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教科書制度の改善に関する答申 (第10回答申(昭和30年12月5日))

昭和30年10月3日
生涯学習政策局政策課

10 教科書制度の改善に関する答申

(諮問)

昭和30年10月3日

中央教育審議会会長
天野会長

文部大臣 松村 謙三

 教科書制度について別紙のとおり貴会に諮問します。

教科書制度の改善方策について

(理由)

 現行の教科書制度は、戦後の教育改革の一環として実施され、初等中等教育の発展に重要な役割を果してきたのであるが、今日までの実績に徴するに種々再検討を要すると認められ、また、教科書の内容、採択供給の方法、父兄の経済的負担などの問題に関し各方面からの批判が加えられるに至った。
 この際、学校教育における教科書の重要性にかんがみ、教科書制度全般にわたり検討を加え、早急にその改善措置を講ずる必要があると考える。

教科書制度改善に関し検討すべき問題点

  1. 検定について
     教科書の検定は、非公開の調査員による調査の結果を教科用図書検定調査審議会において審議し、その答申に基いて文部大臣が行うこととなっているが、教科書の内容を改善向上するため、現行の調査検定の機構、その方法などについて検討を要する点があると考える。
  2. 採択について
     教科書の採択は、公立の学校については所管の教育委員会、国立または私立の学校においては校長が行い、使用教科書の選定のために展示会が開催されているがその実施の結果を見るに、使用教科書の種類があまりにも増加し、そのため全体としても、父兄負担においても、経済的むだが生ずるとの批判を生み、また、業者の売込競争の激甚化などのため、公正な採択を阻害して、ややもすれば好ましくない行為を誘致するとの問題もあり、あるいは現行の展示会制度についても欠陥が指摘されるなど、採択制度に関し、その改善のため検討を要する点があると考える。
  3. 発行供給の制度について
     現状においては教科書は90数社の発行業者がその発行にあたり、各種の供給販売機構を通じて需要者たる児童生徒に供給されることになっているが、完全供給をいっそう確実にし、また、不公正な取引方法の絶無を期するため、教科書の発行・供給制度について検討を要するものと考える。
  4. その他
     父兄負担の軽減を図るため、教科書価格適正化の方途などについても、なお検討すべき問題が存するものと考える。

(答申)

昭和30年12月5日

文部大臣 清瀬 一郎 殿

中央教育審議会会長
天野会長

教科書制度の改善に関する答申

 本審議会は、教科書制度の改善方策について、特別委員会を設けて審議を行って得た結果に基き、総会においてさらに慎重に審議し、次の結論に到達しましたので答申いたします。

 教科書は単なる一般の教材と異なり教育上に占める地位はきわめて重要であり、児童・生徒に与える影響は多大であるからその内容は、中正かつ適切でなければならない。
 他方経済面においては、家庭の負担を軽減することについてじゅうぶんな配慮がなされなければならない。教科書の発行・供給等に関して公的規制が必要なのはこのためである。
 わが国現行の教科書制度は、戦後教育改革の一特色をなすものであるから、現行制度の基本的性格は維持されるべきものと考えられる。しかし、教科書に関する現行法規は、戦後の特殊事情のもとにおいて早急の間に定められた臨時的措置に基くものが多く、法的に不備な点がある。さらにまた教科書の内容・価格ならびに採択の適正を確保し、発行供給の円滑・公正を図る等の実施面において改善の必要が認められる。
 よって下記の諸点についてすみやかに適切な処置を講ぜられたい。

1.検定について

  1. 検定は、現行どおり国(文部大臣)において行うものとし、都道府県においてはこれを行わないものとすること。
  2. 文部大臣の検定権の行使を適正ならしめるため、現行の審議会を拡充強化し、その委員は学識経験者・教職員その他のうちから、中正かつ適切な方法により選任するものとすること。
  3. 審議会には、教職員・専門家その他のうちから適正な方法(たとえば、教職員にあっては、教育委員会に校長の意見を聞いて推薦させる等)により、選任した非常勤の調査員を置き、第1次調査にあたらせるものとするが、調査審議の責任は審議会自体が負うようにすること。
    この場合、非常勤調査員の職・氏名を公開すること。また審議会の拡充強化に資するため非常勤の調査員のほか、別途、常勤専任の調査職員を相当数置くこと。
  4. 審議会は、編著者から申し出があったときその他必要があると認めるときは、編著者の意見を聞くものとすること。
  5. 検定基準を整備すること。
  6. 検定は常時行うものとするが、不合格図書の同一年度における再申請は、これを認めないものとすること。
  7. 検定には一定の有効期間を定めること。

2.採択について

  1. 公立の小・中学校については、採択に関連する校長の権限を明確にするとともに、たとえば、郡市単位など一定の地域において、できるだけ少ない種類の教科書を使用するようにすること。このため、たとえば、次のような採択方式が考えられる。
    (1) 都道府県の教育委員会は、自然的・社会的・教育的諸条件を考慮して、採択地区を設ける。
    (2) 採択地区には、採択協議会を設け、校長・教員・都道府県および市町村の教育委員会の委員・職員ならびに学識経験者等で構成する。
    (3) 採択協議会は、採択地区内の学校の校長の申し出を基礎として、採択地区内の学校で使用すべき教科書を選定する。
    (4) 市町村の教育委員会は、右の選定に基いて、所管の学校において使用すべき教科書を採択する。
  2. 公立の高等学校については、校長の申し出に基いて所管の教育委員会が採択するものとすること。
  3. 国立または私立の学校については、一定の手続を経て校長が採択するものとすること。
  4. 適正な採択と教職員の研究に資するため、教科書の常時研究施設を設けること。
  5. 採択に関連する不正行為について、厳重な処罰規定を設けて禁止するとともに、採択基準を示す等採択の公正と自由を阻害するような第三者の行為を禁止すること。
  6. 採択面における宣伝活動については、たとえば現行のような駐在員は、これを設けさせないものとし、発行者等の負担において開催する講習会等は、教育委員会の承認を得た場合に限り行いうるものとする等適切な規制を加えること。
  7. 採択関係者が編集発行に関与することにより採択に不当な影響を及ぼすことがないように措置すること。

3.発行・供給について

  1. 発行者について欠格条項を設け、これに関連して登録制度を設けること。
  2. 同一発行者の発行する同一種目の教科書の種類ならびに教科書の改訂については、一定の抑制の方途を講ずること。
  3. 特約供給所は、毎年関係発行者および大取次店が協議して選定し、取次店は、毎年特約供給所が関係教育委員会の意見を聞いて選定するものとする。この場合において特約供給所および取次店の供給区域が重複しないようにすること。
  4. 特約供給所および取次店の供給状況が、不良または不誠実である場合に是正することができるようにすること。
  5. 発行者と供給業者は、法令および委託契約に従って共同して供給義務を負うこととし、その義務を履行させるための措置を講ずること。
  6. 供給事業に採択関係者が関与し、採択に悪影響を及ぼすことのないような措置を講ずること。
  7. 児童・生徒の転校、被災等の場合に教科書の供給を迅速かつ容易ならしめるための措置を考慮すること。

4.価格について

  1. 現行の教科書の定価の認可基準を検討し、その引下げを図ること。
  2. 教科書の用紙・ページ数・色刷りその他について一定の基準を設けること。
  3. 教科書・教師用指導書等の学校、教職員への献本等に要する経費が教科書価格に算入されないようにするため、これらの献本等を禁止すること。
  4. 教科書の運賃・郵送料について軽減措置を講ずること。

5.その他

  1. 教師用指導書についてその内容に教育上不適当な箇所があるときには、訂正させることができるような措置を講ずること。
  2. 夏休み帳・副読本等の使用については届出制とすること。
  3. 発行・供給・定価などに関する文部大臣の権限の行使の適正を期するため、必要な審議会を文部省に設けること。
  4. 特殊教育用教科書特に点字教科書の編集発行を促進し、これが入手を容易ならしめるような措置を講ずること。
  5. 産業教育用の教科書の編集・発行を促進し、その価格の低廉化を図ること。
  6. 準要保護者の子弟で義務教育をうける児童・生徒に対し、教科書の無償給与の措置をとること。

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