学問分野の発展に新たな可能性を拓くことにもなることが期待される。

(積み上げ方式と並列方式)
ケ.現在、大学院については、博士課程を前期と後期に分ける積み上げ方式と、修士課程と博士課程を別々に設置する並列方式の両方式があり、いずれを採用することも制度上は可能となっている。学問分野にもよるが、並列方式には研究者養成、高度専門職業人養成など、その目的を研究科又は専攻ごとに明確にし、目的に沿ったカリキュラムが編成しやすくなるというメリットがある。しかしながら、並列方式は大学院を担当する教員をそれぞれの研究科又は専攻ごとに配置する必要があることから、積み上げ方式に比べ、より多くの教員組織が必要となるため、現実には多くの大学院が積み上げ方式を選択している。大学院の各課程の目的を明確にし、それに沿った教育研究組織、体制の整備を図っていくため、大学院を担当する教員についての現在の設置審査の際の専任としての取扱いを弾力化することにより、各大学が並列方式を採用すること、またこれによって、高度専門職業人の養成に特化した大学院修士課程の設置を進めることを検討することが期待される。

(今後の検討事項)
コ.なお、我が国の実情においては米国等と違って、大学院の修了が職業資格と直接的に結びついていないことなどから、課程の目的と養成される人材との関係は必ずしも明確でないとの指摘もある。これに関して、現在、法曹養成制度の改革が進行中であり、法曹養成に関しては、資格制度と関連して、今後、法学系学部・大学院教育の在り方や内容を広く関係者の間で検討していく必要がある。
 さらに、幅広い分野の学部の卒業者を対象として高度専門職業人の養成を目的とする新しい形態の大学院の在り方等についても、今後関係者の間で検討が行われることが必要である。

3)卓越した教育研究拠点としての大学院の形成、支援
 卓越した教育研究拠点としての大学院の形成、支援のためには、専攻(分野によっては研究科)を単位とし、客観的で公正な評価に基づき、一定期間、研究費や施設・設備費等の資源を集中的・重点的に配分することが必要である。

ア.世界の第一線に伍した水準の高い教育研究を積極的に展開していくことや、我が国に対する国際社会の期待にこたえるためにも、様々な分野で積極的に活躍する卓越した人材を養成していくことが必要である。このためには、卓越した教育研究実績をあげることが期待される大学院や教育研究上の新しい試みに意欲的に取り組もうとしている大学院に対し、客観的で公正な評価を行うための適切な仕組みを工夫し、そのような評価を踏まえて、重点的な整備を行っていく必要がある。

イ.このような卓越した教育研究拠点としての大学院については、研究者養成を志向する大学院ばかりでなく、高度専門職業人養成を志向する大学院の形成、支援も考える必要がある。また、資源小国である我が国にとって人材こそが今後の発展の原動力であることにかんがみ、形成、支援しようとする大学院がどのような点で卓越しているのかを考える際は、実績としてあげられる具体的な研究成果等に着目することはもとより、優れた人材を養成するためのカリキュラムや教育方法等の工夫がどのようになされているかといった観点や、将来的に大きな成果をあげると期待される教育研究プログラムを育てていくという配慮が必要である。

ウ.卓越した教育研究拠点としての大学院の形成、支援のためには、各資源配分機関は、専攻(分野によっては研究科)を単位とし、客観的で公正な評価に基づき、一定期間、研究費や施設・設備費等の資源を集中的・重点的に配分することが必要である。

エ.評価の項目としては、たとえば、学生の入学状況、学位の授与状況、修了者の進路の状況などの学生の教育面に関する項目、教員の論文発表状況、教員の学会での活動状況、国際的な学術誌等における論文の被引用状況、科学研究費補助金の採択状況などの教員の研究面に関する項目等を勘案しつつ、新しい試みや将来的な発展の可能性に十分留意することが必要である。

オ.また、評価を行うに当たっては、教育機関の評価としての修了者に対する評価も含め、様々な評価に関する必要なデータを集めたり、評価の内容を検証したりすることが必要であり、評価自体の客観性・透明性を確保することが重要である。

3 教育研究システムの柔構造化 ―大学の自律性の確保―

 大学等における履修・修了のシステムについて、従来の過度の平等主義を改め、学生の能力・適性に応じた、また、学生の主体的学習意欲とその成果を積極的に評価しうる柔軟・弾力的なシステムに転換していくことが必要である。また、大学が教育研究上の要請に応えて、自律的に、かつ、機動的に運営されるためには、大学自らが定めた教育研究目標を自らの主体的な取組によって実現し得るよう、制度の柔軟化を図ることが必要である。さらに、地域社会や産業界との積極的な連携・国際交流推進のためのシステム整備が求められる。

(1)多様な学習ニーズに対応する柔軟・弾力化 ―学生の主体的学習意欲とその成果の積極的評価―

1)学部段階
 学生が意欲的に学習に取り組み、自らの関心や卒業後の進路の希望等を踏まえて主体的に履修内容等を選択できるよう、制度の一層の柔軟化を進め、各大学の創意工夫の可能性をできるだけ広げておくことが適当である。

1)3年以上の在学で学部を卒業できる例外措置の導入

 現在、成績優秀者については、学部3年修了時から大学院に進学することが可能である。さらに、我が国の学位水準の国際的通用性の維持という観点から大学の修業年限は4年としつつ、例外措置として、早期卒業の希望を持ち、厳格な成績評価の下で通常の学生よりも多くの授業科目を優秀な成績で修得できる者については、大学が適切と判断した場合には、3年以上の在学での卒業を認めることができるよう法改正を行うことが適当である。

ア.学部教育についての最大の課題は質の向上であり、各大学が、単位制度の趣旨に従って、教室外における学習を確保した形での授業の充実を実現することが重要である。そのような充実した授業を前提として、大学の修業年限については4年とされている。世界的にみても学士課程教育の年限は4年とされる方向にあり、我が国の学位水準の国際的通用性を維持するという観点から、大学の修業年限は4年という原則は維持していく必要がある。

イ.しかしながら、一方で、早期卒業の希望を持ち、厳格な成績評価の下で通常の学生よりも多くの授業科目を優秀な成績で修得できる者については、その能力・適性に応じた教育を行い、優れた才能を一層伸長するようにするという観点から、一律に在学期間を4年とするのではなく、大学が適切と認めた場合には、例外的に3年以上の在学で卒業を認める道を開くこととし、そのような学生が早期に大学を卒業して、我が国の大学院のみならず諸外国の大学院にも進学し、あるいは、社会の各方面で活躍し得るよう法改正を行うことが適切である。

ウ.なお、大学院への進学という点では、現在、大学院の入学資格という観点から、成績優秀者については学部3年修了時から大学院に進学することは可能であるが、この場合、大学の全課程を修了するものではないので学部卒業とはならず、学士号を取得できない。ここでは、この制度とは別に、学部教育の全課程を修了することの意義を踏まえつつ、能力・適性に応じた教育を行うという観点から、大学の責任ある授業運営と厳格な成績評価を前提として、例外的に3年以上の在学で卒業を認めることができる途を開くことを提言するものである。

エ.ただし、単位の実質化を図ることなく、履修科目数についての指導を行わず、授業への参加状況も考慮せず、単に、期末試験の結果のみで成績評価を行って3年次卒業を認めることになれば、単位制の空洞化を是認するばかりでなく、我が国の学位水準が低下したという国際的な評価を受けることになるという認識に立ち、特に早期卒業の希望を持ち、優れた成績を修め、大学として特に優れた資質を有すると認めた例外的な者についてのみ3年以上の在学で卒業の認定を行うことが適切である。

オ.このため、大学において教室外における学習の確保や厳格な成績評価、適切な履修指導など単位の実質化のための措置を講じるとともに、各学期又は学年ごとの履修登録単位数に上限を設けた上で、各学期における成績優秀者のみ、本人の希望に基づき、次の学期には上限を超えた履修を可能とすることにより、例外的に3年以上の在学で卒業できることとする制度を設けることが考えられる。

カ.さらに、履修登録単位数の上限を超えた履修については大学の特別な許可を必要とすることとし、学部長と学務担当・学生担当教員が、学生に対して適切な学習指導・相談等を行い、学生の意思や必要性等の確認を行うなど、十分な教育的配慮を行った上で、厳格な成績評価に基づき、各大学が適当と判断した場合にのみ例外的に認めることにより、適切な運用が確保されるものと考えられる。

2) 秋季(9月)入学の拡大等

 学年暦の異なる諸外国への留学及び我が国への留学生の受入れを促進するため、また、9月入学をより柔軟に導入できるようにするため、学年の途中における入学に関する学校教育法施行規則の規定を改正するとともに、学習効果を高める上でも効果の高いセメスター制を、これまで以上に積極的に推進していく必要がある。

ア.我が国では、大学の学年の始期は原則として4月とされているが、諸外国においては学年の始期は9月あるいは10月が多い。現在の我が国の制度では、「特別の必要があり、かつ、教育上支障がないとき」には学年途中において学生を入学させることができることとされているが、現在のところ、秋季入学はごく一部の大学が取り組んでいるに留まっている。今後、我が国の学生の外国への留学、外国の学生の我が国の大学への留学、帰国子女の我が国の大学への入学など、我が国の大学と我が国と学年暦の異なる諸外国の学校との間を学生が円滑に移動できるよう、各大学における秋季入学の一層の推進を図ることが重要である。

イ.また、大学入学機会の複数回化という観点から、秋季入学の導入の促進を求める声もある。受験者の選択の幅を広げ、多様な学習計画を可能とするという点で秋季入学の導入による入学機会を拡大することも有効である。

ウ.このため、学年の始期と終期を定める学校教育法施行規則を改正して、各大学がより柔軟に秋季入学を導入できるようにすることが適当である。なお、秋季入学者については、大学を卒業する時点が他の学生と異なる場合を考慮し、企業の採用活動における配慮を要請したい。

エ.この点に関連して、学期ごとに授業が完結するセメスター制は、学習効果を高める上で効果が高いだけでなく、外国を含めた他の大学等との交流を容易にする一つの方策として有効であり、各大学における積極的な活用を推進していく必要がある。

3)単位互換及び大学以外の教育施設等における学修の単位認定の拡大

 単位互換及び大学以外の教育施設等における学修の単位認定について、現在の合計30単位とされている単位数の上限を入学前と入学後を合わせて合計60単位に拡大するよう大学設置基準を改正することが適当である。また、大学以外の教育施設等における学修を自大学の単位としてみなし得る範囲をより拡大することが適当である。併せて、「遠隔授業」によることができる単位数の上限も30単位から60単位に拡大するよう大学設置基準を改正することが適当である。

ア.大学は、学生に対する教育を実施する際に、全ての局面にわたって責任を有すべきことは当然であるが、教育内容の充実に資するという観点から、現在、学生が他の大学又は短期大学において授業科目を履修し、単位を修得した場合、一定の範囲内で自大学の単位としてみなし得る旨のいわゆる単位互換制度が設けられている。
 また、同様の観点から、学生が行う高等専門学校や専門学校における学修、技能審査の合格に係る学修など、大学教育に相当する一定水準以上のものという観点から文部大臣が定める学修を、自大学における授業科目の履修とみなし、単位を授与することができることとされている。

イ.これらの自大学以外の教育施設等における学修について単位認定できる単位数の上限は合計30単位と定められている。また、学生が大学に入学する前に当該大学以外の教育施設等における学修についても、単位認定できる単位数は、前述の30単位とは別に、上限30単位と定められている。

ウ.この点に関し、大学以外の教育施設等における学修については、学修選択の多様化・柔軟化の観点から、大学が単位認定できる学修の範囲について、文部大臣が定める範囲という枠をなくして完全に大学の判断に委ねるべきであるという考え方がある。しかしながら、国内及び海外の大学間の連携が進み、学生の流動性が高まり、選択の幅が広がっていく中、国内及び海外の大学が、単位互換、転編入学等を推進していく上で、学生の履修の成果を判断する指標となる単位については、1単位の内容が全国共通の一定水準以上の内容を持つものとして標準化され、明確化されていることが望ましい。したがって、大学以外の教育施設等における学修を単位認定できる範囲についても、大学教育に相当する一定水準以上の内容を持つものとして全国共通的に文部大臣が定めるという現行制度の枠組みを維持することが必要であるが、その範囲については、TOEFLやTOIEC等社会的評価が高いと認められる資格試験に係る学修について単位認定が認められるべきとの指摘なども踏まえ、逐次適切に見直しを行う必要がある。

エ.また、単位互換や大学以外の教育施設等における学修の単位認定など、自大学以外の教育施設等における学修を単位認定できる単位数の上限を拡大すべきとの指摘がある。この点については、学生の選択の幅を広げ、国内及び海外の大学間のより一層の連携・交流を可能とするため、現行の30単位から、一層の拡大を図ることが必要と考えられる。一方、大学は、本来的には、学生に対する教育を実施する際に、全ての局面にわたって責任を有すべきであることを踏まえると、卒業要件単位数の半分以上について他大学等で修得することを認めることは適切ではない。したがって、自大学以外の教育施設等における学修について単位認定できる単位数の上限については、入学前と入学後と合わせて60単位に拡大するよう大学設置基準を改正することが適当である。

オ.マルチメディアを活用した「遠隔授業」については、同一大学内の分散キャンパス間で行われるほか、他大学との間で単位互換として行われるケースが少なくないと考えられることから、単位互換等の単位数の上限を拡大するに当たっては、併せて、「遠隔授業」により修得することができる単位数の上限についても、現行の30単位から拡大を図り、60単位まで認め得るよう大学設置基準を改正することが適当である。

4)単位累積加算制度の創設の検討

 単位累積加算制度について、その実施に向けて学位授与にふさわしい履修の体系性の確保等に関し、学位授与機構における調査研究の成果を踏まえ、本審議会において検討する。

ア.生涯学習体系への移行、多様な高等教育機関の発展等の観点から、いわゆる単位累積加算制度(複数の高等教育機関で随時修得した単位を累積して加算し、一定の要件を満たした場合、大学卒業の資格を認定し、学士の学位を授与する制度)を設けることを検討する必要がある。

イ.しかしながら、その実現に向けては、学位授与にふさわしい履修の体系性の確保等さらに検討すべき問題点もある。このため、学位授与機構における制度化に向けた調査研究の成果を踏まえて、本審議会において検討を続けることが適当である。

2)大学院段階
 職業を持つ社会人の再学習のニーズにこたえるため、勤務の都合や通学の便宜など社会人の多様な状況に柔軟に対応し得るよう修士課程の修業年限について一層の弾力化を進めることが適当である。

1) 修士課程1年制コースの制度化

 社会人の大学院修士課程への積極的な受入れを図っていくため、各大学の選択により、通常の教育方法に加え週末や夏休み期間中などにおいても授業又は研究指導を行う等の適切な方法により教育を行い、2年分のカリキュラムを実質1年に集中して実施するなどの履修形態の工夫により、2年未満の修業年限でも修了することが可能なコースを設けることができるような仕組みを導入する必要がある。
  その際、導入の趣旨から、社会人を対象とすることを原則とすること、及び現行の修士の学位を授与するにふさわしい水準を確保するような措置が必要である。

ア.大学院においては、社会人の積極的な受入れを進めるため、社会人を対象とした特別選抜制度の導入、科目等履修生制度の活用、昼夜開講制の採用や夜間大学院の設置など、様々な取組が行われている。

イ.また、職業を持つ社会人の通学を考えた場合、自宅や職場から通える範囲に必ずしも希望する大学院がないといったことや、職場環境等によって通学可能な時間帯が限られることなど、地理的・時間的制約等から、大学院レベルの学習を希望しながらも、実現が困難な社会人等の学習ニーズに、より適切にこたえていくため、本年3月に通信制の大学院の制度が創設された。

ウ.現行制度においては、修士課程の修業年限は標準2年とされ、優れた業績をあげた者については最短1年で修了することも認め得ることとされている。

エ.文部省が平成9年度に行った「生涯学習活動の促進のための大学院制度の弾力化に関する調査研究」のうち、企業の人事担当責任者に対するアンケート調査の結果によれば、1年制修士課程の必要性については、回答企業の71.8%が「必要である」又は「ある程度必要である」と答えている。また、1年制の修士課程は特定の専門分野に限るべきかとの設問に対しては、限るべきであると回答した企業はわずか2%にすぎず、おのずと限定されるという企業を加えても全体の20%に満たないという結果がでている。

オ.大学院に対するこのような社会的要請を踏まえ、期待にこたえていくためには、とりわけ、職業を持つ社会人のリフレッシュ教育を推進することが重要である。そのためには、勤務の都合や通学の便宜など社会人の多様な状況に柔軟に対応し得る体制を整備するとともに、修業年限についても弾力化を図ることが必要である。

カ.社会人の大学院修士課程への積極的な受入れを図っていくため、各大学の選択により、社会人の再学習などの実際の需要に応じ、通常の教育方法に加え週末や夏休み期間中などにおいても授業又は研究指導を行う等の適切な方法により教育を行い、2年分のカリキュラムを実質1年に集中して実施するなどの履修形態の工夫により、2年未満の修業年限でも修了することが可能なコースを設けることができるような仕組みを導入する必要がある。
 その際、導入の趣旨から、社会人を対象とすることを原則とすること、及び現行の修士の学位を授与するにふさわしい水準を確保するような措置が必要である。

キ.なお、高度専門職業人の養成に特化した修士課程の1年制コースについては、まず高度専門職業人の養成に特化した修士課程の整備充実が先決であることにかんがみ、その定着の状況等にも配慮した対応が必要である。

2)修士課程長期在学コースの制度化

 社会人学生等の多様なニーズにこたえるため、あらかじめ標準修業年限を超える期間を在学予定期間として在学できる長期在学コースを各大学院の運用により設けることができることとする。

ア.社会人学生等の中には、修士課程において3~4年の履修計画を立て学修する学生が存在する現状にかんがみ、修士課程について、あらかじめ標準修業年限を超える期間を在学予定期間として在学できる長期在学コースを各大学院の運用により設けることができることを明確にする必要がある。
 この場合の授業料等については、長期在学コースの在学予定期間に応じ減額した授業料年額を設定するなどの配慮が必要である。

イ.なお、正規の学生としてあらかじめ期間を定めず、ある程度長期にわたって授業科目を系統的に履修して単位を修得し、かつ、必要な研究指導を受けることにより学位を取得できる履修形態(パートタイム修学)については、履修する授業科目及び研究指導の系統性の確保の困難などにかんがみ、あらかじめ在学期間を定めることが必要であると考えられる。従って、あらかじめ在学期間を定める長期在学コースと同種のものと捉えることが適当である。

(2)大学の主体的・機動的な取組みを可能とするための措置

 大学が、教育研究上の要請、あるいは社会的な要請に応えて、自律的に、かつ、機動的に運営されるためには、大学の教育研究組織の柔軟な設計、行財政の弾力性の向上などを進め、大学自らが定めた教育研究目標を自らの主体的な取組みによって実現し得る途を拡大することが重要である。
1)教育研究組織の柔軟な設計
 教育研究の進展や社会的需要に応えて教育研究活動を効果的に進めるため、国立大学については、講座・学科目の編制について各大学の柔軟な設計や機動的な対応を可能とする方向で検討することが適当である。

  また、公私立大学について、社会等のニーズに迅速に対応できるよう、同一設置者内の大学・短期大学全体の定員の増加を伴わない範囲の、収容定員の変更及び学部の学科の設置の審査を弾力化する方向で検討することが適当である。

ア.大学の教育研究組織の編制については、これまでにも、大学に学部以外の教育研究上の基本組織を置くこと、大学院のみを置く大学を設置することなどが制度上可能とされ、また、講座制の弾力的な運用を図るため大講座制を導入できることなどの改善が図られてきている。
 公私立大学の設置認可については、平成3年の本審議会の答申により、教育研究の個性化を進めるため、大学の設置基準の大綱化が行われ、教員組織の面でも、一般教育と専門教育の区分が取り払われるなど、弾力化が図られた。また、平成10年3月には、本審議会の答申に基づき、校地基準面積の緩和が行われた。

イ.大学の教育研究組織は、大学の教育研究活動を効果的に実施していくうえで重要な機能を果たすものであるが、従来、教育研究の進展や社会的需要に対する取組みが遅れがちであるとの指摘もある。教育研究の進展や社会的需要に応えて教育研究活動を効果的に進めるため、国立大学については、講座・学科目の編制について各大学の柔軟な設計や機動的な対応を可能とする方向で検討することが適当である。
 また、公私立大学について、社会等のニーズに迅速に対応できるよう、同一設置者内の大学・短期大学全体の定員の増加を伴わない範囲の、収容定員の変更及び学部の学科の設置の審査を弾力化する方向で検討することが適当である。

ウ.なお、現在、工業(場)等制限法により、首都圏等の既成市街地での大学の新増設等に伴う教室増が規制を受けている。政府の規制緩和推進3か年計画では、この制度の抜本的見直しについて、平成10年度中に結論を得ることを予定しているが、大都市部においても、大学の創意・工夫が十分発揮され、社会のニーズに対応した教育研究の機動的な対応が可能となるよう、例えば、大学院についてその整備充実の政策的重要性にかんがみ規制の対象から除外するなど、同法の大学に対する規制の在り方を見直すことが必要である。

2)行財政上の弾力性の向上

1)国立大学の人事、会計・財務の柔軟性の向上

 国立大学の人事、会計・財務などについて、大学における教育研究活動がより柔軟で機動的に行うことができるよう、国立学校特別会計における教育研究経費の使途や繰越しの取扱い、大学教員の給与決定や兼職兼業の取扱い等について柔軟性の向上を図る方向で検討することが適当である。また、その際、特に大学と産業界等の交流が積極的かつ機動的に行えるようにすることが重要ある。
  また、これまでに行われた諸制度の弾力化についての内容を大学の教職員に対して一層の周知を図るため、マニュアルを作成するとともに、研修の充実を図る必要がある。

ア.国立大学の人事、会計制度に関しては、教員人事の面については、国家公務員としての制約があり、会計の面については、国の財政処理に関する諸制度からの制約があるが、国立大学は、他の行政官庁と異なり、教育研究活動を行う組織としての特質を有していることから、教育公務員特例法、国立学校特別会計法等において各種の特例が設けられている。
 また、近年、各国立大学からの要望を受けて、人事、会計・財務関係の制度の弾力化が進められている。例えば、人事面では、国立大学の教授・助教授の任命権の学長への委任、学外との連携を進めるための兼業の許可・承認基準の緩和などの改善が図られている。会計面では、寄附講座制の導入など奨学寄附金の取扱いの弾力化、受託研究や民間との共同研究の制度の弾力化が行われ、更に、国立学校特別会計に特別施設整備資金という弾力的な仕組みが設けられたこと、最近でも平成10年度から受託研究関係経費について民間資金の弾力的な運用が可能となるなど、改善が図られている。

イ.このような改善は進んでいるものの、学問研究の高度化・複雑化や社会の急速な変化、大学と大学外の機関との連携の緊密化等の状況の中で、教育研究の柔軟かつ機動的な運営を行うためには、国家公務員の人事制度や国の財政処理に関する基本原則を踏まえつつも、制度の思い切った見直しが求められる。このことは、我が国の大学が国際的な競争力を確保する上でも是非とも改善が望まれる課題である。
 実際に教育研究の任に当たっている教職員からも、人事、会計・財務等の改善に関しては、学外で仕事をする際の兼職・兼業の弾力化、学外の教員を招聘する際の給与決定の弾力化、大学教員の職務の特殊性に配慮した勤務時間の弾力化、旅費・研究費などの予算の使途の弾力化、翌年度への予算の繰越し、奨学寄附金・受託研究費など外部資金の受入手続きの簡素化、国有財産・物品・債権管理など経理関係の手続きの簡素化などの点について改善を求める声がある。
 また、この点に関しては、国の行政改革会議最終報告においても、国立大学の組織運営体制の整備のための一方策として、外部との交流の促進を含めた人事制度及び会計・財務面での柔軟化を図る必要があると指摘されたところであり、その内容を盛り込んだ関連の法律が制定されたところである。

ウ.このような状況を踏まえて、大学における教育研究活動の特質を考慮しつつ、教育研究活動がより柔軟で機動的に行うことができるよう、国立学校特別会計における教育研究経費の使途や繰越しの取扱い、大学教員の給与決定や兼職兼業の取扱い等について柔軟性の向上を図る方向で検討することが適当である。
 また、その際、特に大学と社会との連携協力関係の進展に伴い、産業界や地域社会などとの、あるいは国際的な交流が積極的かつ機動的に行えるようにすることが重要である。このため、民間から優れた教員や研究者を招聘する場合の給与決定の弾力化、公務部門での調査研究への協力など大学教員の有する知識技能を社会的に有効かつ積極的に活用する場合の取扱いの弾力化、大学の社会貢献に資する業務を行う民間企業の役員等に就任する場合の兼職兼業の取扱いの弾力化、受託研究費等の外部資金を提供者の意図に即して有効に活用できるよう受入れ手続きの簡素化等について改善を図る方向で検討することが適当である。
 国立大学の人事、会計・財務の柔軟性の向上については、実際に教育研究や事務執行の任に当たっている教職員の意見を把握しつつ、制度の柔軟性を向上させる方向で改善を図ることが必要である。
 なお、公立大学に関しても、国立大学に準じて制度の改善を図ることが必要である。

エ.一方、各大学では、人事、会計・財務の制度について、理解が十分でないなどのために、必ずしも本来の趣旨に沿った運用が行われていないケースも見受けられる。その背景としては、特に、近年、制度の改善や運用の弾力化が頻繁に行われているため、実際に教育研究や事務に当たる教職員にとって、その内容を十分に把握することが困難になっていることもある。
 このため、わかりやすいマニュアルの作成や職員研修の充実などを通じて、制度についての理解を深めることも必要である。

オ.なお、国立大学については、教育研究活動の特質を踏まえたとしても、教育研究の成果が国民にとって見えにくいのではないか、あるいは、国の機関としてより効率性を高める余地があるのではないか、などの指摘もある。各種制度の弾力化を進めるに当たっては、大学自身が、学内における事務の合理化、簡素化などの運営改善を行い、自らの教育研究活動の成果や組織運営の効率性について明らかにしていく必要がある。また、責任ある管理運営の観点から、大学の財務運営の状況に関する情報を公表したり、後述の大学運営協議会(仮称)等の活用により、学外の有識者から意見を求める機会を設けることも必要である。

2)公私立大学に係る認可手続き等の簡素化

 公私立大学に係る認可手続きについては、これまでも逐次改善がなされているが、今後、大学の教育研究水準の維持向上を図りつつ、大学改革を進め、社会の変化に機動的に対応していくため、教員審査及び申請書類の見直し等による負担軽減など、さらに簡素化を図る方向で検討することが適当である。

ア.公私立大学の設置認可の審査手続きについては、平成7年度申請分から、審査期間の約半年間の短縮、大学院の認可時期の早期化、申請書類の大幅な軽減などの改善が図られ、また、平成9年2月及び平成10年2月には、申請者の負担軽減を図る観点から、教員審査の簡素化、短期大学の学科増の審査期間の短縮等の改善が図られた。

イ.大学の設置認可手続きについては、大学の教育研究水準の維持向上を図りつつ、大学改革や社会の変化に機動的に対応するため、さらに簡素化を進める方向で検討することが適当である。具体的には、教員審査及び申請書類の見直し、電子化による負担軽減などを行う方向で検討することが適当である。

(3)地域社会や産業界との連携の推進

高等教育機関は、今後、その知的資源等をもって積極的に社会発展に資する開かれた教育機関となることが一層重要となる。
  各高等教育機関が地域社会や産業界等のニーズに積極的に対応し、それらの機関との連携・交流を通じて社会貢献の機能を果たしていくため、リフレッシュ教育の実施、国立試験研究機関や民間等の研究所等との連携大学院方式の実施、共同研究の実施、受託研究や寄付講座の受入れなど産学連携の推進を図っていく必要がある。
  企業と大学の学部や大学院が共同した教育プログラムの開発やサテライト的な学習の場の設定などを通じて、社会人が企業と大学を往復して学習するための環境の整備を図っていくことが必要である。その際、テレビ会議システム等により大学の授業を社会人が企業の会議室等で受講できるようにするなど、発展の著しい情報通信技術を利用する試みも大学の授業の将来的可能性を広げるものとして積極的に推進する必要がある。
  また、インターンシップ制度の積極的な導入や、学生のボランティア活動等地域社会に貢献する活動の促進に積極的に取り組むことも重要である。

ア.大学と地域社会や産業界の連携の強化を図ることは、大学がその知的資源をもって積極的に社会の発展に貢献するために極めて重要である。また、これにとどまらず、社会との連携を通じて大学の教育研究を活性化することにもつながるものである。

イ.大学の教育研究機能に対する社会の要請の高まりに積極的に対応するためには、大学が受け身の姿勢ではなく、種々の形態による社会人の受入れを始めとして、大学の社会貢献を強化する姿勢を積極的に地域社会や産業界に対し訴えかけることが重要である。

ウ.これまでも、社会人に対するリフレッシュ教育の実施、寄附講座の受入れ、共同研究の実施等により、大学の学部や大学院と企業等との連携が進められてきたところであり、国や地方公共団体等からの委託研究を通じた連携も行われている。さらに、学外における高度な研究水準を持つ国立試験研究機関や民間等の研究所等と大学院が事前に協定を結ぶことによって組織的に連携し、双方の交流の促進や共同研究のシーズの形成をめざす、いわゆる「連携大学院」も積極的に行われている。

エ.各大学においては、これまでの成果を踏まえ、これらの方向を一層進める必要がある。特に、我が国が先進諸外国に伍して経済競争力を維持していくため、新たな産業の創出、新たな社会経済システムの創造などの面での独創的な研究開発を推進するとともに、自らフロンティアを開拓することのできる創造性豊かな人材、起業家精神に富んだ人材を養成する観点からも地域社会や産業界との密接な交流が必要である。各大学においては、引き続き共同研究センターの整備・拡充、受託研究の受入れ、寄付講座・寄付研究部門の設置など産学連携の推進を図っていく必要がある。

オ.企業と大学が共同して教育プログラムを開発することなどを通じて、社会人が企業と大学を往復して学習するための環境の整備を図っていくことが必要である。その際、テレビ会議システム等の活用により、社会人が企業の会議室等で大学の授業を双方向で受講したり、大学院については密度の濃い研究指導を受けることができるようにするなど、発展の著しい情報通信技術を効果的に利用する試みも大学の授業の将来的可能性を広げるものとして積極的に推進する必要がある。

カ.社会人の大学院に対するアクセスを容易にするため、郊外に設置されている大学院が、企業等が多数存在している地域にサテライト的な学習の場を設けることについては、大学設置・学校法人審議会においても、一定の設備・施設が整備されていること等を条件として、弾力的な取扱いがなされているが、平成9年度現在、国立3大学、私立5大学の実施に留まっている。

キ.今後、各大学院が、サテライト的な学習の場を設けることに関しては、夜間大学院や昼夜開講制の大学院についてのみ認めるという現在の取扱いを改め、社会人を受け入れている大学院について広く認めることや、企業や地方公共団体等と連携して、マルチメディアの活用により職場や地域の身近な場所において授業または研究指導を行うことなど、より弾力的な対応を可能とする必要がある。

ク.また、大学と企業とが協力して学生に自らの専攻や将来のキャリアに関連した就業体験を与えるインターンシップ制度の積極的な導入や、ボランティア活動等地域社会に貢献する活動を授業に取り入れたり学生の自主的活動を支援したりすることに大学が積極的に取り組んでいくことも重要である。

(4)国際交流の推進

 大学の国際化を進め、国際交流を進めていくため、セメスター制の導入等を通じて大学の学部や大学院の仕組みを国際的通用性の高いものとしていくと同時に、奨学金の充実や外国語によるプログラムの実施などを通じて海外の留学生の受入れとして魅力ある国際競争力の高い大学を目指すことが必要である。

ア.大学の国際化を促進するためには、留学生受入れをはじめとする国際交流をより機能的に推進するための学内体制の整備・充実に努めるほか、外国人教員を含めた多様な教員構成とすること、海外との情報ネットワークを整備することなどが必要である。また、セメスター制の導入などにより、大学の学部や大学院の仕組みについて国際的な通用性に配慮しつつ、研究者交流や国際共同研究を一層進め、研究水準や教育内容において国際的競争力の高い魅力ある大学を目指し努力していく必要がある。

イ.留学生の受入れの推進という観点からは、企業名や個人名を冠した奨学金支給事業や民間が保有する宿舎の留学生への提供事業の実施など大学と地方自治体、地域の民間団体や企業が連携した留学生受入れの推進、留学生のインターンシッププログラムの実施体制の整備、外国語によるプログラムなど留学生にとって魅力ある教育プログラムの実施、外国の高等教育機関からの編入学や転入学による留学生受入れの推進、私立大学の留学生別科による留学生受入れの拡大などを進めることが必要である。

ウ.また、外国人を受け入れることだけでなく、日本人の学生が、在学中に、短期間であってもできるだけ外国に留学する機会を得られるようにすることが望ましい。その際、UMAP(アジア太平洋大学交流機構)におけるような単位互換基準等を利用した短期留学の推進も考えられる。

4 責任ある意思決定と実行 -組織運営体制の整備-

(1)責任ある運営体制の確立

1)新しい自主・自律体制の構築
 21世紀の大学には、社会の知的分野での中核機関として、教育研究を高度化し、新しい知識・技術や学問・文化を創造していくことが期待される。このため、大学の組織運営については、大学の主体性と責任を基本としつつ、教育研究の学際化・総合化、社会との関係の緊密化等の大学に対する今日的要請に応え得る、開放的で積極的な新しい自主・自律体制を構築することが重要である。
  具体的には、1)大学運営をより充実した機能的なものとするため、学内の意思決定の機能分担と連携協力の基本的な枠組みを明確化する、2)社会の意見を聴取し、社会に対して責任を明らかにする仕組みを整備する、という方向で、法改正を含め必要な改革を進めることが適当である。

(大学運営の課題)
ア.21世紀の我が国の大学には、既成の教育研究の枠組みにとらわれずに、教育研究の高度化を図り、新しい知識・技術や学問・文化を創造していくことが期待されている。
 例えば、環境科学、情報科学、生命科学などの新分野・学際分野における教育研究を推進すること、学生の課題探求能力を高めるうえでその基礎となる教養教育の充実などの全学的な教育課題に対応することなどが大きな課題となっている。
 一方、大学と社会との関係についても、我が国の大学が、生涯学習機関、学術研究の中核的機関として発展するにつれて、その緊密化が進んでおり、国公立や民間の研究機関との連携協力、生涯学習への取組み、国際協力・国際交流の推進、国民に対する情報公開など、大学として対外的に責任ある活動を進めていくことが重要な課題となっている。
 また、こうした諸課題に積極的に対応していくためには、教育研究組織の改編やキャンパスの移転・再開発整備など予算・定員・施設等の各種資源の効果的配置や再配置の問題、各種基盤整備の問題についても、大学が全学的な見地から取組み一個の組織体として意思決定を行うことが求められる。

(新しい自主・自律体制の構築)
イ.大学運営の現状については、各大学の理念・目的やそれに基づく教育研究の在り方が明確でなく、大学全体としての取組みや体系的なカリキュラム作りが十分でないとの指摘がある。また、学部自治の名の下に新たな学問分野や社会的需要に対する取組みが遅れがちであるとの指摘がある。
 例えば、大学が、知的な分野での国際的な競争力をつけ将来に向かって大きく飛躍するための基礎作りをするために学部を越えた全学的な改革を断行しようとした場合、現行のシステムでは全学的な改革が円滑に行われにくいことについては、大学の内外を問わず多くの識者が指摘するところである。

ウ.これまでの学部中心の自治は、個々の専門分野ごとの意思決定を重視するものであり、大学を外部の関与から守るための仕組みとして機能してきた。しかし、現在では、この仕組みはむしろ大学自身が内に閉じこもる方向に作用し、知の拠点としての大学が未知の領域へと展開し飛躍する芽を摘んでいるとの状況も見られる。
 また、現行の大学における意思決定に関しては、学問の進展や社会状況の変化・複雑化が進むにつれて、意思決定の担い手である教員の過重な負担や本務である教育研究への支障を来しており、機動的な意思決定が困難となっているとの指摘もある。今後、複雑で困難な課題が増加すれば、意思決定自体の適切性にも問題は及ぶと考えられる。例えば、今後必要性が増すと予想される学内での資源の再配置等の問題を考えるとき、現行の意思決定の在り方には限界があることも確かなことと思われる。
 21世紀の大学には、大学の組織目標を明確化した上で、学内の各機関の機能分担と連携協力により、大学としての合理的で責任ある意思決定の体制を作ることが求められる。

エ.大学と社会との関係についてみると、社会の高学歴化や知的分野の拡大、いわゆる大学の大衆化の進行等に伴いその相対的な関係が変化しているにもかかわらず、依然として大学は社会に対して閉鎖的な面が見られる。積極的に社会との連携を深め、自らの教育研究活動の成果を社会に対して発信し、社会に寄与していくとの取組みが十分でないとの指摘がある。また、近年、公共的な組織について、社会的存在としてその活動状況等を社会に対して明らかにしていくことが求められているが、大学はこの点についても十分でないとの指摘がある。
 大学は学術研究の中核的機関であり、社会の知的分野の中心にある。また、大学は公共的な機関であり、公財政の支援を受ける対象でもある。大学は、自らが社会とともにあることを正面から認めて、主体性を持って学外と交流協力し、研究教育の面でそれぞれの独自の個性を打ち出し社会に問うていく積極的な姿勢を持たなければならない。

オ.21世紀を迎えるに当たり、我が国は大きな転換点に立っている。行政も民間企業も、それぞれが、厳しい環境の中で組織運営の在り方の見直しを迫られており、大学もその例外ではない。大学は、21世紀の新しい知識・技術や学問・文化を創造する役割を担う機関である。既成観念にとらわれずに真理探究を行うことを目的とする機関であればこそ、自らの組織運営についても、旧来の慣行にとらわれない新しい自主・自律体制を構築していくことが求められる。
 このことは、各大学における教育研究の自主的な取組みが十二分にその機能を発揮し、大学が真に学問の府としての役割を果たしていくうえで避けて通ることのできない道筋である。もちろん、改革には痛みを伴うが、その痛みを乗り越えて自ら改革を進め得るような運営システムが求められているのである。

カ.大学の組織運営については、21世紀の大学像や大学を取り巻く環境を考えたときに、1)大学運営の複雑化や大学を取り巻く状況の変化の中で、大学の意思決定の機動性や責任性を高める必要があること、2)成熟社会としての我が国において、大学外の様々な知恵を大学運営に生かしていく必要があること、3)公共的な機関として、活動の成果を社会に発信し、自主性に伴う責任を社会に対して明らかにしていく必要があること、などの観点に立って見直す必要がある。
 その際、各大学の自主的な対応を求めることが重要であるが、例えば、大学運営に関する基本的な枠組みに関して、法制度が不明確であるために関係者の理解が十分なものとならず、機能分担が適切になされないことも見受けられるので、制度の明確化など法改正を含め必要な措置を講じたうえで、各大学の取組みを求めていくことが必要である。
 また、各大学においては、制度の明確化等の趣旨に即して組織運営の適正化を図るとともに、その状況を公表し学内外の評価を求めることが適当である。
 なお、見直しに当たっては、国公私立大学のそれぞれの特質や社会的使命を踏まえて検討することが必要である。

2)学内の機能分担の明確化
 大学が一体的・機能的に運営され、また、教員が教育研究に専念できる体制を作るため、学内の機能分担を明確にした上で、学内において意見聴取や説明を十分行い、それぞれの連携協力の下で質の高い意思決定を行い得るような基本的な枠組みを整備することが必要である。
  このため、学内の意思決定に関する基本的な枠組みとして、大学の運営と教育研究に関する機能分担と連携協力の関係を明らかにするという観点から、学長を中心とする大学執行部の機能、全学と学部の各機関の機能、執行機関と審議機関との分担と連携の関係、審議機関の運営の基本等を明確化することが必要である。

(全学の意思決定の基本的な枠組み)
ア.大学は、教育研究活動を進め、その水準の向上をめざす自律的な機関である。
 21世紀の我が国の大学が、教育研究の各場面で飛躍的な充実を遂げ、社会からの理解と支持を得るためには、それぞれの大学が、一個の教育研究機関として一体的・機能的に運営されることが必要である。
 また、現在、多くの大学において、教授等が学内の各種会議に大変多くの時間をとられ、本務である教育研究活動の遂行に大きな支障を生じているとの指摘が数多くある。教学組織内における意思決定機能の分担と連携の関係を明確化するとともに、専門的業務や事務執行を事務組織に任せることによって教員の教育研究に当てる時間を確保し、教育研究に専念できる体制を作ることも重要である。

イ.このため、学長を中心とする大学執行部、評議会等の全学的な審議機関、学部長、学部の教授会等が、それぞれの機能分担を明確にした上で、学内において意見聴取や説明を十分に行い、それぞれの連携協力の下で質の高い意思決定を行い得るような基本的な枠組みを整備することが必要である。
 学内の意思決定に関する基本的な枠組みとしては、学長を中心とする大学執行部の機能、全学と学部の各機関の機能、執行機関と審議機関の分担と連携の関係、審議機関の運営の基本等を明確化する必要がある。

(学部の組織運営)
ウ.大学全体の意思決定が直面している課題については、学部の段階でも、同様の課題があることがしばしば見受けられる。学科の枠を超えた教育研究活動の必要性や対外的な連携協力の必要性が増大していることにかんがみ、学部段階においても、意思決定の機能の明確化が求められる。

1)学長を中心とする全学的な運営体制の整備

 大学として取組むべき全学的な課題については、学長が中心となって全学的な教育研究目標・計画を策定し、それを学内外に明らかにする、また、大学運営を責任をもって遂行するうえで必要な企画立案や学内の意見調整を行うための学長補佐体制を整備することとし、例えば、運営会議(仮称)(副学長、学長の指名する教員、事務局長等)を設ける、などの方向で考えることが適当である。

  国公立大学の学長の選考方法については、責任ある大学運営を行ううえで適切なものとするため、評議会の責任において委員会を設けるなどして適任者を事前に絞り込むなどの改善が必要である。

  学部の運営体制については、学部長の職務の明確化を含めて、全学運営体制の整備に準じて整備する方向で考えることが適当である。

(制度の現状)
ア.学長、副学長の設置や職務については、学校教育法では、「大学には、学長・・・を置かなければならない。大学には、副学長・・・を置くことができる。」「学長は、校務を掌り、所属職員を統督する。」「副学長は、学長の職務を助ける。」等を規定している。
 学長の職務については、法律では、他の学校種の校長とほぼ同様の規定となっているが、一方で、評議会や学部教授会が置かれ、大学運営や学部の教育研究に関する重要事項を審議することとされている。このため、学長の役割や機能は、審議機関との関係で必ずしも運用上明確でない面がある。

(大学の教育研究目標・計画の策定・公表)
イ.大学運営を円滑に進めるためには、まず、大学運営の基本方針を明らかにすることが重要であり、全学の教育研究目標・計画を策定し、それを学内外に明示する仕組みを設ける必要がある。この教育研究目標・計画については、学長が中心となって責任を持って策定することが必要である。
 この教育研究目標・計画は、全学的な教育研究上の重要課題や学部の枠を越えた教育研究上の課題への対応方針を含む全学的な教育研究目標、及びその教育研究目標を達成するために必要な学内の予算・定員・施設等の資源の効果的配置・再配置等が含まれる。また、目標・計画の策定に当たっては、評議会や後述の大学運営協議会(仮称)の意見を聞いたり、その実施状況を報告したりすることが適当である。

(補佐体制としての運営会議)
ウ.複雑・高度化する教育研究課題を抱える中で、円滑な大学運営を行うためには、全学的な課題についての企画立案や学内の意見の調整の機能が重要である。学長には、責任ある強いリーダーシップの発揮が求められるが、対外的活動を含めて大学運営の機能を担っている学長一人で、このような機能を十二分に発揮することは今や困難な状況が見られる。
 このため、大学運営を責任をもって遂行するうえで必要な企画立案や学内の意見調整を行うための学長補佐体制を整備することとし、例えば、運営会議(仮称)(副学長、学長が指名する教員、事務局長等)を設けるなどの方向で考えることが適当である。

(学長の選考方法・任期)
エ.学長の選考は、国公立大学においては、評議会が責任をもって行うこととされ、そこで選ばれた候補者を学長が文部大臣又は地方公共団体の長に申し出、文部大臣又は地方公共団体の長が任命する。
 学長候補者の具体的な選考に当たっては、評議会の定めるところにより、多くの大学で教員による投票が行われるが、その場合に、投票者である教員にとって候補者についての十分な情報のないままに投票が行われ当選者が決まっているのではないかとの指摘がある。
 今後予想される複雑な状況の中では、リーダーシップを発揮しつつ責任を持って適確な大学運営を行うことのできる適任者を学長に選任することが重要である。適任者を選ぶためには、教員による投票を行う場合、評議会の責任において委員会を設けるなどして数名の適任者を事前に絞り候補者として示した上で投票を行うこと、その際、学外からの候補者を含めて検討すること、投票に参加する教員の範囲について大学運営の最高責任者を選ぶ上で適切なものとすることなどが必要である。
 なお、学長の任期については、責任ある大学運営を行ううえであまりに短いことは適当でなく、例えば、短くとも4年以上とすることや再任を認めることが適当である。

(学部の運営体制)
オ.学部長については、法律上の根拠となる規定がなく、その職務や機能は定められていない。しかし、学部の運営については、学部内での学科間の調整の必要性、学外の組織との連携の必要性など、全学と同様の問題が見られる。このため、学部長の職務を明確化するとともに、学長を中心とする全学運営体制の整備に準じて、学部長を中心とする学部の運営体制について所要の整備を図る方向で考えることが適当である。
 なお、学部長の任期については、責任ある学部運営を行ううえであまりに短いことは適当でなく、例えば、2年以上とすることや再任を認めることが適当である。

2)全学と学部の各機関の機能

 評議会等と学部教授会のそれぞれの機能については、評議会は、大学としての教育課程編成の基本方針の策定、全学的教育に関する教育課程の編成などを含め、大学運営に関する重要事項についての審議機能を担うこととする。学部教授会は、学部の教育課程の編成などの学部の教育研究に関する重要事項についての審議機能を担うこととする。このように、それぞれの基本的な機能を明確化することが必要である。

  学長や学部長(執行機関)と評議会等や学部教授会(審議機関)との関係については、審議機関は学部の教育研究あるいは大学運営の重要事項について基本方針を審議することとする。執行機関は企画立案や調整を行うとともに、重要事項については審議機関の意見を聞きつつ最終的には自らの判断と責任で運営を行うこととする。このように、機能分担と連携協力の関係の基本を明確化することが必要である。
  審議機関については、学長や学部長が議長として議案の発議や議事の整理を行うこと、事柄に応じ必要な場合には多数決で議事を決することなど、審議の基本的な手続きを明確化することが必要である。

  なお、各審議機関が必ず審議すべき事項等については、法制度上の明確化を図る方向でその整理について検討することが適当である。

(学部教授会)
ア.教授会については、学校教育法において、「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない。」と定められている。
 学部教授会については、国公立大学の教員等の人事に関する規定を除けば、法令の規定が簡潔であるために、実際の審議事項が多くなりすぎたり、本来執行機関が行うべき大学運営に関する事項や執行の細目にわたる事項についても学部教授会の審議や了解を得なければならないといったような運用が行われる場合が見受けられる。

(評議会等の全学的な審議機関)
イ.国公立大学には、原則として、複数の学部を置く大学に、全学的な審議機関としての評議会が置かれている。私立大学については、法令上の規定はないが、大学評議会などの全学的な審議機関が設けられている例がかなり見られる。
 国立大学の評議会については、「国立大学の評議会に関する暫定措置を定める規則(省令)」により定められており、公立大学の評議会については、条例・規則により、各地方公共団体ごとに定められている。
 国立大学の場合、具体的には、数個の学部を置く大学には評議会を置くこととされ、一個の学部を置く大学においても、当該大学の事情により、評議会を置くことができることとされている。評議会は、原則として、学長、各学部長、各学部ごとに教授2人、各附置研究所の長で構成され、審議事項については、学長の諮問に応じ、学則その他重要な規則の制定改廃、予算概算の方針、学部等の重要な施設の設置廃止に関する事項などの大学の運営に関する重要事項を審議することとされている。
 国立大学の評議会については、昭和28年以来、当分の間の暫定措置として設けられたまま現在に至っており、学長と評議会との機能分担が必ずしも明確でない面がある。

(審議機関の機能の明確化)
ウ.学部教授会は、学部の教育研究に関する重要事項について、具体的には、学部の教育課程の編成、学生の入学、退学、卒業、学位の授与などについて審議する機能を担うことが適当である。(教員人事については3)で後述する。評議会についても同じ。)
 評議会は、大学運営に関する重要事項について、具体的には、大学としての教育課程編成の基本方針の策定、全学的教育に関する教育課程の編成などを含め、全学的な運営上の重要課題、学部間の調整を必要とする事項などについて審議する機能を担うことが適当である。
 このような分担と連携の関係の整理を行うことによって、大学として、教養教育の充実、学部段階の専門教育の過度の専門化の改善、国際化・情報化など現代社会の課題に対応した教育の実施、学際的分野の研究推進などの課題に積極的に対応していくことが求められる。

(審議機関相互の関係)
エ.審議機関相互の関係としては、全学的な重要事項については、関係の学部教授会の意見を参考としつつ、評議会等の全学的審議機関において審議するものである。その際、評議会等の全学的審議機関の構成員は、自らが所属する部局の意見を踏まえつつ、最終的には全学の教育研究の水準向上の観点から、審議に参画することが求められる。

(執行機関と審議機関の関係)
オ.執行機関と審議機関との関係については、審議機関は、教育研究あるいは運営の重要事項について基本方針を審議することが適当である。一方、執行機関は、教育研究上の課題についての企画立案や関係者の意見の総合調整を行い、円滑で充実した運営を行うことが求められる。また、執行機関は、重要事項については審議機関の意見を聞きつつ、最終的に自らの判断と責任で運営を行うことが適当である。

カ.なお、予算の運用に当たって、設置者からその権限の一部が大学執行部に委ねられることがある。このような場合において、大学によっては、審議機関において大学執行部の裁量を事実上制約している例があるといわれるが、大学執行部は、必要に応じて審議機関の意見を徴するとしても、自らの判断で決定する必要がある。

(審議機関の運営の基本)
キ.評議会や学部教授会については、大規模な大学・学部の場合、会議として規模が大きすぎて実質的な討議が行われることが難しい状況がある。教育研究の進展や社会状況の複雑化が予想される中で、責任ある意思決定を行うためには、評議会、教授会について規模の見直しや審議事項の性質や責任の度合いに応じた適切な構成とする必要がある。
 また、評議会や学部教授会の運営に当たって、全学や学部への説明と意見聴取の機会を工夫しながら、学部長会議、代議員会等の仕組みを活用することにより、あるいは、例えば教育課程の審議をカリキュラム委員会に委任するなど専門委員会を活用することにより、代表者による実質的な討議ができるような仕組みを設けることが必要である。

ク.大学における意思決定の機能性を高めるとともに、個々の教員が教育研究に専念できる環境を整えるため、合議制の審議機関の審議事項を精選し、審議の基本的な手続きを明確化する必要がある。
 学長や学部長は、会議の議長として、議案を発議するとともに議事の整理を行い、合意形成に力を尽くすことはもちろんであるが、事柄に応じ必要な場合には多数決によることも含めて、審議決定の手続きを明確化することが必要である。

(法制度の明確化)
ケ.各審議機関が必ず審議すべき事項等については、法制度上の明確化を図る方向でその整理について検討することが適当である。また、各大学においては、明確化の趣旨に即して各審議機関の機能の適正化を図るとともに、その状況を公表することにより学内外の評価を求めることが適当である。

3)教員人事に関する意思決定の在り方

 教員の採用に当たっては、大学・学部の理念・目標や将来構想に応じた選考を行うことが必要と考えられるので、教員人事に関する意思決定の在り方について、教育面への配慮など選考基準をより実質化するとともに、選考委員会の構成の改善などにより選考過程の客観性・透明性を高めることが適当である。
 また、幅広い視点に立った教員選考を進めるため、学長・学部長の関与の在り方を明確化することが適当である。

(制度の現状)

ア.国公立大学の教員等の人事については、教育公務員特例法(昭和24年)の規定により、大学管理機関が権限を担うこととなっているが、大学管理機関が具体的に法定されなかったため、同法により、学長、評議会、教授会などがその権限を分担する仕組みとして今日に至っている。具体的には、国公立大学の教員の選考、採用の仕組みについては、学部の教授会の議に基づき学長が選考する。選考は、評議会の議に基づき学長が定める基準により行うことが定められている。
 その運用については、大学・学部により異なるが、例えば、
 1)採用すべき教員の担当する授業・研究分野を決定する。
 2)公募や推薦依頼により候補者を探す。
 3)選考委員会で候補者を絞り込む。
 4)絞り込んだ候補者を学部の教授会に推薦する。
 5)教授会の投票等により採用候補者を決定する。
 6)学長の承認を得て採用候補者を最終決定し、発令する。

などの過程により行われている。
 私立大学については、大学により選考の過程は様々であろうが、建学の精神に基づく学校法人経営という観点から、学校法人の理事会が審議の上、最終的に決定することとなる。

イ.21世紀の大学は、高等教育の普及に伴い、多様な学生を教育する必要が生じるため、学部教育における幅の広さや教育機能の強化が強く要請される。しかし、教員人事等の現状は、講座や研究室などの単位で狭い視野から研究業績等を中心に専門分野の研究能力が評価されるとの傾向が見られ、教育能力や教育研究能力の幅の広さが十分評価されていないのではないかとの指摘がある。
 また、教員採用の公募制をとっている場合も、その選考の基準や過程が透明でない場合が多いとの指摘がある。

(改善の方向)
ウ.教員人事については、本審議会においては、これまでに、他校出身者の採用、女性の教員の採用、社会人の採用、外国人の採用等を促進することを求めてきたが、今後ともこれらについての配慮が各大学においてなされることが必要である。

エ.教員の選考の基準については、当該大学・学部の教育研究の理念・目標や将来構想に即して、水準の向上に実質的に資する内容からなる基準を示すことが必要であり、その際、研究面のみでなく教育の担当者として求められる資質についても、明らかにすることが適当である。

オ.選考の手続きについては、まず、採用すべき教員の担当する授業・研究分野の決定において、幅広い視点に立って教育研究の進展や社会的要請を踏まえた検討を行うことが重要である。また、選考委員会に学内外の関連分野の教員の参加を求めたり、学外の専門家による評価・推薦を求め参考にするなどの方法により、外部の意見を聴取し、より総合的な判断を可能とする客観性・透明性の高い仕組みを設けることが考えられる。

カ.教員選考の方法については、上記アの通りだが、その過程において学長・学部長の果たす機能は必ずしも明らかでない。今後は、学際的な研究分野の充実、幅広い教育の実現が求められており、大学全体、学部全体の幅広い視点に立った教員選考を進めるため、学長・学部長の関与の在り方を明確化することが適当である。

4)学校法人の理事会と教学組織との関係

 学校法人理事会と大学の教学組織との機能分担と連携協力の在り方については、教学組織における学長、評議会、教授会等の役割や機能を明確化するほか、両者の連携・意思疎通を十分に行うため、理事会の構成の工夫、あるいは理事会と教学組織の代表者との合同会議の設置などの方向で改善を図ることが適当である。

ア.私立大学の運営について重要なことは、各大学の自主性を尊重するとともに、その公共性が確保されることである。私立大学は学校法人がこれを設置する。学校教育法においては、設置者である学校法人が学校を管理し、経費を負担するとされており、また、私立学校法においては、学校法人はその設置する私立学校の経営に必要な財産を有しなければならないとされているなど、学校法人はその設置する私立大学の管理運営に責任を有する。私立大学は、運営実態も様々であるが、その建学の精神を実現し、大学改革を推進していくためには、大学の設置者である学校法人が大学の在り方全体について責任を持ち、かつ円滑な運営を行わなければならない。

イ.学校法人の理事会と教学組織との関係を明確化するためには、まず、教学組織内部における学長、評議会、教授会等の機能分担を明確化することが重要である。学内における機能の分担と連携の関係が整理されることによって、設置者と大学の各組織の協働関係が機能するものと考えられる。

ウ.大学によっては、設置者が決定すべき予算などの学校法人経営に関する事項についてまで教学組織の審議機関が具体的に審議決定し、設置者の裁量を事実上制約している例が見受けられる。
 設置者は予算や定員などの学校法人経営に関する事項についても、教学組織の意見を聞くことは大切なことであるが、教学組織の役割は、理事会の構成員として参加している場合は別として、あくまでも教育研究上の観点から、予算に関する方針について意見を述べることにとどまるものである。

エ.学校法人の設立目的は、建学の精神に基づき大学を設置運営することであり、より良き教育研究を実現するためである。本来、理事会と教学組織は、共通の目的の実現のために役割分担をするものであり、こうした両者の基本的な関係を相互に理解した上で意思疎通を十分に図っていくことが大切である。
 学校法人の理事会と教学組織との間の意思疎通を十分に行うためには、例えば、教学側に配慮した理事会の構成の工夫、あるいは理事会と教学組織の代表者との合同会議の設置、理事会側が経営方針や経営上の課題を教学組織に説明したりする努力をすることなどの工夫を行う方向で改善を図ることが考えられる。

5)大学の事務組織等

 大学の事務組織については、教学組織との機能分担と連携協力の関係の明確化が求められる。また、大学運営の複雑化、専門化に対応するために、職員の研修や処遇等について改善する必要がある。

ア.大学の事務組織については、大学における主体的・機動的な改革の推進や教育研究機能の一層の充実に貢献できるよう、教学部門とのパートナーシップの確立を図るとともに、業務の専門性や効率性を向上させる必要がある。
 事務職員は、教育研究の支援をして、その充実・高度化を図るうえで不可欠の存在である。科学技術基本計画においても、事務系職員の資質向上を図る必要があるとの指摘がある。
 また、学長、学部長等の行う大学運営業務についての事務組織による支援体制が十分でないとの指摘もある。

イ.このため、学長、学部長の職務を助けるとの観点から、前述の運営会議(仮称)に事務局長等を参加させること、企画や補佐機能を担う職員の適切な配置を行うことなどが適当である。また、国立大学の事務局幹部職員については、在任期間の長期化等により当該大学の職員として十分に手腕を発揮できる体制を作ることが求められる。公立大学の事務局幹部職員については、大学の事務に精通した人材を確保することへの配慮が求められる。
 また、国際交流、大学入試等の専門業務について教育と事務の中間的な領域が広がっていること、大学の情報発信や地域との連携機能の充実が求められていることなどから、一定の専門化された機能を事務組織に委ねることが適当である。

ウ.大学の事務組織と大学の教学組織との機能分担と連携協力を進めていくためには、事務処理の業務の高度化のための条件整備が必要である。
 職員一般の問題としては、全学的な観点からの適正な職員配置を行うとともに、採用後比較的早期の段階から学部や大学の枠を越えた人事交流を行い各種の業務経験を積ませることや、民間企業等での研修の機会を充実することが必要である。また、業務の効率性を高め必要な業務を充実していくため、人事、会計・財務の柔軟性の向上や設置認可等の手続きの簡素化を図るとともに、事務処理の電算化や業務の外部委託を進めることも必要である。
 また、専門的な業務との関係では、大学の各種業務の情報化、国際化への対応、入試などの専門業務の高度化への対応という観点から、専門的人材の養成を含め、専門分野ごとの研修を充実するとともに、適切に処遇されることが必要である。また、外部の優れた人材の登用も考慮する必要がある。      

エ.国立大学の事務組織については、近年、学生数が増加し、教育研究の進展により教員数が増加し、事務の内容も複雑多岐なものとなっているにもかかわらず、事務職員等の定員が減少している状況がある。大学における教育研究条件が低下することのないよう、人事、会計・財務の柔軟性の向上等事務の合理化を進め、専門化を図ることが特に重要である。

オ.なお、教育研究の支援体制の充実という点では、技術職員の充実も重要な課題である。科学技術基本計画においては、我が国においては研究支援業務に対する社会的な評価や認識が十分でなく研究支援者が十分確保されていないとの指摘がなされている。近年、定員の減少等厳しい状況にあるが、科学技術創造立国を目指す我が国が、大学における教育研究の質的充実を進めていくためには、優れた技術職員の確保を図ることが重要であり、要員の確保、資質の向上等が必要である。

3)社会からの意見聴取と社会に対する責任
 大学が社会からの意見を聴取し社会的存在としてその責任を明らかにするとの観点から、大学の教育研究目標・計画、予算、自己評価などの事項について外部有識者の意見を聞くため、大学運営協議会(仮称)を設けることが必要である。
  大学運営協議会(仮称)は、必要に応じて助言・勧告を行うことが適当である。

(参与会等)
ア.大学運営に当たって、学外の有識者の意見を聞く仕組みについては、昭和48年以降に設置された国立大学には、参与会又は参与が置かれている。参与会については、「大学の運営に関する重要事項について、学長の諮問に応じて審議し、及び学長に対して助言又は勧告を行う」ことが定められている。また、参与会の構成員については、当該大学の卒業者、当該大学の所在地域の関係者、大学その他の教育研究機関の教職員、大学に関する識見を有する者とすることが定められている。また、参与については、「大学の運営に関し学外の有識者の意見を求めるため」の組織として設けられている。
 このような参与会や参与の仕組みについては、審議事項が具体的でないことや構成員が学外者であるため実際上審議回数が限られていることもあり、その意見が大学運営にどのように寄与しているかが必ずしも明確でなく、その実質化を図る必要があるなどの指摘がある。

(大学運営協議会(仮称))
イ.大学と社会との関係が密接化する中で、教育研究活動の自律的な運営や公財政の支出の必要性について社会的に十分な理解を得るためには、大学に対する社会の期待や要望を把握するとの観点から、大学運営について外部から意見を求め、それに対して適切に応えていくことが必要である。
 このため、大学が社会からの意見を聴取し社会的存在としてその責任を明らかにするとの観点から、大学の教育研究目標・計画、予算、自己評価等の事項について外部有識者の意見を聞くための組織として、大学運営協議会(仮称)を設置することが必要である。
 また、大学運営協議会(仮称)は、大学の運営体制や運営状況について、必要に応じて、助言・勧告を行うことが適当である。
 大学は、大学運営協議会(仮称)の助言・勧告については、それに従わなければならないわけではないが、その内容を十分踏まえた上で、大学としての主体的な意思決定を行うとともに、その結果を大学運営協議会(仮称)に報告することが適当である。

ウ.大学運営協議会(仮称)の構成については、教育面では卒業生の採用者、研究面では当該分野で高い水準にある研究者、連携協力の相手方となる地域の関係者のほか、他大学の教職員、当該大学の教職員OB等で構成することが考えられる。
 なお、具体的な人選に当たっては、形式的な委嘱を避け、当該大学の教育研究の改善に関して、実質的な討議がなされるよう留意することが必要である。

エ.なお、大学運営協議会の名称については、さらに検討する。

(2)大学情報の積極的な提供

 大学入学希望者などの直接の利用者や一般の国民が必要とする大学情報をわかりやすく提供する必要がある。具体的には、大学の教育研究目標・計画、大学への入学や学習機会に関する情報、学生の知識・能力の修得水準に関する情報(成績評価方針・基準)、卒業生の進路状況に関する情報、大学での研究課題に関する情報について、その提供を大学の責務とすることが適当である。また、大学の財務状況に関する情報についても公表を促進することが必要である。

(大学情報の提供の意義)
ア.大学は公共的な機関であり、大学の教育研究活動に関する情報を社会に対して提供することは、大学の社会的な責務である。
 近年、高等教育が普及し、我が国の大学が生涯学習機関、学術研究の中核的機関として発展するなかで、今後21世紀に向けて、大学と社会との関係はさらに緊密化するものと考えられる。
 大学における教育研究活動については、かねてから、閉鎖的で国民に対して開かれたものとなっていないとの指摘がある。もちろん、各大学において、大学の教育研究状況を知らせるための広報資料やホームページの作成など、「開かれた大学」に向けての努力も見られるが、情報の取捨選択が必ずしも適切でなかったり、わかりやすくないなど、一般的には十分なものとなっていない。

イ.近年、大学の教育研究活動について正確な情報を知りたいとの社会的な関心は急速に高まっている。その関心には、自分が入学を希望している大学の教育研究活動は活発に行われているかといった個別的な観点によるものから、我が国の大学が国際的に通用する教育研究水準にあるか、公財政が支出される組織として効果的に運営されているかといった一般的な観点によるものまで、幅広いものがある。
 各大学は、国民の適切な理解を得るために、教育研究活動の状況やその成果、教育研究活動の改革充実に向けた取組みの状況を広く社会に対して積極的に公表していくことが必要である。

(大学情報の積極的提供)
ウ.このため、大学の提供するサービスを直接利用する者や国民一般にとって関心が高いと考えられる大学の教育研究目標・計画、大学への入学や学習機会に関する情報、学生の知識・能力の修得水準に関する情報(成績評価方針・基準)、卒業生の進路状況に関する情報、大学での研究課題に関する情報については、その提供を大学の責務とすることが適当である。また、大学の財務状況に関する情報についても公表を促進することが必要である。

エ.各大学の情報提供の内容、方法については、現在、各大学の大学要覧やホームページにおいて公表されている情報の内容や提示の方法について利用者等の意見を聞いて見直し、インデックスの工夫などにより、わかりやすいものとする必要がある。
 また、文部省や大学入試センター、学位授与機構、学術情報センター、日本私立学校振興・共済事業団等においては、各大学の提供する各種の情報を集約提供する立場にあることから、これらの情報を整理し、国民にとってわかりやすい形で提供する仕組みを充実する必要がある。

5 多元的な評価システムの確立 -大学の個性化と教育研究の不断の改善-

21世紀において、我が国の大学が教育研究の水準向上を進め、世界のトップレベルの大学と伍して発展していくためには、社会の理解と支援のもと、それぞれの大学が、教育研究の個性を伸ばし、質を高めるための環境を整備することが重要である。
  このため、自己点検・評価の充実、客観的評価の導入などを通じて多元的な評価を行い、大学の個性を伸ばし、教育研究の内容・方法の改善につなげるシステムを確立する必要がある。

ア.我が国の大学が、今後とも、教育研究の水準向上を進め、世界のトップレベルの大学と伍して発展していくためには、教育研究活動の水準向上の目標を定め、その達成状況を評価し、評価結果に基づく改善を進めていくことが必要である。

 大学評価の取組みの基本は、各大学が自らの教育研究水準の一層の向上を図るために、自らの教育研究活動の点検・評価を行う「自己点検・評価」にある。その実施と結果の公表は、大学の教育研究活動が自主的に行われることに対する社会の信頼を確保するうえでも重要である。その上で、大学の教育研究活動の評価については、その客観性、透明性を高め、評価としての実質化を図ることが強く要請されている。

イ.本審議会の審議の参考とするために、広島大学大学教育研究センターに対して「大学の評価システムに関する全国調査」(平成10年4月)が委託された。その調査結果によれば、大学評価の問題点として、学内に評価の専門家がいないこと、他の大学との比較ができないこと、実態での改革が先に進み評価が後付けになっていること、社会や産業のニーズにあった評価がなされていないこと、評価の結果や存在が学内で知られていないこと、評価の在り方が形骸化していること、点検・評価の方法や技術に進歩が見られないこと等の点が指摘されている。
 また、今後の点検・評価の在り方についても、現行の自己点検・評価の在り方が望ましいとは必ずしも認識されておらず、評価の結果を改革に結びつける政策的な仕組みが必要である、外部の第三者が検証する仕組みが必要である等の意見が多数見られる。

ウ.大学評価についての情報は、現在でも社会に多数流通しており、このことは大学等における教育活動の充実に対する社会的要請の反映であると見ることができる。しかし、その中には、根拠が明らかでないものや、入学者選抜に関する偏差値情報のように、教育研究活動の特定の部分だけを取り出した偏ったものも見られる。
 このように大学の教育研究に対する社会的評価の現状は必ずしも十分なものではなく、このような環境のもとで行われる大学間の競争は、大学の教育研究の水準向上や社会的要請への適切な対応につながるものとはなり難い。大学の教育研究の個性を伸ばし、質を高めていくためには、その基礎となる評価の内容・方法・基準等をその目的に照らして適切なものであることが不可欠である。教育研究活動の質について、教育研究活動の多様性を保障しつつ公正に評価する客観的な評価システムを導入し、組織的、恒常的にこれを運営していくことが求められる。

(1)自己点検・評価の充実

 自己点検・評価の一層の充実を図るため、自己点検・評価の実施、その結果の公表及び学外の第三者による検証を大学の責務として位置付けることが必要である。

(現状)
ア.大学の自己点検・評価については、平成3年の大学設置基準における制度化以降、順次定着しており、文部省の調査では、平成8年10月現在、国公私立大学全577校のうち、85%の大学で自己点検・評価を実施し、57%の大学でその結果を公表している。
 また、「大学の評価システムに関する全国調査」によれば、回答した418校のうち、平成9年度までに全学的に実施した大学は83.7%であり、2度以上実施した大学も56.4%となっている。自己点検・評価の結果を他大学等に公表した大学は、69.9%となっている。

(実施と結果の公表)
イ.大学の自己点検・評価については、「点検あって評価なし」との厳しい指摘があることに見られるように、形式的な評価に陥り教育活動の改善に十分結びついていない、外部への情報発信が足りないとの状況がある。このような状況等を踏まえて、大学における教育研究水準の一層の向上を図る観点から、大学自らが教育研究の質的充実を進める責任があることを明確にするとともに、大学の教育研究活動の透明性を高めるため、現在は努力義務である自己点検・評価の実施とその結果の公表を各大学の責務として位置付けることが必要である。

ウ.自己点検・評価は、各大学が自らの教育研究の理念・目標に照らして、教育活動及び研究活動の状況を点検・評価することが基本である。
 各大学においては、実際に評価を行う際に、国公私立の別や専門分野の別、新設、既設の別等の実情に応じ、教員組織、施設設備、管理運営・財政、自己評価体制、国際交流や社会との連携等、各大学等の判断により適切な項目が設定されることが望ましい。
 もちろん、自己点検・評価は、不断に行われるべきであるが、教育研究活動に関する総括的な点検・評価の実施は、学問の進展や社会の変化に対応しつつ、充実した内容とするため、少なくとも4年に1回は実施することが適当である。
 また、自己点検・評価の実施組織の単位については、「全学」及び専門分野での教育研究上の基本的な組織である「学部」(必要に応じて大学院研究科)を単位とすることが適当である。

エ.自己点検・評価の内容・方法については、先に示した調査においても、大学評価については、学内に評価の専門家がいないことが問題であると認識されていることがわかる。各大学においては、教育内容・方法に関する評価の在り方等についての議論を積み上げ、専門的な調査研究を充実することが適当である。
 また、自己点検・評価の結果については、各大学の自己点検・評価委員会等で検討が行われているが、現状では必ずしも十分なものと言えない。大学改革に当たって、企画→実行→評価という「改革サイクル」を適切に機能させるためにも、各大学において、自己点検・評価の結果を教育内容・方法等の改善に結びつける仕組みを整備することが必要である。
 なお、自己点検・評価の結果の公表については、分厚い報告書を作成しても、学内の関係者以外には読まれていないとの厳しい指摘もある。各大学が教育研究活動の改善に取り組んでいる状況を学生や国民に対してわかりすく示すために、自己点検・評価報告書の概要を要約した資料を作成して広く提供するなどの工夫を行うことが望ましい。

(学外の第三者による検証)

オ.自己点検・評価という形式には、実質的な評価を行ううえで限界があり、実際、各大学の教育研究活動の質的な充実につながっていないとの指摘もあるので、より一層効果的に実施するため、学外の第三者による検証を大学の責務として位置付けることが必要である。
 その際、学外の第三者の具体的人選については、学外の第三者による検証が、大学の自己点検・評価制度を効果的に実施するための仕組みであることから、各大学に委ねることが適当である。なお、人選の客観性を高めるために、検証を行う第三者を大学団体等が推薦することも考えられる。

(2)客観的な評価システムの導入

 大学における教育研究活動について客観的な立場から評価を行う組織としては、大学団体、学協会、大学基準協会等が考えられ、それぞれの機関がその特質に応じた多面的な評価を行うことや、各大学が多様な個性を存分に発揮できるような評価が行われることが必要である。
 しかし、大学が社会的存在としてその活動状況等を社会に対して一層明らかにしていくためには、透明性の高い客観的評価を行うとともに、大学評価情報の収集提供、評価の有効性等の調査研究を推進するための第三者機関(例えば、大学共同利用機関と同様の位置付けの機関)を設置する必要がある。

(多様な主体による評価)
ア.各大学の教育研究活動の個性を伸ばし質を高める努力を促進するためには、各大学の教育研究活動に関して客観的な立場からの評価を充実することが必要である。客観的な評価を行う主体としては、ピア・レビューの観点からは、大学団体、学協会、大学基準協会等が考えられる。
 大学が行う教育、研究、組織運営などの諸活動について、それぞれの評価主体の特質を生かした多面的な評価が実施されることが期待される。
 例えば、大学団体においては設置形態の特性を考慮した上での評価が、学協会においては専門分野別の評価が、大学基準協会においては維持会員校としての加盟判定審査、教育研究水準の向上への取組み状況等についての相互評価審査等の評価が、それぞれ期待される。

イ.客観的評価を進めるに当たっては、それぞれの大学によって、研究を重視する方向、専門教育を重視する方向、教養教育を重視する方向など、それぞれの個性や建学の理念・目標があるので、一律の尺度で評価することは適当でない。客観的評価に当たっては、各大学の多様な個性が存分に発揮されることや、国公私立の別、国際的な通用性など、多様な観点に留意した評価が求められる。

(評価と情報収集・提供、調査研究の第三者機関)
ウ.大学は公共的機関であり、公財政の支援を受ける対象である。大学が社会的存在としてその活動状況等を社会に対して一層明らかにしていくためには、より透明性・客観性の高い評価を推進することが必要である。このため、大学の教育研究活動について、ピア・レビューを基本としつつも、教育を受ける学生自身、卒業生を雇用している企業、共同研究を行う企業の研究開発担当者などの利用者の視点等も加味した評価を進めていくことが必要である。
 また、大学評価を真に大学の教育研究の質の向上や個性化につなげていくためには、広く社会で行われている大学評価を含めて、多岐にわたる大学評価に関する情報の収集・分析・提供を行うとともに、大学評価の各種指標の有効性等に関する調査研究を進めていく必要がある。
 こうした諸活動を進めるに当たっては、教育研究上の専門的な判断を基礎としつつ、評価の多様性、各専門分野ごとのきめの細かさ、評価の透明性や説明責任を確保するためには、相当数の専門スタッフが必要となる。このため、第三者機関(例えば、大学共同利用機関と同様の位置付けの機関)を設置する必要があり、速やかな対応が望まれる。

(教育活動の評価について)
エ.教育活動の評価については、教育の成果が対象となる学生の資質能力に負うところがあることなどから、研究活動の評価に比して難しい点があると考えられる。しかしながら、大学教員の中に見られる教育よりも研究を重視する考え方を改めるためには、教育についても評価の対象とすることが適当である。
 教育評価については、各大学の教育目標に照らして実際の教育課程は適切なものとなっているか、授業の設計や成績の評価などの点で責任ある教育方法がとられているかなどの観点について、各大学が行う自己評価をもとに評価を行うことが考えられる。また、各大学の教育方法改善の取組状況について、自己評価、学生の授業評価、シラバス作成、ファカルティディベロップメントの実施、少人数教育の実施などの具体的改善方策の実施状況の評価を行うとの方法も考えられる。
 いずれの方法をとるにしても、教育活動の評価に当たっては、各大学の教育活動における個性を伸ばし優れた取組みを促進することによって質的な向上を図るとの観点から評価を行うことが重要である。

(3)資源の効果的配分と評価

 各資源配分機関は、大学の教育研究の個性を伸ばし、質を高める適切な競争を促進し、効果的な資源配分を行うため、きめ細かな評価情報に基づき、より客観的で透明な方法によって適切な資源配分を行う必要がある。

ア.各資源配分機関は、これまでも大学審議会の答申等に基づいて、評価に基づく予算配分を行ってきているが、今後は、それぞれの予算の趣旨目的をより効果的に達成するよう、きめ細かな情報に基づき、より客観的で透明な方法によって配分を行う必要がある。各大学の教育研究活動の個性を尊重しつつ、国際標準を確保するためには、教育研究上の優れた取組みや教育研究活動の水準向上の努力が正当に評価され、より多くの資源が配分されることが必要である。

イ.資源配分を行う際に、その基礎となる評価については、学部ごとの(大学院については専攻ごと、分野によっては研究科ごとの)教育研究の特質に十分留意することが必要である。
 また、評価に当たっては、研究評価、教育評価を通じて、数値等に基づく客観的評価によることが基本となるが、それにはなじまない点があることも考慮し、評価委員による評価点を加味するなどの方法によって、過去の業績だけでなく、研究教育の改革への努力や将来への展望などの数値化しにくい要素をも評価していく工夫が必要である。
 なお、評価に基づく資源配分を行うに当たっては、各資源配分機関は予算等の趣旨目的を考慮しつつ、配分の基本的な方針・基準を専門分野の教育研究に識見の深い者等の意見を聴取して作成・公表するなど、客観性・透明性を確保する工夫が必要である。

6 高等教育改革を進めるための基盤の確立等

 高等教育改革を継続的に推進していくためには、各高等教育機関における自己改革の取組とともに、国として教育研究基盤の整備を行っていくことが不可欠である。そのための経費負担については、高等教育についての学生・家計の負担が重いものとなっていること、我が国は先進諸国と比較して国内総生産(GDP)や公財政支出全体に占める高等教育に対する公財政支出の割合が少ないことを踏まえると、公的支出を先進諸国並に近づけていく配慮が望まれる。その際、厳しい財政状<況も踏まえ、積極的に改革に取り組みその成果を挙げている大学等を重点的に支援していくことが必要である。
 各大学等において民間資金の導入等による財源の多様化・充実を図るとともに、国公私立大学の授業料については、物価水準等を考慮した程度の改訂など、学生・家計の負担があまり重くならないよう努力する必要がある。
 奨学金については、能力と意欲を持つ者に経済的援助を与えるという観点から、経済的困難度を重視した拡充を図り、学生の経済的必要度に応じて貸与できる方向を目指すことが必要である。また、大学院学生に対する奨学金については、自立した家計を持つ場合が多いことを考慮し、更に拡充することが必要である。
 私学助成については、今後、社会における人材養成需要を考慮するとともに、社会的要請の強い特色ある教育研究プロジェクトに対する重点的配分を一層図る必要がある。また、私立大学の収入源の多様化を図るための税制改正を更に進めることも重要である。

(総論)
ア.今後、我が国社会が活力ある発展を続けていく上で、高等教育の果たす役割は極めて大きく、特に、今後の進学率の高まりを踏まえると、その質的向上を図っていくことが重要な課題である。特に、各高等教育機関において、自らそれぞれの理念・目標に沿って自己改革を図っていくことを基本としつつ、それを実効あるものとして継続的に推進していくためには、これを各大学及び教員の負担だけに任せるのではなく、国としても、施設・設備の整備や教職員の配置などについて必要な財政上の措置を講ずるなど、改革を進めるための教育研究基盤を整備していくことが不可欠である。

イ そのための経費負担については、現状において、1)国公私立を問わず、高等教育についての学生・家計の負担は重いものとなっていること、2)我が国は他の先進諸国と比較しても、国内総生産(GDP)や公財政支出全体に占める高等教育に対する公財政支出の割合が少ないこと、などの状況を踏まえると、今後、大学院の高度化・多様化、学部教育の質的向上等の改革を推進するためには、公的支出を先進諸国並に近づけていく配慮が望まれる。その際、厳しい財政状況も踏まえ、積極的に改革に取り組みその成果を挙げている大学等を重点的に支援していくことが必要である。

(授業料)
ウ 国公私立大学の授業料については、高等教育費に対する学生・家計の負担が重くなっていることや、今後の進学率の上昇に伴い多様な所得層の学生が入学してくるようになることを考慮すると、各大学等において、民間資金の積極的導入等の財源の多様化と充実に一層努力するとともに、授業料については物価水準等を考慮した程度の改訂など、学生・家計の負担があまり重くならないよう努力する必要がある。

(奨学金)
エ.高等教育についての学生・家計の負担が重いこととなっていることを考慮すると、能力と意欲を持つ者に経済的援助を与えるという観点から、奨学金の拡充を図る必要がある。日本育英会の奨学金は、今後は、主に経済的困難度を重視する観点からの拡充を図り、学生の経済的必要度に応じて貸与することを可能とする方向を目指すことが適当である。高等教育に必要な経費を学生自身が貸与を受け将来返還するという日本育英会の奨学金制度は、単に資金の効率的運用を図るという観点のみならず、貸与を受ける学生の自立心や自己責任、さらには社会還元の意識の涵養に資するものと考えられる。また、大学院学生に対する奨学金については、大学院学生が親から経済的に自立している場合が多いことを考慮し、さらに貸与人員、貸与月額の拡充・改善を図るとともに、優秀な大学院学生に対する給費制の導入についても、今後、検討する必要がある。

オ.奨学金の資金を確保するため、一般会計財源及び財政投融資を適切に活用するとともに、返還金回収業務の一層の効果的・効率的実施を図る必要がある。なお、奨学金の拡充に伴い不可避となる回収不能リスクに対応するとともに、資金のより効率的運用を図る観点から、奨学金受給者が受益者として適正かつ応分のリスクを負担する仕組みについて検討する必要がある。

カ.また、この他ティーチングアシスタントやリサーチアシスタント、日本学術振興会の特別研究員制度も、学生に対する経済的支援策として重要な役割を果たしており、更にその拡充を図る必要がある。

(私学助成)
キ.私立大学等については、既に家計にとって大きな負担となっている授業料等の学生納付金の上昇を抑制しつつ、それぞれの理念・目標に基づき、より質の高い教育を提供していくため、私学助成の推進を図る必要がある。この際、私学が社会の要請にこたえる教育研究を積極的に推進し得るよう、社会における人材養成需要を考慮するとともに、社会的要請の強い特色ある教育研究プロジェクトに対する重点的配分を一層図る必要がある。        

ク.また、この場合、私立大学の収入源の多様化を図る観点から、寄付金収入の増加、資産運用の改善、奨学や研究などのための基金の拡充等に努めるとともに、私立大学の教育研究の取組状況や学校法人の経営内容が一層透明性の高いものとなることが求められることから、教学面及び経営面を通じて情報公開に係る取組を促進していく必要がある。財源多様化のための税制改正を図ることも重要である。

[付属資料] 今後の具体的改革方策(概要)

1.学部段階の改革

1 課題探求能力の育成 ―教育研究の質の向上―

(1)学部教育の再構築

1)教育内容の在り方 ―課題探求能力の育成―
 1) 教養教育の重視、教養教育と専門教育の有機的連携の確保
 ○ 課題探求能力育成を重視した授業方法やカリキュラム改善、実施運営体制の明確化等

 2) 学部専門教育の見直し
 ○ 基礎基本の重視、学際的視野の育成などを重視した教育の展開等

 3) 学部教育と高等学校教育との関係
 ○ 入学者選抜における履修科目指定制、入学後の大学教育の基礎教育の充実等

 4) 国際舞台で活躍できる能力の育成等
 ○ 外国語教育充実、海外留学推進、我が国の歴史や文化への深い理解、ディスカッション、ディベート等の訓練等

2)教育方法等の改善 ―責任ある授業運営と厳格な成績評価の実施―
 1) 授業の設計と教員の教育責任
 ○ 教員の教育責任の徹底、授業の事前学習等の指示の徹底等

 2) 成績評価基準の明示と厳格な成績評価の実施
 ○ 成績評価基準の事前公表、厳格な成績評価の実施等

 3) 履修科目登録の上限設定と指導
 ○ 履修登録可能単位数上限制の導入、指導教官制の導入推進等

 4) 教員の教育内容・授業方法の改善
 ○ 教員の教授内容・方法の改善のための組織的取組(ファカルティ・ディベロップメント)の実施努力義務化等

 5) 教育活動の評価の実施
 ○ 組織及び個々の教員の両面からの評価の実施、外部者の意見聴取と改善への反映等)

2 教育研究システムの柔構造化 ―大学の自律性の確保―

(1)多様な学習ニーズに対応する柔軟・弾力化 ―学生の主体的学習意欲とその成果の積極的評価―

1)3年以上の在学で学部を卒業できる例外措置の導入
 ○ 厳格な成績評価に基づき、早期卒業の希望を持ち、成績優秀な場合、在学3年以上で学部を卒業できる例外措置を導入

2)秋季(9月)入学の拡大等
 ○ 9月入学をより柔軟に導入できるようにするため、学年途中の入学に関する規定を改正等

3)単位互換及び大学以外の教育施設等における学修の単位認定の拡大
 ○ 現行30単位までとされている上限を60単位まで拡大、また大学が認定できる範囲も拡大、「遠隔授業」についても、同様に現行30単位から上限を60単位まで拡大

4) 単位累積加算制度の創設の検討
 ○ 学位授与機構における調査研究の成果を踏まえ検討

(2)地域社会や産業界との連携の推進

○ 企業と大学との共同による教育プログラムの開発・実施
○ マルチメディア等の活用による多様な学習機会の提供拡充
○ インターン・シップの拡大 など

(3)国際交流の推進

○ 留学生交流、教員・研究者交流の一層の推進  など

2 大学院の改革

1.課題探求能力の育成 ―教育研究の質の向上―

◎ 大学院の教育研究の高度化・多様化

1)大学院の組織編制の在り方
 1)大学院の制度上の位置付けの明確化
 ○ 大学院研究科を学部と同等の基本組織とし得ることを法令上明確化

 2)一定規模以上の学生を擁する大学院の専任教員等
 ○ 専任教員や専用施設・設備を備える必要があることを大学院設置基準上明確化

2)高度専門職業人養成のための実践的教育を行う大学院の設置促進
 ○ 経営管理などの分野における高度専門職業人の養成に特化した実践的教育を行う大学院修士課程設置促進のため、大学院設置基準等を整備

3)卓越した教育研究拠点としての大学院の形成、支援
 ○ 評価に基づき、一定期間、研究費や施設・設備等の資源を集中的・重点的に配分

2.教育研究システムの柔構造化 ―大学の自律性の確保―

(1)多様な学習ニーズに対応する柔軟・弾力化 ―学生の主体的学習意欲とその成果の積極的評価―

 1) 修士課程1年制コースの制度化
 ○ 集中的な履修により、2年未満の修業年限でも修了が可能なコースを導入

 2) 修士課程長期在学コースの制度化
 ○ 標準修業年限を超える期間を在学予定期間とする長期在学コース設定の可能化

(2)地域社会や産業界との連携の推進
 ○ 企業と大学との共同による教育プログラムの開発・実施
 ○ マルチメディア等の活用による多様な学習機会の提供拡充
 ○ 大学院と企業等の研究所との連携大学院方式や共同研究等の一層の推進  など

(3)国際交流の推進
 ○ 留学生交流、教員・研究者交流の一層の推進  など

3.大学の組織運営システムの改革

1 教育研究システムの柔構造化 ―大学の自律性の確保―

◎ 大学の主体的・機動的な取組みを可能とするための措置

1)教育研究組織の柔軟な設計
 ○ 国立大学の講座・学科目の編制について、各大学の柔軟な設計等を可能とする方向で検討
 ○ 公私立大学について、定員増加を伴わない範囲の学科設置等の審査を弾力化する方向で検討

2)行財政上の弾力性の向上

 1)国立大学の人事、会計・財務の柔軟性の向上
 ○ 教育研究経費の執行、大学教員の給与決定や兼職・兼業等の柔軟性向上を図る方向で検討

 2)公私立大学に係る認可手続き等の簡素化
 ○ 教員審査及び申請書類の見直し、電子化による負担軽減など簡素化を図る方向で検討

2 責任ある意思決定と実行 ―組織運営体制の整備―

(1)責任ある運営体制の確立

 1)新しい自主・自律体制の構築
 ○ 開放的で積極的な新しい自主・自律体制構築のため、法改正を含め、必要な措置

 2)学内の機能分担の明確化
 ○ 学長を中心とする大学執行部の機能、全学と学部の各機関の機能、執行機関と審議機関との分担と連携の関係、審議機関の運営の基本等を明確化

  • 学長補佐体制(大学運営の企画立案や意見調整を担当)を整備。例えば運営会議(仮称)を設置
  • 学部長の職務の明確化
  • 評議会、教授会の審議事項・手続きの明確化
  • 教員人事に関する意思決定への学長・学部長の関与の在り方の明確化
  • 学校法人の理事会と教学組織との機能の明確化
  • 大学の事務組織の役割の明確化 など

 3)社会からの意見聴取と社会に対する責任
 ○ 学外有識者による大学運営協議会(仮称)の設置、同協議会は必要に応じ、助言

  • 勧告

(2)大学情報の積極的な提供
 ○ 教育研究に関する情報提供の責務化

  • 大学への入学や学習機会に関する情報
  • 学生の知識・技能の修得水準に関する情報(成績評価方針、基準)
  • 大学での研究課題に関する情報 など

○ 大学の財務状況に関する情報について公表を促進

4.多元的な評価システムの確立

(1)自己点検・評価の充実
 ○ 自己点検・評価の実施、結果公表、学外第三者による検証の義務化

(2)客観的な評価システムの導入
 ○ 大学の教育研究活動についての大学団体、学協会、大学基準協会等による多面的評価の推進
 ○ 透明性の高い客観的評価を行うとともに、大学評価情報の収集提供、評価の有効性等の調査研究を推進するための第三者機関を設置

(3)資源の効果的配分と評価
 ○ きめ細かな評価情報に基づき、より客観的で透明性の高い方法による適切な資源配分を実施

お問合せ先

高等教育局企画課

-- 登録:平成21年以前 --