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今後の地方教育行政の在り方について (中間報告)

平成10年4月1日
中央教育審議会

<目次>

第1章 今後の地方教育行政の在り方
 1 基本的考え方
 2 見直しの視点
 (1)教育行政における国、都道府県及び市町村の役割分担の在り方
 (2)教育委員会制度の在り方
 (3)学校の自主性・自律性の確立
 (4)地域コミュニティの育成と地域振興に教育委員会の果たすべき役割
 (5)学校以外の教育機関の運営の在り方

第2章 教育行政における国、都道府県及び市町村の役割分担の在り方について
 1 現行制度の概要
 2 国と都道府県、市町村との関係の見直し
 (1)国の果たすべき役割とその見直し
 (2)国の行う指導、助言、援助等の在り方の見直し
 3 都道府県と市町村との関係の見直し
 (1)都道府県の果たすべき役割の見直し
 (2)都道府県と市町村との関係の見直し
 (3)都道府県の行う指導、助言、援助等の在り方の見直し
 4 市町村の規模に応じた権限の委譲と都道府県の関与の縮減
 5 国、都道府県、市町村、学校等の間の情報網の整備

第3章 教育委員会制度の在り方について
 1 現行制度の概要
 2 地域住民の意向の把握・反映や連携協力体制の充実
 (1)基本的考え方
 (2)教育委員に係る見直し
 (3)教育委員会と地域住民との関係の在り方の見直し
 3 任命承認制度の廃止とそれに変わる教育長適材確保方策
 (1)任命承認制度の廃止と議会同意の導入等
 (2)市町村教育長の専任化
 (3)新任教育長に対する情報提供、研究協議の場の設定等
 4 市町村教育委員会の事務処理体制の充実
 (1)事務の広域化の促進や市町村教育委員会の規模の拡大
 (2)専門的職員の充実と地域の多様な人材の活用
 (3)小規模な市町村教育委員会における事務処理体制の在り方の見直し
 5 教育委員会と私立学校との関係
 (1)教育委員会と私立学校との連携
 (2)教育委員会の専門的機能の利用

第4章 学校の自主性・自立性の確立について
 1 現行制度の概要
 2 学校と教育委員会との関係の見直し
 (1)教育委員会の学校に対する指示・命令、指導・助言の見直し
 (2)学校管理規則の見直し等による許可・承認等の整理縮小
 (3)学校の自主的な取組を支援する観点からの教育委員会の機能の見直し
 (4)学校の予算・人事等に係る校長の権限の拡大
 (5)学校事務・業務等にかかる負担軽減
 3 学校の管理運営組織の在り方等
 (1)構内組織の在り方の見直し
 (2)校長・教頭への適材確保のための任用資格の見直し
 (3)教員以外の専門性を有する人材の活用
 (4)学校事務・業務の共同実施
 (5)関連する制度の見直し
 4 地域住民の意向の把握・反映などの連携協力体制の充実
 (1)学校の教育目標、教育計画の明確化と保護者や地域に対する説明、教育活動の自己評価等
 (2)学校の教育活動への地域の活力の導入・活用
 (3)学校が保護者や地域住民の意向を把握、反映するための仕組み

第5章 地域コミュニュティの育成と地域振興に教育委員会の果たすべき役割について
 1 現行制度の概要
 2 生涯学習を中核とした地域コミュニティの育成
 (1)生涯学習を中核としたまちづくりの取組の推進
 (2)地域の教育機能の向上
 (3)地域コミュニティの拠点としての学校・公民館の活用
 3 地域振興において教育委員会が果たすべき役割
 4 教育委員会と首長部局等関係機関との関係
 (1)教育委員会と首長部局等との連携の促進
 (2)教育委員会と大学等との連携の促進
 5 民間の団体・事業者等との連携
 (1)教育委員会と民間団体等との連携の促進
 (2)カルチャーセンター等民間教育事業者との連携の促進

第6章 学校以外の教育機関の運営の在り方について
 1 現行制度の概要
 2 住民の立場に立った弾力的な施設運営
 (1)弾力的な施設運営の推進
 (2)規制や基準の廃止、緩和
 3 施設運営への住民参加の促進、ボランティアの受入れ
 (1)施設運営への住民参加の促進
 (2)ボランティアの受入れの拡大
 4 学校その他の関係機関、民間の団体・事業者等との連携の推進
 (1)学校と連携協力した事業展開
 (2)関係機関や民間との連携の推進

第1章 今後の地方教育行政の在り方

1 基本的考え方

(1)昭和23年に発足した教育委員会制度を中核とする我が国の地方教育行政制度は、国、都道府県及び市町村の連携協力の下、教育の機会均等や教育水準の維持向上など地域における教育、文化、スポーツの振興に極めて大きな役割を果たしてきたところである。

(2)しかしながら、社会の変化や時代の進展を踏まえ、我が国の将来を支える人材を育成するという視点と同時に、一人一人の子どもの個性を尊重しつつ、生涯にわたりその能力を最大限発揮できるようにするという視点から教育改革の推進が求められる中で、それを支える教育行政制度についても個性重視、生涯学習社会への移行、社会の変化・進展への対応、自主性・主体性の重視などの理念を十分踏まえつつ、改革を図ることが必要となっている。

(3)すなわち、今後の我が国が豊かな成熟社会を実現するとともに、国際化、情報化、科学技術の発展等の社会の変化に的確に対応し、活力ある社会として発展していくため、教育改革を推進すること、特に、中央教育審議会第一次答申(平成8年7月)において提言しているように、「ゆとり」の中で子どもたちに豊かな人間性や自ら学び自ら考える力などの「生きる力」をはぐくむことを目指して子ども一人一人の個性を尊重した教育を展開することが求められている。このような要請に的確にこたえるためには、各地方公共団体や各学校において、地域の特色を生かし、創意工夫を凝らした様々な施策・取組を主体的に推進することが不可欠となっている。
 また、現在、心の教育の充実が大きな課題となり、教育における地域社会の役割や家庭教育の在り方が改めて問われている中で、学校・家庭・地域社会の連携を充実強化するとともに、地域に開かれた自主的・自律的な学校運営を進めることが求められているところである。
 さらに、現在地方公共団体において大きな政策課題となっている地域コミュニティの育成や地域振興に関して、生涯学習、学校教育、社会教育、文化、スポーツ等相互に関連する多様な施策を主体的かつ積極的に展開することが求められている。
 このような様々な課題に対応し、各地域において教育改革を実現するためには、教育委員会を中核とする地方教育行政制度の在り方について見直しを行うことが必要である。

(4)このため、1)教育行政における国、都道府県及び市町村の役割分担の在り方、2)教育委員会制度の在り方、3)学校の自主性・自律性の確立、4)地域コミュニティの育成と地域振興に教育委員会の果たすべき役割、5)学校以外の教育機関の運営の在り方など、地方教育行政制度各般にわたり見直しを行うことが必要である。なお、見直しに際しては、制度自体の見直しが必要な事項と制度運用の改善が必要な事項を整理しつつ検討することが必要である。

2 見直しの視点

(1)教育行政における国、都道府県及び市町村の役割分担の在り方

1)教育行政における国、都道府県及び市町村の役割分担の見直しを行うに当たっては、教育行政が、生涯学習、学校教育、社会教育、文化、スポーツ等の幅広い分野を対象としていることを踏まえ、21世紀を主体的に生きることができる国民の育成を目指すとともに、地域における施策の実施主体である地方公共団体が主体的な取組を行うことができるよう、教育改革を推進する観点及び地方分権を推進する観点の2つの観点から見直しを行うことが必要であると考える。
2)義務教育に係る行財政制度の見直しに当たっては、憲法に定められた国民の教育を受ける権利と義務を保障するため、国、都道府県及び市町村がそれぞれの役割を分担し、連携協力する必要があることを十分に考慮することが必要であると考える。
3)国と地方公共団体との関係のみならず、都道府県と市町村との関係についても見直しを行うことが必要であると考える。
4) 以上のことを踏まえつつ、国、都道府県及び市町村の役割分担の在り方について検討を行うこととする。

(2)教育委員会制度の在り方

1)現行の地方教育行政制度においては、教育委員会が中核的な役割を担っている。教育委員会は、教育行政の中立性や継続性を確保する観点から、首長から独立した合議制の機関として設置され、当該公共団体の設置する学校の管理運営に当たるとともに、生涯学習、社会教育、文化、スポーツ等の幅広い分野における事務の執行を行っている。このような教育委員会制度の下に教育の機会均等と教育水準の維持向上が図られるとともに、各地域における社会教育活動、芸術文化活動、スポーツ活動等が進展してきたところである。
2)教育行政においては、学校教育及び社会教育における中立性、継続性を確保するとともに、住民の自由な発想と多様な価値観を尊重しつつ、生涯学習や文化等の振興を図っていくことが必要である。このような観点から、今後とも、教育・学術・芸術文化・スポーツ・経済・福祉等の様々な分野について知識・経験を有する5人の教育委員がそれぞれの識見に基づきつつ、合議によって基本方針や重要事項を決定することとしている教育委員会制度を維持することが必要であると考える。
3)しかしながら、教育改革や教育行政分野における地方分権を推進する観点から、その担い手としての教育委員会の在り方について見直しを行うことが必要であると考える。
4) 教育委員会制度と学校の在り方は極めて密接な関係にあり、教育委員会制度の見直しに際しては、特色ある学校づくり、開かれた学校づくりなどこれからの学校の在り方を念頭に置きつつ見直しを進めることが必要であると考える。
5) 教育委員会が、地方公共団体の執行機関として、地方公共団体の大きな行政課題となっている地域コミュニティの育成や地域の振興に積極的に寄与していくためには、教育、文化、スポーツなど個々の分野の行政課題に対応することはもとより、民間の団体・事業者の多様な活動を視野に入れ、首長部局とも連携して総合的に施策を展開することが必要であると考える。
6) 以上のことを踏まえつつ、地域に密着し、地域の意向を踏まえた行政を積極的に展開する観点から、教育委員会制度の在り方について検討を行うこととする。 

(3)学校の自主性・自律性の確立

1)教育委員会は、学校の設置者である地方公共団体の執行機関として、その管理運営に関する責任を有している。また、学校は、法令に基づき資格を有する教員等によって教育活動を展開する専門的教育機関であり、その具体的、日常的な運営の責任は校長が負っているところである。
2) 生きる力をはぐくむ教育の推進が求められる中、このような仕組みを踏まえながら、学校が地域の教育機関として、地域住民や保護者の信頼を確保し、地域や学校、子どもの実態に応じて創意工夫を凝らした学校づくりに取り組むことができるよう、所要の見直しを図ることが必要であると考える。
3)以上のことを踏まえつつ、教育委員会や校長の学校運営に関する権限と責任の明確化を図る観点、地域住民の意向の把握・反映、地域・家庭との連携協力の観点から、学校の自主性・自律性の確立について検討を行うこととする。

(4)地域コミュニティの育成と地域振興に教育委員会の果たすべき役割

1)都市化・過疎化の進行、核家族化の進展など地域社会を取り巻く状況の変化の中で、地域コミュニティの育成を図るとともに、活力に満ちた地域づくり・地域振興を進めることが地方公共団体における重要な政策課題となっている。
2)学校教育を通じて地域の人材養成を担い、また、生涯学習、文化、スポーツの振興など地域づくりに密接に関係する行政分野を所管している教育委員会は、地域コミュニティの育成、地域振興という観点から施策を見直し、これを積極的に推進していくという姿勢を持つことが求められている。
3)現在、家庭や地域の教育力の向上が大きな課題となっている中で、教育委員会は、家庭や地域全体で子どもを育てるための基盤となる地域コミュニティの育成、家庭教育への支援等を図るとともに、学校を開かれたものとして、地域の教育機関として整備を進めていくことが求められている。
4) 以上のことを踏まえつつ、教育委員会が地域コミュニティの育成や地域振興に積極的に寄与することができるよう、生涯学習を核とした取組の推進、教育委員会と首長部局等との関係の在り方、民間の団体・事業者等との連携の推進方策について検討を行うこととする。

(5)学校以外の教育機関の運営の在り方

1)公民館、図書館等の社会教育施設、体育・スポーツ施設、文化施設などの学校以外の教育機関は、住民の自主的な活動を奨励、援助するという視点から、学校以上に弾力的かつ柔軟な施設の運営を行っていくことが求められている。
2) これらの施設を管理運営する教育委員会は、地域の特性や地域住民の意向を的確に反映した施設の運営を行っていくことが必要である。
3)以上のことを踏まえつつ、住民の立場に立った弾力的な施設運営の推進、施設運営への住民参加の促進、他部局の機関、民間事業者等との連携方策の推進について検討を行うこととする。

第2章 教育行政における国、都道府県及び市町村の役割分担の在り方について

1 現行制度の概要

(1)教育に関する事務は、戦前は国の事務とされ、国の指揮監督の下で道府県及び市町村において具体的な執行がなされていたが、戦後の改革により地方公共団体が地方自治の本旨に基づき地域における教育行政を担うこととなった。すなわち、地域における教育、文化、スポーツ等については、地方公共団体が地域における施策の実施主体となり、国は制度の枠組みの制定や各種基準の設定等を行うことにより、全国的な教育水準の維持向上を図る役割を担っている。教育行政においては、このような基本的な役割分担の下で、国と都道府県・市町村が連携協力しながら教育の機会均等とその水準の維持向上を図っているところである。

(2)例えば、市町村が実施主体となっている義務教育については、都道府県は市町村立小・中学校の教職員の給与を負担する(県費負担教職員制度)とともに、都道府県教育委員会等が当該県費負担教職員の任命権を行使し、国は県費負担教職員の給与の2分の1を国庫負担するとともに、教育課程の大綱的基準などを定めている。また、地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下「地教行法」という。)第48条第1項の規定により、教育事務の適正な処理を図るため、文部大臣は都道府県・市町村に対して、都道府県教育委員会は市町村に対して「必要な指導、助言又は援助を行うものとする」とされている。

2 国と都道府県、市町村との関係の見直し

(1)国の果たすべき役割とその見直し

1)現在国が果たしている役割
 現在教育行政において国が担っている事務を整理するとおおむね以下の4項目に大別できる。

(a)基本的な枠組みの制定(学校教育法による学校教育制度の制定、生涯学習振興法による生涯学習推進体制の整備など)
(b)全国的な基準の設定等(高等学校や幼稚園など各種の設置基準の設定、教育課程の基準の設定、教員免許の基準の設定など)
(c)地方公共団体における条件整備のための支援(市町村立小・中学校の教職員給与の国庫負担、私学助成など)
(d)事業の適正な実施のための支援措置等(指導・助言・援助、都道府県等の教育長の任命承認、教職員の研修の実施・支援など)

2)今後とも国が果たすべき役割
 今後国が重点的に果たすべき役割に関しては、地方分権推進委員会第一次勧告(平成8年12月)において、(ア)国際社会における国家としての存立にかかわる事務、(イ)全国的に統一して定めることが望ましい国民の諸活動又は地方自治に関する基本的な準則に関する事務、(ウ)全国的規模・視点で行われなければならない施策及び事業の3つが示されている。
 教育行政において現在国が担っている事務のうち、(a)の基本的な枠組みの制定及び(b)の全国的な基準の設定等については、(イ)の全国的に統一して定めることが望ましい基本的な準則に関する事務に該当する。また、(c)の地方公共団体における条件整備のための支援及び(d)の事業の適正な実施のために必要な支援措置等については、(ウ)の全国的規模・視点で行われなければならない施策及び事業に該当するものである。これらの事務は、いずれについても、基本的には今後とも国において担うべきものであり、以下のような措置により、このことを明確にする必要がある。

○学校の設置基準、教育課程の基準、就学義務の猶予・免除に係る規定、校長の資格に係る規定など全国的に統一して定めることが望ましい基準の設定に関する事務の監督庁を「当分の間」文部大臣と規定している学校教育法第106条を、国の役割を明らかにする観点から見直すこと。

3)国の行う事務・事業の見直し
 今後とも国が担うべき役割を踏まえた上で、地方分権を推進し、より地域に根ざした地方教育行政を展開する観点から、上記1)(a)から(d)までに該当する国の具体的な事務やその内容について見直すことが必要である。
 すなわち、(b)の全国的な基準の設定等については、国が設定する基準・規制等の具体的内容について見直し、また、(d)の事業の適正な実施のために必要な支援措置等についても、その内容を見直すことが必要である。このような観点とともに、国の事務等の簡素・効率化を図る観点も踏まえ、以下のような取組が必要である。

〇教育課程の具体的な基準の設定に当たっては、地方や学校の裁量の幅を大きくして創意工夫を生かした教育課程を編成する観点から、基準の大綱化・弾力化を進めること。

○教育課程の基準以外の全国的な基準・規制等については、それぞれの基準・規制等の性格、目的に応じて、その見直しを行うこと。

○学校教育法第106条の規定に基づくものを含め、監督庁による定めの具体的内容について、地域における主体的な取組を推進する観点から、省令等の見直しを行うこと。

○地方教育行政の主体的役割を重視し、国はそれを支援するという観点から、国の教育課程に関する指導行政は、教育課程の基準の実施状況の調査分析を踏まえ、必要に応じて指導・助言等を行うような手法に重点を移し、文部省の業務を基本的なものに精選すること。これに伴い、行政改革の観点にも十分配慮しつつ、教育委員会等からの求めに応じ、教科内容や教育方法などについて、より専門的立場から効果的な助言や支援を行うカリキュラムに関するナショナルセンターの設置について検討すること。同センターの具体的な機能としては、各学校における様々な取組や実践事例等を調査・分析することにより、学校教育に対する新たな社会的要請や学校教育を取り巻く環境の変化等に対応したカリキュラムの在り方について専門的立場から恒常的に検討を行うとともに、教育課程審議会に実証的な調査資料を提出して施策に随時反映させることが考えられる。

○また、いじめや校内暴力、登校拒否などの生徒指導行政に係る業務についても、同様の観点から、文部省の業務を基本的なものに精選すること。これに伴い、行政改革の観点にも十分配慮しつつ、生徒指導に関してより専門的立場から効果的な助言や支援を行う生徒指導研究に関するセンターの設置について検討すること。同センターの具体的な機能としては、児童生徒の問題行動等に関する様々な情報や各学校、教育委員会、地域における取組について調査分析することにより生徒指導に関する専門的・実践的な検討を不断に行い、施策に反映させることが考えられる。

〇国による指導資料の作成については、いじめ問題への対応や道徳教育、情報教育、環境教育等国としての取組が不可欠なものなど真に必要なものに限定すること。また、国による研究指定校については、国としての取組が不可欠なものなど真に必要なものに限定し、指定する学校数の削減を図るとともに、指定した学校における研究の一層の充実を図り、その成果については上記のセンター等を通じて積極的な活用を図ること。

〇学校の設置者として都道府県等が教育内容に関する研究開発を行うに際して、全国的な教育課程の基準の改善に資すると国が認める場合には、当該基準によることなく、都道府県等が研究課題を定めるなど主体的に実施することができるようにすること。

○教職員に対して国が直接行う研修業務についても、地方教育行政の主体的役割を重視し、国はそれを支援するという観点から、基本的なものに精選すること。

〇国の行う調査統計は重複を避け、真に必要なものに精選すること。

(2)国の行う指導、助言、援助等の在り方の見直し

1)指導、助言、援助の趣旨
 地教行法第48条の規定に基づき、国は都道府県に対して指導、助言、援助を行うものとするとされているが、これは戦後の地方教育行政制度が地方自治の一環として行われることを踏まえたものである。すなわち、戦前は国の事務として指揮監督を中心に行われていた教育行政は、戦後地方公共団体が主体となって執行されることとなったが、各地方で行われる教育は全体として国の教育を構成することから、教育の機会均等、教育水準の維持向上を図るため、地方自治の本旨を踏まえつつ、法的拘束力のない指導等を通して都道府県における教育事務の適正な処理を確保しようとしたものである。

2)指導等についての受け止め方や意識
 国の行う指導等は、その相手方である地方公共団体の判断を法律上拘束するものではないが、教育水準の維持向上を図ることや全国的に学校の管理運営の適正を確保するとの観点からその運用が強めに行われてきたことから、あたかも法的拘束力があるかのような受け止め方がなされてきた。また、国の指導等に従っていた方が不都合が少ないなどの意識も見受けられ、これらがあいまって、特段の判断を加えられることなく指導等がそのまま受け入れられてきた面があることも否定できない。

3)指導等に係る法律上の規定の見直し
 教育行政がその対象としている生涯学習、学校教育、社会教育、文化、スポーツ等の振興を図るためには、指揮監督による権力的な作用よりは、非権力的な作用によって自主的・主体的活動を促進する必要がある。このため教育行政においては、このような性格の指導等により事業の適切な実施を確保することが今後とも必要であるが、都道府県及び市町村の自主性・主体性をより一層尊重する観点から、2.でふれたような指導等についての関係者の意識を変革するとともに、「文部大臣は都道府県又は市町村に対し、・・・必要な指導、助言又は援助を行うものとする」としている地教行法第48条の規定を見直すことが必要である。

4)指導等の在り方の見直し
(a) 指導等に関しては、法律上の規定の見直しのほか、都道府県に対する法令の解釈や国の制度・施策の趣旨の伝達が、その本来の役割を超えて、都道府県及び市町村等の判断を過度に制約することのないようにするとともに、国やその機関による実証的な研究の成果の提供やデータベースの作成などによる情報の提供等の役割を重視していくことが必要である。
 なおこれに関連して、都道府県ごとの状況に応じた施策を推進する観点から、国立教員養成大学・学部との連携協力の充実について検討を行うことが必要である。
(b) また、地方分権推進委員会第二次勧告(平成9年7月)において、国と地方公共団体との関係が地方自治の本旨を基本とする対等・協力の関係に立つことを踏まえ、助言等については、地方公共団体の求めがあった場合には、その趣旨及び内容を記載した書面を交付することなど行政運営における公正の確保と透明性の向上を図る観点からの見直しが打ち出されているところである。国の行う指導等に関しては、このようなことも踏まえた対応が必要となるとともに、国、地方公共団体の関係職員間で2.でふれたような意識の改革を徹底することが必要である。

5)措置要求に係る法律上の規定の見直し
 地方公共団体における教育に関する事務の管理・執行について、法令の規定に違反している場合や著しく適正を欠き教育本来の目的達成を阻害している場合には、国は地方公共団体に対して是正又は改善のための措置を要求できることとされている。
 指導、助言、援助の規定の見直しに併せて、このような措置要求制度に関して規定している地教行法第52条について、主体的な地方教育行政を展開する観点から、国全体の動向も踏まえ、その要件・手続き等の見直しが必要である。

3 都道府県と市町村との関係の見直し

(1)都道府県の果たすべき役割の見直し

1)現在都道府県が果たしている役割
 現在都道府県の果たしている役割を整理するとおおむね以下の3項目に大別できる。
(a)県域にわたる基準の設定(市町村立学校に係る組織編制、教育課程・教材の取り扱い等に関する基準など)、
(b)広域的な処理が必要な事業の実施及び施設等機関の管理等(高等学校等の設置管理、公立高等学校の通学区域の設定、市町村立義務教育諸学校等の教職員給与等の負担など)、
(c)市町村における事業の実施及び施設等機関の適正な管理運営のための支援措置等(指導・助言・援助、市町村の教育長の任命承認、市町村立学校への指導主事の派遣など)

2)今後とも都道府県が果たすべき役割
 地方分権推進委員会第二次勧告等を受け、今後、都道府県の役割に関して「義務教育等の水準の維持で・・・・統一的な処理を必要とする事務」を都道府県の事務とする地方自治法の規定が見直され、都道府県の担う役割は(ア)広域にわたるものの処理、(イ)一般の市町村を超える規模及び能力が必要とされるものの処理、(ウ)市町村に関する連絡調整に関するものの処理の3つに再編成される予定である。
 教育行政において現在都道府県が担っている事務のうち、(b)の広域的な処理が必要な事業の実施及び施設等機関の管理等については(ア)の広域にわたるものの処理及び(イ)の一般の市町村を超える規模及び能力が必要とされるものの処理に該当する。また、(c)の市町村における事業の実施及び施設等機関の適正な管理運営のための支援措置等については、(イ)の一般の市町村を超える規模及び能力が必要とされるものの処理及び(ウ)の市町村に関する連絡調整に関するものの処理に関する事務に該当し、基本的には今後とも都道府県において担うべき事務に当たるものと考える。

3)都道府県の役割の再構成に伴う法令の見直し
(a)の県域にわたる基準の設定の事務については、(ア)(イ)(ウ)のいずれにも直接該当しないことから、その見直しが必要である。このため、現在都道府県教育委員会が県内の教育水準の維持向上を図る観点から市町村立学校の組織編制等に関する基準を設定できるとしている地教行法第49条の規定の見直しを行う必要がある。

(2)都道府県と市町村との関係の見直し

 上記(1)1)(b)及び(c)に該当する都道府県の事務の具体的内容についても、地方分権の推進の観点から、市町村の主体的判断を尊重し、より地域に根ざした積極的な地方教育行政を展開するよう、以下のような見直しが必要である。

〇市町村立学校の学級編制について都道府県教育委員会の認可を必要とすることとしている公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律第5条の規定を見直すこと。

〇公立高等学校の設置は都道府県が行うものとする公立高等学校の設置、適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律第3条の規定を見直すこと。

〇都道府県教育委員会は公立高等学校の通学区域を設定できるとする地教行法第50条の規定を見直すこと。

(3)都道府県の行う指導、助言、援助等の在り方の見直し

1)指導等に係る法律上の規定の見直し等
 都道府県教育委員会と市町村との間においても、地教行法第48条において、「都道府県委員会は市町村に対し、・・・必要な指導、助言又は援助を行うものとする」と規定されているが、この場合も、国と都道府県との間と同様に、指導が判断を加えられることなくそのまま受け入れられてきた面がある。都道府県による指導は、国の場合と同様に今後とも必要であるが、関係者の意識を変革するとともに、市町村の自主性・主体性を尊重する観点から、国に係るものと同様に地教行法第48条の規定を見直すこと等が必要である。

2)指導等の在り方の見直し
 指導等に関しては、法律上の規定の見直しのほか、その運用についても国の行う指導等と同様に見直しを行い、市町村の判断を過度に制約することのないようにするとともに、都道府県教育委員会やその研究研修機関の実証的な研究の成果や県内外の情報の提供等の役割を重視していくことが必要である。
 なおこれに関連して、現在ほとんどの都道府県において設置され、市町村教育委員会に対する指導等の窓口となっている教育事務所等の役割について、下記4ともかかわって、その機能を中核市等の一定規模の市以外の市町村に対する支援に重点を移すことも必要である。

4 市町村の規模に応じた権限の委譲と都道府県の関与の縮減

 市町村における主体的な教育行政を一層推進するためには、地方分権推進委員会第四次勧告(平成9年10月)における、「事務処理に必要とされる専門的知識・技術を備えた組織を整備することが可能と思われる市町村から、人口規模に応じて段階的に権限を委譲することも必要」との指摘も踏まえて、以下のような見直しが必要である。

〇中核市教育委員会の中には指導主事などの専門的職員が比較的多く配置されるなど事務処理体制が充実しているところもあることを踏まえて、教職員の研修等に関する権限委譲を検討すること。

〇政令指定都市及び中核市に関しては、高等学校及び幼稚園の設置廃止等について都道府県教育委員会の認可を必要としている学校教育法第4条の規定を見直すこと。

5 国、都道府県、市町村、学校等の間の情報網の整備

 国及び都道府県教育委員会による指導、助言、援助の在り方等にも関連して、事業の適正な実施のための支援措置等として、今後は情報提供の重要性が増大すると予想される。また、都道府県教育委員会や市町村教育委員会による学校、社会教育施設等に対する支援機能の充実が求められている。このような観点から、国、都道府県、市町村、学校、社会教育施設等の間の情報網を整備し、情報伝達の迅速化・同報化を図るとともに、教育行政に係る施策や学校等における各種の実証研究の成果をデータベースとして蓄積し、これを検索・利用できるシステムの構築を検討することも必要である。

第3章 教育委員会制度の在り方について

1 現行制度の概要

(1)教育委員会は、議会の同意を得て首長が任命する5人の教育委員から構成される合議制の行政委員会として設置されている。教育委員会の職務権限は地教行法第23条に規定されている。すなわち、(a)その所管する学校の設置管理に関する事務、(b)教育用財産の管理に関する事務、(c)学齢児童生徒の就学等に関する事務、(d)青少年教育・公民館の事業等の社会教育に関する事務、(e)体育・スポーツに関する事務、(f)文化財の保護に関する事務、(g)ユネスコ活動に関する事務、(h)その他当該地方公共団体の区域内における教育に関する事務などとなっており、教育委員会は、教育、文化、スポーツの振興に係る各般の事務を管理執行している。

(2)教育委員会には、その指揮監督の下に教育委員会のすべての事務をつかさどる教育長が置かれ、具体的な事務を処理するために事務局が設置されている。教育委員会が教育長を任命するに当たっては、地教行法第16条の規定により、都道府県・政令指定都市教育委員会の教育長については文部大臣の承認が、市町村教育委員会の教育長については都道府県教育委員会の承認が必要とされている。
 教育長は、他の行政委員会の事務局長とは異なり、教育委員会の会議に出席して、教育行政の専門家としての立場から助言を行うとともに、そこで決定された方針を具体的に執行する職責を担っている。このように教育委員会において中核的役割を果たす教育長には、これにふさわしい資質能力が必要であり、政治的に中立で、教育に関し専門的識見を持った、行政的にも練達した人材を確保することが求められている。教育長の任命承認制度は、国と都道府県、市町村が連携協力して教育長に適材を確保するための方策として設けられているものである。
 また、市町村の教育長は、教育委員の中から選ばれ教育委員を兼ねているが、これは、地教行法が制定された昭和31年当時の市町村、特に小規模町村の財政事情等の実情にかんがみ採られた措置である。

(3)人格の形成を担う教育において、その中立性の確保は極めて重要であり、教育行政の執行に当たっても、個人的な価値判断や特定の党派的、宗派的影響力から中立性を確保する制度が必要である。このような観点から、学校教育及び社会教育については、今後とも、地方公共団体の長から独立した執行機関である教育委員会が担当することが必要である。
 また、教育行政には安定性と継続性も必要であり、教育委員が一部ずつ入れ替わっていくような任期の設定が可能な行政委員会制度はこの面でも効果的である。

(4)生涯学習行政や文化行政等に関しては、地域住民それぞれの自由な発想や多様な価値観を尊重し、それらを踏まえた様々な施策を幅広く展開することが求められている。
 教育委員会は、教育・学術・芸術文化・スポーツ・経済・福祉等の様々な分野について知識・経験を有する5人の教育委員がそれぞれの識見に基づきつつ、合議によって基本方針や重要事項を決定する行政委員会であり、上記のような特質を有する生涯学習行政や文化行政等においては、地域住民の要望に応じて種々の施策を推進することが必要である。
 なお、これらの分野については、首長部局と連携協力し、両者がその機能を発揮しつつ関係施策の充実を図ることが重要である。

2 地域住民の意向の把握・反映や連携協力体制の充実

(1)基本的考え方

 生涯学習、学校教育、社会教育、芸術文化、スポーツ等の幅広い分野において、ますます多様化する地域住民の要望に的確にこたえる行政を展開するためには、教育行政にその意向を把握・反映する方策や地域住民との連携協力を推進する方策について一層の改善が必要である。このような観点から、以下のように教育委員に係る事項及び地域住民との関係の在り方について見直しを行うことが必要である。

(2)教育委員に係る見直し

1)教育委員に多様な人材を確保する観点からのその数の弾力化等
 教育委員の数については、都道府県、市町村ともに現行と同様その数を原則5人とする。
 しかしながら、教育委員会の担う事務は生涯学習、学校教育、社会教育、芸術文化、スポーツ等の幅広い範囲に及んでいること、また地域を支える人材の育成を通して地域経済・地域社会の振興に密接にかかわっていること等を踏まえ、より幅広い分野から人材を選考する観点から、執行機関としての役割を考慮しつつ、以下の見直しが必要である。

〇現行制度において、町村については、条例で定めるところにより教育委員会を3人の教育委員で組織できるとの規定に倣い、地教行法第3条を見直し、都道府県及び市については、条例で定めるところにより教育委員会を例えば7人の教育委員で組織できることとするなど弾力化を図ること。

〇教育委員の処遇については、役割の重要性に見合ったものとなるようにすること。

2)教育委員の選任の在り方
 教育委員の選任については、今後とも首長が議会の同意を得て任命する制度とすることが適当である。
 しかしながら、教育委員会の所掌事務が学校教育にとどまらず幅広いものとなっている中で、教育委員の構成が教職出身者中心になっている教育委員会もあるなどの状況、地域住民の教育行政に対する関心・要望が多様化している状況を考慮すると、各地方公共団体において、教育委員の構成分野(例えば、教育分野、芸術文化分野、スポーツ分野、経済分野等)をより広範にする観点、学識経験者等の意見・推薦等を取り入れる観点、教育委員の選任の基準や理由、経過等を地域住民に明らかにする観点などから、首長が教育委員を選考し、また議会に同意を求めるに際して、様々な工夫を講じることが必要である。

3)新任教育委員に対する情報提供、研究協議の場の設定等
 地域住民の多様な意向を教育行政に反映するためには、教育委員は、その幅広い知識・経験を生かして、教育委員会における基本方針や重要事項を決定する必要がある。このため、特に、新たに教育委員の職に就いた者を対象に、国や地方の教育政策の状況等について情報提供したり、研究協議を行う場の設定等を推進することが必要である。

(3)教育委員会と地域住民との関係の在り方の見直し

1)地域住民の意見の申出や苦情に対する対応の充実
 多様化する地域住民の要望に的確にこたえる行政を展開する観点から、苦情処理窓口の設置や広聴広報活動の充実に努めるなど、地域住民の教育行政に関する意見の申出や苦情に対する対応の充実を図ることが必要であり、地域の状況に応じて、例えば以下のような取組を積極的に推進することが必要である。

〇教育委員が地域住民などと直接意見交換を行う場(公聴会等)を積極的に設定すること。

〇教育モニター、教育アドバイザー等を積極的に活用すること。

〇教育委員会独自の苦情処理窓口の設置を推進すること。

2)地域住民に対する情報提供の推進
 学校、家庭、地域社会が役割分担し、連携協力して教育の充実を図るとともに、教育委員会が教育行政としての説明責任を果たすため、地域住民に対して幅広く積極的な情報提供を行うことが必要である。そのような観点から、地域の状況に応じて、例えば以下のような取組を積極的に推進することが必要である。

〇教育委員会は、学校教育についての方針や、学校の適正配置、学級編制などについて、地域住民に対する積極的な情報提供を図ること。また、所管する各学校における教育目標や教育活動等についても、積極的な情報提供を図ること。

〇生涯学習、社会教育、文化、スポーツ等の分野についての方針や事業の実施状況等についても、積極的な情報提供を図ること。

〇教育委員会会議の議事内容について、積極的な広報を図ること。

3)地域住民との連携協力の推進
 地域住民の多様な要望にこたえた施策を実施するためには、地域住民と連携協力し、地域活力の導入を促進することが必要であり、そのような観点から、地域の状況に応じて、例えば以下のような取組を積極的に推進することが必要である。

〇地域社会における教育の充実について関係者の参加意識を高め、保護者や地域住民が行政や他人任せではなく、自分たちの問題としてこれに取り組む契機として、中央教育審議会第一次答申においてその設置を提言している地域教育連絡協議会や地域教育活性化センターの積極的活用に関し、施策の充実を図ること。

〇学校、社会教育施設や教育委員会事務局などが行う事業に積極的にボランティアを受け入れる体制を整えるとともに、ボランティアコーディネーターの養成、配置などの取組を推進すること。

〇教職員や専門的職員の採用選考や研修等に際して、これまで以上に地域の有識者や企業等の協力を得るようにすること。

3 任命承認制度の廃止とそれに代わる教育長の適材確保方策

(1)任命承認制度の廃止と議会同意の導入等

 教育長の任命承認制度については、地方分権推進委員会第一次勧告を踏まえ、廃止することとする。任命承認制度により都道府県、市町村において教育長の選任が慎重かつ適切に行われてきたことを踏まえ、各地方公共団体の責任において教育長に適材を確保するため、教育長の任命に際し、副知事・助役、出納長・収入役と同様に議会の同意を得ることとする。
 すなわち、教育長に適材を確保し、その選任を慎重にする上で機能してきた教育長の任命承認制度については、地方公共団体の人事について国又は都道府県が外部から関与することを改めるとの観点から上記の勧告がなされたところである。また、今後、教育委員会がより主体的かつ積極的に施策を展開していくためには、教育委員会の権限に属するすべての事務を具体的に執行する立場に立つ教育長が、住民から選挙で選ばれた議員で構成される地方議会から直接信任を得ることにより、そのリーダーシップを高めるとともに住民に対する責任を明らかにすることが、極めて効果的であると考えられる。
 このような観点から、現行制度において、市町村の教育長が教育委員として選任される際にあらかじめ議会の同意を得ていることも踏まえ、地教行法第16条を見直し、幅広い人材を確保するため、都道府県及び市町村の教育長の任命に際し、議会による同意を必要とすることとするものである。
 議会同意に伴い、教育長について任期制が導入され計画的、長期的視野に立った教育行政の展開が可能となり、また、特別職として位置づけられることとなる。なお、特に市町村の教育長については、人材確保の観点からその処遇の改善を図ることが必要である。

(2)市町村教育長の専任化

 現行制度においては、市町村の教育長は教育委員の中から選ばれ、教育委員を兼ねることとされているが、(ア)教育委員以外から広く適任者を教育長に求めることができない点、(イ)教育長は教育委員会の指揮監督の下で事務をつかさどるという教育委員会制度の原則に必ずしも沿わない点があることを踏まえ、地教行法第16条第3項を見直し、市町村教育委員会の充実を図る観点から、原則として専任化することが必要である。

(3)新任教育長に対する情報提供、研究協議の場の設定等

 教育委員会において中核的役割を果たす教育長が教育行政について研鑽を積み、その専門性を高めることは地域に根ざした教育行政を展開するためにも重要な課題である。このような観点から、特に、新たに教育長の職に就いた者等を対象に、国や地方の教育政策の状況等について情報提供したり、研究協議を行う場の設定等を推進することが必要である。

4 市町村教育委員会の事務処理体制の充実

(1)事務の広域化の促進や市町村教育委員会の規模の拡大

 教育における地方分権を推進するとともに、個性豊かな子どもの育成を目指す教育改革を推進するためには、住民に身近な教育行政を担う市町村教育委員会の果たすべき役割は一層増大すると考えられる。しかしながら、現在の行財政事情等を勘案すると、すべての市町村において単独で事務処理体制の充実を図ることには限界がある。このため、今後、市町村教育委員会の規模の拡大と機能の充実を図る観点から、広域連合や教育委員会の共同設置による事務の広域化の促進、自主的合併による地方公共団体自体の規模の拡大を図ることが必要である。このような観点から、例えば以下のような取組を積極的に行うことが必要である。

〇広域連合や事務組合、共同設置教育委員会に対して充て指導主事を配置し、また社会教育主事を派遣すること。
 また、第2章4で掲げた以下のような市町村の規模に応じた権限の委譲と都道府県の関与の縮減を行うことが必要である。

〇中核市教育委員会の中には指導主事などの専門的職員が比較的多く配置されるなど事務処理体制が充実しているところもあることを踏まえ、教職員の研修等に関する権限委譲を検討すること。

〇政令指定都市及び中核市に関しては、高等学校及び幼稚園の設置廃止等について都道府県教育委員会の認可を必要としている学校教育法第4条の規定を見直すこと。

(2)専門的職員の充実と地域の多様な人材の活用

 市町村教育委員会が、地域住民の多様な要望にこたえたきめの細かい行政を展開する観点から、指導主事や社会教育主事等の専門的職員の充実を図ることが望ましい。
 また、例えば、所管する学校の教員を指導事務担当教員として、各学校に対する教育課程、学習指導等の専門的事項の指導を委嘱したり、非常勤職員の活用を図るなどの工夫を講じるとともに、各種の事業に地域住民のボランティアや教職員が参加する機会を充実することにより全体として教育委員会の事業の充実を図ることが必要である。なお、いわゆる高齢者再雇用制度を平成13年度から実施する方向で検討が行われていることを踏まえ、退職教員が有する経験等を活用する方策についても検討が必要である。

(3)小規模な市町村教育委員会における事務処理体制の在り方の見直し

 小規模な市町村教育委員会においては、その事務処理体制の在り方を見直し、当該教育委員会の判断により、例えば以下のように一定範囲の教育委員会の権限及び事務をその所管する教育機関に委ねたり、都道府県や隣接する市などに委託することについて検討が必要である。

〇市町村の規模や状況に応じて、学校に対する権限の委譲の観点も踏まえ、物品の購入や施設の修繕、契約の締結などの事務をその所管する学校に委託すること。

〇市町村の規模や状況に応じて、所管する学校に係る専門的事項に関する事務を都道府県の教育事務所や隣接する市などに委託すること。これに関連して、都道府県と市町村によって構成される広域連合についても教育委員会を設置できるよう、地教行法第2条を見直すこと。

5 教育委員会と私立学校との関係

(1)教育委員会と私立学校との連携

 私立学校については、その自主性・独自性を尊重する観点から、所管については、首長が所管する現行の制度を基本とするが、私立学校も公教育を担う地域の教育機関であることを踏まえ、地域全体として、一人一人の個性を生かした教育の実現を図るため、地域の状況に応じて、例えば以下のような教育委員会と私立学校との連携の推進が必要である。

〇私立学校に対し、教育委員会が積極的に情報提供を行うこと。

〇公私教育連絡協議会の活用などにより、私立学校と教育委員会との連携協力の推進を図ること。

(2)教育委員会の専門的機能の利用

 教育委員会は、公立学校の管理機関であるとともに、地域の教育行政機関として、指導主事を配置し、教育課程等について様々な指導資料や研究資料を作成するとともに、教職員の研修を企画実施するなど種々の専門的機能を有している。
 このような専門的機能を、地域の状況に応じて私立学校が利用できるようにすることが必要である。

第4章 学校の自主性・自律性の確立について

1 現行制度の概要

(1)地方公共団体が設置する小・中学校等の学校は、公の施設として、法令に基づき教育活動を展開する専門的教育機関であり、地教行法第32条の規定により当該地方公共団体の教育委員会が所管している。教育委員会は学校の設置管理に関する事務や教育財産の管理に関する事務、学校の組織編制、教育課程等に関する事務、教科書その他の教材の取扱いに関する事務、校舎その他の施設及び設備の整備に関する事務等を管理執行することとされている。
 教育委員会はこれらの事務をすべて直接執行するのではなく、具体的、日常的な運営は校長の責任の下行われている。また教育課程の編成や児童生徒の健康診断の実施のように、法令の規定により直接校長の権限とされている事務もある。教育委員会は、地教行法第33条第1項の規定により教育委員会規則(学校管理規則)を定めており、学校が決定して処理する事務と教育委員会の判断により処理すべき事務とを区別し、学校運営の適正な管理を図りつつ、学校が一定の主体性を保持できるような仕組みとなっている。

(2)学校においては、学校教育法第28条等の規定により、校長、教頭、教諭、養護教諭、事務職員等の職員が置かれ、校長は校務をつかさどり、所属職員を監督するとされている。また、学校運営の責任者としての権限を有する校長の下に、組織的に教育活動を実施する観点から、教職員がそれぞれ校務を分担し、各種の主任等が置かれている。

2 学校と教育委員会との関係の見直し

(1)教育委員会の学校に対する指示・命令、指導・助言の見直し

 教育委員会は、設置管理権者として、学校に対して必要な指示・命令を行い、学校における適正な事務処理を確保している。しかしながら、教育活動に関する事柄の多くについては、法律上の強制力のない指導・助言によって学校の主体的な取組を支援する仕組みとなっている。
 指示・命令と指導・助言の実際の運用に当たっては、これを行う教育委員会担当者やこれを受ける学校の教職員の間でその区別が必ずしも明確でなく、結果として当該指示や指導に基づく行為の責任の所在が不明確になっている場合がある。このため、学校の管理運営に関する責任の所在を明確化する観点から、適正な事務処理を確保するための指示・命令と、主として教育活動に関して行われる指導・助言とを明確に区別して取り扱うことが必要である。

(2)学校管理規則の見直し等による許可・承認等の整理縮小

 学校と教育委員会との基本的な関係は、教育委員会が制定する学校管理規則に定められている。学校管理規則においては、学校の組織編制や教育課程、教材の取扱い等について教育委員会の許可・承認・届け出・報告等が必要とされている。また、学校管理規則以外にも、通達等により教育委員会が基準を定め、許可等を必要としている場合もある。
 これらに関しては、学校の自主性・自律性を確立し、学校における日常的、定型的な業務についての教育委員会の関与を整理縮小する観点から見直しが必要である。すなわち、学校管理規則や通達等に基づいて設けられている許可・承認・届け出・報告事項について、各教育委員会において、地域や学校の実情等に応じて、学校の組織編制や教育課程の編成とその実施に係る事務を含めて幅広く見直すことが必要である。
 また、学校の管理運営に関する責任を保護者や地域住民に明確にする観点から、法令等に定められている学校の管理運営に係る教育委員会と学校の権限関係を学校管理規則において統一的に示すなどの工夫を講じる必要がある。

(3)学校の自主的な取組を支援する観点からの教育委員会の機能の見直し

 学校の自主性・自律性を確立する観点から、学校に委ねるべきと判断される事務は学校に任せ、教育委員会は各学校ごとの対応では限界がある地域全体の教育課題に対応した施策の推進や学校ごとの教育課題に沿った指導・助言など、学校の自主的取組を支援する面に重点を移すなど、教育委員会の機能の見直しが必要である。
 ただし、通常予想される事態を超える緊急の事態が生じた場合や法律の規定に従い専門的な対応が求められる事項等に関しては、教育委員会が直接対応したり、学校を積極的に支援する体制を整備することについて検討が必要である。

(4)学校の予算・人事等に係る校長の権限の拡大

 子どもの個性を生かした教育を目指す特色ある学校づくりを進める観点から、校長が学校経営の責任者としてその職責を全うできるよう、(2)の学校管理規則の見直し等のほか、学校の人事・予算等における校長の権限の拡大方策について検討が必要である。

(5)学校事務・業務等に係る負担軽減

 学校の裁量の拡大に応じて、学校の判断によって処理することが必要となる事務・業務が増大するが、その一方で児童生徒数の減少により学校の小規模化が進行している状況も踏まえ、今後、学校の事務・業務等に係る負担の軽減を図ることが必要である。また、校長や教員が子どもと触れ合う時間をより一層確保することも必要である。このため、国、都道府県又は市町村が実施する調査統計全体の精選、国、都道府県又は関係機関等による各種の業務の委嘱、照会事務、研修研究活動等の精選が必要である。

3 学校の管理運営組織の在り方等

(1)校内組織の在り方の見直し

 学校の経営責任を明確化するとともに、学校の自主性・自律性の確立を図るためには、(ア)学校運営が校長の方針の下に円滑かつ機動的に行われるようにする観点、(イ)学校運営の透明性を確保し、保護者や地域住民に対して学校運営に係る責任の所在を明らかにする観点、(ウ)個性を尊重した多様な教育活動を展開するとともに、心の教育や生徒指導の充実、家庭や地域社会との連携強化等に対応する観点から、学校の管理運営組織について見直しを図ることが必要である。
 すなわち、学校の裁量の拡大に対応して、学校経営の責任者である校長がその職責を十分に果たすことができるよう、これらの観点に立って、校務分掌、各種の会議、委員会など現在の校内組織及びその運営の在り方について見直しを図ることが必要である。
 また、4(3)において述べるような仕組みの活用により、校長が学校運営に関し、地域住民や保護者などに対して必要に応じて助言を求めるような仕組みを検討することが必要である。

(2)校長・教頭への適材確保のための任用資格の見直し

 学校において創意工夫を凝らした教育活動を展開するためには、学校運営の責任者である校長及びそれを補佐する教頭に優れた人材を得ることが必要である。すなわち、校長及び教頭について、教育に関する理念や識見を有するのみならず、保護者の意見を踏まえながら地域や学校の状況、課題を的確に把握し、学校の教育目標実現のために関係機関など学校外との折衝や連携を図りつつ、組織的、機動的な学校運営を行い得る資質を有する人材を確保することが重要である。このため、教育に関する職に就いている経験や組織運営に関する経験、能力に着目して、幅広く人材を確保できるよう途を開く観点から、校長及び教頭の任用資格の見直しについて検討する必要がある。

(3)教員以外の専門性を有する人材の活用

 一人一人の個性を尊重した多様な形態・方法による教育活動を展開するとともに、心の教育や生徒指導の充実、学校・家庭・地域社会の連携の強化などの諸課題に対応する観点から、教員以外の専門性を有する者を学校内部において活用するための方策について検討が必要である。

(4)学校事務・業務の共同実施

 学校の裁量を拡大し、各学校が多様な形態・方法により特色ある活動を展開していくことにより、多様なスタッフが必要となり、また予算編成事務など学校の判断により処理することが必要となる事務の増大が予想される。また児童生徒数の減少により学校の小規模化が進行している状況も考え合わせると、学校の行う活動に係る事務や業務をすべて校内で実施、処理することとしてこれに必要な組織を整備するという従来の考え方を見直し、上記(3)の教員以外の専門性を有する者の活用も含め、事務や業務の共同実施を行うための方策について検討が必要である。

(5)関連する制度の見直し

 上記(1)~(4)の事項を実現し、学校の管理運営組織の見直しを円滑に進めていくためには、教職員の配置など関連する制度の在り方について、幅広く検討し、見直しを行っていくことが必要である。

4 地域住民の意向の把握・反映などの連携協力体制の充実

(1)学校の教育目標、教育計画の明確化と保護者や地域に対する説明、教育活動の自己評価等

 学校の経営責任を明らかにする観点から、学校が教育目標及びそれに基づく教育計画を明確に策定し、その趣旨と実施状況を保護者や地域に対して説明することが必要である。また、それらについての校長による自己評価を保護者や地域に説明するとともに、教育委員会へ報告することが必要である。

(2)学校の教育活動への地域の活力の導入・活用

 各学校が地域の特色を生かし、豊かで多様な教育を行っていくためには、教科指導、道徳教育、特別活動、部活動などの学校の教育活動に、保護者、地域におけるスポーツ指導者や伝統文化継承者、さらに企業等の専門家などの地域住民の協力を得ることが必要である。また、学校における体験的な教育活動や学校外の教育活動の実施について、地域の関係機関の教育力を活用するためには、それらとのより一層の連携を進めることが重要であり、このような点について教育委員会の支援機能を強化することが必要である。
 このため、校長の判断により機動的に学校の教育活動に地域住民の協力を求めることができるよう、教育委員会が「学校支援ボランティア」を登録・活用する仕組み等の支援機能を充実するなど具体的方策について検討が必要である。

(3)学校が保護者や地域住民の意向を把握、反映するための仕組み

 中央教育審議会第一次答申において提言しているように、学校・家庭・地域社会が連携協力し、相互補完しつつ一体となって子どもの健やかな成長を図ることが必要である。このような観点から、学校と保護者や地域住民との共通理解を図りその協力を得られるよう、現行の教育委員会と校長の権限を前提として、地域の実情に応じて設置者の定めるところにより、校長が、保護者(PTA)や学校外の有識者の参加を得て、例えば、教育方針や生徒指導、道徳教育の進め方など様々な事項についてその意見を聞き、必要に応じ助言を求めるような制度の導入を含め、学校が保護者や地域住民の意向を的確に把握し、これを反映していく仕組みを検討する必要がある。

第5章 地域コミュニティの育成と地域振興に教育委員会の果たすべき役割について

1 現行制度の概要

(1)学校教育、社会教育、文化、スポーツという分野を所管する教育委員会は、地域における生涯学習振興の中心的役割を果たしている。地域における生涯学習の振興は、住民の自発性を尊重しつつ各地域が主体性を発揮しながら進めるべきものであり、生涯学習の視点から人づくり、まちづくりの取組を進める市町村も増えている。

(2)生涯学習の振興に資する施策は教育委員会のみが行っているものではなく、首長部局においても現に様々な施策が実施されている。
 生涯学習の振興をより効果的に推進するためには、教育委員会が中心的役割を果たし、首長部局や民間団体との連携を図っていくことが必要となる。このことについては、生涯学習の振興のための施策の推進体制の整備に関する法律第3条において、都道府県教育委員会における生涯学習の振興に資する事業を規定するとともに、同条第2項において「地域において生涯学習に資する事業を行う機関及び団体との連携に努めるものとする」と規定し、知事部局等との連携を求めている。また、市町村については、同法第12条により、関係機関及び関係団体等との連携協力体制の整備について規定している。

2 生涯学習を中核とした地域コミュニティの育成

(1)生涯学習を中核としたまちづくりの取組の推進

1)地域住民の学習活動、芸術文化活動、スポーツ活動等を活性化し、住民の地域社会への参加を促していくことは、地域の豊かな人間関係の形成、地域意識の向上に役立ち、生き生きとした地域コミュニティの基盤形成を促進するものである。
 こうした観点から、既にいくつかの市町村において、生涯学習を中核としたまちづくりの取組が進められ、地域コミュニティの育成や地域振興に大きな役割を果たしているが、このような取組が全国の多くの市町村で展開されていくことが望まれる。
2)生涯学習を中核としたまちづくりの取組を積極的に推進していくためには、教育委員会が主体となり、教育、文化、スポーツなど個々の分野の行政課題に対応する施策の充実に加え、広く地域コミュニティの育成、地域振興の観点から、民間の団体・事業者の多様な活動を視野に入れ、首長部局等関係の行政機関とも連携して、総合的に施策を推進することが必要である。また、地域社会への住民参加を促進するため、住民の持つ知識・技術を地域の学習関連機関や民間団体等の活動に積極的に生かしていくという視点を明確に打ち出すことが求められる。

(2)地域の教育機能の向上

1)子どもたちの生きる力をはぐくむため、地域社会の力を生かすことや家庭教育の在り方を見直すことが求められている中で、地域が一体となった子育ての支援や異年齢集団活動など様々な体験活動を充実し、地域社会を挙げて子どもたちを心豊かに育てていく環境を整備していくことは、地方教育行政上の極めて重要な課題である。
 教育委員会は、今後予定されている学校週5日制の完全実施も踏まえ、地域の教育機能の向上を図る視点から、地域の関係機関・団体による子どもの健全育成活動を推進するとともに、学校・家庭・地域社会の連携を促進する仕組みを整備していくことが必要である。
 とりわけ、PTAは学校と家庭・地域社会を結ぶ懸け橋となるべきものであり、PTA活動をより一層活性化させることが重要である。
2)また、家庭教育については、行政は親に対する学習機会の提供などその充実を図るための施策を推進しているが、家庭への支援をより充実していくためには、地域社会が一体となって家庭教育を支援する体制を整備していくことが必要である。

(3)地域コミュニティの拠点としての学校・公民館の活用

1)教育委員会が設置・管理している教育機関、例えば、学校や公民館は、地域住民に身近な公共の施設であり、地域コミュニティ形成の拠点としての重要な役割を担うことが求められる。
2)特に、住民の日常生活圏に最も身近に存在する学校は、学校教育の実施という本来の機能を前提として、地域住民の生涯学習やコミュニティ活動の拠点としても、その資源を有効に活用していくことが重要である。
 そのような観点から、教育委員会は、例えば、学校開放の管理体制の整備、教室・体育館等を活用した住民の交流・学習スペースの整備、学校体育施設の社会体育との共同利用化などの開かれた学校のための基盤整備を進めるとともに、学校の持つ様々な機能を公開講座等として提供していくことなどが必要である。

3 地域振興において教育委員会が果たすべき役割

 教育、文化、スポーツという分野を所管し、生涯学習の振興について中心的役割を担っている教育委員会は、地域振興においても重要な役割を担うことが期待されている。すなわち、近年は、文化財や特定分野の芸術文化活動、スポーツ活動が地域のアイデンティティ形成に寄与している例も多く、例えば、重要文化財を活用してのまちおこしや都市整備が行われたり、地元のプロスポーツチームへの支援を契機として地域を挙げて特色あるスポーツ活動の普及・振興など様々な取組が行われている例があり、このような場合に教育委員会が積極的な役割を果たすことが望まれる。また、様々な芸術鑑賞の機会、スポーツや文化活動、学習活動の機会を選択・享受できることが都市や地域の魅力につながることから、今後の地域の振興においては、公共基盤の整備、産業育成、福祉の充実などと並んで、教育委員会の文化、スポーツ施策が重要な役割を担うものと考えられる。さらに、学校教育を通じた人材育成はこれまでも地域振興の基盤を形成してきたが、学校の有する教育機能を社会人の再教育機会の充実のために活用することも期待されている。

4 教育委員会と首長部局等関係機関との関係

(1)教育委員会と首長部局等との連携の促進

 教育委員会が、地域コミュニティ育成、地域振興に積極的に寄与するためには、教育委員会が行っている施策と首長部局が行っている関連施策とを効果的に連携づけていくことが不可欠である。
 すなわち、文化やスポーツを含む生涯学習の振興に係る行政の分野をどちらが所管するのかという二者択一的な考え方に立つのではなく、地域住民の立場に立って、教育委員会と首長部局がその機能を効果的に発揮することが必要である。
 特に、生涯学習については、首長部局においても、青少年・女性関連の施策や職業能力開発施策、社会福祉施策、さらには、環境、農政、土木等の行政分野における自然体験学習などの関連施策が行われ、郵便局、営林関係機関などの行政機関も様々な取組を行っている。教育委員会は、地域全体の生涯学習を振興する観点から、これらの機関・部局と積極的に連携を図っていくことが重要である。また、首長部局が行う都市政策や産業政策等の地域振興策についても、3で述べたような観点から、教育委員会が積極的に対応していくことが望まれる。

(2)教育委員会と大学等との連携の促進

 教育委員会は、大学、専修学校など地域の高等教育機関等との連携を強め、地域住民のニーズを踏まえた社会人の再教育機会の充実など、地域全体の人づくりの視点に立った施策の推進を図ることが必要である。
 特に、大学は、高度な教育・研究機能を有する地域の生涯学習機関として、地域住民への施設開放、公開講座等をより積極的に行っていくことが期待されている。
 教育委員会は、生涯学習を通じた地域振興という視点から、恒常的に大学等との協議の場を設定することなどにより、積極的な連携協力体制を整えることが必要である。また、これと関連して、平成10年1月からCS放送による全国放送を開始した放送大学については、その提供する放送授業を積極的に活用して、住民の学習の高度化を図っていくべきである。

5 民間の団体・事業者等との連携

(1)教育委員会と民間団体等との連携の促進

 地域コミュニティの育成や地域振興などの課題に幅広く取り組むためには、教育委員会は、住民の学習活動等の活性化という視点に立ち、民間の企業・団体あるいは個人が行っている活動も視野に入れ、その自主性を尊重しつつ支援していくことが必要である。
 自治会、町内会、PTA、商店街、各種の団体・サークル等により、地域に根ざした多彩な学習活動が行われているが、教育委員会はこれらの活動がより活発となるよう、団体等の活動を高めるきっかけとなるイベント等の機会の充実、学校や公民館等の施設の提供などの取組を積極的に推進することが求められる。
 また、例えば、観光協会等の協力を得て文化財の保存と活用を図ったり、あるいは、医療関係者や福祉関係団体の協力を得て、健康づくりや高齢者の生きがいづくり等にも配慮しながら、多様なスポーツ活動を推進することも必要である。

(2)カルチャーセンター等民間教育事業者との連携の促進

 カルチャーセンター、スポーツクラブ等の民間教育事業者の活動は地域における学習活動の基盤の一つとなるものであり、地域の学習活動を総体として充実していくためには、これらの民間教育事業者と連携した施策の推進が不可欠である。
 このため、例えば、民間教育事業者との協議の場の設定、民間教育事業者の活動も含めた総合的な学習情報の提供、公民館等における民間教育事業者と連携協力した学習講座の実施などの取組を積極的に推進することが求められる。

第6章 学校以外の教育機関の運営の在り方について

1 現行制度の概要

(1)公民館等の社会教育施設、体育・スポーツ施設、文化施設などの学校以外の教育機関は、地教行法第32条の規定により、教育委員会が所管することとされている。

(2)公民館、図書館及び博物館は、それぞれ社会教育法、図書館法及び博物館法において、その目的、事業、職員等について規定されている。これら以外の体育・スポーツ施設、文化施設などの教育機関は、その目的等について法律上定めがなく、各地方公共団体の条例により規定されている。

2 住民の立場に立った弾力的な施設運営

(1)弾力的な施設運営の推進

 公民館等の社会教育施設、体育・スポーツ施設、文化施設などの学校以外の教育機関は、主として住民の自主的な教育・スポーツ・文化活動を支援するものであることから、その運営については、住民の立場に立ち、住民の意向を的確に反映した弾力的なものとしていくことが必要である。
 勤労者、高齢者などを含むすべての人が施設を利用しやすいようにすることが必要であり、そのような観点から、例えば、施設の開館日・時間の弾力化、住民に身近な分館の拡充、施設間のネットワークの推進、障害者等に配慮した施設設備の整備などの取組を進めていくことが必要である。

(2)規制や基準の廃止、緩和

 公民館、図書館及び博物館については、教育委員会の自主的な判断の下、弾力的な施設運営ができるようにするため、各種の規制や基準をできるだけ廃止、緩和していくことが必要である。

3 施設運営への住民参加の促進、ボランティアの受入れ

(1)施設運営への住民参加の促進

 学校以外の教育機関が、地域コミュニティの拠点として、利用者にとってより身近な施設となるためには、施設運営への住民参加を促進し、住民が施設の事業の企画・運営・広報などに様々な形で参画できるようにすることが重要である。このため、施設運営に関し、一層積極的に住民の参加を求め、住民の意向を的確に把握・反映できる仕組みについて検討していくことが必要である。
 さらに、スポーツ施設においては、住民や利用者の組織する団体に運営を委ねる例も見られ、今後このような取組を推進する方策の検討も必要である。

(2)ボランティアの受入れの拡大

 施設運営におけるボランティアの受入れは、施設運営の活性化をもたらすともに、ボランティア自身にとっても、自己開発・自己実現につながり、生涯学習の成果を生かす場として重要である。そのような観点から、ボランティア登録システムや研修体制を充実するなどにより、施設の特性や状況に応じたボランティア受入れ体制の整備を積極的に推進することが必要である。

4 学校その他の関係機関、民間の団体・事業者等との連携の推進

(1)学校と連携協力した事業展開

 子どもたちの学習の場や活動を多様にするためには、各施設が学校と連携協力し、学校だけでは実施が困難な体験活動の充実や指導者の提供等を行っていくことが重要である。このような観点から、例えば、学校の教育活動に沿ったプログラムを開発すること、施設の事業情報を積極的に学校に提供すること、施設やその指導者を学校の部活動や自然体験学習などの教育活動のために活用することなどの取組の充実が必要である。

(2)関係機関や民間との連携の推進

 施設のサービス内容を改善充実し、多様化・高度化する住民ニーズに的確に対応するためには、教育委員会所管以外の関係機関や民間の団体・事業者等との連携も重要である。
 このような観点から、教育委員会所管の各施設、首長部局等所管の各施設、民間団体等の事業について、例えば、生涯学習の振興の視点から連携協力を進め、学習講座や学習情報の提供を共同で実施していくこと、また、青少年の健全育成という視点から、教育機関と児童館等の福祉機関などが効果的に連携を図っていくことが必要である。

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生涯学習政策局政策課

-- 登録:平成21年以前 --