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第3章 これからの地域社会における教育の在り方

21世紀を展望した我が国の教育の在り方について(中央教育審議会 第一次答申)

第2部 学校・家庭・地域社会の役割と連携の在り方

第3章 これからの地域社会における教育の在り方

(1) これからの地域社会における教育の在り方

 子供たちに[生きる力]をはぐくんでいくためには、学校で組織的・計画的に学習する一方、地域社会の中で大人や様々な年齢の友人と交流し、様々な生活体験、社会体験、自然体験を豊富に積み重ねることが大切である。地域社会における、これらの体験活動は、子供たちが自らの興味・関心や自らの考えに基づいて自主的に行っていくという点で特に大きな意義を持っている。
 共同作業や共同生活を営むことができる社会性や他者の個性を尊重する態度、日々新たに生じる課題に立ち向かおうとする意欲や問題解決能力、精神力や体力、新しい物事を学ぼうとする意欲や興味・関心、文化活動や自然に親しむ心などの[生きる力]は、学校教育や家庭教育を基礎としつつ、地域での様々な体験を通じて、はじめてしっかりと子供たちの中に根づいていく。また、こうした地域社会での様々な体験は、学校教育で自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、表現し、行動できる資質や能力を身に付けていくための基礎となるのである。
 しかし、現実には、地域社会での活動を通しての子供たちの生活体験や自然体験は著しく不足していると言われ、また、都市化や過疎化の進行、地域における人間関係の希薄化、モラルの低下などから、地域社会の教育力は低下していると言われている。
 こうした状況の中で、我々は、今こそこれからの地域社会の在り方、また、そこでの教育の在り方について率直に問い直してみる必要がある。そして、何より大切なことは、地域のアイデンティティーを確立し、地域の人々のだれもが自分の住む地域に誇りと愛着を持ち、その中で、地域の大人たちが手を携えて、子供たちを育てていく環境を醸成することであると考える。
 このような視点に立って、我々は社会全体に[ゆとり]を確保する中で、地域社会が、地域の大人たちが子供たちの成長を暖かく見守りつつ、時には厳しく鍛える場となること、また、地域社会が単に人々の地縁的な結びつきによる活動だけでなく、同じ目的や趣味・関心によって結びついた人々の活動が活発に展開され、子供たちをはぐくむ場となっていくことを強く期待するものである。

(2) 地域社会における教育の条件整備と充実方策
[1] 地域社会における教育の在り方と条件整備

 地域社会の活動は、正に地域の人々の主体性や自主性を前提とするものであり、地域社会の大人一人一人が、その一員であることの自覚を持ち、地域社会の活動を自主的に担っていくことがまず重要であると言わなければならない。
 したがって、行政としては、地域の人々の主体性や自主性を尊重しつつ、地域の人々のニーズを的確に把握し、それらを踏まえながらいかに地域社会の活動を活発にするかという視点に立って、活動の場や機会の提供、様々な団体への支援、指導者の養成、情報提供など基盤整備に重点を置いて、施策を進めていく必要がある。その際、障害のある子供たちが積極的に参加できるような配慮を特に望んでおきたい。
 また、第2章においても述べたとおり、地域社会の活動を充実させるためには、こうした施策とともに、社会全体に[ゆとり]を確保するための条件整備を進める必要がある。
 なお、この点に関連し、これまでの経済成長の過程で社会全般に定着してきた企業中心の行動様式について、社員とともに、企業においても、その見直しを図り、社員も地域社会の一員であることの自覚を強く求めたいと思う。また、様々な職業生活や社会生活を経験した人々が、それらを通じて得たものを積極的に地域社会に還元してほしい。そのことは、地域社会の活動をより豊かなものとしていく上で、大変に貴重なものと考えられるのである。

[2] 地域社会における教育の具体的な充実方策

 学校週5日制の実施を契機に、各地で地域社会における子供たちの活動を推進するための様々な取組が進められているが、今後、さらにその充実を図るため、活動の場の充実、機会の充実や指導者の養成などについて、幾つか具体的な方策を提言したい。これらの諸方策が、各地でそれぞれの地域の特色を生かして活発に実施されることを期待するものである。

(a) 活動の場の充実
(遊び場の確保)

 成長過程にある子供たちにとって「遊び」は、自主性や社会性の涵養、他人への思いやりの心の育成などに資するものであり、調和のとれた人間形成を図る上で極めて重要な役割を担っている。都市部だけでなく、豊かな自然環境が残されている農村部においても、テレビを見たり、テレビゲームをするなど室内で遊ぶことが多くなっている今日、子供たちの「遊び」の持つ教育的意義を改めて再確認し、自然や空地を利用したわんぱく広場や冒険広場、公共施設や民間施設において遊び場やたまり場などをできるだけ多く用意し、子供たちが仲間と自由に楽しく遊ぶことができるような環境を整えることを強く望むものである。また、その際には、遊び場マップやたまり場マップを作成、配布することなどにより、子供たちが手軽にそうした場を利用できる環境を整えていくことが必要であることも併せて指摘しておきたい。なお、家庭においても、遊びの持つ積極的な意義を再認識することを望んでおきたい。

(学校施設の活用)

 現在、休業土曜日には、青少年教育施設や公民館などを使って、子供たちの文化・スポーツ活動がイベント的に行われている。しかし、子供たちが、遊びやスポーツ、音楽、美術、工作、あるいは科学の実験、読書、英会話、コンピュータなど、本人の希望に応じた様々な活動を豊富に体験することができるようにするためには、子供たちにとって最も身近で、かつ、使いやすく造られている学校施設をもっと活用していく必要がある。いわゆる学校開放は、かなり進んできているものの、その多くは運動場や体育館の開放であり、開放時間や開放日数も限られている。今後は、学校図書館や特別教室も含め、学校の施設を一層開放し、様々な活動を行っていく必要がある。その際、親や地域の人々のボランティア参加による活動などは、子供たちの活動を豊かにするためにも大いに推奨したい。
 なお、学校開放について、土曜日や日曜日等についても実態として学校長に施設管理の責任がある場合もあり、このため、これが進まないとの指摘もある。今後は、本来は学校開放時の管理責任が教育委員会にあることを踏まえ、例えば、教育委員会は、管理責任を教育委員会に移すなどして、管理運営体制の整備と責任の明確化を図るとともに、開放される学校施設が有効に活用されるよう指導員を委嘱するなどの工夫により、学校開放の一層の充実に努めてほしい。

(社会教育・文化施設の整備充実と新たな事業展開)

 公民館、図書館、博物館、青少年教育施設、美術館等、様々な社会教育・文化施設の整備が各地で進められてきている。もちろん、いまだ十分であるとは言えず、今後もさらに積極的に整備に取り組む必要があるが、その際、特に利用者の視点に立った整備・充実の重要性を指摘しておきたい。これらの施設が、子供たちのそれぞれの興味や関心に応じた主体的な学習の場として、子供たちにとって気軽に利用できるということが大切である。このことは、これらの施設の運営等についても同様で、子供たちのニーズを踏まえ、子供たちが行くことを楽しみにするような施設運営や参加型・体験型の事業を行っていくことが重要である。
 そのために、例えば、公民館や生涯学習センター、青少年教育施設などにおいては、今後、工作教室や昔遊び教室、史跡めぐりなどの子供・親子向けの事業や講座を充実したり、各種学習サークル活動などを活発に行うことが望まれる。
 また、読書は人格形成に大きな役割を果たすものであり、図書館においては、読書活動の一層の促進を図るため、蔵書の充実のほか、子供への読書案内や読書相談、子供のための読書会などの事業の充実などにもっと努めていく必要がある。
 博物館、動物園、植物園、水族館などにおいては、動植物の観察や天体観測、化石の収集などそれぞれの地域性や専門性を生かした体験型の講座や教室の充実、美術館や文化会館などにおいては、芸術の鑑賞、コンサート、絵画・彫刻・演劇等の実技講座などの子供・親子向けの事業の充実などが必要と考える。
 また、科学や技術に対する子供たちの知的好奇心を高めるため、大学や研究所、企業などの協力を得て科学教室を実施したり、科学博物館なども、子供たちが五感を通じて体験することができるような学習の場として整備していく必要がある。

(新たなスポーツ環境の創造)

 子供たちが地域のスポーツ活動に親しみ、スポーツ活動を通じ、「体」の面だけでなく、社会的な規範を守る精神や思いやりの心などをはぐくむことは、子供たちが知・徳・体のバランスのとれた成長をしていく上で、極めて有効である。そのためには、子供たちが主体的、継続的にスポーツ等の多様な活動を楽しめるように、スポーツ活動を行う場である地域のスポーツ施設の整備充実を図るとともに、その運営・利用のネットワーク化を進めていく必要がある。
 また、これらの施設には、今後、単にスポーツをする場の提供だけではなく、優れた指導者による、少年スポーツ教室、親子スポーツ教室等の多様で魅力あるプログラムの積極的な提供が望まれる。このことは、スポーツを通じて、異世代間のコミュニケーションを活発にするという意味でも、極めて意義があると考えられる。
 さらに、今後は、子供たちが異年齢の人々と交流し、適切なリーダーから指導を受けられるようなスポーツ活動の拠点や、これを支える広域的なスポーツセンター等を広く普及させ、新たなスポーツ環境を創造していくことが必要と考える。

(b) 活動の機会の充実
(地域ぐるみの活動の推進)

 これまでにも指摘したように、都市化・過疎化の進行や地域社会の連帯感の希薄化などから、地縁的な地域社会の教育力の低下が指摘される中で、今日、地域社会の教育力の再生を促すことが極めて重要なことになっている。
 このため、地域の大人たちが率先してあいさつ運動、環境浄化活動、交通安全活動、防災活動などの地域ぐるみの啓発活動に取り組むことを大いに推奨したい。また、これらの活動を振興していく上でも、地域社会のアイデンティティーを確立していくことが重要であり、各地域に残る年中行事や祭り、伝統芸能の継承・復活などを図っていくことは大変に意義のあることと考える。行政も、こうした活動への支援を積極的に行っていってほしい。地域を挙げてのこうした取組は、今日深刻化しているいじめの問題の解決にも資するものと考えられる。

(ボランティア活動の推進)

 近年、我が国でもボランティア活動への関心が急速な高まりを見せている。参加者は増加し、活動分野も、福祉の領域のみならず、街づくり、国際協力、環境保護など幅広い分野にわたっている。ボランティア活動への参加は、それぞれの自発性に基づくものであるだけに、こうした活動に参加することによって、高齢者をいたわる気持ちを培い、自分たちの街づくりを通して身近な社会にかかわることの大切さを学ぶことなどの教育的意義は極めて大きい。さきの阪神・淡路大震災では多数の若者が救援活動に参加し、被害を受けた人々をいたわることや街を復興するということの重要性を強く実感したが、この体験は、極めて貴重なものと言わなければならない。
 このようなボランティア活動の持つ意義を考えると、他者の存在を意識し、コミュニティーの一員であることを自覚し、お互いが支え合う社会の仕組みを考える中で自己を形成し、実際の活動を通じて自己実現を図っていくなど、青少年期におけるボランティア体験の教育的意義は特に大きい。子供たちの、社会性の不足が指摘される今日、体験的な学習としてのボランティア活動に青少年が気軽に参加できる機会を提供することは急務であると考える。
 子供たちが、学校や地域社会でのそれぞれの役割に即した活動を通して、ボランティア活動を経験し、将来、ボランティア活動を自然に行っていく契機としていってほしい。そして、「ボランティア活動は特別なことでなく、自分自身にとって身近なこと、必要なこと、大切なこと、だれにでも日常的にできることである」という認識が社会全体に広がることが望まれる。
 このため、行政においては、ボランティア活動を実際に体験したり、活動の理念や必要な知識・技術等について学習する機会を様々な形で提供することが必要である。様々な民間団体などが、ボランティア活動の機会を積極的に提供することも期待したい。学校も、その実態に応じてボランティア活動に取り組むことを望みたい。その一つとして、例えば、PTAや地域の様々な民間団体と手を結んで、子供たちのためにボランティア活動の機会を作っていくような試みもあってよいと考える。また、ボランティア活動全般が広く展開される環境を作るため、ボランティア活動を求める側のニーズとボランティアの活動意欲を効果的に結びつけることができるよう、情報提供やコーディネーターの養成などボランティア活動に取り組みやすく、かつ、続けていきやすい条件整備を図っていくことが急がれる。

(交流活動の推進)

 今日の子供たちは、物質的な豊かさや便利さなど、恵まれた環境で育っている反面、様々な人々との交流が不足し、そのことが、子供たちの人間関係を希薄化させていると言われている。
 このような現状を改善するため、社会教育・文化・スポーツ施設や青少年団体等が中心となって、都市部と過疎地域、農村と漁村など異なる地域間の交流、乳幼児や老人など異なる世代間の交流、障害者との交流、国際交流など、様々な人々との多様な交流を積極的に推進する必要がある。
 また、希薄化している今日の子供たちの人間関係の改善や自活力の向上を図るため、一定期間地域の身近な施設から学校に通学する「合宿通学」などの実施も考えられてよいであろう。

(自然体験活動の推進)

 子供たちに、自然の中における様々な生活体験や自然体験などの機会が不足している現状を考えると、農作業体験、野外活動や環境保護活動など、子供たちに豊かな自然に触れさせ、自然に対する理解や愛情を育てるような子供・親子向けの事業を充実させることは、今日極めて重要なことである。
 活動の場としては、もちろん、身近な日常生活圏での自然体験や生活体験も重要であるが、日常生活圏を離れての活動も子供たちに是非体験させたいものである。特に、多感な子供時代に豊かな自然の中で長期間過ごす体験は極めて有意義と考えられる。そこで、長期休業期間中などに、少年自然の家などの青少年教育施設やホームステイを活用して、子供たちにそうした機会を与えることを提唱したい。
 また、キャンプ、オリエンテーリング、サイクリング、ホステリング等の自然に触れ親しむアウトドアスポーツの機会も、子供たちの体験活動として提供したい。
 行政は、こうした体験活動を奨励する施策に積極的に取り組んでほしい。

(c) 青少年団体等の活動の振興

 子供たちが、自らの興味・関心等に基づき、自主的・主体的に様々な活動を行うことは極めて意義のあることである。このような子供たちの活動を支え、促していくのが青少年団体・スポーツ団体である。
 青少年団体の活動は、子供たちに、各種の集団活動を通じて、社会性、協調性や積極性などを養おうとするものであり、スポーツ団体の活動は、スポーツを通じて心身ともに健やかな青少年の育成に大きく寄与している。一人一人の子供たちに[生きる力]をしっかりとはぐくんでいこうとするとき、これらの団体の活動の役割はますます重要性を増している。行政は、これらの団体の魅力ある活動の情報提供や啓発活動を通じて、できるだけ多くの子供たちの参加を促進するほか、指導者の育成、有意義な活動に対する各種の支援など、青少年団体やスポーツ団体の活動の一層の振興に努めていく必要がある。

(d) 指導者の養成と確保

 子供たちの地域社会における活動を充実するためには、地域社会や施設で子供たちの指導に当たったり、地域社会の人々の自主的な取組を支援する者が養成・確保されなければならない。子供たちの地域社会における活動が、子供たち自身が自主的・自発的に参加するものであることを考えると、その指導者は、専門的な知識や指導技術に加え、青少年に慕われ、親しめるような優れた人間性を備えることが求められる。
 現在、地域社会における活動の推進に携わる者としては、都道府県や市町村の社会教育主事や社会教育指導員、体育指導委員、施設の専門的職員(青少年教育施設の専門職員、公民館の主事、図書館の司書、博物館の学芸員、文化会館のアートマネージメント担当職員など)、青少年団体やスポーツ団体の指導者・育成者などがいる。
 しかし、これらの指導者については、その数においても、また研修や学習の機会についても極めて少ないのが実態である。例えば、地域社会における活動を含む社会教育全体の要となる社会教育主事についてみても、いまだに社会教育主事が設置されていない市町村があるなど、地域社会における教育を支える基盤は必ずしも十分なものとは言えない。
 今後、子供たちの地域社会における活動を充実させるため、これらの指導者に優れた人材を確保するとともに、その資質の向上を図るための施策を一層充実させることが必要である。

(e) 情報提供の充実

 子供たちが様々な活動に参加しようとしても、あるいは施設等を利用して学習しようとしても、そうした学習情報がなければ子供たちは参加できない。子供たちに様々な活動に参加することを促す上で、どのような活動が、いつ、どこで行われているか等の具体的な情報を的確かつ効果的に提供する仕組みを整備することが必要である。
 このため、市町村教育委員会が中心となって地域社会における活動に関する各種の情報をデータベース化するとともに、学校や関係機関などとの情報通信ネットワークを形成して、子供たちに情報を十分に提供する体制を整備することが急がれる。
 その際は、社会教育・文化・スポーツ施設や関係機関、民間団体、地域のグループなどが実施する個々の活動の場所や内容、プログラムなどに関する情報だけでなく、指導者やボランティアなど、地域社会における活動を支援する人材に関する情報も積極的に提供することが重要である。
 また、市町村教育委員会やPTAが地域社会における活動に関する情報資料を作成し、随時子供や家庭に配布するほか、地域社会における活動に関する相談コーナー、情報コーナーの開設等による情報の提供や相談の実施も効果的と考える。

(f) 「第4の領域」の育成

 地域社会における教育力の低下が指摘される中にあって、従来の地縁的な活動から目的指向的な活動へと人々が参加意欲を移しつつある傾向がうかがえる。このような状況を踏まえ、これからの地域社会における教育は、同じ目的や興味・関心に応じて、大人たちを結びつけ、そうした活動の中で子供たちを育てていくという、従来の学校・家庭・地縁的な地域社会とは違う「第4の領域」とも言うべきものを育成していくことを提唱したい。
 例えば、青少年団体では、地縁的なものよりも、最近ではむしろ、スポーツやキャンプ、ボランティアといった目的指向的なものの方が人気が高いと言われているが、これなどは、ここでいう「第4の領域」の一つの例と言えよう。また、日常生活圏を離れて、豊かな自然の中で、青年の家、少年自然の家などの青少年教育施設を活用した活動や、民間教育事業者などが提供する体験学習のプログラムを利用した活動も、「第4の領域」の例と考えられ、今後ニーズが高まっていくものと考えられる。
 行政としては、こうした状況を踏まえつつ、目的指向的な様々な団体・サークルの育成や、日常生活圏を離れた広域的な活動の場や機会の充実、効果的な情報提供活動、民間教育事業者との連携などを通じて、「第4の領域」の育成に積極的に取り組んでいってほしい。

[3] 地域社会における教育を充実させるための体制の整備
(a) 市町村教育委員会の役割の重要性

 子供にとって、地域社会の活動としては、日常の生活圏での活動が最も重要である。その意味で、子供の地域社会における活動を充実するためには、地域における教育行政に関して直接の責任を負い、子供に最も身近な位置にある市町村教育委員会の役割がますます重要なものとなってくると言わなければならない。
 現在も、市町村教育委員会は、地域社会における活動を充実させるため、活動の場や機会の提供をはじめとして、青少年団体の支援、指導者の養成や情報提供など様々な施策に取り組んでいるが、人々が、従来の地縁的な活動から目的指向的な活動へと参加意欲を移しつつある傾向を考えると、今後は、市町村長部局とも連携しつつ、情報通信ネットワークを活用した情報提供、指導者の人材バンクの形成や派遣、様々な団体とのネットワークの形成など、地域社会での活動に関する幅広い連絡・調整・企画機能を一層充実していくことが必要と考える。

(b) 地域教育連絡協議会や地域教育活性化センターの設置

 地域社会における教育の充実を地域ぐるみで行うための一つの方策として、地域の人々の意向を反映しつつ、地域社会における学校外の様々な活動の充実について連絡・協議を行い、ネットワークづくりを進めるため、市町村教育委員会等が核となり、PTA、青少年団体、地元企業、地域の様々な機関・団体や学校等の参加を得て、地域教育連絡協議会を設けることを提唱したい。
 この地域教育連絡協議会の設置は、地域社会における教育の充実について関係者の参加意識を高め、保護者や地域の人々が、行政や他人任せではなく、自分たち自身の問題としてこれに取り組んでいく大きな契機になるものと考える。
 なお、市町村によっては、既に、子供たちの健全育成や地域社会における活動の充実をねらいとする各種の協議会が設けられ、成果をあげているところも多い。こうした既存の協議会を、地域の実態に応じ、地域教育連絡協議会として活用することも考えられる。
 また、関係者間の連絡・協議を行うだけでなく、自ら地域社会における活動に関する事業を行ったり、各種の情報提供や相談活動、指導者やボランティアの登録、紹介などを行うため、地域の実態に応じ、行政組織の一部又は公益法人などとして、地域教育活性化センターを設置することも考えられる。

(c) 国・都道府県の支援、民間教育事業者の取組

 以上、様々な施策について述べてきたが、これらの施策は、国、都道府県、市町村の連携・協力の下に、体系的に進められなければならない。
 地域社会における教育は、各地域の実態を踏まえ、それぞれの地域の特色を生かして展開されることが極めて重要である。市町村が施策を立案するに当たっては、地域の人々のニーズを十分反映したものであることが望まれるし、国・都道府県の市町村に対する支援は、できる限り地域のニーズを踏まえた柔軟なものであることが必要である。
 また、従来、これらの施策を進めるに当たっては、民間教育事業者の取組を十分視野に入れてこなかったきらいがある。今後は、民間教育事業者による、子供たちを対象とした、文化・スポーツ活動や自然体験などの体験活動等の取組も期待し、これらとの適切な連携を図っていくことが必要である。
 これらの施策や地域社会における様々な取組があいまって、子供たちの地域社会での多様な活動の場と機会が豊かになっていくことを期待したい。

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大臣官房政策課

-- 登録:平成21年以前 --