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 ヒト胚性幹細胞を中心としたヒト胚研究について

平成12年3月13日 
科学技術会議生命倫理委員会 


  本生命倫理委員会は、平成10年12月にヒト胚研究小委員会を設置し、ヒト胚性幹細胞を中心とするヒト胚研究について検討を進めてきた。同小委員会が3月6日に取りまとめた報告を審議した結果、本委員会としてこれを了承するとともに、以下の取り組みが必要と考える。 

1.規制の枠組みの整備 

(1)人クローン胚等について 
      人クローン胚等に関する規制の枠組みについて、人クローン個体等の産生を禁止する法律に位置付けて早急に整備すること。     
(2)ヒト胚性幹細胞について 
      ヒト胚性幹細胞に関する規制の枠組みについて、その実効性を考慮しつつ、指針として早急に整備すること。 


2.ヒト胚の研究利用 

(1)ヒト胚の位置づけ 
      ヒト胚は人の生命の萌芽として倫理的に尊重されるべきである。生命の萌芽としてのヒト胚にどの程度の保護を与えるかについては、個々人の生命観により様々な考え方がありうる。しかしながら、ヒト胚を生命の誕生ではなく研究に利用し、滅失する行為は、倫理的な面から極めて慎重に行うべきことについては論を待たない。重要な成果を産み出す研究であっても、人の生命の萌芽として尊重すべき点を考慮した上で妥当と認められる場合にのみ、その実施が許容され得ると考える。 
(2)今後の検討 
      生命の萌芽であるヒト胚の研究利用については、基本的な考え方を明確にする必要があり、当委員会としても、これまでの検討結果を踏まえて、ヒト胚研究全般について早急に議論を深めていくこととする。 


3.国民の理解 

      ヒト胚研究等人の生命に関わる科学技術については、国民の理解が必要であり、広く情報を提供することにより社会における認識を高めるとともに、当委員会としてもその意見を汲み上げながら検討を行う必要がある。 


4.国際協調 

      科学技術には国境がなく、国際的に協調した対応が必要である。しかしながら、ヒト胚の位置づけも含めた生命倫理の問題については、国によって対応が異る側面がある。このため、我が国としても積極的に国際的な対話を深め、研究活動のあり方が国際的に協調したものになるよう努めていくことが必要である。