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21世紀の大学像と今後の改革方策について (大学審議会に諮問)

平成9年10月31日
大学審議会

 10月31日(金曜日)、大学審議会総会が開催され、町村文部大臣が同審議会に対して「21世紀の大学像と今後の改革方策について」諮問を行った。
 同審議会は、諮問を受けて直ちに審議を開始した。

○諮問文

次の事項について、別紙理由を添えて諮問します。

 21世紀の大学像と今後の改革方策について

平成9年10月31日

文部大臣 町村 信孝

(理由)

1 我が国の社会は、少子高齢化傾向の拡大、国際化、情報化、科学技術の発展、産業構造の変化などが急速に進みつつあり、厳しい財政状況の中、21世紀に向けて社会的な構造改革を積極的に推進すべき転換期にある。国土も狭く、資源も少ない我が国が、このような社会・経済の著しい変化に適応し、21世紀においても創造性と活力のある国家として発展を続け、また、国際社会において主要な役割を果たしていくためには、その原動力たる国際社会で活躍できる優れた人材の確保、未来を拓く新しい知の創造に努めていくことが不可欠である。

2 既に、各大学においては、大学審議会の答申などを踏まえ、教育研究の高度化、個性化及び活性化等を図る観点からの改革が行われ、大きな成果をあげてきている。しかしながら、様々な意味において不透明な時代であるとされる21世紀において、大学が求められる役割を十分に果たし、国際的にも評価されるようになるためには、大学の教育研究の質の飛躍的な向上が必要である。

3 そのためには、これまでの改革の成果を踏まえつつ、21世紀の大学像をわかりやすく示した上で、更に大胆な改革を推進していかなければならない。
(1)今日、高等教育の普及に伴う大学の大衆化と学生の多様化が進んだ結果、高等教育の水準そのものが厳しく問われている現状にある。このような状況にかんがみ、我が国全体の知的ストックの形成による国力の維持、高等教育の質の確保などの観点から、学部及び大学院を通じた高等教育の妥当な規模についての考え方、国公私立大学の役割分担などについて検討が求められる。
(2)21世紀においては、従来の大学院が担ってきた役割に加えて、大衆化以前の大学が果たしてきた質の高い教育の核となる部分を、大学院が中心となって担っていく必要があるものと考えられる。それにふさわしい大学院の役割、質、組織の在り方などを具体的に検討することが必要である。これまでの大学審議会の各般の答申で示されているとおり、これからの大学院は、学術研究の推進、研究者の養成、度専門職業人の養成、社会人の再教育、留学生の受入れ等を通じた国際貢献などの役割を果たすことが期待される。これに加えて、社会の様々な場面で的確なリーダーシップを発揮できる人材の育成を、大学院教育と学部教育が連携しながら行っていくことも重要である。さらに、21世紀の大学は、教育、研究両面において、国際的に通用する大学を目指すという観点を一層明確にし、卓越した教育研究拠点となる大学院整備のための具体的システムの構築方策や、専門職業人養成に対応した制度の柔軟化などを検討する必要がある。
(3)一方、学部段階については、多様な能力、適性を持った学生に対し、それぞれに応じた適切な教育を実践する真の意味での「教育機能」を重視し、充実することが求められている。その際、学部教育の多様性や、編入学、社会人の再入学、単位互換の推進などによる柔軟性や流動性の確保も大切な視点である。さらに、教養教育や人格形成のための教育の重視、国際化の進展に対応して大学生に海外での経験を与える機会を充実することや、将来のキャリアに関連した就業体験を推進することなども必要である。これらを含め、これまで大学審議会で検討されてきた学部教育像をもとに、新しい時代に対応した学部教育の姿を将来に向けてより鮮明にするとともに、教育の質を高めるための改革方策などを具体的に検討することが必要である。
(4)組織運営面では、教育研究の質的向上を図るため、各大学の自主性と自由度を高め、自律的な運営が行えるようなシステムや評価システムについて検討することが重要である。特に、国立大学については、人事・会計等の制度の見直しについても検討する必要がある。さらに、透明性の高い開かれた大学となるための情報公開の具体的促進方策についての検討が必要である。

4 以上のように、国際的に評価される大学を創るため、21世紀の大学像を明確に示すとともに、今後の改革方策として、1)大学院制度の改革、2)学部段階の改革、3)大学の組織運営システムの改革について検討を行う必要がある。

○ 文部大臣諮問理由説明

 平成9年10月31日

1 本日は、お忙しい中、御出席いただきましてありがとうございます。
 また、この度は、皆様方に第6期大学審議会委員の御就任をお願い申し上げましたところ、快くお引き受けいただき、厚く御礼申し上げます。

 申すまでもなく、大学審議会は、我が国の大学等に関する基本的事項について御審議をいただく重要な審議会であり、昭和62年に発足して以来、これまで18回にわたって、数々の貴重な答申・報告を行ってこられました。文部省といたしましても、これらの答申等の趣旨に沿って各般の施策を進めてまいったところであり、また、各大学においては、大学を取り巻く状況の変化に対応しつつ、個性豊かで活力にあふれる大学づくりを進めていくため、教育研究の高度化、個性化及び活性化等の観点から、かつてない規模で改革が実施され、大きな成果をあげてきております。
 しかしながら、国土も狭く、資源も少ない我が国が、様々な意味において不透明な時代であるとされる21世紀において、創造性と活力のある国家として発展を続け、また、国際社会において主要な役割を果たしていくためには、その原動力となる国際社会で活躍できる優れた人材の養成と未来を拓く新しい知の創造を担う大学が、その教育研究の質を飛躍的に向上していくことが強く求められております。今後、大学がこのような期待にこたえ、国際的にも評価されるものとなるためには、これまでの10年間にわたる大学改革を総括した上で、さらに、これからの大学が目指すべき具体的な方向、すなわち21世紀における大学像を分かり易く国民に提示し、それに沿って大胆かつ具体的な改革を一層推進していくことが不可欠であります。その際、現下の厳しい財政状況の中、より質の高い教育研究を実現するため、様々な創意工夫を図ることが必要であります。
 以上のようなことから、21世紀の大学像と今後の改革方策について、今回諮問することとした次第であります。

 次に、今後、御審議を進めていただくに当たり、諮問事項に関連し、私の考えておりますところを申し上げ、委員各位の参考に供したいと存じます。

2 はじめに、21世紀の大学像と高等教育の規模についての考え方に関してであります。戦後、我が国の高等教育は、普及という点において着実な伸展を遂げたものの、若年人口そのものが急激に減少しており、我が国全体の知的ストックの形成による国力の維持という観点からは、高等教育の規模の一定の確保を図ることが今後とも必要であります。一方で質の面からとらえると、高等教育の大衆化と学生の多様化が生じ、改めて高等教育の水準そのものが厳しく問われる現状にあります。そこで、このような状況が一層進展すると考えられる21世紀における学部レベルの高等教育の妥当な規模についての考え方に関し御検討をお願いします。その際、厳しい財政状況の中、国立大学の大学院の量的拡大を図る場合に学部レベルの規模の縮減をどのように考えるかについて考えていくことが必要かと思います。
 また、我が国の大学院は、専門分野により異なるものの、全体として見れば、欧米の先進諸国に比して質・量ともに低い水準にあると言われており、大学院の質・量両面での充実強化は、最も急がれる課題ではないかと考えております。そこで、大学院の規模については、欧米先進諸国並の大学院学生数の確保を図るという量的な拡充の観点から、先端科学技術分野、情報関連・国際関連分野、新規産業創出分野などの人材需要にも配慮しつつ、例えば2010年に在学者数30万人を目標とするなどの具体的整備目標について御検討いただきたいと存じます。あわせて、大学院の果たすべき役割にかんがみ、設置に際し大学院の教育研究の水準を高める方策についても御検討願います。
 さらに、21世紀における国公私立大学の役割分担とそれぞれの振興策、例えば国公立大学が大学院の教育研究や地域の活性化等について果たしてきた役割及び大学教育の約8割を担い、特に人文・社会科学分野で大きな役割を果たしてきた私立大学の役割についての今後の考え方、国公私立大学の授業料の在り方などについても御検討願います。

 第二は、大学院制度の改革に関してであります。
 21世紀において、我が国が、独創的な学術研究を推進し世界の学術の進展に貢献するとともに、国際社会で活躍できる豊かな創造性を持った優れた研究者の養成・確保を図るためには、その役割を中心となって担っていく国際的に評価される大学院の整備が一層重要なものとなると考えます。また、急速な技術革新や社会経済の進展を背景として、社会の要請に的確かつ機動的にこたえ、高度専門職業人の養成を意欲的に行う大学院への期待は、今後ますます増大するものと考えます。さらに、高等教育の普及に伴い、大学そのものが大衆化した結果、大衆化以前に大学の学部が果たしてきた質の高い教育の核となる部分を、今後、大学院が中心となって担っていく必要があると考えられます。
 このような観点から、21世紀の大学院はいかにあるべきかを展望しつつ、大学院の質の飛躍的向上を図るための改革方策を御検討いただく必要があります。
 具体的には、1)国際的に評価される卓越した教育研究拠点としての大学院の整備を図るため、博士課程を有する大学院の中から教員組織等の面でレベルが高く一定の基準を充たすものを評価し、重点的整備を行う具体的システムの構築方策、2)大学院大学や大学院中心の大学についての設置基準上の明確化、改組転換や新設の在り方などその整備の促進方策、3)高度専門職業人の養成に応じ、例えばビジネス・スクールなどで在学1年で修士号を取得できるコースの制度化を図る等の修業年限の弾力化、4)通信制やサテライト教室など社会人が学びやすい条件の整備、5)諸外国との教員の交流の拡大や留学生交流の推進など国際的に開かれた大学院となるための条件整備などの検討をお願いします。

 第三は、学部段階の教育機能の充実強化等のための改革方策に関してであります。
 高等教育の大衆化と学生の多様化が一層進展すると考えられる21世紀において、各大学がそれぞれの個性・特色を発揮しつつ、学部段階における教育機能の充実強化を通じた卒業生の質の確保を図るための改革方策について御検討をお願いします。
 具体的には、1)少人数教育の推進や単位制度の適正な運用、厳格な成績評価の実施と安易な進級や卒業の抑制、教養教育や人格形成のための教育の重視など教育機能の充実強化、2)履修科目等指定制など高等学校教育と学部教育の連携の充実が考えられます。
 また、3)大学院教育と連携した学部教育を実施するため、例えば大学院進学コースの選択的導入と、これにより学部3年次修了時点の大学院への進学を拡大することについて御検討をお願いします。その中で、専門性はもとより、深い教養と幅広い視野、豊かな創造性、高度の語学力を有し国際社会で活躍できる人材、すなわち「国際社会でリーダーシップを発揮できる人材」を養成することも考えられます。そのほか、iv)生涯学習機能の強化、地域社会や産業界等との連携などを推進するための具体的な改革方策について、幅広く御検討いただきたいと存じます。

 第四は、大学の組織運営システムの改革に関してであります。
 大学の教育研究の質的向上を図るためには、各大学の自主性と自由度を高め、自律的な運営が行えるようなシステムについて検討することが重要であります。このため、1)例えば学長・学部長の任期・職務の明確化や学長の補佐体制の整備など、学長・学部長のリーダーシップを確立するための方策、2)評議会等の全学的機関の位置付けと審議事項の明確化や、部局ごとの意思決定が最も尊重されるという仕組みの改善、例えば教授会の審議事項の明確化など、全学的な視点に立った機動的な大学運営を可能とする制度の在り方、3)学外の有識者の助言等を適切に大学運営に取り入れるための仕組み、例えば大学運営協議会(仮称)の設置、国立大学における経営的視点の導入方策などについて御検討いただきたいと存じます。
 なお、大学の教育研究の機動的な対応を可能とするための措置として、例えば特定プロジェクト経費の年度を越えた執行など予算執行上の弾力性の確保、国立大学の学部内の教育研究組織の編制の弾力化など国立大学の人事・会計等の制度の見直しや公私立大学に係る認可手続きの弾力化・簡素化などについての御検討もお願いします。
 また、各大学が、自らの創意に基づき積極的かつ多様な改革を図り、教育研究水準の維持向上を進めていくとともに、効果的な資源配分を行っていくためには、評価システムを確立し、組織的かつ恒常的にこれを行っていくことが重要であります。このため、1)各大学の自己点検・評価の実施と結果の公表の義務化、2)各大学の自己点検・評価の学外の第三者による検証の義務化、3)客観的評価システムの導入、すなわち大学の教育研究活動等を客観的かつ多角的に評価するための項目、評価主体や実施方法等を整理し、システムとして構築することなどについて御検討をお願いしたいと存じます。
 併せて、大学が透明性の高い運営を行うとともに、国民が容易に大学の教育研究活動の内容を知りうる環境を整備するため、大学の情報公開を促進する具体的方策についても御検討いただきたいと思います。

3 以上、今後の御審議に当たり、特に御検討をお願いしたい点について申し上げましたが、これらの点に関連する事項についても、幅広い視野の下に忌憚のない御意見を頂戴したいと存じております。
 会長をはじめ、委員の皆様におかれましては、以上のような趣旨をお汲みとりいただき、十分御審議くださるようお願い申し上げまして、私のあいさつと致します。

「21世紀の大学像と今後の改革方策について」(諮問)―検討事項例―

1 21世紀の大学像

(1)21世紀の大学像の提示

 大学の教育研究の質の飛躍的向上を図るため、過去10年間の大学改革を総括し、21世紀の大学像と改革の方向を国民に分かりやすい形で提示。
 厳しい財政状況の中、より質の高い教育研究の実現のため、様々な創意工夫を図ることが必要。

(2)高等教育(学部レベル)の妥当な規模

 若年人口そのものが急激に減少しており、我が国全体の知的ストック形成による国力の維持という観点からは、今後とも高等教育の一定の規模の確保が必要。
その際の妥当な規模についての考え方。国立大学の大学院の量的拡大を図る場合の学部レベルの規模の縮減についての考え方。

(3)大学院の量的な拡充

 国際比較の現状等も考慮し、また、先端科学技術分野、情報関連・国際関連分野、新規産業創出分野等の人材需要にも配慮し、例えば2010年に在学者数30万人といった具体的整備目標を検討。あわせて、大学院の果たすべき役割にかんがみ、設置に際し大学院の教育研究の水準を高める方策についても検討。

(4)国公私立大学の役割分担等

 例えば国公立大学が大学院の教育研究や地域の活性化等について果たしてき役割及び大学教育の約8割を担い、人文・社会科学分野で大きな役割を果たしてきた私立大学の役割についての今後の考え方、国公私立大学の授業料の在り方など

2 大学院制度の改革

(1)卓越した教育研究拠点としての大学院を整備するための具体的システムの構築博士課程を有する大学院の中から、一定基準を充たし、レベルの高い優れたものを評価し、卓越した教育研究拠点としての大学院に位置付け、これを重点的に整備。

(2)大学院大学や大学院を中心とした大学の設置促進

 (設置基準上の位置付けの明確化、既存の大学の改組転換や新設による整備の促進方策。)

(3)高度専門職業人の養成に応じた修業年限の弾力化

 (例えば、ビジネス・スクールなどで在学1年で修士号を取得できるコースの制度化。)

(4)社会に開かれた大学院や、国際的に開かれた大学院となるための条件整備

 通信制やサテライト教室による社会人が学びやすい条件の整備、諸外国との教員の交流・留学生交流の推進。

3 学部レベルの改革

(1)教育機能の充実強化

 少人数教育の推進、単位制度の適正な運用、厳格な成績評価の実施と安易な進級・卒業の抑制、教養教育や人格形成のための教育の重視。

(2)高等学校教育と大学教育の連携

 (履修科目等指定制、学生の多様化に応じた語学等の基礎学力の習熟度別クラスなど。)

(3)大学院教育と連携した学部教育

 例えば、大学院進学コースの選択的導入と、これにより学部3年次修了時点の大学院への進学を拡大。その中で国際社会でリーダーシップを発揮できる人材の養成も推進。

4 大学の組織運営システムの改革

(1)大学の組織運営の改善

 1)学長、学部長のリーダーシップを確立するための方策
 (任期、職務の明確化、学長の補佐体制の整備など。)
 2)全学的な視点に立った機動的な大学運営を可能とする制度の在り方
 評議会等の全学的機関の位置付けと審議事項の明確化。部局ごとの意思決定が最も尊重されるという現在の仕組みの改善、例えば教授会の審議事項の明確化など。
 3)学外の有識者の助言等を適切に大学運営に取り入れるための仕組み
 (大学運営協議会(仮称)の設置、国立大学における経営的視点の導入など。)

(2)大学の教育研究の機動的な対応を可能とする措置

 1) 国立大学の人事・会計等の制度の見直し
 大学における教育研究の特性に応じた予算執行上の弾力性の確保、例えば特定プロジェクト経費の年度を越えた使用など。
 2) 大学の設置等に係る手続きの弾力化
 国立大学の学部内の教育研究組織の編制の弾力化、公私立大学に係る認可手続きの弾力化・簡素化。

(3)評価システムの確立

 1)各大学の自己点検・評価の実施と結果の公表の義務化
 2)各大学の自己点検・評価の学外の第三者による検証の義務化
 3)客観的評価システムの導入
 大学の教育研究活動等を客観的かつ多角的に評価するための項目、評価主体や実施の方法等を整理し、システムとして構築。

(4)透明性の高い開かれた大学になるための情報公開の推進

 (大学の教育研究活動や運営状況等の情報を社会に向けて積極的に公開することを推進。)

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