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初等中等教育と高等教育との接続の改善について

平成10年11月6日
文部大臣有馬朗人

 次の事項について、別紙理由を添えて諮問します。

初等中等教育と高等教育との接続の改善について

(理由)

 来るべき21世紀において、我が国が活力ある国家として発展し、科学技術創造立国、文化立国を目指していくためには、あらゆる社会システムの基盤となる教育の役割が重要であり、これまでにも各般にわたる教育改革を進めてきたところである。

 初等中等教育については、まず[ゆとり]の中で[生きる力]をはぐくむことを目指して、平成14年度からの実施に向けて教育課程の改訂を進めている。新しい教育課程においては、完全学校週五日制の下で、教育内容の厳選により基礎・基本の確実な定着を図り、個性を生かす教育を充実するとともに、豊かな人間性や自ら学び自ら考える力を育成することとしている。また、個性を伸ばし多様な選択ができる学校制度の実現を目指して、中高一貫教育制度の導入を行ったところである。

 また、高等教育については、教育研究の高度化、個性化、多様化を図るとの基本的な考え方の下に、大学改革が進められている。特に学部段階の教育の改善に関しては、各大学の創意工夫により教育の質的向上を図るために様々な取組が進められているところであり、今後は、社会の一層の高度化・複雑化、大学進学率の上昇、入学者の履修歴の多様化等を踏まえて、「課題探求能力」を育成する観点等からの教育内容の見直し、各大学の責任ある授業運営、厳格な成績評価等を推進することにより、学部教育の再構築を図ることとしている。

 一方、国民の幅広い大学への進学希望と少子化の進行等により、遠からず短期大学を含む大学への進学率は5割を超えることが予想されている。また、高等学校における教育は選択幅の拡大等により一層の多様化が進むことから、これまで以上に多様な能力、適性、履修歴等を有する学生が大学に進学してくることになる。このため、今後は、このような状況を踏まえて、高等学校及び大学それぞれの役割分担を明確にすることが必要であり、その上で、初等中等教育及び高等教育を見通した教育の在り方を考えることが重要となっている。

 両者を見通した教育の在り方を考えるに当たっては、まず高等学校と大学の接続の改善を図ることが必要である。これまで高等学校と大学との関係は、主として大学の入学者選抜を接点とするものであったが、今後はそれぞれの役割分担に基づき、両者を通じて教育を効果的に進めていくことが必要となっている。すなわち、各大学はその求める学生像を明らかにするとともに、高等学校は生徒の能力・適性等に応じて進路指導や学習指導を充実すること、また入学者選抜においては高等学校までの教育の成果を適切に評価して、各大学の個性に応じた入学者を確保すること、さらに高等学校までの教育の成果を大学において更に発展させることなど、両者の接続の改善を図ることが極めて重要になると考えられる。そして、このような両者の接続の改善を図ることは、現在進めている初等中等教育及び高等教育それぞれの改革をより一層推進するためにも不可欠であると考えられる。

 このため、初等中等教育と高等教育との接続の改善について、次のような事項を中心に検討する必要がある。

(1)高等学校及び大学の役割分担の明確化と両者の教育の連携について
(2)高等学校と大学との接続を重視した大学入学者選抜の改善について
(3)その他の関連する施策について

文部大臣諮問理由説明

平成10年11月6日

 本日は、御多忙のところ、御出席をいただきましてありがとうございます。第15期及び第16期の中央教育審議会におかれましては、「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」の第一次、第二次答申に引き続き、本年6月には「幼児期からの心の教育の在り方について」、また、9月には「今後の地方教育行政の在り方について」の答申を取りまとめていただきました。これらの答申は、いずれも今後の我が国の教育の基本的な在り方を示すものであり、文部省としては、これらの答申の趣旨を踏まえて各般の教育改革を推進しているところであります。

 初等中等教育については、第一次答申で示された[ゆとり]の中で[生きる力]をはぐくむという今後の教育の基本的な在り方を踏まえ、平成14年度からの実施を目指して、現在、教育課程の改訂を行っているところであります。新しい教育課程においては、完全学校週五日制の下で、教育内容を厳選して基礎・基本の確実な定着を図り、個性を生かす教育を充実するとともに、各学校の創意工夫を凝らした特色ある学校づくりによって、豊かな人間性や自ら学び自ら考える力の育成をより一層進めることとしております。特に、中学校における教育については選択教科の拡充等を図り、高等学校における教育については、必修教科・科目や卒業に必要な単位数を引き下げ、選択の幅を拡大するなど、これまで以上に個性を伸ばす教育を推進することとしております。また、第二次答申を受け、個性を伸ばし多様な選択ができる学校制度の実現を目指して、中高一貫教育制度の導入を行ったところであります。さらに、このような各学校における特色ある教育活動の展開を促進することなどを目指して、地方教育行政制度の見直しを進めることとしているところであり、今後の初等中等教育、特に高等学校における教育はこれまで以上に生徒の実態に応じた多様なものになると考えられます。

 また、高等教育については、これまでも大学審議会の答申を踏まえて、各大学の個性化、教育研究の高度化、組織運営の活性化等を進めてきたところですが、21世紀において大学が社会から求められる役割を十分に果たし、国際的にも評価されるようになるためには、大学の教育研究の質を飛躍的に向上させる必要があることから、去る10月、同審議会から「21世紀の大学像と今後の改革方策」について答申をいただきました。

 同答申は、「競争的な環境の中で個性が輝く大学」を目指して、教育研究の質の向上や、教育研究システムの柔構造化、組織運営体制の整備、多元的な評価システムの確立等を提言しております。特に、学部教育については、「課題探求能力の育成」を重視するとともに、専門的素養のある人材として活躍できる基礎的能力等を培うことを基本として、教育内容の再検討、責任ある授業運営、厳格な成績評価の実施などを推進して、学部教育の再構築を図るべきであるとしています。また、大学院については、その教育研究水準の質的向上を図るとともに、高度の専門的知識・能力を有する研究者や高度専門職業人の養成等の役割を重視していくべきであるとしています。今後、各大学においても、本答申を踏まえて様々な改革が図られ、大学の多様化・個性化がますます進んでいくものと考えております。

 一方、国民の大学への進学希望は依然として高く、短大を含む大学進学率は既に現行制度発足当時の高等学校への進学率を超えておりますが、今後は18歳人口の減少も進むことから進学率は更に上昇し、遠からず50%を超えると予想されております。また、高等学校への進学率はおおむね97%に達しておりその教育は多様なものとなっていますが、選択幅の拡大等により、教育の多様化が一層進むことになります。そして、大学にはこれまで以上に多様な能力、適性、履修歴等を有する学生が進学してくることになるものと考えられます。このため、今後は、大学は高校卒業者の半数以上が進学し、多様な学生が学ぶ教育機関であることを十分に認識して、高等学校及び大学の役割分担を明確にすることが必要であります。その上で、初等中等教育及び高等教育を見通した教育の在り方を考え、教育面での連携や大学入学者選抜の在り方等について見直しを行い、両者の円滑な接続を図ることが一層重要になるものと考えております。

 初等中等教育と高等教育との接続については、第14期の中央教育審議会以来、入学者選抜の在り方を中心とする審議をお願いしてきたところでありますが、以上のような観点から、先ほどお示ししたとおり、初等中等教育と高等教育との接続の改善について、改めて御審議をお願いする次第であります。

 次に、具体的な検討事項について御説明申し上げます。まず、高等学校及び大学の役割分担の明確化と両者の教育の連携についてであります。先ほど申し上げましたとおり、初等中等教育及び高等教育の改革が進展する中で、今後、高等学校及び大学の一層の多様化・個性化が進むと同時に、大学は高校卒業者の半数以上が進学する教育機関になることが見込まれております。したがって、両者の接続の改善を考えるに当たっては、まずこれらの変化を踏まえて、高等学校及び大学それぞれの役割分担を明確にすることが必要であります。その上で、両者の連携を進めることについて、例えば、大学教育を受けるのに十分な能力と意欲を有する高等学校の生徒が大学レベルの教育に触れる機会を更に拡大する方策や、各大学がその求める学生像や教育内容等の情報を周知するための方策、また、高等学校における生徒の能力・適性等に応じた進路指導や学習指導の在り方、さらには、入学者の履修歴等の多様化に対応して入学後に大学教育の基礎を教える工夫等について御検討いただきたいと考えております。

 次に、高等学校と大学との接続を重視した大学入学者選抜の改善についてであります。大学入学者選抜については、その在り方が高等学校における学習指導や生徒の学習態度に大きな影響を及ぼすばかりでなく、受験競争の過熱化は国民の幅広い関心事項となっております。このため第14期以降、本審議会において様々な御審議をいただき、過度の受験競争の緩和を図る観点から、選抜方法の多様化や評価尺度の多元化等の改善を行ってきたところであります。過度の受験競争の緩和を図ることは、完全学校週五日制を定着させるためにも重要であり、これらの取組は今後とも続けていく必要があると考えております。同時に、高等学校及び大学の多様化・個性化が進み、また高校卒業者の半数以上が大学に進学するようになることから、今後は高等学校と大学それぞれの役割分担を踏まえて、高等学校までの学習の成果を適切に評価し、大学における学習に接続していくことが一層重要になると考えております。このため、まず、各大学の個性に応じた入学者選抜を行う観点から、各大学が多様な進学希望者の能力・適性、高等学校までの学習の成果等を適切に評価するための選抜方法の開発や、丁寧な入学者選抜を行うための体制の整備等について御検討いただきたいと考えます。また、大学入試センター試験については、高等学校と大学との接続を重視した観点から、その在り方等を含めた改善策について、御検討をお願いします。なお、これらの検討を行うに際しては、諸外国の状況、例えば、入学者選抜と学生の大学間の流動性や授業料との関係等も考慮して御検討いただきたいと考えております。

 さらに、その他の関連する施策についてでありますが、大学及び高等学校の役割分担を明確にして接続の改善を図ることに伴い、小学校と中学校、中学校と高等学校の相互の接続の在り方についても検討が必要になると考えております。また、学校における望ましい職業観の育成や職業生活に結び付いた教育内容等、学校教育と職業生活との接続にかかわる課題についても、御検討をいただきたいと考えております。

 21世紀の初等中等教育と高等教育の改革の方向は、ほぼこれまでの各審議会の答申で示されたものと考えますが、これらの改革は両者の接続を円滑なものとすることで、より一層効果的な推進を図ることができると考えております。会長、副会長をはじめ、委員の皆様におかれては、引き続きの御審議となり、誠に恐れ入りますが、以上のような趣旨を御理解いただき、何とぞ、十分な御審議を賜りますようお願い申し上げます。

お問合せ先

生涯学習政策局政策課

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