【参考資料3】国立研究開発法人海洋研究開発機構の評価に係る審議の過程で得られた法人の運営や研究開発制度・運営の改善に向けた意見(報告書)

国立研究開発法人海洋研究開発機構の評価に係る審議の過程で得られた法人の運営や研究開発制度・運営の改善に向けた意見(報告書)

海洋研究開発機構部会

【平成29年度】

1 国立研究開発法人海洋研究開発機構の評価に関する主な意見(年度評価)

〔フローチャート等を活用したPDCAサイクルの効果的な実施について〕
○ 研究開発課題については、平成27年度評価で導入したフローチャートとロードマップを活用した目標設定と自己評価プロセスが実践されており、アウトカム創出に向けた道筋の具体化が進んできたといえる。
○ フローチャートやロードマップを使った法人全体の評価の方法が浸透するにつれ、自己評価を行う法人側も、それを評定する側も、要領を理解しフローチャート等をより活用できるようになってきた良い面がある反面、無意識のうちにフローチャートに合わせるように業務を進める傾向や、フローチャートから外れるような意外な進展若しくは計画変更を行いにくい傾向が生まれていないかとの懸念もある。
  今後は、意識して、フローチャートから外れた進展部分や、計画変更を行った部分について、その意味やそれを活かす方法について双方で議論できるようになると、法人全体の評価の取組がより有意義になっていくものと思われる。
○ ロードマップの活用に当たっては、
 ・フローチャートとの関連性を一層明確にし、フローチャートをブレイクダウンしたロードマップにおいて、各年度の成果が次にどうつながるかを分かりやすく示したうえで、どこまで達成できたのかを明らかにすること
 ・年度毎のロードマップの変更点と変更に至った経緯、見込まれる効果等を明示すること
など、中期目標の達成に向けた機構の取組とその成果を分かりやすく示せるような効果的な活用が求められる。

〔開発・運用部門及び経営管理部門の評価について〕
○ 両部門の業績評価については、取組のもたらす効果(アウトカム)の詳細を把握するための分析を行うなど、定量的・客観的な評価手法の導入が進められており、自己評価プロセスに大きな改善が見られた。
○ 定量的評価のための各種指標はおおよそ適切に設定されていたが、「前年度比」が長期的な成果水準を評価する指標として必ずしも適切ではないことなどから、定常状態の業務を評価するにふさわしい指標について、引き続き工夫・検討する必要がある。

〔研究機関としてのマネジメントについて〕
○ 課題達成型の研究開発とはいっても、基礎研究の重要性を否定するものではなく、現場の研究者の基礎研究に対する士気を維持・向上しつつも、組織全体としては「課題達成型の研究開発成果の最大化」を目指すような研究機関としてのマネジメントが求められる。
○ ジェンダーバランスを含めた組織の多様性の充実は、組織の発展において極めて重要なテーマである。機構では、国際ポスドク制度をはじめ、若手研究人材育成について独自の試みを検討し実行に移しており、どのような効果が現れるのか、今後の検証が期待される。一方、世界水準で考えると一流の研究組織としてまだ不十分である。具体的な数値目標設定、受け入れ体制の検討なども必要である。
○ 産学官連携に関しては、研究シーズの発信に係る積極的な取組がなされているが、今後は、産業界との双方向の取組(ニーズ・シーズマッチング)についても強化する方策の検討、更には、研究成果をイノベーションに結びつけるための具体的な方策を組織として検討する必要がある。特に後者については、これまでの研究や開発とは性質が異なるため、理事長のリーダーシップが一層求められる。

2 国立研究開発法人に共通する評価に関する主な意見
○ 研究開発課題の中には極めて挑戦的な達成目標(アウトカム)を設定しているものもあるが、このような場合には、客観的なアウトカムの評価だけでなく、アウトカムに至るプロセスの評価も組み入れた評価手法を採ることが有意義ではないか。そうすることで、法人側も、チャレンジングな目標設定とその実現に向けた適切な努力、失敗を次なる改善に向けるモチベーションの維持等につなげることができるといえ、PDCAサイクルの効果的な実施が図られると考える。
○ 現在は、毎年度、短期間で大量の評価項目について法人評価を実施している。限られた時間の中で実効性ある評価を行うには、類似業務についての評価項目の大括り化や項目自体の簡素化など評価項目を精査するとともに、膨大な評価に関する資料や作業の簡略化、効率化が望まれる。このことは、法人が本来の研究開発業務等に費やす時間をしっかりと確保し、研究開発成果の最大化に向けて効果的に業務運営を行っていくためにも必要である。


【平成28年度】

 評価書に記載の個々の事業等に関する意見のほか、以下1~3のとおりの主な意見が出されたので報告する。

1 国立研究開発法人海洋研究開発機構の評価に関する主な意見

〔中期目標との関係をより明らかにした評価の実施〕
○ 今年度は部会における評価プロセスに、中期目標をフローチャート化して、取組→アウトプット→アウトカム→インパクトの関係を見える化するという新たな取組を導入した。また、機構においては、中期目標・計画を達成するためのロードマップを明示し、自らの取組がどのように進捗しているかを明確にするよう努めた。
○ これにより、評価に際して、機構の取組や成果が、中期目標上のアウトプット・アウトカムにどのように貢献するか、また、アウトプット・アウトカムに向けてどのように進捗しているのかが分かりやすくなり、「研究成果の最大化」という観点からの評価を行うに当たり有用なツールとなり得ることがわかった。
○ 一方、特にフローチャートについては、既に機構内部での自己評価が進んだ段階で導入されたこともあり、機構側の説明では、これらのツールが必ずしも有効に使われてはいなかった。来年度からの自己評価においては、当初よりこうしたツールを活用し、中期目標・計画の達成、そして「研究成果の最大化」に向けてどのように工夫しながら取り組んでいるか等を明らかにしていくことが期待される。

〔評価の基本的な考え方の明示〕
○ 機構の自己評価においては、昨年度の部会で自己評価が抑制的というコメントがあったことも踏まえ、特筆すべき成果を積極的にアピールするという方向で評価を実施してきた。
○ これに対し、評価側としては、前述のフローチャート及びロードマップを活用しつつ、中期目標上のアウトカムとの関係を重視し法人評価を行うという基本的スタンスを明示して評価を実施した。また、そうした基本的スタンスを踏まえて、機構の取組や評価において不足している点についても指摘するように努めた。
○ 今後、機構において、アウトカムとの関連での評価がより意識されるようになれば、成果の社会的有意性等に対する理解が深まり実効が上がると考える。

〔項目別評定の課題〕
○ 研究開発以外の項目(例えば普及広報活動、成果の情報発信、人材育成など)については、設定されているアウトカム・アウトプットが理念的なものが多いことから、これらの項目では、より具体的なアウトカムレベルの目標設定とその達成に向けての具体的な取組のロードマップの策定が求められる。

〔業務における課題の提示〕
○ 機構による評価時の説明では、特筆すべき成果を強調するあまり、業務展開における課題の提示が十分ではなかった。今後、大きな課題については部会の場に提示し、議論する必要があると考える。

2 国立研究開発法人に共通する評価に関する主な意見

〔中期目標のフローチャート化〕
○ 課題達成型の研究開発に中長期的・継続的に取り組む国立研究開発法人の場合、当該年度のアウトプットの評価のみならず、アウトカムとの関連での達成度や達成スピード等の評価が重要であるが、かかる観点からの評価に当たっては、今回、機構の評価で導入したフローチャートが参考になると考える。

〔評価の観点〕
○ 日本全体あるいは世界水準に照らして優れた成果かどうかを判断する相対的な評価のほかに、機構のポテンシャルとして想定されるレベルを基準とした絶対的な評価があり、そのどちらで判断するかについて議論があった。
○ このため、中期目標が求めるアウトカム・アウトプットとの関係や業務の性質に照らして、どちらの基準を重視して評価すべきかを明確にしていくことが求められる。その際、機構のみならず日本全体としての「研究成果の最大化」という点を意識していくことも重要と考える。
○ しかしながら、これらを具体的にどう進めていくかについては、定まったものはまだなく、今後の各法人の評価の中で様々な取組と工夫を行いながら、考え方を整理していくことが必要であると考える。

〔客観的な評価〕
○ 「顕著な成果」といえるか、「将来的な成果の創出の期待」があるかなどについて自己評価の妥当性を裏付けるためには、適正な外部評価の実施と、取組のみならずその効果を測る指標の設定など、可能な限り客観的かつ具体的な根拠を積み上げた説明が必要である。

〔複数の評価項目に関連する取組の評価〕
○ 複数の評価項目に該当する成果の評価に当たっては、同一成果を重複して評価することがないように項目毎に異なる視点で評価することを基本とし、機構による自己評価や被評価時の説明には工夫が必要であると思われる。同時に、評価側も成果を項目毎に分散・細分化して過小評価することがないように注意が必要である。

3 その他(制度運用等に関するもの)

○ 特記事項なし。


【平成27年度】

 評価書に記載の個々の事業等に関する意見のほか、以下1~3のとおりの主な意見が出されたので報告する。

1 国立研究開発法人海洋研究開発機構の評価に関する主な意見

〔項目別評定について〕
■ 新しい制度に対応するためには、海洋研究開発機構の目標設定から見直しが必要ではないか。海洋研究開発機構の目的、将来的に目指している研究開発成果の最大化等を踏まえ、実施責任のみならず、結果責任を問う形での中期計画・目標を策定し、それにのっとった評価軸が策定されるべきではないか。
■ 「研究開発成果の最大化」に向けた「あるべき姿」と現実とのギャップを具体的に挙げ、それをどのように埋めるかを議論して実行するという取組自体を目標として位置付け、評価するべきではないか。
■ 機構のみならず国全体としての「研究開発成果の最大化」とは何か、どのような目標設定をすれば実現に近づけるのかといった観点から検討や取組が必要ではないか。

〔総合評定の考え方について〕
■ ロードマップを策定し、より具体的な目標設定と進捗の把握を図る努力がなされているが、マイルストーンの設定が過度に緻密にならないよう注意すべきであると同時に、ロードマップのメリット・デメリットを把握し、研究テーマに応じて、研究開発成果の最大化の観点から緩急をつけることが望ましいのではないか。
■ 研究者の自由な発想による研究と、国からのミッションを果たすための研究・技術開発とのバランスや割合を、研究者に対し海洋研究開発機構として指針・ルールとして明確にするべきではないか。

〔長のマネジメントについて〕
■ 一般的に、研究から開発、業務管理から人事・人材マネジメントに至るまでの全ての経験とスキルを備えている理事長はいないと考える方が現実的である。理事、執行役等といった“マネジメントチーム”がお互いのスキルを補い合いながら有効に機能しているかどうかが重要であり、理事長は“マネジメントチーム”をうまくマネージすることにより機構全体をマネージすることが求められる。海洋研究開発機構の場合、経営管理部門における“マネジメントチーム”とそれに対するマネジメントが機能していないのではないか。
■ 研究部門の広がりを考えると、1人の理事が最終的な責任をもって担当するのは困難ではないか。
■ 各研究者の目標・研究志向が海洋研究開発機構全体の研究推進にマッチするようマネジメントすることが望まれる。その際、研究者のモチベーションの維持と過度の負担・圧力の排除への配慮が望まれる。
■ 理事長のリーダーシップを具体的に形にしていくため、理事をはじめとするスタッフが相互に連携を図り、JAMSTECのビジョンをポジティブなメッセージとして各部署に伝えていく仕組みが有効に機能しているかどうかを再検討する必要があるのではないか。
■ 専門性の高いきわめて広範囲な領域を対象とする研究機関であり、経営目標の共有にはかなりの困難が伴うと推察される。徒に管理強化の方向に走ることなく、地道に各層とのコミュニケーションを積み重ねるしかないのではないか。

2 国立研究開発法人に共通する評価に関する主な意見

〔研究開発成果の評価について〕
■ 「○○を発見する」等、成果ゼロもあり得るような挑戦的な課題にも、研究者が長期的に取り組めるような環境(評価方法等)を整備すべきではないか。

〔開発事業の評価について〕
■ 先端的基盤技術の開発を年度単位で予算管理・評価するのは適当ではない。最終的に、当初予定予算以下での開発や工期の短縮といった要素を加味し、評価を行うべきはないか。

3 その他(制度運用等に関するもの)

〔部会の運営について〕
■ 海洋研究開発機構がどのような活動をし、どのような成果を出したかというより具体的な説明が必要である。平成26年度評価に係る部会では、理事長のリーダーシップ、意見交換等に時間が費やされたものの、逆に研究成果や業績に関する説明が少なくなったため、抽象的な印象を受けるに留まった。
■ 事業内容の網羅的・羅列的な従来のヒヤリングに対し、平成26年度評価に係る部会では、内容が適切に絞られていた。今後も、部会間での評価方法の情報共有や、トライアンドエラーの積み重ねが重要。
■ 理事長のリーダーシップ・マネジメント能力の把握に関し、研究開発センター長・部長等に対し、記述式のインタビュー(アップワードフィードバック)を実施した。理事長に対してフィードバックを行った。

〔研究開発の特性を踏まえた制度運用の改善について〕
■ 評価の実施にあたっては、各法人の使命、個別目標等に応じて、事業の重み付を行い、各事業に対して付された評価が一律、かつ、等しく扱われないようにすべきではないか。
■ 会計基準が業務達成基準を原則とされたことについては、研究開発に係る事務及び事業が、長期性・不確実性・予見不可能性・専門性等といった「研究開発の特性」を有する創造的な業務であり、必ずしも時間に応じた線型的な事務及び事業の進捗、成果の創出等が期待できない場合が多いことに鑑みると、効率面等において大きな課題となるのではないか。

〔組織の運営について〕
■ 海洋研究開発機構は船舶等の施設の維持運用に多額の経費を要しているが、運営費交付金の削減が長期にわたって続いているため、誰が機関の長になろうとも、これらの維持運用がかなりの重荷になっている。外部資金、受託研究等の受け入れに向けて努力しているが、これらの間接経費や一般管理費の引き上げ(10%ではなく30%程度まで)も必要ではないか。

以上 

お問合せ先

研究開発局海洋地球課