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中央教育審議会第二次答申の骨子

平成9年6月1日
生涯学習政策局政策課

中央教育審議会第二次答申の骨子

第1章 一人一人の能力・適性に応じた教育の在り方

(一人一人の能力・適性に応じた教育の必要性と基本的な考え方)

○ 今後の我が国は、個性が尊重され、真に豊かな成熟社会の実現を目指していくことが必要であり、そのために教育の改革が必要。また、同質志向や横並び意識、さらには過度に年齢にとらわれた価値観からの転換が必要。

○ 国際化、情報化、科学技術の発展、高齢化や少子化などの社会の変化へ適切に対応し、個性的な人材や創造的な人材の育成が不可欠。

○ 「ゆとり」の中で「生きる力」をはぐくむためには、個性尊重の考え方を一層推し進めていくことが必要。これからの教育は、「ゆとり」の中で「生きる力」をはぐくむことを目指し、個性尊重という基本的な考え方に立って、一人一人の能力・適性に応じた教育を展開していくことが必要。

「生きる力」=

  • 自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する能力
  • 自らを律しつつ、他人と協調し、他人を思いやる心や感動する心など豊かな人間性とたくましく生きるための健康や体力

○ 一人一人の能力・適性に応じた教育を実現する上で、子どもたちの選択の機会を拡大していくことが必要。学校や地方公共団体等の裁量の範囲を拡大していくことが重要。

○ 思いやりや社会性、倫理観、正義感等の豊かな人間性の育成や、伝統と文化を尊重する心を培うなど、時代を超えて価値のあるもの(不易)を大切にしていくことが必要。個性尊重の理念には、他者尊重や社会との調和の理念が伴う。

(教育における形式的な平等の重視から個性の尊重への転換)

○ これまでの我が国の教育は、総じて大きな成果を挙げてきたが、教育システムを画一的に構築したり、硬直的に運用する傾向があった。こうした在り方を見直し、形式的な平等の重視から、個性の尊重へと転換していくべき。
○ 今後、子どもたちの個性や能力に応じた取組を進めていくに当たって、優れた才能を持った子どもたちの学習の充実について考えると同時に、じっくりと学んでいく子どもたちへ十分な配慮をしていくことが必要。
○ 一人一人の能力・適性に応じた教育を展開するためには、学校間の接続の改善が必要であり、大学・高等学校の入学者選抜の改善、中高一貫教育、教育上の例外措置が特に重要な課題。

第2章 大学・高等学校の入学者選抜の改善

第1節 過度の受験競争の状況

○ 受験競争は、少子化が進む中で、長期的に見ると、大学・高等学校の全体の収容力という観点からは緩和する(大学の収容力は平成21年に100%に達すると推定。
 また、高等学校への進学率は平成8年度現在で97%)。しかし、特定の大学・高等学校をめぐる受験競争は依然厳しく、「ゆとり」の中で「生きる力」をはぐくむ教育を実現するためには、入学者選抜の改善や学(校)歴偏重社会の是正等の取組を通じて、その緩和を図ることが必要。

○ これまで様々な入学者選抜に関する改善の努力(選抜方法の多様化や評価尺度の多元化、受験機会の複数化、推薦入学の改善など)がなされてきているが、更に一層の改善が必要。

第2節 大学入学者選抜の改善

○ 大学入学者選抜は、改善が進められつつあるが、なお、専らペ-パ-テストによる学力試験が偏重されており、自ら学び、自ら考える力に対する評価や、多様な個性への対応が不十分。このため、次の5つの基本方向に沿った改善が必要。

 [1] 選抜方法の多様化、評価尺度の多元化
 [2] 初等中等教育の改善の方向を尊重した入学者選抜の改善
 [3] 影響力のある特定の大学における率先した改善
 [4] 入学者選抜の改善のための様々な条件整備や関連施策の推進
 [5] 高等教育全体を柔らかなシステムへ

○ 学力試験を偏重する入学者選抜から、選抜方法の多様化や評価尺度の多元化へ一層の転換を図ることが必要。

  • 調査書、小論文、面接、実技検査、推薦文などを組み合わせ、総合的かつ多面的な評価など丁寧な選抜へ
  • 様々な活動経験や学習の成果などの評価を推進
    - 社会人入学について、高等学校卒業後、一定の職業体験・ボランティア活動経験を積んだ上で進学を志す者に対して更に門戸を拡大
    - 専門高校や総合学科の卒業生への配慮として、特別選抜の拡大、推薦入学の枠の設定・拡大など。更に進んで、学校を指定した推薦入学の枠の設定
    - 文化・スポ-ツ活動やボランティア活動の積極的評価
    - 海外帰国生徒に対する特別選抜の推進
  • 地域を重視する観点から、入学定員の一部に地域を指定した枠を設定したり、地域を指定した推薦入学を実施する取組を導入・拡大。
  • 障害のある者への一層の配慮
  • 同一大学の同一学部・学科における、複数の選抜基準の導入の一層の推進
  • 影響力のある特定の大学における工夫改善が不可欠。また、多肢選択式のペーパーテストに依存する一部の私立大学に対して、一層の改善を特に要請

○ 受験機会の拡大を図ることが重要。特に、4月入学を基本とする一方で、秋季入学を拡大。海外帰国生徒・留学生や社会人以外に、一般の学生を対象とする場合は、学力試験以外の方法による丁寧な選抜を行うなど、多様な選抜方法を採る。

○ 「ゆとり」の中で「生きる力」を育成するという初等中等教育の改善の方向を尊重し、高等学校での生徒の学習や活動を的確に評価することなどが必要。

  • 高等学校の調査書の一層の活用(調査書の有効性を高める取組の推進、大学による履修科目等指定制の導入、学力試験における受験科目数の減)
  • 学力試験の内容・方法の一層の工夫(高校教育の趣旨を逸脱しない出題、思考力を問う出題、総合問題の出題など)
  • 個別教科の学力試験の改善(英語におけるリスニングの導入・拡大や英検の活用、理科における観察・実験等の活用など)

○ 推薦入学の改善を推進。

  • 推薦入学の実施大学・学部の増、入学定員に対する割合の拡大
  • 自己推薦制度や学校以外の団体からの推薦の活用を推進

○ 大学入試センター試験の多様な利活用を推進するとともに、個別試験の在り方を改善。

  • 試験問題の作成を含め、高校関係者の協力を得ながらセンタ-試験を企画・実施・評価する体制づくり
  • 個別試験において学力試験をできるだけ少なくする
  • 学力試験によって一点差刻みで合否を決める選抜の在り方の見直し(例えば、センタ-試験が一定水準に達していれば、学力試験以外の資料で選抜する取組、センター試験の結果をA・B・C・D等の概括的な段階別にまとめ、他の資料と組み合わせて選抜する取組などを推進)
  • 例えば芸術関係の大学のように実技検査を重視する大学において、センタ-試験の結果を複数年度にわたって利用することも可(センタ-試験の年度内における複数回実施は今後の検討課題)
  • 「分離・分割方式」における後期日程の募集人員の比率の適正化(影響力のある特定の大学にあってはその拡大)

○ 入学者選抜の改善のための条件整備などを推進。

  • 丁寧な選抜を行うため、我が国の大学の特性を踏まえたアドミッション・オフィスを格段に整備。
  • 丁寧な選抜を行うためには、ゆったりとした入試日程を確保する必要があることから、選抜の実施時期の終期を繰り下げ(場合によっては、4月にかかることも可)
  • 進路指導の改善と大学に関する情報提供の充実
  • 大学入学者選抜に関する外部評価の導入(参与会等を活用しながら、地域の有識者、地域産業の関係者、高等学校関係者、保護者等の外部の意見を取り入れる)
  • 各大学等において入学者の追跡調査などを推進。大学入試センターについては、実証研究の実施、各大学の研究成果の収集などの機能を強化

○ 高等教育全体を柔らかなシステムへ。

  • 単位互換や大学外における学習成果の単位認定の推進
  • 同一大学における学部・学科の変更への柔軟な対応、編入学・転入学の拡充(他の大学・学部を卒業した者の受入れを含む)、復学・休学への弾力的な対応
  • 社会人入学の一層の推進(特別枠の設定・拡大など)
  • 大学教育の充実(カリキュラム改革、教育方法の改善)と学業成績の評価の厳格化

第3節 高等学校入学者選抜の改善

○ 現在の高等学校入学者選抜は、改善が進められつつあるが、未だ評価の在り方に画一的な点が多く、多様な個性への対応が不十分。このため、次の6つの基本方向に沿った改善が必要。

 [1] 中学校・高等学校間のハ-ドルをより低くする
 [2] 選抜方法の多様化、評価尺度の多元化
 [3] 中学校以下の教育の改善の方向を尊重した入学者選抜の改善
 [4] 普通科における取組が重要
 [5] 入学者選抜の改善のための様々な条件整備や関連施策の推進
 [6] 高等学校教育全体を柔らかなシステムへ

○ 大部分の子どもたちが高校へ進学するという現状を踏まえ、中学校・高等学校間のハードルをより低くする。

  • 1点差刻みで合否を決するのではなく、学力試験で一定以上の点数を得ていれば、他の資料により選抜を行ったり、一定水準に達していれば、入学定員の取り扱いにおいて弾力的に取り扱う
  • 学力試験の実施教科の取り扱い(教科数や教科の指定)の多様化
  • 受験機会の複数化の推進

○ 生徒の多様な能力・適性を評価するため、選抜方法の多様化や評価尺度の多元化を推進。

  • 調査書と学力試験の比重の置き方の弾力化
  • 小論文・面接・実技検査の実施、各種の技能審査や文化・スポ-ツ活動・ボランティア活動等の評価を適切に組み合わせた選抜の実施
  • 同一高校の同一学科における複数の選抜基準の導入
  • 生徒や保護者が進学動機や学校外の活動状況などを自己申告する書類を活用するなど、選抜資料を多様化(登校拒否の子どもについても、学ぶ意欲や能力をより適切に評価していく上で有効)
  • 障害のある者への一層の配慮
  • 公立については、一定の範囲で具体的な選抜方法を各高等学校の判断に委ねる

○ 「生きる力」の育成を目指し、自ら学び、自ら考える教育へ転換を図ろうとしている中学校以下の教育の改善の方向を尊重した改善を推進。

  • 調査書の適切な活用の推進(活動記録の積極的な評価など)
  • 思考力を問う出題の工夫、総合問題に関する研究の推進
  • 一部の国私立高等学校における中学校教育の趣旨を逸脱した出題の是正

○ 推薦入学を推進。

  • ボランティア活動など学校外活動に対する積極的な評価、社会教育関係団体等からの中学校への主体的な情報提供の推進
  • 推薦入学に際して学力試験を課さない等のル-ルの遵守

○ 入学者選抜の改善を進めるための条件整備などを推進。

  • 高校・中学校の連絡協議体制の整備と入学者選抜時期の適正化
  • 進路指導の改善と学校や入試に関する情報提供体制の整備

○ 高等学校教育の多様化と柔らかなシステムの実現。

  • 高校の教育内容の個性化・多様化、単位制高校・総合学科の整備
  • 編入学や転入学の枠の拡大、休学や復学の弾力的運用、学校間連携の推進

第4節 学(校)歴偏重社会の問題

○ 学(校)歴偏重社会の問題の是正のためには、学校・企業・親などがそれぞれの立場で取組を進めることが必要。

○ 企業や官公庁の採用や昇進の在り方の改革が必要(指定校の完全撤廃、学校名にこだわらない採用、新卒一括採用の見直し、能力主義に基づく昇進など)。既に改革の動きは生じており、その推進を要請。

○ 親を含む国民の意識(横並び意識、同質志向、過度に年齢にとらわれた価値観等)の改革が必要。親は、現実の社会の動きを見据え、子どもたちの個性を尊重し、その自分さがしの旅」を扶けていくことが重要。

○ 過度の塾通いの是正を要請(親の側の配慮、塾関係者の節度ある対応)。

○ 文部省が中心となって、教育界の枠に閉じこもらず、関係省庁の協力を得ながら、幅広い国民の理解と協力を得つつ取組を推進することが必要。

第3章 中高一貫教育

(中高一貫教育の意義と選択的導入)

○ 中高一貫教育には、様々な利点あるが、特に、「ゆとり」ある学校生活を送ることを可能にするということの意義は大(子どもたちは、様々な試行錯誤をしたり、体験を積み重ねること等を通じて、豊かな学習をし、個性や創造性を伸ばすことがより可能に。その中で、じっくり学ぶことを希望する子どもへの十分な指導がより可能に)。このため、中高一貫教育を享受する機会をより広く提供していくことが適当。

<利点>
 [1] 高等学校入学者選抜の影響を受けずに「ゆとり」のある安定的な学校生活が送れること
 [2] 6年間の計画的・継続的な教育指導が展開でき効果的な一貫した教育が可能
 [3] 6年間にわたり生徒を継続的に把握することにより生徒の個性を伸長したり、優れた才能の発見がよりできること
 [4] 中学校1年生から高校3年生までの異年齢集団による活動が行えることにより、社会性や豊かな人間性をより育成できること

○ なお、中高一貫教育には様々な利点がある一方で、留意すべき点もあり、それらに適切に対処していくことが必要。

<留意すべき点とそれらへの対処に関する考え方>

 [1] 受験競争の低年齢化につながることのないよう、公立学校では学力試験を行わない等、入学者を定める方法などについて適切な配慮が必要
 [2] 受験準備に偏した教育が行われることのないよう、普通科タイプの場合には特に配慮が必要
 [3] 心身発達の差異の大きい生徒を対象に円滑な学校運営を行うよう、日常の指導や学校運営に当たって、教員が緊密に連携し、きめ細かな配慮をしていくことが必要
 [4] 生徒集団が長期間同一メンバーで固定されることにより学習環境になじめない生徒が生じることのないよう、「ゆとり」の中で、様々な試行錯誤をしたり、体験を積み重ねること等を通じて豊かな学習を行えるようにすることが必要。また、途中で転学を希望する生徒に対して十分に配慮していくことが必要

○ 中高一貫教育の導入に当たっては、子どもたちや保護者などの選択の幅を広げ、学校制度の複線化構造を進める観点から、中高一貫教育の選択的導入を行うことが適当(従来の中学校・高等学校に区分された中等教育も大きな利点や意義を持っており、中高一貫教育の利点と問題点の軽重を総合的に判断するのは子どもたちや保護者)。
○ 中高一貫教育の選択的導入は、地方公共団体や学校法人などの学校設置者が、自らの創意工夫によって特色ある教育を展開する裁量の範囲を拡大することに資する。

(中高一貫教育の導入の具体的な在り方)

○ 中高一貫教育の具体的な在り方については、学校設置者の主体的な判断を尊重することが適当。国の役割は、そのための制度上の隘路を取り除くことを含めて、制度改革を行うこと。

○ 中高一貫教育の実施形態については、次のような類型が考えられ、中高一貫教育の円滑な導入を図るためには、学校設置者がそのいずれも選択できるよう、所要の制度改革を行うことが必要。

 [1] 同一の設置者が中学校・高等学校を併設する
 (a)独立した中学校・高等学校を併設
 (b)一つの6年制の学校(いわゆる6年制中等学校)として設置・運営
 [2] 市町村立中学校と都道府県立高等学校を連携する

○ 教育内容については、「ゆとり」の中で子どもたちの個性や創造性を大いに伸ばしていくものとすべき。その類型としては、普通科タイプ、総合学科タイプ、専門学科タイプなどが考えられ、そのいずれを採るかは学校設置者の選択に委ねていくべき。
 ただし、普通科タイプの場合は、受験準備に偏した教育を行わないよう強く要請。

○ 中高一貫校においては、特色ある教育を提供していくことが望まれるが、例えば、次のような特色を6年間の一貫した軸に据えて教育活動を展開していくことが有意義。

 [1] 体験学習を重視する学校

  • ボランティア体験、社会体験、勤労体験、自然体験などを積極的に導入

 [2] 地域に関する学習を重視する学校

  • 地域の歴史や文化、自然、産業を活かした指導内容、地域の人材の活用など

 [3] 国際化に対応する教育を重視する学校

  • コミュニケーション能力の育成、国際交流活動や国際理解教育の推進など

 [4] 情報化に対応する教育を重視する学校

  • インターネット等の活用、情報リテラシーや情報モラルの育成など

 [5] 環境に関する学習を重視する学校

  • 自然体験活動の充実、環境や自然を大切にする心の育成など

 [6] 伝統文化等の継承のための教育を重視する学校

  • 伝統工芸や伝統産業の技術の伝承、伝統技能の技の伝授、後継者の養成など

 [7] じっくり学びたい子どもたちの希望に応える学校

  • 個別のきめ細かな教育計画を立て子どもたちを指導。学習のつまずきを的確に把握し、基礎・基本を確実に学ばせ、じっくりと問題を克服。

○ 入学者を定める方法については、受験競争の低年齢化を招くことのないような適切な配慮が必要。特に、地方公共団体が設置する学校にあっては、学力試験を行わず、学校の個性や特色に応じて、抽選、面接、推薦等の多様な方法を適切に組み合わせることが適当。また、現在、学力試験を偏重する選抜や小学校教育の趣旨を逸脱した出題を行っている一部の国私立中学校に対しては、改善を要請。

○ 高等学校段階に進む時点での入退学等についての配慮が必要(進路変更を希望する生徒の他の高校への進学への配慮、高校段階での入学をある程度の数認めること、6年制の学校の第3年次修了者を中学校卒業者と同等に扱うことなど)

第4章 教育上の例外措置

(一人一人の能力・適性に応じた教育の様々な取組と学習の進度の遅い子どもへの配慮)

○ 一人一人の能力・適性に応じた教育の様々な取組が進められることが必要。形式的な平等を重視するあまり画一的な指導をするのでなく、個に応じた指導を進めることが必要。

○ 学習の進度の遅い子どもに対して十分配慮し、その学習への適切な支援を行うことが必要(個別指導や補充学習、ティ-ム・ティ-チング、教材の工夫、選択履修の時間における反復学習など)。

(特定の分野について優れた能力や意欲を有する生徒に対する多様な教育機会の充実)

○ 文部省の「教育上の例外措置に関するパイロット事業」では、高校生を対象に、大学や民間団体が科目等履修生の受入れ、公開講座やセミナーの開催などを実施。子どもたちの才能を伸ばす大きな契機として意義が大。

○ パイロット事業だけでなく、大学や民間団体が自主的に科目等履修生の受入れ、公開講座やセミナーの開催などに取り組み、特定の分野について優れた能力や意欲を有する高等学校の生徒に対する多様な教育機会を充実すべき。

(大学入学年齢の特例)

○ 諸外国の状況やパイロット事業の実施状況などを踏まえると、稀有な才能を有するごく少数の者については、現在の制度内の措置だけでは不十分。更に進んで、その能力・適性に応じ、才能を一層伸長し、個性を最大限引き出す観点から、教育上の例外措置として、18歳未満であっても特定の分野について稀有な才能を有する者については大学入学資格を認めるよう、制度改革を行うことが適当。

○ 大学入学年齢の特例は、いわゆる「受験エリート」を対象とするものではなく、受験競争に影響を及ぼすことのないようなものとして構想。

○ 対象分野については、次のような理由により、当面、数学と物理に限ることが適当。

  • 稀有な才能を比較的発見しやすく、かつ比較的早い年齢段階で才能が伸びる分野であること
  • 学校教育と関連を持ちながら、才能を伸ばす必要がある分野であること
  • パイロット事業で対象としており、その成果も報告されてきている分野であること

○ なお、芸術・スポーツ分野については、学校外の活動においても才能を伸ばすことができることを重視し、学校教育の分野での特別な措置は取らないことが適当(将来的には、答申の実施状況を踏まえつつ、対象分野の拡大について検討することが必要)。

○ 対象者については、一分野で突出した才能を保持し、早い時期に専門家から適切な指導を受けることが望まれる者で、将来、学問のフロンティアを開拓する可能性のある者を想定(全国的にごく少数)。当面、高等学校に2年以上在学した17歳以上の者とすることが適当(将来的には、例えば年齢制限を16歳以上の者とすることなどについて、答申の実施状況を踏まえつつ、検討することが必要)。

○ 受入方法については、推薦などに基づき、大学において様々な資料を基に丁寧な選考を行っていくことが適当。

○ 早期入学を実施するかどうかは、各大学の自主的な判断によるものとすべき。ただし、受入大学は、博士課程を有する等の一定の条件を充たすことが必要。また、受入れ後は、履修指導の充実、進路変更への対応などについて一定の配慮が必要。

○ 受入大学における対象者の選抜方法等の具体的な実施方法については、自主的なガイドラインを策定し、その実施状況等を公表し外部評価を受けることが適当。

○ いわゆる「飛び級」(小・中・高等学校の各学校段階内において学年を飛び越すこと)については、受験競争を激化させるおそれが強いことなどから、実施しないことが適当。

第5章 高齢社会に対応する教育の在り方

(高齢社会の展望と高齢社会に対応する教育の基本的な考え方)

○ 今後の我が国は、長寿化の進展等により更に高齢化が進行し、未だ世界が経験したことのない超高齢社会に突入。高齢社会を生きていく子どもたちをどう育てていくかは、社会にとっても、子どもたち自身にとっても重要な問題。

○ 高齢社会に対応する教育の在り方として、次の3点を基本的な考え方とすべき。
 [1] 子どもたちが、高齢者をはじめ、立場や価値観が異なる人間と共に生きていくという考え方をしっかりと持つことが重要。特に、他者を尊重する態度や尊敬する気持ち、他人を思いやる気持ち等の豊かな人間性をはぐくむとともに、実際に高齢者のために行動する意欲や実践的態度をはぐくむことが重要。
 [2] 長寿化する社会の中で、生涯にわたって学んでいく態度や、生涯にわたり健康な生活を送るための基礎的な健康や体力をはぐくんでいくことが重要。
 [3] 高齢者が子どもたちの教育に積極的に参加し、子どもたちが生きた知識や人間の生き方を学ぶことができるようにすることが重要。

(学校における取組)

○ 豊かな人間性を育成するため、幼稚園から高等学校までの各学校段階で、あらゆる教育活動において取組を進めることが必要。「総合的な学習の時間」の活用も有意義。

○ 高齢社会に関する基礎的理解や、介護・福祉の問題など高齢社会の課題に関する理解を深めさせるため、教科間で関連付けを図りつつ、指導の一層の充実を図ることが必要。

○ 各学校段階で、子どもたちが実際に高齢者と交流し、触れ合う活動や、介護・福祉に関するボランティア活動を体験することを重視すべき(幼稚園・小学校における高齢者との触れ合いプログラムの導入、中学校・高校での介護体験など)。その際、地域社会や関係施設との連携が重要。

○ 体験活動の実施に当たっては、子どもたちと高齢者が心の交流をすること、具体的な実施方法については柔軟に考えること、子どもたちが「高齢者から学んでいる」という気持ちを培うようにすること、に特に留意することが必要。

○ 教員の資質・能力の向上を図るため、養成や研修の段階で介護・福祉のボランティア活動等を体験することが重要。採用においてもそうした活動実績を評価すべき。

○ 豊かな経験と知識を有する高齢者を学校教育の場で積極的に活用することは重要であり、高齢者にとっても意義のあること。そのため、教育委員会における人材バンクの整備等が有意義。

○ 学校施設と高齢者福祉施設の連携を進めるべき(施設の複合化や余裕教室の転用の検討など)。

(家庭や地域社会における取組)

○ 豊かな人間性をはぐくむためには家庭教育の果たす役割が重要であり、そのための支援策を展開していくことが必要。

○ 地域社会において、子どもたちと高齢者が触れ合う機会を積極的に設けるべき(社会教育団体等による交流活動や、社会教育施設による交流プログラムの積極的な展開、福祉施設等による介護体験の機会の設定、博物館・美術館等での高齢者の活用など)。

○ 市町村教育委員会が、地域の幅広い協力を得つつ、地域社会における交流活動に関する情報提供を充実させていくことが必要。学校や家庭がそれらの情報を活用し、子どもたちの参加を促していくことを期待。

○ 国民一人一人が助け合う気持ちを持つことが必要であることからも、子どもたちのボランティア活動の促進を図ることは極めて重要。

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