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著作権審議会 第1小委員会審議のまとめ

平成11年12月
著作権審議会

 著作権審議会第1小委員会では、本年7月以来、近年のデジタル化・ネットワーク化の進展に伴う著作物利用形態の変化や著作権制度に係る国際的動向を踏まえ、当面の著作権法改正事項として、1)権利の執行・罰則、2)障害者の著作物利用に係る権利制限規定の見直し、3)保護期間の延長等という3項目について審議を行い、検討を進めてきた。
 その結果、それぞれの課題について、当小委員会として次のように審議結果をとりまとめた。

1.権利の執行・罰則について

 本小委員会においては、今後の検討の進め方として、権利保護の実効性の確保や他の知的所有権法制との整合性の観点から、権利の執行・罰則に関する課題を取り上げることが必要であるとして、本年7月に専門部会を設置し、これまで本小委員会等の審議のまとめ等で検討課題として位置づけられてきた事項や特許法等他の知的所有権法制において導入された事項等について検討を進めてきた結果、本年10月に専門部会としての報告書がまとめられたところである。
 同報告書においては、著作権等侵害に係る損害賠償請求事件において、かねてからその賠償額の低さが指摘されてきたことや、インターネットの普及等の近年のデジタル化・ネットワーク化の進展に伴い、著作物等の利用形態の多様化が進み、著作物等の無断利用の危険性が増大していることを踏まえ、権利保護の実効性の確保のために十分な配慮が必要であるとされ、具体的には損害賠償手続規定等の充実として(1)文書提出命令の拡充、(2)計算鑑定人制度の導入、(3)具体的事情を考慮した使用料相当額の認定、(4)弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づいた相当な損害額の認定について、また、罰則の強化として(5)法人重課の導入について措置することが適当であるとの方向性が示されている。
 これらの点については、関係団体においても早期の実現を求める意見が多数となっており、著作権保護の実効性を図る観点から、早急に制度改正を行うことが必要であると考えられる。

(1)文書提出命令の拡充

 著作権等侵害事件においては、演奏、上映、公衆送信等の無形的利用等があった場合に、過去に遡って侵害行為を立証することが困難である等、侵害行為の立証が困難である場合が多い。このため、著作権法においても特許法等と同様に現行の文書提出命令(第114条の2)を拡充し、侵害行為による損害の計算をするためだけでなく、侵害行為の立証のために必要な場合においても、裁判所が提出を拒む「正当な理由」がないと判断すれば、営業秘密等が記載されている文書であっても提出を義務づけることができることとすることが適当である。この際、民事訴訟法の規定にならい、文書の提出を拒む正当な理由の有無を判断するために、裁判所が文書の所持者に文書の提示をさせることができることとするいわゆるイン・カメラ手続もあわせて導入することが適当である。

(2)計算鑑定人制度の導入

 著作権等侵害訴訟において、文書提出命令により文書の提出を受けたとしても、文書中に略号が使用されていたり、文書がコンピュータ処理のされた帳票類である等、当事者の協力義務なしでは書類の分析が困難である場合がある。このことから、裁判の公正と迅速化のため、又、権利者の立証を容易化するため、特許法と同様に民事訴訟法上の鑑定人制度の特則として新たに著作権法に計算鑑定人制度を導入し、高度の専門知識をもった計算鑑定人を指定して訴訟当事者の協力義務の下にその内容を解析させることとすることが適当である。

(3)具体的事情を考慮した使用料相当額の認定

 現行著作権法においては、損害賠償額の最低限の保障として「通常受けるべき金銭の額に相当する額」を損害の額として賠償請求できることとされている(第114条第2項)が、この額を算定するにあたって既存の使用料規程等が参酌されることが多く、侵害者が誠実に許諾を受けた者と同じ額を賠償すればよい結果となる、いわゆる「侵害し得」の状況が生じている。このため、「通常」という文言を削除し、当事者間の業務上の関係等、当該事件の具体的事情を考慮した「相当」な使用料の認定ができることとすることが適当である。

(4)弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づいた相当な損害額の認定

 現行の民事訴訟法においては、損害額の認定をする際に「損害の性質上その額の」立証が極めて困難である場合には、裁判所が弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づいた相当な損害額を認定できることとされている。
 著作権等侵害訴訟においては、カラオケ演奏等により継続的に演奏権等が侵害され、過去の演奏回数まで遡って立証する場合等、「損害の性質上」その額を立証することがきわめて困難である(民事訴訟法第248条)というよりも、損害額を立証するために必要な事実の立証が「当該事実の性質上」極めて困難である場合があるため、特許法等と同様に新たに民事訴訟法の特則を設け、損害額を立証するために必要な事実を立証することが当該事実の性質上極めて困難である場合には、裁判所が弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づいた相当な損害額を認定できることとすることが適当である。

(5)法人重課の導入

 現行第124条第1項は、法人等の業務に関し、その従業者等が罰則所定の違反行為をした場合に、その法人等業務主もあわせて処罰することを規定しているが、この場合、法人等業務主に対する罰金の上限額については行為者である自然人に対する罰金と同額(300万円)となっている。
 著作権等侵害は、ビデオ等の海賊版作成・頒布事件や上映権侵害のように法人の業務として侵害行為が行われているケースや、企業内違法コピーや違法送信等企業ぐるみで行われるケースが多く、法人業務主に対して十分な抑止力のある罰金を科す必要があることや、他の知的所有権法制との均衡を図る必要があること等から、著作権等の侵害罪(著作者人格権の侵害罪を除く。)について法人に対する罰金額の上限を自然人に比して高くする法人重課を導入することが適当である。

 なお、これら以外に、専門部会においては、積極否認の特則の導入、新たな損害額算定ルールの創設、三倍賠償制度の導入、弁護士費用の敗訴者負担、間接侵害規定の導入、侵害罪の非親告罪化及び懲役刑の引き上げについて検討されたが、結論を得るまでには至っていない。このうち、特に積極否認の特則の導入及び損害額算定ルールの創設については、今後の侵害行為の態様の変化や司法実務の動向を踏まえながら、引き続き積極的に検討を行うことが適当である。
 また、著作者人格権の侵害や侵害罪以外の行為に係る法人重課については、現時点においては法人重課が必要とされるような実態があるかどうかが明らかでないこと等から、今後の違反実態を踏まえ、更なる検討が必要である。
 さらに、近年、インターネットの普及と情報圧縮技術の登場を背景としてネットワーク上での著作権等侵害事件が頻発していることから、権利者がネットワーク上における違法行為を疎明した場合に、侵害者特定のために、サービスプロバイダーに対して違法サイトの開設者に関する情報の開示を義務づける制度の創設が今後の検討課題として位置づけられる。
 これらの検討課題については、今後、民事及び刑事法制全体の動向、他の知的所有権法制との均衡、及び国際的動向等に留意しつつ、更なる検討が必要であると考えられる。

2.障害者の著作物利用に係る権利制限規定の見直しについて

 現行著作権法上、盲人用の点字による著作物の複製及び、点字図書館等で政令で定める施設における盲人の貸出しの用に供するための著作物等の録音については、無許諾・無償で行えることとなっている(第37条、第86条、第102条)が、近年、デジタル化・ネットワーク化の進展により、障害者の著作物等の利用形態も多様化が進んでいることから、著作権制度の見直しに当たっては、著作権等の保護のみならず、著作物等の公正な利用の観点にも配慮し、障害者による著作物利用がより円滑に進められるよう配慮すべきとの要望が高まっている。
 著作権審議会マルチメディア小委員会複製検討班においては、平成9年12月の設置以来、技術の進展に伴う著作物等の利用機会と流通手段の変化に即して、複製に関する権利制限規定の見直しに関し関係団体からのヒアリングを実施するとともに検討すべき論点整理を進めてきており、課題の一つとして、障害者に係る権利制限規定についても検討を行った。その結果、障害者への著作物等の提供に係る権利制限については、技術の進展への対応という観点からの検討に加え、障害者福祉と著作権保護のバランスについて、より広い観点から検討を行う必要があるとして、第1小委員会でさらなる検討を加えることが適切であるとされた。
 また、平成11年8月の総理府障害者施策推進本部決定「障害者に係る欠格条項の見直しについて」においては、身体又は精神の障害を理由としてこれらの障害を有するものに一般と異なる不利益な取扱いを行うことを定めた法令の規定等の見直しを平成14年までに行うこととされている。著作権問題が欠格条項の問題と直ちに関係するものではないが、政府全体として、障害者向けの情報提供の充実等の措置を含めた障害者の社会活動への参加を促進する取り組みがなされているところである。
 このような状況を踏まえ、本小委員会においても、障害者のより適切公正な著作物等の利用のための権利制限規定の見直しについて検討を行った。
 具体的には、マルチメディア小委員会複製検討班における審議、及び障害者からの要望を踏まえ、視覚障害者に関しては、(1)点訳の過程で行われる点字データのコンピュータへの蓄積及びコンピュータ・ネットワークを通じた送信、(2)録音図書作成に係る権利制限の拡大、並びに(3)音声解説の付加について、また、聴覚障害者に関しては、(1)放送番組等の字幕又は手話によるリアルタイム送信(リアルタイム字幕等)、(2)字幕ビデオの作成及び(3)字幕放送、手話放送について検討を行ったほか、学習障害者等に係る権利制限規定についても要望があることを踏まえ、検討を行った。
 各々の事項についての具体的な検討内容及び検討結果は、以下のとおりである。

1.視覚障害者関係

(1)点字データのコンピュータへの蓄積及びコンピュータ・ネットワークを通じた送信

 第37条第1項は、「著作物は盲人用の点字により複製することができる」としており、点字による複製は自由とされている。しかしながら、近年の技術の発達に伴い、パソコンを用いた点訳が増加していることから、
(a)点訳の過程における点字データのコンピュータへの蓄積について明文の規定を置くこと
(b)視覚障害者情報提供施設間及び視覚障害者情報提供施設から視覚障害者へのネットワークを通じた点字データの提供を自由に認めること
についての要望が高まっている。
 この問題については、パソコンによる点訳が点字図書の大半を占める状況となっている現在、限られた人的、物的条件の中で点字情報資源の有効利用を図るためには、点訳ソフトにより変換された点字データの保存とネットワークを利用した活用が重要なものとなっており、このような利用ができるよう速やかに対応することが必要となっていること、また、パソコンによる点訳や点字データの保存、ネットワーク送信は、従来自由利用が認められてきた点字複製に対し、技術の進展に対応した延長的な利用形態と考えられること、点訳の過程で生じる点字データは健常者が流用することが想定しにくいものであり、権利者の通常の利用を妨げず、その正当な利益を不当に害するものでもないと考えられることから、権利制限により自由に行えることとすることが適当と考えられる。
 また、従来、点字による複製が特定の施設に限定することなく行われてきたことに鑑みれば、点字データの複製、送信についてもその利用主体を限定することは適当でないと考えられる。
 このほか、点字データを受信した後の利用者(視覚障害者情報提供施設又は視覚障害者)の利用形態として、(ア)点字データを点字として印刷して利用すること、(イ)点字データをいったん保存した後音声化すること、及び(ウ)点字データをいったん保存した後ピンディスプレイを用いて読むことが考えられる。
 これらの利用については、現行第37条第1項や第38条第1項の権利制限規定により自由に行えることとなっているか、又は著作権の保護の対象となる利用行為でないと考えられるが、今後、技術の進展に伴う利用形態の変化に応じ、点字データの受信後の円滑な利用に配慮する必要がある。

(2)録音図書作成に係る権利制限の拡大

 第37条第2項は、録音図書は「点字図書館その他の盲人の福祉の増進を目的とする施設で政令で定めるものにおいて、もっぱら盲人向けの貸出の用に供するため」に作成することができるとしており、具体的には、視聴覚障害者情報提供施設で点字刊行物や盲人用の録音物を盲人の利用に供し、又は点字刊行物を出版するもの、盲学校に設置されている学校図書館等が政令で指定されているが、これら以外の施設において録音図書を作成する場合には権利処理が必要となるため、第37条第2項の対象施設の拡大についての要望がある。
 また、他の施設にコンピュータ・ネットワークを通じて音訳データを送信する行為についても新たに権利制限を行うべきとの意見や、録音図書の利用対象者を学習障害者や高齢者等に拡大することについても要望がある。
 この問題については、一部の著作権管理団体において、権利者の了解を得て無償で許諾を行うこととしているように、既に一定の権利処理のルールが形成されている。また、健常者も利用することができる複製物が作成されることから、今後、流用を防ぐどのような措置を講じることが可能かという点についても検討を行う必要がある。このようなことから、より適正な権利処理ルールの確立・運用についての状況を踏まえながら、引き続き検討を行い、権利者をはじめとする関係者の十分な理解を得る必要があると考えられる。

(3)音声解説の付加

 音声なしに映像のみが放送されている場面について、視覚障害者のために音声解説を付加することについては、音声解説を新たに付加することは放送されている映像の複製とは考えられず、映像の著作権侵害には当たらないと考えられる。

2.聴覚障害者関係

(1)放送番組等の字幕又は手話によるリアルタイム送信(リアルタイム字幕等)

 聴覚障害者からは、放送・有線放送される著作物の音声内容を字幕化し、放送とは別にリアルタイムでコンピュータ・ネットワークを通じ提供すること(リアルタイム字幕)を無許諾で行えるようにすることについて要望がある。
 この利用形態は近年のデジタル化・ネットワーク化の進展に伴い可能となったものであるが、特に緊急事態におけるニュース等の生番組など、事前に字幕を付加することが困難である放送番組に関する障害者の情報保障の観点から緊急性が高く、速やかに対応する必要があると考えられること、また、健常者であればリアルタイム字幕を利用することなく、通常の放送番組を視聴すると考えられることや、複製権を制限せず、ネットワークによる字幕の提供(自動公衆送信)についてのみ制限を行うのであれば、その後の流用も想定しにくいことから、権利者の利益を不当に害するものでもないと考えられることから、権利制限により自由に行えることとすることが適当である。
 この際、音声内容を一部要約等することから、翻案権についても制限する必要があると考えられるが、同一性保持権については、著作者の人格的利益の尊重という観点から、制限することは適当でないと考えられる。
 さらに、著作者の権利保護の観点から、字幕作成は一定の組織、設備、人材を確保できる施設等に限定して行うこととすることが適当と考えられる。
 また、字幕と同様リアルタイムで手話の映像をコンピュータ・ネットワークを通じて提供することについては、現時点で通信回線の整備状況等から見て実現可能性が低く、今後の通信環境の整備や手話放送等の普及状況等を踏まえながら検討する必要があると考えられる。
 このほか、字幕の受信後の利用形態については、現在、個々の家庭内等における利用が主に想定されるが、今後の利用形態の変化に応じ、点字データの受信後の利用と同様、障害者の円滑な利用に配慮する必要がある。

(2)字幕ビデオの作成

 現在、映画の著作物等の字幕ビデオの作成については許諾を得ることが必要となっているが、聴覚障害者のより円滑な著作物の利用のために、これを自由に行えるようにすることについての要望がある。
 この問題については、現在、一定の施設において権利処理の窓口を集中化し、一括してビデオの作成を行う等、既に一定の権利処理ルールが形成されている。また、健常者も利用することができる複製物が作成されることから、今後、流用を防ぐためのどのような措置を講じることが可能かという点について慎重に検討を行う必要がある。このようなことから、より適正な権利処理ルールの確立・運用についての状況を踏まえながら、引き続き検討を行い、権利者をはじめとする関係者の十分な理解を得る必要があると考えられる。

(3)字幕放送、手話放送

 聴覚障害者のための字幕放送や手話放送の拡大について要望があるが、字幕放送等については、放送事業者が放送許諾を得る際に、字幕放送等に係る権利処理を同時に行うことより対応することが可能と考えられ、当面字幕放送等の普及状況を見守ることが適当と考えられる。

3.学習障害者等関係

 視聴覚障害者以外にも、学習障害者等に対し、権利制限による様々な形態での視聴覚障害者に準じる「情報保障」の要望がある。
 この問題については、学習障害者等の判断基準や範囲が現時点においてまだ確定しているとは言い難いこと等の問題があることから、政府全体としての取組み等、関係各方面の検討状況を見ながら引き続き検討を行うことが適当と考えられる。

3.保護期間の延長等

(1)保護期間の延長について

 我が国は、昭和45年の現行法制定以来、著作権に関する基本的な条約であるベルヌ条約の規定に則り、著作権の原則的保護期間を著作者の死後50年までとしている。しかしながら、近年における国際的動向を見ると、米国においては昨年成立した改正法において、EU諸国においては1993年10月のECディレクティブの採択を受けて、それぞれ保護期間が死後70年に延長されてきているところであり、このような国際的動向との調和を図る観点から、本小委員会において検討が行われた。
 保護期間の延長の問題については、保護期間の相互主義により、我が国より保護期間の長い国において日本の著作物が利用された場合、当該著作物は我が国の保護期間だけしか保護を受けることができず、当該国において我が国の権利者が著作物使用料を得る機会を失うのは均衡を欠くことや、保護期間を延長すれば著作者本人の創作意欲の増進につながる等の理由から、延長に積極的な意見がある。
 その一方で、多様な著作物を融合したマルチメディアの利用が進展している状況の下で、さらに保護期間を延長することは文化的所産の公正な利用の妨げになりかねないこと、プログラムやデータベースの著作物等は社会全体の技術発展の観点から長期間の保護になじまない場合があること、特許権等他の知的所有権法制における保護期間との均衡を考慮する必要があること、保護期間の延長に先立って権利者団体による著作物の権利情報の整備や権利処理制度の整備が必要不可欠であること、及び現行戦時加算規定の下での更なる保護期間の延長は避けるべき等、延長に消極的な意見も多数ある。
 また、保護期間の延長については、著作権とともに著作隣接権の保護期間も延長すべきであるとする意見や、映画の著作物の保護期間を「公表後50年まで」から「著作者の死後50年まで」に改めるべきとする意見等多様な意見があった。
 この問題については、欧米諸国の動向を踏まえると、国際的調和の観点から積極的に検討すべき重要な課題であるものの、現時点においては直ちに延長すべきとする結論には至らなかった。今後国際的動向に留意するとともに、保護期間の延長の意義や経済活動に与える影響等を具体的に分析しつつ、引き続き検討を進めていくことが適当と考えられる。

(2)写真の著作物の保護の復活について

 写真の保護期間については、旧著作権法において「発行後10年(未公表の場合は創作後10年)とされていたが、その後の昭和42年の暫定延長措置により発行後13年又は創作後13年となっていた。
 また、昭和45年の新著作権法においては、制定当初は、写真の著作物の保護期間は「著作物の公表後50年(その著作物がその創作後50年以内に公表されなかったときは、その創作後50年)」とされていたが、平成8年の著作権法改正により「公表後50年」から「著作者の死後50年」とされた。
 これらの改正の際には、一度権利が消滅したものについて再度保護を復活させることは既存の利用関係に重大な影響を与えることを考慮し、一度保護期間が経過した写真の著作物については遡及保護しないこととされたが、その結果、一般的に昭和31年までに発行された写真については現在著作権は消滅している。しかしながら、これに関し、現在活動中の写真家であっても昭和31年以前の作品については著作権が保護されないのは問題であるとして、遡及保護を求める要望があることから、本小委員会において再度検討が行われた。
 この問題については、他の著作物との保護上の均衡を欠くとして、遡及保護に積極的な意見もあるが、他方、一度保護期間が経過した著作物について著作権を復活させることは法的安定性を害し、著作物の利用関係に混乱を招くことや、写真についてのみ遡及保護を行うことは、旧法から新法への改正時に他の著作物の保護を不遡及としたこととのバランスを欠き、著作権法全体の均衡を失すること、一度保護期間が経過した著作物の保護を復活させることが著作者の創作意欲を増進させ、文化の発展に寄与するとは考えられないこと等の理由から消極的な意見が大勢を占めており、現時点において著作権法の原則を覆して保護を復活させるべき理由が見出しがたい。従って、写真の著作物の遡及保護の問題については、一度保護期間が経過した著作物の遡及保護をしないことにより著作者が被る不利益を放置することが著しく正義に反するような事情があるか否かを見きわめた上で、さらに検討を行うことが適当であると考えられる。

お問合せ先

文化庁長官官房著作権課

-- 登録:平成21年以前 --