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マルチメディア教育部会における審議の概要 ‐「遠隔授業」の大学設置基準における取り扱い等について‐

平成9年9月30日
大学審議会
マルチメディア教育部会

目次

1 高等教育におけるマルチメディア活用の展望と課題

2 マルチメディアの授業への活用の状況

3 マルチメディアの活用に期待される効果

4 設置基準上の位置付け
(1)通学制の高等教育機関における「遠隔授業」の位置付け
 1)基本的な考え方
 2)「遠隔授業」の実施形態
 3)「遠隔授業」を実施する際に配慮すべき事項
 4)卒業の要件として修得すべき単位数の取扱い
 5)社会人を対象とするリフレッシュ教育における「遠隔授業」の活用
(2)通信制の高等教育機関における授業の方法等の考え方
 1) 通信教育における授業の方法
 2) 卒業の要件として修得すべき単位数の取扱い
 ア 「面接授業」の単位数の取扱い
 イ 「遠隔授業」の単位数の取扱い      

5 その他

マルチメディア教育部会における審議の概要 ―「遠隔授業」の大学設置基準における取扱い等について―

 情報通信技術の急速な進展により、我が国や世界各国において高度情報通信社会の進展に向けた様々な取組が活発になっている。高等教育分野も例外ではなく、各大学等の教育研究にマルチメディアを活用する取組が様々な形で広がってきている。
 このような状況を踏まえ、本審議会は、平成7年9月に公表した「大学教育部会における審議の概要」及び平成8年10月の「大学院の教育研究の質的向上に関する審議のまとめ」の報告において、マルチメディアを活用した教育研究に関して、設置基準上の問題などについて今後検討すべきである旨の提言を行った。また、文部省に設けられた「マルチメディアを活用した21世紀の高等教育の在り方に関する懇談会」が、平成8年7月に取りまとめた報告の中でも、高等教育におけるマルチメディア活用に伴う制度面の見直しについては、大学審議会における速やかな検討を期待する旨の提言が行われた。
 これらの提言を踏まえ、マルチメディアを活用した遠隔授業などの教育の在り方に関し、設置基準などの制度的位置付けや実施上の留意事項について検討を行うため、平成8年12月にマルチメディア教育部会が設置された。本部会はそれ以後、1)高等教育機関における遠隔授業の設置基準上の取扱い、2)リフレッシュ教育における遠隔授業の取扱い、3)通信制の高等教育機関における授業方法等、4)その他関連する事項、の四つの観点から、関係者からのヒアリングを含め8回にわたる調査審議を進めてきたが、以下のとおり、これまでの審議の概要を取りまとめたので、総会に報告する。
 なお、本部会としては、今後、関係者等の意見を十分聞きながら、更に審議を尽くすこととしている。

1 高等教育におけるマルチメディア活用の展望と課題

 今日、高等教育を取り巻く状況は、高等教育の大衆化、学術研究の高度化、国際化・情報化の進行などの社会・経済の変化、生涯学習ニーズの高まりなど、大きく変化している。
 中でも、近年の情報通信技術の進展はめざましく、我が国や世界各国において高度情報通信社会の実現に向けた様々な取組が活発になっている。高等教育の分野においても、遠隔地にあるキャンパスを衛星通信や光ファイバーなどで結び、テレビ会議システムを活用して合同授業やシンポジウムを実施したり、ネットワークを活用した情報収集や電子図書館システムの整備、インターネット上でのホームページの開設が進むなど、多様な通信メディアを高度に活用した教育研究の取組が様々な形で広がってきている。
 このような情報通信技術の発展は、従来の高等教育の教育形態の概念に大きな影響を与えている。歴史をさかのぼれば、昭和22年に大学通信教育が学校教育法において制度化され、同25年に印刷教材を中心とした通信添削型の通信教育が正規の大学教育として認可されたのが、高等教育における「遠隔教育」の始まりであり、これに続いて、次々と通信教育が開設された。その後、昭和58年には放送大学が設置され、これにより、放送メディアを活用した新たな形態の「遠隔教育」が生まれた。こうして「遠隔教育」は通信制の高等教育機関において実施されてきたが、近年の情報通信技術の発展により、遠隔地間を結ぶテレビ会議式の授業という形で、通学制の高等教育機関においても「遠隔教育」を行うことが技術的に可能となっているのである。将来的には、マルチメディアの一層の進展により、通学制と通信制との境界を明確に分け難くなり、情報通信ネットワーク上でのみ授業を行う、いわゆる「ヴァーチャル・ユニバーシティー」といった全く新しい形態が出てくることも考えられる。
 マルチメディアをはじめとする情報通信技術の活用は、高等教育の充実に新たな可能性を開くものとして大きな効果を期待できるものであり、それが高等教育機関において円滑に実施されるための条件整備を積極的に図っていくことが求められている。
 本部会では、このような観点から、情報通信技術の進展と高等教育の将来像を視野に入れつつ、当面予想される形態であるマルチメディアを活用して隔地間で行われるテレビ会議式の遠隔授業(以下、単に「テレビ会議式の遠隔授業」という。)に係る制度上の問題、特に設置基準上の位置付けの問題を中心に検討を行った。
 なお、高等教育におけるマルチメディアの活用については、今後とも、高等教育の一層の充実を図るとの視点に立ち、関連技術の進展や各高等教育機関における活用の状況等を踏まえつつ、その活用の在り方や制度上の諸問題について、随時適切な見直し等を行っていく必要がある。

2 マルチメディアの授業への活用の状況

 情報通信技術の進展に伴い、マルチメディアを授業等に積極的に活用する大学が出てきている。例えば、光ファイバー通信によるマルチメディアネットワークシステムによって、二つの離れたキャンパス間を双方向接続して授業を行っている大学や、企業や社会教育施設などに向けて公開講座を実施している大学がある。
 また、マイクロウエーブ回線を利用して画像情報ネットワークシステムを構築し、複数の離れたキャンパス間を結んで、遠隔地間での授業の実施や教育研究活動、管理運営上の情報交換等に活用している大学もある。
 特に、平成8年度からは、大学共同利用機関であるメディア教育開発センターを中心として大学等の間を衛星通信回線で結ぶ、衛星通信大学間ネットワーク構築事業(スペース・コラボレーション・システム事業)が開始され、国立大学等の連合大学院や分散キャンパスにおける交換授業、研究指導などに活用されて効果をあげており、今後この活用は一層進むものと考えられる。私立大学についても、平成9年度から、私立大学ジョイント・サテライト事業が創設され、同様の事業が進められている。
 通信制の大学においても、新しい取組が見られる。例えば、現在関東地方を中心に放送授業を実施している放送大学において、通信衛星(CS)デジタル放送を利用した全国放送の開始に向け準備が進められているほか、衛星通信とISDN通信回線を結んだ独自の教育メディアを活用して、パソコン映像等により、教員の授業を各地の教室に配信するとともに、電話等を通じて学生からの質問等にも対応できるよう配慮した形態での放送授業を実施する通信制の大学も出てきている。
 情報通信技術は今後ますます進展すると考えられるが、それに伴って、テレビ会議式の遠隔授業の活用をはじめ、我が国の高等教育における通信メディアの高度利用は一層進むものと考えられる。

3 マルチメディアの活用に期待される効果

 通学制の大学においては、テレビ会議式の遠隔授業の実施により、次のような効果を期待することができる。
1)地理的・時間的制約等から特定のキャンパスに通うことが困難な者に対する学習機会の提供が可能となり、高等教育機会の拡充に資するとともに、柔軟な学習形態の実施が可能となる。
2)教員も学生も、キャンパスを移動することなく、大学相互間での合同授業などを実施できるため、大学間での単位互換が促進され、各大学がそれぞれの特色を生かしつつ教育内容の充実を図ることができ、学生の学習の選択肢が増える。
3)大学等間の教育研究情報の交換や、教員・学生の交流が促進されることにより、各大学等が有する知的資源の共有化が進み、大学等の教育研究水準の向上が期待できる。
4)地方公共団体や産業界と連携することにより、地域に開かれた教育が推進できる。
5)海外の大学等との教育交流が活発になり、国際的な視野を持つ人材育成に資する。
 また、通信制の大学においては、衛星通信を利用した放送大学の全国化により高等教育機会の一層の拡充が進むほか、パソコン利用等により部分的に双方向性を備えた新たな放送授業の可能性が開ける、従来の印刷教材に加えてCD-ROMやインターネットなどを利用したマルチメディア教材の活用により教材の幅が広がる等のメリットが考えられる。
 このように、マルチメディアの活用は、従来の方式による授業ではあげることのできなかった教育効果を期待できるものであり、高等教育の一層の充実を図る観点からも、その活用について積極的な位置付けを考慮することが適当である。

4 設置基準上の位置付け

 以上述べた高等教育機関におけるマルチメディアの活用の状況及び期待される効果を踏まえつつ、テレビ会議式の遠隔授業の位置付け等についての考え方を以下に示した。各大学等において、それぞれの特質や実情に応じて、その効果的な活用に取り組んでいくことが期待される。
 以下、大学における取扱いを中心に述べるが、特段の記述がない事項については、大学院、短期大学、高等専門学校についても同様の取扱いとすることが適当である。

(1)通学制の高等教育機関における「遠隔授業」の位置付け

1)基本的な考え方

 高等教育機関における授業の方法については、例えば通学制の大学の場合は、
大学設置基準第25条において、「授業は、講義、演習、実験、実習若しくは実技のいずれかにより又はこれらの併用により行うものとする。」と定められている。大学設置基準上、こうした授業は、直接の対面授業により行われることを想定しており、テレビ会議式の遠隔授業によって実施する際の取扱いは明確ではない。このため、現状では、テレビ会議式の遠隔授業を実施する大学等からの要請を踏まえ、実態等を勘案しつつ個別かつ暫定的にこれを授業方法として認める取扱いがなされている。
 今後、このような授業の効果的な活用を図っていくためには、一定の要件を満たす「遠隔授業」(2)に示すア~ウの要件を満たしたテレビ会議式の遠隔授業をいう。以下同じ。)の取扱いについて設置基準上明確にするとともに、「遠隔授業」が直接の対面授業に近い環境で行われ、直接の対面授業と同様に取り扱うことが望ましいものとなるために配慮すべき事項等を示しておくことが適当である。

2)「遠隔授業」の実施形態

 大学等における直接の対面授業においては、教員は授業中、学生の反応等を見ながら授業を展開し、また、学生は授業時間中に必要に応じ教員に質問等をすることが可能である。また、個々の学生に対して個別に指導を行うことも可能である。さらに、直接の対面授業は、当該教室等における学生間の交流等を通じて学生の学習に対する意識を高め、興味関心を喚起し、学習意欲を高めるなどの効果を持つものである。
 テレビ会議式の遠隔授業も、一定の要件の下に行われる場合には、上に述べたような直接の対面授業が有する教育上の効果を十分確保することが可能である。したがって、大学設置基準において、大学は、一定の要件を満たす場合には、大学設置基準第25条に定める授業を隔地間で行うことができる旨を定めて設置基準上の位置付けを明確にし、各大学が適切と認める場合には積極的にその活用を図ることができるようにすることが適当である。
 すなわち、大学設置基準において、直接の対面授業と並んで実施可能とする「遠隔授業」は、具体的には次の要件をすべて満たすものとすることが適当である。
ア 現行の大学設置基準第25条の授業を、隔地の教室、研究室又はこれに準ずる場所において同時に行うものであること。(同一校舎内の複数の教室間を結んで行う場合や、送信側には教員のみがいて学生がいない場合も含む。)
イ 多様な通信メディアを利用して、文字、音声、静止画、動画等の多様な情報を一体的かつ双方向に扱うことができる状態で行われるものであること。
ウ 大学において、直接の対面授業に相当する教育効果を有すると認めたものであること。

3)「遠隔授業」を実施する際に配慮すべき事項

 「遠隔授業」を実施するに当たっては、直接の対面授業に近い環境において行うことが必要であり、各大学等においては、以下のような事項について配慮することが望ましい。
ア 授業中、教員と学生が、互いに映像・音声等によるやりとりを行うこと。
イ 学生の教員に対する質問の機会を確保すること。
ウ 画面では黒板の文字が見づらい等の状況が予想される場合には、あらかじめ学生にプリント教材等を準備するなどの工夫をすること。
エ 「遠隔授業」の受信側の教室等に、必要に応じ、システムの管理・運営を行う補助員を配置すること。必ずしも、受信側の教室に教員を配置する必要はないが、必要に応じてティーチング・アシスタント(TA)を配置することも有効である。
オ メディアを活用することにより、一度に多くの学生を対象にして授業を行うことが可能となるが、受講者数が過度に多くならないようにすること。

4)卒業の要件として修得すべき単位数の取扱い

 「遠隔授業」は、3)に示した適正な教育上の配慮の下に行われれば、直接の対面授業に相当する教育効果が見込まれるが、現時点では、まだ実績が少なく、教育効果の問題等について未知数な面がある。したがって、学生の卒業の要件として修得すべき単位数のうち「遠隔授業」によって修得する単位数については慎重な取扱いをすることとし、当面、一定の制限を設けることが適当である。
 したがって、大学学部の学生については、大学設置基準第32条に規定する卒業の要件として修得すべき最低限の単位数である124単位のうち、「遠隔授業」によって修得することのできる単位数は、当面、30単位を超えないものとすることが適当である。なお、各大学において、124単位を超える単位数を卒業の要件としている場合は、直接の対面授業によって94単位以上の修得がなされていれば、「遠隔授業」によって修得する単位数については、30単位を超えることもできることとすることが適当である。

(参考)大学設置基準

第32条 卒業の要件は、大学に4年以上在学し、124単位以上を修得することとする。
※第2項以下省略

 なお、単位互換制度(大学設置基準第28条)の活用等により、複数大学間で「遠隔授業」を行う場合、卒業の要件として修得すべき124単位に含めることができるのは、自大学における「遠隔授業」の履修によって修得した単位数と、他大学との間の「遠隔授業」によって修得した単位数とを併せて30単位までとなる。例えば、A大学の学生が、「遠隔授業」により、B大学の単位を10単位修得した場合、A大学内の「遠隔授業」の履修によって修得する単位のうち、卒業の要件として修得すべき124単位に含めることができる単位数は20単位までということになる。

(参考)大学設置基準

第28条 大学は、教育上有益と認めるときは、学生が大学の定めるところにより他の大学又は短期大学において履修した授業科目について修得した単位を、30単位を超えない範囲で当該大学における授業科目の履修により修得したものとみなすことができる。
※第2項省略

 大学院については、卒業の要件として修得すべき単位数は30単位以上と限定的であり、かつ学部段階と異なり、研究指導や論文作成等の過程において個別指導が行われることなどを考慮すると、「遠隔授業」によって修得する単位数について一定の制限を設けることはせず、各大学院の取扱いにゆだねることが適当である。

5)社会人を対象とするリフレッシュ教育における「遠隔授業」の活用

 現在、大学等においては、社会人が、生涯にわたり最新かつ高度の知識・技術を習得することを目的とする教育(リフレッシュ教育)が推進されており、社会人を対象とする特別選抜の実施や、夜間大学院、昼夜開講制の実施などの取組が進んでいる。また、科目等履修生制度は、大学等におけるフルタイムの学習が難しい社会人等に対して、パートタイムで高等教育を受ける機会を提供している。このほかに、公開講座の開催も行われている。
 既に、このような社会人を対象とするリフレッシュ教育においても、例えば、大学が衛星通信等により、企業や社会教育施設に対して公開講座等を送信する取組などが始まっている。このような取組は、時間的制約の多い社会人にとって、職場にいながら学習することが可能になること、社員研修のニーズにも合致することから、高い潜在的ニーズが見込まれる。また、地理的制約などから通学に困難を伴う人々にとって、社会教育施設その他地域の身近な場所で大学の授業を受けられることは大きなメリットとなる。
 このような時間的・地理的制約を超えたリフレッシュ教育の取組を一層進めていくためには、広く社会人の単位修得の途を開き、学習意欲を高めることが望ましい。したがって、社会人が、大学等の科目等履修生として、企業の会議室等の職場や住居に近い場所において「遠隔授業」を受講する場合にも、(1)  2)アの「これに準ずる場所」における授業として、当該大学等の単位を授与できることとすることが適当である。

(2)通信制の高等教育機関における授業の方法等の考え方

 従来、通信教育は、時間的・地理的制約を持つ学生に対し、様々な形で高等教育の機会を提供してきた。近年、パソコンやインターネットの普及、光ファイバー網の整備など情報通信基盤の整備は急速に進んでおり、今後、これらの多様な通信メディアを活用した新たな形態の通信教育の開発が一層進むものと期待される。

1)通信教育における授業の方法

 通信教育における授業の方法について、現行の大学通信教育設置基準では、印刷教材を送付若しくは指定し、主としてこれによって学修させる「印刷教材による授業」、主として放送その他これに準ずるものの視聴によって学修させる「放送授業」、現行の大学設置基準第25条の方法によって教員と学生が直接に対面して行う「面接授業」の三つの方法を規定している。

(参考)大学通信教育設置基準

第3条 授業は、印刷教材を送付若しくは指定し、主としてこれにより学修させる授業(以下、「印刷教材による授業」という。)、主として放送その他これに準ずるものの視聴により学修させる授業(以下「放送授業」という。)若しくは大学設置基準第25条の方法による授業(以下「面接授業」という。)のいずれかにより又はこれらの併用により行うものとする。
※第2項省略

大学設置基準
 第25条 授業は、講義、演習、実験、実習若しくは実技のいずれかにより又はこれらの併用により行うものとする。

ア 「印刷教材による授業」

 近年、情報通信技術の進展に伴い、CD-ROM等による電子出版が身近なものとなってきている。このような電子出版による教材は、従来の印刷教材と同等又はそれ以上の学習効果が期待できるものであり、今後、このような形態による教材の提供が進行していくものと考えられる。
現行の大学通信教育設置基準における「印刷教材による授業」の規定においては、「印刷教材」の中にこのような電子出版を含むか否かが文言上必ずしも明確でないので、電子出版も含むよう規定を整備することが適当である。

イ 「放送授業」

 「放送授業」については、現行の大学通信教育設置基準の制定当時は、テレビ・ラジオ放送を利用して行われる放送大学の授業のみを想定していたと考えられるが、現在では、放送大学以外にも、衛星通信とISDN通信回線を結んだ独自の教育メディアを活用して、パソコン映像等により、教員の授業を各地の教室に配信するとともに、電話等を通じて学生からの質問等にも対応できるよう配慮した形態での放送授業を実施する通信制の大学が出てきている。また、将来的には、パソコンやインターネットの普及により、それらを利用して教員の授業を配信する新しい授業形態も出てくるものと思われる。このような授業形態についても、「放送授業」の一つの形態として取り扱うことが適当であると考えられる。

ウ 「面接授業」

 「面接授業」については、従来の大学設置基準第25条に規定する直接の対面授業のほか、大学設置基準に新たに位置付けられることとなる「遠隔授業」についても、「面接授業」の一つの形態として認めることとするのが適当である。

2)卒業の要件として修得すべき単位数の取扱い

ア 「面接授業」の単位数の取扱い

 現行の大学通信教育設置基準においては、卒業要件として修得すべき最低限の単位数である124単位のうち30単位以上は、「面接授業」により修得するものとされている。また、この「面接授業」により修得すべき30単位のうち10単位までは「放送授業」で代替することが可能となっている。
 「面接授業」の30単位以上の修得を卒業の要件とすることの妥当性については、学生の多様性や通信教育の方法の進展を踏まえると一律に卒業要件とする必要はないのではないかといった意見がある反面、教員・学生間の触れ合いといった点でその重要性は高いとの意見など、様々な意見がある。
 情報通信技術の進展に伴い、通信制の大学における授業方法も、従来の「印刷教材による授業」を中心とした形態だけでなく多様なメディアを利用して行われるようになり、学生の学習効果をより高める工夫がなされてきている。しかしながら、現段階においては、「面接授業」は、直接の対面授業による方法でなければ十分な学習効果が期待できない科目への対応や、教員と学生の触れ合い、学生間の交流による人間形成といった面において他の授業方法では代替しがたい効果を有するものであり、通信制の大学の学部については、当面、現行どおりとすることが適当である。
 一方、通信制の大学の学生の実態を見ると、学生の学習歴、年齢構成などは多様であり、卒業の要件としての「面接授業」の取扱いについては、多様な学生の学習歴等を踏まえた取扱いも考慮されてよいと考えられる。即ち、現行大学通信教育設置基準上は、通信制の大学の学生が、当該大学に入学する前に修得した単位や他大学との単位互換により修得した単位のうち、「面接授業」によるものについては、大学の定めるところにより、当該大学の「面接授業」として取り扱うことも可能である。したがって、各大学においては、多様な学生の学習歴等を考慮して、このような取扱いを適切に活用し、学生に対して過重な負担をかけることのないよう配慮することが望ましい。

イ 「遠隔授業」の単位数の取扱い

 通学制の大学における「遠隔授業」については、卒業の要件である124単位のうち、当面、「遠隔授業」により修得できる単位は30単位を超えないものとすることが適当であるとした。このような取扱いとの均衡、現行の大学通信教育設置基準における「放送授業」の取扱い、「面接授業」の意義などを考慮すると、通信制の大学においても、卒業の要件として求められる30単位以上の「面接授業」の修得のうち、「遠隔授業」により修得した単位によることができる単位数は、当面、「放送授業」と合わせて10単位までとすることが適当である。

5 その他

  • インターネットなどの情報通信メディアの活用は、授業以外の場においても、教員や学生が、学内だけでなく、学外さらには海外の研究者等と、時間的・地理的制約を超えて交流を行うことを可能とするなど、大学等における教育研究活動に大きく資することが期待されるものであり、その積極的な活用が望まれる。
  • 高等教育において多様な情報通信メディアを積極的かつ適切に活用し、教育内容・方法の充実を図っていくためには、設置基準等の制度的な面の適時・適切な見直しとともに、スペース・コラボレーション・システム事業などによる高等教育機関間の全国的な高度情報通信ネットワークの整備や、教材やデータベースの整備など基盤となるハード面の整備、各大学等におけるメディアを活用した教授方法の研究開発や教員研修の実施に対する支援の充実などソフト面の整備にも併せて努めていくことが重要である。
    また、メディア教育開発センターにおいても、これらの取組を積極的に支援することが必要である。

(資料)「遠隔授業」の実施例

○信州大学
 マイクロウエーブ回線を利用し、「信州大学画像情報ネットワークシステム(SUNS)」を構築し、松本・長野・上伊奈・上田の5つのキャンパス間を、延べ200数十キロメートルにわたって結び、遠隔授業を実施している。また、大学の教育研究・管理運営上の情報を交換する場として、ニューメディアを用いた同システムにより、キャンパス間の連携を図り、総合大学としての発展を目指している。

○東京工業大学
 平成8年度から、「衛星通信遠隔教育システム」をスタートしている。このシステムは、大口径アンテナによる衛星地球局と、衛星講義室(テレビスタジオ機能と学生レスポンス収集機能を持ち、大岡山地区と長津田地区に1カ所ずつ設置)から構成されている。これによって、リフレッシュ教育プログラムを全国に配信するとともに、東京工業大学と一橋大学との間で、授業交換を行うことができる。
 また、同大学では「総合情報伝達システム」を構築しており、大岡山地区と長津田キャンパス間を光ファイバで結び、テレビ講義室、テレビ会議室、研究指導室等において、遠隔授業や遠隔会議等を実施している。
 さらに、平成8年度から、2つのキャンパスを融合した「ATMマルチメディア・ネットワーク」をスタートし、ヴァーチャル・キャンパスシステムや遠隔カウンセルシステム等によって、映像を中心とした双方向コミュニケーションを可能にしている。またこのネットワークは、学内LAN(Titanet)、「衛星通信遠隔教育システム」、「総合情報伝達システム」とも接続しており、学内の実施コミュニケーションを円滑にしている。

※「マルチメディアを活用した21世紀の高等教育の在り方について」
(平成8年7月懇談会報告)より

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