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勤労青少年教育の振興方策について(答申) (第15回答申(昭和33年4月28日))

昭和33年4月28日
生涯学習政策局政策課

15 勤労青少年教育の振興方策について(答申)

(諮問)

昭和32年9月30日

中央教育審議会

文部大臣 松永 東

 次の事項について、別紙理由を添えて諮問します。

勤労青少年教育の振興方策について

(理由)

 わが国青少年の大部分を占める勤労青少年に対して広く有効適切な教育の機会を与え、国家社会の有為な形成者としての資質をかん養するとともに、科学技術の進歩とこれに伴う産業界の発展に即応しうる産業能力を育成することは現下の急務といえる。
 政府としては、従来から各種の施策を行い、勤労青少年教育の整備充実に努めて来たが、その現状は必ずしも満足すべき状態とは認めがたい。
 ここにおいて、現行の制度および教育機関について必要な改善を行い、早急に勤労青少年教育の振興をはかる必要があると考えられる。

検討すべき問題点

 勤労青少年教育の振興をはかるために、すでに各種の勤労青少年教育機関の施設設備の整備、関係の教員職員等の充実ならびにこれらに対する国の助成等について適切な処置が強く要望されており、これの実現は当面の課題として重視するところであるが、これらとともに次のような検討すべき問題点があげられる。

1.各種の勤労青少年教育機関の性格・役割について

 各種の勤労青少年教育機関の性格・役割を明らかにし、それぞれにおいて勤労青少年の実態に応じた産業教育を促進する必要はないか。 

(1) 高等学校
  1. 定時制教育
    (ア) 職業教育
    (イ) 分校
    (ウ) 短期産業教育の課程ならびに別科
    (エ) 事業場などにおける職業訓練との連携
    (オ) 教員給与の負担
  2. 通信教育
    (ア) 職業に関する科目
    (イ) 学習書
(2) 大学・短期大学の夜間部ならびに通信教育
  1. 修業年限
  2. 実験・実習・実技の教育
  3. スクーリング
(3) 各種学校
  1. 指導基準
  2. 修了者の習得技能の証明
(4) 青年学級
  1. 年間学習時間
  2. 修業年限
  3. 教育内容(教育課程・コース制等)
  4. 修了者の資格および習得技能の証明
  5. 実験・実習のための施設設備
(5) 青少年団体

 産業部活動のための施設

(6) 社会教育の通信教育

 産業教育の課程(数および内容)

2.各種の勤労青少年教育機関相互の関連について

 各種の勤労青少年教育機関相互に関連性をもたせ、併修・転学あるいは学習継続などを可能ならしめるようにする必要はないか。

3.勤労青少年教育に対する社会の協力理解について

 勤労青少年の修学を容易にし、その修学意欲をさかんにするため社会の理解と協力を高める処置が必要ではないか。

(1) 勤労青少年の就職に関する差別扱い

(2) 雇用主の被雇用者の修学に対する便宜供与

(3) 労学一体の教育計画

(4) 企業体による勤労青少年教育機関の設置

(5) 学費など

4.その他

 上記以外の勤労青少年を対象とする各種の教育・訓練機関との関係を整える必要はないか。

(答申)

昭和33年4月28日

文部大臣 松永 東 殿

中央教育審議会会長
天野会長 

勤労青少年教育の振興方策について(答申)

 本審議会は、勤労青少年教育の振興方策について、特別委員会を設けて審議を行つて得た結果に基き、総会においてさらに慎重に審議し、次の結論に到達しましたので答申いたします。

 勤労青少年教育の目標とするところは、すべての勤労青少年に対し有効適切な教育の機会を与え国家社会の有為な形成者として必要な知識や一般的教養を育成するとともに、有能な職業人として産業界の要請にこたえるにたる産業技術の能力を付与することにある。
 しかして、勤労青少年の生活実態、志望、能力、特性あるいは地域社会の要請等に多種多様にわたっているので、それに応じて各種各様の勤労青少年教育機関が相互に関連をもちつつ多数に必要であることはいうまでもない。しかるに、わが国においては、現在義務教育終了後高等学校の通常の課程に進学しない青少年は毎年約百万人を数え、また、高等学校卒業後昼間の大学に進学しない者は毎年数十万人に及んでいるが、これら勤労青少年に対する教育機関はその数および配置等が必ずしも満足な状態でないため、なお、なんら教育の機会を得られない勤労青少年が多数残されている。また、これら教育機関はその種類、課程、教育内容、施設設備、教員または指導者組織、相互の関連等においても、はなはだ不備があり勤労青少年に対しその実情に即する真に有効な教育を行っているとはいい難い。
 もとより勤労青少年教育の画期的な振興のためには、近時欧米諸国において実施されつつある勤労青少年教育の義務制も必要と考えられるのであるが、その実施に多くの問題が認められるので、本答申においては、現行制度の漸進的改善の立場に立ち、特に産業技術教育を充実させることを主として、その振興方策を次のように定めた。
 政府は勤労青少年教育の成否がわが国の産業・文化等にきわめて重大な影響を及ぼすものであることに思いをいたし、勤労青少年教育尊重の風を振起するとともに、本答申に従い、すみやかに周到な計画を樹立し、じゅうぶんな財政処置を講じ必要な行政機構等を整備してその実施に着手されんことを望む。

1.各種勤労青少年教育機関の改善

 現在文部省所管の勤労青少年教育機関としては、高等学校における定時制課程および通信教育、大学・短期大学における夜間部および通信教育、各種学校、青年学級、社会通信教育、青少年団体等があり、これら性格・役割を明らかにし、それぞれの質および量が勤労青少年のさまざまな必要をいっそう満しうるよう改善を加えることが肝要である。この場合勤労青少年教育における一般教育の重要性は論をまたないところであるから、いっそうその充実を図るべきことはもちろんであるが、それとともに、今日要望の強い産業技術教育については、従来特にふじゅうぶんな点が多いと認められるので、これを充実させることに改善の重点をおくことが必要であり、その際これら各教育機関の施設設備を整備充実させること、教職員や指導者について、計画的な養成や現職教育等を通してその資質を高め、数の充足を図り、またその待遇を向上させることおよび勤労青少年の志望や生活実態等にいっそう即応するよう教育内容や教育方法を改善することなどは共通の緊要事と考えられる。しかして教育内容や教育方法の改善にあたっては、青少年の職場における一定の作業を教育機関における学習の一部と見なすような方向を促進する必要があり、またこのような教育を容易にさせるとともに、勤労青少年教育機関の増加を図るため、教育機関の種類によっては、その設置者のわくを広げることも必要である。

(1) 高等学校

 高等学校定時制課程は高等学校通信教育とともに勤労青少年のための高等学校教育機関としていっそう効果を高めるよう改善を図り特に職業課程の拡充、分校の充実および短期の技能教育等の促進につとめなければならない。このため次の対策を講ずる必要がある。

a 高等学校定時制課程

 現在の定時制課程には、夜間の課程と昼間の特別の時期および時間において授業を行う課程とがあるが、そのおのおのについて生徒の進路や生活実態に即応させるため、次のような改善を図るとともに職業課程の新設あるいは普通課程の職業課程への転換など職業教育の拡充を行う必要がある。

(a) 夜間の課程における普通課程にあって進学を目的とする者に対しては通常の課程と同程度に基礎学力を高めうるよう教育課程の改善を図り、必要によって修業年限の延長を考慮すること。

(b) 夜間の課程にあって職業に関する課程に学ぶ者に対しては一定の技術水準を確保するため必要によっては通常の課程よりもいっそう集約的な学習をさせるなど、その教育課程に弾力性をもたせるとともに生徒が現に従事している職業との関連を密接にし、かつ他の教育機関との併修あるいは学習の継続を容易にすること。

(c) 夜間の課程の運営については、生徒の健康にじゅうぶんの配慮をし、照明、暖房、給食等生徒の保健ならびに福利厚生のための施設の整備を図ること。

(d) 昼間の課程においては勤労青少年教育機関としての役割をさらに有効に果させるため、地域社会や生徒の必要にじゅうぶん応じうるようその教育課程および設置基準等に弾力性をもたせること。
 この場合特に職業に関する課程にあっては、教育課程の編成にあたり通常の課程よりもいっそう集約的な学習をさせることができるようにするとともに生徒が現に従事している職業との関連を密接にし、家庭実習、現場実習等を促進すること。また農山漁村においては二、三男対策としての職業教育について配慮すること。
 なお、夜間の課程と同様、他の教育機関との併修あるいは学習の継続を容易にすること。

(e) 昼間の課程でその性格や実態が通常の課程に近いものについてはその全部または一部を通常の課程に移行させること。

(f) 昼間の課程の修業年限の短縮を考慮すること。

(g) 後述2の(2)のように技能教育のための施設との連係の処置をとる場合においては修業年限を3年とすることができるようにすること。

(h) 教員の待遇について、勤務の特殊性に応じた特別な処置を講ずるとともに、国公私立を通じて生徒の学費負担の軽減の処置を講ずること。

(i) 分校の設置基準を設け施設設備および教員組織の充実を図ること。また分校の統廃合が地域の特殊性や適正規模等の教育的な配慮に基くことなく、単に財政上の理由で行われることがないよう適切な処置を講ずること。

b 短期技能教育に関する課程の新設

(a) 短期の技能教育の整備拡充を図るため別科を改め新たに高等学校の正規の課程として短期間に集約的に技能教育を施す課程(産業科を含む。)を設けること。

(b) この課程の授業形態はいわゆる全日制または定時制とし、教育時間数は現行の高等学校における全教育時間数の2分の1ないし3分の1程度、修業年限は1年以上とすること。

(c) この課程における学習に対しては現行の高等学校の他の課程と同様の単位を与えるものとすること。

(d) この課程は必要ある場合は分校として設けることができるものとすること。

c 高等学校通信教育

 職業に関する科目および課程の充実を図るとともに学習書の編集発行を促進すること。

(2) 大学・短期大学

大学・短期大学の夜間部および通信教育においては、勤労しつつある青少年を主たる対象として、昼間の大学と同程度の教育を勤労青少年の生活実態に即して行うようにする必要がある。このため、これに要する施設設備を整備するほか、次の対策を講ずる必要がある。

a 大学・短期大学の夜間部

(a) 修業年限の延長を図るとともに、教育課程の編成ならびに実験、実習、実技等の履修方法を改善すること。

(b) 夜間部の運営については、学生の健康にじゅうぶんの配慮をし、学生の保健ならびに福利厚生のための施設の整備を図ること。

(c) 国・公立の大学による夜間部の設置を促進すること。

(d) 夜間の短期大学の整備拡充を図り、勤労青少年に対する専門職業教育を促進すること。

b 大学・短期大学の通信教育

(a) スクーリングの方法および内容の整備充実を図ること。

(b) 修業年限の延長を図るとともに、実験、実習、実技等の履修方法を改善すること。

(3) 各種学校

 各種学校はその教科内容、修業年限等が自由で、社会の要請や勤労青少年の要望に直接的に適応しうるので勤労青少年に対し必要な職業的技術技能、特に正規の学校ではじゅうぶん習得し得ない技術技能を習得させることができる点に長所を持っていると考えられる。したがって各種学校が勤労青少年教育機関としての機能を発揮するよう基礎が強固でかつ教育的な設置主体による設置を促進するとともに施設設備の充実等その育成指導を図ること。

(4) 青年学級

 青年学級は、その開設、運営、教育計画など、弾力性に富み、勤労青少年の自発性や協同性ならびに地域の特性を端的に生かしうるところに特色を有するものであるが、その教育効果を高め、特に職業技術教育に関する要請にこたえるためには、この特色の上に立ちつつきまった施設設備と指導職員をもって計画的継続的な教育を行う整備された教育機関とする方向に改善する必要がある。このため国、地方公共団体等による適切な指導助言をいっそう促進するとともに次の対策を講ずる必要がある。

  1. 市町村における青年学級の開設実施をより積極的に促進するとともに、会社・工場、都道府県その他適当な団体なども青年学級を開設実施しうるような処置を講ずること。
  2. 職業的技術・知識に関する学習を強化し、年間学習時間の増加を図ること。また学習内容別のコース制ならびに学習程度に応じた段階別コース制の実施を図ること。
  3. 学習用図書、視聴覚教材教具等の利用を促進すること。
  4. 実験実習施設設備の充実のために共同の実験実習訓練施設を整備充実するとともに学校、会社・工場、試験場等の施設設備の利用を促進する処置を講ずること。
  5. 専任の青年学級主事、講師の充実につとめるとともに、基準を定めて施設設備の整備を図ること。
(5) 青少年団体

 青年学級における職業技術教育と相まって青少年団体の産業部の活動を促進するとともにスポーツ、レクリエーションその他の活動を促進すること。このためこれらの青少年活動に対する国、地方公共団体の育成の方途を講ずること。

(6) 社会通信教育

 職業技術課程の増設を勧奨するとともに、この事業に対する税の減免処置等を講じその振興を図ること。

2.各種勤労青少年教育機関相互の関連

 勤労青少年に対しできるだけ広く教育の機会を提供するとともに、その学習の効率化を図るためには、各種教育機関相互の間に量の面においても質の面においても緊密な連係が保たれなければならない。
 このために次の対策を講ずる必要がある。

(1) 勤労青少年教育機関の配置計画

 すべての勤労青少年に教育の機会を与えるためには、勤労青少年教育機関の地域的配置が適正を得る必要があるので、国・地方公共団体等は協力して各勤労青少年教育機関のそれぞれの性格・役割と、地域の実情、青少年の実態をじゅうぶん考慮した地域的配置計画を立て、これに基いて各教育機関の増設等の量的整備を図ること。
 この場合他省所管の教育機関・訓練機関との関連をも考慮するとともに職業教育と一般教育との関連、男子対象の教育と女子対象の教育との関連、さらに勤労青少年教育機関以外の教育機関との関連についても留意すること。

(2) 修学の効率化を図るための勤労青少年教育機関相互の関連

 各種勤労青少年教育機関の併習、学習の継続等が容易にかつ効果的に行いうるようにするため高等学校定時制課程に在学する生徒が技能者養成施設その他の技能教育のための施設において一定の基準に適合する職業技術教育を受ける場合には、これを当該高等学校の教科の一部を履習するものと見なすようにすること。なお、技能教育のための施設から高等学校定時制課程へ学習を継続する者に対しても同様の取扱をすることについて検討すること。

3.勤労青少年教育に対する社会の協力理解

 勤労青少年の修学を奨励促進するためには社会の理解と協力を深め、修学意欲をさかんにし、あるいは修学を容易にする処置が必要である。このために次の対策を講ずる必要がある。

(1) 習得技能の証明

各種学校、青年学級等の勤労青少年教育機関における習得技能について、現行の技能検定制度を拡大して広く国家的検定を実施するなど、これを公的に証明する処置を講じ、その実力が社会的に正しく評価され通用するようにすること。

(2) 関係各方面の協力理解

 勤労青少年の修学を容易にし、かつその教育効果を高めるために、次の事項に関し、国としての施策を促進するほか、地方公共団体、会社・工場、勤労青少年教育を目的としない学校、地域社会その他広く関係各方面の理解と協力を得る処置を講ずること。

  1. 勤労青少年教育機関修了者が、その資格や実力にふさわしい職や待遇を得ること。
  2. 雇用主が修学する従業員のために、労働条件、健康管理を適正にして時間的肉体的負担を軽減させ、また通信教育のスクーリングの出席について便宜を与えること。
  3. 会社・工場と勤労青少年教育機関との連係を深め、教育計画や教育方法を勤労青少年の生活実態に即したむだのないものにすること。
  4. 地方公共団体、会社・工場その他適当な団体等が勤労青少年教育機関の地域的配置計画に協力して適切な教育機関を設置すること。
  5. 地方公共団体、会社・工場、学校等が勤労青少年教育のための施設設備、教員または指導者等を提供すること。
  6. 育英奨学制度の拡充、生活保護法による保護の拡大その他の処置によって勤労青少年の学資、交通費等の修学に関する経済的負担の軽減を図ること。
  7. PTA 活動その他の方法によって、勤労青少年教育機関、事業場および家庭の連係を図り、勤労青少年の修学や生活指導等に関する諸問題の解決を図ること。

4.その他

 文部省所管の勤労青少年教育機関と他省所管の勤労青少年のための教育機関・訓練機関との調整および関係各行政機関の職務権限の調整ならびに組織化を図ること。

(付記)

  1. この答申は本審議会の「科学技術教育の振興方策について」の答申(付記 3)の趣旨にもこたえるものである。
  2. 教育制度に関連する事項としては、本文に答申するもののほか勤労青少年のための新たな教育制度を設けることの必要が問題として提起されたが、これらは教育制度全般を検討する機会において総合的な見地から改めて審議することとする。

お問合せ先

生涯学習政策局政策課

-- 登録:平成21年以前 --