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初等中等教育と高等教育との接続の改善について (答申) 要旨

平成11年12月1日
中央教育審議会

第1章 検討の視点

 戦後の単線型の教育制度の下に、高等学校は国民皆教育機関とも言うべきものとなり、高等教育への進学率も大幅に上昇した。一方でそれに伴い受験競争の激化や「学(校)歴偏重」社会の問題なども生じた。

 今後、高等学校の多様化が進むとともに、大学進学率の一層の上昇が見込まれる中、これまで以上に多様な能力、履修歴等を有する学生が大学に進学してくることが予想される。このような状況を踏まえ、初等中等教育と高等教育との接続の改善を図るのが本答申の目的。
 その際の検討の視点は次のとおり。

(1)「自ら学び、自ら考える力」と「課題探求能力」の育成を軸にした教育
(2)後期中等教育段階における多様性と高等教育段階における多様性との「接続」
(3)大学と学生のより良い相互選択を目指して
(4)主体的な進路選択

第2章 初等中等教育の役割

(1)初等中等教育の役割

 初等中等教育では、基礎・基本を習得した上で、その後の学習や職業・社会生活の基盤を形成し、「自ら学び、自ら考える力」などの「生きる力」を育成する。

(2)学力の現状

 我が国の小・中学校段階の児童・生徒の学力の現状は、全体としてはおおむね良好であると考えられるが、一般的には、進学率の上昇に伴い大学進学者の平均的学力の低下といった状況が今後進むことが予想されるため、初等中等教育の改善、高等学校と大学との接続の改善、大学教育の改善を通じて対応していくことが必要。

(3)各学校段階ごとの到達度評価

 各学校段階において、児童・生徒が当該学校段階の教育目標を達成しているかどうかを修了時等に評価することは、各学校が教育上の責務として適切に行うべき。
 各学校における評価の参考とできるような評価基準や評価方法について国立教育研究所等において研究、開発を行うことが必要。

(4)高等学校入学における能力・適性等の判定

 高等学校の入学者選抜は、飽くまで設置者及び学校の責任と判断で行うものであり、各高等学校、学科等の特色に配慮しつつ、その教育を受けるに足る能力・適性等を判定して行うものであるという趣旨が更に徹底され、後期中等教育機関への進学希望者を盲・聾・養護学校高等部も含めた後期中等教育機関全体で受け入れられるよう適切な受験機会の提供や条件整備に努めることが必要。

第3章 高等教育の役割

(1)高等教育の役割

 学部段階においては、初等中等教育における「自ら学び、自ら考える力」の育成を基礎に豊かな教養と高い倫理観をはぐくみ、「主体的に変化に対応し、自ら将来の課題を探求し、その課題に対して幅広い視野から柔軟かつ総合的な判断を下すことのできる力」(課題探求能力)の育成を重視するとともに、専門的素養のある人材として活躍できる基礎的能力等を培う。

 専門性の向上は大学院で行うことを基本とし、大学院段階においては、研究者養成に加え、高度専門職業人の養成をも重視する。

(2)大学入学における能力・適性等の判定

 社会の要請にこたえる人材の養成などの観点から、大学においては、大学教育に必要とされる能力・適性を入学者に対して求めることが必要。

第4章 初等中等教育と高等教育との接続の改善のための連携の在り方

(1)

入学者選抜だけではなく、カリキュラムや教育方法などを含め、全体の接続を考えていくべきであり、高等学校と大学の両者がいかにして、それぞれの責任を果たしていくかという観点から、両者の教育上の連携を拡大することが必要。

(2)具体的な教育上の連携方策

1 高等教育を受けるのに十分な能力と意欲を有する高等学校の生徒が大学レベルの教育を履修する機会の拡大方策

 科目等履修生の活用等大学レベルの教育を生徒が履修する機会を積極的に拡大。

2 大学がその求める学生像や教育内容等の情報を的確に周知するための方策

 大学入学者受入方針(アドミッション・ポリシー)をはじめ、教育の理念と目標、教育指導体制、成績評価の方法、就職・進学状況などについて積極的に情報を公開。マルチメディアやインターネットも積極的に活用。

(3)高等学校における生徒の能力・適性・意欲・関心等に応じた進路指導や学習指導の充実

 高等学校においては、将来の進路や職業選択を見通した進路指導や学習指導を実施。それぞれの生徒が進路に応じた科目を履修するための適切なガイダンス等も必要。また、大学の教員や企業の協力を得て、高等教育の具体的な内容や、将来の職業選択との関係、企業の在り方や職業生活について、実際的・体験的な情報を提供してもらったり、体験入学や就業体験の機会の拡充を図る。

(4)入学者の履修歴等の多様化に対応して大学教育への円滑な導入を図る工夫

 大学においては、指導教官制(チューター)の導入、学習ガイダンスの充実、インターネットを利用した履修相談の実施など、入学してくる学生の履修歴等の多様化が一層進むことに対応した様々な工夫を図ることが必要。

(5)高等学校関係者と大学関係者の相互理解の促進

 都道府県単位で高等学校関係者と高等教育関係者が一堂に会し、情報交換し理解を深める「連携協議会」等の開催を推進。

 大学の教員が高等学校において、学問の紹介や講義を行うことや、逆に、高等学校等の教員が大学での補習授業に協力することなどの試みを一層推進。

第5章 初等中等教育と高等教育との接続を重視した入学者選抜の改善

(1)入学者選抜の現状と改善の方向

 既に大学受験は「過度の競争」ではなくなっており、さらに、全体として見れば大学進学希望者がいずれかの大学に入学できるようになる状況が到来することが予想される中で、入学者選抜の改善で目指すのは、単に誰もが希望する大学に入れるようにすることではなく、大学と学生とのより良い相互選択を図り、学生の大学教育への円滑な移行を実現することにある。

(2)これからの選抜の在り方

1 大学と学生とのより良い相互選択を目指して

 今後は、大学側のそれぞれの教育理念等にふさわしい能力・資質を持った学生(求める学生)を見いだそうとする取組と、学生側の自らの能力・適性等に基づく主体的な大学選択という相互の選択をいかに適切に組み合わせるかが重要。
 高等学校での教育、大学入学者選抜、大学入学後の教育の在り方を一貫したものとしてとらえる中で、入学者選抜の在り方も各大学の役割、教育理念、目標の多様化に応じて多様なものとなるべきである。

2 入学者受入方針(アドミッション・ポリシー)の明示

 それぞれの大学(学部・学科)の教育理念、目的、特色等に応じて受験生に求める能力、適性等についての考え方をまとめた入学者受入方針(アドミッション・ポリシー)を大学が確立し、対外的に明示するとともに、選抜方法や出題内容等に反映させることが重要。その上で、受験生は大学(学部・学科)の教育理念、特色等に応じ選択を行うことが必要。

3 「公平」の概念の多元化

 各大学がそれぞれの教育理念等にふさわしい学生を見出すための選抜を行うためには、何が公平かについて、多元的な尺度を取り入れることが必要。例えば、学力検査のみの選抜の実施、それ以外の多様な方法による選抜の実施など様々な選抜を行うことを許容することが必要。

4 受験教科・科目数の考え方

 「学校生活における[ゆとり]を確保するためには、学力試験における受験教科・科目数をできるだけ少なくしていくべきである」との方針については、当然必要な学習負担の軽減までを求めるものではなく、受験教科・科目数の削減を一律に求めているものではない。どのような科目を課すか、何科目課すかは、各大学がそれぞれの教育理念等に照らして自主的に設定すべき。

(3)入学者選抜そのものの具体的な改善方策

1 各大学が多様な進学希望者の能力・適性等を適切に評価するための選抜方法の開発

 受験生を多面的かつ丁寧に見るためのきめ細かな選抜方法とされているアドミッション・オフィス入試の在り方(目的、特色等)や発展・定着させるための条件等について検討することが必要。
 また、評価尺度の多元化に対応した評価方法の研究を進めることが必要。

2 丁寧な入学者選抜を行うための体制の整備等

 入学者選抜等についての高い専門性を有するスタッフを備えたアドミッション・オフィスの設置等、丁寧な入学者選抜を行うための体制を整えることが必要。

3 適切な出題

 学習指導要領のねらいに沿った適切な出題を行うためにも、高等学校関係者の参画を拡大。また、良質な問題を出題するという観点から、適切な問題であれば、再利用できるようにすることも必要。

4 高等学校での学習成果を多面的に評価する入学者選抜

 高等学校における調査書、詳細な推薦書、学習活動、文化・スポーツ活動の記録等を活用するなど、高等学校での学習成果を多面的に評価。

5大学入試センター試験の改善

 各大学は、入学者受入方針に基づき、入学者選抜全体の中で、どのような能力を受験生に求めるのか、どのような選抜方法を行うかを十分に吟味した上で、大学入試センター試験と個別試験との組み合わせを考えていくことが必要。
 その際、素点による選抜だけでなく、大学入試センター試験の成績を概括的にまとめ、それぞれのグループに応じ異なった個別試験を実施するなど、いわば資格試験的な取扱いを含め、各大学の多様な利用方法が推進されることが必要。
 また、リスニングテストの実施に向けて高等学校との協力体制も含めて検討を行うことや、教科・科目横断型の総合的な問題等の在り方の研究を進めることが必要。

(4)入学者選抜の改善を促すための具体的方策

1 入学者選抜についての評価の実施

 各大学の選抜方法についての自己点検・評価の実施やその結果の公表の推進が必要。

2 入学者選抜についての情報の公開・提供

入学者選抜の在り方についての基本的な考え方、理念等を自主的に公表していくことが必要。

3 初等中等教育における進路指導の充実

 自分の能力、適性等を見極めさせ、自分の将来の進路に対し、明確な目的意識を持つようにすることが必要。

4 高等教育システムの柔構造化

 大学入学について社会人特別選抜や編入学制度など多様な道が開かれ、いつでも学習ができるシステムに転換することにより、受験者の入試に対する過剰な意識を弱め、適切な進路選択を実現。

5 意識の変革

 大学入学者選抜の改善に当たっては、生徒の進路選択や企業の採用等を取り巻く状況が変化していることなどについて国民に正確な理解を求めていくことが必要。

第6章 学校教育と職業生活との接続

(1)学校教育と職業生活の接続の改善のための具体的方策

 中等教育修了後の進路の選択肢が多様化するなかで、生徒が自己の個性を理解した上で、主体的に進路選択を行っていけるよう、キャリア教育を小学校段階から発達段階に応じて実施。また、インターンシップの促進等による体験的活動を重視。さらに、企業経営者によるキャリアアドバイザーの配置等によるガイダンス、カウンセリング機能を充実。

(2)企業等における採用の改善

 採用に当たっては学生に求める能力・知識・技術を具体的に示した上で、個人の能力・知識・技術や資質に加え、学生の属する大学(研究科、学部・学科)の教育目標、教育内容、教育方法の特色を考慮。その前提として大学は評価基準を明示した上で厳格な成績評価を実施。

(3)生涯学習の視点に立った高等教育

1 社会人の学習機会の拡充

 高等教育機関において、社会人を対象とする大学院の履修形態や修業年限等の弾力化や、高度な専門職業人の養成を目的とする専門大学院の整備充実などにより一層の社会人受入れ体制の拡充を図る。 

2 生涯学習の成果の活用

 ボランティア活動やインターンシップ等の学外の様々な学習成果を授業科目の中に位置付け単位認定を行うなど、各大学における一層の取組を推進。

お問合せ先

生涯学習政策局政策課

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