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科学技術会議生命倫理委員会
ヒトゲノム研究小委員会(第4回)議事録

   
1.日時    平成12年5月17日(水)    18:38〜20:33 
   
2.場所    科学技術庁第1・2会議室 
   
3.出席者 
    (委  員) 高久委員長、位田委員、奥田委員、小幡委員、五條堀委員、玉井委員、 
                 寺田委員、豊島委員、中村委員、眞崎委員、町野委員 
    (事務局)科学技術庁  小中審議官、小田ライフサイエンス課長  他 
   
4.課題 
    (1)ヒトゲノム研究に関する基本原則について 
    (2)その他 
   
5.配付資料 
    資料4−1    科学技術会議生命倫理委員会ヒトゲノム研究小委員会(第2回)議事録 
    資料4−2    科学技術会議生命倫理委員会ヒトゲノム研究小委員会(第3回)議事録 
    資料4−3    第9回生命倫理委員会概要 
    資料4−4    ヒトゲノム研究に関する基本原則(案)(意見公募版) 
    資料4−5    意見公募取りまとめ結果 
    資料4−6    意見公募に寄せられた全意見 
    資料4−7    項目別集計表 
    資料4−8    意見公募に寄せられた主な意見と対応案 
    資料4−9    遺伝子解析研究に付随する倫理問題に対するための指針(案)(厚生省) 
    資料4−10  遺伝子解析研究に係る倫理問題について(意見まとめ・案)(文部省) 
   
6.議事 
   
(高久委員長) 
  皆さん、そろそろ食事のほうもお済みのようですので、今から第4回のヒトゲノム研究小委員会を開かさせていただきます。 
  ご多忙の中、特に、夕方からの時間に開催を予定いたしましたところ、ご出席いただきましてどうもありがとうございました。 
  事務局のほうから最初に配付資料の確認をよろしくお願いします。 
(小田ライフサイエンス課長) 
  それでは、まず、お手元のきょうの議事次第の1枚紙に加えまして、資料番号4−1と4−2にが前々回と前回、第2回、第3回の議事録でございます。 
  資料の4−3が第9回の生命倫理委員会、先月の19日に行いました生命倫理委員会の当ゲノムの基本原則についての審議の概要でございます。 
  資料の4−4が、4月10日という時点でまとめさせていただきまして、公募にかけてございますヒトゲノム研究に関する基本原則の(案)でございます。 
  それから、資料の4−5以降がその意見公募の取りまとめについてのものでございますが、資料の4−5が「取りまとめ結果」、4−6が「意見公募に寄せられた全意見」、全95件が2つのものに分冊になってございますが、「つづき」というものであります。  
  資料の4−7がパブリック・コメントの「項目別集計表」、少し横長になっているものでございます。 
  資料の4−8が「意見公募に寄せられた主な意見と対応案」というものでございます。 
  資料の4−9が厚生科学審議会の取りまとめました「遺伝子解析研究に付随する倫理問題等に対応するための指針(案)」でございます。 
  資料の4−10が学術審議会のバイオサイエンス部会が取りまとめました「遺伝子解析研究に係る倫理問題について(意見のまとめ・案)」でございます。 
  それから、後ほどお手元にお配りいたしました資料が資料番号を振ってございませんが、玉井委員作成資料ということで、「論点の整理:原則第十四条第2項について」という3枚紙のものが後ほどお配りしたと思います。  
  以上でございます。 
(高久委員長) 
  どうもありがとうございました。皆様方のお手元に資料が届いていると思います。 
  次に資料の4−1と4−2の議事録ですが、既に皆様方にはごらんになっていただいていると思います。さらに訂正するところがありましたら、事務局のほうに後ほどお申し出いただきたいと思います。  
  本日は議題が1つでして、「ヒトゲノム研究に関する基本原則について」ということで、この案についての公募意見の結果を報告していただきまして、これは事務局のほうでしていただきますが、その後、位田委員のほうから公募意見に従ってどのように修正するかということについてご意見をお伺いしたいと思います。  
  更に、この基本原則を、公募の内容を反映してどのように変更するかについてご意見をいただいた上で、5月31日に予定しています次回の第5回の委員会で本日の審議の結果を反映した修正案をまたご審議願いたいと思います。よろしくお願いいたします。  
  次に、お手元の資料の4−3になると思いますが、4月19日に開かれました第9回生命倫理委員会で、この案についてご議論をいただきました。事務局のほうから生命倫理委員会でのご意見についての説明をよろしくお願いします。  
(小田ライフサイエンス課長) 
  それでは、資料の4−3に書いてございますように、午後2時から行われたわけでございますが、議題が2つあった関係上、最初の1時間ちょっとにこの件につきまして議論してございます。  
  意見の概要ということで、全体としては、ここに書いてございますようなものがあったのでございますが、そのうちの○2つ目ぐらいのところが、主に島薗委員からのご質問で、例えば、片仮名の「ヒト」、漢字の「人」、漢字の「人間」といったようなものの使われ方についての質疑、それから、表現などの点について少し誤解を招くような、こういった「代諾者」とか「倫理委員会」、あるいは「個人の生命」とか、そういったものに対する「未来」といったようなときの、そういう使い方などについて、それから教育の普及といったものにつきましての質疑がございました。  
  全体の中の3点目のところにつきましては、この紙に書いてございますような、「素人の疑問を納得させるような」という、曾野委員からのそういった質問、疑問点ですか、そういったようなことについてもご意見がございました。  
  基本的な考え方という点につきましては、主なものは2点ほどございますが、「科学研究の自由は基本的人権の中核である」といったようなことについての質疑がございました。それから、さらに、成果というものにつきましての認識につきましてどう考えるかといった点につきましても、真摯な議論が行われてございます。  
  それから、その具体的な中身につきましては、特に、「第二」と「第五」につきまして議論、特に「第二」に議論が集中してございます。ここに書いてございますような、「第二」につきましては、8点ほどにまとめさせていただいてございます。ここら辺につきましては、かなり質問があったのでございますが、それに対して、主に位田委員のほうからお答えになってございますが、議事録につきましては現在取りまとめ中でございますが、具体的なやりとりにつきまして、またその議事録を見ていただけると思いますが、主に、こういった点につきましての、題につきましての議論が行われてございます。内容につきましては、ここに書いてあるようなことでございますが、内容につきましては省略させてございます。むしろ意見公募でも、同様な意見がほぼ出てございますので、意見公募のところで見ていただきたいと思っています。  
  以上でございます。 
(高久委員長) 
  どうもありがとうございました。 
  今報告のあった第9回生命倫理委員会の概要についてどなたかご質問はおありでしょうか。特にないようでしたら、後の公募意見のときのディスカッションの中でご議論していただければと思います。  
  先ほど申し上げましたように、案に対する意見の公募をいたしました。5月9日まで行われていますが、この資料にありますように、非常に多数の個人並びに団体からご意見をいただきました。事務局のほうから、その内容について簡単に説明をよろしくお願いします。  
(事務局) 
  ご説明させていただきます。 
  まず資料4−4の「ヒトゲノム研究に関する基本原則(案)」を意見公募の対象としまして、出しております。 
  資料4−5ですが、意見公募の取りまとめの結果としまして、トータルで95件の意見をお寄せいただいております。公募期間が4月11日から5月9日でして、対象としましては、学術団体、社会団体、地方公共団体、これにつきましては、基本原則(案)を送りまして、ご意見を求めました。学術団体は336団体、社会団体は69団体、地方公共団体は47都道府県及び12の政令指定都市にすべてお送りしました。  
  一般に関しましては、科学技術庁のホームページを通じて、基本原則(案)を公開しまして、プレスにも発表しております。また、この中で、基本原則(案)の入手希望がございましたので、42件お送りしております。結果としましては、95件の意見が寄せられましたが、ここに書いてございますように、かなり一般の方のご意見が多うございます。  
  次のページからグラフであらわしておりますけれども、年齢別に見ますと、20から60代ぐらいが大勢を占めて、男性がかなり多うございます。 
  次のページですが、全体の50%程度が研究関係からいただいております。研究の中身ですと、医学系が75%程度で、人文社会が25%程度でございます。  
  一番最後のページに、基本原則の各条文に対してどういう意見が多いかということでグラフにしておりますが、全体的に関する意見というのは、個別の意見もございますので多うございますが、そのほかに、インフォームド・コンセントとか、情報保護、知らない権利、知る権利、倫理委員会というようなところが多うございました。  
  次に、資料4−6は既にお送りしたものとほとんど同じですが、お送りしてから後、数件ご意見が来ましたので、その分を一緒にとじてございます。 
  資料4−7でございますが、これも暫定的なものをお送りさせていただきましたが、追加がございまして、それを追加しました。あと、資料4−8と見比べていただけるように順番を整理致しました。  
  最後に、資料4−8ですが、事前にお送りしたものと資料4−8の意見の項目が1カ所だけ違っております。14−7という番号にしておりましたものが、こちらの分類のミスでして、15−5のほうに変更してございますので、この点、ご注意願いたいと存じます。  
  以上でございます。 
(高久委員長) 
  どうもありがとうございました。 
  今の点については何かご質問はおありでしょうか。すべてのことについてご検討いただくのは時間的にも不可能だと思いますので、特に、基本原則や解説の中で、変更を必要とする点についてご議論をいただきたいと思います。今回もまた、位田委員と中村委員にご協力いただきまして、公募の主なご意見についての対応案をご検討いただきました。その検討していただいたものをもとにして、本日のご議論をしていただきたいと思います。  
  まず、位田委員から、資料4−8にあります対応案についてご説明いただきたいと思います。 
  位田委員、よろしくお願いします。 
(位田委員) 
  それでは、資料4−8の「意見公募に寄せられた主な意見と対応案」をご説明させていただきます。 
  この4−8に関しましては、パブリック・コメントで寄せられた意見に対する対応案ということでございまして、先ほどご紹介にありました生命倫理委員会での議論及びこの資料の最後の4−10として入っております文部省バイオサイエンス部会からの意見については、この対応案の中には含めておりません。最終的には、きょうご審議いただいて、対応案を決定いただいた後で、その原則の案文及び解説の案文について、この意見公募で寄せられた意見に対する対応案と生命倫理委員会の議論及びバイオサイエンス部会の議論、これをあわせて、原則及び解説の中に取り込んで修文をする予定でございます。  
  この資料4−8の中には、何カ所か既に修文案を示しているものもございます。ただ、あらかじめ申し上げておきますと、最終的な修文案については、次回もう一度つくってご審議いただくことになると思いますので、ここでは一応、パブリック・コメントに対する対応案、すなわち委員会の方針を決めていただいて、その後で具体的な案文をもう一度考えさせていただく、そういう手続をとりたいと思っております。  
  この資料4−8に掲げられております「主な意見と対応案」というのは、この参りましたパブリック・コメントすべての意見がここに挙げられているわけではありません。事務局に整理をしていただきまして、非常に大部の中から重要と思われる意見、もしくは検討するべきであると考えられる意見について、まとめつつピックアップしていただいたものでございます。それでもかなりたくさんございますので、この中でも、さらに重要な点を取り上げながら、少しご説明をするという方法をとらせていただきます。  
  この資料4−8は、最初の0の何番というのが全体に対する意見、0−16番までだと思いますが、4ページ目の1行目までが全体に対する意見で、それから、基本的考え方に対する意見の主なものとして2つ挙げられております。それが0という番号で振ってありまして、あとは、各原則ごとに、1の何番、2の何番という形で分類がされておりますので、ここには、原則の案文は出ておりませんけれども、必要な場合には、見やすいようになっております。  
  そこで、まず、全体に関する意見について見ていきたいと思いますが、先ほど申しましたように、全体に対する意見は合計16件、主な意見としては16ぐらいにまとめられると考えられます。0−1というのは、これはなかなかよくできているというお褒めの言葉をいただいて、私は非常にうれしかった。もっとも最初がよければ、後があまり楽しくない仕事でございましたけれども、いろいろなコメントが出ております。  
  0−2、0−3は、お読みいただければわかると思います。これは既にあらかじめお配りしていただいておりますので、0−2、0−3はそれほど大きな議論をする問題ではないと思います。こういう対応案でやりたいと考えます。  
  それから、0−4、これが少し大きな問題でございまして、ヒトゲノム研究に関する基本原則というんだけれども、ヒトゲノム研究というのは一体何を意味しているのかよくわからない、定義の文がないというご指摘をいただきました。そこで、それに対する対応案として、1つは、対応案の中に明確には書いておりませんが、用語解説をまずつけるということをいたします。それから、その上で、ヒトゲノム研究というのが、つまり、この基本原則というヒトゲノム研究というのはどういうことを意味しているかという定義に関する解説文を、少し長くなりますけれども、こういう形で、解説のほうに入れさせていただければどうかと考えております。読み上げるのはやめておきたいと思いますので、次に参ります。  
  それから、その後、0−5には、この基本原則がこれからどれだけ守られるか危惧感があるという意見がございます。これは全体に対する危惧感と、それからそれぞれの原則に関しても、実効性がどの程度あるのか危ぶまれるという趣旨の意見が散見されました。特に、これは単に基本原則という形で出すだけではなくて、法令を定めるべきであるという意見がございました。ただ、この委員会の任務としては、そこまでのことは今のところは対応できないので、現在ある法律で適切な対応がなされることを前提にして、場合によって、対応が必要な場合には、新しい立法も検討される可能性もあるという書き方にしてございます。  
  それから、その後、0−7、0−8あたりで、指針が必要だという意見がございます。これは、全体に対しても指針が必要だという意見がかなりありましたし、それから、それぞれの案文のところでも、やはり指針が必要である、もしくは指針に書くべきだというようなコメントがございました。これは、この委員会では、憲法的文書をつくるということで、原則だけにとどめておりますので、具体的、個別的な問題については、やはり指針をつくるという方法を対応案としては書いておくということにいたしました。  
  それから、先ほどの法令の制定とも関連しますが、0−9では、やはり倫理委員会等の行う任務について、実効性に疑問があるという意見がございます。これも、こういった基本原則の実効性をどういうふうに確保していくかというのは、かなり具体的な制度の問題になろうかと思いますので、ここでは、指針にそのあたりの方策をゆだねるという態度でおります。  
  それから、0−11、0−12あたりで、表現がわかりにくいであるとか、語句の定義が要るという点がありまして、語句の定義については用語解説をつくりますが、わかりにくいと思われるような表現は、次回までにできるだけ平易な表現に書きかえるように努めたいと思っております。  
  それから、少し飛びますが、0−15では、厚生省の指針案との整合性、これは以前から指摘がありますので、その同じような趣旨で対応案を書いております。  
  それから、基本的考え方に関する0−17、0−18については、少し文章上の表現の問題であるところもありますので、それぞれ対応案に書いたような形で処理をさせていただきたいと思います。  
  第一章なんですが、1−1というのがかなりコメントが参っております。ヒトゲノムが人類の「遺産」であると私は案文をつくらせていただきましたが、「遺産」という言葉が不適切であるとか、日本語にはなじまないのではないかというような意見がございます。具体的に、「共同財産」とか、「共有財産」といったものがいいのではないかという示唆がございました。  
  それに対しては、これは修文をした私の意見でございますが、「財産」というのは「heritage」ではなくて、むしろ「property」ということになりまして、財産的価値、もしくは所有権といった概念が強調され過ぎるように思いますので、ここでは、「人類の遺産」という表現は維持させていただいて、解説によりよく理解していただくように、少し長々と書きましたけれども、以下のような文章を入れてはどうかと思っております。  
  特に、「財産」という言葉を使う場合には、人類がゲノムを持っているということから、これは、例えばドイツなんかでは非常に非難されている言葉遣いでありまして、ゲノムというのは個人が本来持っているのであって、人類の共同財産だからといって、場合によっては試料の提供を強いられる可能性が出てくるので、それは避けるべきであるというのが国際的には一般に了解されている言葉遣いであると思います。したがって、英語の「heritage」という言葉なのですが、日本語ではなかなかその「heritage」の適訳がないものですから、一応、「世界遺産」という言葉が現在では日本語でもよく使われるようになりましたので、その同じ言葉をここで使わせていただきました。そういった趣旨のことを説明しております。  
  それから、1−2はゲノム崇拝的な表現に対する批判でありまして、これは第一原則の3項、4項で書いてあることで、このコメントをいただいた方たちに対しては、了解をしていただけるものと思います。  
  それから、原則の2については、これは表現の問題で、少し印象が悪い、一言で言えば印象が悪いという趣旨のことでございますので、解説に説明をつけ加えることによって、理解を進めていただくということにしたいと思います。  
  原則の三、四については、特に、ここで議論をしていただくべきコメントはなかったように思いますので、これは挙げておりません。 
  第二章の「研究試料提供者の権利」というところですが、これは、幾つか重要な問題がございます。インフォームド・コンセントに関する基本原則については、それほど大きな批判はございませんでした。ただ、第六の「同意能力を欠く者」、それから、第八の「インフォームド・コンセント手続の例外」、これはいわゆる包括的同意の問題ですが、それから、第九の「既提供試料」、これらについては、それぞれここで一応議論していただくべき問題がございます。  
  まず、第六の「同意能力を欠く者」ということにつきましては、同意能力を欠く者を提供者に含めたゲノム研究を行うべきではないという批判、したがって、そういったものについて、代諾を認めるべきではないという批判がございます。他方で、仮に、同意能力を欠く者を提供者に含める場合には、必ず同意能力を欠く者を提供者に含める必要があるという、そういう条件のもとでなければ、同意能力を欠く者を提供者に含める研究は行うべきではないという、ある意味では、同意能力を欠く者をかなり重視した、逆に言えば、研究を限定する意見がございます。  
  それに対しては、対応案として、一応、そこにありますように、同意能力を欠く者を含める必然性があるということ、それから、同意能力がないということについて医師が確認をしているということ、そして、同意能力を欠く者を提供者に含めた研究をすることがその者の利益について中立である。もちろん不利益は与えてはいけないわけですけれども、そういう条件のもとで行うという形にしたいと思います。  
  それから、具体的に同意能力を欠く者を含む研究というのはどういうものであるかというのがはっきりしないという意見もございましたので、アルツハイマー病等のようにという言い方で言うような研究として想定される例を挙げようと思っております。ただ、アルツハイマーだけでいいのかと言われると、それ以外に、例として挙げるのに適当なものは必ずしもはっきりわかりませんので、その点についてご助言をいただければと思います。  
  それから、第七はごらんいただければわかります。 
  それから、第八のインフォームド・コンセントの例外、いわゆる包括的同意については、同意は、別の研究に用いる場合にはとり直す必要があるという意見が幾つか出てきております。これは原則そのものの中身にかかわる問題ですので、これをどうするかということについて、ここでお決めいただければと思います。原則のほうは、条件を満たせば、同意をとり直す必要は必ずしもないという立場に立っておりますけれども、それを変更するかどうかという問題でございます。  
  それから、少し飛びまして、原則の第九、これも「既提供試料」については、以前とった同意の範囲外で研究を行う場合には、同意をとり直す。同意をとっていない研究試料についても、新たに同意をとり直さなければならないということにするのか、それとも、既提供試料の試料は、条件を満たせば必ずしも同意が要らないとするのか、その2つの立場の選択を迫られるコメントでございます。これも、もとの原則のほうは、条件を満たせば必ずしも同意はとり直す必要はないという立場をとっておりますが、もし変更するとすれば書き直さなければいけないことになります。  
  それから、9−4、9−5につきましては、バンクにある試料、それから、連結不可能匿名化試料の取り扱いについて、少し変更をするべきだという意見でございます。この辺は私だけでは判断がつきませんでしたので、少しご議論をいただければと思っております。  
  第十の「同意の撤回」については、それほど大きな問題はございません。 
  それから、十一、十二についても、原則、解説とも、それほど大きなコメントはございませんでした。 
  あと、十三、十四、十五のいわゆる知る権利、知らない権利について、これはかなりコメントが参っております。十三、十四、十五に共通するコメントとして、知らせる場合には遺伝カウンセリングが必要だということが強調されております。  
  遺伝カウンセリングに関しては、当初、書き始めていた案文では、十三、十四、十五それぞれに遺伝カウンセリングを入れておりましたけれども、少し煩瑣なので、十九にまとめて遺伝カウンセリングについて記述をいたしました。しかしながら、それぞれ遺伝カウンセリングが重要だというコメントが参りましたので、それぞれの項目に入れるべきなのか、もしくは原則十九のところで、遺伝カウンセリングの重要性をより強調するべきかという問題がございます。  
  十三については、遺伝カウンセリング以外にはそれほど大きな問題はありませんが、十四の提供者の知らないでいる権利については、知らないでいる権利があるのに、第2項では知らせる可能性が定めてあるので、これは矛盾しているから削除するべきだというのが14−1の意見でございます。  
  これは、そこの対応案にも書いておりますが、提供者の知らないでいる権利はもちろん尊重するんだけれども、しかし、研究の結果わかった遺伝情報、それに対する医学的な判断がもし可能であれば、提供者の人命を救うということを優先させるという考え方もあり得るので、この基本原則では、人命を救うほうを優先する立場をとりました。その旨の説明はつけようと思っておりますが、この立場を維持していいかどうかという点がございます。  
  それから、十五についても、同じようなことが言えます。15−1は少し置いておきますが、15−2のところで、やはり第2項は第1項に反するので、削除するべきであると。これも立場を2つ書きまして、血縁者等の人命を救うことを優先させる立場をとっているという対応案を一応用意はしております。  
  それから、15−1に少し戻りますが、これは血縁者という範囲が必ずしもはっきりしないと。だから、基本原則の中で定めておくべきだという意見がございましたが、これは、遺伝性疾患の種類などさまざまな条件で、だれに伝えるべきかという範囲が変わる可能性がありますので、これは、個別に倫理委員会で判断される問題だと答えることにいたしました。  
  それから、15−5で、代諾者にも情報開示をするべきだという意見がございましたので、例えば、乳幼児について、その試料を提供していただいた場合に、当然両親が代諾者になるという形になりますが、その結果について、赤ちゃんは本人が知りたいとか知りたくないとか言えませんから、代諾者に情報開示をする必要がある場合があり得るのではないかということについて、一応、その立場は妥当だと思いますので、受け入れようと思いますが、ただ、具体的にどういうふうな条件をつけて、代諾者に対する情報開示をするかということは、原則の問題ではなくて、むしろ指針で明示されるべきだと考えております。  
  十六に入りますが、16−2のところで、生命保険について、保険会社もしくは保険会社の団体、学会等から、生命保険について若干誤解があるのではないかという趣旨の意見が来ておりましたが、これは、生命保険の問題は、特にこれから検討されるべき重要な課題でありますので、ここでは、特に具体的に触れることはやめておきたいと思っております。  
  それから、次、原則十七のところで、無償原則と知的所有権の問題が出てきております。無償そのものについてはあまり問題がないようですが、知的所有権が得られたときに、もしくは得られる可能性がある場合に、その提供者の地位がどうなるかということについて、幾つかコメントが参りました。ただ、これは、知的所有権の範囲とか権利者については、この基本原則で定める性格のものではなくて、むしろこれは法制度の問題でもありますし、別途、検討されるべき問題であると考えております。したがって、17−1、17−2については、こうした対応案を考えております。  
  それから、飛んで十九ですが、これは先ほど申し上げたように、遺伝カウンセリングの体制整備が必要である、もしくは遺伝カウンセリングを受ける権利があるという形で、遺伝カウンセリングを重視して、それをもっときちっとした原則の中身にしてほしいというコメントがかなりたくさんございました。これは少し考える必要があるかと思います。  
  それから、二十はあまり問題がございません。 
  二十一について、前回でしたか、前々回でしたか、五條堀委員のほうから「有意義」という言葉は削ったほうがいいという趣旨のご発言がございましたけれども、コメントのほうでも、そういうのが幾つか来ました。ただ、この場合の「有意義」というのは、先日もご説明をしたと思いますが、単に、医学、薬学等のいわゆる有用なという趣旨だけではなくて、基礎研究も含めた科学一般の進歩にとって意義があれば、それは有意義だと。ただ、その具体的な研究が有意義かどうかは倫理委員会が審査をするんだという形で対応しようと思っております。  
  それから二十三ですが、二十三の「倫理委員会」については、具体的に倫理委員会の構成であるとか、権限であるとか、地位というものをきちっと書けという意見がたくさんございました。ただ、それはやはり指針のほうに書くべき問題でありますので、その辺は、指針に書くのだということを言うだけで終えたいと思っております。ただ、23−3のところで、倫理委員会自体の機能について、うまく倫理委員会が機能しているかどうかを審査する必要があるという意見がございました。これについては、情報公開をする、透明性を確保するということによって、社会的に倫理委員会の機能を評価していただくという形で十分なのではないかと思います。  
  それから、次のページに参りまして、二十四についてはあまり問題がございません。 
  二十五の研究成果の公開という点に関連して、もう一度知的所有権の問題が出てまいります。研究成果の公開をするということと知的所有権は、必ずしも直接に結びつく問題ではありませんけれども、少しコメントされる方にも誤解があるかと思いますが、研究成果を公開するということは知的所有権を否定するべきだという意見が幾つかございました。ただ、知的所有権については、これは認められるのであれば、それは否定するべき問題ではございませんので、知的所有権を否定するわけではないということを示しております。  
  ただ、25−2のところで、国際的なルールづくり等も含めて、国際的な対応及び国の対応ということについて意見がございました。25−2につきましては、そこに書いてございますように、研究成果の公開を促進する、もしくは配慮するということを書きます。かつ、最近、ご承知のように、クリントン・ブレア声明でありますとか、今度、G8のサミットでもこの問題が扱われるということから、原則の二十一に項を1つ追加いたしまして、原則そのものに1項目追加いたしまして、研究の結果得られたヒトゲノム塩基配列情報は公開されなければならないというのを入れておきたいと思います。これはしたがって解説ではございません。もちろん、これ以外の情報については、知的所有権を獲得することが可能であるということになります。  
  あと、二十六、二十七については、議論をしていただくようなコメントはそれほどございませんでした。 
  最後の附則のところで、見直しについて、「適切な時期」というのが必ずしもはっきりしないので、何年後という具体的な数字を入れるべきだという意見がございます。この点についても、例えば、3年とか5年とかということなんですけれども、もし入れるべきだということをこの委員会でお決めになるのでしたら、その数字を入れたいと思いますが、これは必ずしも年限がはっきり決められる問題ではないと思いますので、案文は「適切な時期」のままのほうがいいのではないかと思っております。  
  大体、以上、少しまとまらないような形でご説明してしまいましたけれども、主な意見とそれに対する対応策についての概略を説明いたしました。 
(高久委員長) 
  どうもありがとうございました。位田委員、どうもご苦労さまでした。 
  なお、後の追加の試料で、玉井委員のほうからもご意見が、論点の整理ということで出ています。これから逐一最初のほうからご議論いただくことになると思いますので、原則十四、十五並びに十九のときに、玉井委員のほうからこの資料に基づいてご意見をいただく、そういうふうにさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。  
  項目が非常にたくさんありますが、最初に、0のほうからご議論を願いたいと思います。0に関しては、位田委員のほうから、ご説明があったところで大体いいのではないかと思いますが、何かご意見はおありでしょうか。  
(玉井委員) 
  済みません、確認なんですけれども、位田先生の今のご説明の中で、指針のことが何度か出てきたと思うんですけれども、その指針というのは、この間、ファクスで意見を求められたような国レベルでの指針ということをあくまでも想定して、原則があり、その解説があり、研究指針がありという、要するに、その3点セットで使えるようなものとしての研究指針を想定して、指針のほうに詳しく書きますということが前提になっているのでしょうか?もう一つの考え方としては、そういう指針は各研究機関に任せるとか、学会に任せるとかいうのもあると思いますが、ここでは、あくまでも前者のほうと理解してよろしいのでしょうか。  
(高久委員長) 
  前にも議論されましたが、お手元に厚生科学審議会の指針がありますが、これはミレニアム計画のためのものであるから、遺伝子解析についてはもっと幅の広い、国レベルの指針をつくるということについてご了承いただいており、既に、そのための準備が始まっていると聞いていますので、ここにある指針は、そういう国レベルのものと私は理解をしています。  
(玉井委員) 
  そうしますと、研究する側としては、原則を読み、解説を読み、さらに研究指針に従って、あるいは、倫理委員会の委員として審議をする側は、それを全部読んだ形で、ここに書いてあるからこういうふうにしなければならないというようなことを想定してでよろしいわけですか。  
(高久委員長) 
  はい。各研究所やグループで、勝手に指針をつくられますと混乱すると思いますから、国レベルの原則をつくり、指針も国レベルのものをつくり、その指針の下で、研究組織あるいは研究所単位で、ある程度のモディフィケーションがあるとしても、守るべき指針を守る。指針ができた場合、そういうふうにすると理解しています。  
  ほかにどなたか、0に関して。よろしいでしょうか。 
  それでは、第一の1−1、人類の遺産ということについては、私も個人的にもご意見を聞いたことがありますが、これについてはいかがなものでしょうか。「遺産」という言葉を残すのか、あるいは、先ほど位田委員のご説明にあったようなことで、説明のほうで少しつけ加えていくという形をとるのか、何かご意見はおありでしょうか。ヒトゲノムといっても、もともとこれは人の遺産というより、生物の遺産でして、ショウジョウバエにも同じ遺伝子が大分あるようですから。何かご意見はおありでしょうか。  
  「heritage」を「遺産」と訳したわけですが、解説のところで、「heritage」というのが適当な訳がないので、一応「遺産」としたのだということにすれば、皆さん納得していただけると思います。あまりこだわる必要もないのではないか。ただ、解説のほうには、「heritage」に対応するということを書いていただければと思います。そういうふうにさせていただきたいと思います。  
  それで、第八のインフォームド・コンセントについては、いろいろなご意見がたくさん出ておりますし、それから、第九の既提供試料についても、いろいろなご意見があります。第八、第九、特に、既提供試料については、位田委員のほうから、この委員会での判断に任せるという事です。何かご意見はおありでしょうか。  
(玉井委員) 
  高久先生、済みません。その前に、第六なんですけれども、「同意能力を欠く」を「同意能力の認められない」というふうに文言を直すということなんですけれども、これは、例えば、子供であるとか、高齢者であるとかということだったと思うんですけれども、私の周囲の小児科関係の先生方から、先ほど、位田先生が解説のほうできちんと言及しますとおっしゃっていたとは思うんですけれども、原則のほうに書いてほしいと。要するに、同意能力が認められない者を対象にする場合には、必然性がなければならないということを原則としてきちんとうたってほしいということを、複数の小児科関係の先生からご意見を個人的にいただきました。私としては、解説のほうにあるのでも悪くはないかなと思ったりもしたんですけれども、そこをちょっと先生方のご意見を伺ってみたいという気がするんですけれども。  
(高久委員長) 
  同意能力のない人を調べる場合には、その必然性が認められなければならないと思いますので、原則に書いてもいい。私も、特に問題にならないと思います。きっちり書いたほうがいいのかもしれません。  
(玉井委員) 
  そうです。どちらかに書いてあれば、意味は伝わると思うんですけれども、やはり重要性という点でいうと、原則のほうにはっきりうたってほしいというようなご意見をいただきました。  
(高久委員長) 
  わかりました。ごもっともだと思いますので、そういうふうに検討させていただきたいと思います。 
  それじゃ、どうぞ。 
(位田委員) 
  この同意能力を欠く者の中に死体を含めるかどうかという問題がございまして、先ほど、ちょっと説明をしたときに、失念をしていたんですが、そのあたりはどういたしましょうか。  
(高久委員長) 
  いや、死体の問題は……。 
(位田委員) 
  これまでも、死体は一切出てこなかったものですから。 
(高久委員長) 
  死体、それに脳死体でも入りますともっと大変なことになるので、これはちょっと外して、どうですか、いかがでしょうか。 
(豊島委員) 
  病理解剖ですね、一番……。 
(高久委員長) 
  そうですね。 
(玉井委員) 
  ただ、厚生省の指針をつくるときには、それは問題になったのではなかったでしょうか。それで、「生体試料」という言葉を使わずに、わざわざ「ヒト由来試料提供者」というような言葉を使って、そこを意識したのではなかったでしょうか。たしかあれは亡くなってからいただく場合もあるのではないか、あるいは、病理標本を試料として用いる場合もあるのではないかということだったような、ちょっと記憶があいまいなんですけど、そこはどういう議論だったのかと、位田先生も入っていらっしゃいますけど。  
(高久委員長) 
  先ほど言いました、同意能力のない者からもらうときにはその必然性がなければならないとすると、その中に死体は入ってもいいわけですね。 
(位田委員) 
  それは構わないと思いますが……。 
(高久委員長) 
  先ほど位田委員がアルツハイマーの例を挙げられましたけれども、原則には必ずしも例を挙げる必要はないと思うのですが。 
(位田委員) 
  といいますのは、このコメントの中に具体的な例を挙げるべきだという意見がありましたので、もし挙げるとすれば、アルツハイマーなんかが挙げられるかなと。  
(高久委員長) 
  ただ、アルツハイマーでも非常にまだらな人がいましてね。時々同意能力があったりなくなったりするとか、難しいんです。アルツハイマーには、程度も、ステージも、いろいろあります。例まで要らないのではないですかね。常識的に判断してもらえば良いと思うのですが。  
(町野委員) 
  死体の件はやっぱり私はやめたほうがいいと思うんですけれども。やはり問題がはるかに違いますし、死体まで同意能力のない者だとすると、要するに、人間と認めたものだということになりますし、その代諾者は一体何なのかという問題が生じますし。確かに死体のところで問題は問題なんですね。おそらく血縁関係の人に対する影響はありますから、それは考えざるを得ないですけれども、しかし、少なくとも生きている人についてのものではないわけですから、これはやっぱり別に考えたほうがいいだろうと思います。  
(高久委員長) 
  そうですね、わかりました。 
(位田委員) 
  そうしますと、このヒトゲノム研究に関する基本原則というのは「生体の試料に限る」ということをどこかで書く必要があるかなと思うんですね、死体を除くのであれば。  
(町野委員) 
  私は必要はないと思いますけど。「者」と書いたら生きている人のことをいうというのは普通ですから、日本の臓器移植法だけなんですよね、ああいう書き方というのはね。  
(小幡委員) 
  ただ、議論はむしろ必要なので、同意能力を欠く者というのは確かに生きている人だけを意味するのです。ですから、これだけを法律的に読めば、全く死者は入らないということで済むと思うのですが、現実の問題として、死者についての病理解剖のときなどに、例えば、病理解剖の同意を得るときに一緒に同意を得て、こういうヒトゲノム研究をするという可能性を認めなくて良いかどうかというのは、もう一つほんとうは議論をしなければいけないですね。  
(高久委員長) 
  今までは、病理解剖のときに、内容までは同意をとっていないですね。最近は知りませんが、昔は少なくとも、病理解剖をさせてくださいと言って、ご遺族の方がいいですと言えば、あとは、その内容まではとっていなくて、おそらくDNAを調べる検索も行われていたんでしょうね。  
(豊島委員) 
  病理解剖のときには、広い意味でのいろいろな検査が入っていましたから、今までは、DNAの検査まで、例えばがん遺伝子がどうなっているかとか、そういうことができたわけですね。ただ、今のように、改めて、遺伝性の腫瘍なんかの場合にはどうするかという問題が出てくると、やはり同意をとらなきゃいけないかなということ。今おっしゃったように、家族の同意がやっぱり要るんじゃないかなという気がします。  
(町野委員) 
  そうするとやはり、死体についてまた原則をつくるということになりますかね、必要性からいいますと。だから、これを死体まで含ませるというのは明らかに無理です。やっぱりいろいろな点で問題が生じますから、承諾権者だとか、そういうことをきちんと書くということが必要なのかもしれないですね。  
(眞崎委員) 
  厚生省のときに、あまり議論はなかったと思うんですけど、ここに書いてありますけれども、ヒト由来試料の中に、死体からのものを含むと書いてありますね。ただ、脳死死体の場は別であると書いてあります。  
(高久委員長) 
  わかりました。 
(厚生省企画官) 
  今、先生からご発言のあったとおりでございまして、試料の中には死者から提供されるものも含むという形に書いておりますし、死者の場合には遺族から同意を得ると。かなり多くの研究がやはり死体から提供を受けなければ成り立たないということもありますし、また、死者から提供を受ける必然性があるかどうかは倫理審査委員会で審査を受けるという仕組みになっております。  
(五條堀委員) 
  もう一つだけ気をつけておかなきゃいけないことがありまして、死体の範囲なんですけど、例えば、縄文人骨とか、そういう研究も、それをやっぱり集団として調べていくという研究は実際ありますので、それもまた、代諾者という話になってくるともう……。済みませんが、そういう研究もあるということをご留意いただきたいと思います。  
(高久委員長) 
  これは基本原則ということで、死体の事は含めないで議論して良いのではないかと思います。位田委員、いいですか。 
(位田委員) 
  逃げ道というわけではありませんが、ここには死体とも何も書かないで、このままにしておいて、指針のところで死体を含むと書いていただければ、具体的には動くと思いますので、もしそれでよければ何も書かないで現在のまま、アルツハイマーも、というか、そういうような例がどういうものがあるかというのも削るということでよろしいですか。  
(高久委員長) 
  書かない、削ったほうがいいと思いますね。 
(位田委員) 
  はい。 
(高久委員長) 
  第八、第九について、ご意見、私から先に言わせていただきますと、連結不可能な試料について新たに同意を得るということは、現実的には不可能なわけですね。そうかといって、同意を得た時点で開発されていない技術や、わかっていない知見があって、その後、極めて重要な発展があって、しかも連結されていない場合に、それも同意を得なければやってはだめだということはあまりにもマイナス志向ではないかと思うのですが。ですから、私は原案のほうがいいのではないかと思っています。いかがなんでしょうか。  
(玉井委員) 
  連結不可能な状態になっているときは、同意をとり直さなくてもいいということではなくて、連結可能な状態であっても、同意をとり直さなくてもいい場合があるというのがこの規定だと思います。そして、厚生省のほうもたしかそういうふうになっていると思います。それで、コメントのほうでいろいろな方が問題にしているのは、連結可能な状態であるにもかかわらず同意をとらなくてよいのかと。同意を改めてとろうと思えばとれるかもしれないのに、とらないで研究に使うということが許容されるのかということだと思うんですね。私は、研究の種類によっては、そういうこともあってもいいのではないかという立場なんですけれども、パブリック・コメントの中では、幾つか問題点が指摘されていたと思います。  
(高久委員長) 
  そうですね、確かに……。どうも失礼しました。私、考え間違いしていまして。いかがですか、その点につきましては。 
(眞崎委員) 
  特に、項目の2で、いろいろ書いてございますね、連結可能な場合、人名まで残している様に明らかに連結可能な状態だったら問題であると思いますが、例えば疫学的研究の場合には、例数が多いという事が問題で、再びインフォームドコンセントをとり直すとまた何年もかかるということなので、現実的でない。だから可能な範囲で連結可能な状態でも、ある程度許していただくということが必要なのではないのかと思います。  
(中村委員) 
  どうも研究は研究者のためにあるというような風潮があって、基本的には、これは病気の因子を見つけて、患者さんに寄与するということで研究をやるわけですから、その辺を、サンプルを集めて、研究者が自分の欲得だけのためにやるような誤解が非常に大きいのが問題ではないかと思うんです。  
  今、高久先生がおっしゃったように、非常にネガティブ志向でずっと物事が語られていると思うんですけれども。実際、何千人というサンプルが既にあるという場合に、また一からやり直すのかと。私は研究者側ですから、こういうことを言うと非常に問題があるのはわかるんですけれども、実際、この研究の意義というのが非常に誤解されて、研究者のための研究だというような観点があるのが誤解を生んでいる一番の理由じゃないかと思うんですけども、その点、これはやっぱり早く研究が進めば、それだけ社会に還元ができるんだというポジティブな面ももう少し考えていただいて、いろいろ判断の材料にしていただければと思いますけれども。  
(玉井委員) 
  研究者サイドから言うと問題があると中村先生がおっしゃったので、そうではないサイドから。その研究によって生じるかもしれないリスクと利益と、それから個人にとってのリスクと利益を考えて判断した場合には、例外ということになるかもしれませんけれども、連結可能な状態で保存されているサンプルであっても、場合によっては認められるという例外はあってもよいのではないかと個人的には思います。もちろん賛否両論あるのはわかるんですけれども。  
(高久委員長) 
  確かに、それをすることによって得られるものと、マイナスの面等を倫理委員会が判断をして決めるというのが原案だと思います。いろいろなご意見があるかもしれませんが、一応、原案のとおりということでやっていってよろしいでしょうか。  
(小幡委員) 
  私も賛成、それでよろしいと思いますが、要するに、既提供試料について重要なのは第九の3で、厳格に保管され保護するというところが一番大事なところではないかと思います。ですから、ここがきちっとされていることが非常に一番大事ではないかと。  
(高久委員長) 
  あと、倫理委員会の判断ですね。 
(小幡委員) 
  ええ、もちろんそうです。 
(位田委員) 
  多分、第八のタイトルが「インフォームド・コンセント手続の例外」と書いてしまったものですから、若干マイナスイメージというか、マイナスの印象を与えたような気がしますので、例えば、インフォームド・コンセントの適切手続とか、もしくは簡略手続と、ここのタイトルだけは非常に迷いまして、「包括的合意」と書いてしまうと少しまた誤解を招くような気がしましたので、それは避けたのですが、まさに、適切な言葉遣いが見つからなかったものですから。  
(町野委員) 
  私もこれで結構だと思うんですけれども、「例外」と書いたのは、インフォームド・コンセントがなくても許されるような読めますから、確かに問題だったかもしれないですね。これが昔、問題になったのは、エイズのときの、ためておいた血液を、後からエイズが発生したというのでそれを調べるというときに、それが許されるかということがあります。この場合は、きちっと遺伝子解析の目的でということですから、ちゃんとインフォームド・コンセントが最初あり、その範囲内です。ただやっぱり最初の目的がある特殊の遺伝子解析の場合だって、どういうものかわかりませんが、別の目的になったということまでそれで大丈夫かという問題があると思うんですね。  
  ですから、法律論からいうと、カバーしていると見るのが普通だろうと思いますけれども、むしろ例外というよりは包括的同意というほうがいいのかなと思います。  
(位田委員) 
  ただ、この場合には、単に別の遺伝子研究だけではなくて、他の医学的研究というところまでも広がる可能性がありますので、ですから、別の遺伝子研究であればもう少しタイトルをつけやすかったんですが、その辺が少し、「包括的」と言ってしまうとまた、何でもかんでも1回やればできるんだという感じを与えてしまいますので、そういうタイトルは避けたのですが。  
(小幡委員) 
  同じことかもしれませんが、「例外」よりは「特例」のほうがいいかなと、まず思いますね。これは、特殊なものについての特例を定めているもので、インフォームド・コンセントを一切やらなくていいという響きが「例外」には含まれてしまいますから。  
(位田委員) 
  はい、そうなんですね。 
(小幡委員) 
  それから、先ほど非常に重要な、第五の「原則として文書で表明する」という「原則として」を削除するという非常に重要なことが決まりましたが、それは大変望ましい対応だと思います。  
  その後、私が非常に気になるのは、「適切な形で調整」の「調整」の言葉で、指摘がありましたように、非常にあいまいな言葉が使われております。「調整」というのは、インフォームド・コンセントによる説明手続は別途定めるということですね。これは匿名化が予定されていて、連結不可能だということを条件としてということですよね。「簡略化」という言葉が説明のほうでは出ているのですが、それをあえて使いたくないということでしょうか……。  
(位田委員) 
  これも、読んだときに与える印象を考えまして、「緩和」と書いてしまうと、インフォームド・コンセントを軽視しているのではないかと言われそうなものですから、もちろん最初から「例外」というのを使ってしまったのが第一の誤解のもとなんですけど、そういう意味で、いろいろ考えて、これは「調整」ぐらいかなという言葉遣いをいたしました。これが一番適切な言葉遣いだとは私も思っておりませんけれども、しかし、基本は緩和できるという趣旨です。それを原則の中で「緩和」という言葉を使うかどうかというのは、若干躊躇したものですから、それは、必ずしも緩和ということではなくて、この研究計画については、こういうインフォームド・コンセントのとり方が適切だという趣旨で、「調整」という言葉を使わせていただきました。  
(小幡委員) 
  それは3項のほうがきいてくるわですね、結局。 
(位田委員) 
  そうです、はい。 
(小幡委員) 
  ですから、別途、この場合には、3項で定める方法によることができるという意味ですよね。 
(位田委員) 
  はい、そうです。 
(高久委員長) 
  例外が問題だとすると、インフォームド・コンセントの手続において考慮すべき事項というようなことだとどうなんでしょう。考慮するというとおかしいですかね。  
(位田委員) 
  ただ、そうしてしまいますと、すべてのインフォームド・コンセント手続になってしまいますので、ここでは基本的には包括的同意のことが念頭にあるものですから。  
(高久委員長) 
  「包括的同意」でもいいかもしれない。 
(位田委員) 
  よろしいですか。それでよろしいのであれば一番……。 
(高久委員長) 
  「例外」よりは「包括的同意」のほうが良いでしょうね。 
(眞崎委員) 
  13ページの一番最後に、この基本案の13ページの一番最後、「例外的に」というところからの後の文章が前の文章とちょっと断絶しているので、それで誤解を招くんじゃないかと思うんですね。それから、その次のページの14ページの一番上の「匿名化処理を行わずに」  
  と書いてございますね。こういうことは普通はあり得ないんじゃないですか。連結可能な形では研究が行われますけど、匿名化処理は全く行われないということはまずないと思います。これをとってしまえば良い。こういうのが誤解を招くもとじゃないかと思います。  
(高久委員長) 
  よろしいですか、位田先生。 
(位田委員) 
  バージョンによってページが違うんだろうと思います。 
(眞崎委員) 
  第八の第2項の下の解説文の、要するに、第2パラグラフです。 
(高久委員長) 
  ほかにどなたか。 
(小幡委員) 
  包括的同意は第八の1項のことですよね。 
(高久委員長) 
  第1。 
(小幡委員) 
  第1ですね。第2は違いますよね。そういうのは包括的同意、ではないですね。 
(位田委員) 
  第2はそうですね。 
(小幡委員) 
  ですから、やっぱり何かしら表題は「包括的同意」ではないものを持ってこないといけませんね。「手続の特例」ですね。 
(位田委員) 
  「特例」にしましょうか。 
(町野委員) 
  ただ「インフォームド・コンセントの手続」じゃ、ぐあいが悪いんですか。 
(位田委員) 
  それでしたら、ほかのも全部インフォームド・コンセントですから。 
(町野委員) 
  いやいや、手続の各論を決めているということですからね。だから、「例外」というのを何もつけなければ、内容ですからね。ただ、もちろん言われるとおり、インフォームド・コンセントとしては、普通だったら、次のことを言わなければならないというのがあって、それからこれが来るのが普通なんですけど、それじゃ、一番最初のがないんですね。  
(位田委員) 
  ないんです。 
(町野委員) 
  それでしたら、確かにちょっと今の書き方ですと……。 
(位田委員) 
  一番最初がないというよりは、一番最初は第五に出てまいるものですから。 
(高久委員長) 
  基本事項と同意能力を欠く者と研究の多様性の考慮ですから、「インフォームド・コンセントの手続」でもいいのかもしれませんね。そのほうがすっきりしますね。基本事項とは違いますからね。  
(玉井委員) 
  例えば、順番を入れかえるとかいうのはどうなんでしょうか。基本事項の後にこれが来るとか、ちょっと思いつきですけど。 
(高久委員長) 
  それでもいいですね。 
(玉井委員) 
  それでもし流れがすっきりするのであれば、基本事項とこれが離れているので、余計わかりにくいという印象があるのであれば、そこを続けてしまうという手もあるような気がします。  
(高久委員長) 
  確かに、玉井委員がおっしゃったように、第五に基本事項、第六にインフォームド・コンセントの手続、それから第七が同意能力を欠く者、第八が研究の多様性の考慮にしたほうがいいかもしれませんね。どうですか。  
(位田委員) 
  論理的に考えますと、第五は一般原則なんですよ。第五の中は当然、同意能力がある者という前提でやっているわけですね。それの例外というか、第五の中の小さい例外をそのすぐ後ろにつけるのが論理的にはつながるかなと思いました。それで、第七で、研究にはいろいろあるから、多様性を考慮しなさいよということを書いて、具体的には、包括的同意、それから連結不可能化するという具体的な例外を書く。それから既提供試料の問題を書くというふうに、一応並べ方は考えているつもりなんですが。  
(高久委員長) 
  わかりました。よろしいですか、それでは。 
(位田委員) 
  じゃあ、「インフォームド・コンセントの手続」でよろしいですか。 
(高久委員長) 
  ええ、それでいいと思います。 
  それでは、少し時間が遅れましたが。 
(玉井委員) 
  済みません、時間がないのに申しわけありません。包括的同意の問題で、まとめの中にちょっと抜けていると思うんですけれども、包括的同意の範囲が問題にされるべきではないかなと思います。厚生省のほうの案では、あくまでも遺伝子研究を含む医学研究というふうに一応限定がしてあるんですけれども、こちらのほうは、医学研究一般というふうにいきなり医学研究一般になってしまっていて、ここの資料4−8には挙がっていないんですが、パブリック・コメントの中で指摘されていたと思います。包括的同意の場合であっても、いきなり医学研究一般というところまで広げてしまっていいのか、それで特に問題が起きないのか。それとも、ある程度遺伝子研究に限定するとか、遺伝子研究を含む医学研究というような形で、厚生省案との統一を図るというか、その辺はどうなんでしょうか。コメントもあったように思うんですけれども。  
(中村委員) 
  ゲノム研究の指針ですから、原則ですから、遺伝子以外にほかに来るんですか。 
(高久委員長) 
  ですから、逆に医学的一般を書かなくても良いのではないかと。 
(玉井委員) 
  ええ、特に、医学研究一般に広げると規定しておかないと、研究がそれではちょっとやりにくいという事情があって医学研究一般ということに広げたのでなければ、遺伝子研究とか、ゲノム研究と限定しておくほうが一般市民の皆さんも納得はしやすいかなと思ったんですけれども、その辺はどう……、私はちょっと事情がわからないものですから、その必要があってわざわざ医学研究一般にまで広げたのかなと思って、そこをお伺いしておきたいんですけれども。中村先生がそうおっしゃるのであれば、きっと要らないんですよね。  
(中村委員) 
  申しわけない、質問の意味がもうひとつ……。 
(高久委員長) 
  要するに、遺伝子研究をやりますという同意をとっていたが、同意以外の遺伝子研究ということを問題にしている。Aという遺伝子研究をやりますよという事で同意をとって、その後今度は、Bという遺伝子研究を始めたいときに、ということが問題になっています。そのときにBという研究だけではなくて、もっと幅の広い研究にも云々と書いている。そこまで書くと、かえって世の中の人に誤解を招くのではないかという玉井委員のご意見ですね。  
(玉井委員) 
  そうです。ですから、「医学研究一般」という書き方をしないでも済むのであれば、そのほうが理解は得られるのではないかなと。厚生省のほうもたしかそういうふうな趣旨なんだろうと思うんですけれども。  
(町野委員) 
  ちょっと今、この文章の意味がわからなくなったんですけれども、「提供の同意が与えられる時に同時に他の」、要するに、同意が既にあるというんですね、ほかの、この文章ですと。  
(位田委員) 
  具体的に、まず今回提供するのはAという遺伝子解析研究だけれども、説明を受けている間にBという研究にも使いたいんですがいいですかと言われる。それがBという遺伝子解析研究であるというケースがあると。それから、そのほかに、遺伝子解析研究じゃないけれども、その他の医学研究、まあ、サンプルは別にゲノムをサンプルにしたわけではないので、例えば血液をもらおうとすれば、何十かもらおうとすると、それが残っている間は、遺伝子研究だけではなくて、ほかの研究にも使わせてくださいと言われる可能性があるので、それを認めるかどうかということですね。  
(町野委員) 
  だから、最初の段階で、この文章だと、今の点の同意もあるということですね。 
(位田委員) 
  そうです、はい。 
(町野委員) 
  ですから、全然例外でも何でもなくてということですね。 
(位田委員) 
  というか、ただし、本来ならインフォームド・コンセントというのは、この研究に使いますよと言って同意をいただくと。それを基本原則と考えれば、実際にやるかやらないかというのが、こういう遺伝子研究をやりますという具体的な遺伝子研究の中身がわかっていればいいですけれども、別の遺伝子研究に使うかもしれませんからそれでもいいですかという同意のとり方もあり得るし、ですから、どこまで広げるかというのは非常に難しいんですよ。  
(町野委員) 
  まあ、初期の段階では要するにそれがはっきりしていないと。包括的な、抽象的なこととしてはほかの研究に使うかもしれないよということを言っていて、その点に同意があると。だけど、一応、この手のインフォームド・コンセントだというぐあいに法律のほうでは説明しているんだと思うんですね、今の……。  
(位田委員) 
  言えるとは思います。 
(高久委員長) 
  議論を難しくして申しわけないのですが、逆に一般的な医学的研究に使いますよと言っていただいたサンプルが10年ぐらいたって、遺伝子の研究もやりたいというときには、どうなんですか。  
(位田委員) 
  遺伝子研究に使うとは言わないわけですか。 
(高久委員長) 
  サンプルをいただいたときには、まだ遺伝子解析のほうには進んでいなく、そういう考えもなくて、医学的な研究で使いたい、あるいは、もっと別な目的で使いたいと言っていたところが、そのうちに、学問が進んで……。  
(位田委員) 
  私の理解では、医学的研究の中には遺伝子解析研究も全部含まれるという理解ですので、一番狭いのが、具体的なAという今研究する遺伝子解析研究で、それ以外に、将来例えば、1年後にBという遺伝子解析研究に使うと。それは少し広がるわけですね。その他の医学的研究というのは、遺伝子解析研究であれ何であれ、医学研究全般にも使いますよということを、どういう医学研究かは最初はわからないんだけれども、使う可能性がありますよということで、同意をとると。それが許されるかどうかという問題なんです。同意はとれると思いますけれども、ほんとうにそれをやっていいかどうかと、それを基本原則の中に書いていいかどうかと、そこが一番問題なんだと思います。  
(豊島委員) 
  インフォームド・コンセントをとるときに、たまたま例えば糖尿病の解析に使うというふうにとったときに、ほかの病気の解析をやっているときに、その病気に関しては、この糖尿病の診断が基本的に正常な場合が多いですね。これ、一般の別の病気のときの対象に使うということは、ある意味では、ゲノム解析の法律から考えたら非常に望ましいことではあるわけですよね。だから、そういうときにも、やっぱり違う病気の研究に使っていることは間違いないわけです。それをどういうふうに考えるかというのが、多分、これからの現実の問題としては一番切実なことになってくると思います。  
(玉井委員) 
  先生が今おっしゃったのは、それはあくまでもゲノム研究という範囲におさまる研究ですよね。 
(豊島委員) 
  そうです。病気のゲノム研究をやる場合。 
(玉井委員) 
  そうであれば、そこまででいいと思うんですね。いきなり「医学研究一般」というところまでここに書かなくてもいいのではないかなというのが私の意見なんですけれども。  
(中村委員) 
  具体的には、たんぱくの研究とかそういうことを含めたことを言っておる? 
(玉井委員) 
  いえいえ、私はその辺がよくわからなかったので、ここに書いてある医学研究一般というのが、実際にそういうことがあるのかどうか、特にそういうことがないのであれば言葉を……。  
(中村委員) 
  多分、今はゲノムの話をしているから遺伝子ということになっていると思いますけれども、最近言われているように、プロテオミクスという問題が出てくると、これはたんぱくを体系的に解析するということが出てくる可能性はあると思うんですね。だから、10年後にたんぱくを解析するときに、今集めているサンプルをシステマティックに調べるという同意ができていないから、またとり直さないといけないのかという問題はあると思うんです。だから、同意のとり方として、「遺伝子を含めた医学的研究」というふうに書けばそれはいいかもしれないですね。  
(玉井委員) 
  ええ、それでいいのではないかなと。 
(中村委員) 
  「医学的研究」と書けば、位田先生がおっしゃったようにすべて含むということになると思うんですけど、時代の流れからいくと、今、たんぱくの研究というのが出てきていますね。たんぱくの研究というのはどれぐらい個人を特定して、いろいろな社会的問題をはらむかというのはわからないですけれども、それは理屈の上ではないとは言えないと思うんですけど。  
(高久委員長) 
  そうですね。中村委員のおっしゃったように、遺伝子よりは、作り出されるたんぱくのほうが重要になってきていますね。そうすると、遺伝子解析に非常に関係が深いけれども、研究そのものはたんぱくの研究といった、むしろ後者のほうがもっと重要な場合があるわけですね。遺伝子がわかってもそのプロダクトがわからないと、臨床的な意味がわからない、臨床的に役に立てないという場合が十分にあり得るから、ほんとうは最初の同意をとるときに、遺伝子を含めた医学的一般に使うという同意を得ていれば一番いいわけで、そうでしたら、このまま書いていても良いと思うんですけれど。  
(豊島委員) 
  今、一般の遺伝子研究、例えばゲノム研究といって、その中に一応たんぱくまで入ってはいる? 
(高久委員長) 
  入ってはいるんでしょうね。 
(豊島委員) 
  ですから、それがどういうふうに受け取られるかということが1つの問題なんですね。だから、ある意味では、そこまでいかないと完結しない。実は、もう一つ言えば、それの機能までいかないと解決しないわけですから、それがやはり全体を含めたのが遺伝子研究であり、ゲノム研究であると私たちは思っておるんですけど。  
(玉井委員) 
  そうであれば、遺伝子研究、ゲノム解析研究を含む医学研究という限定でよろしいということですよね。 
(豊島委員) 
  いいと思いますけどね。 
(位田委員) 
  今の「遺伝子解析研究を含む医学研究」というのは、遺伝子に限るという趣旨ですか。それとも……。 
(玉井委員) 
  ですから、もうちょっと範囲は広いんだと思うんですね。ただ、ここに書いてあるように、「医学研究一般」ほど広くはないけれども、「ゲノム研究を含む医学研究」というのはある程度限定できるというので、何の限定もつけずにいきなり「医学研究一般」というよりは、「ゲノム解析研究を含む医学研究」と言っておくほうが、提供する側がイメージをどれだけ持てるかとかという点でもいいのではないかと思っています。私は「医学研究一般」という言葉にこだわっていて、コメントの中でも出てきていると思うんですけれども、その言葉を、「ゲノム解析研究を含む」という言葉をつけて「医学研究」というふうにしていただければ、誤解はないのではないかなと思っているというので、済みません、要領を得ないので、なかなか伝わりにくくて……。  
(高久委員長) 
  ですから、「遺伝子解析研究並びにそれに関連した医学研究」と。「一般」という言葉に少し抵抗がある。 
(玉井委員) 
  「一般」というとあまりにも広く……。 
(高久委員長) 
  ですから、「遺伝子解析研究並びにそれに関連した」、あるいは「遺伝子解析を含む医学研究」というふうにすれば、内容的には同じことを言っていることなのですが、それのほうがいいかもしれませんね。  
(位田委員) 
  そうすると、確認なんですが、そのときの医学研究というのは、その中に必ず遺伝子的な要素を含んでいなければいけない、そういうふうに理解してよろしいですか。  
(高久委員長) 
  いや、それは、そうじゃなくてもいいんじゃないかな。 
(位田委員) 
  そういう意味で玉井委員はおしっゃったんだと理解したんですが。ですから、例えば血液のサンプルをいただきますよね。その中で、今回は遺伝子解析に使うと。しかし、その血液が残っているから、例えば別の通常の血液検査でGOTとかGPTとかを解析するのに、これは使ってはいけないということになると思うんですが、今のご説明だと。そういう意味ですよね。  
(高久委員長) 
  だけど、今後遺伝子に関係しない研究なんてないんじゃないですか。何らかの形で。どうでしょうか。 
(眞崎委員) 
  そうですね。必ず遺伝子が出てきますから。 
(高久委員長) 
  必ずどこかで結びつけますよね、結びつけようと思えば。 
(小幡委員) 
  今のたんぱくの話は、遺伝子解析研究という事柄の中には入らないと考えて……。 
(高久委員長) 
  解析の研究にはならないです。 
(小幡委員) 
  ヒトゲノムだったら広くとらえられるけれどということですね。 
(高久委員長) 
  解析研究ですと、遺伝子の解析というのと……。 
(小幡委員) 
  ゲノムだと入る。だから、そうすると……。 
(豊島委員) 
  遺伝解析には入らないとも言いにくいですよ。 
(小幡委員) 
  ヒトゲノム研究に関する基本原則ですからね、その出発点のところは。ここで、第八で、遺伝子解析研究というふうに言葉を限定しないとだめですか。 
(豊島委員) 
  遺伝子解析主体プロダクト等の問題の研究と。 
(玉井委員) 
  「ゲノム解析研究を含む医学研究」とかいうのはだめなんですか。「遺伝子」ではなくて「ゲノム」というふうにするほうがもうちょっと幅広くなるということはないんでしょうか。そうすると、さっき高久先生がおっしゃったように、ゲノム解析研究と関係のない医学研究がこれから先あるのかという話にもなるかと思うんですけど、それはそれでそういうものだと思うしかないんじゃないかと思うんです。だから、「医学研究一般」というふうな言葉にしても、「ゲノム解析研究を含む医学研究」という言葉にしても、実質的にそう変わりはなくなってしまうかもしれませんが、それでも一応、「ゲノム解析研究を含む医学研究」と限定しておくほうがよいのではないかなというのが私の意見で、厚生省の案もそうなっていることだしと思っているわけです。  
(高久委員長) 
  そうですね、「一般」という言葉は要らないと思います。「医学研究」でいいと思います。 
(位田委員) 
  一般をとるのは全然問題ありません。ですから、そのときの医学研究というのは遺伝子に関係するという趣旨で。 
(豊島委員) 
  を含むと。 
(位田委員) 
  を含むというのは非常に難しくてですね。つまり、遺伝子と関係なくても医学研究というのはあり得ると思うんですね。 
(高久委員長) 
  あり得るんです、もちろん。 
(位田委員) 
  それにもらったサンプルを使ってはいけないということになるんですが、それでもよろしいかということなんですけど。 
(玉井委員) 
  広い意味では何か関係するんじゃないですか、そんなことはないんですか。 
(高久委員長) 
  広い意味では関係します、解釈の仕方によって。 
(玉井委員) 
  解釈の仕方で広い意味では関係するというのであればよいのではないかと思うんですけど。 
(高久委員長) 
  思いますけどね。先生がさっき言ったGOTだって、やっぱりGOTをつくる酵素は遺伝子と関係しているわけですから。 
(位田委員) 
  でしたら、「医学研究」でいいわけで、はい。そうすると、例えば解説の中で、現代の医学はすべて遺伝子に関係しているからというのを書いて挙げておけば、それは読む人にとってみれば安全でしょうけど。  
(玉井委員) 
  そこまで書く必要はないと。 
(位田委員) 
  ないですよね、私もないと思っているんですが。 
(町野委員) 
  要するに、これは、何ができて何ができないかということがはっきりすればいいわけですね。じゃあ、できない例を何か挙げていただければいいんじゃないですかね。例えば、こういう場合はできないけれども、こういう場合はできると。それが、私は全然素人なので、どういう例が全然検討がつかなくなっているんですけど。  
(小田ライフサイエンス課長) 
  ちょっとよろしいでしょうか。やはりここはゲノムに関する研究でございますので、例えば他の医学研究に使用することができるとすると、例えば、その血液からクローンをつくるのに使うだとか、例えばですよ、そういうようなことまで逆に認め得るような言葉ですから、ここはやはりあまり、他の医学研究にどういう問題があるかわからないので、そこの問題まで含めて、ここでそれが可能かどうかということの判断はなかなかできないんじゃないかと思うんですね。したがって、ここはあまり、他のところに使えるかどうかというのは、他のところの判断があると思うんですね。例えば、クローンとか何かをつくるのにこれは使えるかどうかという議論を呼び起こしますので、ここは基本的にはゲノム研究一般のところに限定したほうが、議論として、他のところまで使えるというところは、まだどんな事態が生じるかわからない。そこまで我々が、同意さえ与えられれば何でもできるんだということは、ここの時点では入れないほうがいいんじゃないかなと私は思います。  
(位田委員) 
  いや、ですから、遺伝子のかかわらない研究に使うというのはどういうふうなケースかちょっとわかりにくいんですけど。 
(高久委員長) 
  私が言ったのは、「遺伝子解析研究を含む医学研究」ですと遺伝子解析以外の医学研究でもいいわけです、「含む」ですから。 
(位田委員) 
  ただ、そうすると、玉井先生の意見と違うんですよね。 
(高久委員長) 
  「一般」という言葉が抵抗があるのではないかというだけです。「含む」という日本語は微妙で、インクルーディングにすると範囲が広くなる。 
(位田委員) 
  そうだと理解します、はい。ただ、玉井先生がおっしゃるのはそうではないんだろうと私は理解したんですが。つまり、玉井先生がおっしゃるのは、医学研究の中で遺伝子が関係していない医学研究には使えないという趣旨でおっしゃったんだと理解したんですけど、違うんでしょうか。  
(玉井委員) 
  遺伝子というか、ゲノムのほうが言葉として適切であれば、ゲノム解析研究と何らかの形で関連していると。 
(位田委員) 
  関係していないといけないということですね。 
(玉井委員) 
  で、幅広くとらえれば、かなりの研究がゲノム解析研究と何らかの形で関連しているというふうに、まあ、解釈の問題ですけれども、とらえることができるので、一般市民の皆さんも、何に使われるかわからないという同意もありなんだなという印象よりも、一定の限定をつけていると理解していただくほうがわかりやすいのではないかなと思ったんですけれども、それで特に支障がなければなんですが。  
(位田委員) 
  私は「一般」という言葉を消すことについては何ら躊躇しないんですが、そのときに、高久先生がおっしゃったのは……。 
(高久委員長) 
  またがっているかどうかという問題ですね。 
(位田委員) 
  はい、そういうことです。 
(玉井委員) 
  厚生省のほうはどうなんでしょうか。遺伝子解析研究を含む医学研究というのは、私の理解は、広い意味でゲノム解析研究というか、一応限定をつけていると読んだんですけれども、あくまでもミレニアムということですから。  
(厚生省企画官) 
  この解釈というのは、位田先生がおっしゃっているとおり、遺伝子研究というのは医学研究の一分野であって、医学研究というところで枠をはめておるという解釈でございます。したがいまして、文理的に解釈していくと、この「一般に」があろうとなかろうと、概念的に示すものは同じ範囲であると考えております。  
(高久委員長) 
  そうですね。 
(小田ライフサイエンス課長) 
  ですから、お願いしたいのは、むしろここは、他の医学研究に使えるかどうかという点についてはあまり判断をしないほうがよろしいんじゃないかと。したがって、ここは、他のゲノム研究一般に使えるということについては、我々は、ゲノム研究は基本的に有効だという判断をしていますので、他の医学研究は、ゲノム研究以外の医学研究というのは必ずしも判断はしていないので、その点についてまで言及するのはいかがなものかなと思うんですけど。  
(高久委員長) 
  そうすると、「他の遺伝子解析研究に使用すること」とすると、または、「提供の同意が得られるときに同時に他のゲノム研究」にすればいいんですかね。 
(位田委員) 
  ですから、その場合は、ゲノムにかかわらない研究がもしあり得るとすると、その部分については同意をとり直さないといけないということになるんです。 
(高久委員長) 
  ということになるのですね。 
(位田委員) 
  ですから、それでもよければ私は全然構わないんですけど、だけど、ゲノムにかかわらない研究に使えることもあるのではないかなというのが私のイメージとしてはあったので、少し広げて。「一般」という言葉は削りますが。  
(小田ライフサイエンス課長) 
  ちょっと今の点で、ゲノム研究以外に使うときは、とり直さないといけないかどうかということについては、ここは判断していないのではないでしょうか。ここはゲノム研究だけについてどうするかということを判断するのであって、ゲノム研究以外はまた別途それはそこで判断をされる必要があるので、ゲノム研究以外に使ってはいけないということをここで判断するかどうかですね。  
(位田委員) 
  いや、インフォームド・コンセントの原則からいうと、書いていないことは、確実にとり直さないといけないというのが考え方だと思います。書いていないことは、一番もとの原則に戻るわけですから、判断していないということではなくて、書かなければ、インフォームド・コンセントの一番、基本原則が適用されるということにすぎない。  
(町野委員) 
  今、結局、これは遺伝子解析についてのそれだから、ほかのことについては言っていないというのが事務局の立場なんですね。 
(高久委員長) 
  そうです。 
(町野委員) 
  それは一応、1つの理屈ですけれども、これができた以上は、この場合はこうなんだから、だから、ましていわんやこれ以外のものについてはだめだという原則が既にあるんだと考えるのが普通なんじゃないかということなんですね。それが位田委員の言われたことだと思うんですね。  
(高久委員長) 
  これは憲法ですからね。 
(小田ライフサイエンス課長) 
  その場合は、それ以外に、ゲノム研究以外のところで別途もう一つ、インフォームド・コンセントをとればいいんじゃないですか。それは別にこれと関係なく、そこの別な世界でとるかどうかと。  
(位田委員) 
  ですから、とらないといけないという……。 
(ライフサイエンス課長) 
  そこまで、他の医学研究一般の場合に、同意をあらかじめとれということはここで書く必要はないんじゃないかなという気がしているんですけど。 
(位田委員) 
  それは……。そうか、そうか、そういう意味で言ったわけね。 
(町野委員) 
  まあ、そういう解釈になるということでしょうね、とらざるを得ないというと。 
(位田委員) 
  それならそれでいいんです、はい。 
(中村委員) 
  そうなると、最初のゲノム解析、ヒトゲノム研究の定義のところに触れてくると思うんですけど、塩基配列情報という形で定義してあるわけですから、だから、その産物であるたんぱく質の研究は一切できない。だから、ヒトゲノムという形でインフォームド・コンセントをとるのであれば、例えばがんの組織であるとか、実際、遺伝子に情報があるから、その産物がおかしいかどうかを調べようと思うときに、この原則からいくと、またインフォームド・コンセントをとり直さないとたんぱくの解析はしてはいけないという解釈になるわけですね。  
(位田委員) 
  ですから、それでよければ、医学研究は除きますけど。 
(中村委員) 
  だから、そんな安易に、ここはゲノムだけだ、遺伝子だけだというふうに割り切ってしまうと、ここのゲノム研究という定義からもう1回考え直さないとやっぱり後々……。だからゲノム研究はどこまでなのかということ自体が人によって違うわけですね。塩基配列情報だけをゲノム研究だと思っている研究者もたくさんいますし、遺伝子産物まで含めてゲノム解析研究だと思っている、まあ、我々はそういうふうに思っていますけれども、そういう解釈が違うと、また、この憲法解釈が変わってくるわけですから。  
(高久委員長) 
  そうですね。ですから、1つの提案ですけれども、「他の遺伝子解析研究並びに関連する医学研究」というふうにするのはどうでしょう。「関連する」とすれば非常に範囲が広くなる。それぐらいが一番良いのではないかと思うのですが。もしご異論がなければ。  
(五條堀委員) 
  私は今の意見に賛成です。サイエンティストは、遺伝子解析研究でもたんぱくを入れていますし、ゲノム研究でも、豊島委員がおっしゃったとおりだと思うんですけど、これが一般に出たときに、非常に狭く遺伝子研究ととらえられると、中村委員の言うように、にっちもさっちもいかない状況になる可能性があるので、やはりそこは委員長がおっしゃるような関連医学研究、ただし「一般」はとるというのがいいのではないかと思います。  
(高久委員長) 
  それでは、そういうふうにさせていただいて、もうあと10分しかないものですから。 
  どうしても議論していただかなきゃならないことを議論します。せっかく玉井委員からいろいろご意見をいただいていますから、十四、十五、十九についていかがですか。主に十四、十五、十九について議論をしていただければと思います。玉井委員、ご意見をいただけますか。  
(玉井委員) 
  全部の項目について論点を整理する余裕はなかったので、気になった第十四と十五と、あと、これは個人的な思い入れもあって十九なんですけど、主に原則第十四と十五の第2項です。  
  パブリック・コメントを読みましたところ、意見が集中していたのは、第十四の2項と第十五の2項でした。第1項のほうについては、原則をうたっているので、皆さん例外を規定している第2項のほうを問題にされたのだと思うんです。原則第十四の第2項については、すべて事前の同意の範囲で対応すべきであって、例外は認めるべきではないという意見が多かったと思います。  
  それで、同意のとり方で、もしかしたらこういうのもあるのかもしれないなというのを考えてみたんですけれども、A遺伝子あるいはB疾患に関連する遺伝子を解析しますということでサンプルをいただいて、結果の告知、結果の開示については、第1のレベルとしてA遺伝子、B疾患関連遺伝子を解析した結果の告知について希望します、希望しませんと。それから、第2のレベルとしてはA遺伝子、B疾患関連遺伝子を解析する途中で、それら以外の遺伝子が見つかった場合の結果告知について、どんな遺伝子でも見つかったものはすべて教えてほしい、治療や予防に結びつく遺伝子が見つかった場合だけ教えてほしい、どんな遺伝子が見つかっても教えてほしくないということを事前に選んでもらえば、つまり、そういうような形での事前同意ですべてカバーできるのであれば、第十四の2項は必要なくなるのではないかと思ったのですが、試料提供の段階で、第2のレベルまで含めて同意をとることは、果たして現実なのかどうかということが私にはちょっとよくわかりませんでした。  
  治療や予防に結びつくという基準は必ずしも統一されているわけではないと思いますし、少しでも治療や予防に結びつく可能性があるのになぜ教えてくれなかったというクレームがつくことを恐れて、どちらか迷うようなときは教えおくほうがいいとか、コンセンサスは得られて−−あ、済みません、これはタイプミスですね、変換ミスです−−得られていないが、可能性がないとは言い切れないので教えておくほうが無難だという方向に流れる可能性はないだろうかということもあると思います。。それは研究者側の負担もさることながら、市民の間に混乱を招くことになりはしないかと思いました。なりはしないかというのは、なるだろうと言っているわけではなくて、これは単なる疑問形で、なるのかならないのかなというのをお伺いしたかったわけです。  
  第十四の2項は、これは確認なんですけれども、A遺伝子、B疾患関連遺伝子の解析結果を知りたくないと言っている人にそれをあえて伝えてしまうということを意味しているのではなくて、つまり、A遺伝子、B疾患関連遺伝子が診断的価値のあるもので、治療や予防に結びつく可能性があることを承知の上で、それでも結果の告知を望まない人がいたとしても、その人がその人の意向に反して結果を知らされてしまうわけではないということですね。A遺伝子、B疾患関連遺伝子について、結果の告知を希望しない人であっても、思いがけずそれら以外のC遺伝子が見つかってしまって、しかも、それが明らかに治療や予防に結びつくものとして、その時点で評価が定まっているものであったときにどうするのかという例外的な状況を想定しての規定であると、第2項は思います。  
  あらかじめターゲットになっていたA遺伝子、B疾患関連遺伝子について知りたいか知りたくないかは、本人が表明している同意の範囲で対応するけれども、その人の試料からあらかじめターゲットになっていなかったCという遺伝子が偶然わかってしまった場合を想定しているのが第十四の2項だと思いますが、これは、まあ、確認です。  
  したがって、選択肢としては、今申し上げたような状況を想定して、試料提供の段階で、1枚目の紙にある第2のレベルまで同意をとってしまって、あくまでも同意の範囲で対応するので、例外規定としての2項は削除するという選択肢が1つあると思います。  
  2番目として、試料提供の段階で、第2のレベルまで同意をとることは無理なので、例外規定としての2項を設けるという選択肢があると思います。この2番目を選択した場合には、さらに、どういう状況で例外を認めるかという問題が出てきて、幾つかコメントがなされていました。  
  その後は、論点の整理と言いながら、個人的な意見を書いてしまいました。やはりここは、遺伝カウンセリングのことについてもぜひ触れてほしいというのは、これは個人的な意見で、その前に、同意の範囲ですべて対応するというほうを選択するのか、それはちょっと無理なので、あくまでも例外規定としての第2項を残しておくというふうにするのかということがおそらく問題になっているのではないかなと思いますが、いかがでしょうか。  
(高久委員長) 
  A遺伝子、B遺伝子以外にというと、例えばA遺伝子、B遺伝子がやっている研究の途中で、疾患の予防治療にそれが関連するということがわかることもあるのですね、ほかの遺伝子でなくても。A、B遺伝子でも新しい事がわかる場合があると思います。だから、必ずしも別な遺伝子でなくてもと思います。その点についてはどうなんですかね。  
(玉井委員) 
  反対意見の多くは、あくまでも同意の範囲で対応すべきであって、最初に選んでもらえばよいのだというものでした。選んでもらったこと以外は、知りたくないとか、知らなくてもいいと言っている人にまで例外として知らせるということを認めるべきではないというのが主たる反対意見、削除すべきという反対意見だったと思います。  
(豊島委員) 
  私はどちらかというと位田先生がさっきおっしゃったような、人命を少しでも助けられるチャンスがあるかないかということを判断基準にするということのための例外条項であるということに賛成なんです。例えば、今の病院じゃなくて、昔私が前の病院にいたときにでも、ちゃんと病院に来た患者さんにそれを出すんですよ。例えば、がんである−−がんであるということは書かないですけれども、重大な疾患の場合に、それを知らせてほしいかほしくないか、あるいは家族に言ってほしいかほしくないか、全部書いてあるんです。それに丸つけさせるんです。でも、担当のお医者さんに言うのは、もう一度それらしく周辺から確認しながらインフォームしてくださいと。患者さんの考えは変わるんです。その上に、今、高久先生がおっしゃったように、1年、2年かかる研究、もっとかかるんですから、その間に、当然治療に関する知識もシフトしていきますから、初めにとった選択だけでオーケーというのは現場を知らない人の言うことだと私は思っています。  
(高久委員長) 
  難しいですね。確かに考えが変わる場合があるでしょうね、インフォームド・コンセントをとった後でもですね。 
(玉井委員) 
  私は、医療の現場にいて、事前にすべての場合を想定して選びますか選びませんかということを求めるというのはやはり無理がある場合があると思います。例外規定を全く設けないで、すべて事前の同意で対応すべきだというのは、一見正論のように見えるんですけれども、どうなのかなと思うところもあり、自分の意見としては、あえて知らせるのであれば、遺伝カウンセリングという支援がある中で知らせてほしいというところは変わらないんですけれども、ちょっとそこは先生方の意見を伺ってみたいなと思いました。  
(小幡委員) 
  非常に難しい、一番意見が分かれるところじゃないかと思います。 
(高久委員長) 
  十五のほうも同じような問題ですね。 
(小幡委員) 
  ええ、そうです。 
  これは、治療ではなく研究なんですね。研究のために遺伝子解析しますと言われて協力したら、自分は何も知りたくないと言っていたのにもかかわらず、倫理委員会で審査した結果、知らされてしまう。提供者は、自分は何も知りたくないと事前に表明して、研究に協力したわけですね。それにもかかわらず、余計なことを知らされるというのは、法律的にいって、自己決定という観点からすると非常に問題があるんですね。もちろん、多分、生命を救えるかもしれないとか、あるいは、かなり大きく見てしまうと、医療費抑制とか、そういうふうな観点からも、むしろ2項のような規定を置くべきであるという議論もあるかもしれませんが、研究で遺伝子解析に協力したために自分の意志にかかわらず知らされてしまうというのが、今の段階でどうかなという気が致します。もう少し後になれば事情が変わることはあり得ると思うんですが、しかし、現時点においては、もちろん2項でも、倫理委員会の審査のやり方によっていろいろ変わり得ると思いますが、現状では、直ちにはなかなかそぐわない面があるのではないかと思いますが。  
(高久委員長) 
  実際には、病気に関係することがかなり出てきますから、糖尿病とか高血圧だとか、その場合に、研究といっても、実際、臨床にかなり深いことの結果が出てくる場合があるわけですね。だから、知りたくないとおっしゃった場合でも、非常に有用な情報が出た場合に、現実には、本人にもう1回確認すると思うのですね。病気に関係の深い情報がわかりましたが、まだ知りたいですか、知りたくないですかと言って、それでもまだ知りたくないと言うのに教える必要ないし、知りたくないと言ったけれども、何か役に立ちそうなことがわかったならばやっぱり教えてくれと、普通再確認しないですかね。大体知りたくないという人はあまりいないと思うのですが。常識的に言いますと、せっかく検査をしてもらうなら、研究でも結果は知りたいと、自分の血液サンプルを提供したんだから。確かに知りたくないという方はいらっしゃると思うけれども。  
(豊島委員) 
  でも、遺伝子の疾患の場合には、ある意味では知りたくないという、自分の子供とか、その配偶者はそういうことに関係してきますから、あり得ると思うんですね。ただやっぱり、ここで規定しているように、治療法とか予防法とかいうのがわかった場合ということに限定されると思うんです。問題は、そうなると、コメントの中にもありますけれども、倫理審査委員会というのは、どれぐらいの権限とやるべき任務を持っているかというのが非常に重いので、それをどこまで規定するかという問題が出てくるんですね。だから、当然それは、逆に言いますと、研究者からのコメントに対して、それは正当に治療法が働いているかどうかの判断まで要るわけですから、それでいいかなという逆の考え方も、今の委員会の規定ではある。  
(高久委員長) 
  もう時間が過ぎましたので、次は、5月31日が予定されていますが、この次の議論で終わりますか。 
(小田ライフサイエンス課長) 
  先生たちのご一存に従うしかないですけれども。できれば31日が……。 
(高久委員長) 
  次回は、5月31日に、ご案内のとおり午後3時からやらせていただきます。できれば次回で終わりたいと思いますが、終わらない場合には、6回目を開かせていただいて、十分に議論をしたいと思います。  
(ライフサイエンス課長) 
  一言一句に魂が入っていないと、ほんとうに誤解を招くと逆な方向になりますので、そういった点で、慎重なご審議いただきたいと思います。 
(高久委員長) 
  それじゃ、時間も過ぎましたので、これで終わらせていただきます。いろいろご意見をいただきましてありがとうございました。 
   
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