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国語審議会 第2委員会(第15回) 議事要旨

1.日時

平成10年3月3日(火曜日) 午後2時30分~5時

2.場所

霞山会館 「まつの間」

3.出席者

委員

水谷主査、小林副主査、樺島、小池、輿水、林、前田(富)、三次、緑川 各委員(計9名)

文部科学省

 霜鳥文化部長、大島国語課長ほか関係官(浅松、花立、氏原、野村)

4.議事要旨

〔経過概要〕

  1. 前回の議事要旨を確認した。(花立補佐朗読)
  2. 協議における主な意見は次のとおり。

○ 「論議の概要-5.2」の「表外字字体表試案(構成案)」では、「参考」として「人名漢字の字体一覧→検討範囲の漢字一覧→常用漢字表「明朝体活字と筆写の楷書との関係について」」の順に掲げることになっているが、「常用漢字→人名漢字→検討漢字」の順の方がよいのではないか。検討範囲の漢字はポイントを落としてもよいかと思う。

○ 今までの第2委員会では「論議の概要」が「1.総論(基本理念)にかかわること、2.印刷標準字体の選定にかかわること」の形で示されてきた。今回、「論議の概要-5.2」で「表外字字体表試案(構成案)」が非常に明確な形で出てきた。「5.1」と「5.2」では構成が大きく変わっており、頭の切替えがすぐにはできないので、今の「参考」の示し方も含めて焦らずじっくりと意見を出し合い、イメージを作り上げていくべきだと思う。

○ 「表外字字体表」という名称が、私たちが検討して示そうとする表の性格を最もよく表すかどうかについても更に検討したい。

○ 常用漢字表も初めは「新漢字表試案」という名称で公表され、昭和54年の中間答申の時に「常用漢字表」という名称が示された。今回の漢字表についても、ふさわしい名称を御検討いただければと思う。

○ 「新~」「常用~」という名称はその目的・性格を表している。「表外字字体表」は枠組みを表すが目的を表さない。命名は工夫のしどころである。

○ 中国では「印刷通用漢字字形表」と言っている。そのような名称も考えられる。

○ 「印刷」という言葉は印刷会社を縛る感じがするので、入れない方がよいと思う。むしろ、「表外字字体表」のままでいいような気がする。

○ 「(参考)」として付けたグラフで、現在描かれている曲線の下に常用漢字に限った累計度数を表す曲線を引けば、印刷文字において常用漢字が大きな位置を占め、表外字は少ないが重要な意味を持つという位置付けを表すことができるのではないか。

○ 今言われたようなグラフを示すと、「そんなに常用漢字以外の漢字が少ないなら、それは仮名書きにすればよいのではないか。」という意見が出るのではないかと思う。私は、表外字も現実に使われているし、それには理由があるということをグラフで示したかったのである。そのことが文章として書かれれば、私が提案したグラフは要らないと思う。現在の「論議の概要」の書き方では、「推奨するものではな」いのになぜ字体表を示すのかという疑問を引き起こすことになるのではないか。

「(許容字体は)標準字体に準じて用いるものとする。」というところも、「準じて」でいいのかと疑問に思う。例えばOCRなら略字の方が読み誤りが少ないというように、許容字体も使う理由があるときに使うということではないか。

○ 表外字の使用率が低いのは事実であるが、表外字の字体について起こっている問題は大きい、ということを本文の中で示すことができればよいのではないか。

○ 文字は、社会性を強く持っているという意味では共通性が高いことが望ましいが、一方で、個性を生かす手段であるという側面も持つ。また、朝日新聞やJISのやったことにもそれなりの意味がある。そこで、「選択に悩むなら標準字体を使ってください。しかし、朝日などのやったことの意義も認め、許容します。」という方針が立つかと思う。しかし、そのような観点に立つと「許容」という言葉はふさわしくないのではないかとも感じている。

○ 「簡略字体」「略体」とするのがよいのではないか。

○ 「韓」のつくりについて言われていることは、常用漢字表で「偉、緯、違」という形が出されていることを考えると、踏み込み過ぎだと思われる。表外字字体表における字体についての考え方は、常用漢字表の「字体についての解説」の説明の範囲内に収まる形にすべきであると思う。私たちが問題にすべき本筋のものは、JISの29字のような正体と略体のある異体関係なのだということを、もう一度踏まえ直す必要がある。

○ 常用漢字表の「字体についての解説」にある、常用漢字に適用されるデザイン差の考え方に付け加えて、表外字だけに適用されるデザイン差もあってよいのではないかと考えたわけである。

○ だれに向かって表を示すのかが問題である。一般の人はデザイン差には気付いておらず、それを示すのは寝た子を起こすことになるかもしれない。しかし、印刷文字を設計するに際してはデザイン差が大きな問題となるので、その関係者には示す必要がある。

○ 「字体・字形差一覧」には「呀」「訝」「谺」などについて、それぞれ複数の字形が現れている。それらは現在実際に使われているものであり、こちらが例示する字形と異なっていても、使ってはいけないと言うわけには行かないのではないか。常用漢字表の「字体についての解説」では「芽」について三つの字形を示したが、下の部分が「牙」の形になっているものは意図的に外してある。それを裏から言えば、常用漢字表では「牙」と「牙」はデザイン差ではなく字体差だと認定しているということである。この「牙」の形の問題と、「龍」の1画目などが横棒か縦棒かの問題は、表外字においてはデザイン差とするしかないのではないかと考える。

○ 「牙」について言えば、印刷局書体やモトヤ書体では明治以来の形を採り、他の幾つかのものは常用漢字の部分字形の形に改めたものを採っている。このことを字体の差だと説明するのが適切かどうか。この違いを掘り起こして言うと、当用漢字字体表で1画増やしたり減らしたりして新字体のイメージが出来上がったものは、表外字の部分字形であっても表内字の形に統一するという思想につながるおそれがある。それは、学校教育を背景とした「そう書くと×にされる」というような発想にすぐつながっていくようにも思われる。取り立てて掲げることはせず、質問されたら説明するという方法もあると思われるので、慎重に検討してほしい。

○ 一般の人には字体差とデザイン差の違いが分からない。しかし字体差だとなれば、同一字体の文字設計としては「間違っている」ということになる。ある形でいいのか悪いのかがはっきり分かるように示すべきである。

○ 常用漢字表の「字体についての解説」は、「新字体早見表」の字体差についての考え方を受け継いでおり、「早見表」が字体差としたものはデザイン差として挙げていない。

○ 印刷やワープロ関係の業界の人たちから、例えば1点しんにゅうか2点しんにゅうかなど、文字の形をはっきりさせてもらわなければ、文字設計に際して困るという話を聞いた。

○ 字体はゆれや許容範囲が広くない方がよいと思う。現実にいろいろな字形があるという状況を整理する方がよいと思う。

○ 歴史的に現れてきた字体差と、「字体・字形差一覧」に出ている字体差の議論が錯綜しているように思う。また、朝日新聞の字体がある原理で一貫しているかというと、そうでもない。だから、これがオーソドックスな字体だと示すのは難しいことだと思う。

○ 許容字体の位置付けをどうするかが一番気になっている。理論付けが可能であるのか。また、「今期第2委員会の基本方針」は「漢字の字体問題に関する基本理念を提示する」と言っているのに対し、表外字は康熙字典体が通用しているので変えない、表内字は安定しているので変えないということなので、「理念」とは「混乱を避ける」という一点になるが、それだけでいいのかと疑問に思う。

○ 康熙字典に載っている漢字の字体ではなく、明治以来の活字の字体を標準とするということだが、実際はその字体が1字種1字体ではないわけである。字体差とデザイン差をうまく説明しなければならないと思う。また、「許容」とは、「将来は標準字体に収斂されていくかもしれないが、当面は認める。」ということかと考える。

○ デザイン差だから問題にならないと言っても、受け止める側、特に学校教育などではいずれかの字形を選ばなければならない。そこで、デザイン差も含めて標準を出し、許容を定めればよいが、それは今期中には間に合わない。今期は抽象度の高い表現で、見通しを絡ませて論じるにとどめることでよいか。

○ 当用漢字、常用漢字の流れでは1字種1字形ということで来たが、表外字についてはそれでは済まず、1字種につき複数の形を認知できる力を付ける必要があるということになる。その具体的な在り方を、表外字の字体を考えることを通して我々が模索しているということではないか。

○ その考え方はいいと思うが、今は2種類なり3種類なりを認めるにしても、どれか一つを代表として将来は収斂するような方向を示しておくべきだと考える。

○ 全体の流れとして、ワープロの急速な普及による表外字使用の日常化が出発点、次に書籍の字体を調査してみたところ表外字の出現頻度は低いということがあり、表外字使用を推奨するものではないものの、表外字の字体を決めるということで、ワープロの問題に戻っている。真ん中の書籍の調査の部分が出発点から外れ、結論にもうまくつながっていない。これでは納得できないと言われるおそれがある。出発点と調査と結論をつなげる道筋を工夫して説得力のあるものにしたいと思う。

○ 筆写体と活字体の関係や「渡り」のことなどが、途中段階では書かれていた。漢字の形を一つに決められないというのであれば、本来、漢字はそのような字形のゆれを前提として読まれるものであるというようなことを、強調しておく必要があると思う。

○ 「ワープロ等の普及によって、……常用漢字表の意義がなくなったのではないかという意見が存在する。」ということについて。私も次の段落に書いてあるように常用漢字表の意義は失われていないと思うが、やはり社会生活のいろいろな場面を考えればワープロに搭載されているような6000字程度が必要なのだということを踏まえて議論する必要があるのではないか。教育だけを念頭に置くのではいけないと思う。

○ 固有名詞(人名・地名)を対象外とすることにしてきたのは、固有名詞の場合、個々人の事情と密接に絡んでいたり歴史的経緯があったりするので、標準とする字体を立てることができないからということだったと思うが、そういう書き方でいいか。

○ それでいいと思う。個々の人名に使われている漢字を、使うなとは言えない。

○ 我々の検討対象はできるだけ常用漢字とともに用いられる漢字に限るという観点から、固有名詞には触れない方がいいと思う。一般の人の公共の文字を対象とし、固有名詞は「今回は問題としない。」とするのがいいであろう。

○ 「結果として固有名詞に使われる字も対象とするが、固有名詞として対象とするのではない。」ということでまとめられると思う。

○ 「学校教育との関係」のアはいいが、イは小学校から中学校の前半辺りまでと、それ以降高校までとでは扱いが違うと思う。中学校後半以降は表外字の字種も増え頻度も高くなる。私は基本的に、表外字は“読む文字”としてルビを振ればよいと思っている。

○ 教育の目的や段階に応じた方針を立てることが望まれる、ということを記述したい。

○ 文字コードの問題については現状認識を書き、将来の課題を付け加えるという程度しか書けないし、今期国語審議会としてはそれで十分だと思う。

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