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大学教育部会における審議の概要(その2) ―高等教育の一層の改善について―

平成9年9月30日
大学審議会
大学教育部会

目次

1 高等教育を取り巻く状況の変化
(1)高等教育の普及とそれに伴う変化
(2)学問の進展
(3)社会・経済の変化
(4)生涯学習ニーズの高まり

2 現状の問題点
(1)大学(学部)教育の位置付けの問題
(2)カリキュラム改革を進める上での問題
(3)教育方法の問題
(4)教育活動の評価の問題
(5)学生の選択の幅と流動性の問題
(6)教育を充実するための体制の問題

3 一層の改善のための方策
(1)全体のシステムの中での大学等の在り方
(2)バランスのとれた体系的なカリキュラムの編成
(3)学習効果を高める工夫
(4)教育活動の評価の在り方
(5)学生の流動性(選択の幅)を高める工夫
(6)高等教育の改革を進めるための基盤の確立

参考資料      

大学教育部会における審議の概要(その2) ―高等教育の一層の改善について―

 平成3年2月8日の大学審議会答申「大学教育の改善について」は、大学教育の改善の方向として、特色あるカリキュラム編成と柔軟でかつ充実した教育組織の設計、学生の学習の充実、一般教育と専門教育の改善、多様な学習機会の確保の4点を指摘している。その上で、大学教育改善の方策として、「各大学が自由で多様な発展を遂げ得るよう大学設置基準を大綱化するとともに、自らの責任において教育研究の不断の改善を図ることを促すための自己点検・評価のシステムを導入すること」を提言した。これは、大学教育の改善は、基本的には、それぞれの大学の自主的な努力によって実現されるものであり、各大学において、自らの教育理念・目的に基づき、かつ学術の進展や社会の要請に適切に対応しつつ、特色ある発展を遂げることが、全体としての大学教育の充実に資することとなるという理念に基づくものであった。また、同時に、短期大学、高等専門学校についても、「短期大学教育の改善について」及び「高等専門学校教育の改善について」の答申が行われ、同様の趣旨から、それぞれの設置基準の大綱化と、自己点検・評価の導入等が提言された。
 これを受けて、大学設置基準等が大幅に大綱化されるとともに、各大学等においては、現在、様々な改革への取組が進められている。平成8年度には、全体の約9割の大学においてカリキュラム改革が既に実施されている。さらには、伝統的な学問分野にとらわれず、学際的、総合的な名称を冠する学部や新しい理念を掲げた学部等への改組、あるいは新設も相次いでいる。シラバスの作成や、少人数講義の拡大など、教育方法等の改善も進められている。自己点検・評価に関する学内規程は、約8割の大学で既に整備されている。
 このように、各大学等における改革の取組は、着実に進展しつつあるが、その全体的な評価のためには、今後の進捗状況を更に見守っていく必要がある。しかしながら、高等教育を取り巻く状況の変化は著しく、高等教育に対する社会の期待もますます高まってきている。こうした状況を踏まえ、各大学等の高等教育機関が、それぞれの理念・目標に沿って更に改革を進め、個性的な発展を遂げることにより、全体として高等教育の一層の充実が図られることが期待されている。
 このような観点から、本部会では、改革の状況を踏まえつつ、現状の問題点や今後の方向について審議を行い、平成7年9月には「高等教育の一層の改善について」審議の概要を総会に報告した。その後、上記の報告に対する関係団体の意見を聴取し、また、部会委員の意見発表などを行いながら、答申に向けて更に審議を重ねた。ここに、本部会におけるこれまでの審議の概要を取りまとめ、審議の概要(その2)として報告するものである。この概要(その2)は、平成7年の審議の概要で示した方向を更に具体的な事項として掲げるものであり、今後、更に関係各界の意見を踏まえつつ、なお一層審議を深めることとしている。

1 高等教育を取り巻く状況の変化

(1)高等教育の普及とそれに伴う変化

 国民の高等教育需要の高まりに加え、いわゆる少子化による18歳人口の減少ともあいまって、高等教育機関での学習を希望する人々の層や、学生の年齢分布は、今後とも拡大していくことが予想される。これに伴い、多様な能力・適性を持ち、入学前の履修歴も様々な学生、さらには、社会人、留学生など、学生の多様化が一層進むものと考えられる。大学等の高等教育機関は、このような学生の多様化や卒業後の進路の多様化を踏まえて、それぞれにその目的・性格や、教育内容・方法の在り方を、更に見直していくことが必要となっている。

(2)学問の進展

 多様な能力、適性を持つ学生に対して適切な配慮を行っていくことが要請される一方で、学術研究の進展に伴い、学生に教育すべき内容も、高度化・専門化していく。同時に、学問の総合化、学際化の傾向はますます強まり、専攻領域の広がりや、学際領域への展開も求められていく。また、学術研究の著しい進展によって、地球環境や生命倫理の問題などに新たな課題が提起されるようになってきており、高等教育において、研究者の社会的責任や学術研究の成果と人間や社会とのかかわりに関する高度の識見を身に付けさせることが、ますます重要となっている。高等教育においては、これらの面でも教育内容の充実を図っていくことが必要となっている。

(3)社会・経済の変化

 少子高齢化傾向の拡大、冷戦構造の崩壊、キャッチアップ経済の終えん焉、大競争時代の到来、生産年齢人口の減少など、我が国の社会・経済は大きな転換期を迎えている。さらに、情報通信技術の革新や自由貿易体制の拡大に伴い、経済活動をはじめあらゆる側面でグローバリゼーションが急速に進んでいる。このような社会・経済の急激な変化の中で、高等教育機関には、単に専門分野における高度の知識・技術を習得しているだけではなく、主体的に変化に対応し得る幅広い視野や総合的な判断力や豊かな創造性を持つ人材の養成が求められている。また、産業構造の変化に伴い、高等教育を必要とする新しい職業も増加しており、従来高等教育が対象としてこなかった、新しい分野の人材の養成も求められている。さらには、現在、あらゆる分野で国際化や情報化が進行している中で、これらに対応していくための高度の知識・技能を身に付けることが、一部の専門家だけでなく、すべての学生に求められるようになっている。

(4)生涯学習ニーズの高まり

 今日の生涯学習ニーズの高まりとともに、高等教育は、20歳前後の人生の数年間の学習の場に加えて、必要が生じたときにいつでも学習できる場へと、より開かれたものとなることが必要となっている。高等教育の機能の中で、幅広い年齢層の人々に対し、その知的探求心にこたえるとともに、高度で最新の専門的知識・技術を再教育することや、学問の方法を身に付ける機会を提供することの重要性が、一層高まっていくものと考えられる。

2 現状の問題点

 現在、各大学等において、改革が着実に進められている。本部会においては、その進展の状況を踏まえ、高等教育を取り巻く状況の変化を視野に入れつつ、審議を進めてきた。その審議を通じて指摘された現状の問題点は、以下のとおりである。

(1)大学(学部)教育の位置付けの問題

 高等教育の規模の拡大やいわゆる高等教育の大衆化、それに伴う学生の多様化などの変化にもかかわらず、多くの大学教員の意識は、従来の大学教育の概念から必ずしも抜け切れていない。特に、学部教育の位置付けや今後の在り方についての議論が必ずしも十分でない。
 すなわち、1)学部教育と大学院や他の高等教育機関との関係をどう考えるのか、2)学部教育を、幅広い教養や学問修得の方法を目的とする、言わば基礎教育と考え、高度の専門教育は大学院で行うこととするのか、3)学士の学位を授与する学士課程教育という観点から、学部教育の質やその確保をどう考えるのか、4)それぞれの学部にどのような学生を受け入れるのか、5)教育内容の高度化・専門化と、その多様化・総合化の要請をどのように調和させるのか、6)生涯学習の観点からは学部教育をどのようなものと位置付けるのか、等々の事柄について、各大学における改革推進のための基本的な考え方は必ずしも明確になっていないのが実情である。

(2)カリキュラム改革を進める上での問題

 カリキュラム改革を行うに当たっては、まず、それぞれの大学等において学部・学科等の教育理念・目標を明確にすることが必要である。また、教える側の視点だけでなく、学生が何を求めているのか、その学部等の多くの学生にとって、改革後のカリキュラムが能力・適性に応じたものになっているかなど、学生の視点に立つた改革が求められている。このような検討は、全学的に、あるいは学部・学科ごとに、組織的に行うことが必要であり、そのための体制をまず確立することが必要であるが、現段階では、必ずしも十分ではない面が見られる。現在、多くの大学等で、いわゆる教養教育と専門教育との有機的な連携に配慮した一貫教育に向け、カリキュラム改革が進められている。しかしながら、その過程で、教養教育が軽視されているのではないかとの危ぐ惧があるほか、教養教育を行う目的が不明確なまま、単に専門教育の入門的な授業を行うことを教養教育と呼んでいるのではないかとの指摘もある。また、学問分野の専門化や細分化に伴い、専攻分野の教育内容が狭い分野に限定されてしまう傾向や、分野を越えた教員や学生の交流が乏しいこと、あるいは、学生の主体的な学習を引き出す教育の不足などが指摘されている。

(3)教育方法の問題

 多様化する学生のニーズに対応し、大学等における教育を充実していくためには、入学してくる学生の実態を把握することが必要であるが、個々の大学等における学生の多様化の具体的な状況は、必ずしも十分に把握されていない場合が少なくない。既に、平成9年度からは、総合学科で学習した学生を含め、更に多様化した新しい高等学校のカリキュラムの下で学習した学生が入学していることもあり、高等学校での履修状況が異なること等により学力の内容などに差異が生じているが、きめ細かな指導が必ずしも十分でない面が見られる。少人数教育やセミナー形式の授業の導入など、具体的な教育方法の改善も進みつつあるが、必ずしも十分でない。平成3年の大学審議会答申以後、既に多くの大学でシラバスの作成が行われており、一定の成果をあげてきている。しかしながら、現在のシラバスの多くは、学生に履修科目選択のための情報を提供する履修科目の一覧としての役割と、履修する個々の授業科目について詳細な授業計画を示すとともに学生の教室外における準備学習等についての指示を与える役割という2つの役割を果たすものとして作られており、必ずしも本来シラバスが果たすべき後者の役割を十分果たす内容にはなっていない面がある。また、大学設置基準等の改正に対応し、単位計算方式の改善も進んでいるが、1単位は教室外の学習を含めた標準45時間の学習を要する教育内容をもって構成するという趣旨が徹底せず、教室外での学生の学習を確保するための工夫が不足しているとの指摘もある。これに関連して、学生の履修科目の過剰登録という問題も指摘されている。さらに、「就職協定」が締結されなかったことに伴う企業の採用活動の早期化が、学生の授業の欠席や3年次までの過剰履修など様々な問題を引き起こしているとの指摘もある。
 学生の成績評価の基準は、全学共通授業などの実施を通じて、各大学等内では客観的基準が形成されつつある面もあるが、現状では、依然として担当教員の主観的な基準による判断に任されているなど、なお課題が多い。また、現在、学部教育の質の確保や学生の質の保証が、社会からも厳しく求められており、この面からも学習成果の評価について一層の検討が必要となっている。
 少数の科目を集中的に履修し学習効果を高める目的からも、また外国も含めた他大学等との交流を容易にする目的からも、学期ごとに授業の完結するセメスター制を採用する改革が進んでいる。しかし、セメスター制と言いながら通年の授業を単に二つに分けたにすぎない運用が多いとの指摘もあり、一層の工夫を検討する必要がある。

(4)教育活動の評価の問題

 近年、新聞社・雑誌社やいわゆる学習塾等により、入学者選抜における偏差値以外の多様な指標を用いて、教育活動も対象とした様々な大学等の評価が行われるようになっているが、これは、大学等における教育活動の充実に対する社会的要請の反映であるとも見ることができる。既に平成3年の大学設置基準の改正以後、8割以上の大学で自己点検・評価が行われており、教育活動の評価への各大学の取組も着実に進んでいる。しかしながら、一部には形式的な評価に陥り教育活動の改善に十分結びついていない、外部への情報発信が足りないとの指摘もある。また、日本の大学教員には、大学の教育活動は学問の自由に支えられ、圧倒的に個人的な内容を持つものであり、他からの評価になじまないといった意識が強く、このことがややもすると教育活動の評価に消極的になる傾向があるとの指摘や、教員が研究活動を重視し、教育への意欲が少ないとの批判を生じている。
 学生に対する大学等の教育機能の一層の充実が求められている今日、各大学等は、本審議会答申「教員採用の改善について」及び「大学教員の任期制について」においても指摘されているように、その理念・目標の実現に向けて教育活動の不断の改善を図るという観点から、これまで以上に教員の教育能力、教育意欲、教育上の優れた業績等の評価の実施について一層の工夫を検討する必要がある。

(5)学生の選択の幅と流動性の問題

 高等教育への進学については、推薦入学や特別選抜の実施、編入学定員の設定などによって、かなり柔軟な対応がなされてきているが、今後、さらに、教育内容面でも、学生の多様な能力や学習意欲に柔軟にこたえていくことが必要である。
 このような観点からは、必修科目が多く、選択の余地が乏しいなど、学生が自らの関心や将来の進路の希望等を踏まえて主体的に履修内容を選択していくことへの配慮が十分でないものも見られる。
 さらに、単位互換や編入学などの制度についても、更に効果的な活用を図っていく余地があると考えられる。また、いわゆる専門高校卒業者の大学等への進学機会の一層の拡大を図ることや、専門学校修了者の大学への編入学の途を開くことなどの検討も課題となっている。

(6)教育を充実するための体制の問題

 カリキュラムや指導方法の改善は、これまで、個々の教員の工夫に任せられ、あるいはその自由にゆだねられ、組織として責任を持つという意識が十分でなかったことも指摘される。各大学等においては、全学的に、あるいは学部・学科ごとに、教育改善に対する組織としての取組が十分であるかどうかについて、再検討する必要がある。
 また、教育内容、方法の改革を進める上で、各大学等の枠を越えた共通の議論の場が少なく、改革に関する情報の提供も必ずしも十分ではない。大学関係団体や学協会によるこのような取組も、一層積極的に行われる必要がある。
 さらに、教育機能の充実・向上のためには、各大学等において、必要な教室や設備の整備、教員や支援職員の確保など、様々な条件整備が不可欠である。この点については、人文・社会科学分野を中心に見られるような大教室における一方通行型の講義や、施設設備の老朽化・狭隘化等の問題が指摘されており、これまでも様々な努力が払われてきたところであるが、いまだ十分な配慮がなされているとは言い難い。改革を進めるに当たって、必要な教育条件の整備が伴わない場合には、教育機能の充実・向上を図ることが、かえって教員の教育面での負担を過重にすることなどにより、大学等のもう一つの重要な機能である研究面へ影響することも危惧されている。

3 一層の改善のための方策

 以上のような問題点について、一層の改善のための方策として指摘された事柄は、以下のとおりである。なお、具体的な方策については、すべての大学等について一律に考えるべきではなく、それぞれの理念・目標に応じた工夫が必要である。

(1)全体のシステムの中での大学等の在り方

 高等教育は、学術研究の高度化と学際化、教養教育の趣旨の実現、生涯学習ニーズへの対応、さらには、社会の人材需要の変化や学生の多様化への配慮など、互いに競合関係にある多くの課題への対応を求められている。これらの広範な要請に対応していくためには、高等教育全体を一つのシステムとしてとらえ、全体としてこれらの要請を受け止めていくという視点が必要である。大学については、研究指向の大学、専門的な職業能力の養成に力点を置く大学、総合的な教養教育の提供を重視する大学、地域社会への生涯学習機会の提供に力を注ぐ大学など、様々な在り方が考えられる。各大学ごとに、それぞれの理念や目標を明らかにしていく中で、教育研究分野の特質に応じ、大学院など他の高等教育機関との関連に配慮しつつ、高等教育全体のシステムの中での位置付けを明確化する必要がる。
 また、短期大学、高等専門学校、専門学校は、それぞれ生涯学習ニーズへの対応や、教養、職業能力の育成等の面で、更に一層重要な役割が期待されている。このように、全体としてこれらの要請にこたえていくという見地から、各種の高等教育機関が、それぞれの特色を生かしつつ、更に個々の大学等が、それぞれの理念・目標等に沿って多様な対応を図り、全体のシステムの中でのそれぞれの大学等の在り方を追求することが必要である。

(2)バランスのとれた体系的なカリキュラムの編成

1)カリキュラムの編成に当たっては、まず第一に、各大学において、その理念・目標を踏まえ、当該大学卒業の条件として、学生がどのような知識及び能力を修得することを求めるのかを明確にし、そのためには、どのような授業科目を開設し、カリキュラムを組むべきかという観点から、具体的な検討を行う必要がある。
 その際、例えば、専門教育に興味を抱いて入学してくる学生を対象に1、2年次から専門科目を開設するなど、教える側の視点だけでなく、各学年における学生のニーズを視野に入れた検討を行うことが重要である。また、これまで1、2年次に教養・基礎科目を開設し、本格的な専門科目は3年次以降という積み上げ方式を取るのが一般的であったが、それにこだわることなく、4年間の中で、各大学の理念・目標の実現に最も効果的なカリキュラム編成を工夫することが期待される。
 なお、授業科目の多様化が進む中、学生が各々の学修目標に沿って適切に履修科目の選択を行うことができるよう、一定の科目群の中から選択を求める、科目相互の履修順序を明確にする、あるいは、モデル的なコースを示すなどの工夫に努めるとともに、個々の学生からの相談に応じることができる体制を整えることも重要である。

2)平成3年の大学審議会答申は、一般教育の理念・目標の実現が一層必要になっているとの認識の下に、これが大学等の教育全体の中で実質的、効果的に実現されるよう、カリキュラム及び教育体制の改善を求めたものであった。そして、この答申を踏まえて改正された大学設置基準においても、「教育課程の編成に当たつては、大学は、学部等の専攻に係る専門の学芸を教授するとともに、幅広く深い教養及び総合的な判断力を培い、豊かな人間性をかん涵養するように適切に配慮しなければならない。」と規定された。さらに、高等教育の普及に伴い、これを国民的な教養教育として位置付けるべきとの意見もあり、このような観点からも、教養教育の重要性は一層増していると考えられる。また、今日、学問の高度化・細分化が進む中で、専門分野の教育においても、学術研究の成果と人間や社会とのかかわりについての深い理解と洞察力を培う教育を行っていくことがますます強く求められている。これらのことは、大学等の社会的貢献という見地から、より深く論じられるべき事柄である。
 教養教育は高等教育全体の大きな柱であり、全教員の責任において担うべきものであるとの認識を徹底することが必要である。現在、多くの大学等においてカリキュラム改革や教育研究組織の見直しが進んでいる。その際、まず第一に教養教育によって学生にどのような知識あるいは能力を身に付けさせるのか、その目的を明確にすることが必要である。その具体的な在り方は、各大学等の工夫に待つものであるが、例えば、ある外国語文献を教材とする授業を行う場合、外国語を言語として修得することが目的なのか、文献から読みとれるその国の現状や思想を学ぶことが目的なのかといった点を明確にし、その目的に適した方法で授業を行うなど、明確な目的意識と適切な方法による教養教育を実施することが必要である。また、教養教育に責任を持つ組織については、特に平成3年答申以後教養部の改組転換を行った大学において、旧教養部に代わって設置した教養教育に関する委員会等の組織が必ずしも十分に機能していない例もあるとの指摘がある。各大学においては、教養教育は、従来からの専門学部の教員を含め、全教員が責任を持って担うべきものであるという認識の下、その実施・運営に責任を持つ組織を明確にするとともに、一部の教員に過度の負担が集中したり、学部・学科間の連絡が稀薄なために、学生の教育研究に支障を来すことのないようにする必要がある。その中で、例えば、自然科学や人文・社会科学の分野を越えて教員や学生が交流することなどを通じて、教育研究の活性化を進めることも必要である。
 また、社会福祉施設におけるボランティア活動や企業での実習など、学外での体験学習を取り入れた授業科目を開設することも望ましい。さらに、カリキュラムの内容の一層の多様化を図るため、放送大学の授業科目を活用するなどを含め、他の高等教育機関との連携を進めることも期待される。

3)また、それぞれの学問分野は、細分化・専門化の度合いを強める傾向にある一方で、学際的なアプローチによる研究の重要性が高まっていることから、関連する分野に関する幅広い教育が求められる。このため、学部・学科の壁を越えた共通授業科目の開設、異なる分野の学生同士や学生と教員が教育研究について交流できる場の工夫なども必要である。その際、狭い専門に偏らない幅広い知識を身につけるために、複数の学部・学科の専門科目を同時に履修できるようなカリキュラム上の工夫を、各大学等の事情に応じて検討していくことが望ましい。さらに、過度に細分化した学科の再編・統合を含め、学問の進展等に応じた学科の在り方の見直しが必要である。
 近年、伝統的な学問分野に対応しない新しい名称の学部等の新設が多く見られる。その評価のためには、それぞれの学部における教育研究の状況を更に見守る必要があるが、教養教育の重視、旧来の学問分野にとらわれない教育研究の推進等の面で、その成果が期待される。専門教育の内容については、各大学において、その理念・目標に従って判断されるべきものであるが、その際、学生や社会が求めるニーズをも十分考慮に入れた上で、具体的な検討が行われることが望ましい。
 さらに、専門教育が過度に細分化・専門化することのないよう、専門分野ごとに最小限必要な教育内容(コア・カリキュラム)を明確にしていくことについて、組織的に検討することが必要である。

4)各大学等においては、高等学校との関連にも留意する必要がある。各大学等においては、高等学校のカリキュラムの動向や学生の実態を踏まえつつ、当該大学の授業を受けるために必要な科目については、高等学校での履修を求めるなどの方法により、入学前に学生が学習すべき内容に関する情報提供に努めるとともに、入学後、必要に応じて学生の履修歴等に対応した補習教育を実施するなどの工夫を通じて、中等教育から高等教育への移行を円滑に進めることが求められる。同時に、入学者選抜においては、専門高校や総合学科の卒業者を対象とした選抜方法を導入するなど、高等学校における学生の実情に配慮することが望ましい。

5)大学院との関連では、専門の基礎的な授業から、大学院との共通授業まで多様なレベルの授業科目を設定するなどにより、学生がゆとりを持って自分の専攻や進路を決定できるように、学生自らが学部の教育内容を精選しつつ、能力と意欲に基づき高度な学習の選択も可能とするよう配慮がなされることが必要である。

6)さらに、幅広い知識と豊かな人間性をかん涵養するためには、授業だけでなく、課外活動等を含む大学生活全般を通じて学生が学んでいくことの意義についても十分配慮することが必要である。体育系、文科系のサークル活動やこれらのための施設設備の在り方等についても、今後の検討課題である。

(3)学習効果を高める工夫

1)学生の学習効果を高めるためには、少人数・双方向の教育、実験・実習、フィールドワーク、ディベートなど様々な工夫をする必要がある。また、学生の履修歴が一層多様になり、特定科目について既修者、未修者が存在することなどから、補習教育を行うほか、科目にグレードを付け、学生が段階的に履修できるようにすることも効果的であると考えられる。さらに、個々の学生の理解度に沿ったきめ細かな指導を行うため、ティーチング・アシスタントを活用することも有効である。

2)学生の教育を充実する上で、シラバスの作成とその内容の充実が有効である。
 特に教員・学生間での双方向の授業が成り立つためには、事前に学生が授業についての学習上の情報を得、その趣旨を十分理解した上で十分な準備学習や復習等ができるようにすることが必要であり、この意味でもシラバスの充実が求められている。現在作成されているシラバスの多くは、学生に履修科目選択のための情報を提供する履修科目の一覧としての役割と、履修する個々の授業科目について詳細な授業計画を示すとともに学生の教室外における準備学習等についての指示を与える役割という二つの役割を果たすものとして作られているが、今後は、後者の役割を十分果たすような内容の充実したシラバスを作成する必要がある。このようなシラバスは、全学生向けの科目選択用のシラバスとは別に、個々の教員が、各授業科目を履修する学生に対して配布する性質のものであり、全教科同じ形式である必要はなく、それぞれの授業科目の特性などに沿って、適切に作成することが重要である。
 また、履修科目の選択のための情報を提供するシラバスの作成に当たっては、学生が自分の専攻分野とそれぞれの授業科目との関連や授業科目の学問分野における位置付けを把握でき、一貫した体系的な履修の便に資するようにすることが期待される。

3)セメスター制は、これまで、2単位科目を増やすことにより、選択の幅を広げるために使われる傾向があった。しかし、セメスター制は、むしろ、1セメスターという短い期間で少数の科目を集中的に履修し、学習効果を高める点に意義があり、そのためには、2単位科目に限らず、1セメスターで完結する4単位科目あるいは3単位科目を開設するなどの工夫が必要である。セメスター制は、学生だけでなく教える側の教員にとっても密度の濃い教育活動を要求するものであり、これまでの実績からも教育効果が高いことが示されている。2学期制の学期完結方式以外にも、3学期制や3学期と夏学期を合わせたクオーター制なども考えられ、各大学等の事情に応じて、学習効果を高めるための学期制度の導入が検討されることが望ましい。その際、各科目の授業内容のまとまりや科目間の関連に留意するなどの配慮が必要である。

4)個々の授業や学習成果の評価の在り方についても改善する必要がある。平成3年の大学設置基準の改正により新しい単位の計算方法を導入した趣旨を踏まえ、レポートなど教室外における学習を含め、きめの細かい配慮を行うことが必要である。特に、大学設置基準では、1単位は教室外の学習を含めた標準45時間の学習を要する教育内容をもって構成されるものとされている趣旨に鑑み、授業に当たっては、学生が事前・事後に教室外において相当時間分学習を行うように指導上工夫することが、教員の責任であることを十分に踏まえておくことが重要である。そのためには、オフィス・アワーを設け、学生の学習に個別に対応することも有効である。また、学習の指導にティーチング・アシスタントを活用することなども考慮されてよい。同時に、履修科目の登録に際しては、標準45時間の学習を要するという単位制の趣旨に鑑み、履修科目が過度に多くならないよう学期毎の登録単位数の上限を設けるなど、履修制度の整備や学生に対する適切な履修指導を行う必要がある。その上で、学習成果の評価に当たっては、教育理念や目標を踏まえて厳格に学習成果を評価し単位を認定することや、複数の教員によりあらかじめ評価基準を協議し、単位認定に際しての客観性を確保することなど、成績評価に対するより一層責任ある姿勢が求められる。なお、教室外における学習を徹底させるためには、指導を担当する個々の教員の努力に加え、図書館の座席数や開館時間、貸出期間など施設設備利用の面からの学習環境の整備にも留意する必要がある。
 本審議会としては、各大学等に対して以上のような努力を求めると同時に、就職活動の早期化により学業に支障を及ぼすことのないよう、大学の教育活動を尊重した採用についての産業界の適切な配慮を強く要請したい。

5)教育内容・方法の改善のための組織的取組が必要である。学生による授業評価の導入、新任教員のオリエンテーションの実施などのほか、教授法に関するマニュアルの作成、教科書など教材の開発なども有効である。従来、教育の内容・方法の改善は、多くの場合、個々人の努力によるものであり、その成果も個々の教員の情報にとどまっていた。今後は、個々の教員レベルだけでなく、全学的に、あるいは学部・学科全体で、非常勤講師の参加も得て、それぞれの大学等の理念・目標や教育内容・方法についての組織的な研究・研修(ファカルティ・ディベロップメント)を推進することが必要である。
 また、個々の専門分野毎に、大学関係団体等が中心となって、このような活動を展開することも重要である。

(4)教育活動の評価の在り方

1)各大学等における教育活動の評価は、各大学における教育目標の達成度や学生の学習効果の把握、教育機能の充実の方向性や方策の検討、教育改革の成果の把握とその後の改善のために重要な役割を果たすものである。
 学生の多様化や卒業後の進路の多様化をはじめとして高等教育を取り巻く状況が著しく変化している状況の中で、大学等における教育機能を強化するためには、バランスのとれた体系的なカリキュラムの編成、学習効果を高める工夫などについて不断の改善を図るとともに、各大学等において、教育理念・目標に基づく教育活動の評価の在り方について一層積極的な検討が行われることが不可欠である。
 また、個々の教員においても、授業評価等が、それぞれの授業内容・方法等の一層の改善を図り、優れた教育活動を展開していくための適切な情報を得る上で必要不可欠のものであることを認識し、積極的に取り組んでいくことが必要である。
 このように、教育活動の評価は、各大学等の理念・目標に応じ、大学等の組織としての教育活動の評価及び個々の教員の教育活動の評価の両面から行われることが重要である。

2)教育活動の評価項目としては、例えば、平成3年2月8日の本審議会答申において示された大学の自己点検・評価項目(例)のうち、別紙1のような項目が考えられる。また、その「◇教育活動(教授方法の工夫・研究)」のうち「○教員の教育活動に対する評価の工夫(学生による授業評価等)」に関連するより具体的な評価項目としては、例えば、別紙2のような項目が考えられる。
 なお、別紙の項目は例示にすぎず、各大学等において実際に教育活動の評価を行う際は、国公私立の別や専門分野の別、新設・既設の別等の事情に応じ、各大学等の理念・目標をいかに実現するかという観点から、各大学等の判断により、大学等の組織としての教育活動の評価と、個々の教員の教育活動の評価の両面にわたって、適切な項目が設定されることが望ましい。

3)個々の教員の教育活動、特に授業内容・方法の改善を図るためには、教員自身による評価のほか、評価項目によっては、学生による授業評価や同僚の教員による評価などを積極的に活用することが効果的である。また、大学等の組織としての全般的な教育活動の改善を図る上では、卒業生や卒業生が働いている職場からの評価、社会からの評価などを積極的に求めていくことが有効である。

4)教育活動の評価の結果が、教育活動の更なる改善に適切に結び付いていくためには、個々の教員への評価結果の効果的なフィードバック・システムの整備や、個々の教員による改善への取組を大学等が組織的に支援する体制の整備が行われることが重要である。さらに、評価結果を学生や社会に対して積極的に発信し、そのような取組を通じて学生や社会からの意見を汲み取り、教育活動や評価方法の更なる改善に活かしていくことも大切である。各大学等において、このような一連の評価活動のシステムが整備され、教育活動の不断の改善が図られることを強く期待したい。

5)以上1)~4)において各大学の自己点検・評価における教育活動の改善に焦点を絞って評価の在り方を提言したが、第三者による評価の導入とその在り方などについては今後の検討課題である。諸外国においては、質の高い高等教育に対する社会の要求に応えるため、各大学等における自己点検・評価の一環として行われるものをはじめ、国家的な機関による評価、アクレディテーション機関による評価、マスコミ等の評価など様々な形態で大学等の教育活動の評価が行われている。我が国においても、今後、教育研究の質の一層の維持・向上を図っていくためには、大学にふさわしい客観的な評価システムを確立していくことが不可欠であり、このため、教育研究活動や運営システム等を多角的に評価する上での評価手法や考え方等について、本審議会において検討を進めることが必要である。

(5)学生の流動性(選択の幅)を高める工夫

1)学生の流動性(選択の幅)を高める工夫としては、まず、学部・学科間の壁を低くし、共通授業の開設、関連分野の教員の協力などを進めるほか、学科別入試の見直しについても検討する必要がある。また、平成9年度から、大学間相互単位互換協定に基づき、国立大学が公私立大学と相互に学生を受け入れ、派遣する場合には、授業料を不徴収とすることができることとなったことを踏まえ、さらに単位互換を推進することも必要である。さらに、学生の学部・学科の変更や転入学などにも柔軟に対応する必要がある。

2)国際的な学生の流動性を高めることも必要である。留学生を受け入れることは、その教育を通じて世界の人材養成に貢献するのみならず、我が国の高等教育や学生を国際化・活性化する効果がある。また、国際化に対応し得る人材の養成が求められているが、学生が海外で学ぶこと自体、広い意味での教養教育に資するものであり、世界に貢献する人材養成にもつながるものである。日本人学生の留学を促進するとともに、海外で学習する学生が修学上不利にならないようにするための方策が必要である。この点に関連して、学期ごとに授業が完結するセメスター制を、外国を含めた他の大学等との交流を容易にする一つの方策として積極的に活用することも考えられる。

3)近年、情報手段の発達は目覚ましく、今後、マルチメディアを利用した教育が大学等に導入されれば、授業の在り方を大きく変える可能性があり、さらには、これらのメディアを活用した交換授業の実施、遠隔教育の実施、企業等に対する授業の提供が一層進むなど、大学等における教育そのものの在り方を大きく変革することも予想される。このため各大学等における情報機器やネットワークの整備、メディアを活用した大学等における教育の在り方に関する研究とその成果の普及を更に推進していく必要がある。

4)専門学校卒業者の中には、大学及び短期大学(以下、4)・5)において「大学等」という。)において、さらに学習を行うことを希望する者がいる。大学等がこうした学生を受け入れることは、学習ニーズの多様化に適切に応えるものであるとともに、学生の選択の幅を拡げ高等教育における学生の流動性を高める観点からも有意義である。また、受け入れに当たっては、専門学校における学習の成果について適切に評価することが重要であるとともに、学校教育制度におけるいわゆる袋小路をできるだけ解消することが望ましいことから、今後、一定の専門学校卒業者に対して大学等への編入学の途を開いていくようにすることが適当である。
 その際、専門学校の制度の特色として、多様な形態の学校が認められていることを踏まえると、現行の学校教育体系の中においては、全ての専門学校の卒業者について大学等への編入学を認めることは適当ではない。どのような専門学校について認めていくかについては、大学等として学習者の学習意欲にできる限り応えていくことが望ましいこと、大学入学資格を付与している専修学校高等課程の認定の際の考え方、大学への編入学が認められている短期大学や高等専門学校の修業年限及び総授業時数の現状などを踏まえながら総合的に判断すると、専門学校のうち、「修業年限が2年以上で総授業時数が1700時間以上のもの」を基準として、これを満たすものとして認定された専門学校を卒業した者について、大学等への編入学を認めていくのが適当である。
 なお、大学等の教育は、各大学等においてそれぞれのカリキュラムに基づいて、定められた修業年限の期間にわたって行われるのが基本であり、各大学等における編入学者の受け入れに際しては、この点に十分留意しつつ、既修得単位等の認定、在学すべき年数、履修すべき科目等について適切に判断し、編入学者が十分な学習成果を得られるようにしていくことが必要である。また、大学等への編入学資格の認定を受けた専門学校の卒業者については、学位授与機構における学士の学位授与の基礎資格についてもあわせて認めていくこととするのが適当である。
 5 学生が大学等に入学する前に科目等履修生として修得した単位等については、入学後に当該大学等の単位として認定できることとされている。こうした学習の成果をより適切に評価する観点から、一定の場合には、相当の期間を在学すべき期間に通算することができるようにすることが適当であると考えられるが、年数の通算に反映できる単位の範囲を入学した大学等から授与された単位に限るのかどうか、在学すべき年数と学生の年齢との関係をどう考えるか、通算できる年数に上限を設けるかどうかなど、なお審議すべき課題もあり、引き続き早急に検討することが必要である。

(6)高等教育の改革を進めるための基盤の確立

 高等教育の改革を進めるに当たっては、各大学等における組織的な取組のみならず、大学関係団体、国、地域や産業界などがこれを支援・協力する体制の確立が不可欠である。

1)各大学等においては、ファカルティ・ディベロップメントの組織的推進、教授法の開発や研修を担当する組織の整備、全学的にカリキュラムの在り方を企画調整する組織の工夫、継続的な自己点検・評価の体制の確立、第三者評価の導入、評価結果の外部への積極的な発信などを進めていくことが必要である。さらに教員構成を多様にすることも必要であり、特定の専門分野のみならず分野横断的な研究をしている者、実務経験者、外国人などを積極的に採用することや、教員の流動化を一層進めることも望まれる。また、大学院学生の将来の教員としての能力の向上を図る上で、ティーチング・アシスタント制度を活用することも有効である。

2)大学関係団体、学協会等においては、コア・カリキュラムの作成、大学等の相互評価システムの形成などに向けて、積極的な取組を進めることが期待される。また、各大学等の交流を促進し、それぞれの改革の状況に関する情報を交換する機会や、共通の議論の場を設定する等の面で、積極的な役割を果たすことが求められる。

3)国においては、各大学等における改革を財政面についても積極的に支援することが必要である。特に教育改革を実効あるものとして継続的に推進していくためには、これを各大学及び教員の負担だけに任せるのでなく、国として教育研究条件の整備の裏付けを行っていくことが不可欠である。今後、教育研究機能の充実を図っていくためには、学生の選択の幅の拡大、少人数教育や学術研究の進展に対応する実験実習の実施、情報通信基盤の教育研究への利用等に対応し得るよう、施設設備の整備や教職員の配置など、必要な財政上の措置を講じていくことが必要である。その際、積極的に改革に取り組み、その成果をあげている大学等を、重点的に支援していくことが必要である。さらに、教育研究を活性化するため、サバティカル・リーブを導入することも検討する必要がある。
 また、各大学等において、高等教育を取り巻く状況の変化に即応しつつ、必要な改革を適切に推進していくためには、高等教育の改革の課題や方法を明らかにするとともに、国においては、必要な情報を、各大学等に十分提供していくことが求められる。このため、教育内容や教授法のみならず、高等教育における国の責任や関与の在り方、高等教育財政の在り方、教育条件の在り方(諸外国との比較による教育研究条件、学生対教員比など)、教育における競争的な環境の確立など、高等教育に関する教育研究を対象とした大学院研究科等における教育研究体制を充実するとともに、国においても、カリキュラム開発への支援や改革に関する情報を積極的に提供していくことが必要である。

4)なお、各大学等が教育改革を進めるためには、それぞれの大学等が、組織として、様々な意思決定を行い、これを効果的に実施していくことが必要であり、大学等の組織運営の円滑化は、教育の充実を図る上で極めて重要な課題である。
 しかしながら、現状においては、大学等の組織運営は、必ずしも円滑に機能しておらず、教員が、組織運営のために多くの時間を割かれているとの指摘もある。
 このような状況を改善するための専門的な体制の整備等の方策については、大学審議会答申「大学運営の円滑化について」の提言に沿って、逐次改善が進められることを期待するものである。

5)なお、大学の校地面積については、大学設置基準で、校舎の最低基準面積の6倍以上とする(医学部・歯学部の場合は、校舎最低面積の3倍以上の面積+附属病院建築面積)の原則が定められている。
 このような必要最低限の校地面積に関する量的な基準については、平成3年の本審議会答申「大学教育の改善について」において、「今後とも大学設置基準に規定することが適当である」との基本方針とともに、「現行の6倍基準を原則とする方式」について検討を重ねた結果、「大学設置基準の規定は現行どおりとし、運用面で3倍基準の積極的な活用を図ることが適当である」との考え方を示したところである。しかしながら、6倍あるいは3倍とする定量的な基準についての根拠は必ずしも明確ではないとの指摘もあり、今後、本部会において、更に検討を重ねる必要がある。

別紙1

大学の自己点検・評価項目(例)

(大学審議会答申「大学教育の改善について」(平成3年2月)別紙より)

(1)教育活動等に関する事項
 ◇ 教育理念・目標等
 ○ 大学(学部)の教育理念・目標の設定
 ○ 教育理念・目標の点検・見直し
 ○ 大学(学部)の将来構想
 ○ 教育研究の活性化・充実のためのこれまでの取り組み etc. 

◇ 教育活動
(学生の受け入れ)
○ 学生募集・入学者選抜の方針・方法
○ 学生定員充足状況(志願者数、合格者数、入学者数、在学者数等)
○ 編入学の方針と状況 etc.

(学生生活への配慮)
○ 奨学金制度(大学独自の奨学金、企業等からの奨学金等)、授業料減免の状況
○ 学生生活相談
○ 課外活動 etc.

(カリキュラムの編成)
○ カリキュラムの編成方針と教育理念・目標との関係
○ 一般教育の内容とカリキュラム全体における位置付け
○ 外国語教育の内容とカリキュラム全体における位置付け
○ 保健体育の内容とカリキュラム全体における位置付け
○ 専門教育の内容とカリキュラム全体における位置付け
○ カリキュラムの編成及び見直しの方法・体制 etc.

(教育指導の在り方)
○ 各授業ごとの授業計画(シラバス)の作成状況
○ カリキュラム・ガイダンスの実施状況
○ クラスの大きさ、編成方法
○ 教員1人当たりの授業時間数
○ 各授業科目担当者間での授業内容の調整
○ 演習・実験等の実施状況
○ 視聴覚教育の実施状況
○ 他学科、他学部聴講の方針と状況
○ 転学部、転学科の方針と状況
○ 他大学との単位互換の方針と状況
○ 進級状況(留年、休学、退学) etc.

(教授方法の工夫・研究)
○ 教授方法の工夫・研究のための取り組み
○ 教員の教育活動に対する評価の工夫(学生による授業評価等) etc.

(成績評価、単位認定)
○ 成績評価、単位認定の在り方・基準 etc.

(卒業生の就職状況)
○ 卒業生の就職状況
○ 学部卒業生の大学院への進学状況 etc.

(2)教育活動に関連する事項
◇ 教員組織(専任教員・非常勤講師の配置状況、出身大学・年齢構成等)
◇ 施設設備(施設設備の整備・運用状況、学術情報システムの整備・活用状況等)
◇ 国際交流(留学生の受入れ状況、在学生の海外留学・研修の方針と状況等)
◇ 社会との連携(公開講座の開設状況、社会人の受け入れ)
◇ 管理運営、財政(教育研究に関する意志決定の方法・体制、事務組織、予算の編成と執行の状況等)

別紙2

教員の教育活動等に対する評価項目(例)

○ 授業

  • 授業の実施状況(週当たり授業時数、受講学生数、休講の状況等)
  • 授業内容・方法(シラバスの内容、教科書、教材の作成・使用状況、教育方法の工夫、授業の効果、卒業論文指導の状況等)
  • 成績評価(評価基準、評価結果等)
  • 授業に関連するもの(オフィスアワー、ティーチング・アシスタントの指導等)

○ 教育に関する組織の活動への貢献(教務カリキュラム委員会、入試問題の作成等)
○ 課外活動・厚生補導(学生生活に関する委員会委員、サークルの顧問等の経歴、学内行事等への参加、就職指導等)
○ 留学生の指導等(教育方法の工夫、生活指導等)
○ 教育面での地域貢献(公開講座、地域主催事業への参加等)
○ 研修への取り組み(ファカルティ・ディベロップメント等)

お問合せ先

高等教育局企画課

-- 登録:平成21年以前 --