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 パブリック・コメントの類型と対応についての基本的な考え方 




1.報告書に示された基本的な考えを支持するとの意見
  

<基本的な考え方>  
  報告案の大筋を維持する。 
   

2.ヒト胚研究全般の検討が必要であるとの意見
  



  

(1)報告案を肯定しつつ今後の検討を必要とする意見と、全体の
     枠組みができ るまで各論を議論すべきではないとの意見の双方
     あり。
  

<基本的な考え方>  
  これまでの審議の結果、廃棄されることが決定したヒト胚を、有意義な研究のために適切な手続き、方法により研究に使用することは認められると判断。また、個別の事例について研究利用の妥当性、必要な手続きを検討することは可能であり、本報告は、特に重要な課題であるヒトES細胞に関して議論をまとめることとしたものである。ただし、ヒト胚研究全般についての検討が必要であることは明示し、生命倫理委員会や関連学会における検討を促している。  
   


  

(2)生殖補助医療そのものの検討が必要であるとの意見
  

<基本的な考え方> 
  生殖補助医療については、人の出生をめざすという点で、研究とは別の、遙かに深淵な問題を含むものであり、これまでの小委員会の議論を踏まえて本報告において取り上げることは無理である。現在、厚生省厚生科学審議会において生殖補助医療技術に関して検討が行われており、今後生命倫理委員会でヒト胚研究全般を検討する際には、これらの検討も踏まえつつ議論をすべき旨指摘した(第6章)。  
    


  


(3)ヒト胚の位置付けに関し、宗教、哲学等広範な議論が必要
     との意見
  


<基本的な考え方> 
  社会においてそれぞれの立場から自主的な取り組みが求められる問題であり、今回の報告を契機に議論が高まることを期待。また、今後生命倫理委員会においてヒト胚研究全般を検討する際にかかる議論を汲み上げるよう配慮すべき。  
    



  

(4)当面の措置として、生殖補助技術等に関するヒト胚研究は、
     学会から生命倫理委員会に届け出させ、研究内容を確認すべ
     きとの意見
  

<基本的な考え方>  
  生殖補助技術に関するヒト胚研究をどう扱うべきかについては、今後議論すべきものであり、現時点で具体的な仕組みを提案することはできない。生命倫理委員会として今後検討すべき問題であり、また、本報告を踏まえ、学会等における検討が進められるべきもの。  


3.報告案に示された遵守事項等の実効性を確保すべきとの意見
  



  

(1)ヒト胚の提供のインフォームド・コンセント、研究の制限等の
     実効性
  

<基本的な考え方> 
  指針策定及びその運用の際に実効性を高める努力を払うとともに、ヒト胚研究全般を検討する中で運用面も含めフォロー・アップしていくことが必要。  
   


  

(2)違反行為に罰則を付すべきとの意見
  

<基本的な考え方> 
  これまでの議論から、ヒト胚の扱いそのものを法律による規制の対象とするとの結論は得られていない。但し、ES細胞を用いて人個体を産み出すには核移植またはキメラの技術が必要であり、これらについては、クローン個体等の産生を規制する法律に位置付けられる指針に従うこととなり、実効性を担保する措置が取られる。また、ES細胞の樹立、使用に関する指針の策定、運用において実効性を担保する努力を促すとともに、生命倫理委員会としてそのフォロー・アップを行っていく。  


4.ヒト胚研究そのものが認められないとの意見
  



  

(1)受精から命は始まり、研究は認めるべきではないとの意見
  

<基本的な考え方> 
  ヒト胚は、生命の萌芽として慎重に扱うべきであるが、これまでの審議の結果、廃棄されることが決定したヒト胚を、有意義な研究のために適切な手続き、方法により研究に使用することは認められると判断。  



  

(2)不妊治療の現状への認識が不足しているとの意見
  

<基本的な考え方> 
  実状に応じて実行可能な案を検討することは大切であるが、本報告では本来あるべき姿を議論し取りまとめたもの。指針策定及びその運用の際に実効性を高める努力を払うとともに、ヒト胚研究全般に関する検討の中で引き続き現状の把握に努力する。  



  

(3)ヒト胚の売買等の商業利用につながることを懸念する意見
  

<基本的な考え方> 
  ES細胞の樹立に必要なヒト胚の数はある程度限られるものであり、ヒト胚の商業利用につながらないよう基準・手続きを定めているところ、実際の運用においてこの基準・手続きを遵守させるよう努める。  


5.本分野の研究の重要性を指摘する意見
  

<基本的な考え方> 
  研究の重要性に鑑み、厳しい条件の下ES細胞の樹立、使用を可能とする報告をまとめたものであり、報告案の大筋を維持。  


6.研究への影響を懸念する意見
  




  

(1)ES細胞樹立機関数の制限の悪影響を懸念する意見
(2)禁止事項の設定、知的独占権への制限を懸念する意見
  

<基本的な考え方>  
  提案している枠組みでは、まず倫理面を重視したものであり、この考え方を維持する。実際に運用された段階で必要に応じ見直しをすることはあり得る。  
   

7.社会的論議・合意形成の必要性を指摘する意見
  




  

(1)今後の議論の必要性を指摘する意見。
(2)意見公募の期間の短さを指摘する意見。
  

<基本的な考え方>  
  社会においてそれぞれの立場から自主的な取り組みが求められる問題であり、今回の報告を契機に議論が高まることを期待。また、今後生命倫理委員会においてヒト胚研究全般を検討する際にかかる議論を汲み上げるよう配慮すべきであり、引き続き意見を受け付け、検討していく枠組みを整備する。また、指針の策定に当たっては、再度意見公募の機会を確保する。  







報告書案の該当個所
ご意見、質問等
提出者
意見への対応
  報告書案の記載内容は、かなり網羅的に検討しており、今後の国民的な合意を形成していく上でのたたき台になる  日本民族学会   
      日本泌尿器科学会 
  賛成意見が多数だったが、ヒト胚の倫理的監視がドナーのインフォームド・コンセントだけでは不十分、ヒト胚という用語は一般に理解されにくいので、「受精卵」とすべき、ヒト胚は研究利用すべきでないとの少数意見があった。   日本整形外科学会  
  報告書案は、生命科学の進歩と倫理の観点から妥当性の高い内容であり、原案に賛成同意する。少数意見として、極めて総論的かつ曖昧である、未知の部分が動物実験などで確実になるまではヒト胚性幹細胞を用いた研究は禁止すべき、研究の全面禁止は研究の地下組織化をもたらす危険があるので賛意しかねる、などがあった。   日本癌治療学会  
  (代表的な意見をとりまとめたもの):全体的に大変よく考えられている案である。この考え方が十分に浸透し、厳格に適用されることを望む。厳密に実行させる措置が必要であり、違反者に対する罰則も定めるべき。「ヒト胚」を使うという点により明確な倫理的な規制を掛けるべき。ヒト胚研究推進を前提とした案であるように思える。   日本化学会(代表的意見)  
  多大な時間を費やしてわかりやすく報告書をまとめたことに敬意。  日本組織培養学会(倫理問題検討会委員長見解)   
  今般、報告書案を公表されたことは時宜に適ったものとして歓迎される。  日本医師会   
  報告書案は、ヒト胚性幹細胞の研究利用に際して必要な事項を網羅し、また、倫理面における問題点にもかなりの配慮がされている点で評価される内容である。今後のあり方について配慮すべきである。胚性幹細胞の使用は21世紀の我が国における再生医療の中核をなすものである一方、十分な社会的コンセンサスを得ることが必須。本案を円滑に実施するには規制上の環境整備が必要であり、更に必要な財政基盤の一部は国策として国が十分に配慮すべき。   日本薬学会   
  ヒトES細胞株を樹立し、さまざまな細胞に分化誘導させ、再生医療に使用することには大きな意義がある。倫理的判断から我が国がES細胞株の樹立を禁止しても米国等から導入される可能性も高いため、樹立機関を限定するとともに使用にあたって慎重に審査した上で許可するという2重の規制を設けて推進するという本案の考え方を基本的に支持する。   日本繁殖生物学会   
  迅速かつ多大な議論に敬意。動向についての詳細な記述を高く評価。ヒト胚研究に関しては基本的な部分において厳格かつ厳密なルールが必要。ヒト胚研究の対象はすでに生殖補助技術の枠組みを超えており、研究の健全な推進のためには、これまでの日本産科婦人科学会の会告にとらわれることなく国としての明確な基本方針を示すことが重要。倫理の問題は、最新の合意事項を明確な方針として示す等、迅速かつバランスのとれた対応となるよう配慮されることが重要。今後議論が継続され、ES細胞も含む全般的な「ヒト胚研究に関する基本的考え方」が報告されることを期待。   (財)バイオインダストリー協会   
  報告書案は、ヒト胚性幹細胞の樹立ならびに使用にあたって遵守すべき点について、予想される様々な状況に対応し、充分慎重に練られたものであり、基本的考え方に大きな問題点はない。   日本血液学会(数人意見取りまとめ)   
  ヒト胚研究、ことにクローン胚等の取扱いについては慎重な対応が必要であり、一学会等に任せておかないで、科学技術会議等で検討すべきもの。今回の報告書の方向で進めてよい。   日本心身医学会   
  報告書案について特に問題はないと考える。本学会の研究する分野において行われる可能性があり、その際にはヒトの生命の尊厳性という立場に立ち、本難に沿って慎重に研究するように会員各位に周知徹底をはかる所存。   学会(医学系)   
  大筋の点で反論するところはない。  DPI女性障害者ネットワーク   
  ヒト胚研究は今後極めて重要である、ことに異議はない。着床前のヒト胚、ヒトの胎児への生命倫理観が希薄にならないよう強く要望する。    こども病院長   
  病理研究者としても、大学の倫理委員会の責任者としても考え方に大いに賛同できる。  大学教官(医)   
  ヒト胚性幹細胞等の医療への応用の可能性に対応する倫理的問題を中心とした基本事項に関する案として必要なことはほぼ検討されている。今後、医療への応用の個々のケースにおける具体的問題点への対応が必要。倫理的面の意見はまず一致を見る基本線を作ることが必要であり、あまり細かい点まで含まず、倫理的に大方の者が納得する点に基本を置くことが進め易い。   大学教官(医)   
  ヒト胚研究が人類に福音をもたらすものであると共に人の生命の萌芽を操作するという相矛盾する要請を調和的に解決する方法として検討の結果示された「基本的考え方」について妥当な方向であると考える。   大学教官(法)   
  ヒト胚性幹細胞の研究は、臓器移植等の医療関係の発展のため、極めて高い有用性が期待され、委員会の考え方に賛同する。   研究者(生物)   
  ヒト胚研究の一見矛盾する要請を調和的に解決する方法としては妥当な方向。「基本的考え方」を真に生かし、一般国民からみて信頼できる制度を構築するには、ヒト胚の提供を受ける段階での意思の自由が保障される熟慮のために必要な十分な時間の確保、不当な説得の自粛など、管理段階での不当利用の防止が必要であり、研究者の資格制限、研究の事前事後の審査の徹底、情報公開など、人間の危機的要素が生じないような方式を組みこんだ方策であるべき。      
  報告書案の大筋に賛成。
早急に立法化し罰則を具体化する必要があると考える。 
大学教官(理)   
  物質研究がその根源の所まで究明が行われるようになっている現在、生命現象の根源にまで研究が及ぶのは時代の流れで、誰も止めることはできない。しかも、それには高度な科学技術的知識と設備と経済力が必要とされる以上、西側先進国といわれる一部の国のみが担いうる人類的な使命だとも言える。日本はこの点で他国に遅れをとってはならない。こうした研究と試みを支持する。しかし、倫理を考える場合には物質科学的視点のみでは不十分である   自営業   
  以下の理由により、ES細胞研究の指針作りに反対。1人間の女性のからだを資源化し、商品化する。2有用性と商品化等の側面も含めて一般の人たちにも理解しやすい情報公開がなされていない。3ES細胞研究に限った指針を作ることは生命操作全般を見直す契機を失わせる。   SOSHIREN女(わたし)のからだから   
  基本的なところで大きな不備や矛盾があり、このまま政策に移されるのは危険。ヒトの胚を人工的に作り出し、加工し、利用していくことを前提としているがそれでいいのか。広く国民に問うという重要な作業がされていない。   DNA問題研究会   
  ヒト胚を研究利用することについて、認識不足、問題点があるとかんがえるため、それらが解決されるかもしくは解決のための体制や規制等を整える努力がなされないままでは、案の一切に賛成できないと考える。   フィンレージの会(有志)   
  報告書案は研究と生殖医療双方において、人間の胚の扱いに大きな差をもたらすことになり、生殖補助医療に対する規制の検討を他の検討に委ね先送りしている。このままでは、人間の尊厳が侵される危険がある。   研究者(生命倫理)、弁護士  連名     
        
(ガイドラインとの関係)  本報告書とは別にガイドラインを作るのかが不明瞭  業界団体  第3章、第4章については、本報告書に示された基本的考え方をもとに、ガイドラインが作られる予定です。「おわりに」において明示しました。  
  生殖補助医療における日本産科婦人科学会基準と生殖細胞遺伝子治療に関する厚生省ガイドラインと今回のものと、三つ別々の基準が存在することになり、大きな混乱を招く。   DNA問題研究会  研究棟の目的に応じて必要なガイドラインが整備されたものです。 
(報告書の検討範囲)  人の生殖細胞が研究資源や産業資源にされること、人が生殖細胞の生産機械にされ、それによる技術や生産物の消費者にされることも、また病院の産科婦人科の診療室が生殖細胞調達の場にされることは受け入れられない。これまでの審議の結果を白紙に戻し、生殖医療を含めて、人の生殖細胞の取り扱いをどうするか、一般市民を交えて一から検討し直すことを要求する。   社会団体等アピール  ご指摘のようなことがないよう、ES細胞等に関して厳格な枠組みを提示しました。運用の際にも細心の注意を払って行くべきものと考えています。  
  中間報告をいったん白紙に戻し、ヒト胚利用に関する審議をやり直すべき。  DNA問題研究会   
  不妊治療、受精卵の着床前遺伝子診断を含め人の生殖細胞の使用について、全般的な検討を十分に行うことが必要。このまま指針がまとめられれば、研究や産業・商業的効果を追い求めて、生命倫理問題を置き去りにしたとのそしりをまぬがれない。   優生思想を問うネットワーク  報告書の検討においては、ES細胞を樹立する際に、受精卵を提供していただくときのインフォームドコンセントや患者の心情への配慮などがどうあるべきかという観点から守られるべき点を検討しました。実際に提供の同意を求める際には、不妊治療の現場においても最大限の配慮が行われて行くべきであると考えます。  
  余剰胚が関わるのだから、不妊治療の現状を分析し、患者の人権から問題点を整理した上で、医療の改善点を提言することを追加するべき。   大学教官 
  排卵誘発剤の副作用や採卵への苦痛にたえ、体外受精している受精卵提供者への配慮が全く感じられない。受精卵提供者を守るべき具体的なものは、なにもなかった。(プライバシーの保護はあたりまえ。提供者への配慮は、もっと別なところにある)   主婦 
  もっと、不妊治療の現場を見てもらいたいと共に、医療機関によって受精卵の扱いが異なるのではなく、基本となる規則が必要ではないか。これが整って初めて、受精卵提供の話が出来る   主婦 
  不妊治療を受けている人の意見も、産科医の意見も一度も聞かずに中間報告をまとめており、まず、それをやるべき。   DNA問題研究会 
  不妊治療の夫婦の負担など不妊治療の現状について考えた上で、おいしい部分だけ横取りするのではなく、不妊治療の環境を整えてから余剰胚の研究利用について議論すべき。   主婦 
  今後検討すべき課題としてあげられているものでも、報告書にとり入れて堀りさげたものにする必要がある。   大学教官 
  過去の研究も含めて、この機会にわが国における生殖医療を抜本的に見直すべきではないかと思われる。  仏教思想学会 
  最近、骨髄や臍帯血中、あるいは末梢血にさえにoval cellの幹細胞がある可能性が報告されている。例えば、ヒト骨髄中の幹細胞から、完全な胚とは言えないまでも、特定の組織や臓器形成を誘導することが可能になりつつある。これらの幹細胞を使う研究の一部に関しても、ES細胞樹立の段階の倫理上の諸問題に照らしあわせ、同様な問題があるように思われる。(慶応大学ではマウスの骨髄細胞から心筋細胞を作らせることに成功している)   そこで、ES細胞に限らない、万能性の幹細胞研究すべてに一般化された、規制や手続きを検討する必要が有るのではないか。  製薬企業社員  今回は、ヒト胚を扱うという倫理的問題のあるヒト胚性幹細胞を検討対象としました。今後技術の発展に従って必要な検討が行われて行くべきものと考えます。  
  ヒト胚研究の周辺領域も含めて、全体的な規制枠組みをもっと明確にすべき  大学教官 
  ES細胞の樹立及び研究は、ヒトクローン研究とは全く独立に進められる新技術であるから、報告書は別にまとめた方がいい。   日本細胞生物学会(会員意見)  ヒト胚研究に関連する研究として、同時に検討を進めたクローン胚等を扱う研究についても報告書にまとめました。  
  講座制の弊害を除くため、研究者の権利・義務を明確にすべき  大学教官  報告書中でも、研究を行うに際しての研究者の権利義務や研究機関、国の果たすべき役割については随所で触れていますが、より明確化を図りました。  
  「薬害エイズ」を教訓に、研究者、医師、企業、官庁の役割を明確にすべき  大学教官 
  人の生命、或いはそれらの尊厳さらには、死の定義がどうあるべきかという根本的な課題に踏み込んだ検討を行うべき。   日本民族学会  今回は、ヒト胚を扱う研究についての具体的な検討を行いました。 
  霊長類のES細胞の取扱いについてふれる必要がある。  日本繁殖生物学会  報告書においては、ヒト胚等を扱う研究の倫理的問題点について検討しました。研究の実施に当たっては、動物愛護、自然保持などの観点にも十分考慮がはかられるべきものと考えます。本文中(第4章(3))にも記述を追加しました  
  ESの樹立のために「他のほ乳動物」の細胞を用いた実験を踏み台とすることについて、その是非は問われなかったのであろうか。クローンやESなどの問題ともなれば、ヒトに限定せず、広く生命の尊厳について問い直す必要がある。3(2)になるキメラ胚・ハイブリッド胚の研究の現況にてらしても、その議論は避けて通れないように思われる。   仏教思想学会 
  ヒト胚だけについて配慮すればよいのであろうか。人間だけでいいのかを含めて、チンパンジーなど、高等な霊長類も含めたヒト以外の生物についても議論してほしい。   日本組織培養学会(倫理問題検討会委員長見解) 
  「人間の尊厳」についてはかなり慎重に対応していると思うが、キメラ胚やハイブリッド胚に関連して人間以外の生物の生存権、現存の自然の生態系への保持という事態への配慮をさらに強調すべき。   大学教官(哲学) 
(意見募集について)  意見募集の期間が短い。  日本民族学会  今後ヒト胚研究全体の議論を行っていく際にも意見の汲み上げに努めるとともに、ガイドラインの策定などに当たっても意見公募を行っていきたいと考えます。  
  一般的な社会的論議をする機会を積極的に何度でも作られることが必要。1月足らずの意見募集期間では、市民が問題を考慮し、意見をまとめて提出できる時間がない。時間をかけても十分な理解を求める努力をすべき。   優生思想を問うネットワーク 
  更に慎重な検討をすべき。特に、実際の運用方法や、それに違反した場合などの対処の問題については十分に配慮し、国民のコンセンサスを得る場合、早急に結果を求めるよりは、十分な議論や時間を費やすべき。   日本動物学会 
  中間報告のとりまとめは、ヒト胚全体の議論がきちんとできるまで棚上げするのか、今回だけこのまま強行するということなのか、明確にしてほしい   フリーライター 
  意見募集告知が充分でない。意見募集期間をもっと長くすべき  ノンフィクションライター 
  パブリック・コメントの〆切が早すぎる  大学教官 
  ヒト胚研究小委員会のメンバーに農学系の研究者が全く含まれていないことに疑問を感じる。  日本繁殖生物学会  主にヒト細胞を扱う研究であり生物系の委員に多数参加していただいています。 
(本文中の語句、表現)  「インフォームドコンセント」は、一般的に「インフォームド・コンセント」であり、全て見直すべき。  一般(大学教官)  ご指摘を踏まえて見直しました。 
  ヒト胚の生命としての尊厳に反することから、「余剰胚」という用語は「未着床の受精卵」等に表現を変えるべき   産婦人科医  不妊治療に使用されなかった胚であることから「余剰胚」という表現が必要であると考えました。  
  「等」の多用により、ふくみの部分が多く、きわめてわかりにくい内容になっている  大学教官  例示等でわかりやすく、また、網羅的な検討にするためこのような表現になりました。 
(国の関与)  米国の会社に将来多額の費用を払うことなく国家プロジェクトとして「日本の胚再生工学プロジェクトをたちあげ、最少限のヒトESや他のヒト胚由来幹細胞株を積極的に作成、保有してくべきではないか。国家的取り組みにより、余剰胚の研究者による乱用を防ぐことができ、患者の負担が減る。   研究者  本報告書においては、倫理的な観点からの問題を検討しました。国の研究推進政策はまた別の観点で検討されるべきものと考えます。  
(その他)  ヒト胚研究小委員会のそれぞれの委員の造詣が深い分野、専門領域等が明示れるべき。  日本民族学会  名簿に明示したいと思います。 
  委員会の委員氏名、所属、議事そのものも公開されているが報告が実質的なものとなるためには、それぞれの専門分野も明示される必要がある。   日本医学哲学・倫理学会(国内学術交流部門担当理事) 
  法制面での整備など今後のスケジュールを示してあるほうがわかりやすい。 帯刀益男  東北大学加齢医科学研究所   一般(大学教官)  ガイドラインを作成することなどを明示しました。 
表題      
  基本的考え方からさらに具体的な審査手続きまで踏み込んでおり、タイトル等を修正したほうがよい。  日本細胞生物学会(会員意見)  本報告書は、基本的考え方を示したものであり、報告書に基づいて指針が作成されることから、この表題としています。  
はじめに      
  本案を議論された背景にはどのようなものがあるか、研究開発の自由と臨床応用面における規範を設けるべきなどの趣旨を含めた生命科学に対する基本的な考え方を掲げるべき。   大学教官(医)  「はじめに」にご指摘の趣旨を盛り込みました。 
第1章  ヒト胚研究をめくる動向       
2.ヒト胚性幹細胞の樹立       
(1)胚性幹細胞の樹立       
  ES細胞とEG細胞をまとめて胚性幹細胞と呼ぶのはやめた方がいい。  日本細胞生物学会(会員意見)  本報告書では、ES細胞、EG細胞をまとめて扱う必要のあるときに広義の「胚性幹細胞」と呼んでいます。ご指摘の趣旨を踏まえて、区別されるのが通常である旨を加えました。  
  ES細胞については胚性幹細胞でいいが、EG細胞については、現在正式な日本語の学術用語はない。個人的には「生殖幹細胞」と呼んでES細胞と区別している。   日本胚移植研究会(一任)
日本畜産学会(一任) 
  ESとEGを総称して胚性幹細胞というのは混乱を招く。性質に共通点はあるが、由来が大きく異なっている。EGには、例えば「胚性生殖細胞」等を用いてはどうか。   日本繁殖生物学会 
  ES樹立にあたって、ヒト胚を異種動物由来のフィーダー細胞との共培養が必要であること、免疫手術法など事前の操作がヒト胚に加えられる場合があることなど予め周知するなど、ES細胞の樹立方法について説明する必要がある。   日本繁殖生物学会  ES細胞の樹立のところは、一般の方にもわかりやすいようになるべく簡潔な記述としました。 
(3)ヒト胚性幹細胞の応用について       
  子供が爪がなく生まれてきている。同様に困っている人はたくさんいると思うので、ヒト胚性幹細胞から爪を作る研究を進めてほしい。   主婦   
  交通事故で左足を大腿から失ったが、医療技術に進歩を実感し、今回の報告書案を読んで、胚性幹細胞の研究が進み、再生医学の進展がはかられるならば、いつの日か自分の左足を取り戻せる日も来るのかもしれないと感慨深いものがある。科学技術は人の幸せのためにあると信じており、胚性幹細胞研究、再生医学の推進を願う。   会社員   
  国民が真に必要としている移植医療・難病治療・再生医療等の研究・開発に関して一日も早い実用化が望まれる。   家事手伝い   
  今後の医療のために、特に生命誕生の基礎研究や不妊治療に役立てるのではなく、「医薬品の効果の判定や毒性試験試験等への応用」については、あなたの余剰胚は廃棄されるのだから毒物や効果のわからない新薬の実験に使うと言われているようで反対。   主婦  医薬品の効果の判定や毒性試験試験等への応用によって、効果のない薬がむやみに服用されるようなことが避けられたり、薬の副作用で苦しむ人々をこれ以上増やさないことに寄与する可能性を持っており、病気や障害を抱えている人々の立場に立てば直ちに否定されるべきではないと考えます。また、研究計画の倫理的・科学的妥当性は、その有用性との比較考量の上で個々のケースで慎重な審査がなさます。  
  ESが医薬品の効果判定、毒性試験などへの応用も考えられる、とあるが、特にこうした方向への利用については社会的コンセンサスを得ることは至難かと思われる。   仏教思想学会 
  医療人類学的観点を導入し、医療上のデメリットについても触れるべき。  日本民族学会  ES細胞の応用のデメリットな面についても記述しました。 
  欧米に比べ、日本の議論は浅い。生命操作(人為的介入)に関する、ヒト胚性幹細胞を中心としたヒト胚研究のあらゆる可能性を具体的に提示すべき。   大学教官(医) 
  ヒトES細胞の有用性が強調されすぎていると思う。1)ES細胞の分化要因は動物で未だ確定されていない、2)動物やヒトの体内に(胚内ではなく)ES細胞またはES細胞から分化した細胞を移植したとして、どこに何ができるか確実に予測することは出来ない、3)出来た組織様細胞は増殖を止めていない(腫瘍としての性質をもっている)ことなどがある。   大学教官(理) 
  応用例で臓器移植のことに触れられているが、もう一つの重要な側面である遺伝子治療に関する記述が曖昧になっているような印象を受ける。   日本胚移植研究会(一任)
日本畜産学会(一任) 
  「動物個体の中にヒトの臓器と同じものを作成する方法が有望」とあるが、生きたまま動物の臓器をと取り出すということが許されるのか。人はそんなにも傲慢でいいのか。   主婦  報告書においては、ヒト胚等を扱う研究の倫理的問題点について検討しました。研究の実施に当たっては、動物愛護などの観点にも十分考慮がはかられるべきものと考えます。  
3.クローン胚等の研究       
  ミトコンドリア異常症を克服する手段として核移植技術を幾分肯定的に見ているが、この立場は危険である。ほとんど分かっていない研究領域であり、核とミトコンドリアとの相互関係を考慮すると、外来のミトコンドリアが導入されたときどんな事態が起こるか現状では想定できない。   日本胚移植研究会(一任)
日本畜産学会(一任) 
ミトコンドリアと核の相互作用に不明な点が多いことについての記述を追加しました。 
第2章  ヒト胚の研究利用についての基本的考え方       
1  基本認識       
  どこまで許されるかどうかが恣意的でないためには、どういう原則に基づいて検討するのかという判定基準が欠かせないことから、「どこまで研究利用することが許されるかについて、」の後に「明確ないくつかの原則の下に」を挿入。   マスコミ(新聞論説委員)  「3.ヒト胚の研究利用に関する基本的考え方」において、「3生命の萌芽たるヒト胚を用いる科学的な必要性と妥当性が認められること」以下で原則として提示しております。  
  基本認識の文章の意味が不明確なところがあり、丹念に説明されるべき。  日本民族学会  なるべく包括的な記述を行いました。わかりやすくするため修文を加えました。 
  難病の治療や移植・再生医療に今後重要な方法となるため、(ヒト胚)研究の可能性を残しておくことが必要であるが、生命の尊厳に触れる問題もあることから、特に、個人のプライバシーを守ること、人間と動物の細胞の融合を強く禁止する、研究成果の公開と奇形発生や副作用等の結果を完全公開させる、大学の倫理委員会で検討・審査し、国又は中央的な機関で審査する、等を行うべき。   大学教官(医)  ES細胞研究については、ご指摘の点を考慮した枠組みを提案しています。ヒト胚研究全般については、ここに示された考え方を踏まえて今後検討を行っていきます。  
  「人の尊厳に抵触しかねない」という危惧の内容等にふれられておらず問題の焦点は判然としない。  医学的利益のみを強調すれば不安を増大させる。研究がもたらす肯定的・否定的側面をわかりやすく描写した上、両者の比較考量後に選択すべき。   大学教官  ご指摘の部分に記述を追加しました。 
  これまで「生殖補助技術の研究に限って」ヒト胚が用いられていたとしても、同意はとられておらず、不満があっても医師に質問もできない状況であり、この現状を改善する方策がとられずにES細胞のためにインフォームド・チョイスがされると思えない。「議論を深める」とあるが、現状把握や当事者の心情理解について努力が払われていないように思われる。   フィンレージの会(有志)  報告書の検討においては、ヒト胚研究に際してまもられていくべき基本的考え方を示しています。この点は、実際に提供の同意を求める際に、不妊治療の現場においても最大限の配慮が行われて行くべきであると考えます。  
2.ヒト胚の位置付け       
  全体的によくまとめられているが、ヒトの受精卵は唯一の個性としての全く新しい人格を持った一人のヒトの出発点でもあり、受精卵の外界に対する感性、意思や意識を持ち始めるのかなどについて、基本的な考え方を再度慎重に整理しておく必要がある。   日本学際会議  本報告書においては、ヒト胚はヒトの生命の萌芽としての意味を持ち、ヒトの他の細胞とは異なり、倫理的に尊重されるべきものであり、慎重に取り扱わなければならないものとしています。委員会において議論の行われたヒト胚の位置付け、研究の許容性についての検討に関する記述を加えました。今後のヒト胚研究に関する検討の中でも、十分な議論が行われて行くべきものと考えます。  
  ヒト胚の取り扱いの規制の根拠として、「ヒトの生命の萌芽としての意味を持ち」と記述しているが、この記述では、社会一般の心配を明確に指摘しているとはいえない。研究の結果起こり得る利益ならびに倫理面でのリスクを、現在予想できる限り徹底的に分析し、思想と研究の自由ならびに人類の利益と、一方で人類の存続を脅かすにいたる危機との境界を明快かつ具体的に指摘することが必要。   日本組織培養学会(倫理問題検討会委員長見解) 
  ヒト胚研究についての予想される結果とリスクを明示した「客観的目的」の合意と「自己目的的存在」であるヒト胚を犠牲にするもの足りうるかという観点から検討を行い、「ヒト胚の身分について真剣な議論を行ってから「本研究の社会的な意義」を議論するべき。   一般(大学教官) 
  ヒト胚は生命活動を行っている立派な生命体。萌芽という表現は胚が生命そのものではないような印象を与え、欺瞞的。発生段階に応じて人間の生命の特徴を明らかにし、生命にたいする対処の仕方を変えていくという考え方を採るべき。最近発覚したヒトがヒトを動物のように飼っていた事件が社会に与えた不安感とクローン人間を単純に分身と考え道具として利用することを想像した際の不安には通ずるところがあるように思う。   大学教官(理) 
  「生命体」そのものと「生命の可能性」とに区別はなく、ヒト胚は受精の瞬間から生命として扱われるべきであると考える。従って、受精後5〜9日目の胚から作られる胚性幹細胞自体も、立派な「生命体」。どこから生命として扱われるべきかをあいまいにしたまま、有用とみられる研究なら認めるという立場は、科学的のみならず哲学的、思想的根拠を欠除している。我々が常識をもって、合理的に考えた上で、納得でき、理解できる理由づけと説明づけに満ちた見解を示す必要がある。   大学教官(哲学)  本報告書においては、ヒト胚はヒトの生命の萌芽としての意味を持ち、ヒトの他の細胞とは異なり、倫理的に尊重されるべきものであり、慎重に取り扱わなければならないものとしています。委員会において議論の行われたヒト胚の位置付け、研究の許容性についての検討に関する記述を加えました。今後のヒト胚研究に関する検討の中でも、十分な議論が行われて行くべきものと考えます。  
  ヒト胚は生命の始まりであり、ヒト胚を扱う研究は原則禁止とすべきであるが、人類にもたらす多くの恩恵があることを考えれば、目的を限定した範囲の中でのみ許されるべき。今後慎重に検討すべき。   市民病院長 
  人間の胚を生命の萌芽として尊重するという報告書の考え方は十分とはいえない。国家は人間の胚を尊重するのみならず、保護する義務さらに人間の胚の尊重保護を通じて人間の尊厳を充足・促進する義務がある。   研究者(生命倫理)、弁護士  連名 
  ヒト胚は、受精のはじめから、ヒトの生命の萌芽であるという基本認識を示したことに敬意を表する。基本にこの考え方があれば、研究者の態度もおのずと慎重に、丁重な取り扱いになることが期待できる。   主婦 
  ヒト胚の研究の可否について、まず慎重に議論を行うことが肝要と思われる。日本産婦人科学会の会告にもとづいて一部研究がすでに実施されてきたことの是非も含めて充分な議論を行ってから、今後の進むべき道を探るべき。   仏教思想学会 
  諸外国の現況をみると、わが国でもヒト胚を扱う研究は「原則禁止」とするのが現状では穏当であろう。  仏教思想学会 
  ヒト胚を人の生命の萌芽として慎重に扱わなければならないという姿勢には同意する。  大学教官 
  ドイツと同じように、受精をもって生命として扱われ、保護されるべき対象として法律化すべきだと考えます。日本の場合は不妊治療のためにおこなった体外受精で廃棄される胚が存在するという既成の事実を利用しており、研究者が生命に対する認識を確認する作業をしなくても研究できる状況を作り出していると考える。   大学教官(理) 
3  ヒト胚研究利用に関する基本的考え方       
  列記した8項目を遵守することがなぜ必要なのかの根拠をはっきりさせるため、「その際、」の次に、以下の一文を追加。「研究者はヒト胚研究の倫理的、社会的な影響を考慮し、厳格さ、誠実さをもって研究を行う責任を負う。その責任を果たすため、」。   マスコミ(新聞論説委員)  ご指摘の記述を追加しました。 
  ヒト胚は生命の萌芽であり、慎重に取り扱われなければならないが、研究者が実績主義に基づいて、遵守事項を無視することとなりかねない。ヒト胚研究の医療上の有用性が真に意義あるものと思われない。よって、ヒト胚の研究利用については、それが如何に生命科学の発達に寄与する可能性を持っていようとも禁止するべき。   産婦人科医  ヒト胚を人の生命の萌芽としてとらえ、研究利用に倫理的な面から極めて慎重に行う必要がある一方、医療や科学技術の進展に極めて重要な成果を産み出すことが想定されることからヒト胚研究は厳格な枠組みのもと認められるものと考えました。その妥当性は研究者の判断のみによらない枠組みとしています。  
  「ヒト胚はヒトの生命の萌芽としての意味をもち、ヒトの他の細胞とは異なり、倫理的に尊重されるべきものであり、慎重に取り扱われなければならないと考えられる」との認識には、全面的に賛同するが、許容され得るか否かをまず慎重に検討すべき。   仏教思想学会 
  移植用の臓器が不足しているからといって、延命のために、生命の萌芽であるヒト胚を使うことは、一番近道であるとしてもそれを知ってそうすべきではない。移植用材料の生産のためにヒト胚を研究することは非常に危険。   主婦 
  ES細胞を利用して体細胞性幹細胞を作ることと個体を作ることが明確に区別できかという疑問がある。移植医療は体細胞性幹細胞でかなりの部分をカバーできることから、ヒト胚性幹細胞の基礎研究及び応用(第1章、2−3)を禁止し、それに変わって体細胞性幹細胞の利用を推進することを求める。   大学教官(生物) 
  ヒト胚を必要としている科学者、その成果を心待ちにする医療関係者がいれば、余剰な胚が出来るよう、手配をするのではないか。具体的な遵守事項に、かなり無理がある   大学教官(生物)  守られるべき原則を示したもので、実効性などについては、今後ヒト胚研究に関する検討が行われるなかで再度検討されていくものと考えます。  
1) 「研究材料として使用するため、新たに受精によりヒト胚を作成しないこと」については、不妊治療等の確実性向上の目的で、本番の前に試験管内で受精ならびに卵割に入る条件を検討することも考えられ、このような例外は認められてもよいのではないか。   (財)バイオインダストリー協会  原則として、研究材料として新たに生命の萌芽であるヒト胚を作り出し、研究利用することは行われるべきでないと考えました。ご指摘の研究についての詳細は、ヒト胚研究についての今後の議論の中で検討していきたいと考えます。  
  規律を遵守させる仕組みが不十分との判断の下、現在の我が国の状況ではかなり詳細に渡った規制項目を立てざるを得ないが、将来的にはもっとも原則的な規範で足りるような方向に行くことが必須である。総括的な規制により、人類の未来に大きく貢献する研究の実現が阻害される場合がある。新たに受精によりヒト胚を作成することは、不妊治療等のための研究においては、極めて現実的な研究課題であり得る。   日本組織培養学会(倫理問題検討会委員長見解) 
  ヒト胚を研究に用いることに対する議論を深めてほしい。また、研究材料となる卵/胚細胞が存在することが前提となっているが、ヒト胚提供者について述べられた部分が具体性を欠き、配慮が認められない。また、研究上、不妊治療の余剰胚に限定された数では不足で、人為的に余剰胚がつくられる可能性があり、その防止実施の措置は不可能に近い。   大学教官 
2) インフォームド・チョイスはドナーにとっても、医者側にとっても、酷である。ヒト胚の有用性を認識している者によるボランティア(体外受精を受ける人を含め)を募集する方が自然な流れである   大学教官  原則として、研究材料として新たに生命の萌芽であるヒト胚を作り出し、研究利用することは行われるべきでないと考えました。  
  ほとんどの人が受精卵を凍結保存する際、その保存期間を知らされていないし、保存期間が過ぎたときにどのように扱われるかの了承を求められたことがない。また廃棄される際に連絡している施設は数少ないよう。実験に用いることを説明されて了解したという話は聞いたことがない。このような状況で、この手続きが実施される保障はない。   フィンレージの会(有志)  報告書の検討においては、ヒト胚研究に際して守られていくべき基本的考え方を示しています。この点は、実際に提供の同意を求める際に、不妊治療の現場においても最大限の配慮が行われて行くべきであると考えます。  
5) 不妊治療で受精卵が得られるまでには時に命の危険もある処置を経て、多大な時間と年間100万円を超えるような費用を費やすなど大きな負担がある。それを考慮せず、無償で提供せよ、というのは納得できない。有償にすれば卵子の商品化も懸念する。  なぜ「ヒト胚」が体外の凍結保存容器の中にあるのかという背景とそこに至るまでの負担を研究者に知ってほしい。「無償」で「匿名」の実験材料が、形式ばかりの同意書さえあれば簡単に入手できると思われてはこまる。   フィンレージの会(有志) 
6) 個人情報の保護という名目で医学の密室性が保持されることに危惧を抱く。臨床の場では医師と患者は対等ではなく、「余剰胚」をつくるために強い排卵誘発をしないよう誰が監視するのか。   フィンレージの会(有志) 
7) 研究の妥当性を審査する権威を持った第三者機関を恒久的に設置し、研究の許認可、禁止、罰則に関する権限ともに、基本原則を継続的に再検討する任務を与えるべき。   日本民族学会  規制の体制についての詳細は、ヒト胚研究についての今後の議論の中で検討していきたいと考えます。 
8) 産婦人科学会で凍結保存受精卵の登録報告制をとっているが、その保存、移植、廃棄数や実験に使用された数など公表されていない。報告していない施設も1割近くあり、いくら厳密な規制を設けるとされても信頼できない現実がある。またES細胞樹立のためのヒト胚研究のみを規制しようとするのは不可能だと思う。   フィンレージの会(有志)  報告書の検討においては、ヒト胚研究に際して守られていくべき基本的考え方を示しています。この点は、実際に提供の同意を求める際に、不妊治療の現場においても最大限の配慮が行われて行くべきであると考えます。  
  「ここに示した考え方は、・・従来のヒト胚研究においても遵守されるべき。」との見解は評価できる。第6章にあるように、ヒト胚研究全般に対する指針案の作成を早急に検討すべき。   大学教官(法)  ヒト胚研究全般に関する検討を今後行っていく必要がある旨を指摘しています。 
  動物実験で十分なものについてはヒト胚の段階に研究を持っていくのではなく、動物培養細胞でさらに研究するなど、他の、危険の少ない研究に持っていくのがよいのではないか、と考える。   心理学研究者  動物実験の段階が終了したものでも「3)生命の萌芽たるヒト胚を用いる科学的な必要性と妥当性が認められる」必要があると考えています。  
第3章 ヒト胚性幹細胞について      
1.基本的考え方      
  ヒト胚をES細胞の樹立、実験材料に使用することについて倫理的な検討もないまま、容認している。ES細胞はクローン技術と組み合わせれば遺伝子操作が可能であり、人の遺伝子操作につながる研究を用意に認めるべきではない。   優生思想を問うネットワーク  ご指摘のようなことにならないよう、ES細胞からの個体産生を禁止し、厳格な枠組みのもとに研究を行うこととしています。  
  子細な検討と細かい規制を付けてゴーサインを出した苦渋の決定だと思うが、日本が世界で一番乗りで国の予算を使ってヒト胚を壊す研究を認めることとなる事は日本国民の一人として衝撃的なこと。ドイツ、フランスと協力して、アメリカの横暴に歯止めを掛けることはできないか。   主婦  アメリカ、フランス、イギリスも、ES細胞研究を重視し、日本と同様の諮問委員会レベルでは、ES細胞を樹立することを認める報告が出されています。  
  EG細胞の樹立を許可しないこととしている理由を示す妥当性が不明確。  大学教官(医)  死亡胎児の組織を用いたEG細胞の樹立に関しては、人工妊娠中絶の意思決定とEG細胞樹立のための死亡胎児組織の提供の意思決定との関係や、我が国で行われている中絶方法など死亡胎児組織の利用に独自の倫理的・技術的問題に対する考慮が必要であることを本文中で指摘しています。  
  成人の臓器提供は賛同してるが、意思確認のできない胚を用いることは抵抗感があり反対。なんらかのトラブルにより「生を受けなかった」、「生まれてきたが生き続けられなかった」細胞、臓器の利用(例:EG細胞など)はその倫理的な面を除けば病に苦しむ人々を助ける手段としては許されうる範囲のように思う。EGとESには大きな隔たりがあるように思う。   一般 
  ES細胞の研究は、具体的な実用化とどのように結びつくかが全くわからない状況であり、この段階では樹立管理条件に関するガイドラインで十分だが、許容限界が問われる。ES細胞の樹立という限界を逸脱して人個体の産生が可能であるような方向での違反に対しては、罰則を検討するべき。   日本哲学会(委員長取りまとめ)  ES細胞を扱う研究において、厳格な規制の枠組みを提示したが、規制の形態については、研究の自由、研究分野の新規制、実効性などを総合的に判断し、ガイドラインによる規制を行うこととしました。ES細胞使用研究において、核移植による個体産生やキメラ個体、ハイブリッド個体を産生すること及び産生につながるような胚の取り扱いは、法律の枠組みで規制されることになります。(第4章)  
  高度医療技術においては、研究者自身が責任を持つ自主的・自立的制御こそが肝要であり、とかく画一的になりがちな方による規制ではなく、樹立機関はもとよりヒト胚提供の医療機関にも、自主的・自立的制御を求め、その下で研究を進めるものであり、妥当   日本医師会 
  「罰則を伴った法律による規制が不可欠でない」という見解は、厳しく見直すべき。さもなければ遵守事項の実効性が保証されない。   日本民族学会 
  例えば、脳死判定のガイドラインも完全には守られていない。全てを違反しても、対応がとれないことから、ガイドラインに違反した場合に罰則をつけるべき   一般 
  ヒトES細胞利用ガイドラインに反した研究がなされた場合に刑法上殺人罪等の適用を含めた法的規制も作成すべきで、3年未満の懲役又は百万円以上の罰金刑等も考慮すべき。同時に民事上の手続きなどをも作成しておくべき(例えば、個人情報を犯された場合等)   一般 
  不妊治療を行っているものにとっては受精卵は大切な命の始まりで、精神的また肉体的苦痛と忍耐の末にできた大切な子供である。ヒト胚は生命の萌芽として保護されるべきであり、多様化してしまう倫理に関係している研究は法律による規制は必須条件である。   一般(主婦) 
  ES細胞によるヒト個体の産生につながる方法を明記し、ヒトクローン個体の作成を罰則をもった法律で禁止するのであれば、ES細胞を用いた人個体の作成および遺伝子操作を施したES細胞を用いた人個体の作成も同じく罰則を伴った法律で禁止すべき。   DNA問題研究会 
  「研究者の主体性や倫理観」を尊重した規制よりも、逸脱に対する適切で厳重な歯止めがかかっていることを示すべき。研究の思想史的分析がなされておらず法的整備を示すだけでは説明責任は果たせない。   大学教官(同志社) 
  胚性幹細胞の性質である不死性性・全能性といった事態は普通には存在しない。特に将来への影響に関して、一層慎重な対処とより突っ込んだ検討が必要だと思う。   大学教官(哲学)  胚性幹細胞の性質を考慮し、胚性幹細胞からの個体産生を禁止し、厳格な枠組みのもとに研究を行うこととしています。  
  体細胞も核移植すれば個体になる可能性があるため発生能力の点でESと大差はなく違いはその起源。ヒト体細胞を核移植することなく、初期化を誘導するための実験を行うことは規制外かどうかという点にもふれる必要はないか。   日本繁殖生物学会  今回は、ヒト胚を扱うという倫理的問題のあるヒト胚性幹細胞を検討対象としました。今後技術の発展に従って必要な検討が行われて行くべきものと考えます。  
  ヒトES細胞を作ることは、人の受精卵の無断複製とほとんど同義であり、これは、受精卵の唯一性を崩壊させるもの   DNA問題研究会  ES細胞は、そのままでは個体にならないというで胚とは異なる性質を有しています。本文にもその旨の記述を追加しました。  
  一組織、一臓器の域を超えない範囲で進めるべきで、本学においてもその申請がなされれば、倫理委員会の議を経て、積極的に取り組みたいと考えている。   広島大学医学部倫理委員会   
  ES細胞の樹立にあたって、培養した胚から本来の目的以外の細胞株(例: 栄養芽細胞由来の幹細胞)などが分離される可能性がある。その取扱いについても規定する必要がある。   日本繁殖生物学会  樹立に当たって出てくる個別の事例については、研究計画の審査、状況報告の段階で個別に判断されていくものであると考えます。  
2.ヒトES細胞の樹立の要件       
(1)ヒトES細胞の樹立に用いることが可能なヒト胚の由来        
  不妊治療の余剰胚は、生殖医学の貢献のために研究利用されるべきで、移植医療の研究に使用されることには、不快感を覚える。   主婦  小委員会では、ヒトES細胞についてその恩恵とヒト胚を滅失するとの問題点を考慮し、検討を行った結果、厳格な枠組みの下であれば樹立を認める事ができると考えました。その際にも提供者の意思の尊重を重視した枠組みであるべきとしています。  
  余剰胚の入手方法の公正な確認が可能か。法を守らぬ者が必ず出ることを予測してその対応策を立てておくことが必要。   大学教官(医)  報告書の検討においては、ヒト胚研究に際してまもられていくべき基本的考え方を示しています。この点は、実際に提供の同意を求める際に、不妊治療の現場においても最大限の配慮が行われて行くべきであると考えます。  
  「余剰卵」の使用の前に不妊治療の実態の検証が必要。特許や産業・商業利用が想定されているなかで、実験材料作りのために「適切なインフォームドコンセント」がなおざりになるのは明らか。   優生思想を問うネットワーク
  人クローン胚からのES細胞の樹立を当面禁止しているが、外国での研究に遅れないように何らかの対策があるのか。(再検討の時期、再検討の要件についての考え方。)   日本人類遺伝学会  ヒトクローン胚からのES細胞の樹立は、人クローン個体の産生につながりかねないことから禁止することにしています。ただし、医療への応用の可能性が高いことから、研究の進捗状況に応じて見直すこととしています。  
  ヒトクローン胚からのES細胞の樹立に関する記述が曖昧な表現であり、いずれ、ヒトクローン胚の作成を認める可能性が含まれているような印象を受ける   主婦 
  特定の個人の核を除核ES細胞に移植するような研究は許されるのか。  日本人類遺伝学会  研究計画の個別審査の際に判断されるべきものと考えます。 
(2)ヒトES細胞の樹立にヒト胚を使用する際の留意点        
1) ヒト胚の使用がなぜ14日以内なのか、その根拠が一切示されていない  日本民族学会  国際的にも3胚葉への分化が始まる14日間まで研究を認めるという考え方がとられていることから、歯止めとして採用したものです。  
1) EG細胞や神経幹細胞株の樹立を考えた場合、受精後5〜10週後までの堕胎胚が利用できないと、これらは不可能である。ヒト胚の研究利用について、ヒト胚は受精後14日以内のヒト胚を使用することが原則となっているが、研究の動向に応じた規制の変更は可能か。   研究者(医)  本報告書の「ヒト胚」は着床前の体外にある胚を指しています。 
6) 胚や胎児は母胎に従属すべきものではなく行為の主体性は、胚や受精卵や卵にあってドナーでないことを再認識すべきであることから、6)は「決定権は胚にあるが、それを行使する能力が未熟で不備であるため、胚に変わってドナーがインフォームドコンセントを行うこととする。」のように言うべき。   産婦人科医  本報告書においては、ヒト胚はヒトの生命の萌芽であり、意思決定権を持つ主体であるとまではいえないものと考えています。また、胚に対するすべての決定権を夫婦が有するとせず、さらに第3者による厳格な審査を課しているところ。夫婦によるインフォームド・コンセントはあくまで実際的な必要条件のひとつとして6)にあげられています。  
  ヒト胚からES細胞を樹立するまでの多様な派生的な研究の禁止事項を吟味するべき。  大学教官  樹立計画の個別審査の際に判断されるべきものと考えます。 
(5)樹立機関の満たすべき要件  プライバシーの保護については、情報はどのようにして、保存されるのか。個人名を暗号化して保存するのか、それとも個体情報は全て消滅するのか。   日本哲学会(委員長取りまとめ)  提供されたヒト胚とその提供者を結びつける情報は、樹立機関に移る際にすべて消され、何人もヒト胚およびそこから樹立されたES細胞から提供者には遡ることは不可能となります。署名を含む同意書は提供医療機関内において厳格に機密保管されます。  
  管理上の問題から樹立機関を数機関に限定することは、より有用なES細胞を樹立するうえでマイナス。また、定められた要件を満たした研究機関の中で、国の指導によりES樹立機関が決定されることは研究に対する不公平となりかねない。樹立機関の数については、樹立されるES細胞の状況により柔軟な対応を行うべき。   製薬会社  今回はヒト胚を研究利用するという倫理面を重視した措置であり、ヒトES細胞の研究を進めていくという観点に立っても、重要な要素であると考えました。  
  樹立機関の数を減らせば管理しやすいというのは厳格な管理システムを求めるこの報告書案の精神と反する。将来的に治療への応用で多数のES細胞の樹立が必要になることが考えらる。   (財)バイオインダストリー協会
  今後、たとえば遺伝病の治療に関する基礎的な研究についてのみ考えてみても、極めて多数のES細胞の樹立が意義あること評価される可能性もあり、管理の条件を明確にしかも厳しく提示することによって、小数の高度な倫理性と技術をもった樹立機関が選択されることは望ましいとしても、当初から数を限るというような些末に触れることは、かえって各機関の向上心を妨げ、将来の展開の妨げとなる可能性がある。   日本組織培養学会(倫理問題検討会委員長見解)   
  樹立機関としては公的機関を念頭においていると思われるが、製薬企業が取り組もうとした場合の考え方が明確でない。この領域では、大学の研究者と製薬企業が連携して研究を進める可能性が高いため、民間も視野に入れたまとめ方にした方がよい。   日本血液学会(数人意見取りまとめ)  民間企業においても定められた指針に沿っている限り、樹立機関となることを妨げるものではないと考えます。  
  管理段階での、資料の取り違え、資料の不当利用(例、クローン人間の作成)、資料の外部への不当流出などが充分に理性的に防止できる方策が検討されなければならない。   大学教官(法)  指針の運用の中で、厳格な管理体制が築かれていくとともに、ヒトクローン胚等については、個体の産生を法律で禁止するなど、さらに厳格な規制が行われるものです(第4章)。  
3.ヒト胚性幹細胞を使用する研究の要件       
  ES細胞の使用に比べてEG細胞の使用が厳格な理由が明確でない。  大学教官  EG細胞については、我が国において樹立を当面認めないこととしており、より厳密な個別審査がなされるべきものと考えます。  
  輸入されるEG細胞の取扱いについて「条件を考慮しつつ」など記述が曖昧。また「個別に審査する」実体がIRBなのか別の審査委員会をつくるのか不明であり手続きを明記すべき   日本繁殖生物学会  個別に審査するのはIRB及び国であり、個別のEGの出自や研究計画に照らし合わせ審査されます。別のIRBをつくる必要は示していません。  
  廃棄することを原則としているが、ES細胞そのものは不特定の長期にわたって使用される。どの時点で廃棄されるかを明示すべき。   日本哲学会(委員長取りまとめ)  本文の主旨は意思決定の独立性を重視したもの。胚そのものの「廃棄」の時点はES樹立時と考えます。 
  ヒト胚には深い尊敬の念を払うべきであり、ヒト胚性幹細胞の樹立を行う研究者は、研究の目的を明らかにするとともに、「その目的が、動物実験により相当程度達成の可能性があることをあらかじめ証明する」こと、「相当する実験を動物を用いて既に経験している者」を加えることが必要。   日本獣医学会  指摘の趣旨は、別添2  樹立機関の満たすべき要件の1.2)の中に盛り込まれていますが、更に明記しました。  
  ES細胞およびEG細胞の使用のみ認め、樹立については、もう少し社会的コンセンサスが得られてからにすることも一法。   一般(大学教官)  ES細胞については、我が国における樹立の枠組みを検討すべきと考えました。 
  ヒト胚性幹細胞の利用について、米国の樹立者から直接ESあるいはEG細胞を入手して、研究を行う場合の手続きを明確にしてほしい   研究者  EG細胞については、我が国において樹立を当面認めないこととしており、より厳密な個別審査がなされるべきものと考えます。  
  ヒト胚性幹細胞の利用に関しては、多くの製薬企業が関心を抱いており、製薬企業・民間の研究所で活発な研究が行われるようになることが予想されるが、企業の研究所が使用研究を行う場合の考え方が不明確である。企業の場合は公開性の問題が大きな問題となる。   日本血液学会(数人意見取りまとめ)  民間の研究所においても、公的機関と同様にここに示した考え方に基づいて研究が行われるべきものです。公開性の問題についても、ヒト胚性幹細胞を用いる倫理面と照らしあわせて考慮されるべきと考えられます。  
  ヒト胚性幹細胞の使用を希望する場合、樹立機関からそれを入手する手続きがスッキリしてしない。  日本血液学会(数人意見取りまとめ)  樹立機関の判断では分配しないという基本的考え方に基づき、樹立機関の分配計画の中で具体的に体制整備がなされるものと考えます。  
(3)禁止事項  「なお、2)から4のヒトES細胞の導入には、ヒトES細胞を分化させて得られた細胞、組織等の導入は含まない」この判断は時期尚早ではないか。専門的すぎて、一般の国民にその意味を理解してもらうのは難しいのではないか。また、第1章、3.(2)の記述と整合性がとれていないように思われる。   日本胚移植研究会(一任)
日本畜産学会(一任) 
ご指摘を踏まえ趣旨を明確にする修文を行いました。 
  個体産生のための研究などの禁止は当然。2)〜4について「ヒトES細胞を分化等させて得られた細胞、組織等の導入は含まない」とされるがこれも問題がないかどうか慎重に検討すべき。   仏教思想学会  厳格な個別審査において判断されていくものと考えます。 
  「2)〜4のヒトES細胞の導入の禁止、しかしヒトES細胞を分化させて得られる細胞、組織には該当せず個別審査となる」ことと、前ページの「ヒト個体へのヒトES細胞及びその分化した細胞、組織等の導入は認めない」こととは、内容的に一貫していないので修正すべき。現状では、分化させた場合であっても、ヒト胚性幹細胞由来の細胞を人個体(胎児含む)に導入する研究は認めるべきではない。着床前の動物胚にヒトES細胞由来の細胞を導入し、個体産生を行うことも現状では禁止すべき。   日本血液学会(数人意見取りまとめ)  臨床段階のものは現在行われるべきでないと言うことを明示していますが、絶対禁止事項ではなく当面運用において禁止されるべきものと考えました。  
  基本的に禁止するべき事項と当面研究開発を禁止するが将来状況によっては解禁される事項とを区別して記載すべき。着床前のヒト胚へのヒトES細胞の導入は、当面禁止すべき事項に入れるべき。   一般(大学教官)  現在のところヒト胚へのヒトES細胞の導入はヒト胚を用いるだけの有用性が想定されないため、全面的に禁止されるべきものとしました。  
  ヒトES細胞を導入した着床前の動物胚からの個体産生を禁じているが、出産まえに胎児を殺せばよいのか。着床前の動物胚へのES細胞の導入自体を禁止すべき。   大学教官(理)  着床前の動物胚の導入は当面行われるべきものではありませんが、将来的には、個別審査を経て行われる可能性があるものと考え、  
  「ヒトES細胞を導入した”着床前”の動物胚からの個体産生」とあるが初期着床胚は洗浄で取り出される、”着床前、ないしは着床周辺期”とする必要はないか。   日本繁殖生物学会  本報告書では胚を主に体外にあるものとして扱っているため、着床前という言葉を削除しました。 
(5)ヒトES細胞を使用した研究の成果の取り扱いについて        
  報告書では特許に言及されていないが、現実的に対応するにはこの点をつめる必要がある。その際、「今後検討すべき課題」「胚とは何か」について早急な検討が必要である   ノンフィクションライター  特許については、ESの樹立過程では、防衛的なもののみ、使用過程においては原則として認めが、商業的利益については個別に検討する方針です。  
  改変ES細胞の内容について本文で触れられていない。  日本胚移植研究会(一任)
日本畜産学会(一任) 
内容を示す表現に改めました。 
  改変ES細胞という意味を具体的に示してほしい  日本繁殖生物学会 
  改変ES細胞についての説明が不足  仏教思想学会 
別添1  ヒトES細胞樹立のためのヒト胚提供におけるインフォームドコンセントのあり方        
  現在の不妊治療の場でも、インフォームドコンセントを期待する事が出来ない状況にあり、ES細胞の卵提供の場で十分なインフォームドコンセントが成り立つとは思えない   主婦  ここではこれまで日本産婦人科学会の会告等で示されていたものより詳細なインフォームドコンセントに係る手続きを定めており、2重審査等によってその手続きは一層厳格に行われる。ここで明示された手続きがわが国におけるインフォームドコンセントの適切なあり方をより一層推進する一助となることを期待。  
  ES細胞の研究に必要な胚を得る時にもっとインフォームド・チョイスが行われるようにしてほしい  主婦 
  提供者から承諾を得る段階で、当該提供者の精神の正常性の検討、意思の自由等が保障される熟慮のために必要な充分な時間の確保、自由意思を妨げるような不当な説得の自粛などが充分に理性的に防止できる方策が検討されなければならない。   大学教官(法) 
  一般に医師への信頼は厚いが、医療研究者に対しては果たして全幅の信頼を持ち得るか否か、現況では心もとないようにも思われる。従来行われてきたヒト胚利用についてのインフォームド・コンセントが適切に取得されてきたかなど、充分な検証も必要。   仏教思想学会  ここでは、医療研究者の独自の判断でヒト胚を用いた研究が進められることのないよう厳格な審査体制などの手続きを示している。  
  社会的なコンセンサスが得られない限りは研究利用は行わない旨を、インフォームドコンセントの説明事項の中に明記すべき。   仏教思想学会  指針に適合し、かつ機関内審査委員会で妥当性が認められた医学的・科学的に有用な研究であることを説明する(別添1   3.2))。 
  ES細胞の譲渡、転用などの可能性はかなり高く、転用や譲渡についてもインフォームドコンセントを得るという方向付けも十分に考慮すべき。   日本哲学会(委員長取りまとめ)  譲渡、転用(申請承認された研究計画以外の研究への利用)は指針に従った手続きを経た場合のみ行われる。使用機関への譲渡が行われることはインフォームド・コンセントにあたって説明されます(別添1   3.1)7、参考 8))。さらに、別添1 3.7を修文して明示します。 
  大半の説明事項が、利用者の立場から書かれている  大学教官  説明事項については、ドナーの意思決定を重視した。ドナーが実際に読む説明文の具体的イメージについては(参考)「イフォームドコンセント説明文書・同意書イメージ」において、ドナーの心情に配慮しつつ記述した。  
  ICは医者側に有利な場合が多い。研究施設には実験・研究施行者以外のカウンセリング・システムを必須条件とすべき   産婦人科医  ヒト胚の提供は治療の一環で行われるものではなく、治療に関するインフォームドコンセントとは異なる要素を持つと考えられ、心理面のケアを行う「カンセリング」よりも研究内容等についてしっかり情報提供行うことが重視されると考える。また患者と担当医の関係が、ドナーの自由な意思決定に影響を与えないよう、説明の主体を担当医以外の研究説明者が行うなどの措置を盛り込んでいます。  
記述が非専門家には極めてわかりにくい。インフォームドコンセントの説明は十分にわかりやすい言葉でなされなければならない。   日本民族学会  説明事項については、ドナーの意思決定を重視した。ドナーが実際に読む説明文の具体的イメージについては(参考)「イフォームドコンセント説明文書・同意書イメージ」において、わかりやすさ、ドナーの心情に配慮しつつ記述しました。  
1) 研究遂行中に新たなテーマに遭遇する可能性も高いものと考えられるが、「研究の目的・方法・予期される利用法の説明は、どこまで必要か、どこまで可能か検討してほしい。   こども病院長  原則として、わかっている情報は全て伝えるという立場で、個々の研究計画の説明をする際に判断され、また、審査が行われるものと考えます。  
12) 3の12)を実現するためにも、「担当医は、同意、拒否に拘わらずドナーの治療に利益・不利益をもたらさないことを確約する旨ドナーに明言しなければならない。」を加える。   一般(大学教官)  インフォームドコンセントに係る手続きにおいては最大限担当医の影響を排除するよう趣旨が盛り込まれています。指針の運用において配慮され、確認されていくものと考えます。  
13) 胚の提供に関して、事前に了解を得、そのことが今後の治療に不利益がないことを述べているが、患者の心理を考えると治療中にこの了解を得ることは酷ではないか。余剰胚は凍結されているわけで、すべての治療が終了した後でも遅くはないと考えられる。   日本胚移植研究会(一任)
日本畜産学会(一任) 
報告書第3章2.(4)に提供者への打診に当たっては、その心情に配慮すべき旨を加えました。 
47) 「未成年者など法的責任能力」について、インフォームド・コンセントで問題になるのは同意能力であり(民事責任・刑事責任の前提となる)責任能力ではない。   大学教官(法律)  ご指摘を踏まえて修文しました。 
別添2  ヒトES細胞樹立機関の満たすべき要件       
1.5) 生殖医療での余剰胚を研究用に転用するため、審査委員会には男女両性の参加が必須である。  (財)バイオインダストリー協会  ご指摘を受けて修文しました。 
5) 規則を守る仕組みの構築についての配慮が不足している。倫理委員会については男女両性の参加にも触れ、より明確な倫理委員会の構成要件について触れる必要がある。機関の長から国に至る縦の線だけでなく、横の監視の仕組みを考慮すべき。また、厳格に施行するためには罰則は必須。   日本組織培養学会(倫理問題検討会委員長見解) 
5) IRB委員には「生物学、医学、法学、生命倫理の専門家などであって」とあるが、これら専門家をすべて含まなければならないのか一人ないし複数いれば良いのか曖昧。農学、薬学が入ることを明確にするため、生物学、医学、並びに関連する生命科学の諸分野”とするのが明確。また「委員会の構成、組織及び運営手続きに関する規則等が公開されること」とあるが、審議の事前が事後か不明。IRBの役割が大きいのでIRBに関する内容を整備する必要があるのではないか。   日本繁殖生物学会 
5) IRBは既に機能している機関内の倫理委員会とは別に組織する必要があるのか。  大学教官(医)  現在学内にある倫理委員会でも要件を満たせば新たにIRBを作る必要はありません。 
5) 義務づける情報公開はどこまでか(審議過程は含まれるのか)  業界団体  ヒト胚性幹細胞の樹立に関しては、研究の自由やプライバシーの保護などに配慮しつつ、可能な限りの公開が行われるべきと考えます。  
5) IRBに関しては特殊個別機関内に設置されるので難しいかもしれないが、国民の側から見れば「違反した事例」などが何故起きたのか、何故そのような審査をしたのか、審査委員の責任をチェックできることがなによりも情報公開の前提となる。それを保障する上でやはりIRBの議論過程も公開性の中に入れるように要求すべきではないか。   日本医学哲学・倫理学会(国内学術交流部門担当理事) 
5) 7)「ヒト胚性幹細胞の樹立過程が、公開されること」とあるが、意味が不明確。審査過程が公開されることが重要。   (財)バイオインダストリー協会 
3.3) <樹立機関としての公的な役割>の「樹立機関が特許の権利化を申請することを認める。」は「ES細胞自体により売買の利益を得ない」と矛盾。特許防衛であれば樹立機関が速やかに公表することでいい。   一般(研究者)  無償で提供されるヒト胚を使用することから、ヒト胚性幹細胞の樹立過程で利益を得ることは行うべきではありませんが、他の企業が独占に利益を得ることを防止するために、特許の権利化は防衛特許の場合認めることとしています。そこから商業的な利益を得るべきでないと考えます。公表による防衛も一つの方法であると考えます。  
3) 特許権は知的所有権の中の工業所有権のひとつで、新しい発明を行なった人又は法人がその発明の利用を定められた期間独占する権利であり、独占する権利は保証されるべきものと考える。医療に対する公共の利益のためにES細胞の独占を排除するなら、国が積極的に樹立研究に対して公的資金を提供し、得られた成果(ES細胞の特許権)を国に帰属させ、公平な利用がはかれるよう対応すべき。   製薬会社 
4 医療施設における情報開示(カルテ開示)の方向性と同意書の示すプライバシー保護(プライバシー)の方向性を具体的に位置づけてほしい   大学教官  カルテ開示は医療を受ける患者本人に対して本人の医療情報を開示をするものです。ここでは提供者の個人情報は樹立機関や使用機関に一切渡らないですし、提供機関に研究の情報が戻されることもありません。  
  個々の人は移管されるコードなどからドナーの個人識別情報にさかのぼることも完全に不可能になるという趣旨を明確にすべき。   大学教官(法律)  ご指摘をふまえて修文しました 
  この案でいう「国」が具体的になにになるのか明記してほしい。IRB、国が審査するのに一定の期限を設けないと申請から数年かかるという事態が日本では起こりかねない。一定の期限内に審理を開始し、また結論を出すことを義務づける文言が含まれるべき(直ちに、速やかになど)   日本繁殖生物学会  審査の枠組みを具体化する過程で考慮していきたいと思います。 
  ES細胞の樹立・使用について配慮すべき事項はよくわかるが、実際にどのようなものについては樹立・使用が認められることになるのか具体例がわからない。また今度どの様新しいアイデアがでてくるかも予想しきれない。従って賛否を決めかねる部分が残る。現段階だけでなく、個々の審査についても一般の意見がとり入れられる道を残してほしい。   公務員(産前休職中)  研究内容については、ここで示した原則に従って、個別の審査により妥当性が判断されるものと考えます。また、指針の策定の際に意見公募を行うとともに、審査の枠組みを具体化する過程で検討していきたい。  
別添3  ヒトES細胞樹立に関する手続き       
3.樹立完了後1)  「樹立機関の長は樹立したES細胞について、保管、分配等に関する管理記録を作成保存し、」に関して、この方式でES細胞が保管されたのでは、保管場所(機関)がバラバラで管理不十分になることは明らかである。国が特定の研究機関に集中保管管理すべき。ES細胞BANKを作ってほしい。   研究者  樹立機関における管理は、厳格になされることになっています。また、本報告書は倫理的な枠組みについて議論したものです。  
  ヒトES細胞の樹立に失敗した場合、失敗、廃棄した旨の報告書の提出を義務づける必要はないか。  日本繁殖生物学会  失敗した場合も提出を受ける方針であり、その旨を明記しました。 
  樹立機関、提供機関、使用機関の、3つのIRBの審査の具体性(審査の基準、審査の権限)が必要  大学教官(文学部)  審査の基準、規制の枠組みの具体化は、今後指針の策定などを通じて行っていきたい。 
第4章  ヒトクローン胚等の取り扱いについて       
(3)ヒトクローン胚について  ヒトクローン胚等について、人の遺伝子に他の動物の遺伝子配列等を組み込むことはやめてほしい。  一般  ヒトクローン胚を使った、ヒト個体の産生は禁止されています。 
  「特定疾患の発症予防のための研究」を頭から反対するものではないが、障害胎児の中絶を前提とした出生前診断が数多く行われ、また胎児条項の新設を望む声も少なからずある現状では、このような表現が特定の障害・疾病を有する胎児への否定や特定の障害・疾病を有する生命の尊厳に対する軽視につながりかねない危惧を感じる。そのような否定・軽視につながらないよう、諸機関に対するより慎重な対応を望む。   DPI女性障害者ネットワーク  実際の運用面においても配慮していきたいと考えます。 
  特定の「疾患の発症予防」研究という記述は「疾患遺伝子を持つ子供(または個体)の発生予防(または出生予防)」とすべき。   DNA問題研究会  特定の病気が発現しないようにするという趣旨でこの言葉を使っています。 
  罰則を伴う法律により禁止すべきであるというのは新たに法律を作ることになるのか、現行法の追加・手直しで対応することになるのか。   業界団体  クローン個体等の産生を禁止する新規立法を行うことを想定しています。 
  クローン胚の研究が発展すれば移植医療に多大な寄与を果たすと考えられるが、種としての人間の、とくに個人としての唯一にして独自の個性を曖昧なものにすることはないのか、また次世代に対して何らかの影響を及ぼすことはないか危惧される。科学の社会的責任を果たすために厳格な審査や規制のシステムが作れるのかなどが懸念される。   大学教官(臨床心理学)  ヒトクローン胚から個体の産生は罰則を伴う法律により禁止すべきと考え、新規立法を行うことを想定しています。  
  クローン個体産生が罰則付きで厳重に禁止されるとはいえ、それが絶対に守られるのかどうか極めて不安。もし万一そのようなことが起これば人間形成の原本である親子関係を混乱にみちびく重大な問題。   大学教官(臨床心理学) 
  「ヒトES細胞樹立に向けた核の初期化のプロセスの研究等がーー当面の間、動物卵に限られるべきである。」この記述は異種とはいえヒト細胞の核移植を許容することになるが、第4章、1.(1)の記述と矛盾する。   日本胚移植研究会(一任)
日本畜産学会(一任) 
ヒトの卵子を使用することについての倫理的問題を考慮しました。なお、ヒト体細胞と異種間で核融合を行った胚からの個体産生は罰則を伴う法律により禁止されます。  
  ヒト卵子に比べ、動物卵子の利用扱いが緩くなっているが、動物卵子で倫理的問題の考慮が適用外とされる考えは不適切ではないかと思う。ヒト卵子を用いたクローン胚より動物卵子を用いたクローン胚への違和感のほうが大きいという考え方もある。   日本繁殖生物学会 
  クローン胚研究については、個体産生には問題があるものの、細胞、組織の範囲内の研究は進められるべきである。   広島大学医学部倫理委員会  ヒトクローン胚等を扱うことは、人クローン個体の産生につながりかねないなど倫理的問題が大きいため原則として行うべきでないしていますが、厳格な個別審査を経たもののみ実施の余地があると考えます。  
(4)キメラ胚について       
  キメラ胚、ハイブリッド胚研究も人間個体産生に至らないかぎりの研究にとどめられるべきであろう。  広島大学医学部倫理委員会  ヒトに関するキメラ胚等を扱うことは、キメラ個体の産生につながりかねないなど倫理的問題が大きいため原則として行うべきでないしていますが、厳格な個別審査を経たもののみ実施の余地があると考えます。  
  キメラ胚やハイブリッド胚の研究については、個体の産生につながるか否かを問わず、すべての研究を認めるべきではないと考える。   仏教思想学会 
第5章  情報公開等       
  情報公開について各所で配慮されていることを高く評価する。しかし、フロー図に明快に示されていないことから、具体的な情報公開のポイントや内容を示してほしい。   日本組織培養学会(倫理問題検討会委員長見解)  今後の規制の枠組みの具体化の段階で考慮していきたい。 
  受精卵が一個人となる生命体であること、全能性の意味などを始めとして、医学・生物学の研究に携わる者を含め一般の人々すべての意識改革のための教育が必要。   一般(大学教官)  引き続き努力していきたい。 
  全ての日本の行政側は守秘義務の枠内で物事を解決、公表するという処から一歩も出ない状態が続いている。医療側にウェイトを置く公開になる懸念が多々ある。どこまで情報公開が出来るか疑問。諸外国に比較しても進んだ情報公開であってもらいたい   一般 
  日本だけES細胞の樹立を拙速に認めることは、国際的に批判・避難の対象になり、国際協調を乱すもとになる。   DNA問題研究会  アメリカ、フランス、イギリスも、ES細胞研究を重視し、日本と同様の諮問委員会レベルでは、ES細胞を樹立することを認める報告が出されています。  
第6章  今後検討するべき課題       
  「行わなかった」の次に以下の文を加える。「結論として、ES細胞研究は行政指針により、クローン胚等の研究は法律に基づく指針により実施手続きと禁止事項を定め、規制を行うこととしたが、それ以外の、各学会、研究機関の判断に委ねられている、主に生殖医学における人間の胚研究の扱いをどうするべきかは、体外受精等生殖補助医療の規制と並んで、本来先に検討され提案されるべきより緊急度・優先度の高い課題である。他者の不妊治療のために胚を提供することは認められていない現状で、不妊とは関係ない研究用に人間の胚を提供していいとすることの政策的整合性とその倫理的根拠もさらに検討されるべきである。   研究者(生命倫理)、弁護士  連名  ヒト胚研究はその由来という面で生殖補助技術との関連しますが、生殖補助技術はヒト胚を滅失するものではなく、人の出生に関して人為的関与がいかなる範囲で認められるべき問題について検討が必要であり別の枠組みで検討していくことが必要であると考えます。その結果を受けて、ヒト胚研究全般の枠組みについて検討していきます。  
  ドイツの「胚保護法」が研究利用の禁止するという結果に至る前に「養子縁組及び代理母の禁止法」を施行してその上で研究上の利用を禁止したという法律策定のあり方を学ぶべきではないか。   日本医学哲学・倫理学会(国内学術交流部門担当理事) 
  社会の意見を汲み上げて議論すべきとあるが、一般国民に十分な知識や理解のない直感的あるいは情緒的な意見が多い。   市民病院長  生命倫理は、社会の考え方を汲み上げることが重要であると考えています。今後とも努力してきたいと考えます。  
  ヒト胚研究は、生命操作(生命延長、不妊夫妻の福音etc)に関わる当事者にどう受け取られるのか調査結果がほしい   一般 
  生命倫理は、部分的に議論を積み重ねるという段階から、包括的議論を行う場とそのような議論をバックアップする研究センターを形成することが必要ではないかと考え、現在3つの省庁に分かれて議論している状況を一新するような全体的な場と、開放的な「生命倫理」研究センターの確立を提案。   日本医学哲学・倫理学会(国内学術交流部門担当理事) 
ヒト胚研究に関する基本事項(提案)       
  タイトルを「基本理念」として「ヒトの生命の萌芽として尊重されるべきものである」は「人間の生命の萌芽として尊重、保護されることを通じて人間の尊厳が充足・促進されるべきものである」と修正   研究者(生命倫理)、弁護士  連名  基本理念は今後この基本事項を元に検討されていくべきものと考えます。人の生命として保護されるかどうかという事については、今後さらに議論を行っていくべきものと考えます。  
3.遵守事項  列記した項目を遵守することがなぜ必要なのかの根拠をはっきりさせるため、以下の柱書きを加える「研究者はヒト胚研究の倫理的、社会的な影響を考慮し、厳格さ、誠実さをもって研究を行う責任を負う。その責任を果たすため、」   一般(マスコミ)  ご指摘の通り修文しました。 
  研究材料として使用できる胚の条件(余剰胚であること)を記すべきではないか。  日本胚移植研究会(一任)
日本畜産学会(一任) 
遵守事項1)2)で明示してあります。なお、第2章には明記しました。 
  「3.遵守事項」は、理念としては同意する。しかし、現実の治療現場では、多くの患者は医師の申し出を「断る」ことによって、治療上の不利益が生じるのではないかという危惧を感じている。この「遵守事項」が理念のみに終わることなく、個々の医療現場できちんと行われるよう、とくに提供を断ることによって治療上不利益な扱いを受けることやプライバシーの侵害がないよう、現場に対する指導の徹底につとめることを望む。   DPI女性障害者ネットワーク  報告書の検討においては、ヒト胚研究に際して守られていくべき基本的考え方を示しています。この点は、実際に提供の同意を求める際に、不妊治療の現場においても最大限の配慮が行われるべきであると考えます。  
4  妥当性の確認       
  研究倫理審査システムは多分野の専門家と一般社会の意見を代表する複数の非専門家で構成されなければならないことは国際的な基準であるため、以下の文を加える。「この確認を行う組織は、自然科学、人文社会科学、医療従事者など多分野の専門家及び一般社会を代表する非専門家で構成されること。」   研究者(生命倫理)、弁護士  連名  一般社会の意見を審査の過程でどう取り入れていくかについて、具体的に議論する際に考慮していきたいと考えます。  
  中立的・客観的な確認を実現するため、「この「確認」を行う組織の構成員は、ヒト胚研究者、産科学・婦人科学の研究者など狭い意味の専門家に偏ることなく、人文・社会科学の専門家を含む幅広い層から、中立的・客観的に判断できる人が選ばれるよう留意すべきである。」との文言を付加するべき。   一般(大学教官) 
  人間の生命の萌芽としての胚の位置付けにふさわしいヒト胚研究一般に二重の審査体制を提案すべきであり、「基本事項」に以下の事項を追加する。「6  当面の措置    日本産科婦人科学会など関係学会の報告された人間の胚に関する研究計画は、科学技術会議生命倫理委員会に対しても届け出る。届け出られた研究計画のうち、着床前診断のための受精卵分割研究や、他の動物内での生殖細胞の培養と受精実験など、通常の体外受精・胚移植技術を超えた先端的研究をふくむものは、その妥当性を同委員会に設けられる専門委員会が確認する。以上の届出および確認は、科学技術会議生命倫理委員会において公表する。」   研究者(生命倫理)、弁護士  連名  現時点では、ヒト胚研究全般についての検討を行っておらず、全てのヒト胚研究を規制の対象とすることは、できないと考えています。今後、ヒト胚研究全般に対する議論を進めていきたいと考えます。  
  ヒト胚を扱う先端研究の全てについて、国と研究機関・学会の二重審査を徹底するため、「6  関係学会との連携  この基本事項が遵守されているかどうかを審査する国の機関が発足するまで当面の間、関係学会は科学技術会議生命倫理委員会に対し、等学会に報告されているヒト胚研究の届け出を行い確認をもとめること。」を付加する。   大学教官 
インフォームドコンセント説明文書イメージ       
  添付されているICのイメージには、さまざまな配慮がなされていることを高く評価するが、今後、実際に研究課題に即したICが検討される段階で、ICをさまざまな見方から検討し、個々のケースに合わせて改良し、内容を遵守していく仕組みを構築することが求められる。 日本組織培養学会(倫理問題検討会委員長見解)  個々の研究計画ごとに文書を検討して審査されるものと考えています。 
○おねがい       
  「○おねがい」の「ヒト胚性幹細胞は、移植医療などへの応用の可能性があるものでです。」との記述は、いきなり移植医療という呉我はいるのは現在の移植医療のすすみに歯止めをかけかねない。「血液、神経、肝臓・・など様々な細胞を作り出すことが可能で、現在治療の難しい病気の治療に役立つとの期待が大きいものです。研究が進めば移植医療への応用の可能性も大きいものです。」とすべき。   大学教官  ご指摘を踏まえて修文しました。 
○凍結胚の提供・・・お知りになっていただきたいこと       
1) 「ヒト胚幹細胞を用いた研究が進むと、そこから治療や移植に」の部分で、この「治療」とは何を指すのか曖昧さが残る。   日本胚移植研究会(一任)
日本畜産学会(一任) 
実際の運用においては図解のパンフレット等を添付して研究内容等について詳細かつわかりやすく説明されることが望まれる。  
2) 「胚ではなくなり、子宮に戻すことはできなくなります。」を「胚ではなくなり、赤ちゃんができる可能性はなくなります」と文意を明確化すべき。   学会  ご指摘を踏まえて修文しました。 
11) 同意した場合と同意しない場合でニュアンスが異なるため、11)「同意されるかどうかにかかわらずお二人が利益や不利益をうけることはありません」を「同意しなくても不利益を受けることはありません」に変更   大学教官