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地域社会と文化について(答申) (第25回答申(昭和54年6月8日))

昭和54年6月8日
生涯学習政策局政策課

25 地域社会と文化について(答申)

(答申)

昭和54年6月8日

文部大臣 内藤 誉三郎 殿

中央教育審議会会長
高村 象平

地域社会と文化について(答申)

 本審議会は、昭和52年6月、文部大臣から「当面する文教の課題に対応するための施策について」諮問を受けて以来、広く我が国文教の諸問題について審議を進めてまいりましたが、その過程において、文化の問題を地域社会とのかかわりから取り上げることとし、このため、小委員会を設け、関係団体から意見を聴取するなどして審議を重ねた結果、今回、次の結論を得ましたので答申します。

 およそ文化には、学問、芸術など高度の創造的活動の面もあるが、本審議会は、今後の我が国文化の基盤を培うことに配慮し、国民が日常生活の中で自己の向上のために行う自発的な営みを文化活動としてとらえ、それが展開される場である地域社会との関連を重視し、地域社会における文化活動の基本的な考え方と文化行政の視点及び施策とについて、以下のように取りまとめた。
 国は、今後、所要の行財政上の措置を講じ、積極的にこの答申の趣旨の実現を図るよう要望する。なお、地方公共団体においても、この答申の趣旨が施策に十分生かされるよう期待する。

1 基本的な考え方

(文化活動の重要性)

 我が国は豊かな風土に恵まれ、人々は、日々の勤労とともに、日常生活に根ざしたさまざまな文化的な活動を営み、自然と融合しつつ、情感を重んじた独自の文化を形成してきた。
 今日、我が国においては、戦後の急速な経済成長によって国民の生活水準は向上し、物質的生活の豊かさは一応達成されつつあるが、一面において、心の豊かさに対する国民の要請が高まり、それに伴い文化面での対応の必要性が広く認識されるようになってきた。
 いわゆる高学歴社会の進行や人口の高年齢化、自由時間の増大等を背景として、勤労者、高齢者、家庭婦人、青少年など国民の間には、教養や趣味のための学習、心身の健康のためのスポーツ、芸術の鑑賞や創作活動など、多様な文化活動に対する欲求が増大しつつある。
 これらの文化活動は、国民の一人一人がそれを通じて個性を伸ばし創造性を培い、自己の向上を図ろうとする自発的な営みであって、これらの要求に対して、人間の精神生活の豊かさと調和を重視しつつ、いかに適切に対応するかは我が国の文化にかかわる基本的な問題である。

(地域社会における文化活動の意義)

 国民の文化活動は日常生活に根ざしたものであるから、日常生活の基盤である地域社会と深く関連している。
 地域社会においては、大都市、地方都市、農山漁村における生活様式や住民の意識などが急激に変化する一方、居住環境の重視や近隣社会の見直し、都市と農村の機能を結びつけようとする考え方など、新しい動きがみられる。
 これらは、住民が温かい心の触れ合いを通じて、豊かな人間性を回復し、生きがいに満ちた生活を営んでいくことができる場の形成を重視しようとするものである。このような地域社会は、もとより住民の一人一人が互いに尊重し合い、その協力の下につくり上げていくものであるが、その際、住民の日常自発的に営む文化活動が、相互の交流を深め連帯感を育てる面を含めて、大きな役割を果たすことが期待される。
 このような文化活動を盛んにするためには、行政区画や経済活動圏、通勤通学圏に必ずしもとらわれないで、地域住民の日常居住する場を基礎としながら、住民が多様な文化活動を展開する具体的な範囲を文化活動圏としてとらえ、その視点から諸般の施策を進める必要がある。
 なお、地域社会における文化活動の在り方に関連して、個人が自主的に独りで行う文化活動を十分尊重するとともに、地域住民が公共の文化施設等を自ら責任をもって利用する態度など、地域社会の一員として必要な教養を進んで学び合えるような場を醸成することが望まれる。

2 文化行政の視点及び施策

 地域社会における文化活動に関する住民の多様な要請に適切に対応するためには、もとより民間の活力に期待される面が多いが、また、行政の果たすべき役割は極めて大きい。
 国及び地方公共団体は、地域社会における文化活動の重要性を認識して、以下のような視点に立って文化活動に関する施策を拡充し、地域の特性や伝統を考慮しつつ多様な行政を展開し、住民の一人一人がその生涯の各時期を通じて自由にかつ自発的に文化活動を行うことができるよう配慮すべきである。
 その際、地域社会の変化の方向を見通し、広域的な視野と長期的な展望の下に、全国的に共通する普遍的な文化の面にも十分配慮し、また、文化に関する国際的に開かれた観点をもって、諸般の施策が進められる必要がある。

(1) 文化活動圏を考慮した場の整備

 人々の文化活動は日常的な生活圏から広域的な圏域までさまざまな場で行われているが、地域社会における文化活動の場としては、各種の公共施設、企業・民間の施設、学校施設が中心となっており、また、道路や広場のような公共空間あるいは自然に至るまで、さまざまな場がある。施設については、その新設はもとより、既存施設の一層効果的な利用を工夫し、また、空間等についてはその文化的側面に留意しつつ、幅広く整備し活用するという観点が望ましい。
 社会教育施設、体育・スポーツ施設、芸術文化施設など、各種の文化活動のための施設については、文化活動圏という観点を導入して配置する必要がある。例えば、日常的な文化活動圏では、住民が気軽に利用できる、多目的な機能をもつ施設を整備し、広域的な文化活動圏では、住民の多様な文化活動に対する要請にこたえて、専門分化した機能をもつ施設を整備すべきである。また、それぞれの文化活動圏においては、隣接地域の施設との有機的関連を考慮しつつ、特色ある施設を設置し、広く利用に供するような配慮が必要である。
 文化活動の拠点となる施設の整備に当たっては、それらの施設に地域に対する愛着と帰属感の象徴としての働きをもたせ、地域社会の振興又は再生の場とするような観点も必要である。
 また、より広域的な文化活動圏の中心となる高次の施設については、文化活動の全国的な均霑(てん)を考慮し、いわゆる文化の東京集中の傾向を改め、多極的な集積を目指して整備するような観点を導入することも必要である。
 なお、これらの施設の配置に当たっては、地域の伝統や自然との調和についても十分配慮することが望ましい。

(2) 地域社会における学校開放の促進

 学校はその保有する施設、教職員、情報等の面において文化活動に貢献し得る豊かな機能をもっており、今後、学校が地域社会における文化活動の面で果たすべき役割は一層高まるものと思われる。
 小学校・中学校・高等学校の施設については、体育・スポーツ活動面を中心として住民への開放が既にかなり進められているが、学校の教育的・文化的機能を更に効果的に生かして、地域住民の学習活動や芸術文化活動の面においても学校の開放を推進する必要がある。
 その際、施設について管理・利用面での整備を行うとともに、学校の新設や改築に当たっては、文化活動の面も考慮して企画・設計上、柔軟性を加えるような工夫が必要である。なお、学校開放については、もとより住民の一人一人が愛着をもって学校の利用に当たるとともに、学校に対する過重な負担にならないよう積極的な方策を考慮すべきであり、更に、学校開放が各学校の実情に即して地域全体として計画性をもって進められるよう留意する必要がある。
 また、大学についても、公開講座の開催や体育・スポーツ施設の一般利用などが行われているが、その開放を更に積極的に進めるべきである。

(3) 民間の活力への期待

 地域社会における文化活動を促進するためには、国や地方公共団体による条件整備が重要であるが、公的な制度を弾力的に運用するとともに、民間の意欲や創意を積極的に生かして、その多様な活力を発揮させる方途を工夫する必要がある。
 例えば、企業・団体等のもつ施設の地域住民への開放の促進、民間資金の導入、民間の発達した情報媒体の活用、あるいは国、地方公共団体と民間とが連携・協力して施設を設置・運営する方式なども考えられる。
 また、さまざまな知識・経験を有する高齢者や意欲をもつ家庭婦人等がその善意と自発性に基づいて文化活動の指導者として参加したり、あるいは芸術文化などの分野における専門家がその居住する地域の文化活動の発展に貢献し得るような仕組みを工夫すべきである。
 その際、住民がこれらの人々の指導や助言を求めやすくするため指導者に関する組織的な情報を整備し、これらの人々の研鑚(さん)の機会を充実し、また、その処遇、称号、顕彰等の方策について検討する必要がある。

(4) 文化振興のための施策

 国及び地方公共団体は、地域社会における文化活動の充実・発展を図るための基本的な施策として、公共施設を整備し、文化活動に関する各種の事業を実施するとともに、文化活動に不可欠な指導者の養成・配置を図り、各種の情報提供を積極的に行うべきである。
 また、地域社会において自主的に文化活動を行い優れた業績を挙げている団体やグループ等の活動を一層助長するため、それらの事業に対する援助を充実する必要がある。
 更に、地域社会における文化活動の在り方を検討するため特定の地域を設定し、そこでの事例や試みなどの成果を他にも広く提供して、それぞれの地域がこれらのことを通じて相互に啓発し、文化活動に関する施策を一層効果的に推進し得るような配慮も必要である。
 文化活動に関する事業の援助や指導者の養成・研修、情報の提供などを行う文化振興のための団体を設置することについて、必要に応じて立法措置を含め、検討することが強く望まれる。
 なお、文化活動に関する施策については、その成果を長期的な観点から評価しつつ推進を図ることが望ましい。

(5) 文化に関する行政の責務

 地域社会における文化活動は、地域住民の日常生活を基盤とするものであり、地域社会の形成に深くかかわるものであるから、地域社会と文化に関して以上に述べたような視点や施策は、広く行政の全体的視野の中で生かされ、推進されるべきものである。このことは地方公共団体の一般行政において十分配慮されるべき課題であるが、特に、地域社会における文化活動に関する行政を担当する教育委員会の責任は極めて大きい。
 教育委員会は、文化活動に関する行政の重要性を認識し、そのための行政組織の整備や担当職員の充実など、その体制を整備するとともに、文化活動に関する行政と一般行政との調和・連携を図りつつ、更に積極的に文化活動に関する施策を推進する必要がある。

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