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私立学校教育の振興についての答申 (第9回答申(昭和30年9月12日))

昭和30年2月21日
生涯学習政策局政策課

9 私立学校教育の振興についての答申

(諮問)

昭和30年2月21日

中央教育審議会会長
天野会長

文部大臣 安藤 正純

私立学校教育の振興について

(理由)

 わが国の私立学校は、創始者の建学の精神を受けつぎ、すぐれた伝統と独自の学風をもって幾多の傑出せる人材を輩出し、国家社会に多大の貢献をしているのであって、わが国の学校教育の振興を図るためには、国立・公立学校と並んで私立学校の振興を大いに図る必要があると考える。
 このような観点から、私立学校の自主性を尊重し、公共性を高めるために私立学校法を制定し、また私立学校の財政と私立学校教職員の福利厚生に支援を与えるため、私立学校振興会法・私立学校教職員共済組合法を制定して、私立学校教育の振興を図ってきたのであるが、いまだ必ずしも十分でなく、私立学校教育の現状は今後なおいっそう適切な振興の方途を講ずることが必要であると考えられる。

私立学校振興上検討すべき問題点

  1. 学校の施設設備
     私立学校の施設設備は、戦災の打撃を受けること甚しく、また、老朽不良の校舎も少からず存し、教育上の最低限度の基準にも到達していないものも少くなく、教育効果・学術研究あるいは学生・生徒の保健上遺憾な点なしとしない。
  2. 教職員の身分待遇
     私立学校の教職員の給与は比較的低く、退職後の生活保障は不充分であり、また、その地位身分等についても考慮すべき点が少くない。
     近時設立された私立学校教職員共済組合は、概ね国公立学校の教職員の共済組合と同様な給付をすることによって、教職員の待遇改善に1歩を進めたことになったけれども、なお十分とはいいがたく、また、旧私学恩給財団の既年金受給者の救済の問題もある。
  3. 学資の問題
     私立学校の学生・生徒は、授業料その他の徴収金が比較的高額であり、その上寄付や学債などの出資が多い。これらの授業料等が高額に過ぎることは、教育の機会均等の上からも好ましくない。
  4. 教育行政の問題
     現行の制度においては、私立学校の経営は自主的に行われ、したがって、よく創意を生かし、教育の成果を期することができるが、また、教育上遺憾な事例も生じている。
     これは、現在の制度が自主性尊重の半面、公共性確保が不充分であることに依るものと考えられるので、私立学校に対する助成と併せ検討を要する問題である。
  5. 学校卒業生の就職問題
     学校卒業生の就職難の問題は、ひとり私立大学のみの問題ではないが、私立大学の学生数が全国大学生総数の約6割を占める現状にかんがみ、慎重な考慮を要する。

(答申)

昭和30年9月12日

文部大臣 松村 謙三 殿

中央教育審議会会長
天野会長

私立学校教育の振興についての答申

 本審議会は、私立学校教育の振興について、特別委員会を設けて審議を行って得た結果に基き、総会においてさらに慎重に審議し、次の結論に到達しましたので答申いたします。

 わが国の私立学校の本領は、建学の精神に基く独特の学風と伝統のもとに特色ある教育を自主的に行うとともに、自立の経済的基礎を有することにあり、今日まで多くの私立学校は、この本領を発揮しつつ、国立および公立の学校と並んで人材の育成に多大の貢献をしてきた。
 しかるに戦災および戦後の経済的変動ならびに新学制の実施は、今日私立学校の自力のみによる経営整備を困難ならしめ、ために、その存在意義をなす特色すらおびやかされようとしている。
 他方私立学校は、国立および公立の学校と同様公の性質をもつものであって、自主性が尊重されるとともに、公共性が確保されなければならない。しかるに一部の私立学校では、この点において遺憾な事例が見うけられる。
 私立学校の業績と教育上に占める地位ならびにその現状を見るとき、国が積極的にこれを助成し、必要な財政的援助を与えるとともに、その公共性確保を図ることが現在強く要請されている。
 私立学校教育の振興策については、国立・公立および私立を含む全体の教育計画の一環として考慮されなければならないことは当然であるが、以上の見地から、特にその自主性と経済的自立とをそこなわないように、必要な財政的援助と公共性確保の方途が講ぜられなければならない。もとより私立学校の根本的性格、特に国と私立学校との関係については、さらに一段の検討を要するものがあるが、下記の諸点についてすみやかに適切な処置を講ぜられたい。

1.財政に関するもの

  1. 私立学校振興会に対する政府出資金については、少なくとも応急処置としての既定の5か年計画をすみやかに実施し、さらに実情を勘案して恒久的計画を樹立しその実現を図ること。
    私立学校振興会の私立学校に対する貸付金については、すえおき期間を設定し、かつ貸付利率の引下げを行うとともに、実情に応じ逐次貸付期間の延長を図ること。
  2. 国が特に必要とする教育・研究を行う私立学校に対しては、その教育・研究の振興をはかるために、必要な経費について国は助成を行うこと。
  3. 理科教育振興法・学校図書館法による補助金その他国立・公立および私立を区別する理由のない補助金については、私立学校をも対象とすること。
  4. 学校施設の災害復旧費に対する国庫補助を行うこと。
  5. 補助金・貸付金の配分については、画一的形式的でなく、有効適切な効果が期待できるように重点的にこれを行うこと。なお、私立学校も国の助成等のみに依存することなく、自己財源の増強に努めること。
  6. 学校法人に対する寄付を容易ならしめるため、所得税・法人税等に関する免税処置を強化すること。なお、学校寄宿舎等については、非課税処置を講ずること。
  7. 私立学校教職員共済組合については、福利施設の設置等事業の改善強化を図り、未加入者の加入をも促進すること。
    なお、私立学校教職員の業務災害保障・失業保険等についても検討すること。

2.行政に関するもの

  1. 学校(学部を含む。)の位置の変更、分校の設置廃止(位置の変更を含む。)および学校法人の基本財産の処分については、認可制とすること。
  2. 学校および学校法人が法令の規定に違反し、または正常な授業の停止、施設設備の不備、定員の超過その他教育上著しい支障があると明らかに認められるときは所轄庁が勧告しうるようにすること。
  3. 入学の際の寄付金・学校債等については、あらかじめ入学志願者その他関係者に周知させるような方法をとるとともに、教育の機会均等をそこなわないようにじゅうぶん留意すること。
  4. 学校法人の予算決算および専任教員組織の異動その他私立学校教育振興上必要な事項については、所轄庁に報告させるようにすること。
  5. 高等学校以下の学校に対する指導助言制度および所轄庁の一元化ならびに私立学校審議会の組織構成等の改善については、その必要性はじゅうぶん認められるが、教育行政制度改善の根本問題とも関連するので将来検討すること。
    なお、私立学校審議会の組織については、学識経験者の委員に教育委員会関係者から少なくとも1名を加えることが望ましい。
  6. 大学(学部学科、大学院)の設置については、条件付認可のものは、すみやかにその条件を充足させるとともに、卒業生の就職状況等にもかんがみ、今後の新設にあたっては、設置基準を厳守して、原則として条件付認可は行わないこと。
    なお、このことについては、国立および公立も同様である。
  7. 私立大学の教員の学内における地位の確立、身分の保障等については、大学自治の原則上じゅうぶん尊重されることが望ましい。
  8. 各種学校については、その学校数および種類がきわめて多く、質的にも千差万別の現状であるので、これが実態をすみやかに調査し、本制度の健全なる発達について今後じゅうぶん検討を行うこと。

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