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科学技術会議生命倫理委員会
ヒトゲノム研究小委員会(第6回)議事録

   
1.日時    平成12年6月7日(水)    18:02〜19:38 
   
2.場所    科学技術庁第7会議室 
   
3.出席者 
    (委  員) 高久委員長、位田委員、奥田委員、小幡委員、玉井委員、寺田委員、 
                 中村委員、眞崎委員、町野委員 
    (事務局)科学技術庁  研究開発局長、生命倫理安全対策室長、小田ライフサイエンス課長  他 
   
4.課題 
    (1)ヒトゲノム研究に関する基本原則について 
    (2)ヒトゲノム研究成果の応用段階における問題について 
    (3)その他 
   
5.配付資料 
    資料6−1  ヒトゲノム研究に関する基本原則(案)(修正案) 
    資料6−2  意見公募に寄せられた主な意見と対応(案) 
    資料6−3  意見公募に寄せられた全ての意見と対応(案) 
    資料6−4  説明資料(日本人類遺伝学会) 
   
6.議事 
   
(高久委員長) 
  時間になりましたので、第6回の科学技術会議ヒトゲノム研究小委員会を開催させていただきます。 
  もし食事をされる方がいらしたら、どうぞ召し上がりながら。 
  まず、事務局のほうから配付資料の確認をよろしくお願いします。 
(事務局) 
  それでは、配付資料の確認をさせていただきます。 
  番号のついているものが4つございまして、資料6−1が前回のご審議に基づいて修正されました基本原則の案でございます。本日の議題の中心となる資料でございます。資料6−2が基本原則の修正に伴って、前回の資料と内容が変わっている資料で、公募によって寄せられた主な意見と対応でございます。資料6−3が公募によって寄せられたすべてのご意見に対して対応が示されたものです。この資料につきましては、事前に全員の委員にお送りしまして、ご確認をいただいております。  
  資料6−4は、議題2におきまして、人類遺伝学会の松田理事長にお話しいただきますが、その関係の資料でございます。 
  あと番号の振っておりませんのは、前回の委員会の後にいただきました一般からのご意見でございます。 
  以上でございます。 
(高久委員長) 
  お手元に資料があると思います。今、事務局から説明がありましたように、議題1では、基本原則について、ご審議をいただきたいと思います。できれば、きょうでこのことについての討論は最後にしたいと考えています。  
  また、次の議題2では、「ヒトゲノム研究成果の応用段階における問題について」という問題で、日本人類遺伝学会の松田理事長にお話を伺うことになっています。松田先生、よろしくお願いします。  
  では、早速、議事に入らせていただきます。前回の委員会で基本原則の修正案に基づいたご議論をいただいたわけですが、その議論を踏まえて、位田委員にまたご苦労をおかけして、修正をしていただきました。この修正、資料6−1について、位田委員のほうからよろしくご説明をお願いします。  
(位田委員) 
  それでは、きょうご用意していただきました案文に従って説明をさせていただきます。 
  全体については、前回、それから前々回あらましをご説明いたしましたので、きょうは前回に特にご議論いただいた幾つかの問題と、それから時間がなくてそこまでいかなかった問題について、それらに限ってご説明をしたいと思います。  
  資料の解説のほうから見ていただきたいと思います。解説のほうには原則の本文と解説と両方ありますので、これで全部を兼ねたいと思っております。 
  最初のほうは前回でほとんどご議論いただきましたし、合意をいただいていると思いますので、きょう問題になりますのは、原則の第七及び第八がまず最初でございます。第七につきましては、前回もかなりご議論いただきましたが、いわゆるインフォームド・コンセントの簡略化の問題でございます。第七の原則の本文のほうに第七の2項として「インフォームド・コンセントの手続は研究計画に明示し、倫理委員会の審査を経なければならない」ということを一文つけ加えました。  
  そして、前回は大体合意をいただいたと思うのですが、いろいろな研究の内容等に関連していろいろなインフォームド・コンセントの方法がある。とりわけ説明の方法がいろいろあるということで、原則の第五でインフォームド・コンセントの基本は個別に説明をして、そして十分に理解をしていただいた上で自由意思に基づいて同意をしていただく、もしくは同意をしないということを原則にするんだけれども、第七、八、九においては、必ずしも個別に説明をしなくてもいい、もしくはかなり慎重にやらないといけないという、いわばインフォームド・コンセントの説明のバリエーションを定めたものでございます。ここのところはあまり大きな変更はしておりません。少し順番を入れかえたりしておりますが、前回ご議論いただいたところから、いわゆる簡略化という言い方はしないで、いろいろな方法があるという文言にして修文をさせていただきました。  
  特に問題になっておりましたのは、いわゆるコホート研究、15ページの下の段落ですが、「集団を対象とする大規模な疫学的研究で追跡調査を必要とするもの」という形で、かなり長期間にわたって連結可能な状態が続くと、そういう場合にどういう説明の形態をとるかということでございました。前回ご議論いただいたように、長期間連結可能にするということなんだけれども、かなり大人数を対象にするということと、それからその研究から得られる成果が非常に有用なもの、医科学の進歩に貢献する、新しい医療に貢献するということ等を勘案して、例えば個別ではなくて集団での説明会のような説明の形式をとっても構わないということを、前回よりは少し明確に文言を修文いたしました。  
  ただ、倫理委員会としては、16ページの一番頭になりますが、「とりわけ慎重に審査するよう留意するんだ」ということで注意を促しております。 
  それから16ページの下のほう、第八のすぐ上のあたりには、「もし提供者のほうから個別に説明を求められたら、必ず個別に説明をする」ということ。それから「説明は少し簡略な形式でなされるとしても、同意の簡略化は認められない」ということ、これを書き込みました。  
  それから、そのすぐ下に「他方で、研究内容によっては」という段落でございますが、同意能力の認められない者、もしくは重篤な疾病の患者であって、その疾病の治療が困難なことを本人が知らない場合」等のように、普通に個別に説明をして同意をしていただくということだけではなくて、いろいろな事情を勘案して普通よりも慎重に説明が行われなければならない場合もあり得るということを書いておきました。これは簡略化のむしろ反対側のより厳密にやらないといけないという例を書き込んだわけでございます。第七はそういう形にいたしました。  
  第八については、前回、これも大体ご議論いただいて合意をいただいていると思いますけれども、ここは包括的同意と非連結匿名化試料についての項目ですが、重要なのは、インフォームド・コンセントもさることながら、情報の管理ということであるということを一言つけ加えております。  
  それから第八に関しましては、前回不必要と思われる文章をつけ加えたりしておりましたので、そこは整理をし、かつやはり情報の管理ということを強調する書き方にいたしました。それから18ページの真ん中辺、「例えば集団を対象とするゲノム解析研究において」という段落では、いろいろな説明の仕方があるということの例として、集団を対象にした説明会だけではなくて、例えば、丁寧に説明した文書を配布して、それで説明にかえるであるとか、いわゆるオーディオビジュアルを使って対面説明にかえるとか、質問があれば電話でお答えしますというようないろいろなやり方があるということを例示しておきました。第八についてはそのぐらいでございます。  
  それから第九の既提供試料につきましては、これは前に書いておりました原案をより明確にするように修文をしたつもりでございます。19ページの下のほうの段落で「既提供試料について、それを使うのが単に研究の便宜や省力化を目的としてはならない」とか、「個人情報の保護というのが明確にされないといけなくて、その個人情報の保護がはっきりしなければ研究計画は承認されないし、したがって、研究はできないし、既提供試料については廃棄しなければならない」ということを書いてございます。  
  それから、そのすぐ後にいわゆるバンク試料につきまして記載をしております。これは個別に委員の先生方にご意見をお聞きしまして、こういうもとの書き方であまり問題はないであろうということでご確認をいただきました。これはパブリックコメントでバンク試料についてのご意見がございましたので、それに対応したものでございます。  
  その後、少し飛びまして、若干つけ加えたのがございまして、十一のところの一番最後の21ページの十二のすぐ上ですが、「犯罪捜査等、法が定める場合には個人情報が開示される」。これは法律の規定によるということを念のため書き入れておきました。  
  それから問題なのは、第十四、十五の本人に対して研究の結果を開示する、もしくは血縁者に開示するということでございます。第十四に関しましては、前回のご議論で十四の2、提供者が知りたくないと言っている場合でも知らせるかどうかというのが一番議論の中心でございましたが、その関連の原則の本文は削除いたしました。これは前回ご議論いただいて結論を得たことでございます。  
  その場合に、提供者が、ヒトゲノム研究であるとか、ヒトゲノム研究の研究結果というのをどういうふうに理解するべきかについて、十分な知識を持っているとは限りませんので、その研究結果が特に病気等に結びつく場合には、できるだけ提供者もその意味を理解していただいて、まだ治療可能等の状況であれば、それを知ることが自分の健康の維持にはいいのだということを理解していただければ、それを最後には知るほうを選んでいただけるかと思っております。そこで、その研究者もしくは医師が十分にそのあたりを説明するということを、前回も書いておりましたが、それを少し整理をして書き直しました。  
  それから本人がそれでもなお結果を知りたくない、という場合には知らせてはいけない、というのが24ページの下のほうの「また、研究の結果云々」というところに書いてございます。それから「いずれの場合においても、遺伝カウンセリング等の社会的心理的支援を提供するよう措置しなければならない」ということを書き込みました。  
  それに対して第十五ですが、十五は前回最後のほうで少し問題提起がなされまして、そして議論は少しいただいたのですが、どうも必ずしも合意には至っていなかったように思いますので、少しご意見を委員の先生にお聞きしましたり、その他パブリックコメント等とも考え合わせながら修文をし直しました。  
  基本は、十五においては、血縁者と提供者の間では遺伝情報がある意味では共有される部分がかなり高いわけですので、提供者がもし遺伝性の疾患にかかっていれば、血縁者もかかっていると。その場合に、提供者の意思にかかわらず、つまり、知りたい知りたくない、もしくは知らせたい知らせたくないという意思にかかわらず、血縁者の健康の維持、少し突き詰めた言い方をすれば、血縁者の人命救助という観点から血縁者に知らせるという可能性を開いております。  
  ただ、最初から血縁者にすぐに知らせていいということではなくて、できるだけインフォームド・コンセントの際の説明のときに、提供者に対して何らかの研究結果が出てきて、疾病と関係する場合には血縁者もその疾病にかかっている可能性があるので、血縁者に知らせたほうがいいですよということをなるべくあらかじめ同意をいただいておくと、そうであれば血縁者に知らせるのも容易になります。  
  ただ、それでもなお、提供者本人が知りたくない、もしくは知らせたくないという意思があった場合であっても、やはり血縁者には知らせたほうがいいのではないかというのがこの立場でございます。その場合には、自動的に知らせるということではなくて、当然に倫理委員会の審査を経て、この場合には知らせるべきであるかどうか、もしくは知らせていいかどうかということをご判断いただいて、そして知らせる。ただし、知らせるのも強制的に知らせるということではなくて、血縁者も知る権利、知らない権利を持っておりますので、これは26ページのほうに書きましたが、血縁者も知りたいか知りたくないか、いうことの意思を確認をして、もし血縁者が知りたいということであれば、その結果を教えると。知りたくないということであれば、これは提供者の場合と同じように判断は知らせない。  
  ただ、下手をすると、血縁者に知りたいか知りたくないですかと聞いた途端に、提供者自身が病気であるということがわかってしまう、もしくは血縁者自身が病気の可能性があるということがわかってしまうということがありますので、これはかなり慎重にしないといけないということでございます。もちろん、これも提供者と同じように、遺伝カウンセリングを含む社会的心理的支援を提供するよう措置をする必要がございます、という形にいたしました。  
  これについてはいろいろな状況が考えられまして、提供者本人が知っている知っていない、知らせたい知らせたくない。それから血縁者が知りたい知りたくない。それから提供者と血縁者の間の人間関係、その他さまざまな状況がございます。部類分けをしていくと、非常に複雑かつわかりにくいものになりますので、いろいろな状況を勘案して、やはり血縁者の人命救助といいますか、健康の維持という観点から、知らせるという道を開いておくというのを一番柱にいたしまして、それでできるだけ簡素にまとめるという努力をいたしました。  
  したがって、さまざまな状況はこの中に書き込まれていると、行間を読んでいただくという言い方がいいのかもしれませんが、そういうふうにご理解をいただければと思います。さまざまな具体的な状況というのは、やはり倫理委員会の場で明らかになるでしょうし、そのときに倫理委員会に判断をゆだねる。現実にはそういう形でしか処理のしようがないのではないか。基本原則に事細かに、この場合にはこうする、あの場合にこうするというふうには書き込めませんし、もし書き込む可能性があるとすれば、それは指針のほうに書き込むべきだろうと思います。ここでは研究の基本原則ということですので、何が一番柱であるかということを明らかにしておけばいいのではないかというのが最終的な判断でございまして、それに従って修正するところは修正しております。  
  それから、第十九のところに少し修文をしております。これは遺伝カウンセリングの定義にもかかわるところでして、遺伝カウンセリングというのは、どうもインフォームド・コンセントの説明の一部だというふうに誤解される可能性があるので、そこのところは本来は診療行為であるということをきちっと書き込んでおく。そしてその試料提供の同意にあたっても、もしくは結果を告知する場合であっても、遺伝カウンセリングができるだけ提供されなければならない。もしそれが実際に診断に至る場合には、必ず遺伝カウンセリングが提供されなければならないということを書き込んでございます。  
  それから次に、第二十一の5ですが、これは前回も簡単にご説明をしております。今日 
ご議論をいただくということではないと思いますけれども、前回のところに日本ではどういう立場かというのを明らかにするために、今年4月に出されました中曽根科学技術庁長官の声明をつけ加えました。日本も国際的なラインに並んでヒトゲノム塩基配列情報は公開されなければならない、ということを表明しているということを明らかにいたしました。  
  それから第二十三でございますが、これは倫理委員会についての規定です。パブリックコメントでは、倫理委員会の実効性ということにかなり意見が出ておりましたので、倫理委員会がどういう役割を果たすかということをきちっと書き、そして倫理委員会がいかに重要かということをここで明らかにしております。  
  ただ、ここで言う倫理委員会というのは各研究機関でつくられる倫理委員会でございますが、これをまたさらに二重審査のような形で国の倫理委員会をつくって、ある意味では倫理委員会の上層機関のような形を考えるのはむしろ妥当ではないということから、倫理委員会の実効性については、審査の公正さと透明性ということが実効性を確保する基盤になるんだということを31ページに修文した部分では明らかにしてございます。32ページの部分もそのことをもう一度言っております。  
  それから第二十五のところで修正が何行か入っておりますが、これは研究成果の公開ということの理由として、やはりヒトゲノムが人間の生命現象を解き明かして健康と福祉に大きく貢献するものだから、だからこそ原則として公開されなければならないということを念のために明らかにしたという形でございます。  
  それから用語解説に、疾病の遺伝的要因のところでは例示を書き直しました。説明を少し詳しくいたしましたし、それから薬剤応答性というのは、前回ご議論があったように薬剤の副作用等の問題があるので、これを新たにつけ加えました。それから遺伝カウンセリングについては、よりわかりやすく正確に修文をいたしました。  
  大体以上でございますが、実際にご議論いただかないといけないのは、七のところをこの形でご了承いただけるかどうかという問題と、それから十四が、前回のご議論というか、合意に従って書き直したつもりですが、これで妥当かということと、あとは十五、前回少し議論が残った部分についてご判断をいただきたい。このあたりが主なところでございます。  
  以上でございます。 
(高久委員長) 
  どうもありがとうございました。 
  それでは、きょうは七と十四、十五について主にご議論願いたいと思います。七について、いかがなものでしょうか。どなたか。 
  今、位田委員のほうから大分ご説明がありました。この前大分いろいろご議論いただいて、それに従って直していると思いますので、後でまた何かご意見があったら言っていただくことにして。  
  はい、どうぞ。 
(玉井委員) 
  今から原則そのものをいじるのはあまりよろしくないかもしれないんですけれども、七の「インフォームド・コンセント手続においては、それぞれのヒトゲノム研究が、とくに個人の遺伝情報の特定が、倫理的法的」という部分です。「倫理的法的社会的問題を引き起こす可能性が高いことに鑑みて」というのは、この原則全体にかかることであって、ここでわざわざこれを書く必要があるのかなと前から違和感を持っていたんですけど、これは今からいじらないほうがいいのかもしれませんが、どうなんでしょうか。  
(高久委員長) 
  これは入れておいても良いのではないですか。 
(玉井委員) 
  入れておいても悪くはないんですけど、全体にかかる問題かなと思ったので、ここでとりわけ書く必要があるかなと。 
(位田委員) 
  よろしいでしょうか。研究の多様性の考慮というのは簡略化という問題が念頭にありましたので。 
(高久委員長) 
  研究の多様性の考慮ではなくて。 
(位田委員) 
  第七というのは研究の多様性の考慮ということなんですけれども、そのときに何を考慮しないといけないかということだと思います。単に研究にはいろいろあるよという話ではなくて、そこで重要なのは、やはり個人の遺伝情報が特定されて倫理的法的な問題を引き起こす可能性が高いんだということで、これはちゃんと念頭に置いておけよというものです。確かに倫理的法的社会的な問題というのは全体にかぶりますが、特に幾つかの情報については、これが非常に大きな問題となり得る可能性があるので、第七はそのうちの一つだよということを書いています。これを外しますと、条件が非常に緩やかになってしまうと思いますので、私はこれは入れておかないといけない部分だと思っております。  
(高久委員長) 
  どうもありがとうございました。 
  ほかに。 
(玉井委員) 
  それともう一ついいでしょうか。解説の最後のほうに重篤な疾病の(この疾病と疾患もいろいろ出てくるような気がするんですが)、「重篤な疾病の患者であって、その疾病の治療が困難なことを本人が知らない場合など」というふうに例が引かれているんですけれども、この例はここのところで何か初めて唐突に登場するような気がするんです。この例は、第六のように同意能力の認められない者に関してより慎重にインフォームド・コンセントをとらなければいけない例を入れたほうがいいのではないかというのは前から申し上げていたことなので、これはそのほうがいいんですが、例としてここにあることがちょっと、違和感があるかなと。今まで全くそういう例が本文中にも解説中にも出てこなくて、ここで初めて出てくるということはどうなのかなと、なくてもいいのではないかなと思うんですけれども。  
(位田委員) 
  これは慎重に説明が行われなければならない例を挙げているのであって、慎重に説明をするのは同意能力の認められない者の場合だけではありませんので、そのほか特に可能性が具体的に考えられるものとしてここに挙げました。例というのは、どこかで出てくれば、それは初めて出てくるものですから、唐突と言われると困るのですが、これは一つの例として挙げておきましたので、この例が不適切だとおっしゃるのであれば、そこは現場の状況が必ずしも十分に私は理解をしているわけではないと思いますので削ります。しかし、例としてこれで別に悪くなければ、単に同意能力の認められない者ということだけではなくて、こういうほかの例もあるよ、ということで例示させていただきました。  
(玉井委員) 
  同意能力はあるけれども、病名を告知されていないようなというのも提供者になんですか。 
(高久委員長) 
  同意能力のない者を提供者とする場合や、また、こういう場合などと書いてありますから、一つの例として挙げたのですね。位田先生、そうですね。 
(位田委員) 
  ですから、同意能力はあるんだけれども、あなたのサンプルを欲しいと言ったときに、その病名がわかってしまうと困るので、そこは慎重に説明を上手にしなさいという趣旨で、単にこういうことをやりますから、こういう研究にしますから提供してくださいというのではなくて、そういういろいろな状況をきちっとつかまえて個別に説明をするという、そのときに慎重さが必要だということの例でございます。同意能力のあるなしにはかかわらないと思います。  
(高久委員長) 
  それでは、十四のほうに進めさせていただきたいと思います。十四についていかがでしょう。この前のときに、原則の2を省いて説明の中に入れようということで、本日のはそういうふうになっていると思います。ほかに何かどなたか。  
  実は24ページの下のところで「遺伝カウンセリング等の社会的心理的支援を提供するよう措置しなければならない」とありますが、これからの研究はほとんどがゲノムが関係する研究になる可能性がある。そのときに、全部遺伝カウンセリング措置するということはできないと思います。第十九のところで必要に応じてと書いていますので、十四、十五でも「必要に応じて遺伝カウンセリング等」と書きませんと、できない研究所がたくさんできてくる。そういうふうにぜひ直してもらいたい。  
  ほかに何かご意見がおありでしょうか。 
(小幡委員) 
  私は第十四の2項を削っていただいたので大変ありがたいと思っております。ちょっとパブリックコメントを拝見していて、私の申し上げている趣旨に誤解があるなと思ったのですが、私は個人的には、提供者の意思に反しては知らせるべきではないという立場でございます、あくまでも。ですから、1項の本文はこれのみにしておいていただいたほうがいい。ただ、前回いろいろ議論がございましたので、どうしても何か道をということであれば、そこでインフォームド・コンセントを尽くすということで解決できるのではないかという趣旨のことを申し上げたのですが、今回位田先生がいろいろ書き込んでくださいまして、2項を削って下さいましたのでそれはけっこうかと思います。なお、先ほどの遺伝カウンセリングの話ですが、この上記いずれの場合というのは何を、伝えてはならないというのが前にございますね、ですから伝える場合ですかね。  
(位田委員) 
  あらかじめ提供者に伝えてよろしいという場合と、それから研究結果が出てから後で、研究経過が出た後、やっぱり知りたくないですか知りたいですかという場合に、もう一度聞き合わせたら知りたいと言ったと。そういういずれの場合もということですので、ちょっと書き方が悪かったかもしれませんが、多分、上記いずれの場合もというのは、今委員長がおっしゃったようになくてもわかりますので、「上記いずれの場合にも」ということにかえて、「知らせる場合には」ということを書き込めば良いかと思います。そういうふうにさせていただきたいのですが、よろしゅうございますでしょうか。  
(高久委員長) 
  そうですね。 
(玉井委員) 
  何かいろいろごちゃごちゃ言ってしまって申しわけないんですが、「提供者の人命を救う趣旨で」というふうにここに書いてございますね。その後の説明の部分というのは、前回の案と比べて「説得」が「説明」という言葉に変わっているだけで、内容はそんなに変わっていないのではないかと思います。これは結局命にかかわるので、自分の遺伝子変異について知っておくほうがいいよと。知らないでいるより知ることのほうが明らかにいいよということを強く勧めるということだと思うんですが、そういうふうなことまで言えるようなことであれば、これはもう既に研究ではなくて、研究と診断のグレーゾーンでもなくて、既に診断のレベルに達しているようなものでなければ、そこまで強くは勧められないのではないかと思うんですね。その標準的な医療のレベルにもう達しているようなものでなければ、ここまで強い勧め方はおそらくできないだろうと思うんですけれども、そうであれば、この部分というのは、この原則の中にこういうふうに、しかもインフォームド・コンセントの際にこういうことを言いなさいということまで事細かに書く必要があるのだろうかというふうに思うんです。研究レベルのものであれば、ここまで強くはそもそも勧められないのではないかと思います。研究レベルのものであっても、ここまで説得に近い形での説明をされるということもあるだろうかという、むしろ何か誤解を招くことにならないかなというふうに、非常に違和感があったんですけれども、どうなんでしょうか。  
(高久委員長) 
  研究の結果、評価されるようになった場合にはと書いていますから良いのではないでしょうか、このままで。 
(位田委員) 
  これ、インフォームド・コンセントですから、実際に研究した結果が、本当にそういうことにつながるかどうかまだわかっていない段階なんだけれども、でもこういう可能性はあるよということを知らせるだけでして、そのときに、もし、じゃあ知りたいですと言ったときに、何でもかんでも情報を知らせるということではなくて、もしここに該当するような場合があれば、そこの部分を知らせるということなんだろうと思います。そこのところは、玉井先生には、まだ研究が始まっていない段階での説明と、それから研究が終わってというか、ある程度わかって結果が出た場合に説明をするという場合と少し誤解があるんじゃないかと思いますが、私は、まだ研究が始まっていない段階で、しかし、こういう可能性があるよということはできるだけ説明をしておいて、もし研究の結果、何らかの形で遺伝性の疾病につながるものがあれば、それは知らせるのが、前回、人命救助の原則という言い方がされましたので、ここでもそれを使わせていただきましたけれども、提供者の健康の維持ということには役に立つと。当然、それは研究者なり、お医者さんなりがそういう立場で常に医療をやっておられると思いますので、ここまで説明をするなというほうが実は無理じゃないかと私は思っております。  
(高久委員長) 
  松田先生、何かご意見ありますか。 
(松田理事長) 
  僕は委員じゃないんですけど、もし発言を許されるなら、病気がわかったから伝えるというのではなくて、そのときには治療または予防できる場合に限らなきゃいけないですよ。でなければ、ただ病気があって危ないですよ、危険ですよというだけではいけないと。必ずつけるときには、予防または治療がわかっていればいいということです。  
(位田委員) 
  そういうふうに書いてあります。 
(中村委員) 
  何か私に対してのコメントが家族性腫瘍研究会の有志から来ていますけれども、かなり自信を持って「提供者の意思に反しても薬剤の副作用関連の遺伝情報を伝える事態はあり得ない」と。これはとんでもない思い違いでして、今後、製薬企業を中心にいろいろな形でゲノムワイドのスニップス情報が蓄積されるわけですから、何万人単位のスニップス情報を薬剤の副作用との関連が見つかった場合には、当然その人たちにはリスクがあるということを伝えるべきであって、「研究途上の発見がいきなり標準的医療として警告義務が課せられるようなことはあり得ない」と、こういう意識だからスモンとかサリドマイドが起こるわけで、やっぱりちゃんと有用な情報があれば教えるというのが研究の趣旨であって、どういう根拠に基づいてあり得ないという自信を持ったコメントをこの委員会に寄せられているのかわからないですけれども、もう少しやっぱり研究の現状を踏まえてコメントを言っていただきたいと思いますし、やっぱり患者さんの利益になるためにこういう研究をやっているわけですから、今、位田先生がおっしゃったように説得すると、教えるということが当然あっていいと思います。本人が聞きたくないというのは、言う必要はないと思います。  
  それから、関連するので十五のことなんですけれども、位田先生の説明はちょっと誤解があると思います。本人があることがわかると、血縁者が同時にわかるかというとそうではなくて、血縁者にわかるのはリスクがわかるわけですね。本来伝えるのは、あなたはこういうリスクがありますけれども、その診断を受けますかと、その時点ではリスクがあるということはある程度言わないとしようがないわけで、全く本人に何もにおわさないで診断を受けますかということは言えないわけで、この十五は遺伝子異常か遺伝子変化があるということを伝えるのではなくて、リスクがあるということを伝える。本文を読むと、何となくそういう趣旨なんですけれども、今、説明をお伺いしていると、本人が知りたいか知りたくないかを迫るような説明をされましたけれども、本当はリスクがあるけれども、診断を受けるかどうかということを本人に尋ねるかどうかという趣旨だと思います。  
(高久委員長) 
  先ほどの松田先生のご意見で、24ページの説明のときに、目標としていた遺伝子の診断的というより臨床的意義、その下のほうも診断・治療と書いたほうが良いですね。  
(位田委員) 
  はい。それが明らかになってから伝えるという。 
(松田理事長) 
  そうでなければ伝えてはいけない。ただ単に恐怖心を与えるだけだからですね。単に病気であるケースがあるということを伝えるだけではいけない。それをしてはいけないということ。つまりpreventable   であったり、treatable でなければ伝えてはいけないというのが基本だからですね。そこははっきり言われたほうが、ここが弱いと思います。 
(位田委員) 
  私はそういうふうに書いていると思っているんですが、つまり、疾病の可能性があって、かつそれは治療・予防可能であるという場合に限って伝えると。 
(松田理事長) 
  そうです。 
(位田委員) 
  それでも嫌だと言われれば伝えないと。 
(松田理事長) 
  もちろんです。 
(高久委員長) 
  それでは十五のほうに移りたいと思います。十五の本文の2のほうで2行目の「またはその可能性があるとの判断に結びつく場合、当該疾患」、ちょっとわかりにくいので、「その可能性があると判断され、その結果が当該疾患の予防または治療が可能」というふうに直されたほうがわかりやすいと思います。言葉だけ。  
(位田委員) 
  これは二重に条件をつけておりまして、その最初の場合というのは、まず病気である可能性があるか、もう既に病気であるということ。それがまず前提で、その中でも予防・治療が可能であるという場合、それが2つ目の条件。その2つが重なったときのみ知らせるということでございます。済みません、法律用語の言い回しをいたしました。  
(高久委員長) 
  どうも失礼しました。ほかにどなたかご意見がございますか。 
(松田理事長) 
  済みません、委員じゃないんですけど。これはあれですか、血縁者に伝えることができるというふうに書いていますから、これはできるからいいんですけれども、要請がなくても伝えるんですか。我々の人類遺伝学会の考えでは、まずカウンセリングを受けたほうがいいというふうに説明するんですよね。「あなたの家族に問題があるかもしれないから、カウンセリングをするようにあなたが伝えなさい。患者さんが伝えなさい」というふうに、まずそこから始まるんですよね。それでもってその人が受けたくないと言った場合、知りたくない権利がありますから、受けたいないと言った場合は、それは無理にこちらからその血縁者には伝えないんですよね。伝えないという態度をとっているわけです、人類遺伝学会のほうは。これで見ると、問題がある場合には、いきなり血縁者のところへ行って伝えるというふうに解釈されるんですけど、それはどうなんですか。  
(位田委員) 
  倫理委員会を通して。 
(松田理事長) 
  倫理委員会を通すにしてもね。倫理委員会を通しても、それはいきなり、right not knowですから、いきなりそこに入ってはいけないと僕は思うんですけど。  
(位田委員) 
  その辺は26ページの真ん中あたりに書いていると思うのですが、血縁者のほうも知る権利と知らない権利がありますので、突然行って「提供者がこういうふうな遺伝性の要因を持っているから、あなたも持っている可能性がありますよ。だから遺伝子検査を受けなさい」ということはできないと思うんですね。まず第一のスクリーニングは倫理委員会でやるということと、それから血縁者が、私はそういうことは知りたくないというふうに判断した場合には知らせることはできないと思いますので、そのときに、今の中村委員のご意見と少し重なるんですが、中村委員のご意見は、本人が知った後で検査を受けるかどうかという話につながるんじゃないかと思うんです。その本人というのは血縁者という意味ですけど。まず最初に、研究の結果、遺伝性の疾患にかかっている可能性があって、それは治療可能であるという判断ができる場合には、そういう状況にありますよという判断を血縁者に知らせるんですが、その判断さえ血縁者は知りたくないかもしれない。  
(松田理事長) 
  それはその判断を血縁者に知らせるんですか、ほんとに。そこが僕、問題だと思うんです。つまり、例えば、私の血縁者の者がこういうものを持っていますということをいきなり僕に知らせるんですか。  
(位田委員) 
  先生は提供者本人というふうに。 
(松田理事長) 
  いや、違います。僕は血縁者です。 
(位田委員) 
  血縁者ですよね。いきなり知らせるのではなくて、血縁者が知りたいと言えば知らせる。 
(松田理事長) 
  いや、その前に、そういうことも全然情報ない人もいるわけですね。そこまで入っていけるんですか。 
(位田委員) 
  入っていけるというのはどういう意味でしょうか。だれが血縁者か調べろという趣旨ですか。 
(松田理事長) 
  そうじゃありません。僕のいとこならいとこがなったとしますね。その場合に、僕はいとこがなったということを知っていれば、僕は教えてくれと言いますね。しかし、いとこが持っていることが、それを受けたかどうか知りませんね。その人のところに「あなたのいとこがこうでしたよ。あなたは検査を受けたいと思いますか」というふうに言いに行くんですか。それは僕はできないと思います。  
(位田委員) 
  わかりました。基本的には、血縁者が「提供者本人がどうも研究のサンプルを提供したらしいけれども、私はどうなんでしょうか」と言って知りたいと言ったとき、それは現実にあり得ると思います。  
(松田理事長) 
  それは成立します。 
(位田委員) 
  多分、それはこれまでもそういうふうな、研究かどうかは別として、そのような話はできていると思います。ただ、例えば提供者がいて、隣に血縁者がいて、提供者に知らせる、もしくは知らせない。  
(松田理事長) 
  隣というのはすぐ近くにいるということですか、それともどこか、どういう意味ですか。 
(位田委員) 
  近くにいるという趣旨です。物理的にも近くにいて、話がいつもわかっているという状況です。 
(松田理事長) 
  話がわかっているわけですね。 
(位田委員) 
  その場合に、血縁者が「私にも教えてくださいね」と言ってくるまで待っているかどうかという問題については非常に難しくて、それは多分、一概に判断はできないと思いますので、そういう場合にも倫理委員会に、例えば、もし提供者が患者さんであって入院をしているというようなケースで、お母さんが一緒についていると。その場合にお母さんが結果はどうなんですかと聞きに来なければ知らせないかというと、それはそうじゃないと思うんですね。ですから、その辺は……。  
(松田理事長) 
  しかし、それは全くない解釈だと思います、今までの解釈の中では。 
(位田委員) 
  ですから、これは研究の段階ですから、現実に診断がまだ下っていませんし、遺伝子検査はまたそれから後でやっていただかないといけないので。 
(松田理事長) 
  だけどですね、そこまで、それをここで書いてしまうと、ますます実際の臨床の場合にかえって混乱すると思いますけどね。というのは、血縁者に対する情報開示という問題はずうっと、先生、ご承知のようにやられていますね。最近、イギリスでは今度拒否しましたよね。最初のうちはオーケーと言っていたのに、どんな条件があっても、個人の承諾がなければ、血縁者に情報を開示しないというふうに変わりましたよね。現在そういう態度をとっているのは、スイスもそうですよね。フランスになると、逆に変わっていますけど、そういうことをずっと見てきますと、ちょっとそこまで先生がおっしゃるところまで踏み込むと、かなり強いと思うんですけどね。  
(位田委員) 
  ただ、先生がおっしゃるケースは、どちらかというと既に遺伝子検査をやっている、もしくは診断が下っているというケースが従来は議論をされてきたと思うんですけれども、ここではまだそういう可能性の段階というか、研究の段階なので。  
(松田理事長) 
  だからかえって、先生、危ないんです。 
(位田委員) 
  だからそういう道はあり得るのではないか。具体的なことは、とてもそこまで書き切れないと私は思うんです。 
(松田理事長) 
  そこまで僕は書いてはいけないと思いますけど。 
(位田委員) 
  もしそれを書くのであれば、基本原則ではなくて、むしろ指針のほうでこういう場合にはいい、こういう場合にはいけないということを明確に基準を設定するべきかなというふうに思っています。  
(松田理事長) 
  今、僕が言った場合は、臨床の場合で実際にそういうことがあった場合ですら、それだけ問題があるのに、研究の段階でそこまで踏み込んで話を持っていくということに対してはちょっと難しい、ここでは委員ではありませんけれども、僕はそうだとは思いませんね。  
(位田委員) 
  ですから、これは倫理委員会の役割が非常に強くなると思います。それから基本原則の一番の柱は、いろいろな状況があって、それを全部ひっくるめて全部書き切ったら、これは完全にガイドラインになってしまいますので、ここでの原則は、血縁者にも知らせるんだということを書いておいて、血縁者が知りたくないと言ったときには知らせないという、この2つだけを書き込むという話です。具体的な状況でどうするかということはここには書いてありません。もし指針でそういう場合には、聞いてこなければ絶対に知らせるなという指針が出れば、別にこれに反するわけではありませんし、それは今後の話だと私は思っております。  
(高久委員長) 
  ずっと議論してきたことですが、結局は倫理委員会と指針ということでしかやりようがないのではないかということです。 
(玉井委員) 
  ただ、はっきりさせておいたほうがいいと思うのは、松田先生がおっしゃったように、この血縁者の情報開示の問題というのは、守秘義務の問題とコンフリクトを起こすわけですよね。前回はアメリカの大統領委員会のレポートしか引用しませんでしたけれども、各国のガイドライン等を調べてみますと、やはり賛否両論でして、絶対認めないというふうに最近変わったところもあります。ですから、血縁者から言ってきたときに限って開示が許容されるという立場をとるのか、それともこちらから連絡をできればとったほうがいいんだよという通告の、法的義務ではないにしても、通告する倫理的義務というか、道義的責任があるという立場をとるのか。  
  松田先生がおっしゃったのは、血縁者から言ってきたときに、つまり申し出てきたときには、提供者の同意なく情報開示するということも場合によっては例外的に許容されるということだろうと思うんですけれども、位田先生のこの文章を読みますと、通告するというか、それの道義的責任みたいなものがあるということになってしまいます。書き方がちょっと強いと思うんですね。臨床のレベルで使えるようなものであっても、これは非常にcontroversial   ですから、研究段階にあるものであれば、より慎重にならなければいけないと思いますので、書き方をちょっと、誤解のないようにもうちょっとマイルドにというか、していただくほうがいいのではないかなというふうに私は思います。  
(中村委員) 
  よろしいですか。どの疾患でどういうシチュエーションを想定するかによってかなり広がりがあると思うんですね。だから一概にこの場合だと問題が起こるけど、この場合なら大丈夫というのをこの行間の中に入れるというのは、やっぱり無理だと思う。位田先生のお気持ちもそういう形じゃないですし、一番考えないといけないのは、その個人にとってメリットがあるかメリットがないかということを最終的には倫理委員会なりが判断すると。そういう意味では倫理委員会の責任に課すみたいですけれども、これからの研究の広がりを考えていくと、何が起こるかもわからないし、本当に有用なことが見つかるかもしれないわけですから、アメリカでは、例えばMENという内分泌性の腫瘍の場合には10歳ぐらいで発症して手おくれになるわけですね。その場合には、もう踏み越えて告知する責任が医師に課せられている州もあるわけです。これは家系調査をして、遺伝的なリスクがあれば言わないといけないということになっていますし、そういう細かい事例を言うと切りがないですけれども、やっぱりこういう余地は残しておいていいと思いますけども。  
  ただ、その場合にだれがどういう判断するかというのは、必ずこういういろいろな揺り動きがあると思いますけれども、絶対してはいけないというのもやっぱり患者さんの利益にならないこともあり得るわけで、そこはあまり厳格にある疾患を想定して規定してしまうと、結局、逆に患者さんの利益にならないということもあり得ますので、個別の例をどこで判定していくかというのは非常に難しいと思うんですね。だから本当は学会なりがそれぞれの疾患の状況に応じていろいろな指針をつくっていくべきだと思うんですけれども、この場合でAからZまで全部含めるというのは多分無理だと思います。  
(松田理事長) 
  先ほど位田先生がおっしゃったような2点に限って書くんだと。あとのほうの部分というのは、例外的に確かに中村先生のお話もあるんですね。だから例外的にあり得るんだということを指針の中に書くということが一番いいと思います。だから2点だけにがっちり絞っていただいて、あとはいろいろなvariability   があるんだというふうに皆さんが理解すれば、解決できるだろうと思います。 
(位田委員) 
  私は完全に一晩考え抜きましたけれども、全部は書き込めない。要するに書き込むのは何かというと、先ほど申し上げた2つだけで、そういう趣旨で書いているつもりでございます。  
(高久委員長) 
  この点に関してはコメントがたくさんあって、位田先生は非常に苦労された。結局こういう表現になったのだと思います。 
  どうぞ。 
(小幡委員) 
  私は、個人的には第十五も1だけでいいのではないかというふうには思っておりますが、26ページのところの「なお」というところの段落の一番最後のところには明確に、要するに「血縁者が判断を知りたくないという意思を表明している場合には知らせてはならない」というふうに、そこはなっているわけですね。ですから、それに比べますと本文のほうの十五の2項のほうがもっと強い感じがするんですね。「伝えられることができる」というのは、今、中村委員がおっしゃったように、お子さんの場合というと、なかなか意思確認が難しいことはありますが、そうでない場合を考えると、それは血縁者の意思は尊重されるべきではないかと。伝えられることができると書きますと、やや表現として強すぎるのではないかという気が致しますが。  
(位田委員) 
  十四と十五を比べると、十四で提供者に知らせるのは遺伝情報ですが、十五のほうは遺伝情報ではなくて、あなたは病気にかかっている可能性がありますと。その場合に……。  
(松田理事長) 
  かかるです、かかる危険性。リスク。 
(位田委員) 
  要するにリスクということです。私はあまり医学的な表現に慣れていないものですから申しわけないですが、そういうリスクがあるということと、それからそのリスクは回避できる。preventable   、もしくは治療できる可能性があるという、その判断だけでして、その人がどういう遺伝情報を持っているかというのは、そこから先の話ですから、それについては血縁者の知らない権利を書き込んだほうがいいと言われると、確かにそうですけど、それは今度は逆に血縁者本人の知る権利、知らない権利のフェーズに入ってくると思います。ここは提供者との関連で血縁者はこういう地位にあるということを書いていますので、原則本文にはそこまで書く必要はないのではないか。そこのところは解説を読んでいただければ、判断を知らせてはならないという書き方をして、わかっていただけるんじゃないかというふうに思いますが。  
(高久委員長) 
  伝えられることができるという表現が強いか弱いかは、各個人の感覚の問題もあると思います。 
(玉井委員) 
  ただ、解説をあわせて読むと、やっぱりこの通告する道義的責任、あるいは倫理的義務があるというふうに、どうもそういう印象がしてしまうんですけれども。  
(位田委員) 
  ただ、それじゃできるという以外にどういうふうに書くかという問題がございまして、例えば倫理委員会で検討する必要があると。 
(玉井委員) 
  解説のところの表現をちょっとマイルドにしていただけるといいのかなというふうに。 
(位田委員) 
  どのあたりでしょうか。どのあたりがきつ過ぎるというか、そこのところを。 
(玉井委員) 
  「後者を優先させることが望ましい」とかですね。 
(位田委員) 
  要するに血縁者の健康への権利と提供者の知らせたくない権利が衝突するということですね。 
(玉井委員) 
  さっきも松田先生がおっしゃったように、申し出てきたときの情報開示しても、許容されるというレベルだと実際には思うので、望ましいとかいう表現が。 
(位田委員) 
  ただ、そこはわかりますけど、提供者は知らせたくないと言ってきているときに、血縁者が知りたいと言ったら、そのときには当然、提供者の知らせたくない権利と血縁者の知りたい権利がぶつかります。血縁者の健康への権利とぶつかった時、もしその提供者の知らせたくない権利というのが優先するとすれば、いくら知りたいと言ってきても知らせられないということになりますから、それはやはり困るだろうと思います。むしろどちらが血縁者本人の利益になるかということだと思うんですね。提供者については、知りたくない知りたいというので、そこは判断がついていますから、あとは血縁者にとって何がプラスであるか。先ほど中村委員がそういう趣旨のことをおっしゃいましたけど、そこの判断をすれば、やはり血縁者の健康への権利のほうが優先されるべきだろうというふうに私は考えました。この委員会でこれはだめだから削れとおっしゃるならば、また話は別ですが。  
(松田理事長) 
  済みません、僕は、位田先生の話す、それに関してそのとおりだと思います。というのは、ちょうどここに持ってきましたけど、principle of american   basicsという、きょう言うつもりはなかったんですけど、これによりますと、個人のオートノミーと、害を予防するとか、それから最善のものを与えるというのがコンフリクトした場合には、オートノミーよりも、むしろそちらのほうが害を除くとか、最善を与えるということのほうがむしろ優先するというふうに言われていますし、それからまた、パブリックの場合には、むしろ個人のオートノミーよりも、ジャスティスのほうが優先されるというふうにプリンシプルはなっていますので、それを考えると、基本的には先生の言うとおりだと思います。ただ、先ほど言ったような僕の懸念がこの中に出てきたので、それで私は言わせてもらいましたけど。  
(高久委員長) 
  どうもありがとうございました。 
  まだいろいろ議論があると思いますので、先のほうに少し進ませていただきます。十九の28ページですが、これは私の個人的意見ですが、ここで遺伝カウンセリングのことを説明をする必要はないのではないか。遺伝カウンセリングのことについては別に説明がありますから、必要に応じて遺伝カウンセリングをはじめ適切な対応措置が必要になります。だけで十分で、遺伝カウンセリング云々は、ここで説明する必要があるのかなと思います。この説明文自身もちょっとわかりにくい。  
(位田委員) 
  用語解説のドラフティングと解説のドラフティングが時間的に少しずれたところがありまして、用語解説の最初の案はこういう形ではなかったと思うんですが、こういうふうに書いておいたほうがはっきりしていいかと思ってこういう書き方をいたしました。ただ、ここに書いてあることは、確かに用語解説にも書いてありますので、もし削ったほうがいいというご判断であれば削りますし、そうでなければということですが。  
(玉井委員) 
  私は、個人的には遺伝カウンセリングに対する認識がまだ成熟していない段階にあると思いますので、やはり解説を読んだ段階で、遺伝カウンセリングというのは本来診療行為であるというようなことがわかるほうがいいのではないかと思って、ぜひこれを入れてくださいというふうに強く主張した側なんですけれども、ほかの先生方の判断で、なくてもよろしいというのであれば、確かに重複はしていると思いますので、ご意見は伺ってみたいと思いますが。  
(中村委員) 
  これ、原理原則を書いているものですから、用語解説的なあまり細かいことを中に入れる必要はないと思いますけれども。これだと指針のもう一つ指針のような形でどんどん細かくなっていってしまうので、ちゃんと後に遺伝カウンセリングという用語解説があるわけですから、ここでこれを書いているなら用語解説を外せばいいわけですし、二度出てくる必要はないと思います。  
(高久委員長) 
  ほかに。 
(位田委員) 
  削るんでしょうか、削らないんでしょうか。 
(小幡委員) 
  完全にはダブっていないんじゃないですか。遺伝カウンセリングについての解説で、用語説明だけでない部分もありますよね。用語のところでインフォームド・コンセント手続の中の説明行為の一部ではないとと書いてありますが、むしろ利用するべきものではないと解説には書いてあるので。  
(高久委員長) 
  解説をもう少し十分に書けば良いと思います。私はずっと読んできて、「遺伝カウンセリングはインフォームド・コンセント手続としての説明の一部として利用するべきものではない」、ここまで全部書く必要があるのかなという事を感じたものですから。もちろん、重複しても構わないのですが、書き始めると、全部書かなければならなくなる。  
(松田理事長) 
  両方ともはっきり言うと舌足らずなんですよね、一言で言えば、その遺伝カウンセリングというものに関する説明がですね。だからこれを分けていることによって、かえってむしろ弱くなっているような気がするので、前の書いていることをすべて後ろに書いているわけではないし、後ろに書いてあることすべてが前に書いているわけじゃありませんよね。だから、むしろ分けて書いていてお互い不満足よりも、一緒にして、後ろのほうの用語解説をもうちょっと充実していただいて、そして一つにしたほうがいいんじゃないでしょうか。何か両方に分かれているために、かえって一部分、象で言えば、鼻と足をとらえて、しっぽと頭をとらえたという形の、ちょっと何か両方読まないと遺伝カウンセリングというのがフィードアウトしてこないという、そういう恨みがあるように思いますけど。  
(位田委員) 
  用語解説にどこまで書いて、もしくは何を書いて、それから解説に何を書くかというのは、私の心は千々に乱れさせられておりまして、なかなか判断が難しいんですが、どちらかの方針を示していただければ、私はそれに従って書きかえます。  
(松田理事長) 
  玉井先生、両方とも重複していますか。 
(玉井委員) 
  遺伝カウンセリングの用語解説のところ、何しろ短くせいというようなことでしたので、そこを非常にコンパクトにまとめて、それで先ほど申し上げたことの繰り返しですけど、遺伝カウンセリングとは何ぞやということをまだ十分にわかっている人ばかりではないと思ったので、本来診療行為であるということだけは本文中にも入れていただけるとと思ったわけです。要するに研究したら、必ず遺伝カウンセリングというわけではないわけですよね。だから遺伝カウンセリングが必要ない場合もあるわけで、その診断的つまり臨床的な意義がある場合には必要だけどというニュアンスが伝わるような解説にしてほしいというのが私の意見の趣旨でした。用語集のほうをもうちょっと長く充実させてもよいのであれば、解説のほうには本来診療行為であるということと、それから診断的要素が含まれる研究の場合に限ってそれが必要とされるんだということを簡単に書いていただければ、それは私が最初から申し上げていることで、それでいいのではないかと思いますが。そうすると、遺伝カウンセリングの解説をまた大幅に書き直さなきゃいけなくなるんでしょうか。大幅に書き直すことはないですね。書き足せばいいですね。  
(高久委員長) 
  書き足していただければと思います。位田先生、玉井委員とよくご相談してご満足のいくような解説を。 
(位田委員) 
  そこの解説のほうのつけ加えた部分のすぐ上に、「必要に応じて遺伝カウンセリングをはじめ適切な対応措置が必要である」と書いてありますので、これで必ず遺伝カウンセリングが要るんだという趣旨にはなりませんから、この下の部分は、もし用語解説に入れるとすれば、削ることはできるかと思います。  
  それから、用語解説には既にここに書いてある趣旨は大体入っていると思います。というのは、用語解説の遺伝カウンセリングのほうの下から3行目に、ここではヒトゲノム研究の結果が診断的側面を持ち得る場合に提供されるものという限定がついていますし、それからインフォームド・コンセント手続の中の説明行為の一部ではないということも書いてあります。抜けているのは、本来診療行為だという、その一言が抜けておりますので、これを例えば、そこの下から3行目の頭のほうですが、支援する診療行為という書き方であればはっきりするかなという気はいたしますが。  
(高久委員長) 
  予定している時間に大分近づきましたが、ほかに、ぜひご意見を言われたいという項目がありましたら、どうぞ遠慮なく。 
  もしご意見がないようでしたら、一応この基本原則については審議を経らしていただいて、この原則を科学技術会議の生命倫理委員会に報告をすることになると思います。本日いろいろご議論をいただきまして、一部修正するところが出てきましたが、本日の議論による修正については、位田委員と私のほうにお任せ願えればと思います。よろしくお願いします。  
  次に、議題の2について、きょうはわざわざ松田先生に熊本からいらしていただいています。テーマは「企業・医療施設による遺伝子検査と日本人類遺伝学会のガイドラインとの関係」ということで、幾つか資料もお持ちになってきていただいています。松田先生、よろしく。  
(松田理事長) 
  では、資料に沿ってご説明いたします。 
  私にきょう課せられた課題は、過日、企業・医療施設による遺伝子検査に関する見解というのを日本人類遺伝学会、日本臨床遺伝学会、日本遺伝子診療学会、家族性腫瘍研究会、日本小児遺伝学会、日本先天代謝異常学会などの6つの学会がまとめて見解を出したわけです。なぜそういう見解を出すに至ったかという、そういう説明と、その見解の内容と、きょうは人類遺伝学会の立場で来ていますので、人類遺伝学会での遺伝学的検査に関するガイドラインというのがありますので、その両者の関係をご説明したいと思います。  
  皆さんのお手元にこのようなもう1枚、「がん、糖尿病も予測可能」「遺伝子検査が可能にしたより深い予防医学!!」というような大変センセーショナルなパンフレットがあると思いますけれども、これを実は私どもは、人類遺伝学会では遺伝学的検査に関するガイドラインというのをつくってあったんですけれども、突然こういうのがタクシーの背中のところに入り込んでいるという、京都、それから東京あたりではこれがばらまかれているということが、私は熊本にいるので知らないんですけれども、京都、それから大阪の先生たちから送られてまいりまして、このようなことが行われているけれども、人類遺伝学会では一体どういう対応をするんだというふうに迫られたわけです。  
  それで見てみますというと大変なことに、これは一部分ですが、ほかにまだ同じような会社があるということ。それからいきなり患者さんといいますか、いきなり一般の人が自分の口腔内の粘膜をこすったのを送ると、そういう遺伝子検査をやるということを言っている会社が出てきたということ。もちろん、これは遺伝カウンセリングも何もなしにやるわけですね。それから遺伝カウンセリングをやると言っている医療機関もないわけではないけれども、それを詳細に調べると、どうも人類遺伝学会の会員であったり、それから日本臨床遺伝学会の会員であったり、それから家族性腫瘍の会員の方たちではなくて、少なくともそういうことに対して習熟しているとは思えないという方たちが中に介在しているということがわかりました。  
  それで、これは大きな問題であるということで、実際にアメリカでもいろいろ起きているわけですけれども、それではいけないということで私たちはこの見解を出したわけです。遺伝学検査に関するガイドラインというところは、見ていただきますと、これは5ページですが、5ページのところに「今回、日本人類遺伝学会倫理審議委員会は遺伝学的検査についてのガイドラインを制定したが、このガイドラインの遵守を期待できる範囲は、基本的には、日本人類遺伝学会会員内に止まっており、このガイドラインからみて非倫理的、非社会的、または不適切と思われる行為があっても、それが会員以外の者によるものであるならば、これを規制する根拠にはなり得ない。今後、関係諸学会と議論する所存であるが、国として遺伝学的検査に関して、何らかの方針を立てることを強く要望するものである」というふうなことが書いてあります。そこに参照資料5というのがあります。この参照資料5というのが、皆様方のお手元にお届けしてある「アメリカにおける安全且つ有効な遺伝学的検査の施行に関する見解−特別調査委員会による最終レポート−」というのがそうであります。  
  これの中を見てもらいますと、2ページ目に黒い活字がありますが、その上のほうです。そこに書いていますが、ちょっと読んでみますと、遺伝学的検査の定義です。genetic   testing の定義ですけれども、これはここに書いてあるように、遺伝子型、変異、表現型、臨床目的のための染色体の検査、それからヒトのDNA、RNA、タンパク質、代謝産物、そういった遺伝子だけではなくて、すべての遺伝学的検査、genetic   testing を含んでいると。ただし、純粋に研究目的で行われる検査はこの定義から除外される。これは我々も全く同じ意見です。同じく遺伝が関与しない体細胞変異ですね、somatic   mutation、これについての検査及び法医学的に関与する検査も除外するということで、純粋にinherited の疾患について、がんのように組織でのsomatic   mutationとかじゃなくて、inherited ドリーについて検査をするというのをgenetic testing というふうに定義しているわけですけれども、その定義に基づいて、ここに書いているようなあやふやな会社が出てきて、あやふやな検査をやるということに対して我々は非常に危惧しているという見解を出したという次第です。  
  もう一つ、去年ですが、サイエンスのエディトリアルが手元にいっていると思いますが、これはボルチモアの Johns HopkinsのNeil A.Holtzman   が書いた文章ですが、このHoltzmanが実はアメリカの先ほど紹介しました、安全かつ有効な検査施設に関する最終レポートというものを3年ぐらいかかってまとめた本人ですが、このNeil   A.Holtzman が「Are Genetic Tests Adequately Regulated? 」、アメリカでも問題になっているんですけれども、やっているだろうかというふうに書いてあって、そこにgenohype、これは合成語ですけれども、hypeというのはいいかげんということですね。だから遺伝子でもっていいかげんな診断をしているという、アメリカでは、ちゃんとやられていないじゃないかということをエディトリアルで一生懸命書いているわけです。ここに書いているように、真ん中の段落ですが、educational   mateyials prepared by companies 、カンパニーでもって患者向けにいろいろなことを書いているけれども、それが既にgenohypeであると。それが既に遺伝子のあやふやな検査であるというふうに書いています。  
  そういった意味でもって、私たちはこの見解を発表したというのが現状です。両者の関係の説明は終わります。 
  以上です。 
(高久委員長) 
  どうもありがとうございました。 
  これについて何かご質問、ご意見おありでしょうか。 
(中村委員) 
  この新聞記事を書いた記者もきょう来られていますし、この新聞記事の後半に実は拡大すると、私のコメントも本当は載っているんです。これを見てびっくりしたんですけれども。これは前から位田先生とも論議したことがあるんですけれども、ガイドラインとか倫理指針という形ではマネージできないレベルまで来ていると思います。やっぱり法的規制がない限り、全然法律的には批判していないわけであって、そういうものを考えていかないといけないということは、二、三年前から位田先生と話のたびに出ているんですけれども。現場にどんどんこういうものが入ってきて、一般の方はわからないままに診断を受けて、これはほとんど前から言っていますように、リスクファクターで、病気のリスクは1.何倍になるとか、そのレベルで、ほとんど診断的意味を持っていないわけですけれども、マスコミがこういう形でおもしろおかしく取り上げるし、お昼のワイドショーにも最近は出てくるような形なんですね。  
  けさテレビを見ていると、お酒に弱い人はアルツハイマーの危険が1.6倍になる。そういうレベルの話と非常に重い遺伝的なリスクというか、危険因子がごちゃごちゃになってしまって、結局こういうわけのわからないことが起こっているわけです。抗P53抗体でがんのリスクがわかるとか、医学的に考えてもとんでもないことが行われていると。これは、この委員会のミッションを離れて法的な形で、何らかの形で対応していかない限り、こういうことによってどんどん不幸は生まれてくるというふうに思います。  
(高久委員長) 
  松田先生、会社の名前が書いてないですね。どこかに入っているのですか。 
(松田理事長) 
  僕たちの委員会の意見は、特定の会社を名指しして、その会社がいいとか悪いとかということはやめようと。 
(高久委員長) 
  ただ、ここに入ってはいるのですね。 
(松田理事長) 
  入っています。入っているけど、意識的に消してあります。 
(高久委員長) 
  これは難しい問題ですが、広告の自由になるのですかね? 
(松田理事長) 
  誇大広告になると思います。 
(高久委員長) 
  誇大広告ですね。誇大広告というと、健康食品とかで、我々が見ると明らかに誇大広告のものがいっぱいありますね。 
(松田理事長) 
  そうですね。ただ、問題なのは危険性があるということです。例えば、BRCA1にしても、アメリカでやっているのは非常に検査会社の中でしっかりしている検査会社だし、何でも受けるのではなくて、条件を決めて受けています。例えば除外条件とか、それを認める条件とかというのをつくって、その条件に合わなければ検査会社は受けないということもやっているわけです。  
  それから、それこそgenohypeにひっかかると、結局、あなたはがんになる可能性がありますなんていうふうに言われて、非常に精神的に落ち込んだり、ディプレッションになったり、自殺したりと、そういうかなり危険だと思います。  
(高久委員長) 
  足裏診断と似たようなものですね、これね。 
(松田理事長) 
  オフレコで言わせてもらえば、私も同感です。 
(高久委員長) 
  どうぞ。 
(玉井委員) 
  営業をその後停止したというようなことはないのでしょうか。バックについていたわりと大きな会社はちょっと引いたといううわさも聞いたりはしたんですけれども、その後の動きはどうなんでしょうか。  
(松田理事長) 
  出たり入ったりしていると思います。だから、名前を変えてみたり、いろいろやっている。実際に実害はないんですね。ないと思います。だけども、今のうちに何とかしないと、これは大変なことになるというのが実感です。  
(玉井委員) 
  実害はないんでしょうか。ほんとに。当院には、アポEを調べられてしまってアルツハイマーになるというふうにいきなり言われてしまったというようなちょっと信じがたい相談が最近飛び込んできたりしましたので、これなんかもそういう、本当だったらそんな目に遭わなくて済むような方たちに対する実害のレベルでいろいろ起きるのではないかというふうに思うんですけれども。  
(松田理事長) 
  これを見てもわかりますけれども、アルツハイマーのアポEの場合のリスクファクターは20から29%ですね。だからきわめて実際的じゃないデータです。  
(高久委員長) 
  お金も6万円取っていますし、非常に問題がたくさんあるということにはだれも異論はないと思います。それではどうするのだということが一番問題になる。こういうものに対して法的な規制ができるのか、法的までいかなくても、何か規制ができるのかという事、あるいは厚生省のほうの領域になるのかわかりませんが、私にもわかりませんが。  
(松田理事長) 
  私たちが提案しているのは、確かにこの会を開いたときに、プレスの方から「じゃあ将来どうするつもりだ」というふうに聞かれたんですけれども、我々とすれば、会社が問題なのではなくて、医療側が実際大きな問題なんですね。だからまず第一に、会社が直接患者さんからそういうものを受けると、一般が受けるということは、まずそれはしないで欲しいということ。それから医療側はみんなでもって考えて、必ずこういう経過でやるんだということを決めていただいて、会社側それに違反した医療側から来たサンプルは受け付けないというところまで言っていただきたいと。そのためには医療側と会社側が、Holtzmanでも書いていますけれども、協議会を持って話し合う場を持つべきだと。検査会社と医療側と一般の消費者といいますかね、それが一緒にディスカッションする場を持つべきだというふうに提案していますけれども。  
(中村委員) 
  でもここの例えば項目を見ると、医療側がするとかしないとかいう以前の問題であって、診断的意味がないわけですから、要するにやっている人は、医療側で受けている人はお金もうけでやっているだけの話であって、医の倫理の問題になってくるわけで、それはやっぱり全国の医者にこういう網をかけられるかってかけられないわけですから。位田先生がずっと主張しているように、これはやっぱり法的な規制を早くしない限り、こういうのは防げないと思いますけど。  
(松田理事長) 
  それを受けるかどうですね。 
(中村委員) 
  これはやっぱり検査会社と医療機関の問題じゃなくて、こういう形で正しい事実を伝えていないという報道側にももちろん問題があると思いますけれども、だから非常にセンセーショナルな取り上げ方をしてうまく利用されているわけであって、やっぱりまだこのレベルの遺伝子診断というのは患者さんにほとんどメリットがないということはちゃんと伝える責任があると思います。  
(寺田委員) 
  ガイドラインとか行政指導とか、そういうのでは罰にならないわけですか。要するに法律にしなくちゃだめですね。 
(小幡委員) 
  今の状況では、やはりありませんので、自主規制しかなく、それを担保するものはないわけです。法律でいけるかと聞かれれば、むしろ適切な法律を制定すれば勿論規制することはできますから、要するに本当に必要であれば、やはり法律はつくらなければいけないのです。それは届け出にせよ、承認にせよ、そのほかにもいろいろなやり方がありますが、要するに不適切なことをやっていないかということを何らかの形で規制していくということは、法律をつくれば可能ですが、これをガイドラインとか行政指導でやろうというのは、今は無理です。必要があれば、法律にすべきでしょう。  
(高久委員長) 
  ただ、弁明をしようと思えば、文献を持ってきて、ネイチャーサイエンスに載っているじゃないか、だから何が悪いんだ、そういう議論を必ず言ってくると思います。法律で罰しようとすると、個々のケースのときですね。だから現実にはなかなか難しいと思います。少なくとも医療サイドのほうはこういうことの仲介は絶対にしないようにということを徹底する、日本医師会の方達とも一緒に。  
(松田理事長) 
  現在はですね。 
(高久委員長) 
  現在のところはそれが一番身近というか、早い方法だと思います。裁判したとき勝てないような気がするのですが。 
(位田委員) 
  私はあまり法律的な規制の少ない国際法が専門なものですから、どんどん、どんどんルールをつくったほうがいいという立場ですが、ただ、どういうふうにして規制するかというと容易ではない。法律をつくるにしても、つくればできますけど、つくるときに、研究を害しないように、かつ医療も進めて、しかしこうした例を防ぐというのは、法律の書き方は非常に難しいんじゃないかという気はします。むしろ、こういうことをやってはいけないというよりも、例えば医療機関にのみ遺伝子検査は可能にするとか、そういう制度的なことをやらないとちょっと難しいんじゃないかと。誇大広告と言われると、これは何が誇大かというのは非常に難しい判断でしょうから、その辺は難しいと思うんですけど。  
  私は、だめなところはきちっと法律をつくって、法律をつくれば、やっていいことと悪いことがはっきりしますから、きちっと法律をつくって、いいことと悪いこととはっきりさせたほうがいいという立場ですけど。ただ、ここで一言言わせていただくと、科学者の方はしばしば法律を毛嫌いされますので、その辺は、法律なんかつくってもらったら困るというのがしばしば言われることです。私は、法律というのは常に「規制」をするばかりじゃなくて、法律というのは「規律」をすると言っています。「規律」をするというのは、いいことはどんどんやってください。法律は禁止しません。だけど、ここから先はだめですよということを法律がはっきりさせるということです。そこにひっかからなければ、科学研究は自由ですからどんどんやっていただきたい。その辺で科学者の方にも法律に関する認識を改めていただきたいというのを声を高くして申し上げたいと思います。  
(高久委員長) 
  ほかに何か。この問題は議論を始めると、切りがない点もあると思いますが、いろいろな場でこの問題はぜひ考えておく必要があると思います。医師会のほうでも近くこういう問題を取り上げるようですから、医師会員に対しては、警告を出すことはできると思います。検査をするのは位田先生、医療機関じゃなくて検査機関なのです。  
  それで次に、基本原則にのっとる一般的な指針について皆さん方にご了承いただきたいと思います。この会議でも今まで何回か出てまいりましたが、ご案内のように厚生省からミレニアムプロジェクトの中のゲノム研究に関しては指針が出ているわけです。この指針は一応ミレニアムプロジェクトに限っているものですから、もっと幅の広いゲノム研究を対象にした指針をつくる必要があるということについては多くの方の同意が得られています。  
  したがいまして、そのような指針は厚生省だけではなくて、文部省、科技庁など関係する省庁で合同して指針をつくる必要がある。その基本になるのは、おそらく厚生省がつくったミレニアムプロジェクトの中のゲノムの研究についての指針ですが、それをもとにして各省庁が合意した一般的な指針と表現していますが、そういう指針をつくるための委員会がつくられることになると思います。その研究班でできた一般的な指針の案につきまして、またこのゲノム小委員会でご議論いただいて、それを又委員会のほうに戻すという形をとり、更に科技庁の生命倫理委員会で審議をしてということで、ゲノム研究に関する一般的な指針がつくられるようになると思いますので、その過程でまた小委員会の皆さん方にいろいろとご議論をお願いしたい、そう考えていますので、よろしくお願いします。  
  この基本原則の今後の取り扱いについて、これは事務局のほうから説明していただけますか。 
(小田ライフサイエンス課長) 
  まず、この基本原則のこれからの取り扱いでございますが、小委員会としての最終的な案文につきましては、位田先生からのコメントを得て高久委員長あずかりということでございますが、来週の14日に予定されております生命倫理委員会、ここで前回中間的にご報告いただいて必要な議論をしていただいておりますが、14日に内容につきまして、更にご審議していただく予定になっております。  
  また、委員長からご説明がありましたように、この基本原則の中の特に第2章のインフォームド・コンセント、あるいは提供者の権利など具体的な詳細な事項につきましては、国の共通の一般的な指針をつくるということが指摘されています。これにつきましては、おそらく生命倫理委員会、親委員会での指示を受けて、このヒトゲノム研究小委員会で、まことに申しわけありませんが、より具体的な指針の審議をお願いすることになるかと思います。これは生命倫理委員会の判断でございます。  
  それからこの取り扱いでございますが、我々が考えてございますのは、生命倫理委員会でご決定いただいた段階で、これを各省庁を通じて周知徹底をしていただくよう、そういった考えでございます。  
  以上でございます。 
(高久委員長) 
  どうもありがとうございました。 
  一応予定は8時までになっていますが、ぜひこの場で何かおっしゃりたいという方がおありでしたら。 
  きょうは遅くから始めさせていただきまして、どうもありがとうございました。特に遠方から来られた先生方、それから松田先生は熊本からいらしていただいて、どうもありがとうございました。  
   
──  了  ──