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少子化と教育について(中央教育審議会報告)

平成12年4月1日
中央教育審議会

少子化と教育について(中央教育審議会報告)

はじめに

 中央教育審議会は、平成10年11月6日に開催された第223回総会において、委員から、少子化問題が教育にどのような影響を及ぼすか、少子化問題に教育としてどう対応するかについて議論すべきであるという意見が出されたのを受けて、中央教育審議会として少子化と教育について検討することを決定した。
 そこで、同年12月11日に「少子化と教育に関する小委員会」を設置し、有識者からのヒアリングや高等学校の家庭科の授業見学等も実施しながら審議を重ね、ここに報告を取りまとめたところである。
 中央教育審議会において、文部大臣の諮問を受けての審議ではなく、委員の発意により議論し、報告を取りまとめるのは初めての試みである。
 今回の報告において特に強調したいのは、「子どもは社会の宝」であり、「社会全体で子どもを育てていく」ことが大切であるという考え方である。
 この考え方を基本としながら、本報告においては、少子化の現状と要因を分析するとともに、少子化が教育に及ぼす影響として、1.子どもの切磋琢(さたく)磨の機会の減少、2.親の過保護・過干渉、3.子育ての経験や知識の伝承の困難、4.学校行事や部活動の困難、5.良い意味での競争心が希薄になることなどを挙げた。
 その上で、本報告は、少子化が教育に及ぼす影響を最小限に止めるために政策的な対応を図り、少子化の下で可能な限り教育条件の充実を図るとともに、家庭・学校・地域社会において、それぞれがその役割を踏まえた上で取り組むべき具体的方策を提言している。
 「社会全体で子どもを育てていく」ためには、国民各界の幅広い理解と協力が不可欠であり、国や地方公共団体、教育関係者はもとより、一人一人の国民、企業などの関係者の積極的な取組が求められる。本報告を契機に、少子化と教育の在り方について幅広い活発な議論が展開され、「社会全体で子どもを育てていく」機運が高まっていくことを期待したい。
 行政においては、本報告の提言を踏まえ、関連する施策の推進を期待するとともに、本報告の趣旨が広く伝えられ、議論の輪が広がるよう努力をお願いしたい。

第1章 少子化の現状と要因

第1節 少子化の現状

 我が国の出生数は、平成10年には120万3、149人となっており、前年より若干増加しているものの、長期的に見れば減少傾向が続いている。昭和40年代後半の第二次ベビーブーム期には、出生数は200万人を超えていたが、50年以降は毎年減少を続け、平成2年には122万1、585人まで減少した。その後はおおむね120万人前後で安定している。
 また、1人の女性が一生の間に生む平均子ども数(合計特殊出生率)は急激に低下している。昭和40年代にはほぼ2.1程度で安定していたが、昭和50年に2.00を下回ってからは低下を続け、平成10年には過去最低の1.38となった。このように、合計特殊出生率は、現在の人口を将来においても維持するのに必要な水準(人口置換水準)である2.08を大きく下回っており、この傾向が続けば、我が国の人口は減少に転じていくこととなる。
 なお、夫婦間の出生児数は、昭和30年代と比較すると少なくなってはいるものの、40年代後半からは平均2.2人前後で安定している。
 平成9年1月に発表された「日本の将来推計人口(国立社会保障・人口問題研究所)」の中位推計によれば、我が国の総人口は、西暦2050年には約1億人に減少すると見込まれている。なお、今後出生率が現在の水準と比べて相当程度向上するという高位推計によっても我が国の総人口は、西暦2050年には約1億1、100万人に減少し、逆に、出生率が現在の水準でさえも維持することはできないという低位推計によれば、約9、200万人と1億人を割るまでに減少すると見込まれている。

第2節 少子化の要因

1 未婚化・晩婚化の進行

 我が国の年齢別未婚率を見ると、女性の25歳から29歳までの未婚率は、昭和50年の20.9%から平成7年には48.0%と約2.3倍に上昇している。男性の30歳から34歳までの未婚率は、昭和50年の14.3%から平成7年には37.3%と約2.6倍に上昇している。生涯未婚率(50歳時の未婚率)を見ると、女性の生涯未婚率は昭和40年の3.8%から平成7年には5.1%と約1.3倍に上昇している。男性の生涯未婚率は昭和40年の1.5%から平成7年には8.9%と約5.9倍に上昇している。
 また、夫婦の平均初婚年齢を見ると昭和25年には夫25.9歳、妻23.0歳であったのが、平成7年には夫28.5歳、妻26.4歳と晩婚化が進行している。
 なお、婚外出生割合については、我が国では1%程度で、50%前後のスウェーデン、デンマーク、30%強のイギリス、フランスなどの諸外国と比べ極めて低い水準であることから、未婚化の進行が少子化に直接結び付く構造となっていると言える。
 このような未婚化・晩婚化の背景には、1.子育ての負担感及び子育てと仕事との両立の困難さ、2.個人の結婚観、価値観の変化、3.親への依存期間の長期化等が挙げられる。
 まず第一に、子育ての負担に関しては、親自身も兄弟姉妹が少ない中で育ち、甥(おい)、姪(めい)、いとこなどを含めても幼い子どもと接する機会を持たないまま成長しており、子育てを慣れない負担の大きい仕事と感じるようになっている。また、全就業者数に占める雇用者の割合は、昭和30年には43.5%であったが、平成9年には82.2%と8割を超えており、雇用者の割合が増えている。自営業者等と比べて自由度が低い職場においては、長期雇用を前提に、長時間労働や遠隔地への転勤等が多く、家庭よりも仕事を優先させることを求める企業風土があり、夫が子育てを分担するということは期待しにくい状況が続いてきたと言える。これに加えて、家事や子育ては女性が行うのが当然であるという根強い固定的な男女の役割分担意識とそれに基づく男性の家事や子育ての分担が少ないという実態が、女性に家事や子育てに関し過大な負担を強いることとなっているとも考えられる。
 女性が家庭外で働く場合には、女性にも職場優先の企業風土に合わせた働き方が求められる一方で、家事や子育ては女性が行うものという男女の固定的な役割分担意識は改善されず、女性だけが家事・子育てと仕事とを両立しなければならない状況になっている。このため、働く女性にとって、特に出産後は、家庭生活と仕事との両立は時間的、心理的、肉体的に極めて負担の重いものとなっている。
 また、専業主婦にとっても、核家族化・都市化の進展により子育てに親族や近隣からの支援が受けにくくなっており、母親が一人で子育てに追われるような状況になっている。
 第二に、結婚観、価値観の変化に関しては、最近では、結婚に対する世間のこだわりが少なくなり、特に、都市部を中心に結婚をしない生き方や結婚を急がない生き方を選択することが容易になっている。年金制度の充実や老親扶養に対する意識の変化等により、老後の生活のために子どもを持つという意義が変化し、その前提としての結婚の必要性が低くなってきた。また、女性の社会進出が進み、女性の経済力が向上した結果、女性が生活のために結婚する必要を従来ほど感じなくなってくるとともに、女性が仕事に生きがいを感じるようになってきた。このように、社会経済の変化や福祉制度の充実に伴い、結婚に対する個人の考え方や価値観も変化してきている。
 第三に、親への依存期間の長期化に関しては、若者が20歳代の後半や30歳代になっても、親と同居し続ける傾向が強まっている。このことについては、資産や経済力を持った親と同居し続けることにより、経済的な便益を受けると同時に、身の回りの世話をしてもらうなどの自由かつ快適な生活を送ることが可能となったことが、自立して結婚生活を営むことをためらわせる風潮につながっているという指摘がある。同時に、全体として晩婚化が進行する中で、同居する親も高齢化し、支援が必要になったりすることが、結果として子どもにとって独立する機会を逸することにつながっている可能性もある。

2 夫婦の子どもの数の変化

 夫婦の平均出生児数は、昭和40年代の後半からは約2.2人で安定しており、このことが近年の少子化の要因であるとは言えない。
 しかし、夫婦の平均理想子ども数は、第11回出生動向基本調査(平成9年)によれば約2.5人となっており、平均出生児数と平均理想子ども数との間に0.3人の開きがある。つまり、「子どもを産みたいが産みにくい状況」が存在している。
 なお、同調査によると理想とする数の子どもを持たない理由(複数回答)として、「一般的に子どもを育てるのにお金がかかるから」(37.0%)、「子どもの教育にお金がかかるから」(33.8%)、「高齢で生むのはいやだから」(33.5%)、「これ以上、育児の心理的・肉体的負担に耐えられないから」(20.8%)などが挙げられる。

3 地域社会における子ども数の減少

 従来の未婚化・晩婚化や夫婦の子どもの数の減少を要因とした出生数の減少の議論は、主として個人や夫婦の視点から少子化の現状を分析したものと言える。しかし、このような視点だけでなく、少子化について、身近な生活に密着した地域社会を単位として、例えば、小学校の学区を単位として取り上げるなど地域社会からの視点で見ることも可能である。
 こうした観点から、単純平均ではあるが、1小学校区当たりの大人の数(15歳以上の人口)を見ると、昭和30年には約2、200人であり、子どもの数(0歳以上15歳未満の人口)は約1、100人であった。つまり、大人100人につき約50人の子どもを育てているという状況であった。
 一方、平成11年には、1小学校区当たりの大人の数は約4、500人、子どもの数は約770人となり、大人の数が大幅に増加しているのに対し、子ども数は大幅に減少している。つまり、大人100人につき約17人の子どもしか受け入れられなくなっていると言える。
 例えば、子ども連れで公共の場に行った際に子どもが少しでも声を上げるととたんに周りから白い目で見られたり、子どもを持った夫婦の入居を断るアパート等があったりするといった声があるように、ある面では子どもや親子連れに対する寛容さがなくなり、社会全体で子どもを受け入れるふところの深さがなくなったという見方もできるのではないかと考えられる。

第2章 少子化が教育に及ぼす影響

 少子化の進行は、労働力人口の減少や経済成長の停滞ひいては我が国社会の活力の減退等につながり、社会全体として見れば、我が国にとってマイナスの影響をもたらすと同時に、我が国の教育にも様々な影響を及ぼすこととなる。
 少子化が教育に及ぼす影響としては、1.子ども同士の切磋琢(さたく)磨の機会が減少すること、2.親の子どもに対する過保護・過干渉を招きやすくなること、3.子育てについての経験や知恵の伝承・共有が困難になること、4.学校や地域において一定規模の集団を前提とした教育活動やその他の活動(学校行事や部活動、地域における伝統行事等)が成立しにくくなること、5.良い意味での競争心が希薄になることなどが考えられる。
 もっとも、これらの影響は、必ずしも少子化のみによりもたらされるものではなく、核家族化や都市化、情報化など、様々な要因が絡み合っていること、また、地域によっても異なっていることに留意する必要がある。例えば、子どもの遊びがテレビゲームなどの室内遊び中心となったり、塾やおけいこごとなどで子どもが多忙な生活を送ったりしていることが、子どもが地域で遊び、人間的な触れ合いをする機会を減少させているというような側面もあるのである。
 しかし、新興住宅地など比較的子どもが多い地域もあるものの、全体として少子化が進行する中で、かつてのような地域での異年齢集団が形成されにくくなっていることは間違いないと思われる。そのため、ふところの深い社会性を身に付けるきっかけとなる友情、葛藤(かっとう)、対立、忍耐を経験する機会が減少している。このように、一昔前の地域社会の状況であれば、子どもたちが日常生活の中で自然に体験できたことが、今日ではできなくなってしまっていると考えられる。
 また、少ない子どもを大切に育てようと意識することから、少子化により親の子どもに対する過保護・過干渉の傾向が生じることが考えられる。これにより、子どもが自ら考えたり、自ら試行錯誤しようとする前に親がすぐ介入したり、子どもの安全を考える余り、親が野外での遊びや体験活動の機会を子どもから奪ってしまうなど、子どもの成長や自立に不可欠な経験が得られにくくなることが考えられる。さらに、このような傾向の結果、子どもたちが自分の意志で自分の目指すものにチャレンジすることを回避する風潮が一部に見られる。
 幼児期からおけいこごとを強いたり早期教育を行ったりする傾向や一部のマスコミで「お受験」と呼ばれる現象が生じることも親の安易な安全志向や有名校への進学志向などによるものであり、一部の限られた地域の現象であるとはいえ、過保護・過干渉の傾向の表れの一つとも言える。
 少子化、都市化、核家族化等の影響により、地縁的つながりの中で子育ての知恵を得る機会が乏しくなるとともに、個人重視の風潮、テレビ等マスメディアの影響等による人々の価値観の大きな変化に伴い、自分の子どもの教育に関する考え方にも変化が生じたり、他人の子どもに無関心になったりするなどの変化が生じている。このような地域の子育て支援機能の弱体化が子育てに対する不安や負担感を増幅する結果になっていることも考えられる。
 児童・生徒数の減少、それに伴う学校の小規模化に伴い、学校において一定規模の集団を前提とした教育活動(運動会、文化祭、遠足といった学校行事や部活動)が成立しにくくなることも考えられる。また、地域における伝統芸能や伝統的行事も少子化によりその伝承が困難になることも考えられる。
 良い意味での「競争心」の稀薄化も指摘される。良い意味での「競争心」は社会的・経済的・文化的活力の源泉であるとともに、法やルールを守る精神とともに養われるものであり、それは同時に民主主義の基盤を成すものでもある。しかし、少子化の進行により、社会全体として様々な分野において良い意味での競争が失われ、社会的・経済的活力をそぐと同時に文化的創造力を衰退させるおそれがある。さらに、良い意味での「競争心」の前提となる公正の精神が衰えれば民主主義の基盤が損なわれることになるおそれがある。
 一方、種々の工夫により少子化、特に児童・生徒数の減少を教育環境の充実に生かすことができる要素もある。
 例えば、小学校の本務教員1人当たりの児童数の推移を見ると、昭和50年には25.0人であったのが、平成11年には18.2人に減少している。中学校、高等学校においては、それぞれ、20.3人が16.2人に、19.4人が15.5人に減少している。このような状況を生かして、ゆとりの中で個に応じたきめ細かな教育を行う環境を整えることが可能となっている。
 また、少子化等により総体として見れば「過度の受験競争」と言われる状況は緩和されつつあり、大学審議会答申「平成12年度以降の高等教育の将来構想について」(平成9年1月29日)の試算では、平成12年度から16年度で臨時定員の半数を恒常的に定員化した場合、大学・短大の収容力(入学者数を全志願者数で除したもの)は平成21年に100%に達し、理論上では、大学進学を希望する者はいずれかの大学に必ず入学できるようになると見込まれている。
 このような状況の中で、学校教育においては「個に応じた教育」を行う環境を整え、外国語運用能力、コンピュータ・リテラシー、ディベート能力などのこれからの時代に求められる能力を育成するためのきめの細かい教育の一層の充実を図っていくことが可能となる。また、これまで高校卒業直後の者を主として対象としてきた高等教育機関において、社会人や高齢者等を対象とした教育機会を一層広げていくことが重要である。

第3章 少子化に対応するための政策的視点

第1節 少子化への対応の基本的な考え方

 現在の出生数の状況を見ると、少子化が直ちに改善されるとは考えにくい。そのため、少子化が教育に及ぼす問題を最小限に抑えるために可能な限り政策的な対応を図り、少子化の下で可能な限り教育条件の充実を図るとともに、少子化の解消に向けての環境整備に努めることが、教育面での対応の基本と考えられる。
 また、第1章において述べたように、少子化を女性が子どもを産まなくなったとか、夫婦の子どもの数が少なくなったとして原因を個人や夫婦のみに求めるのではなく、社会全体が子どもを受け入れるふところの深さがなくなったことを重視して、それに対応するために、そもそも社会全体で子どもを育てていくのだという視点をはっきり打ち出すことが必要である。
 その際、都市化等の進行の中で地域社会が従来のようには機能しなくなっていることを踏まえ、趣味やボランティア活動を通じたネットワークや子育てに対する企業の支援なども含めて社会全体で子どもを育てていくことが大切である。中央教育審議会答申「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について(第一次答申)」(平成8年7月19日)においても、これからの地域社会における教育において、同じ目的や興味・関心に応じて大人たちを結び付け、そうした活動の中で子どもたちを育てていくことを提言しており、従来の学校・家庭・地縁的な地域社会とは異なるこのような活動領域を「第4の領域」と呼び、その育成を提唱している。この「第4の領域」の中で子どもを育てていくためには、PTAやボランティア団体など様々な団体等との連携を深めていく必要がある。
 また、企業については、これまで「子育てと仕事との両立が困難」とか「残業で父親は子育ての分担が困難」など、企業で働くことと子どもを産み育てることが対立するものであるかのようにとらえられてきた。しかし、社会全体で子どもを育てるという観点に立てば、企業にも子育てとの両立が可能な勤務環境を整備したり、社会の一員として子育てを支援したりするなど子育てに関して大きな役割を果たしていくことが期待される。
 昔から「案ずるより産むが易し」と言われてきたが、これに反して子育てと仕事との両立や子どもの教育など様々なことを心配して、女性が子どもを産みにくくなっているのが現状である。中央教育審議会としては、社会全体で子どもを支え、「産む前にはいろいろ心配もしたがやっぱり産んで良かった」と親が感じられるような社会を作らなければならないことを強く訴えたい。
 また、少子化等に伴って子どもたちの様々な体験が減少していくことに対応して、できるだけ多様な体験の場を用意していくことが基本となるものと考えられる。その際、できるだけ大人が介入せず、子どもたちが主体的に考え、試行錯誤しながら自ら解決策を見いだしていくプロセスが重要である。
 少子化の下での教育の在り方に関しては、「ゆとり」の中で「特色ある教育」を展開し、子どもたちに豊かな人間性や自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、より良く問題を解決する資質や能力などの「生きる力」をはぐくむという基本的な考え方に立って進めていくことが重要である。
 また、国内的には「過度の受験競争」と言われる状況が緩和される一方、企業活動がグローバル化し、産業が知識集約化の傾向を強める中で、学術研究や経済活動等における国際的な競争が激化することを踏まえると、我が国が21世紀にも引き続き活力にあふれ、高い競争力を持つ社会を維持していくために、これを支える個人の能力を高め、独創性や創造力の源泉となる個性を伸長していく必要がある。このため、少子化により余裕が生まれる学校施設・設備等を活用し、一人一人の個性や能力に応じた教育を実現することが必要である。従来、教育の機会均等の確保と全国的な教育水準の維持・向上の観点から、全国一律的な教育条件の整備やその他の教育施策に平均的に教育資源を配分することとしてきたが、今後は、最低限の教育条件の整備については引き続き行いつつ、個々の学校や地域の特色ある取組に対しきめ細かな資源配分を行うという方向に転換することを検討する必要がある。同時に、少子化が教育に及ぼす影響への政策的な対応や教育の質的充実を図るために必要な教育条件の改善、今後充実が求められる教育分野に対して、教育資源の配分を重点化するといった発想も必要となる。
 他方、少子化の解消そのものについて、少子化の大きな要因である未婚化・晩婚化は、基本的には個人の自己決定の結果であることを踏まえると、教育面の施策を検討するに当たっては、子どもを産み育てたい人が安心して子どもを産み育てることができるようにするなどの環境整備を重視すべきである。
 このため、子どもを産み育てることによってやりたいことが制約されるという不自由感や子どもの教育費に対する負担感などが少子化の背景となっていると考えられることから、子育てや教育にかかる心理的、肉体的、経済的負担を軽減するためには、教育面でも可能な方策を推進していくべきである。
 このような対応を進めるに当たっては、1.安心して子育てができる教育環境を実現する、2.子育てや家庭の大切さについて若い世代の理解を深める、3.子育てをしながら働き学ぶことができる環境を整備する、4.教育に伴う経済的負担の軽減を図る、5.地域で子育てを支援する環境を整備する、6.子育て後のキャリア開発等を支援するといった視点が重要である。
 安心して子育てができる教育環境を実現することに関しては、一人一人の子どもたちに「生きる力」をはぐくむ一方で、いじめ、不登校、いわゆる「学級崩壊」など若い世代が子どもを育てる上での不安につながる教育上の諸問題に適切に対応し、子どもたちが伸び伸びと育つ教育環境を実現し、それに親も子どもも参加していくことが必要である。これと併せて、育児情報の氾(はん)濫などによる保護者の育児不安を解消するためには、知育に偏った早期教育や子どもの個性を考慮しない受験競争へ駆り立てるようなことが、子どもにとってプラスにならないことを改めて呼び掛けていくことも必要である。
 また、最近子どもたちが被害者となるような犯罪が多発していることから、教育の場においても地域と一体となって幼児・児童・生徒の安全確保に一層力を入れていく必要がある。ただ、その反面、このことによって学校開放等地域に開かれた学校づくりを推進することや、地域の中で子どもたちが様々な体験の機会を持つことに対して消極的になってしまわないように心すべきであることは言うまでもない。
 さらに、結婚に対する心理的な負担感が未婚化や晩婚化の要因の一つとなっていると考えられることから、子育てや家庭の大切さについて若い世代の理解を深めたり、性別によって特定の役割を押し付けるのではなく、男女が協力して子育てに当たるとともに、社会全体として子育てを支援していくという意識を確立していく必要がある。
 子育てをしながら働き学ぶことができる環境を整備するに当たっては、女性が子育てを行うといった考え方ではなく、男女が共同して子育てを行いながら仕事や学業も両立させる「子育てをしながら働き学ぶ」といった考え方が大切である。こうした考え方に立って、子育てをしながら働き学ぶことができる環境を整備するため、職場においても家庭教育に関する各種の学習機会を提供したり、公共施設における託児サービスの提供などを図るとともに、幼稚園や保育所における子育て支援の充実を図ることも必要である。
 我が国では、子どもが高等学校卒業後も親と同居している場合が少なくなく、さらに、高等教育を終えるまでは親が教育費と生活費を負担する場合が多く見られる。こうした傾向がにわかに変わるとは考えにくいが、ヨーロッパなどでは高等学校卒業後は親から自立して生活する傾向が強いといった指摘もあり、我が国でも、高等学校卒業後には親子が「子離れ・親離れ」するように意識を改めることも必要ではないか。
 さらに、親の負担感を軽減するため、今後は、高等教育を受けるための費用は、これを受ける本人も負担をする方向に変えていくことも重要である。そのためには、学生が自立して学べるよう奨学金の充実などが必要である。
 そもそも、子どもが成人に近い年齢に達した後も、親が子どもの教育費等を負担するという風潮そのものが問い直される必要があるのではないか。
 また、地域での子育ての支援という観点からは、幼稚園をはじめとする教育機関や地域の社会教育関係団体等の教育機能を出産や子育てを支援するために生かしていくという発想も必要である。
 これまでのように女性1人当たりの子ども数又は夫婦1組当たりの子ども数が減少している状況だけを問題とするのでは、少子化の原因や責任を女性個人や若い世代の生き方のみに帰してしまうことになりがちである。子どもに対して、保護者が最終的な責任を負うのは当然であるとしても、今後は、次代を担う子どもたちは「社会全体の宝」であるという考え方に立って、あらゆる世代の大人全体の力によって社会全体で育てていくという意識を持つ必要がある。その際、少なくともいわゆる「顔の見える」範囲の日常生活エリアにおいては、自分の子どもでなくても褒めたり注意したりできるようにすることが重要である。我々自身を振り返っても、他人の子どもを注意しても無視されたり、その子どもの親から反発されたりすることを懸念して、注意しないことも多い。しかし、子どもは「社会全体の宝」であり、社会全体で子どもを育てていくという考え方に立ち、我々は勇気を持って、子どもが良いことをすれば褒め、悪いことをすれば注意し、時にはしかるなどして積極的に地域社会の子どもたちにかかわりを持つようにしようではないか。
 最後に、生涯学習審議会答申「学習の成果を幅広く生かす」(平成11年6月9日)においても指摘されているように、出産や子育てと仕事との両立のためには、雇用環境の整備と並んで、出産や子どもに手が掛からなくなった女性の再就職や職場復帰が容易になるようキャリア開発に関する学習機会を提供するなど、出産、子育て後のキャリア開発等を支援することが必要である。

第2節 少子化への対応を考えるに当たっての留意点

 政府における少子化への取組の方策については、内閣総理大臣の下に設置された「少子化への対応を考える有識者会議」の提言(平成10年12月21日)や少子化対策推進関係閣僚会議で定められた「少子化対策推進基本方針」(平成11年12月17日)及び「重点的に推進すべき少子化対策の具体的実施計画について(新エンゼルプラン)」(平成11年12月19日)において、取りまとめられている。中央教育審議会においては、これらの趣旨を踏まえつつ、共働きや専業主婦(夫)など様々な家庭や家族の在り方を前提として、家庭や子育てに喜びや楽しさを持つことができるように、教育面を中心に少子化への対応のための具体的な方策を提言することとしたい。その際、次のような点に留意する必要があると考える。
 第一に、「結婚をするか、しないか」及び「子どもを産むか、産まないか」についての判断は、個人の自由な選択にゆだねるべき問題であることを前提として、子どもを産むことを望んでいる個人が、社会的及び経済的な環境が十分でないために子どもを産むことをためらっているという状況を改善し、個人が子どもを産むことをためらう必要のない環境づくりが重要である。
 第二に、子育てを支援するための環境整備を行うに当たっては、子どもをどのような人間に育てていくのか、あるいは、地域が子育てにどのようにかかわっていくべきなのかといった理念が人々の間で共有されることが重要である。このような理念を持たないまま環境整備を行った場合には、子育てを支援する方策が、単に子育ての負担を軽減するだけの親の利便性の追求にこたえるだけのものにすぎなくなる可能性があることに留意すべきである。もっとも、国民の生活水準が向上し、国民の働き方や生き方に対する考え方も多様化しており、「物の豊かさ」よりも「心の豊かさ」を求める傾向が強い今日においては、親の利便性の意義も多様なものとなっている。そこで、多様な志向を持った親が自らの生き方を充実することと両立するような子育て支援策を考えるという視点も必要となる。
 第三に、子どもたちは社会全体ではぐくまれていくものであることを再確認するとともに、子どもたちの健やかな成長は、大人一人一人の責任であり、大人一人一人が考え社会のあらゆる場で取り組んでいく必要があることを改めて認識する必要がある。子育て支援に参加することは、大人が幼い子どもを育てたり、子どもとともに過ごす時間を持ったりする体験をしながら自分自身を豊かにしたり、自分が子育て支援という社会的な役割を担っているという充実感を得たりすることができるなど、参加する大人にとっても有意義なことであると言える。
 第四に、男女共同参画社会の形成を促進する観点が重要である。子育ては男女が共同して行うことが当然であり、男女共同参画2000年プラン及び男女共同参画社会基本法に基づく政府の取組も踏まえ、女性も男性も喜びと責任を分かち合える社会を実現するという観点から、少子化への対応について検討することが重要である。
 なお、少子化への対応を考え、実施に移すに当たっては、家庭や子育てに関する都市部と農山漁村との意識や環境の違いにも留意する必要がある。

第4章 教育面から少子化に対応するための具体的方策

 少子化が教育に及ぼす問題を最小限に抑え、少子化の下で可能な限り教育条件の充実を図るとともに、少子化の解消に努めていく上では、第3章に述べたような政策的視点に立って、子どもたちを取り巻く身近な生活環境の中で、教育面からの対応が効果を上げるよう支援方策を検討する必要がある。各地域においては、地域の特色や考え方を生かした様々な教育活動が生き生きと展開されるよう努めるとともに、社会全体で子どもを育てていくという観点に立って、家庭や学校をも含めた地域社会の中で行われる教育活動のそれぞれの特色に応じた支援の在り方を考えることが重要である。なお、その際、企画、連携、情報交流の場を設けるなど、できるだけこれらの活動を有機的に結び付けていくことが望まれる。

第1節 家庭教育の役割と具体的方策

 家庭教育は、乳幼児期の親子のきずなの形成に始まる家族との触れ合いを通じ、「生きる力」の基礎的な資質や能力を育成するものであり、すべての教育の出発点である。特に、基本的な生活習慣・生活能力、豊かな情操、他人に対する思いやり、善悪の判断などの基本的倫理観、社会的なマナー、自制心や自立心など「生きる力」の基礎的な資質や能力を培うことが、家庭教育の重要な役割である。前述の中央教育審議会第一次答申においても強調されているように、子どもの教育や人格形成に対し最終的な責任を負うのは家庭であり、子どもの教育に対する責任を自覚し、家庭が本来果たすべき役割を再確認する必要がある。
 乳幼児の教育については、第一義的責任を有する家庭における子育てや教育を軸に地域社会、幼稚園、保育所等が連携・協力して子どもを育てることが基本である。
 しかし、現在では、家庭の教育力が低下している状況もある。家族がそろって食事をする時間が少なかったり、家族がそろって話をすることが少なかったりするなど、親子が心のきずなを深め、十分に精神的な機能を果たせないような家庭も多い。両親が企業社会にすっぽりと組み込まれ、父親と母親がそれぞれの役割を十分に果たすことができない多くの家庭にとって、どのようにして家庭の教育力を高めていくかは大きな課題であると言えよう。
 また、現在の子どもたちの親の世代は物質的に豊かな時代に生まれ、価値観が多様化する中で、それまでと比べ確固とした倫理観を持っていない傾向があるという指摘もある。例えば、一部の者には「自分の子どもさえ良ければよい」という自己中心的な考え方に基づいて子どもを教育するという傾向が見られ、他者に対して積極的に働き掛け、他者のために尽くすという社会的存在である人間本来の在り方が軽視されている面も見られるのではないか。
 さらに、最近の子どもたちは、ゲームやテレビ等の普及により、どろんこ遊びや自然の中で駆け回ることなど年齢に応じた遊びを十分に経験しておらず、このことが子どもの想像力の不足や情緒の欠落につながっているという指摘がある。また、子どもに受験勉強ばかりさせて家事を手伝わせることが少ないなど家族の一員としての役割を必ずしも教えようとしないといった傾向も見られる。
 こうした状況に対応するためには、親はできるだけ子どもを自然の中に連れ出して伸び伸びと遊ばせ自然との触れ合いを促す必要があり、家族を対象とした自然の中で遊ぶセミナーを開設するなど、子どもが自然と触れ合う機会を増やしていく必要がある。さらに、家事の手伝いなどを通して家族の一員として分担すべき仕事の重要さについて学ばせるとともに、人の役に立つ喜びを味わうことができるようにすることが重要である。このように、心豊かな子どもたちをはぐくむため、家庭や社会全体で子どもと触れ合い、話し合う機会を充実することが必要である。
 また、教育の基盤であるべき家庭の教育力が低下している状況を踏まえて、家庭教育手帳や家庭教育ノート等を有効に活用したり、明日の親のための学級など多様なニーズに応じられる家庭教育学級等への参加を促進することなどにより、家庭教育の重要性について見つめ直し、考える機会を提供することが必要である。
 さらに、24時間電話相談など思春期の子どもを持つ親を含めた様々な親の悩みに対応できる相談体制を整備するなど、家庭教育を補完するための施策を推進する必要がある。その際、若い世代が感じている子育ての不安を取り除き、その喜びを伝えることは、これからの社会教育の課題の一つとなることも視野に入れる必要があり、成人式の機会等も活用しながら啓発を進めていくことが求められる。また、家庭において男女が子育てを協力して行えるよう地域における男女共同参画に関する学習を促進するとともに、企業の協力を得て父親の家庭教育参加についての協議会の開催や企業への出前講座を実施するなど、これまで子育てにかかわることが少なかった男性が子育てに参加することができるような環境を整備することが重要であることにも留意すべきである。

第2節 学校教育の役割と具体的方策

 学校教育には、家庭・地域での様々な活動や体験とあいまって学校における学習や生活を通じて児童・生徒がそれぞれ豊かな価値観・価値体系を作り上げていくための基礎を担う役割があり、親や地域住民等から、その役割の十分な発揮が期待されている。
 学校教育の在り方については、少子化の下においても、「ゆとり」の中で「特色ある教育」を展開し、子どもたちに豊かな人間性や自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、より良く問題を解決する資質や能力などの「生きる力」をはぐくむことを基本として展開されていくべきであると考える。特に、児童・生徒が将来の社会人・親となる時期につながるように、1.生命への畏敬の念を育て、生命が世代から世代へと受け継がれていくものであること、2.結婚、家庭、子育てはどのような意義や喜びを持つのか、親としてどのような自覚を持つべきかということ、3.子育て、家庭づくりを男女が共同して行い、共同で責任を果たすべきこと、などについて十分な学習ができるよう取組を進めることが求められる。そのため、これらの点について、児童・生徒が自ら認識を深め、考える機会を得られるよう、各地域や各学校の特色に応じた教育活動の展開を図ることが重要である。
 また、少子化への対応の観点からは、学校教育においては、子どもが夢を持って伸び伸びと学習や生活ができるよう環境の整備を図ることが重要である。このため、子どもにゆとりの中で豊かな人間性などの「生きる力」をはぐくむ学校教育の改善・充実、いじめ、不登校、いわゆる「学級崩壊」などの問題への適切な対応、体験学習の機会の充実、子ども・保護者や地域への学校開放の推進など各般の施策を展開する必要がある。

1 幼稚園教育

 幼児期における教育は、家庭との連携を図りながら、生涯にわたる人間形成の基礎を培うために大切なものである。また、小学校段階以降の生活や学習の基盤の育成につながることにも配慮し、幼児期にふさわしい生活を通して、基本的生活習慣の形成・定着、道徳性の芽生え、創造的な思考や主体的な生活態度の基礎などを育てることが重要である。
 また、近年、地域において一緒に遊ぶことのできる子どもの数の減少、親の過保護や過干渉、育児不安の問題が指摘されているとともに、女性の社会進出が進むなど幼児を取り巻く状況が変化している中で、幼稚園において計画的に構成された環境の下での集団生活を経験することは、幼児の成長にとって大きな意義を持つものである。特に、幼児期からの「心の教育」の重要性が指摘されている中で、幼児の遊びや様々な体験活動の充実が重要となる。
 さらに、少子化の要因の一つとして挙げられる、子どもを産み育てることへの不安や負担感の解消に資する観点からも、地域の実情に応じて、満3歳に達した時点での幼稚園入園に係る条件整備を行ったり、幼稚園における預かり保育や幼児教育相談の実施等地域の幼児教育のセンターとしての機能を活用した子育て支援活動を推進したりすることが重要である。併せて、幼稚園においても、地域の異年齢・異世代との交流に積極的に取り組む体制の充実が求められる。
 これらの点を踏まえ、幼児教育の専門施設である幼稚園を中核に、家庭、地域社会における幼児の教育をも視野に入れて、幼児教育の全体についての施策を総合的に展開することが、少子化への対応の観点からも効果的であると考えられる。この場合、施策の展開に当たっては、幼稚園と小学校との連携・接続の充実を図るとともに、幼稚園と3歳から5歳までの幼児の約3割が入所している保育所とは、子育て支援の観点から類似した機能を求められることを踏まえ、両施設の連携を一層図ることが重要である。
 このため、幼稚園の教育活動の充実とそれを支える教育環境の整備の推進や、幼稚園における家庭・地域と連携した子育て支援の充実、幼稚園と小学校との連携、幼稚園と保育所との連携など各般の施策を体系的に盛り込んだ、数年程度の期間を想定する「幼児教育振興プログラム」といったものを新たに策定・推進する必要がある。その際、各地域において創意工夫を生かし、実情に応じて様々な幼児教育の展開が図られるよう政策手段の多様化を図ることが重要である。

2 小学校以降の学校教育

 小学校以降の学校教育においては、人間として、また、家族の一員、社会の一員として、更には国民として共通に身に付けるべき基礎・基本を習得した上で、各自の興味・関心、能力・適性、進路等に応じて選択した分野の基礎的能力を習得し、その後の学習や職業・社会生活の基盤を形成することを役割としている。
 少子化への対応の観点からは、学校教育において、今後の社会の方向を見通し、男女の平等に関する学習を推進するとともに、家族・社会の一員として、特に将来の親として必要な基礎・基本を習得できるよう、子育ての意義や在り方、家庭を持つことの重要性について理解を深められるようにすることが重要である。
 家庭の在り方を考え、家庭生活は男女が協力して築くものであることや子どもの成長発達に果たす親の役割などについて理解を深める学習は、従前から「家庭科」、「技術・家庭科」がその中心的役割を担っている。特に、高等学校段階においては、平成6年度から「家庭科」が男女必修となり、すべての生徒が、男女が互いに協力して家庭を築き、子どもを産み育てることの意義などを学習できるようになっている。「家庭科」、「技術・家庭科」におけるこれらの学習を今後一層充実するためには、すべての高等学校で保育体験学習を推進するなど、幼稚園、保育所、児童館等での保育体験学習を充実するとともに、乳幼児を持つ地域の人々を学校に招いて具体的・実際的な授業を行うなどの指導方法の工夫改善が必要である。
 こうした教育を受けた世代が将来社会を担い、男女が共同して安心して子どもを産み育てることができるような社会が実現されることを期待したい。
 また、道徳、特別活動及び総合的な学習の時間などを活用して、子育てを含めて生き方や将来設計を考えたり、子育ての体験学習を行ったりするとともに、「社会科」、「公民科」における家族や少子高齢社会に関する学習、「体育科」、「保健体育科」における心身の発育・発達や性に関する学習等、関連する教科等を含めたカリキュラム全体の中で、少子高齢社会の問題を児童・生徒が考えられるよう工夫が必要である。その際、例えば、各学校において、子育ての大切さ、親の役割、更には地域の一員としての近隣の子どもとのかかわり方等について考えさせる「子育て理解教育」という視点を持って、これらの学習を教育課程全体の中で適切に位置付け、教育活動の展開を図ることが求められる。また、その実践に当たっては、学校内の授業だけでなく、地域における子育て活動の取組と連携して推進することが重要である。
 さらに、教育に掛かる心理的負担を軽減するためには、子どもたちが伸び伸び育つ教育環境の実現を図ることが重要となる。そのため、一人一人の子どもたちに「生きる力」をはぐくむことをねらいとした新学習指導要領等の趣旨の実現を図るとともに、個性を伸ばし多様な選択ができる学校制度の実現など、教育制度の改革と教育条件の整備に積極的に取り組む必要がある。
 とりわけ、近年、いじめ、不登校、いわゆる「学級崩壊」の問題などにより親の不安が大きくなっており、学校においてこれらの問題に適切に対応することが結果として少子化への対応策になるとの指摘もある。子どもたちの心の問題の多様化・複雑化という状況も踏まえ、スクールカウンセラーなどによる教育相談体制の充実や学級運営の改善等を図る必要がある。
 少子化の進行とともに、子ども同士の切磋琢(さたく)磨の機会の減少や地域での異年齢集団による活動の機会が減少している。このため、特別活動や総合的な学習の時間を活用した工夫などによる異学年交流、学校間交流、異なる学校段階間での学校間交流の推進や、放課後、休日の運動場、図書館などの学校施設の開放、余裕教室の有効活用を行うことが重要である。
 少子化による児童数、生徒数の減少により、地域によって違いはあるものの、学校や学級の規模が縮小することも予想される。それによって、一定規模の集団を前提とした教育活動などが成立しにくくなるとともに、科目の選択幅を拡大するなどの新学習指導要領の趣旨を生かすことが困難となる場合もあると考えられる。このため、地域の状況により生じる学校の小規模化と小規模学級の特徴を生かした教育活動の展開が期待されるところであり、特色ある学校づくり、隣接校との交流やインターネット等を利用した他校との交流、地域との連携の好機として取り組むことが重要である。特に、高等学校では、総合学科や単位制、中高一貫教育制度等を活用し、生徒の多様な選択を可能としていくことが期待される。また、特別免許状制度やいわゆる特別非常勤講師制度により、地域の職業人など多様で実際的な経験を有する人々にその知識、技術、経験を生かして学校で活躍してもらうなど、地域の教育力を学校に取り込んで多様な教育活動を展開していくという発想が重要である。
 大学をはじめとする高等教育については、社会の各分野で活躍できる優れた人材の養成・確保、未来を拓く新しい知の創造、文化創造への積極的貢献など社会の発展を支えていく中心的な役割を果たすことが期待されている。とりわけ、大学の学部段階等においては、主体的に変化に対応し、自ら将来の課題を探求し、その課題に対して幅広い視野から柔軟かつ総合的な判断を下すことのできる力である「課題探求能力」の育成を重視するとともに、専門的素養のある人材として活躍できる基礎的能力等を培うことが求められている。
 少子化のみの影響とは言えないが、近年、社会生活を送る上で必要な基本的な知識が身に付いていなかったり、社会の一員として求められる倫理観が希薄であったり、あるいは、人間関係がうまく作れないなどの学生の問題が指摘されている。このため、教養教育を重視することによって、学生に幅広く深い教養や高い倫理観を醸成するとともに、学生生活全般を通じて豊かな人間性を身に付けさせることが必要である。
 この教養教育については、各大学が自らの責任において決定し、実施するものであるが、例えば、幼稚園、保育所、児童館等における様々な体験を大学の授業科目の中に位置付けて単位認定を行うなど、少子高齢社会や男女共同参画社会にかかわる問題について、学生が自らの問題として考え、対処することができるようにすることも大切である。また、大学の公開講座において、保育や幼児期における子どもの教育について取り上げることも有意義である。

第3節 地域社会における教育の役割と具体的方策

 地域社会の中で大人や様々な年齢の友人と交流し、様々な生活体験、社会体験、自然体験を豊富に積み重ねることは、子どもたちが自らの興味・関心や自らの考えに基づいて自主的に行っていくという点で、大きな意義を持っている。地域社会は、地域の大人たちが子どもたちの成長を温かく見守りつつ、時には厳しく鍛える場となること、また、地域社会が単に人々の地縁的な結び付きによる活動だけでなく、同じ目的や興味・関心によって結び付いた世代を超えた人々の活動が活発に展開され、子どもたちをはぐくむ場となることが必要である。そのためには、大人、子ども、高齢者、障害者、外国人など様々な人々が地域社会に対して、自分が暮らす場所という意識を持ち、お互いに理解し合い、支え合いながら積極的に地域社会にかかわっていくという意識が大切である。
 子どもたちが多様な体験をしていくためには、各地域において多様な青少年教育施設、文化施設等を活用して異年齢集団によるスポーツ、文化活動、野外活動等の体験活動を推進していくことが必要である。こうした活動に当たっては、子どもがその活動を楽しむだけではなく、子どもに冒険させたり、自分の限界にチャレンジさせるなど、時には厳しく心身を鍛えることも大切なことである。現在、平成14年度からの完全学校週5日制の実施に向けて策定された「全国子どもプラン(緊急3ヶ年戦略)」の一環として、全国展開している「子どもセンター」等を活用して子どもの体験活動等の情報を提供したり、関係省庁と連携して、全国の国立公園等で国立公園管理官(パークレンジャー)の仕事を手伝う、農家等に長期間宿泊して農作業等を体験する、地元の商店街等において様々な職業を体験するなど、子どもの体験活動の機会と場の充実といった取組が始まっており、今後このような取組が各地域に定着することが求められる。こうした活動の中で、大人の適切な指導によって子どもたちに社会的なマナーやルールを身に付けさせることも大切である。
 また、少子化の進行とともに、都市化、核家族化が進み、祖父母や近所の人たちに子育てについて相談したり、助けてもらったりすることが難しくなっている状況がある。特に、都市化により急速に形成された郊外地域では、子育てを支援すべき地域社会の機能を十分に果たしているとは言えない例も見られ、このことが特に母親への子育ての負担の集中を招いた面もある。このような社会状況の中で、子どもと実際に触れ合う体験の乏しいままに親になる者が増加する傾向にあり、子育てに関して身近に相談相手がおらず、孤独な状況の中で終日子育てに追われ、子育てに不安を感じる母親が増えていると指摘されている。
 こうした母親の育児不安を解消するためには、父親が子育てを分担するとともに、社会全体で子どもを育てるという考え方に立つことが必要である。このため、社会全体で子育てを支援するものであるという意識を涵(かん)養するとともに、地域社会が家庭における子育ての補完的な機能を一層果たしていくことができるよう、地域の身近な施設である公民館等におけるボランティアによる子育て相談体制を充実したり、社会教育・文化施設、幼稚園や学校の余裕教室の活用、ボランティア活動・サークル活動等の団体・グループとの連携やその支援に努めていく必要がある。
 また、地域の教育力を回復するためには、親のネットワークの形成を促すことも重要であり、例えば、子育て中の親が気軽に相談できる子育てサポーター等を活用した地域における子育て支援ネットワークづくりを推進したり、現在、乳幼児を育てている親と、アドバイスを行う子育て経験者が相互に情報を把握することができるようにしたりすることが考えられる。また、地域の大人たちの活動が学校教育を外側から支えるという関係を創出することも重要である。例えば、学校に通う子どもを持つ親と教職員が参加するPTA活動を更に幅広いものとし、オーストラリアに見られるParents and Citizens Association(親と市民の会、PCA)のように、子どもの健全な成長を願う趣旨に賛同する者であれば、学校に通う子どもを持たない大人であっても参加する形とすることなどにより、地域社会における大人と子どもの触れ合いを促進し、社会全体で子どもを育てていくための人的基盤を形成していくことが重要である。
 こうした社会による子育て支援は、支援を受ける親と子どもに対して便益を与えるだけではなく、子どもを持たない大人や子どもに手が掛からなくなった大人たちが子育て支援を行うことにより、ボランティア活動による自己実現を図ったり、新しい知識や技術を習得したり、自分自身を豊かにしたりすることができるという生涯学習の推進の面からも大きな意味を持つものと考えられる。
 また、子どもを持つ大人も持たない大人も地域社会の子育てに参画することにより、子育ての楽しさや充実感を味わうことができ、とりわけ、これから結婚し、子どもを産み育てることになる若い世代にとっては、非常に重要な体験になると言える。また、地域社会の子育てを通じて大人同士も交流することができることから、地域社会の連帯が強まるという効果も期待できる。例えば、高齢者等が、公民館等で行われている「子育てひろば」に参加して、同じ親を務めた先輩として、あるいは人生の先輩として若い親たちに子どもとの接し方、子育ての悩みや不安についてアドバイスしたり共に考えたりすることが期待され、それによって自らも生活に張りを感じるとともに、今の子どもと接する楽しさや充実感を味わうことができるのではないだろうか。男性が子育てを分担しないことが一般的であった世代の男性や子どもを持たない大人にとっては、地域の子どもたちを育てることを通じて、初めて子育てに参加する楽しさや喜びを体験することができる。同じ世代の女性にとっては、自分の子どもを育てたときには子育てを分担しなかった夫とともに子育ての楽しさや喜びを分かち合うことを体験することができる場合もあろう。
 また、こうした場に高齢者や子どものいない大人と若い親たちが集まることによって、地域社会で子どもを育てていくという雰囲気をつくることができる。例えば、高齢者と子どもたちが集まって語り合ったり、一緒に食事をしたりして過ごすだけでも地域の連携を深めるきっかけになるのではないか。
 なお、子育ての支援という場合、これまで働く母親に対する支援策に重点を置いて考えられてきたが、これに加えて孤立感を感じがちな子育て中の専業主婦(夫)に対する目配りも重要である。例えば、子育てをしながら自らが生涯学習や文化・スポーツ活動に親しめるよう、博物館、美術館、公民館、スポーツ施設などの公共施設や大学における託児サービスの提供を図ったりすることが重要である。
 また、生涯学習、ボランティア活動等に参加することにより、自分の生活を豊かにできるような環境を整備していくことが必要である。子どもに手が掛からなくなった成人が再就職しようとする場合に役立つような多様なレベル、内容の学習機会の拡充や情報提供のほか、大学等の公開講座における衛星通信やインターネットの活用など新しい情報通信技術を用いた学習機会の提供や放送大学・専修学校における再就職を支援するための学習機会の提供など出産や子どもに手が掛からなくなった女性の就職等を容易にするためのキャリア開発等を支援していくことが必要である。
 さらに、このような子どもの体験活動や子育て支援に関しては、参加や活動をしたい人がいつでも情報を得ることができるよう、地域において情報を提供する体制を整備する必要がある。

第4節 教育改革全体との関連

 急激な少子化の現状に直面している我が国の経済・社会の活力を維持し、国際社会に貢献できる科学技術創造立国、文化立国を目指していくためには、あらゆる社会システムの基盤である教育の役割が極めて重要であり、幅広い教育改革の推進が必要である。
 少子化という状況の中で、これまで述べてきたように、一人一人の個性、能力・適性、興味・関心に応じた教育の必要性を更に高めるとともに、種々の工夫によっては、こうした教育を実現するための環境整備に活用できる可能性もある。そのため、少子化に連動して機械的に人的・物的資源を減らすのではなく、一人一人の個人の能力・適性、興味・関心等に目配りし、これを伸ばすような教育の実現が求められている。また、今の子どもたちは、かつてと比べて遊び心、センスの良さ、異文化を受け入れる柔軟さ、国際性などの面で優れているという指摘がある。こうした今の子どもたちの良い面も積極的に評価し、更に良いところを伸ばすためにも、個人の能力・適性、興味・関心等に応じた教育を実現することが重要である。
 少子化は、豊かさがもたらした一つの帰結と見ることができるのであれば、豊かさが少子化とともに何をもたらしているかについて考えることも重要である。物質的な豊かさが実現し、生活水準を向上させるために努力するといった考え方が薄らいでいる中で、努力や勤勉、忍耐や規律といったものが従来のような形では培われにくくなることは避けられない。こうした状況の下では、学校教育や学校外の様々な場を活用して、スポーツや野外活動、ボランティア活動、国際交流活動などを通じてこうした価値を獲得する機会を用意することが極めて重要になる。
 また、現在文部省が進めている教育改革においては、知識重視の詰め込み型の教育から「自ら学び、自ら考える力」や豊かな人間性をはぐくむ教育へ転換しつつあるところである。
 さらに、文部省においては、これまで過度の受験競争を緩和するための取組を行ってきたが、18歳人口の減少等により、総体として受験競争は緩和されつつあるものの、一部特定大学等をめぐる競争は依然として解消されておらず、受験競争の低年齢化も指摘されている。こうした受験競争の低年齢化が、一部の親たちにとって経済的、心理的に大きな負担となっているという指摘もある。このため、学歴偏重意識を是正し、我が国の教育が生涯学習体系へ移行するよう一層教育改革を進めていく必要がある。
 このような教育改革の方向性は、少子化の下で減少する様々な体験を政策的に補っていくという少子化への教育面の対応の基本とも合致するものである。
 このため、例えば、ティーム・ティーチング等により教科に応じた少人数指導など多様な指導形態・指導方法を可能とする環境整備を進めたり、外国語運用能力、コンピュータ・リテラシーなど国際化・情報化する社会で今後不可欠とされる能力の育成のための条件整備を行ったり、創造的、独創的な個性・能力を持つ子どもがその個性・能力を十分に伸長することができるような柔軟な教育システムを構築したりするなど、一人一人の個性・能力、興味・関心等に応じた教育を推進する必要がある。また、子どもたちが伸び伸びと育つ環境を実現するため、いじめ、不登校、いわゆる「学級崩壊」などの問題に適切に対応することも必要である。
 さらに、山岳、海浜、河川等を含め今まで以上に多くの青少年がスポーツや野外活動、文化活動に親しむことができるような環境を整備したり、ボランティア活動を通じての異世代の触れ合いを促進したりするなど、豊かな人間性をはぐくむための体験活動等を充実する必要がある。
 子どもたちが安心して学べる環境づくりを図ることも重要であり、そのためには、家庭、地域と一体になった学校の安全管理を徹底する必要がある。
 さらに、各学校がそれぞれの教育理念や特色を明らかにした上で、それに応じた多様な入学者選抜や受験生の能力・適性等の多面的な評価を行うことにより、生徒一人一人の進路選択の実現や次の学校段階への円滑な移行を図ることが求められる。また、親の安易な安全志向や有名校への進学志向などによる受験競争の低年齢化も指摘されていることを踏まえ、学歴偏重意識の是正も含めて、親がそれぞれの確固とした子育て観や子育て方針を持つことができるよう幅広い取組を進めることが望まれる。例えば、一部の大学・学部の附属幼稚園・小学校については、これらが一般的な学校教育に加え、学部等の研究に協力し、学生の教育実習を実施する場でもあるという目的や性格を有することを親に対して改めて周知徹底を図ったり、それぞれの実情に応じて入学者の決定方法の在り方を検討したりするなど、受験競争の低年齢化を助長しないような取組が望まれる。
 なお、こうした方向により教育改革が進めば、教育に対する不安感が軽減され、間接的に出生率の回復にも寄与するものと考えられる。

第5節 教育に伴う経済的負担の軽減

 第1章で述べたように、夫婦が理想の数の子どもを持たない理由としては、経済的な理由が多く挙げられており、特に、教育に伴う経済的負担を挙げる者も多い。これまでも特定扶養親族(16歳以上23歳未満の扶養親族)に係る扶養控除額の割増措置、幼稚園就園奨励費補助などの施策が講じられてきており、こうした施策が少子化の解消につながっていくことが期待される。
 教育の経済的な負担の中には、「子どもの教育は学校だけでは間に合わない」という意識のもとに、塾やおけいこごとなど学校以外の教育費が含まれていることが多い。このため、地域においてスポーツや野外活動、文化活動に気軽に親しむことができるよう、様々なメニューを用意することが重要である。こうした活動においては音楽家、武道家、スポーツクラブなど地域の専門家・団体と提携し、こういったものが学校外で利用しやすいような体制を整えることにより地域ぐるみの子育てにもつなげていくことができる。
 一方で、特に高等教育段階での教育に伴う経済的負担に関しては、一定の年齢に達した子どもが経済的にも自立し、応分の負担をすることの必要性を訴えていく必要がある。また、そのためには、子どもが自ら高等教育の費用を負担するための条件を整備するため、能力と意欲を持つ者に対してその経済的必要度に応じ、奨学金の支給を可能にすることが必要である。日本育英会の奨学金については、学生が自立し、安心して学べるようにするため、有利子奨学金について抜本的に拡充するなど、奨学金の充実が図られている。

第5章 教育面以外からの方策

 中央教育審議会では、これまで、子どもたちが健やかに成長していく上で、学校・家庭・地域社会だけでなく、社会を構成する企業等に対しても、子どもの育成に積極的に協力することを要請してきた。少子化への対応や少子化の下でより良い教育を実現するためには、子育てと仕事との両立のための雇用環境の整備など教育面以外での分野における対応も必要となる。少子化対策推進基本方針では、少子化への対応について、今後の施策の適切かつ効果的な推進を図るため、政府が中長期的に進めるべき総合的な少子化対策の指針が定められている。
 中央教育審議会としては、教育面以外の分野については、政府が少子化対策推進基本方針に沿った取組を進めること、その際、文部省が教育面以外の分野の施策の推進に関しても教育的視点から関係方面に働き掛けを行うことを期待する。
 また、文部省ではこれまでも「子ども霞が関見学デー」を実施するなど子どもが親の職場を見て、親の仕事の様子を知ることによって親子の交流を深めるとともに、「職場のおじさん、おばさん」から見ても「我が職場の仲間の子ども」と触れ合う機会を作ってきた。職場も社会の一部であり、こうしたことを通して、社会(職場)の大人が社会の子どもを見守り育てるという空気を醸成してきた。この積重ねの上に立って、単に働く親の便宜を図るというためでなく、社会の中で子どもを受け入れる環境を作るという意味で託児所の設置を検討するなど、子育てと仕事との両立のための雇用環境の整備等を積極的に推進しようとしている。このことは、少子化時代の教育を担当する官庁として当然のこととも言えるが、世の官庁・企業に、こうしたことを訴えかける効果を招くとも考えられ、中央教育審議会としてもこうした取組に期待したい。

(固定的な性別役割分業や職場優先の企業風土の是正)

 これから結婚・出産・子育てに臨もうとする若い男女が家庭や子育てに夢を持ち、また、子育ての喜びと働く喜びを同時に得ることができる社会を築くためには、男女共同参画に係る広報・啓発活動を推進することなど、固定的な性別役割分業の是正を図るとともに、弾力的な労働時間制、在宅勤務等多様かつ柔軟な働き方ができるような取組を行うファミリー・フレンドリー企業の概念を普及・定着するなど、職場優先の企業風土の是正を図ることが必要である。

(子育てと仕事との両立のための雇用環境の整備)

 我が国の労働供給力が数年後には減少に向かうことが見込まれる中で、男女共同参画の視点等も踏まえれば、少子化への対応としては、女性の就業を前提とした上で、男女とも家庭と仕事との両立を容易にできるような雇用環境を整備することが重要である。このため、育児休業が取りやすく、職場復帰がしやすい環境の整備、労働時間の短縮等の推進、福利厚生の一環として一時的に子どもを預けることができる事業所内託児所の設置、出前講座等家庭教育の支援に積極的な企業の表彰等による奨励など、子育てと仕事との両立を支援する施策を推進する必要がある。

(安心して子どもを産み、ゆとりをもって健やかに育てるための家庭や地域の環境づくり)

 若い世代が安心して子どもを産み、ゆとりをもって健やかに育てていくことができるようにするためには、子育て家庭を社会全体で支援していく観点から、家庭や地域の機能を支えるための仕組みを構築していくことが重要である。このため、地域子育て支援センターや児童家庭支援センターの整備をはじめとした各種の施策について、特に子育ての負担感が大きい低年齢児を中心として、総合的に推進することが望まれる。

(利用者の多様な需要に対応した保育サービスの整備)

 核家族化やライフスタイルの多様化等に伴う様々な保育サービス需要に適切に対応し、仕事をはじめとする社会活動と子育てとの両立を可能としていくことは、重要な課題である。このため、低年齢児を中心とする保育所受入枠の整備をはじめとした保育サービスの充実、多様かつ柔軟なサービス提供を推進することが望まれる。

(子育てを支援する住宅の普及など生活環境の整備)

 子育て世代がゆとりを持って安心して暮らせる住宅の整備やまちづくり等の推進は、子育てに夢を持てる社会を構築するための重要な課題である。このため、住宅、交通施設・機関、公共施設など、子どもや家庭を取り巻く生活環境全般について、良質な住宅や居住環境の整備、安全性の確保、子連れ外出等をしやすくする歩行環境等のバリアフリー化の推進など、歩いて暮らせる街づくりをはじめ、21世紀の本格的な少子高齢社会にふさわしいゆとりある生活環境の実現を目指すことが望まれる。

お問合せ先

生涯学習政策局政策課

-- 登録:平成21年以前 --