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教員養成制度の改善方策について(答申) (第16回答申(昭和33年7月28日))

昭和33年7月28日
生涯学習政策局政策課

16 教員養成制度の改善方策について(答申)

(諮問)

昭和32年6月10日

中央教育審議会

文部大臣 灘尾 弘吉

 次の事項について、別紙理由を添えて諮問します。

教員養成制度の改善方策について

(理由)

 学校教育の成否は、これを担当する教員の教育力のいかんに左右されるところがきわめて大である。したがつて学校の種類に応じ、望ましい質の教員の適当数を養成してこれを適正に配置することは、学校教育の振興を図る上に不可欠の要件である。
 この点にかんがみ、政府としては、戦後の新学制の実施に即応し、教員養成に関する各種の施策を行つてきた。しかしながら、今後ますます国民生活の向上、文化の進展を期するためには、教員の資質については必ずしもじゅうぶんとは認めがたくまた需給の調整についても問題なしとしない。
 ここにおいて現行の教員免許制度、教員養成制度あるいは現職教育の方法等について検討を加え、早急にその改善方策を樹立する必要があると考えられる。

検討すべき問題点

1.教員免許制度について

(1)教員の資質向上の見地から各種教員免許状の取得要件の適正化を図る必要はないか。この際現場の要請との調整をいかにすべきか。

(2)教員免許制度と大学制度との調整をどうしたらよいか。また現行教育職員免許法の開放主義のたてまえを再検討する必要はないか。

2.教員養成制度について

(1)少なくとも義務教育学校教員については、現行の国立大学における教員養成を質的にもさらに強化する必要はないか。その際、教育課程、履修方法、教官組織、施設、設備および学生補導等の諸点について検討を要するものと思われる。

(2)このような義務教育学校教員については将来どの程度養成すべきか。

(3)このような義務教育学校教員の養成にあたり優秀な人材を誘致し、卒業者の配置の適正をはかるため、適当な入学者選抜方法、奨学制度等を考慮する必要はないか。

3.その他

(1)教員の需給を調整するため、国および地方に適当な連絡の方法を考慮する必要はないか。

(2)現職教育を効果あらしめるにはどうしたらよいか。

(答申)

昭和33年7月28日

文部大臣 灘尾 弘吉 殿

中央教育審議会会長
天野会長

教員養成制度の改善方策について(答申)

 本審議会は、教員養成制度の改善方策について、特別委員会を設けて審議を行って得た結果に基き、総会においてさらに慎重に審議し、次の結論に到達しましたので答申いたします。

 教師は教育に対する正しい使命感と児童生徒に対する深い教育的愛情とを基盤として、世界的視野に立った人間的国民的一般教養を備えるとともに、社会の進展に即した専門的知識と児童生徒の教育に即した教職教養を有しなければならない。しかもこれらの知識教養は自主的人格のうちに統合され、教育に対する全体的な識見、情操を高めうるものであることが必要である。
 したがって教師としての職業は、高い教養を必要とする専門職業であり、その資格の付与は、これらの要請に十分にこたえうるよう周到な配慮の下に行われなければならない。
 戦後教員の養成は、旧制度の弊にかんがみ大学においてこれを行うという方針を確立し、教育職員免許法に定める所要の単位を履修した者に対してはすべて教員の資格を与えるという開放的制度をとったのである。
 しかしながらその実施後の状況をみるに、開放的制度に由来する免許基準の低下と、制定当時の教員需給の関係等による級別免許状制度の採用とにより、単に資格を得るために最低限度の所要単位を形式的に修得するという傾向が著しく、このため教育実習等教員に必要な教育が名目的に行われる場合も少なくない。その結果教員たらんとする者に対してもその職能意識はもとより教員に必要な学力、指導力すら十分に育成され得ない実情にある。
 また、主として義務教育の教員の育成に当っている国立大学においても、教員を育成するという目的が必ずしも明確でなく、免許法の欠陥と相まって、教員を育成するに必要な教育が十分には行われず、また設置当初の事情から教員組織、施設設備もきわめて不十分であり、その形体についても、教員の育成のための統一ある教育を行い難いものもあり、他方教員の需給も十分な計画の下に行われていないため混乱を生ずるにいたっている。
 専門職業としての教員に要請される高い資質の育成のためには、教員の養成を大学において行うという方針を堅持すると同時に、開放的制度の下におけるこれらの欠陥についてはすみやかにこれに改善を加え教員の育成のための体制の整備を図り、その教育基準を確立しなければならない。特に義務教育の任に当る教員については、その資質の向上および基幹となるべき数の確保と配置の適正について遺憾のないよう、その組織を確立するとともに内容の整備充実について格別の措置を行う必要がある。
 なお、教員の資質の向上を図るためには、その一環としての現職教育についても十分な施策が必要であり、また教員の社会的地位の向上が必要であることは論をまたないところである。
 以上の観点から本審議会は教員の養成、免許および現職教育等の改善について次のような方策を定めた。政府は教員の資質がわが国教育の成果に重大な影響を及ぼすことに思いをいたしすみやかにこの方策に従って具体的計画をたて、所要の法的措置および予算措置を講じ強い決意をもつてその実現を図るよう要望する。

1.教員養成の基本方針

 教員の養成は、国の定める基準によって大学において行うものとする。この基準に基き必要に応じて国は教員養成を目的とする大学を設置し、または公私立大学について認定する。さらに一般の大学で教員養成を行うのに適当であると認めるものに対して認定を行うほか、一般の大学卒業者で教職教育を欠いている者については、国家検定試験の道を講ずる。
 義務教育学校の教員の養成については、その必要数を確保するよう国がその養成の責任をもたなければならない。
 教員の資質の向上のため教員養成の一環として、現職教育は組織的に行われなければならない。

2.学校種別ごとに必要とされる教員の資質とその育成

 教員に必要な資質としては、一般教養、専門学力(技能を含む。以上同じ。)、教職教養の三つが要求され、しかもこれらが教師としての人格形成の目的意識を中核として有機的に統一されることが必要である。しかして教職教養および専門学力については、各学校種別によってその要請に相違がある。

(1)小学校教員

 小学校教員は、児童の教育に即する教職教養と全科担当の学力を必要とする。よって小学校教員の養成を目的とする大学で教育する必要がある。
(幼稚園教員については原理的にはこれに準ずる。)

(2)中学校教員

 中学校教員は、生徒の教育に即する教職教養と担当する教科についての学力を必要とするが、担当する教科については、一部に偏しない巾の広い学力が要求される。よって中学校教員の養成を目的とする大学で教育する必要がある。この大学は1教科担当の教員を養成するのが目的であるが、公立中学校教育の現状にかんがみ当分の間2教科担当の教員をも養成することができるように考慮する必要がある。
 一方、担当教科のうちの一分野について高度の学力をもつ教員も要求されるので、これは主として一般の大学で育成されるものとする。

(3)高等学校教員

 高等学校教員は、生徒の教育に即する教職教養と特に担当教科、科目に対する高度の学力を必要とする。よって高等学校教員の養成を目的とする大学は必要であるが、現状では主として一般の大学で育成されるものとする。

3.教員養成を目的とする大学における養成

(1)目的・性格

 教員養成の目的を明確にした教育が行われるとともに、教育に関する学問的研究および教員の現職教育が行われる必要がある。

(2)教育課程等の基準

 教員養成の目的に即する教育課程、履修方法、学生補導、卒業認定および教員組織、施設設備等についての基準は国が定める。
 基準は、教員の質的向上が確保されるよう十分な専門的検討を経て決定される必要があるが、特に次のことに留意する。

(イ)教育課程は、一般教育、専門教育、教職教育が有機的に結合されたものでなければならない。なお、教職教育のうちで教育実習を重視し、あわせて教師としての人格形成に留意すること。

(ロ)必要な履修科目の内容、程度を明示すること。

(ハ)附属学校は充実整備すること。

(ニ)補導組織を確立すること。
 大学は基準の維持向上につとめ、国はその基準の維持について必要な指導監督を行うものとする。

(3)教員養成を目的とする大学の設置と認定

(イ)公立の義務教育学校教員の必要数を養成するため、国はその基準に基いて教員養成を目的とする大学(学部)を設ける。(教育大学(学部)と称する。)
(ロ)公私立大学の学部、学科で教員養成を目的とするものは、国が基準に基いて認定する。国は必要に応じ、この基準に基いて、国立大学に教員養成を目的とする学部、学科を設ける。

(4)国立の教育大学(学部)

(イ)養成対象とその範囲
(a)小学校教員
 公立小学校教員の大部分とする。
(b)中学校教員
 公立中学校教員の一定数とする。

(ロ)形体
(a)単科大学または総合大学の学部とする。単科大学の場合は、視野が狭くならないよう留意し、総合大学の学部とする場合は、教員養成の目的を十分果しうるよう運営できる組織としなければならない。
(b)現職教育のための課程を設けるものとする。

(ハ)配置
 地方教育行政の区分(都道府県)に従い、各区分ごとに1大学(学部)をおくことを原則とする。
 中学校教員については、教科によってはより広い地域に配置することができるものとする。

(ニ)入学者選抜
(a)人物考査を行う。
(b)高等学校において履修すべき科目を指定できるようにする。
(c)へき地教員の養成等の必要を満たすため委託学生の制度を設ける。

(ホ)奨学制度
 奨学制度を拡大し、十分な学費を貸与しうるようにする。その返還の免除についても特に指定した学校に就職した場合は、返還免除に要する勤務期間を短縮するなど特別の措置を講ずる。

(ヘ)卒業者の取扱
 全員教員に採用されるよう措置する。そのため(に掲げる機関において調整を行うほか、卒業者に対し就職指定の制度を考慮する必要がある。

(ト)養成数の計画および需給の調整
(a)養成数は、都道府県(広い地域を対象とするものはその地域)ごとの将来における学校種別、教科別の所要教員数、現在数および減耗率に基いて決定するが、その際教科および教育課程の基準などの推移、男女の比率等をも考慮しなければならない。
(b)教員の需給の調整その他教員養成について必要な事項を処理するため、文部省、都道府県教育委員会、教育大学の三者で構成する機関を設ける。

(備考)

  1. 国は高等学校教員のうち産業教育教員、芸能科教員等特に必要ある教員の一部および特殊教育教員の大部分の養成を担当する。
  2. 高等学校の産業教育教員、芸能科教員等については、全国的な規模において数か所の国立大学にその養成のための学科(課程)を設ける。
  3. 特殊教育教員については、国立の教育大学に特殊教育教員の養成課程を設け、普通免許状所有者中の希望者について養成することを原則とする。その期間は1年とし、養成数は各都道府県の需要数の程度とする。
  4. 2.3の教員については、奨学等必要な事項について小中学校教員と同様の取扱をする。

4.一般の大学における養成

 一般の大学(教員養成を目的とする大学以外の大学(学部、学科))のうち教員養成に適する学科(専攻)については国が認定する。

(1)基準および認定

 国は教育課程、履修方法、教員適格の認定、教員組織および施設設備等について基準を定め、これに基いて学科(専攻)を認定する。この場合、教育課程の基準については、教員養成を目的とする大学の教育課程の基準に準ずるものとするが、教育実習を要しない。
 大学はその基準の維持向上につとめるものとし、国はその基準の維持について必要な指導監督を行うものとする。

(2)仮採用期間中の実習、研修

 認定された学科(専攻)において所定の単位を取得して卒業した者の教員採用については仮採用の制度を設け、仮採用された者に対しては、一定の勤務期間、所定の実習、研修を課するものとする。

(3)養成対象

 中学校教員および高等学校教員とする。

5.国家検定試験

 一般の大学の卒業者で教職教育を欠いている者に対し教員資格を付与するため、国家検定試験を行う。

(1)受験資格および試験内容

 国家検定試験は大学卒業(小中学校教員については当分の間短期大学卒業を含む。)以上を受験資格とし、4.の1に掲げる教育課程の基準の程度において教科に関する専門科目と教職に関する専門科目について試験を行うとともに教師としての適否の判定も行う。

(2)仮採用期間中の実習、研修

 国家検定試験に合格した者の教員採用については仮採用の制度を設け、仮採用された者に対しては、一定の勤務期間、所定の実習、研修を課するものとする。

6.教員資格の付与

(1)教員資格付与の態様

(イ)教員養成を目的とする大学の卒業者には、正規の教員資格を与える。

(ロ)一般の大学の認定された学科(専攻)において所定の単位を取得した卒業者および国家検定試験合格者には条件付の教員資格を与え、仮採用後、一定の勤務期間、所定の実習、研修を終了した後、正規の教員資格を与える。この実習、研修は国がその基準を定め、任命権者の責任の下に一定の計画をもつて行うものとする。この場合、任命権者はその指導組織を整備し、かつ実習、研修のため児童生徒の教育に支障を生じないよう配慮するものとし、教育大学等は任命権者と協力してその研修課程において実習、研修に当るものとする。

(ハ)一つの種類の学校(教科)の教員資格を有している者が他の学校(教科)の教員資格を取得する場合は、学力検定により正規の教員資格を与えることを原則とする。

(備考)

 幼稚園教諭、養護教諭、特殊教育学校の教諭および産業教育担当教員の一部等については、必要ある場合は特例を設ける。

(2)教員免許状

(イ)教員免許状の授与の適正を期するため授与権者は国とすることが望ましい。

(ロ)免許状の種類は、幼稚園教員免許状、小学校教員免許状、中学校教員免許状、高等学校教員免許状、養護教員免許状および特殊教育教員免許状とし、従来の1級2級の区別は設けない。ただし高等学校については現行どおりとし、また幼稚園については当分の間1級2級の区別を存置する。
 免許状は普通免許状(終身有効)、仮免許状(5年有効)、臨時免許状(1年有効)とする。

(ハ)普通免許状は正規の教員資格を有する者に、仮免許状は条件付の教員資格を有する者に与える。

(ニ)高等学校教員普通免許状については、前項(1)の(イ)(ロ)による者には2級免許状を与え、2級免許状または仮免許状を有する者で、大学院に1年以上在学し所定の単位を修得した者は、2級免許状を有する者にあつては直ちに、仮免許状を有する者にあつては、一定の勤務期間、所定の実習、研修を完了した後1級免許状を与える。

(ホ)中学校の免許状は各教科ごとに設ける。高等学校の免許状は、教科によつては科目別に設ける。

(ヘ)臨時免許状は現行どおりとする。

(3)経過措置

 現行法による普通免許状を有する者の既得権を認め、教諭となることができるようにするとともに、次のことに留意する。

(イ)現行法による臨時、仮免許状を有する者は、その有効期間中既得権を認めるようにすること。

(ロ)法改正時の大学在学者に対しては、一定期間、現行法による普通免許状取得を認めるようにすること。

(ハ)現に免許状を受ける資格をもつている者に対しては、当分の間、学力検定の受験資格を認めるようにすること。

(ニ)現行法による免許状を有する者で新法による検定によつて新法による免許状を取得しようとする者に対しては、検定の受験資格、受験科目についての特例を設けるようにすること。

7.現職教育

(1)国、地方公共団体および大学の緊密な連係の下に充実した計画的現職教育を行うよう組織する必要がある。

(2)教育大学には研修課程を設け、継続的に研修が行われるようにするなど現職教育を制度化する。
 なお、教育大学以外の教員養成を目的とする大学にも研修課程を設けることが望ましい。

(3)現職教育を受けさせるための経費負担、教育に支障なきようにするための代替教員の配置などを措置する。

8.その他

 以上の改善方策を効果的にするため、次に掲げる措置を講ずる必要がある。

(1)教員の待遇改善と社会的地位の向上

(2)学級規模の縮小と教員定数の増加

(3)教育大学(学部)の教員組織の整備充実および教員の質の向上とその養成

(4)教育大学(学部)の施設設備の充実(分散施設の統合、教育実習施設・寄宿舎の充実等を含む。)

(付記)

教員養成を目的とする大学および教員養成を行うのに適当であると認める大学の認定は、適当な審議機関にはかつて行われるようにすること。

参考資料

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