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平成12年度以降の高等教育の将来構想について (大学審議会・答申)

平成9年1月29日
大学審議会

 本審議会は、創設時に文部大臣から、「大学等における教育研究の高度化、個性化及び活性化等のための具体的方策について」諮問を受けて以来、多岐にわたる高等教育改革の課題について調査審議を進め、逐次答申を行っている。
 このうち、平成3年5月の本審議会答申「平成5年度以降の高等教育の計画的整備について」(以下「現行計画」という)に引き続く、平成12年度以降の高等教育計画については、大学の大衆化、生涯学習の進展、国際化などの急激な社会の変化が予測される状況において、将来的な高等教育の在り方を十分検討した上で、それにふさわしい内容を考えることとし、平成7年4月、大学教育部会に高等教育将来構想専門委員会を設置した。さらに、平成7年11月には、同専門委員会における審議を踏まえ、引き続き平成12年度以降の高等教育の将来構想について審議するため、高等教育将来構想部会を設置した。
 高等教育将来構想部会は、以後、(1)高等教育の大衆化、(2)高等教育における「質」の確保、(3)社会経済の変化や学問の発展に対応した人材養成、(4)高等教育の地域配置の在り方、の四つの視点から、関係者からのヒアリングを実施するなど専門的かつ慎重な審議を重ね、平成8年10月には審議の概要を総会に報告して公表した。

 本審議会は、同部会における審議の結果に基づき、さらに総会で審議を行い、このたび、平成12年度以降の高等教育の将来構想について結論を得たので、逐次答申の要請に応じ、ここに答申を行うものである。

1 今後における高等教育の発展の方向

1 本構想の位置付け

(1)現行計画の趣旨

 本審議会においては、平成3年5月、「平成5年度以降の高等教育の計画的整備について」答申を行い、平成5年度から12年度までの8年間を対象とする高等教育の整備の方向と内容を示した。この答申においては、今後における  高等教育の整備の方向として、
(1)高等教育を高等学校卒業後の多様な教育形態を含む広い意味のものとして把握し、その構造の柔軟化を進めること、
(2) 大学・短期大学については、量的な拡大よりも質的な充実を格段に図ることが重要であること、
の二点を示し、質的充実に当たって特に重視すべき方向として、
(a)創造性豊かで時代の変化に柔軟に対応し得る能力を育成するための教育機能の強化、
(b)先進諸国に伍して新たな世界を切り開くとともに世界に積極的に貢献するための世界的水準の教育研究の推進、
(c)リカレント教育等の需要に対し多様な学習機会の提供を行うための生涯学習への適切な対応、  の三つを挙げたところである。
 また、高等教育の規模が拡大し、広く普及した状況を踏まえ、研究指向のもの、教育に力点を置くもの、地域における生涯学習に力を注ぐものなど、様々なタイプの高等教育機関が育っていくことが考えられ、その上で、各高等教育機関が、それぞれの理念・目標に基づき、個性を発揮し、自由で多様な発展を遂げることにより、高等教育全体として社会や国民の多様な要請に適切に対応し得るものと考えられる、との考え方を示した。
 高等教育の規模については、高等教育をめぐる諸情勢が急速に変化し、かつ、その変化の方向も明確でない状況では、規模を考えるに当たって勘案すべき諸要素すべてについて特定の見通しを得ることは困難であり、また、18歳人口が急減し、高等教育の規模の縮小が見込まれる時期においては、従来のような計画的な整備目標を設定するという手法をとることは適当でないことから、想定しうる三つのケースを示した。その上で、これらのうち、過去の進学状況や前計画との継続性等の観点から、当面最も小規模で推移するケースを念頭に置いて行財政政策を推進することが適当との判断に立ち、大学等の新増設については原則抑制の方針で臨む必要があるとの方針を示したところである。
 また、いずれのケースについても、18歳人口の急減に伴い、個々の大学等について見れば、定員の充足に困難を生ずるなどの厳しい環境が予想されることから、各大学等において、社会や学生のニーズに対応したカリキュラムの編成、指導方法の改善充実などに積極的に取り組む必要があることを指摘したところである。

(2)高等教育を取り巻く情勢の変化

(1)高等教育の普及
 18歳人口は、平成4年度をピークに減少し、平成21年度までは減少傾向が続くと見込まれるが、一方で、高等教育への進学意欲は急速に高まってきている。高等学校新規卒業者の大学、短期大学への志願率は、平成2年度には49.2%であったが、平成8年度には54.4%に達している。中でも、女子の4年制大学への志願率の高まりが顕著であり、平成2年度の19.7%から、平成8年度には28.7%となっている。このような進学意欲の高まりの中で、進学率についても、平成2年度と平成8年度とを比べると、大学、短期大学への進学率は36.3%から46.2%に、高等専門学校を含めると36.8%から46.8%に、さらに、専門学校を含めると53.7%から66.2%にまで上昇している。
 このような状況を踏まえると、高等教育機関での学習を希望する者の層は今後とも拡大し、学生の能力、適性は一層多様化するものと考えられる。高等教育機関は、このような学生の多様化を踏まえて、それぞれにその目的・性格や、教育内容・方法の在り方を、更に見直していくことが必要となっている。

(2)学術研究の進展
 今日、学術研究は高度化・専門化する一方、総合化、学際化の傾向をますます強めている。我が国の高等教育機関には、独創的な学術研究を推進し、世界の学術の進展に貢献するとともに、こうした学術研究面での貢献を通じ、地球環境問題、食糧問題、エネルギー・資源問題などの地球的規模の課題を解決していくことが求められている。また、学術研究の著しい進展の中で、高等教育において、学術研究の成果と人間や社会との関わりに関する高度の識見を身に付け、その成果をもって真に社会に貢献していく人材を養成することが、ますます重要になっている。

(3)社会・経済の変化
 今日の社会・経済の急速な変化に対応して、単に専門分野における高度の知識・技術の習得だけではなく、深い教養、主体的に変化に対応し得る幅広い視野や総合的な判断力、豊かな創造性を持つ人材の養成がますます重要になっている。また、産業構造の変化に伴い、高度な知的能力を必要とする職業分野が増加しており、従来高等教育が対象としてこなかった、新たな分野の人材養成も求められている。さらには、現在、あらゆる分野で国際化や情報化が進行している中で、これらに対応していくための高度の知識・技術を身に付けることが、一部の専門家だけでなく、すべての学生に求められるようになっている。

(4)生涯学習ニーズの高まり
 今日の生涯学習ニーズの高まりとともに、高等教育は、20歳前後の伝統的な進学年齢層の学生のみならず、有職者や主婦などいわゆる社会人学生に対しても、広く門戸を開いていくことが必要となっている。今後、高等教育機関は、幅広い年齢層の人々が必要が生じたときにいつでも学習できる場として、より豊かで文化的な生活への欲求や知的探求心にこたえるとともに、高度で最新の専門的知識・技術を再教育することや、学問の方法を身に付ける機会を提供することが求められている。

(3)本構想の対象期間

 現行計画は、18歳人口急減期の計画として平成5年度から平成12年度までを計画期間としつつ、18歳人口が平成13年度以降も更に減少し続けることが予測されていたことから、平成13年度以降も見通した長期的な展望にも十分留意して策定されたものである。現行計画に引き続く高等教育の将来構想を示すに当たっては、現行計画において示された方向性を踏まえつつ、さらに、先に述べたような高等教育を取り巻く情勢の新たな変化を考慮する必要がある。
 この観点からは、今後予想される高等教育への進学意欲の一層の高まりを積極的に受け止めつつ、教育機能の強化など質的な面での向上を図ることや、各高等教育機関が、社会の変化に対応して自由で多様な発展を遂げることにより、高等教育全体として社会や国民の多様な要請に適切にこたえていくことが重要である。
 また、全体規模に関しては、志願率が高まったとしても、18歳人口が減少し続けることに伴い、全体としての志願者数は減少していくことが予想されるため、各高等教育機関は、今後、一層厳しい競争的な環境に置かれるものと考えられる。
 したがって、現行計画に引き続く本構想においては、高等教育への進学意欲の高まりを積極的に受け止めつつ、このような新たな環境への円滑な移行を図る観点が必要となる。
 以上のような観点に立って、本構想では、18歳人口が平成21年度までは減少し続けることが予測されることや、臨時的定員については平成11年度末までに解消することとされていることを踏まえ、平成21年度までを視野に入れつつ、平成12年度から平成16年度までの5年間における高等教育の構想を示すこととする。

2 高等教育の普及に対する考え方

 既に述べたように、平成8年度現在、高等学校新規卒業者の大学、短期大学への志願率は54.4%となっている。また、進学率についても、大学、短期大学への進学率は46.2%、高等専門学校を含めると46.8%、さらに、専門学校まで含めると、66.2%にまで達している。
 このような高等教育への進学意欲の高まりは、今後の職業その他の社会生活に必要な知識・技術の高度化や、より豊かで文化的な生き方が追求されていくことなどを背景に、今後とも継続するものと考えられる。今後の高等教育の方向を考えるに当たっては、このような高等教育機関に学びたいという意欲の高まりを積極的に受け止めていくことを基本とする必要がある。
 また、高等教育がその門戸を広げていくことにより、我が国の社会全体の知のストックを高めるとともに、その多元化を図ることは、我が国が、今後とも活力ある発展を遂げ、国際社会において重要な役割を担うためにも、ますます重要になるものと考えられる。
 このように、今後も進学率が高まっていくことについては、積極的に受け止める必要があると考えるが、これに伴って予想される学生や学習ニーズの一層の多様化を踏まえ、高等教育機関の多様化とその教育の質的向上とをどのように進めるべきかについて、一層の議論の積み重ねが必要である。

3 高等教育の質的向上

(1)高等教育の質的向上のための取組

 高等教育の普及に伴い、学生の能力、適性は一層多様化するものと考えられる。さらに、学術研究の著しい進展の中で、高等教育において、学術研究の成果と人間や社会との関わりに関する高度の識見を身に付け、その成果をもって真に社会に貢献していく人材の養成が求められている。このような状況を踏まえ、高等教育の質の向上を図ることがますます重要となっている。
 高等教育の「質」の捉え方としては、入学する学生の質、入学後の教育の質(教員、教育課程・方法、施設設備など)、卒業する学生の能力の水準、研究水準などが考えられる。これらについて、今後、その維持向上を図っていくことが必要である。特に、教育の内容・方法の一層の充実を図り、卒業生の質の維持向上に努めることが求められる。
 また、今後予想される一層競争的な環境の中で、各高等教育機関が多様で活力ある発展を続けていくためには、各高等教育機関が自らの責任で創意工夫を行い、教育研究の質的向上への自己努力をすることを基本として考える必要がある。また、「質」の在り方についても一律に考えるべきでなく、各高等教育機関が、それぞれの理念・目標に基づいて、それぞれに質的向上に努めていくことが必要である。
 現在、平成3年の設置基準改正等を契機として、各大学等において、多様な改革の取組が、かつてない規模で進められている。今後とも、各高等教育機関においては、本審議会の他の答申等で指摘されている高等教育の改善のための具体的方策を含め、教育研究機能の格段の強化に向けた積極的な努力が期待される。
 さらに、このような形で高等教育の質的向上を進めていくためには、設置基準の設定・運用等一定のルールの下に、各高等教育機関の有意義な試みが生かされるよう支援する方向での行政の役割が、より重要となるものと考えられる。

(2)質的向上のための評価についての考え方

 現在、多くの大学で自己点検・評価の取組が進められているが、今後一層の質的向上を図っていくためには、これらの自己点検・評価の定着状況を踏まえつつ、教育研究の評価の在り方についての検討も必要である。
 高等教育の質的向上のための評価の在り方については、学生や社会の側で、教育に関する情報の十分な把握が必ずしも容易でないことなどから、社会一般の評価に依存するだけでは、必ずしも目指すべき方向に向かうとは限らないことが指摘される。
 また、現行計画においては、関係者による相互評価システムの確立が提言されているが、日本では、アメリカ型の評価システムは機能しにくく、我が国独自の相互評価システムを考える必要があるのではないか、との指摘もある。
 これらを踏まえ、高等教育機関における教育研究の評価の在り方について、今後検討する必要がある。

(3)卒業生の質の確保

 高等教育においては、入学時の選抜よりも、卒業認定を厳格にすることにより、卒業生の質の確保を図ることが必要であるとの指摘が少なくない。入学に関しては、今後、18歳人口の減少に伴い、高等教育への進学の機会が拡大していくことが予想される。このような状況を踏まえ、各高等教育機関においては、それぞれの理念・目標に即し、入学者選抜の在り方を工夫することが望まれる。さらに、卒業に関しては、教育の内容・方法の一層の充実を図り、教育  理念や目標を踏まえて厳格に学習成果を評価し、単位を認定することによって、卒業生の質の確保を図っていくことが強く求められている。
 また、学生に対しても、卒業に向けて自らの責任において学ぶ自覚を促していくことが重要である。
 さらに、学生が自主的に学習することを促すためにも、転・編入学や単位互換など、高等教育機関の間での学生の流動性を高めることや、履修形態に選択の幅を広げることが望ましい。

4 社会の変化と高等教育の役割

(1)社会の変化への対応について

(1)将来の人材需要について
 既に述べたように、今日、社会の高度化、複雑化の進展に伴い、多くの職業分野において高度な知的能力を必要とする業務が増加している。また、企業においては、新卒一括採用及び終身雇用制を基本とする従来の雇用慣行の見直しが図られる中で、特定分野における専門性を有する人材が求められる傾向にある。したがって、基本的には、高度の知的能力や職業上求められる専門性を身に付けた高等教育修了者の割合が高まっていくことが必要であると考えられる。
 一方で、社会・経済は急速に変化しており、将来の人材需要を予測することは困難ではあるが、今後、我が国の産業界がどれだけ高等教育修了者を収容できるかについては、悲観的な見方もある。
 このような状況を踏まえると、各大学等においては、学生の将来の進路を踏まえた教育内容の工夫がますます重要になるものと思われる。しかしながら、このような社会の人材需要の観点だけでなく、個人の学習ニーズに対応していくことや、我が国に対する国際的な期待にこたえるための質の高い教育研究を行うなどの観点を考慮していくことが、今後より重要になるものと考えられる。
 また、我が国の社会が、今後も活力ある発展を続けていくためには、社会の側が、高等教育修了者をより有効に活用する努力をするという視点を持つことも必要である。

(2)生涯学習ニーズへの対応について
 技術革新をはじめとして、社会の諸変化が加速しており、継続的に新しく高度な知識・技術を身に付けていく必要が高まっている。また、自由時間の増大や高齢化等、社会の成熟化に伴い、心の豊かさや生きがいのための学習需要が増大している。高等教育機関には、このような生涯学習ニーズへの対応がますます求められていくものと考えられる。
 しかし、社会人については、高等教育への意欲は高いものの、時間的・経済的制約等から、パートタイムでの就学や専門学校への就学は増えるが、大学等の正規学生としての就学は余り増えないのではないかとの見方もある。今後、社会人学生のニーズに適切にこたえていくためには、履修形態の弾力化や多様な学習成果に対する評価の工夫など、大学等の側での積極的な努力が必要である。
 また、特に生涯学習に関しては、アクセスが容易であることが求められる。近年、多様なメディアが急速に発展、普及しており、これらの教育への利用の有効性が指摘されているところである。これらの観点から、通信教育を含め、多様なメディアを活用した教育を積極的に位置付けることも必要である。

(2)高等教育機関の多様な発展について

 今後、我が国が世界に伍して発展し、また、世界の一員として国際社会に貢献していくためには、高等教育機関において、世界的水準の教育研究活動が展開されることが重要である。また、我が国に対する国際社会の期待にこたえるためにも、様々な分野で、卓越した人材を養成していくことも必要である。
 他方、高等教育への進学の機会が拡大される中で、より幅の広い層の国民に対し、それぞれの関心や意欲に応じ、その能力を十分に伸ばしていくための多様な教育機会を提供していくことがますます重要となってくる。
 このような高等教育に対する社会の多様なニーズにこたえるため、大学・大学院、短期大学、高等専門学校、専門学校がそれぞれに特色を生かした取組を行うことが必要である。

(1)大学の学部教育については、各大学が、それぞれの理念・目標を明確にする中で、教育研究分野の特質に応じ、大学院など他の高等教育機関との関連に配慮しつつ、その位置付けを明確にする必要がある。
 また、今後予想される一層の学生の多様化に対応するため、各大学において、学部の教育機能を組織的・体系的に強化していくことが重要である。現在、平成3年の大学設置基準の改正などを契機として、カリキュラム改革や、シラバスの作成や少人数講義の拡大などの教育方法の改善などが進められているが、今後、これらの改革の取組が、組織的に、一層積極的に進められることが求められる。さらに、学生の多様な能力や学習意欲に柔軟にこたえていくため、学生の選択の幅や流動性を高める工夫も重要である。

(2)大学院は、学術研究が専門化、先端化する一方、総合化、学際化する中で、それぞれの分野で基礎的、先駆的な学術研究を推進するとともに、幅の広い視野、高度の専門性、さらには豊かな人間性を備えた優れた研究者を養成する中核的機関となることが求められている。
 また、今後、産業界をはじめとする社会の各分野において指導的な役割を担う高度の専門的な職業人の養成が、ますます重要になる。職業上必要な新しい知識・技術を求める者や、実社会で身に付けた実務的な知識・経験を学術的に更に高めていくことを希望する者に対しても、広くその門戸を開いていくことが必要である。
 さらに、国際化が一層進む中で、大学院は、国際的水準の研究成果を生み出し、その成果を発信して世界の学術研究の進展に寄与することが求められる。教育面においても、留学生の受入れなどを通じて世界の人材養成に貢献することや、国際社会で活躍できる日本人を養成することが求められている。

(3)短期大学は、制度創設以来、特に女子の高等教育の場として大きな役割を果たしてきたが、近年における、科学技術の高度化、国際化・情報化の進展、生涯学習社会への移行などの社会の変化や女子学生の4年制大学指向の高まりなど、短期大学をめぐる状況の変化を踏まえた対応が求められている。
 このため、各短期大学においては、(1)時代のニーズに合った学科の新設や改組、(2)学位授与機構の認定を受けた専攻科の設置、(3)入学者選抜方法の多様化、(4)平成3年の短期大学設置基準の大綱化を受けたカリキュラムの見直し、など様々な改革が進められており、短期大学がその特色を生かし個性化を図るためにも、今後ともその改革を積極的に進めていく必要がある。
 また、今後の18歳人口の減少傾向や本格的な生涯学習社会の到来に対応するため、従来の伝統的な年齢層の学生のみでなく、社会人や高齢者など新しい学生層の多様な学習ニーズに積極的に対応した教育を展開することが期待される。
 さらに、短期大学は、その所在する都道府県からの進学率が大学に比べ高いなど、地域に密着したものが多いことから、その特性を生かし、公開講座や共同研究などを通じて地域社会との連携を深め、社会に開かれた短期大学としての役割を果たすことも重要である。

(4)高等専門学校は、中学校卒業後5年間一貫した教育を行い、発想力豊かな実践的技術者を育成する独自の複線型教育機関として、産業界等から高い評価を得てきたところである。
 各高等専門学校においては、科学技術の高度化、産業構造の変化に適切に対応していくため、引き続き学科の新設・改組、専攻科の設置等を進めていくとともに、平成3年の設置基準の大綱化の趣旨を踏まえたカリキュラム編成等に取り組んでいくことが求められている。
 また、科学技術の進展に対応した教育を遂行し、今後ともより高度の専門的職業人を育成していくため、教育活動を支える研究活動を推進していくことも重要である。
 さらに、生涯学習ニーズへの積極的な対応や地域社会との連携協力を深めることがますます重要となってくるものと考えられる。
 なお、高等専門学校は、規模が小さいこともあって、一般の人々の認識は必ずしも十分とは言えない点もあるため、引き続き高等専門学校における教育・研究の成果等を広く一般に情報提供していくことも重要である。

(5)専門学校は、実際的な知識・技術等を習得するための実践的な職業教育・専門技術教育機関として定着しており、今後とも、社会の変化に機敏に対応しながら、主に産業社会の求める人材の養成機関として更に発展していくことが期待される。
 また、生涯学習のニーズに対応し、より地域に密着した高等教育機関として重要な役割を果たしているところであるが、今後も、成人・社会人向けの開設科目を多様化することや附帯教育事業を活用し、夜間、早朝などの時間帯における様々な期間の学習コースを設けるなどの方策を一層進め、地域社会の要請に適切にこたえていく必要がある。
 さらに、平成3年2月の本審議会答申を受けて、大学・短期大学以外の教育施設等における学習成果のうち、一定水準以上のものについて大学・短期大学の単位として認定する道が開かれたところである。今後、大学等と専門学校との連携を深める方策について、検討を進める必要がある。
 これらの観点を踏まえ、平成6年の専修学校設置基準の改正の趣旨に沿った教育内容の充実や教育条件の向上とともに、安定した経営基盤の確立に向けて、一層の努力が求められる。

 以上のように、それぞれの学校種別の特色を踏まえるとともに、個々の高等教育機関の理念・目標に基づき、個性を発揮し、自由で多様な発展を遂げることが必要である。これにより、高等教育全体として、社会や国民の多様な要請に適切に対応し得るものと考えられる。

2 高等教育の規模に関する考え方

1 全体規模に関する考え方

(1)全体規模を考える際考慮すべき事項

 現行計画においては、高等教育の全体規模を考えるに当たって勘案すべき要素として、18歳人口の急激な減少、志願率の上昇、生涯学習社会やグローバリゼーションの進展に伴う社会人学生や外国人留学生の拡大、質的水準の確保との関係、国民経済における負担と投資の観点、高等教育の規模に関する国際的状況、急増期における規模の拡大、等を挙げた。
 また、高等教育をめぐる諸情勢が急激に変化し、かつ、その変化の方向も必ずしも明確でない状況では、以上の諸要素すべてについて特定の見通しを得ることは困難であり、さらに、規模の縮小が見込まれる時期においては、計画的な整備目標を設定するという手法をとることは必ずしも適当とは言えないとし、過去の進学状況や前計画との継続性等の観点から、大学等の新増設については、原則抑制の方針で臨む必要があるとの方針を示したところである。
 現行計画において勘案すべき要素として挙げられているものについては、基本的には、今後の全体規模を考える際にもこれらを考慮することが必要である。また、現行計画でも示されているとおり、生涯学習社会の進展等に伴い、高等教育の規模を考える際に18歳人口の動向以外の要素をも考慮する必要性が高まってはいるが、なお18歳人口が基本的な要素であることには変わりがないと考えられる。
 我が国の18歳人口は、平成4年度の約205万人をピークに減少を続けており、平成8年度には約173万人となっている。この傾向は今後も続き、平成12年度には約151万人、さらに平成21年度には約120万人となるものと予測される。このような高等教育への伝統的な進学年齢層である18歳人口の減少によって、既に高等教育への進学者総数は減少しつつある。また、個々の大学等についても、入学定員の確保に困難を生じているものも見られる。
 今後、このような傾向はますます顕著になり、各大学等において、組織編制や教育内容等について、社会や学生の変化に即した十分な対応が図られない場合には、その存立基盤そのものが危機的な状況に陥ることも予想される。したがって、各高等教育機関は、今後、このような一層競争的な環境の中で、将来の人材需要も踏まえつつ、自らの責任において、それぞれの教育研究の在り方を工夫していくことが求められるようになるものと考えられる。
 他方、高等教育全体としては、教育の質を維持向上させつつ進学意欲の高まりを積極的に受け止めていく必要がある。このためには、各高等教育機関の自己責任を原則としつつ、今後予想される一層競争的な環境に円滑に移行していくための配慮が必要である。その際、私立高等教育機関が大きな役割を有する我が国の高等教育の特質を考慮することも必要である。特に、各大学等における教育研究機能の向上のための取組が社会的に評価される仕組みや、小規模大学・地方大学等における特色ある試みに対する支援など、競争的な環境の中で、高等教育の質的向上が図られていくための経営環境の整備について、政策的配慮が求められる。
 また、今後、我が国の高等教育が、学問の進展や新たな人材養成需要等、時代の要請に適切に対応していくためには、各大学等における改組転換とともに、極めて必要性の高いものについては新増設を認めることも必要である。

(2)全体規模に関する考え方

(1)全体規模の試算
 平成12年度以降の高等教育の全体規模の予測については、様々な方法があり得るが、このうち、大学・短期大学について現在までの傾向を前提に単純に試算すると、  別紙1 のような結果になる。これによると、不確定要素が多く、厳密な予測は困難であるものの、18歳人口の減少に伴い、志願者数も全体としては減少傾向で推移するものと考えられる。また、入学定員がこれまでのような傾向で推移するとすれば、18歳人口に対する進学者の割合も、志願者に対する進学者の割合も、共に上昇していくこととなる(臨時的定員をすべて解消する場合、一時的に低下することが考えられる。)。
 これは、あくまで試算に過ぎず、目標や予測を示すものではないが、いずれにしても、現行計画と同様、本構想の対象期間においても、18歳人口の減少に伴い、高等教育の規模の縮小が見込まれる。このような時期においては、計画的な整備目標を設定することは必ずしも適当でない。
 また、今後、各大学等においては、定員の充足に困難を生ずるなどの厳しい経営状況になるものと予想される。特に、短期大学については、既にこのような状況を迎えつつあり、4年制大学への転換を図る例も見られている。しかしながら、短期大学は高等教育全体として多様な発展を図る上で今後とも重要な役割を担うものであり、各短期大学においては、それぞれの理念・目標に沿って、特色を明らかにしつつ、その組織編制や教育内容等の改善に格段の努力を行うことが期待される。

(2)大学等の設置認可に当たっての基本的な考え方
 先に述べたとおり、進学率等の上昇が予測されることについては、意欲のある者に高等教育の機会を確保するとの観点や我が国社会の活力ある発展の観点から、望ましいことであると考えられる。
 しかしながら、このような進学率等の高まりについては、それと並行して、大学等における教育の質の確保を図っていくことが必要である。現在、各大学等において、進学率の高まりや学生のニーズの多様化に対応すべく、教育内容・方法の改善や組織の改組転換等の様々な試みが進められつつあるが、未だ必ずしも十分とは言えない状況にある。今後、進学率等の上昇が一層急速に進み、各大学等における教育面や組織面での改革がこれに十分対応しきれない場合には、教育の質の確保を図っていく上で困難が生じることも予想される。
 このような見地から、対象期間中は、全体として進学率等の急激な変化が生じることを避けつつ、各大学等における改革への試みの定着・発展を促し、高等教育全体の質の維持、さらにはその一層の向上を図っていくことが望ましい。
 したがって、進学率等の上昇は、高等教育の普及の観点から積極的に受け止めるべきであるが、同時に、質的な面で、各大学等がそれぞれの取組を進めていく必要がある。このことに配慮すれば、入学定員の規模を積極的に拡大することは望ましくなく、大学等の全体規模については、基本的には抑制的に対応することが適切である。
 また、学問の進展や新たな人材養成需要等、時代の要請への対応についても、既設大学等においては、改組転換を基本に考える必要があるが、我が国の高等教育の活力を維持し、時代の変化に即応して発展していくためには、極めて必要性の高いものについて新増設を認めていくことも必要である。
 この場合、専門分野の構成に留意する必要がある。学際的領域の増大など流動的な時代ではあるが、現行計画と同様、産業構造や社会の変化等によってもたらされる新たなニーズや学生の指向に配慮する一方、我が国の学術・文化の振興の基礎を確保するという観点にも配慮し、専門分野のバランスある発展が重要であるとの基本的方向の下に整備に努める必要がある。

(3)具体的な取扱いについて
 このような観点から、大学等の新増設に当たっては、抑制的に対応することとするが、現在の設置認可の取扱いについて、従来「抑制の例外」とされてきた事項については、基本的に今後も継続する必要がある。他方、現在の設置認可の取扱いについては、大学等の新増設が特定の教育研究分野に集中している等の問題も指摘されている。このため、従来「抑制の例外」とされていたが適用例が限られていた事項については、その運用等を見直すことにより、特別の人材養成に係るもので、我が国全体として特に必要と認められるものや、特別の社会的要請、教育研究上の要請にこたえて新しい分野を開拓するものに配慮した取扱いをする必要がある。
 なお、後に述べるように、地方における立地にインセンティブを与える観点から、地域における収容力や専門分野のバランスある発展等に配慮した現行の措置についても、ある程度の弾力化を図ることが必要である。

2 大学等の地域配置についての考え方

(1)これまでの大都市抑制策の評価

 高等教育の機会均等を確保するため、諸条件の整備を図ることは、教育行政の責務である。大学等の地域配置についても、収容力などの面で地域間に大きな格差が存在する状況にかんがみ、各地域において教育機会への適切なアクセスが確保されるべきとの観点を重視し、大都市における大学等の新増設を抑制する一方、地方における教育機会の整備を中心に行ってきた。その結果、昭和50年代当初に比べると、収容力の地域間格差は是正されてきている。
 また、大学等の立地により、地方都市の発展が促進されていることが指摘されている。さらに、地方での教育機会が確保されることにより、地元に残留する指向の強い女子の進学率の高まりに貢献していることや、大都市部での拡大抑制の結果、大都市部の大学等の改組転換の促進にも貢献してきたものと考えられる。
 しかしながら、他方、大都市抑制策が、大都市部の大学等の自由な発展を阻害している面もあるのではないか、大都市部の学生にとって進学が難しくなる傾向も見られるのではないか、いわゆる大学等の郊外化が、それに対応する環境整備を伴わずに進んだため、学生や教員にとって、大学における教育研究活動と学外での生活との間に機能的な問題点も生じているのではないか、等の課題も指摘されている。

(2)大学等の地域配置を考える際考慮すべき事項

 今後の地域配置の在り方を検討する際には、以上のようなこれまでの施策の評価に加え、多角的な観点からの検討が必要である。
 高等教育機関は、それぞれに、その教育研究分野や理念・目標、立地環境等に特色を持ち、志願者が、必ずしもその居住地域の高等教育機関を第一に志願するわけではない。また、生活圏や通学可能な地域の範囲も様々であり、かつ交通手段の変化や転居等に伴って変化するものでもある。さらに、地方での大学等の立地が、地域の活性化に貢献することや、人口の一極集中の是正にも資することなどをも踏まえる必要がある。
 仮に大都市抑制策を撤廃した場合、大都市に学生が集中する事態を再び招くか否かについては、もはや大都市の人口自体が転出超過になっており、集中は起こらないのではないかとの見方と、大都市の人口の転出超過は一時的な現象に過ぎず、経済情勢が好転すれば再び集中が起こるのではないかとの見方とがある。
 また、職業に必要な知識・技術のリフレッシュを希望する社会人にとっては、高等教育機会が都市部に必要であるという点も考慮することが必要である。
 期間を限った定員(臨時的定員)の取扱いとの関係では、大都市部の大学等の入学定員規模が大きくなれば、大都市部の大規模な大学等が多くの学生を吸収することにより、地方の大学等がより厳しい状況に置かれるという面と、他方、大都市部での恒常的定員増が抑制されたまま、臨時的定員が解消されると、大都市部の大学等が厳しい状況に陥るという面とがある。
 地域格差の是正については、これらの要素を総合的に勘案することが必要であり、その目標を数量的に示すことは困難である。国としては、収容力格差の結果として進学率に大きな格差が生ぜず、かつ、大学等に期待される地域貢献機能が各地域において確保されているという状況を目標とし、この目標の達成状況については、本審議会において、必要に応じて上記のような多角的な観点からの検討を行い、判断していく必要がある。
 現状においては、地域ごとの収容力格差と進学率格差との相関は極めて強く、他の様々な要因はあるものの、収容力格差が進学率格差の大きな要因になっているとの強い批判がある。また、教育・研究両面を通じての大学等の地域貢献機能についても、地域により期待される内容は異なるものの、現状においては、大学等の規模が小さい地域において、この面からの大学等の拡充に対する要望が極めて強い。したがって、なお引き続き地域格差是正のための施策を講じていく必要があると考えられる。
 このため、地方中核都市及びその周辺地域については、収容力が社会的要請に比して著しく低い場合には、新増設を認めることとされているが、地域の収容力等の変化に対応した運用の見直しが必要である。また、教育機会の地域間格差の一層の改善のためには、地方での立地にインセンティブを与える方法も検討することが必要である。
 しかし、今後の18歳人口の減少を考えれば、これらの施策によっても、地方における大学等の大幅な拡大は期待しがたい。むしろ、大都市部での大学等の新増設が進めば、地方における進学機会が、逆に縮小を迫られることも考えられる。
 したがって、これらの手法と併せて、大都市部における大学等の新増設抑制についても、引き続きこれを継続していくことが必要である。
 ただし、これまでの大都市抑制策が、大都市部の大学等の自由な発展を阻害している面もあるのではないか、大都市部の学生にとって進学が難しくなる傾向も見られるのではないか、いわゆる大学等の郊外化が、それに対応する環境整備を伴わずに進んだため、学生や教員にとって、大学における教育研究活動と学外での生活との間に機能的な問題点も生じているのではないか、等の課題も指摘されている。したがって、現在の大都市抑制の在り方については、高等教育全体の発展等の観点から、一定の弾力化を図ることが必要である。

(3)具体的な取扱いについて

 先に述べたとおり、大都市部における大学等の新増設を抑制するとの基本は維持する必要がある。しかしながら、

(1) 大都市部における抑制を画一的に継続することは、大都市部の大学等の学術研究や人材養成の面での新たな要請への対応を阻害し、我が国の高等教育全体の活力ある発展の妨げになると考えられること、
(2) 多くの大学等で、地元出身の学生の割合が高まる傾向にあり、地域の大学等を出て地元で就職するケースが増加しているなど、全体としての大都市集中傾向には変化が生じていると見られること、
 などから、大都市抑制の具体的な在り方については、ある程度の弾力化が必要である。
 このため、
 (1) 従来適用例が極めて限定されていた、工業(場)等制限区域内での小規模な定員増を伴う改組・拡充について、独創的・先端的な学術研究の推進の観点から極めて重要性の高いもの等については、一定の限度で例外として認めること、
 (2) 「編入学定員」の設定について、一定の限度で例外として認めること、
 (3) いわゆる準制限区域(首都圏、近畿圏及び中部圏の政令指定都市で工業(場)等制限区域を除く区域)については、上記と同様の趣旨で、地域の実情に応じてより弾力的に取扱うこと、が必要である。
 また、以上の取扱いの変更により、工業(場)等制限区域における新増設について、工業(場)等制限法による規制との関係が問題となることが考えられる。このため、大学等の立地に関する同法の運用の在り方等の改善が必要である。
 一方、地域間格差の一層の改善のためには、地方での立地にインセンティブを与えることがますます重要となる。この観点からは、設置認可において、地方での立地にインセンティブを与えるための措置が求められる。
 また、同種の学部・学科等が未設置又は社会的要請に比して著しく少ない地域について配慮する必要がある。

3 臨時的定員の取扱い

 臨時的定員については、18歳人口の急増・急減期の調節を図るという本来の趣旨に沿えば、平成11年度末までに解消すべきものであるが、

(1)入学定員の減少に伴う受験生への影響、
(2)臨時的定員が教育機会の確保に果たしてきた役割、
(3)私学経営への影響、
 などに配慮する必要がある。
 これらの点を踏まえると、臨時的定員を平成11年度末ですべて解消することは適切でなく、全体として、本構想の対象期間である平成16年度までの5年程度の間で、段階的に解消することが適切である。
 しかしながら、大学等への進学率は、既に現行計画で想定した最大のケースをも上回って推移しており、現行計画どおり臨時的定員をすべて解消した場合、進学率等が平成11年度を下回る結果になることが考えられる。このことは、受験生への影響や、進学意欲の高まりを積極的に受け止めるという観点からは望ましくない。また、臨時的定員の解消の結果、私学経営が困難な状況に至った場合の、教育条件の低下など学生の教育への影響にも配慮する必要がある。さらに、18歳人口急増期に、私立大学・短期大学の臨時的定員が教育機会の確保に果たした役割も考慮する必要がある。これらを総合的に勘案すれば、臨時的定員については、段階的に解消していく一方で、平成11年度の規模の5割程度の恒常的定員化を認めることが適切である。
 この場合、先に示した試算と同様に単純に試算すると、進学率、志願者に対する収容力ともに、平成11年度の水準を下回ることなく安定的に推移するものと考えられる。  (別紙2参照)
 さらに、全体としてこのような状況を実現するため、各大学・短期大学についても、臨時的定員については平成16年度までの間で段階的に解消することを認めるとともに、原則として、平成11年度の数の5割の範囲内で、同じく平成16年度までの間に、その恒常的定員化を認めることが適切である。
 これにより、各大学等において、少なくとも毎年一定規模以上に相当する入学定員が削減されることになり、全体としての規模が、おおむね先に述べたような推移になるものと想定される。なお、臨時的定員の恒常的定員化については、一般的な恒常的定員増の抑制や大都市部での新増設の抑制の例外として扱うことが必要である。
 また、この恒常的定員化については、設置基準を満たす限り、各大学等からこの申請に基づき、平成11年度の数の5割の範囲内でこれを認めることとする。この際、各大学等においては、学問の進展や新たな人材養成需要等、時代の要請に適切に対応するため、この恒常的定員化を有効に活用することが期待される。
 さらに、臨時的定員の解消に伴い、入学定員規模等を考慮して、特に必要と認められる大学等に対しては、恒常的定員化を認める割合等について例外的に取り扱う等の配慮が必要である。

4 関連する施策について

(1)高等教育財政の充実

 今後、我が国社会が活力ある発展を続けていく上で、高等教育の果たす役割は極めて重要であるが、特に、今後の進学率の高まりを踏まえると、その質的向上を図っていくことが重要な課題である。このため、各高等教育機関において、自らそれぞれの理念・目標に沿って自己革新を図っていくことを基本としつつ、国においては、各大学等におけるこのような自律的な向上・発展を奨励支援するため、適切な措置を推進していく必要がある。
 特に、我が国の高等教育において私学の果たす役割の重要性にかんがみ、教育研究の一層の改善と、修学上の経済的負担の軽減及び私学の経営基盤の安定のため、私学助成の推進を図る必要がある。このため、私学助成の中で最も中心的な経常費助成においては、私学がそれぞれの理念・目標に基づき、多様化する社会の要請にこたえる教育研究を積極的に推進し得るよう、社会的要請の強い特色ある教育研究等に対する助成の充実に一層配慮しつつ、その重点的配分を図る必要がある。
 また、教育研究条件の充実向上を図るため、研究施設、装置等の整備を国が積極的に支援していくことが必要である。
 さらに、私立学校の主体的な経営努力を効果的に促進し、財政的基盤の一層の充実強化を支援するため、外部資金導入等のための税制上の取扱いに関する国公私間の格差是正を推進する必要がある。

(2)競争的な環境における発展のための取組

 18歳人口の減少に伴い、既に一部の大学等においては入学定員の充足に困難を来す例も生じてきているが、全体として高等教育の規模の縮小が見込まれることから、今後、一層厳しい経営環境になっていくものと予想される。このため、各大学等においては、自らの責任において、社会や学生のニーズに対応した組織編制の見直しや教育内容・方法の改善等に、格段の努力を行っていくことが不可欠である。
 また、このような環境においては、国は、高等教育全体としての多様な発展を図る見地から、例えば、地域と密接に結び付き、その文化や産業の発展に資する教育研究活動を行うものなど、特色ある優れた取組を行う私学等に対する重点的な助成について、一層適切な配慮を行うことが必要である。
 なお、私学経営に関する相談体制の一層の充実とともに、大学等が廃止される場合の学生の取扱いについては、適切な方策を講じることが必要である。
 また、専門学校についても、教育内容の一層の個性化、高度化を推進してくことが期待されており、各学校の積極的な取組を支援していく必要がある。

3 平成17年度以降の高等教育の構想等

 本構想に引き続く平成17年度以降の高等教育の構想については、本構想の対象期間内の適切な時期に検討を行い、その方向性を示すことが必要である。
 なお、本構想に示した全体規模、地域配置及び専門分野構成に関する考え方については、高等教育機関への進学の動向、高等教育機関の収容力の状況、今後の社会・経済の情勢等に留意しつつ、対象期間中、必要が生じた場合には、適切な補正を加えていくこととする。

(別紙1) 全体規模の試算a(大学・短期大学)

(臨時的定員をすべて解消した場合)

(千人、%)

8年度実績 11年度 16年度 21年度
18歳人口 1732  1545  1411  1201 
志願者数
(現役志願率)
1096 
(54.4)
934 
(54.9)
905 
(58.9)
769 
(62.9)
入学定員 693  706  619  641 
入学者数 800  748  681  701 
志願者に対する収容力 73.0  80.1  75.3  91.1 
進学率
(高卒進学率)
46.2  48.4 
(45.5)
48.3 
(45.1)
58.3 
(54.6)

【試算の考え方-ポイント】

  1. 現役志願率は、大学、短期大学それぞれ平成8年度実績(大学・・・年0.8%増、短期大学・・・年0.6%減)で推移するものとした。ただし、短期大学については、12年度以降、11年度の想定値(12.8%)で固定するものとした。
  2. 入学定員については、恒常的定員について平成8年度実績(大学・・・年6.6千人増、短期大学・・・年2.2千人減)を維持しつつ、臨時的定員(平成8年度ご大学・・・73千人、短期大学・・・36千人)は全て解消するが、入学者数は16年度までなだらかに推移するものとした。
  3. 平成11年度、16年度及ぴ21年度の外国人留学生及び社会人学生の入学者数 ・は、それぞれ、15千人、30千人とした。
  4. 平成11年度、16年度及ぴ21年度の定員超過率は、1.10とした。

全体規模の試算についての考え方

 a.現役志願率は、大学、短大それぞれについて、平成7年度から8年度の増減を維持するものと仮定。

大学・・・・年0.8%増
短大・・・・年0.6%増

 ただし、短大については、12年度以降、12.8%(11年度の想定値)で固定。

  • 現役志願率=当該年度の高卒者のうち大学へ願書を提出した者の数/当該年度の高卒者数×100
  • 規役志願者数=高卒者数×現役志願率

 高卒者数は、当該年度の18歳人口の89.7%(8年度実績)と仮定。

b.過年度志願率については、大学、短大それぞれについて、平成8年度実績で継続するものと仮定。

大学・・・・前年度不合格者77.7%が翌年度も志願
短大・・・・前年度不合格者49.6%が翌年度も志願
  • 過年度志願者数=前年度不合格者数×過年度志願率
  • 全志願者数=現役志願者数十過年度志願者数

c.入学定員については、大学、短大それぞれについて、以下のとおりとした。

《大学》
 恒常的定員について、毎年6.6干人増加(平成8年度の増加分)するものとし、臨時的定員(8年度73千人)については、11年度ですべて解消するものとした。

《短大》
 恒常的定員について、毎年2.2千人減少(平成8年度の減少分)するもめとし、臨時的定員(8年度36千人)については、11年度ですべて解消するものとした。

d.定員超過率については、11年度において1.10となり、11年度以降は、1.10で推移するものとする。

  • 入学者数=入学定員×定員超過率(1.10)(11年度以降)

 ただし、12年度から16年度にかけては、臨時的定員の解消にかかわらず、入学者数はなだらかに推移するものとした。
 また、全志願者数がこれを下回る場合は、入学者数と全志願者数とは一致するものとした。

e.志願者に対する収容力=入学者数÷全志願者数

f.進学率=入学者数÷18歳人口

g.平成11年度、16年度及ぴ21年度の外国人留学生数及ぴ社会人学生の入学者数については、それそれ15千人、30千人とした。

(別紙2) 全体規模の試算b(大学・短期大学)

(臨時的定員の5割を恒常的定員化した場合)

(千人、%)

8年度実績 11年度 16年度 21年度
18歳人口 1732  1545  1411  1201 
志願者数
(現役志願率)
1096 
(54.4)
934 
(54.9)
876 
(58.9)
707 
(62.9)
入学定員 693  706  657  679 
入学者数 800  748  711  707 
志願者に対する収容力 73.0  80.1  81.1  100.0 
進学率
(高卒進学率)
46.2  48.4 
(45.5)
50.4 
(47.2)
58.8 
(55.1)

【試算の考え方-ポイント】

 試算a.の考え方に加え、入学定員について、下記のとおりとした。

  • 恒常的定員については、大学・短大それぞれ、平成7年度から8年度の増減を維持するものとした。ただし、大学については、12年度から16年度までの間、臨時的定員の恒常的定員化に伴い、それ以外の恒常的定員増については、通常の1/2となるものどした。
  • 臨時的定員については、12年度から16年度にかけて、毎年度、11年度の規模の1割ずつ解消し、16年度に5割を恒常的定員化(臨時的定員は全て解消)するものとした。

大学審議会委員名簿

(平成9年1月29日現在)

◎は会長
○は副会長

  天野 郁夫 国立学校財務センター教授 
  小林 陽太郎 富士ゼロックス株式会社代表取締役会長
有馬 朗人 理化学研究所理事長
  櫻井 修 住友信託銀行株式会社取締役相談役
石川 忠雄 慶應義塾大学名誉教授
  佐野 文一郎 東京国立博物館長
  猪口 邦子 上智大学教授
  戸田 修三 日本私学振興財団理事長
  井村 裕夫 京都大学長
  平澤 貞昭 株式会社横浜銀行頭取
  上野 一郎 学校法人産能大学理事長・学長
  宮本 美沙子 日本女子大学長
  内田 健三 政治評論家
  山崎 正和 東亜大学教授
  江崎 玲於奈 筑波大学長
  山本 卓眞 富士通株式会社代表取締役会長
  黒田 玲子 東京大学教授
  吉川 弘之 東京大学長
  小出 忠孝 愛知学院大学長
  脇田 直枝 株式会社電通アイ代表取締役社長

大学院部会

◎は部会長
○は部会長代理

委員 猪口 邦子  
江崎 玲於奈  
  黒田 玲子   
  小林 陽太郎  
  佐野 文一郎  
戸田 修三  
  吉川 弘之  
     
特別委員 伊藤 文雄 青山学院大学国際政治経済学部長
  小山 宙丸 早稲田大学教授
  塩田 進  東京工業大学大学院総合理工学研究科長
  立石 信雄 オムロン株式会社代表取締役会長
  中嶋 嶺雄 東京外国語大学長
  堀 浩 東京理科大学教授
  山田 康之 奈良先端科学技術大学院大学遺伝子教育研究センター長

大学教育部会

◎は部会長
○は部会長代理

委員 天野 郁夫  
  有馬 朗人  
  上野 一郎  
  佐野 文一郎  
  戸田 修三  
  山崎 正和  
  山本 卓眞  
吉川 弘之  
  脇田 直枝  
     
特別委員 石 弘光 一橋大学教授
  大谷 啓治 上智大学長
  加藤 秀俊 中部高等学術研究所所長
  グレゴリークラーク 多摩大学長
示村 悦二郎 北陸先端科学技術大学院大学教授・学長補佐
  舘 昭 学位授与機構教授
  鳥居 泰彦 慶應義塾大学長
  中村 桂子 株式会社生命誌研究館副館長
  宮内 義彦 オリックス株式会社代表取締役社長
  森 正夫 名古屋大学副学長

組織運営部会

◎は部会長
○は部会長代理

委員 ◎ 有馬 朗人  
  井村 裕夫  
  上野 一郎  
内田 健三   
  小出 忠孝  
  平澤 貞昭  
  宮本 美沙子  
     
特別委員 阿部 謹也 一橋大学長
  阿部 充夫 放送大学学園理事長
  伊藤 厚子 お茶の水女子大学教授
  奥島 孝康 早稲田大学長
  木村 孟 東京工業大学長
  櫻井 孝頴 第一生命保険相互会社代表取締役社長
  坪井 昭三 山形大学長
  鳥居 泰彦 慶應義塾大学長
  永井 順国 読売新聞社論説委員
  平紗 多賀男 大阪府立大学長

高等教育将来構想部会

◎は部会長
○は部会長代理

委員 天野 郁夫  
  猪口 邦子  
  上野 一郎  
  小出 忠孝  
  櫻井 修  
  佐野 文一郎  
  戸田 修三  
  平澤 貞昭  
吉川 弘之  
     
特別委員 石 弘光  一橋大学教授
  大南 正瑛 立命館大学長
  大西 昭男 学校法人関西大学理事長
  大森 厚 学校法人中央工学校理事長
  日下 晃 学校法人武庫川学院理事長
  小谷津 孝明 学校法人慶應義塾常任理事
  白井 和徳 株式会社水の友代表取締役社長 
  高鳥 正夫 東横学園女子短期大学長
  舘 昭 学位授与機構教授
  鳥井 弘之 日本経済新聞社論説委員
  春山 志郎 東京工業高等専門学校長
村松 岐夫 京都大学大学院法学研究科長
  矢野 眞和 東京工業大学教授

マルチメディア教育部会

◎は部会長
○は部会長代理

委員 ○ 天野 郁夫  
  上野 一郎  
  黒田 玲子  
  小林 陽太郎   
  佐野 文一郎  
戸田 修三  
     
特別委員 青木 利晴 日本電信電話株式会社常務取締役研究開発本部長
  伊藤 文雄 青山学院大学国際政治経済学部長
  開原 成允 国立大蔵病院長
  坂元 たかし 放送教育開発センター所長
  示村 悦二郎 北陸先端科学技術大学院大学教授・学長補佐
  舘  昭 学位授与機構教授
  春山 志郎 東京工業高等専門学校長

大学入試に関する専門委員会

◎は主査
○は副主査

委員 猪口 邦子  
  井村 裕夫  
  小出 忠孝  
戸田 修三  
  脇田 直枝  
     
専門委員 荒井 桂 埼玉県教育委員会教育長
  磯部 力 東京都立大学教授
  桐村 晋次 古河電気工業株式会社常務取締役
黒羽 亮一 学位授与機構教授
  小谷津 孝明 学校法人慶應義塾常任理事
  高鳥 正夫 東横学園女子短期大学長
  高橋 良平 前大学入試センター所長
  田村 哲夫 学校法人渋谷教育学園理事長
  永井 順国 読売新聞社論説委員
  増井 俊明 前東京都立九段高等学校長
  矢野 眞和 東京工業大学教授

お問合せ先

高等教育局企画課大学審議会室

(高等教育局企画課大学審議会室)

-- 登録:平成21年以前 --