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特殊教育の充実振興についての答申 (第18回答申(昭和34年12月7日))

昭和34年12月7日
生涯学習政策局政策課

18 特殊教育の充実振興についての答申

(諮問)

昭和34年7月13日

中央教育審議会

文部大臣 松田 竹千代

 次の事項について、別紙理由を添えて諮問します。

特殊教育の充実振興について

(理由)

 盲者、聾(ろう)者、精神薄弱者、肢(し)体不自由者および身体虚弱者等のための特殊教育の振興については、すでに中央教育審議会からの答申もあり、その趣旨にそつて政府は各種の施策を行つてきたが、この教育に対する社会一般の理解の不足および対象者の多数なことなどのために、いまだ必ずしもじゆうぶんな成果をあげているとはいい難い。
 しかしながら、この教育を積極的に推進することは、ひとりこれら心身に障害ある児童・生徒に対して教育の機会均等を図るためのみでなく、広く社会全体の見地からもきわめて緊要なことである。他方最近におけるこの教育の方法技術の進歩には著しいものがあり、その実績もあがりつつあるので、この際特殊教育の充実振興について更に検討を加え早急に方策を講ずる必要があると考える。

検討すべき問題点

1.盲学校、聾(ろう)学校、養護学校および特殊学級の性格について

 盲者、聾(ろう)者または精神薄弱者その他心身に故障のある者のための教育機関として、盲学校、聾(ろう)学校、養護学校および特殊学級があるが、これらについて次のような問題を検討する必要がある。

(1) 盲学校、聾(ろう)学校、養護学校および特殊学級について、その対象とする児童・生徒の観点からそれぞれの性格を明らかにする必要はないか。

(2) 養護学校の対象とする児童・生徒は、盲者、弱視者、聾(ろう)者および難聴者以外の心身に故障のある者となつているが、精神薄弱者、肢(し)体不自由者および病弱者、身体虚弱者等その教育の方法技術等は非常に異なるので、それぞれ別種の学校を設ける必要はないか。

2.養護学校、特殊学級の設置について

 精神薄弱者、肢(し)体不自由者、病弱者および身体虚弱者のための養護学校、特殊学級は、最近しだいに増加しつつあるが、これらの教育の対象とすべきものが非常に多数であることにくらべればまだきわめてふじゆうぶんで、多くの児童・生徒が適切な教育の機会に恵まれないまま残されている。このような現状から見て

(1) 養護学校の義務制の実施について年次計画により具体的方策を講ずる必要はないか。

(2) 特殊学級について、現在の任意設置制を義務設置制とする必要はないか。

3.盲学校、聾(ろう)学校の教育について

 盲者、聾(ろう)者のための盲学校、聾(ろう)学校の小学部および中学部の義務制は完成し、制度的には一応整備されたと認められるが、これらの教育の対象となる児童・生徒の特質にかんがみるときは、たんに、小学部および中学部における教育のみではじゆうぶんな教育効果が期待できない。よつて次の事項について検討を要する。

(1) 高等部の充実整備をはかる必要があると考えるが、そのためにはいかなる具体策が必要か。

(2) 特に、聾(ろう)者については、言語教育を早期に行う必要があるので、幼稚部の設置について特別の措置が必要ではないか。

4.就学の奨励について

 特殊教育諸学校の就学は、非常に低調であり、義務教育である盲学校、聾(ろう)学校の小学部および中学部についてすらなおその就学率は低い。これらの学校教育の特殊事情にかんがみ、その就学状態を改善するため次の事項について検討を必要とする。

(1) 盲学校、聾(ろう)学校の義務学年の就学率を向上させる方策

(2) 盲学校、聾(ろう)学校の高等部および幼稚部の教育の重要性にかんがみ、これに対する就学奨励の方法

(3) 養護学校および特殊学級の増設整備に伴う精神薄弱者、肢(し)体不自由者、病弱者および身体虚弱者の就学奨励の方法

5.教職員の養成について

 盲学校、聾(ろう)学校、養護学校および特殊学級の増設に伴い優秀な教職員を多数必要とするが、その養成方法を早急に検討する必要がある。

(1) 直接養成の方法をどうするか。

(2) 再教育の方法をどうするか。

(4) 寮母の養成方法をどうするか。

6.教員の待遇改善について

 これらの教育の困難性にかんがみ、これに従事する教職員の待遇をさらに改善する必要があるが、その方法をどうするか。

7.私立の特殊教育諸学校に対する援助について

 この教育の特殊性にかんがみ、私立の特殊教育諸学校に対し援助を行う必要はないか。

8.一般社会の協力理解および関係各省との連係について

 これら心身に故障のある者に対する措置としては、学校における特殊教育のみではふじゆうぶんであり、関係各省との緊密な連係や広く一般社会の協力理解が必要であるので次の事項について検討を必要とする。

(1) 特殊教育諸学校を卒業した者の就職等社会的問題については、一般社会の理解協力が必要であると考えるが、その具体的方策は、どのようなものが望ましいか。

(2) 心身の故障の程度がはなはだしく学校教育の対象とならない者の保護や犯罪者および虞犯者の教護等については、関係各省の協力が必要であるが、そのためにはどのような方策が望ましいか。

(答申)

昭和34年12月7日

文部大臣 松田 竹千代 殿

中央教育審議会会長
天野会長

特殊教育の充実振興についての答申

 本審議会は、特殊教育の充実振興について、特別委員会を設けて審議を行なつて得た結果に基づき、総会においてさらに慎重に審議し、次の結論に到達しましたので答申いたします。
 心身に障害のある児童・生徒に対して、有効適切な教育を行ない、その能力の伸長、人格の完成を図ることは、ひとりこれらの者の社会的自立を助け、その福祉を図るためにとどまらず、広く社会全般にとつてもきわめて必要なことである。
 しかるに、わが国におけるこの教育の現状はなおふじゆうぶんな点が多く、特に精神薄弱者や肢(し)体不自由者の教育については諸外国に比べ著しく立ち遅れている。また盲聾(ろう)教育についても、その就学率が低く職業教育のための施設設備もじゆうぶんでない。
 最近におけるこの教育の方法技術等の発達には目ざましいものがあり、その効果が大いに期待される段階にあるので、これらの教育施設を整備し、内容の充実を図るとともに、就学奨励を促進することは目下の急務と考える。
 またこの教育を振興充実するためには、広く一般社会の協力理解ならびに関係各省のじゆうぶんな連係を必要とすることは言うまでもなく、この面における施策もまたきわめて重要である。
 以上の観点から本審議会は特殊教育の充実振興について次のような方策を定めた。政府はこの教育の重要性にかんがみ、すみやかにこの方策に従つて具体的計画をたて所要の法的、予算的措置を講じ、その実現を図るよう要望する。

1.盲、聾(ろう)、養護学校および特殊学級の対象

(1) 盲学校、聾(ろう)学校、養護学校および特殊学級のそれぞれの対象について

(イ) 盲者(強度の弱視者を含む。)および聾(ろう)者(強度の難聴者を含む。)については、その数が比較的少なく、また特殊の教育技術を身につけた教員および特別の教育施設・設備を必要とすることから、盲学校または聾(ろう)学校において教育を行なうべきものと考えられる。

(ロ) 軽度の弱視者または難聴者については小・中学校の普通学級において特に留意して指導を行なうのが適当である。中程度の弱視者および難聴者については、今後精密な実態調査を行ない、その結果に基づいて特殊学級を設ける等適切な措置を講ずるものとする。

(ハ) 精神薄弱者については、その数が比較的多くかつ障害の程度に幅がある点から考えて、その程度の重い児童・生徒は主として養護学校において、軽い児童・生徒は主として特殊学級において教育を行なうのが望ましい。
 なお、いわゆる中間児の教育についても配慮する必要がある。

(ニ) 特別の医学的配慮や機能訓練の必要な肢(し)体不自由者については、養護学校において教育を行なうのが適当である。

(ホ) 長期療養を要する病弱者および程度が高く比較的長期の養護を要する身体虚弱者は養護学校において教育を行ない、程度の軽い身体虚弱者はその程度、地域等の実情に応じ特殊学級において教育を行なうのが望ましい。

(2) 養護学校について
 養護学校は、対象とする児童・生徒の障害の別により、その実質や管理運営において異なる点が多いので、それぞれ対象に応じて別種の学校とする必要がある。

2.養護学校、特殊学級の設置について

(1) 精神薄弱者の教育について

(イ) 市(特別区を含む。以下同じ。)および人口3万人以上の町村については、早急に年次計画をもつて、人口数に応じ、一定数の特殊学級の設置を義務づけ、所要の財政措置を講ずること。

(ロ) 人口3万人未満の町村が特殊学級を設置する場合にも義務設置を行なう市町村に対すると同様国の補助を行なうこと。なお(イ)に該当する市町村が設置を義務づけられた数をこえて特殊学級を設置する場合にも、補助を行なうこと。

(ハ) 都道府県に対し、養護学校の設置を奨励するための国の措置をいつそう強化して、その設置を義務づけること。

(2) 肢(し)体不自由者の教育について

(イ) 早急に年次計画をもつて、都道府県に養護学校の設置を義務づけ、所要の財政措置を講ずること。

(ロ) 都道府県が(イ)によつて義務づけられた数をこえて養護学校を設置する場合および市町村が設置する場合にも(イ)と同様国の補助を行なうこと。

(3) 病弱者および身体虚弱者の教育について

(イ) 長期療養を要する病弱者で学校教育が可能なもののための養護学校の設置を奨励するため国の措置をいつそう強化すること。

(ロ) 普通学級における教育が困難な身体虚弱者のために市町村が特殊学級を設置することを奨励すること。

(4) これらの特殊学級については、一学級当たりの教員定数の増加を図るとともに、教材費の補助単価を養護学校の教材費の単価と同様にするほか、学級の運営に必要な経費等についても考慮すること。

 なお、中学校の精神薄弱者の特殊学級における職業教育の重要性にかんがみ、その施設、設備の充実を図るため特別の助成措置を講ずること。

(5) 養護学校に、幼稚部、高等部を置く場合には、小・中学部と同様の国の補助を行なうとともに、とくに高等部の職業教育の設備の充実を図ること。

3.盲者および聾(ろう)者の教育について

(1) 盲学校・聾(ろう)学校の高等部の教育の重要性にかんがみ次の措置を講ずること。

(イ) 施設整備費・教職員給与費・教材費について、小・中学部についてと同様の国の補助を行なうこと。

(ロ) 職業教育の設備については、特にその充実を図ること。

(2) 聾(ろう)者に対する就学前教育の重要性にかんがみ、聾(ろう)学校の幼稚部の設置に対する助成を図ること。

4.就学奨励について

(1) 特殊教育諸学校の就学奨励費に学用品費その他必要な費目を加える等その拡充をはかること。

(2) 就学奨励費の支弁については幼稚部、高等部(専攻科を含む)の幼児・生徒についても、小・中学部の児童・生徒についてと同様の措置を講ずること。
 なお、特殊学級の児童・生徒についても必要に応じ就学奨励の方途を講ずること。

(3) 学校保健法に基づく就学時の健康診断の機会を活用し、特殊教育の対象となるべき者のはあくに努めるとともに、父兄の相談に応じ就学指導の適正を図るための組織を整備すること。

(4) 保護者、一般教員および社会に対するけいもう宣伝をさらに徹底させる措置をとること。

5.教員および寮母等について

(1) 教員の養成について

(イ) 数か所の国立大学に養成課程を設け、普通免許状所有者のうちの希望者について養成を行なうこと。
 なお、その期間は1年とし、在学期間中には育英資金の貸与(返還免除の措置を講ずる)を行なうこと。この場合、現職者については、その身分、待遇について特に考慮し、教員が進んでこれに進学できるよう措置すること。

(ロ) 年次計画により再教育講習会を開催して、資質の向上を図るとともに、所要免許状取得のための単位の授与を行なうこと。

(ハ) 教員養成を主たる目的とする大学(学部)において特殊教育に関する科目を履修させるとともに、附属学校に特殊学級を設けること。

(2) 寮母について

(イ) 任用資格を定めること。

(ロ) 年次計画により、再教育講習会を開催して資質の向上を図ること。

(3) 校医、養護教諭について
 養護学校には、その児童・生徒の障害に応じた専門の校医および必要数の養護教諭を置くこと。

(4) 教員および寮母の待遇等について

(イ) 調整額を引上げる等の方法により待遇の改善を行なうこと。

(ロ) 盲学校・聾(ろう)学校・養護学校および特殊学級の教員については、都道府県相互間および他の学校との人事交流を奨励する措置を講ずること。

(5) 特殊教育の研究、特殊教育教員の研修などを行なうため、特殊教育研究機関を設けること。

6.私立の特殊教育学校に対する国の助成

 現在特殊教育学校の数は少なく、私立の学校が存在することはきわめて重要な意義をもつので、国が助成金を交付して、その教育水準の維持向上および父兄負担の軽減を図ること。

7.特殊教育に関する行政機構の整備について

 文部省に特殊教育課を、各都道府県の教育委員会に特殊教育についての専任の指導主事その他の職員を設けるなど、特殊教育に関する行政機構の整備を図ること。

8.社会の協力理解および関係各省との連係について

(1) 特殊教育機関を卒業した者の就職その他その社会的自立を図るために関係各省の連係を密にし必要な方策を講ずること。また広く社会の協力と理解を深め、保護者の団体の活動を促進するとともにこれら心身に故障のある者の社会的自立を後援する団体の育成が望ましい。

(2) 学校教育の対象とすることができない程度に心身の故障の重い者が、比較的貧困家庭に多い実情にもかんがみ、これらの者を放置することなく、精神薄弱児施設その他の児童福祉施設に収容して保護することが望ましいし、あわせて心身に故障のある者に非行の多いことをも考慮して、これら心身に故障のある者の保護対策のため関係各省の連係を密にし統一的施策を講ずること。

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