国立大学法人東北大学の平成18年度に係る業務の実績に関する評価結果(案)

1 全体評価

 東北大学は、学長を中心とした戦略的トップマネジメントの推進を可能とするため、企画室の設置、理事・副学長体制の見直しなどによる学長補佐体制を充実し、戦略的な法人運営体制の確立を目指している。
 特に、平成18年度は、ブランド力向上のため、東北大学ロゴマークを使用したロゴグッズの作製、研究・教育・国際交流状況及び社会貢献活動を紹介する冊子の発行や地元放送局による協力等の積極的な広報活動を展開し、ブランドイメージアップに努めている。
 また、平成17年度の評価委員会の評価結果を踏まえ、役員に対する報酬及び退職手当の支給基準の改訂に関して、経営協議会の審議事項として位置づけている。
 一方、随意契約について、学内規則等に基づき、一般競争入札の確実な実施、契約に係る確実な情報公開の取組を行うべく、適正な契約体制を構築するよう、早急な対応が求められる。
 この他、業務運営については、学術領域の英知を継承するという役割を着実に果たしつつ、学術の動向や社会の要請等に迅速に対応するため、領域横断並びに部局横断のための「特定領域研究推進支援センター」、異分野を融合した新しい研究分野で世界トップレベルの若手研究者養成を支援する「国際高等研究教育院」を設置している。
 財務内容については、積極的な技術移転を展開し、ロイヤリティ収入額の大幅な増収を図っている。
 教育研究の質の向上については、学生に対する就職・進路に関する広くきめ細かい情報提供を行っており、学生のニーズに合ったキャリア支援の実現が期待される。また、米国代表事務所を開設し、国際機関との学術・教育連携促進活動、海外企業からの受託研究の拡大等を通じて、大学の研究成果の社会還元を国際的に展開することが期待される。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化

  • 1 運営体制の改善
  • 2 教育研究組織の見直し
  • 3 人事の適正化
  • 4 事務等の効率化・合理化

 平成18年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  総長補佐体制を充実するため、中期計画推進室、企画広報室等を廃止し、総長と一体となって企画立案及び総合調整等を行う総長室を設置するほか、情報化戦略推進室、広報戦略推進室、研究戦略推進室、国際交流戦略室を新設するなど組織の見直しを行っている。
  •  学術領域の英知を継承するという役割を着実に果たしつつ、学術の動向や社会の要請等に迅速に対応するため、領域横断並びに部局横断のための「特定領域研究推進支援センター」、異分野を融合した新しい研究分野で世界トップレベルの若手研究者養成を支援する「国際高等研究教育院」を設置している。
  •  平成17年度の部局評価指標に改善を加えた新しい評価指標及び予算の配分方針により部局評価を実施し、評価結果に基づく教育研究基盤経費等の傾斜配分をすることで効率的な予算配分を実施している。
  •  平成17年度に引き続き、教員人件費の5パーセント(約13億円)を確保して、戦略スタッフの充実、病院経営への戦略的支援、ユニバーシティプロフェッサーの招聘のための重点的な資源配分を行っている。
  •  知的財産、産学連携、国際交流、キャンパス整備等に関する有識者・専門家を民間等から登用している。
  •  民間企業マネージャーである外国人の外部有識者から、外国人としての視点での東北大学の活動分析・提言を得て、広報戦略に活用している。
  •  教員個人評価に関する全学的なガイドライン「教員個人評価のあり方について」を策定し、学内に周知するとともに、各部局においては、ガイドラインを基に平成19年度実施に向けた検討を行い、一部の部局では試行的に実施するなど、教員個人評価の実施に向けた取組が行なわれている。
  •  平成17年度に引き続き「若手研究者萌芽研究育成プログラム」を実施している。また、国際公募による若手研究者のためのテニュアトラックプログラムを開始し、総長裁量経費によるスタートアップ経費を措置するなど若手研究者の育成に努めている。
  •  プロジェクト研究等に従事する任期付き教員の年俸制を積極的に導入している(平成17年度87名から平成18年度172名)。
  •  平成17年度に引き続き、共同購入による経費削減を図るため、宮城教育大学と重油、ガソリン、軽油、白灯油、コピー用紙の共同購入を実施している。また、山形大学と重油の共同購入を実施している。
  •  平成17年度評価結果で評価委員会が指摘した事項(役員に対する報酬及び退職手当の支給基準に係る経営協議会での確実な審議の実施)については、役員に対する報酬及び退職手当の支給基準の改訂に関して、経営協議会の審議事項として位置づけている。
【評定】

中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)

年度計画の記載51事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善

  • 1 外部研究資金その他の自己収入の増加
  • 2 経費の抑制
  • 3 資産の運用管理の改善

 平成18年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  総長裁量経費として27億円を確保し、中期目標に則した重点区分(研究推進、人材育成、社会との連携・国際交流等、基盤形成)による新たな配分方針を策定し、これに基づき174件の事業への配分を行っている。
  •  競争的研究資金獲得のため、申請・応募に関しての種々の相談や、異分野間の研究内容に伴う連携・融合のための橋渡し機能の窓口として競争的研究資金等相談室を設置している。
  •  産学連携の一層の促進のため、産学官連携推進部を中心に、企業との技術交流会、企業訪問などを実施した結果、共同研究等の件数及び金額の対前年度伸率は、件数で17.5パーセント(177件)、金額で8.7パーセント(8億660万円)増となっている。
  •  積極的な技術移転を展開し、ロイヤリティ収入額は、前年度比約12倍増の8億2,007万円を達成している。
  •  学内保有資金の一部で国債の購入を行い財務収益の増を図っている(対前年度比約2,100万円増)。また、学内資金を活用することにより、財務・経営センターからの借入を年度末に集約し、金融資産管理の効率化を図っている。
  •  附属病院においては、経費節減策として後発医薬品の採用推進と院外処方率の向上及び試薬購入価格の低減を図っている。また、増収策として、新病棟開院に伴う差額室の増床、準個室の増床、化学療法センターの拡充及びMFICUの整備、ベッドコントロール優先ブロックの設定による病床稼動率の向上を図っている。
  •  電力契約形態の複数年契約により、電力使用料を削減するとともに、都市ガスの大口契約により、ガス使用料を削減している。
  •  中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

 平成18年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

  •  学内規則等に基づき、一般競争入札の確実な実施、契約に係る確実な情報公開の取組を行うべく、適正な契約体制を構築するよう、早急な対応が求められる。
【評定】

中期目標・中期計画の達成に向けておおむね順調に進んでいる

(理由)

年度計画の記載23事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められるが、契約の適正化の係る取組が十分に機能していないこと等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び情報提供

  • 1 評価の充実
  • 2 情報公開等の推進

 平成18年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  教育、研究、社会貢献に関する部局評価について、評価実施要綱を策定し、各部局は、この統一基準による部局自己評価報告書を作成し、それを基に、全学部、研究科、研究所について、総長、理事、副学長によるヒアリングを実施し、概算要求や総長裁量経費等の重点的な予算・人材等の資源配分の施策を講じるシステムを整備している。
  •  一部の部局において、教員の個人評価結果に基づくインセンティブ付与制度を検討し、研究科長等裁量経費の重点配分等に反映させている。
  •  ブランド力向上のため、外部コンサルタント等の意見を取り入れ、東北大学ロゴマーク入り広告バスを仙台市内で運行させるとともに、民間業者とともに、東北大学ロゴマークを使用した文具品、お菓子、酒等の様々なロゴグッズを作製している。
  •  季刊誌「まなびの杜」を継続して発行するとともに、研究・教育・国際交流状況及び社会貢献活動を紹介する冊子「東北大学アニュアルレビュー2006(日本語版、英語版)」を発行し、官公庁、国内外の企業・研究機関等に配付するほか、英国科学雑誌に仙台市と共同で、東北大学を中心とする仙台市を紹介する広告記事を掲載するなど、積極的な広報活動を展開し、ブランドイメージアップに努めている。
  •  地元新聞社と連携・協力し、毎月1回定期的に開催するサイエンスカフェ(市民と研究者が気軽にコミュニケーションできる場)の特集シリーズとして、毎回の事前広報と事後報告を誌面に掲載し、一般市民・高校生等に対し、サイエンスカフェの理解と普及に努め、1,200名を超える市民の参加を得ている。
  •  地元放送局と協力して、テレビニュースの中で「東北大学100年物語」(シリーズ19回)を放送し、一般市民に対する研究活動情報の提供を行っている。
  •  100周年記念事業の一環として、新聞社との共催により、100周年記念セミナー3回(東京2回、仙台1回)、理系白書シンポジウム(仙台)、サテライトセミナー(福岡、名古屋)を開催している。
  •  同窓生に向けた広報を進めるため、同窓会ウエブサイトを立ち上げ、メールマガジンを利用した大学情報の配信を行っている。
【評定】

中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)

年度計画の記載12事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要事項

  • 1 施設設備の整備・活用等
  • 2 安全管理

 平成18年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  施設設備に関する適切なリスク管理を実施するため、インフラ設備8項目についてのハザードマップを作成している。
  •  施設の効率的な運用を実施するため、新たな全学共同利用スペース(1,168平方メートル)の確保、利用規程の制定による、弾力的な活用を図っている。
  •  宮城県から青葉山県有地を新キャンパス用地として取得し、環境調和型の「青葉山新キャンパスマスタープラン(基本計画・基本設計)」を策定している。
  •  団地・学部における平成15年度〜17年度の年度別エネルギー等(電力、上・下水道、ガス、重油、井戸水)の使用実績をウエブサイトに掲載し、省エネルギーに対する意識向上を図っている。
  •  危機管理等への対応策として、災害対策マニュアル、安全衛生管理指針が策定されているほか、各種講習会、予防訓練の実施、各部局において学生・職員の教育・指導にあたるスーパーバイザーの措置などの取組が行われている。
  •  工学研究科等一部の部局で導入していた薬品管理システムを全学ネットワークシステム「危険物質総合管理システム」として導入することにより、危険物質等の全学的に等質な管理を行うことが可能となっている。
  •  研究費不正使用防止に向けた取組として、全学相談窓口、研究不正(研究経費)対応フローの設定等の運営管理体制の整備、内部通報窓口の設置等の事案の把握方法が整備されている。
【評定】

中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)

年度計画の記載16事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成18年度の外形的・客観的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

  •  全学教育科目の基礎ゼミは、全部局の教員の協力により154テーマを開講し、2,550名(1テーマ平均約16名)が受講している。また、基礎ゼミ受講の成果等についての学生による発表会及びポスター展示会を開催するとともに、担当教員を対象とした基礎ゼミに関するファカルティ・ディベロップメント(FD)を実施している。
  •  これまでの学都仙台単位互換ネットワーク、サテライトキャンパス、ブランド力の向上を目的として「学都仙台コンソーシアム」を設置し、東北・仙台地区の大学間単位互換制度の充実を図っている。
  •  「国際高等研究教育院」において、優秀な大学院生(大学院修士課程2年次50名以内、大学院博士課程各年次30名以内)に奨学金等支給、論文投稿費、学会出席費用の補助等の支援を行う制度を確立している。また、平成18年度に指定授業科目を6単位以上履修した優秀な大学院修士課程1年次学生の中から、平成19年度支援対象学生「修士研究教育院生」を選抜する準備を整えている。
  •  国際機関との学術・教育連携促進活動、海外企業からの受託研究の拡大等を通じて、世界的プレゼンスを高め、大学の研究成果の社会還元を国際的に展開することを目的として、アメリカ・ロスアルトス市に「東北大学米国代表事務所」を開設している。
  •  就職・進路に関する広くきめ細かい情報提供を推進するため、キャリア支援センターを設置している。また、企業等に対して行ったアンケート調査を分析し、「東北大学の卒業生評価に関する調査」報告書を作成し、教育プログラム・システムの改善に活用することとしている。
  •  産学連携の一層の推進を図るため、研究推進・知的財産部を産学官連携推進本部に改組・拡充し、事業化推進部を新たに設置し、リエゾン機能の強化を図るとともに、15寄附講座・研究部門を設置している。
  •  社会との連携を強化し地域貢献にも結びつく東北大学連携型起業家育成施設の着工を実現し、東北大学発技術によるベンチャー・中小企業等の育成を通した新産業分野の創出に着手している。

(全国共同利用関係)

  •  全国共同利用の附置研究所・研究施設である金属材料研究所、電気通信研究所、情報シナジーセンターは、それぞれ研究者コミュニティに開かれた運営体制を整備し、大学の枠を越えた全国共同利用を実施している。
    •  情報シナジーセンターは、大規模科学計算システムの共同利用の拡充のため、テクニカルアシスタント(18名)による利用相談(全件数455件、学外39件)を学外にも利用相談所(3大学4ヶ所)を設けて、利用者支援を実施している。

(附属病院関係)

  •  病院長専任制度の下に管理組織を整備し、外部評価や相互チェックを経て様々な取組を推進している。若手医師のトレーニング体制や臨床研究推進体制の整備、MFICU(母体胎児集中治療室)、高度救命救急センター、がんセンター等の整備が進んでおり、医療安全・危機管理体制の強化やホスピタル・モール(院内店舗・レストラン等)の設置等、患者サービス向上にも積極的に取り組んでいる。
     今後、大学病院としての医師養成に関するビジョンを明らかにしつつ、卒後臨床研修や後期研修の一層の充実に努めるとともに、病床稼働率の向上を図るなど、運営充実に向けた更なる取組が期待される。
  •  教育・研究面
    •  初期臨床研修から若手医師の教育研修に様々な工夫がなされており、スキルズラボやシミュレータ整備等、医療トレーニング体制を整備しているほか、東北大学病院看護実践能力開発システムを作成し、看護師の院内教育にも努力している。
    •  トランスレーショナルリサーチセンターにおける高度先進医療開発に向けた取組を推進している。
  •  診療面
    •  MFICUの整備や高度救命救急センター・がんセンターの設置、さらには、がん診療連携拠点病院の指定を受けるなど、地域からの要請の強い医療の充実に向け積極的に取り組んでいる。
    •  ホスピタル・モールの整備をはじめ、職員の接遇研修や患者満足度調査の実施等患者サービス向上に努めるとともに、医療事故防止や危機管理等安全管理の整備をきめ細かく実施している。
  •  運営面
    •  病院長を専任とするとともに、総括副病院長・副病院長を置くなど、病院長のリーダーシップが発揮しやすい仕組みを構築している。
    •  病院機能評価機構の評価や外部有識者による運営諮問会議の開催、他の国立大学病院との相互チェックの実施等、運営のチェックを継続的に実施している。
    •  経営分析に基づき、化学療法センターの拡充やMFICUを整備するとともに、新規医療機器導入や空床管理効率化、看護師・薬剤師の増員を行い収支改善に努めている。

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