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 科学技術会議生命倫理委員会 
ヒトゲノム研究小委員会(第3回)議事録 

1.  日時    平成12年3月31日(金)    17:30〜19:28 

2.  場所    科学技術庁第1・2会議室 

3.  出席者 

    (委  員) 高久委員長、位田委員、奥田委員、五條堀委員、玉井委員 
                 寺田委員、豊島委員、中村委員、眞崎委員、町野委員 
    (事務局)文部省  河村学術国際局研究助成課長、小田ライフサイエンス課長  他 

4.  課題 
    (1)学術審議会バイオサイエンス部会審議概要報告(文部省) 
    (2)ヒトゲノム研究に関する基本原則について 
    (3)基本原則に則った運用指針について 
    (4)その他 

5.  配付資料 
    資料3−1  遺伝子解析研究に係る倫理問題について(論点整理;骨子案)(文部省) 
    資料3−2  ヒトゲノム研究に関する基本原則(案) 
    資料3−3  「遺伝子解析研究に付随する倫理問題に対するための指針」(厚生省) 

6.  議事 

(高久委員長) 
  時間になりましたので、第3回のヒトゲノム研究小委員会を開会させていただきます。今回は、本年度の最後の日の、しかも夕方ということでしたが、遠くからもご出席いただきましてありがとうございました。  
  まず、事務局のほうから配付資料の確認をお願いいたします。 

(ライフ課長) 
  確認をします。その前に、本日、有珠山の噴火の件で、局長ほか、対策のほうに取られておりましてまことに申しわけございませんが、おっつけ、体があき次第、来ると思いますが、申しわけございません。  
  それでは、資料の確認をさせていただきます。TCIの紙が1枚ございます。その次が資料3−1遺伝子解析研究に係る倫理問題について、次が資料3−2といたしましてヒトゲノム研究に関する基本原則(案)でございます。資料3−3でございますが、厚生省のほうの「遺伝子解析研究に付随する倫理問題に対するための指針」の概要というものが用意してございます。  
  以上でございます。 

(高久委員長) 
  皆さん方のお手元にそろっていると思います。ない場合には事務局のほうにお申し出ください。 
  前回のこの小委員会の議事録ですが、委員の方々のご確認がまだ済んでいませんので、確認をしていただいた後に、次回、配付することになると思います。よろしくご了承いただきたいと思います。  
  本日は前回に引き続きまして、ヒトゲノムに関する基本原則(案)を中心に議論をしていただきたいと思います。食事があとで出ます。おなかがすくと人は怒りっぽくなりますので、なるべく早く終わりたいと思っています。  
  早速、議事に入ります。議題1として、学術審議会バイオサイエンス部会の審議概要の報告をお願いします。文部省のバイオサイエンス部会で遺伝子解析研究の倫理的な問題について審議をされていますので、本日の審議の参考になると思いまして、文部省のほうから概要をご報告いただく様にしました。研究助成課の河村課長さん、よろしくお願いします。  

(河村課長) 
  文部省の学術国際局研究助成課長の河村と申します。どうぞよろしく申し上げます。 
  ただいまお話のございました遺伝子解析研究に関する倫理問題についての学術審議会バイオサイエンス部会における審議のあらましをご紹介申し上げたいと存じます。  
  バイオサイエンス部会では、昨日、会議を開きまして、本件を議題として審議を行いました。会議の冒頭、部会長の井村裕夫部会長から、科学技術会議の本小委員会において、ヒトゲノム研究に関する基本原則を審議していること、それから厚生省において、指針(案)を作成し、現在、パブリック・コメントを求めている段階である。このことから、学術審議会としては、今、文部省がまた別のガイドライン等を設けるというよりは、国として統一されたものができて、それぞれが活用できるようにしていくことが望ましいのではないか、そういう認識が示されました。それを前提といたしまして、昨日のバイオサイエンス部会の場では自由な意見交換を行い、その結果を科学技術会議の委員会等にお伝えをしていくこととされました。  
  意見交換は、論点整理と題するメモ、これは本日の資料の3−1として入れていただいておりますが、これを資料として行いました。この「論点整理」という名前の資料は、科学技術会議や厚生科学審議会のご審議の内容でありますとか、大学関係者等の意見などをもとにいたしまして、昨日のバイオサイエンス部会での会議の場で委員の方々に協議いただく、いわば素材のようなものとして私ども事務局で作成をいたしたものでございます。  
  これをもとにしてご議論いただきまして出されたいろいろな意見は、この論点整理を修正しながら文章化をいたしまして、さらに学術審議会のバイオサイエンス部会、それから学術審議会にはがん部会という部会も置いてございますが、この委員のご意見を聞いた後、まとめていくという方針といたしております。  
  本日は、とりあえず、この論点整理の流れに沿いまして、昨日のバイオサイエンス部会で出されました意見の幾つかを口頭でご紹介することといたしたいと存じます。  
  部会では、この資料3−1の1枚目でごらんいただけますように、基本的考え方、研究体制、研究試料提供者の人権の保護、研究試料の取り扱い、こういう順序で意見交換を行いました。  
  1ページ、めくっていただきまして、基本的考え方ですけれども、ここでは現状認識として、研究者としてもっと説明をしていくべきだし、国民の方々にもこういうことを理解していただきたい、こんなことを議論の素材としてお出ししたわけでございます。これに関しまして幾つか出された意見を申し上げますと、まず、この論点整理の案では、遺伝子とは何かということが、実は書いてございません。その人の遺伝子とは何かということを押さえるべきだと。つまり、人が一人一人持っていて、一人一人異なる、そういうものだからこそ、個人の独自性とか人の多様性が示されるということで、その多様性は個人の尊厳として尊重されなければならない。そしてまた、差別の対象となってはならない、そういう認識がまず、基本的考え方の中で強調されるべきであろうというご意見が出されました。  
  これに関連して、これからは個人ごとに異なる医療というものが可能になる時代がやってくる。そうした時代認識の中で遺伝子による個の尊重の重要性を考えるべきだというご意見です。さらに、この遺伝子による個性の尊重という問題を取り上げる際には、あえて環境要因というものには言及しないほうがわかりやすいのではないか、そういったご意見がございました。  
  また、全般的にこれらの問題点を考えていく際に、生物学的な情報であるヒトゲノム、これはイメージとして片仮名で書く「ヒトゲノム」という趣旨でございますけれども、これと一人一人異なる個性を示す、その人のゲノム情報、昨日の会議の場では、ある委員の即席のネーミングで「個人ゲノム」という言い方もされたのでございますけれども、この2つは明確に分けて論ずるべきだと。あるいは、もう1つ、統計的な意味を持つ研究というものと個別の事例を取り上げる研究というものは分けて、例えば、研究成果のフィードバックなどについての議論はなされていくべきであろうと、こういう意見が出されたところでございます。  
  次に資料の次ページでございますが、研究体制という項に関しましては、倫理委員会の設置に関連して、倫理委員会にふさわしい委員の方々を確保することが、ジャンルによっては困難性が生ずる場合があるのではないかという懸念。それから、その個人情報の保護については、具体的で、厳格かつ明確な基準がつくられるべきだというご意見。さらに、遺伝カウンセリングに関しまして、一般の人々のこの問題に関する理解を深めていくことの重要性ですとか、さまざまなレベルでの教育において生物学的な知識を増していくことの大切さなどについての意見が出されておりました。  
  次に、研究試料提供者の人権の保護に関しましては、特に、次のページの事項として書いております4)家族への遺伝子情報の非開示という事柄につきまして、これはちょっとこの表現がよろしいのかどうかということもあったのですけれども、このことに関しまして少し議論がされまして、当面の意見のまとめとしては、基本的には、提供者の遺伝子情報は提供者に対してのみ開示するということを原則とするという考え方で大方の一致を見たところでございます。  
  最後に、研究試料の取り扱いに関しましては、いずれの、どのような研究の場合であっても、試料提供者の、自分の提供した試料を遺伝子解析研究に用いることへの同意が取れているという原則自体は重視されるべきであろうという方向性が複数の方々から出されておりました。  
  また、その外部の、例えば、企業に委託して解析するような場合において、サンプルの匿名化が徹底されるべきではないかということも議論の中に出ていたものでございます。  
  以上、簡単でございますけれども、議論の概要ということでご紹介を申し上げました。 

(高久委員長) 
  どうもありがとうございました。今のご説明にご質問がおありでしょうか。井村部会長が言われたことに私も賛成でして、主として共通の原則と指針をつくって、それに従う事が重要だと思います。  
  時間の関係がありますので、それでは、次の議題の2のヒトゲノム研究に関する基本原則について。この問題は前回もいろいろご議論をいただきましたが、その時のご議論で、位田委員を中心に基本原則の手直しをしていただくことになりました。資料の3−2がまとめていただいた案ですが、このまとめに際しましては、位田委員を中心として中村委員、玉井委員にいろいろお世話になりました。どうもありがとうございました。特に位田委員には中心となって大変ご尽力をいただきました事に御礼を申し上げたいと思います。  
  それでは、位田委員、資料の3−2に基づいてヒトゲノム研究に関する基本原則(案)について説明をよろしくお願いいたします。 

(位田委員) 
  前回は、資料を委員の先生方にお届けするのが非常におくれてぎりぎりになりまして、貴重なお時間を取ってしまってご迷惑をおかけしたことを、まずおわびしたいと思います。今回の案は、一応、形式的には前回よりは整えたつもりでございますが、内容的にはもちろん不十分なところがあるかと思いますので、よろしくご議論をいただきたいと思っております。  
  この基本原則(案)をつくるに当たりましては、当初から中村委員のご意見を承っておりますし、一緒にいいものをつくっていくということで努力いたしました。それから、玉井委員については、この下作業をしている委員会でもご一緒させていただいて、いろいろ貴重なご指摘をいただきました。ヒトゲノム研究に関する基本原則(案)ということで、資料の3−2でお配りいたしております。前回は、ヒトゲノム研究に関する基本原則と、それから説明文書、最初は研究指針という形で出させていただいたのですが、今回はそれを少し形を変えました。中をごらんいただければわかりますが、第1部では基本原則、つまり原則の部分だけを書いております。それから第2部のところでは、それぞれの原則についてわかりやすいように、理解しやすいように解説をつけるという形をとりました。前回、研究指針は、ミレニアム・プロジェクトでつくられている厚生省の指針案があるので、それを検討してみたらどうかというご示唆がありましたので、今回は研究指針という形はとりませんでした。「解説」という名前にさせていただきました。  
  この第2部のほうは、ごらんいただければわかりますが、各原則ごとにそれぞれ、まず原則を掲げて、その下に解説をつけました。原則は二重の罫線で囲ったものでございます。  
  前回、ご議論をいただき、もしくはご意見をいただいたところからかなり変わった部分もございますので、少し全体をお話ししながら、特に変更した、もしくは修正した部分についてやや詳しくご説明をしたいと思います。  
  原則のほうからまず入らせていただきたいと思います。基本的考え方については、若干の字句の修正はしておりますけれども、基本的には同じような内容でございます。ですから、これは前回にもそれほど大きな議論がありませんでしたので、これは説明は省略させていただきます。  
  それから第一章「ヒトゲノムとその研究のあり方」につきましては、前回、特に多様性というのを強調して書いたらどうかというご示唆もありましたし、ゲノムに多様性があるからそれぞれの人の間が平等であって差別はだめなのだということを明示するべきだというご意見がありました。そこで、特に第一章の第二ですが、そこで、各個人のゲノムがそれぞれに異なっていて、個人の独自性と唯一性を示し、かつそれが人類全体は多様であるということを示しているのだとしました。だから、遺伝的特徴の如何を問わず、尊厳と人権が尊重されなければならず、これは集団の間が平等という趣旨ではないので、若干舌足らずになっておりますが、それぞれの個人はお互いに平等であって差別の対象になってはならないということで強調しておきました。第一章については大体それぐらいが大きな点であります。  
  第二章「研究試料提供者の権利」ということですが、これは特に第一節のインフォームド・コンセントについて、前回は、説明のときにも申し上げましたが、厳し目の原則をまず出させていただいて、それを現状に合わせて調整していくという議論の仕方をとりたかったものですから、前回はかなり制限的な条文を並べておりました。今回は、いろいろご意見をいただきましたので、その現場の状況を踏まえながら修正をさせていただいた部分が幾つかあります。  
  第二章第一節の第五、六については前回とほとんど同じであります。原則は、事前に十分な説明を行った上で提供者が自由意思に基づく同意をする、ということです。第六は同意能力を欠く者の場合はどうするか。代諾者の規定があります。  
  調整をいたしましたのは第七、八、九に関する部分でございまして、原則はインフォームド・コンセントをきちっと取るということでございますが、研究の方法、目的、内容等々、さまざまなケースが考えられますので、そのそれぞれに非常に厳格なインフォームド・コンセントを取ろうとすると現実に不可能な場合もありますし、研究が不合理に制約をされる可能性があるということを考えまして、第七では、インフォームド・コンセントはちゃんと取らなければいけないのだけれども、具体的な研究の目的と内容に照らして、その研究に最も適切な方法でインフォームド・コンセントの手続きを考える必要があるということを出しました。この点が1つ。  
  それから、第八では、当初、提供していただいた試料について、別の目的で、別の遺伝子研究をする、もしくは、より一般的に医学研究に使うという場合にはどうするかということを書いております。いわゆる包括的合意の問題でございまして、これは、ある程度、包括的合意を認めておかないと、現実に遺伝子解析の研究を進めるのは非常に難しいケースもあり得るというふうに考えますし、同時に、遺伝子解析のために試料をいただいたとしても、その試料が非常に貴重なものであるという観点から、遺伝子解析だけではなく、その他の医学研究についても使える可能性はやはり残しておかなければいけない。その場合に、インフォームド・コンセントについて何らかの説明の簡素化と言いますか、調整をすることも認められるのではないかということが第八であります。ただし、その場合には、基本的には、倫理審査委員会の審査を経て包括的合意をやってもよろしい、もしくは包括的合意を与えられた試料を使ってもよろしい、という方向を打ち出しました。  
  それから、第九のところは、既に提供された試料、厚生省のほうでは「既採取試料」という言い方になっておりますが、こちらでは試料はご本人が提供するということを強調したいために「既提供試料」という言い方をとりました。既提供試料については、つまり、この基本原則ができる前に提供されている試料については、同意の範囲内に限って使用することができるというのを原則に置きました。ただし、すべての場合に限って同意の範囲内でのみ使用することができるということになりますと、これまで、蓄積されている貴重な研究試料中に浮く可能性があります。しかも、その研究試料というのは、医学研究、医療の発達、発展に多大な貢献をするということが当然見込まれますので、特定ヒトゲノム研究に提供する際のインフォームド・コンセントの重要性と、それから、その提供試料について研究をして見込まれる成果の重要性とを勘案いたしますと、既提供試料であっても、一定範囲で利用を認めるのがよいであろう。その場合にどういう条件にするかということを、これは特に倫理委員会に半ばげたを預ける形にしておりますけれども、きちっと審査をいただいて既提供試料でも使えるようにしようと考えました。  
  それから、4ページの第九の4のところでは、「既提供試料で、バンク等の保存機関へ寄託され、または、既に市販されているものを用いて研究を行う場合には、通常の科学研究試料と同様に扱うことができる」、つまりインフォームド・コンセントは取らなくても使うことができると。これは、バンクなり、市販されているというのは別扱いにしたいということでございます。  
  それから、第二節の提供者の遺伝子情報に関しまして、遺伝子情報の保護管理と体制整備について第十一で定めております。ただ、ヒトゲノムの研究に関しましては、インフォームド・コンセントは1つの柱ですけれども、しかし、同時に遺伝子情報の保護、個人情報の保護と申し上げますが、個人情報の保護が厳格に行われなければ、幾らインフォームド・コンセントをきちっと取ったところで、実は、その提供者の人権、尊厳というのは保護できません。書き方としては非常に簡単ですけれども、かなり厳しい態度で臨むということを示したつもりでございます。  
  ほんとうは、個人情報の保護管理体制をもう少し詳しく書くほうがいいのですが、原則という文章の性質からすると、あまり細かいことをつらつら書き並べるのは適当ではないと考えましたので、後ほど、もし用意ができていれば配っていただけると思いますが、解説のところでもう少し詳しい形でどういうふうに保護管理するかということをお話ししたいと思っております。  
  それから、第二節の第十四、これは知る権利、知らない権利に関連するものです。血縁者に対する情報の開示、つまり提供者本人は遺伝子情報を知りたくない、もしくは遺伝子情報に基づく診断の結果を知りたくないと言っているけれども、しかし、それは血縁者に知らせたほうが血縁者の健康、もしくは病気の予防等に非常に有用であるというケースがあり得るわけですので、それについて第十四に書かせていただきました。基本は、血縁者の場合であっても、提供者本人の承諾が要ります。勝手に研究者または主治医が、その遺伝子情報、もしくは診断の結果を血縁者に流すということは許されません。これが十四の1ですが、2のところで、その遺伝子情報の内容、もしくはその診断の内容によって遺伝性疾患の原因であるかまたはその可能性があるということがわかって、かつ当該疾患が予防もしくは治療が可能であるという条件があれば、倫理委員会の審査を経てその判断は血縁者に伝達されてもいいのではないかという立場をとりました。予防もしくは治療が不可能な場合には、やはり血縁者にも伝えないほうがいいのではないかというのが今回の立場でございます。この点については、立場が、知らせるべきであるという立場と、いかなる場合も知らせるべきではないという立場と対立をするかと思いますので、この点は若干ご議論をいただいたほうがいいかなと思っております。  
  それから、あと第十五及び第三節については、原則の中身は大体、前回とあまり変わっておりません。 
  第三章「ヒトゲノム研究の基本的実施要件」ということにつきましては、特に第二十一のところで、ヒトゲノム研究が、先ほど申しましたように、それぞれさまざまな研究形態をとりますので、この基本原則で画一的に研究の手続きはこうだというふうに考えるよりは、きちっとそれぞれの研究計画に応じて研究実施の手続きを設定して、もちろんそれは研究計画に書き入れるわけですけれども、それに基づいて研究をやっていただく。手続きの遵守ということを書いております。  
  第四章「社会との関係」という点に関しましては、これも前回とそれほど大きな変更はありません。若干の字句の修正とか、少し文章を増やしたりしたところはありますが、内容的には、前回もあまりご議論はなかったと思いますのであまり変えておりません。  
  附則のところで、この基本原則は、実際に動かしてみて、そしてヒトゲノム研究が実際に進展していく度合いを見ながら、一般の人々がヒトゲノム研究を理解していただく、もしくはヒトゲノム研究の重要性というのを理解していただくにつれて、見直す可能性というものも、やはり現時点で述べておく必要があると思いましたので、附則につけました。  
  基本原則については以上でございます。 
  続けてよろしいでしょうか。 

(高久委員長) 
  まず基本原則をご議論をいただいて、その次に解説についての議論というようにいたしましょうか。 

(寺田委員) 
  実は、これ夕べ着きまして、前のと比較して見ていないのですが、前よりもちょっと分厚くなっているような感じがするんです。そういう細かいことは別にしまして、一番の問題は、ダブルスタンダードになっていないか心配です。要するに、解説だと言いながら、細則とか、そういうことがここに入っていて、厚生省の出しているものと一致していないような文章が多いのではないか。要するに、研究者の立場になってみると混乱しないかということです。今、パブリック・コメントを求めてやっているのができ上がって、厚生省のほうを見てやったらいいのか、この解説を見てやったらいいのか混乱をおこしませんか。初め、これは憲法をつくるという話だったと思うんです。ところが、「解説」という言葉のもとに、細則がここに入っているのではないかと心配です。それが、お互いに矛盾しているようであれば大変困るということなのです。比較して細かく見ている時間がなかったものですから、聞いています。  

(高久委員長) 
  私もあまり詳しくは見ていないのですが、基本原則は今、位田委員がご説明になった最初の7ページでいいと思います。解説はむしろアタッチメントみたいな形になる。後でご議論いただきますが、あまりダブルスタンダードにはなっていない。寺田委員のご意見に私も賛成です。基本原則は7ページまでとして、あとは基本原則の説明ということにさせていただく。ですから、一部、二部ではなくて、ヒトゲノム研究に関する基本原則とヒトゲノム研究に関する基本原則の解説という様にわけたほうが良いと思います。  
  それでは、その基本原則についてご意見をいただきたいと思います。特に4ページの、位田委員がご指摘になった、病気の予防または治療が可能なときには本人の承諾がなくても倫理委員会の審査を経てその結果を血縁者に伝えることができるという点は、かなり微妙な問題です。玉井委員は、こういうことについてのご経験があると思いますが、どうでしょうか。  

(玉井委員) 
  この点に関しては、厚生省のガイドラインのほうはここまで踏み込んだ記述にはなっておりませんので、ダブルスタンダードということではないと思いますけれども、多少調整が必要な部分ではないかと思います。  

(高久委員長) 
  そうですね。指針にも少し関係がありますね。 

(玉井委員) 
  その点に関しては、これはゲノム研究、あくまでも研究に関しての原則ということでございますので、遺伝子といっても研究段階にあるものというのが大前提としてあると思います。ですから、研究段階にあるものというふうに考えたときに、血縁者への情報開示ということまで果たして考える必要があるのかということはワーキンググループの中でも問題になりました。ただ、こういうことを書いておかないと、極めて例外的なことではありますけれども、そういうふうにすることがその人に役に立つのではないかということがあった場合に、それでも開示をしてはいけないということになってしまうと思います。書いておかないと絶対に開示をしてはいけないということになってしまいます。ですから、極めて例外的にしかこういうことは起こらないけれども、もしそういうことがあった場合には、それも認められるという意味で書かれたものです。ただ、これは、必ずそういうことがあった場合に血縁者に情報を開示しなさいという開示義務ではなくて、そういう状況があったときにはしてもよろしいですよ、要するに、守秘義務というものがありますので、守秘義務をこちらに置いておいて、あえてそういうことをしてもよろしいですよという、極めて例外的なことについて述べた部分だと思います。厚生省の指針のガイドラインのほうは確かにここまで踏み込んだ記述にはなっておりません。むしろ研究段階にあるものなので血縁者の開示は原則として認めないというような書き方だったと思うのですけれども、この点に関しては、ほかの先生方のご意見も伺って多少調整は必要かなと思います。  

(高久委員長) 
  どうでしょうか。 

(中村委員) 
  1回目に私が申し上げたのですけれども、これは人類遺伝学会の新しい指針で、人類遺伝学会の倫理委員会で話したときに、例えば、遺伝性のがんのような場合に新しい遺伝子がわかる。そうした場合に、本人がどうしても拒否した場合にどうするかという話し合いがあって、やはりその場合に、知らせないより知らせたメリットのほうがはるかに大きい可能性がある。だから、こういう考え方は残しておいたほうがいいのではないかという案が出て、結局、人類遺伝学会の指針としては、この趣旨の項目を入れているのです。  

(高久委員長) 
  わかりました。ほかに何かご意見ありますか。どうぞ。 

(ライフサイエンス課長) 
  少し戻って申しわけないのですが、寺田委員の発言で少し気になって、寺田委員の立場上、そういうことかもしれませんけれども、私のこの立場上、基本的にこの憲法ということは、逆に言いますと、少なくとも、考え方というのは、策定する時期が少し違っていますけれども、基本的には、これが逆に厚生省の指針を、ある意味で縛るというようなことですので、逆に、厚生省の指針が今あるから、これをそのとおりにしなければいけないということではないという立場上、そういうことだけ、寺田委員の立場は私もわかりますけれども、そういう考え方でやっていただきたいと思います。  

(寺田委員) 
  誤解ないように、どういう立場かわかりませんが、私の立場で言っているわけではないです。そういう発言は非常に失礼だと思います。私は、厚生省だからどういう立場ではなくて、日本の中のすべての研究者がダブルスタンダードがあったら困ると考え発言しているわけです。こういうのを見て、日本中の研究者がどっちに従ったらいいかということだけを言っているので、今の課長の発言は取り消してください。  

(ライフサイエンス課長) 
  はい、わかりました。少なくとも、厚生省のほうも現在、検討中、意見交換の段階でございますので、お互いに、今まさに話をしているところでございますので、よろしくお願いいたします。  

(高久委員長) 
  これは、基本原則ですから、厚生省のほうはむしろ運営の指針だと思います。基本原則は国全体の基本原則である。私は、指針も、やはり国全体に共通のものをつくる必要がある。そういう意味で、基本原則と、二部というのではなくて、基本原則の解説にしたほうが良いと申し上げたわけです。これが基本原則になる。厚生省も文部省も科技庁も、あるいは農水省も関係がある。ですから逆に、例えば、家族に知らせる云々の方針が出たら、厚生省の指針もそういうふうに変えないとまずいと思います。基本原則に沿って。ですから、その点は皆さん十分にご理解しておられると思います。  
  それでは、どうぞ。 

(位田委員) 
  厚生省とのダブルスタンダードにつきましては前回ご指摘をいただきましたので、厚生省のご意見もその都度、伺いながら考えてみたつもりでございます。ただし、厚生省のものに合わせるというのは順序が違うと思いますので、原則はどうあるべきかということをまず考えまして、もしそれで厚生省と差が出る場合には、どちらを取るかということで統一をされるべきだと思いました。ただ、基本的には厚生省の案とはそれほど違わない形です。しかも厚生省のほうは指針ですけれども、これは原則ですので、基本的には大きな異同はないというふうに私は理解しております。  

(寺田委員) 
  まともなことを私は言っていると思います。位田先生が言われるように、これが憲法であって、原則をつくって、それで指針をつくっていると、例え、順番は別にあってもそのように考えています。ただ、問題は、省庁によって違うとか、そういうこともいうものだから現場は混乱するのです。今、課長が厚生省の立場だとか、そう言われると、私はほんとうに頭に来ます。オールジャパンのためで、そういうつもりでここに出ているわけではありません。  

(高久委員長)   
  その点は皆さんご了解いただきたいと思います。 
  ほかに何か、この原則について、どうぞ。 

(眞崎委員) 
  この基本原則は、厚生省のガイドラインの強い影響を受けています。遺伝子を扱う場合の倫理問題には2つあります。ひとつは4番に書いてあるように生命操作をするという問題、もうひとつは個人情報に結びつくという問題で、この遺伝子を解析することによって生命操作に関する倫理問題にどんな問題があるかということが欠けている感じがします。このあたりをもう少し議論しておいた方がいいのではないかと思います。  

(位田委員) 
  この基本原則は、ヒトゲノムについて、研究試料を提供者から提供していただいて、ある意味では、体の外で研究をするということに限定をいたしました。ヒトゲノムそのもの、もしくは遺伝子そのものをいろいろ操作することによって人の生命を操作することにつながるという、将来的にそういうことがあり得るという危険性は、ここに書いてありますけれども、ただ、それが、そのヒトゲノム研究とどういうふうにかかわって生命を操作することになるのかというところまでには、このヒトゲノム研究基本原則という枠組みで考えると、そこまで言う必要はないのではないか。ただ、生命を操作することにつながる危険性があるよというウォーニングだけはしておいたという、そういう表現を使ったつもりでございます。それを全く無視しているというつもりはございません。むしろ、遺伝子診断とか、遺伝子治療に入ってくるとそういうところにつながる可能性が大きくなるかなと思います。ここはまだ研究の段階でとどまるはずですので、そこまでは書いておりません。  

(高久委員長) 
  ほかにどなたか、どうぞ。 

(五條堀委員) 
  第二十四、いただいた資料の6ページなのですが、研究成果の公開と社会への還元というところで、1項と2項がありまして、特に1項はもう社会に還元されなければならなず、公開されることを原則とすると、これはもうそのとおりだと思います。その2項目なのですけれども、ヒトゲノムの研究の成果は、特に人々の苦痛の除去及び健康の改善のために用いなければならない。もちろんそれは当然なのですか、同時に22ページを見ていただきますと、二重四角の下から2番目ですが、ヒトゲノムの成果のところで解説がありまして、「ヒトゲノム研究は、基礎科学研究としても行われることは言うまでもないが、その成果の応用は」ということになっていまして、実はこれは解説を見ると、まさにそのとおりだと思うんですけれども、第二十四の2だけ見ますと、つまり、ヒトゲノム研究をどこまで大きくとらえていくか。どうしても人権や個人の尊厳ということで医学的側面が強くなりますけれども、これがヒトゲノム研究という大枠の憲法となってきますと、例えば、日本人の起源とか、あるいは、人類がアフリカからどう出てきて世界に広がったかというような研究も頻繁に行われておりまして、それが必ずしも人々の苦痛の除去や健康の改善のためではないんです。非常にアカデミズムというか、むしろ我々の知的な、我々自身の本質を知りたいと、そういうところもちょっと包括できるような。  

(高久委員長) 
  そうですね。逆に言うと、この1番ですべてを言いあらわしている可能性はあるのですね。社会に還元ということで。確かに五條堀委員がおっしゃるように、サイエンティフィックに極めて重要で、しかし、病気には関係がないゲノム研究は随分ありますね。どうぞ。  

(位田委員) 
  その辺は私の文章の舌足らずなところかなと思うんですが、「とくに」というところで、まさに解説のところのように理解しつつ、特に病気を救う、健康の管理というところを強調したかったためです。二十四の1は一般的なことを書いておりますので、その中でも、やはり医学上の貢献というのは非常に大きいということを強調したいためにこういう文章を置きました。ですから、例えば、「ヒトゲノム研究の成果は」の後に「科学全体の進歩に貢献するとともに、とくに人々の苦痛の除去および健康の改善のために用いられなければならない」とやってしまうと文章がおかしくなるので、より一般的なのを1つ置いておいて、その後に「とくに」ということにすればよろしゅうございますでしょうか。  

(高久委員長) 
  サイエンスの向上は一番のほうに入っているといえば入っていますね。「用いらなければならない」という表現よりは「期待される」ぐらいのほうが良い。どうでしょうか。  

(位田委員) 
  何々しなければならないという表現をずっと使ってきましたので、それに合わせるという意味もあって「用いられなければならない」というふうに書きましたが、「用いられる」という言葉で、「なければならない」というのを抜けば、同じ意味ですけれども、少しはやわらかいかなと思いますが。  

(高久委員長) 
  「用いられる」だけだと、意味になりますかね。 

(位田委員) 
  まあ、「用いられなければならない」ということを念頭に置いてそう読んでいただくと。少し、修文の点については考えさせてください。 

(高久委員長) 
  はい。それでは、時間の関係がありますので、解説のほうを、引き続いてお願いします。 

(位田委員) 
  解説なのですが、前回、お出ししました研究指針の内容を解説の中にかなり取り込んでおります。内容的には、先ほど寺田委員がご懸念になったようなことが前回はありましたけれども、今回は、その辺は厚生省のご意見を聞きながら妥当な範囲で厚生省の案を取り入れて文章をつくっております。  
  順番にご説明したいと思いますが、第2部解説のところの「はじめに」のところは前回とそれほど変わりはありません。 
  第一章「ヒトゲノムとその研究のあり方」につきましては、第一章の第一にヒトゲノムは人類の遺産であるという言葉をつけ加えましたので、それについて1パラグラフ入れましたけれども、それ以外には中身は変わっておりません。それから、第一の2、3についても同じでございます。  
  それから、第二は、先ほど原則のところでご説明しましたように、個人の多様性、人類の多様性、それに基づいて個人の間の平等、差別の禁止というものを一般的に説明をしております。  
  それから、第三のところで、このヒトゲノム原則については、単に研究者だけではなくて、民間も含めたすべての関係者、関係機関において、この原則の内容を十分に尊重するべきだということを強調しております。  
  第四は変更はございません。 
  第二章「研究試料提供者の権利」ということですが、ここの部分とその次の第三章が特に厚生省の案と、前回はかなり衝突する部分でした。前回から申し上げておりますように、私のドラフトの仕方としては、厳しい原則を出しながらご議論いただいて、妥当な範囲でそれを調整していくというやり方をとりましたので、前回のをあまり基準に置かれるとちょっと違うのですが、それはさておいて、原則の第五については、解説の中身も前とはそれほど違いがありません。  
  それから、第六「同意能力を欠く者」については、これは代諾者の選任というのが一番難しい問題でございまして、これはできるだけ研究計画に書いて倫理審査委員会の審査を経る、ある意味では倫理審査委員会に決めていただくということを考えております。そのうちに成年後見等の形が出てくれば法に定めができるケースもあり得るかと思いますので、法に定めがある場合にはそれに従うし、定めのない場合には提供者の権利と最大の利益を考慮するという形にいたしました。  
  それから、第七が最も新しい部分でありまして、研究の仕方が非常に多様なので、それぞれの研究方法、もしくは研究計画に従って実施手続きをきちっと定めて、それにのっとって研究をしていただきたい。ある意味では、これは研究者、もしくは研究機関の自主性を尊重して定めた規定でございます。  
  それから、インフォームド・コンセントにつきまして第七の2つ目のパラグラフに書いておきましたけれども、先ほど原則のところで申しましたように、インフォームド・コンセントはちゃんとしていただくというのが基本原則でありながら、しかし、場合によっては、それを簡素化するということも、いろいろな条件を満たす場合には可能であるという考え方を第二段落で示しております。そういう個別の研究の方法についてはすべて研究計画に書いていただくということを前提に考えておりまして、それは倫理委員会の目を通りますので、そこで何らかの問題があれば修正するなり、もとの厳格なインフォームド・コンセントに戻るという可能性を示しております。  
  それから、第八の1、2、3については、先ほど申しましたように、包括的同意ということでして、包括的同意が許される得る場合、その場合に説明と同意をどういうふうにするかということをここに述べております。あまりに安易に包括的同意を取るということは認められないという立場をとっておりまして、基本的には、原則にも書いておりますけれども、試料そのものは非常に貴重な研究試料ですので、それを最初に提供していただいた目的以外にも使う可能性は認めておりますが、単に研究の便宜とか省力化を目的として包括的合意を取るというのは認められない。ある程度、できるだけこういう目的でも使いますよということが予測されるほうが望ましいので、できるだけ具体的な別の遺伝子研究とか医学研究の内容が、もしわかっていればできるだけ説明をしてくださいという形をとりました。いずれにしても、包括的同意をするにしても、提供者の個人情報が厳格に保護されなければ、当然、その研究計画そのものが承認されてはならないわけでありますので、そこのところは特に第八の(ハ)の原則を強調する形になっております。  
  それから、他の目的への使用という場合であっても、提供される試料を匿名化することが予定されている場合で、かつ連結不可能ということを確保することを条件にしてインフォームド・コンセントにおける説明を非常に簡素な形で、例えば、みんな集めて一緒に説明をするとか、そのほか、お医者さん、もしくは研究者以外の方、例えば看護婦さんとか保健婦さんとか、そうした人が説明をするということも可能ではないかという形にしてあります。  
  それから、先ほど、もう1枚手書きのものを配っていただいたのですが、それを追加したいと思っております。文言はまだこなれた形にはなっておりませんけれども、手書きのほうをごらんいただきたいと思います。そこでは、「例外的に、集団を対象とする研究であるが、匿名化処理をせずに研究を行うことが不可欠である場合(例えば、疫学的調査研究で追跡調査を要するもの)には、幾つかの条件のもとで倫理委員会の審査を経てインフォームド・コンセントの手続きを簡略化することができる」ということにいたしました。その条件として、その研究の持つ科学的価値が極めて高いということ、個人情報がきちっと管理される保障があるということ、通常のインフォームド・コンセントの手続きでは研究の実施が不合理に制限されるということが明白であるという場合、そういう条件のもとで、これは勝手に研究者がそういうふうに主張してやるのではなくて、きちっと倫理審査委員会がその研究計画を審査するときに、そこもスクリーニングをして、そうであればインフォームド・コンセントの手続きを簡略化してもよろしいというのを、この第八の2の次に文章をつけ加えようかと思っております。  
  それから、第九「既提供試料」につきましては、これは厚生省の案はかなり幾つかの部分に分けて規定されておりましたけれども、原則と解説という形であれば、そういうふうにあまり細かくするのは妥当ではないと考えましたので、一般的な形で説明をしながら、その場合場合によって具体的な使用条件を定めて既提供試料を使っていただく。ただし、重要なのは個人情報の管理ということですので、そこも強調する形に出しました。  
  バンク試料については新たにつけ加えました。原則の4と並んで、下線が引いてある部分ですが、バンクに保存されていたり、市販されていた場合には、通常の科学研究試料と同様にインフォームド・コンセントは別に取る必要はないという形にいたしました。  
  それから、第十はあまり問題はないかと思いますが、第二節の、「遺伝子情報の保護管理と体制整備」ということなのですが、情報の保護管理について、この1つしか実は原則の中にはきちっと書いておりませんので、これを情報管理についてどういう原則の文章にするか、もしくは解説をどういうふうに書くかというのはかなり迷いまして、実はここへ来るまで迷っておりまして、やはりもう少し具体的なことも書く必要があるのではないか。しかし、あまり具体的になりますと、まさに指針になってしまいますし、現実にその各研究機関の制度上の問題もございます。場合によっては、個人情報保護法もこれからできますので、そういう問題にも絡んできますので、なるべく、あまり具体的な形にならずに、個人情報保護について厳格な要素をここに書き込んだらどうかというふうに考えました。  
  それで、第十一の解説には、次のような要素を含むべきであるということで1、2、3、4、これ以外にももう一、二、つけ加えたほうがいいかなと私は思っておりますが、ちょっと文章にするまでには、私の考えを決めかねておりました。ですから、この十一の原則と解説についてはまだ完成をしておりませんので、申しわけありません。  
  実は、原則の十一の次に、これは本来なら十二になるのでしょうけれども、それをつけ加えたらどうかというのを、もう1枚、手書きの文章をつけさせていただきました。本来なら、手書きのほうが十一と書いてありますが、十二になります。これは原則として書くのですが、「研究機関は個人情報の漏洩を防止するために必要な方策を設定しなければならない」、2で「個人情報の漏洩が判明した場合には、漏洩した者、当該研究を行う研究者、個人情報管理者及び研究機関の長、その他、漏洩した情報に関連したものに関して、その責任について身分の不利益処分を含めて厳格な処置が講じられなければならない」。3として「個人情報の漏洩によって損害を被った者は、損害の事実のみによって補償又は賠償を受けることができる」という形を取り入れたらどうかというふうに思っております。  
  その下に線が引いてあって、その下に「研究機関は、これを研究者および研究に関与する者にヒトゲノム研究における個人情報保護の重要性を周知徹底し、またこれらのものは、個人情報の持つ意味とその保護の必要性を十分に理解しなければならない」と書きました。これをヒトゲノム研究の基本的実施要件のところか、もしくは第四章あたりに入れたいと思っているのですが、ちょっと適当な場所を決めかねましたので3という形にして入れさせていただいております。そういう意味で、ちょっと未完成なものをここにお出ししてまことに申しわけございません。  
  それから、第十二は、いわゆる知る権利ですが、前から研究と診断はきちっと分けるべきだということでしたので、研究結果だけではあまり意味がないケースがあるので、そういうあまり意味がないケースがありますよということをきちっと説明をするということ。それから、もし診断とつながるような場合には知らせるかどうかということも考える必要があるという趣旨のことを書いております。ただ、場合によっては、匿名化されたものもかなり多いので、提供者本人には知る権利はありますけれども、それを実際に行使するときには、これがAさんの情報だというのを特定するのに非常に手間がかかる。その手間がかかる割には出てきた研究結果については、生のというのはあまりよくない表現なんですけれども、生の結果ですので、それを知らせてもあまり意味がないということをきちっと説明をするということを書いております。  
  それから、第十三の「知らない権利」はそれほど大きなことは書いてありませんが、第十四の、先ほど少しご議論いただいた「血縁者等への情報開示」についてはもう少しわかりやすい形で説明をしています。いろいろな説明の仕方というか、原則の書き方がありまして、厚生省のはあまり踏み込んでいないというのを玉井委員がおっしゃいましたが、提供者が嫌だと言った場合には血縁者に伝達してはいけないという立場と、場合によっては伝達してもいいという立場、それからもう一つ伝達していいかどうかを考慮するという書き方もあります。ただ、「考慮する」と書いてしまうと、伝達していいのかどうか、現場のお医者さんないし研究者は迷われると思いましたので、原則としては、どちらかはっきりした立場を書くというのがいいのではないかというのが私の考え方でございまして、そういう意味で、条件つきで倫理審査委員会も通して血縁者に伝達される可能性は、やはり開いておくべきだと考えました。  
  そこから後は、それほど大きな問題はありません。第十七の「その他の権利等」の中の「損害の補償」ということに関してですが、現在は研究ないし医療の場面では、一応、過失責任、つまりお医者さんが十分注意していても医療事故が起こった場合には基本的な損害賠償というのはないけれども、過失があれば損害賠償をしなければいけない。これは過失責任と言うんですが、そういう考え方でありますと、ヒトゲノム研究というのは、普通でもよくわからないわけですから、損害が発生したときに研究者もしくはお医者さんの側に過失があったというのを立証するのは極めて大変だと思われます。むしろ、損害が発生したら、その事実だけでもって賠償責任が研究者もしくは研究機関の側に発生する、これは無過失責任と申しますが、そういう考え方を取り入れてはどうかと、これは提言であります。というのは、現在の法律上は過失責任ですので、無過失責任を取らなければいけないと書いてしまうと若干、法に触れるところがあるので、そこのところは解説のところで、少し短過ぎる解説でわかりにくいかもしれませんけれども、そういう意味を込めて書いております。  
  それから、第十八の遺伝カウンセリング等の社会的、心理的な支援ということですが、これは現在、遺伝カウンセリングの制度が非常に不十分であるということはよく理解しておりますので、今後、そういう遺伝カウンセリングの体制を整えていただくという希望も込めて、こういう書き方をしています。ただ、現実に遺伝カウンセリングの制度がない場合には、別の研究機関のカウンセリングを利用していただくということも当然考えておくべきだというふうに考えましたので、第十八の解説になっております。  
  それから、基本的実施要件につきましては、第十九、二十については前回とそれほど変化はありません。第二十一については、先ほど少し原則のところで触れましたけれども、具体的な研究それぞれについて、やはり最も合理的かつ効果的な研究方法というのがあり得ると思いますので、それに応じて研究実施手続きをきちっと決めて実施をしていただきたいということでございます。  
  それから、倫理委員会については前回と変わりがありません。 
  第四章「社会との関係」についても、第二十三の「社会の理解・支援と説明責任」ということで、これはインフォームド・コンセントとも絡むのですが、とにかく一般の人がヒトゲノムとは何か、もしくはヒトゲノム研究とは何かというのをあまり理解されていないと思いますし、理解するのはそれほど容易ではありませんので、研究者もしくはお医者さんないし、ヒトゲノム研究にかかわる人たちは、ヒトゲノム研究とは何か、もしくはヒトゲノムというのはどういうふうに重要な意味を持っているのかということを説明をする、研究をする以上はそういう説明をする、いわゆるアカウンタビリティがあるということをここで強調しております。  
  あと、第二十五のところで、「全般的で適切かつ迅速な判断と対応」というのを原則に入れておりますが、これは本来は、国がそういうことをしてほしいという希望も込めているのですが、あまりこの原則で、国はこうしなければいけないと言いますと、いろいろ縛ってしまうものですから、少し一般的な形で、全般的で適切かつ迅速な判断と対応が図られるように努力しましょうという形になっております。もちろん、その中には、例えば、ヒトゲノム研究法という名前がついてもいいのですが、関連する法令の制定も視野に入れて、それから、研究を進展させるために、もしくは、人権の保護や尊厳の保護を行うために一定の国、もしくはその他の措置、とりわけ財政的な措置、これは遺伝カウンセリングなんかは余計にそうだと思うんですが、財政的な措置も含めて、いろいろな措置を考えるべきであると書いております。  
  大体、以上で解説についての重要な点をご説明したかと思います。 

(高久委員長) 
  どうもありがとうございました。解説についてご質問、ご意見がありますか。 
  小さなことですが、8ページの、基本原則の対象範囲の2で、具体的な指針が定められるべきであるとありますが、できれば「共通の」という言葉をどこかに入れていただきたい。  
  それから、もう1つは、前回、議論になったことですが11ページの第五の基本原則の説明の中で、3行目に「研究遂行者は提供者にインフォームド・コンセントのために説明を……」と書いてありますが、厚生省のは「説明者」になっていますね。「説明者」のほうが、主治医、研究者、看護婦が説明する場合もあるなど、いろいろあると思いますので、「説明者」にすると範囲が広くて良いと思います。  

(位田委員) 
  はい、わかりました。 

(高久委員長) 
  ほかにどなたか、ご意見はありませんか。どうぞ。 

(玉井委員) 
  法律の専門家ではないのでちょっと教えていただきたいのですが、18ページの一番下のところに、過失責任、無過失責任ということが書かれてあるのですけれども、これはどうなんでしょうか。ここまで踏み込んだ書き方を、もちろん、ですから原則のほうには書かなかったというふうに先生は今ご説明されたのですけれども、解説の部分であってもここまで踏み込んだ書き方をするのが適当なのかどうかというのがちょっとよくわからないのですが。無過失責任というところまでここに書くべきなのかなというふうにちょっと思ったのですけれども、どうなんでしょうか。  

(位田委員) 
  いろいろな考え方かありますが、これは、研究の段階ということですのでどこまでそういうことが言えるかというのは若干留保つきでお答えしたいと思うんですが、現在、医療、とりわけ先端医療に関しては、お医者さんが過失があったというのを立証するのは極めて難しいと思います。そこのところは判例でも無過失責任は言っていませんけれども、立証責任を少し緩和するという形で動いてきていると思います。この場合は、必ずしも医療にかかわらない部分もあるかと思うんですけれども、医療の現場であってもそうであるのに、まして研究の部分では、損害を被った人は、研究者の過失を立証するのは非常に難しい。基本的にどういう損害を被るかというのは、特に差別を受けるとか、そういう形で出てくる可能性がある。つまり、情報が漏洩した形で出てくる可能性があるので、そこを過失があったかどうかというのを議論するというのは非常に難しいのではないかというふうに考えております。そういう意味で、損害が発生したら過失を推定するという考え方をとってもいいのですけれども、立証責任をあまり強くしないで補償賠償を定めてもいいのではないかということを考えました。  

(中村委員) 
  私は罰則規定と、その補償をちゃんとしたほうがいいと言っていたのですけれども、ただ、問題がなのは、研究者側がどこまでやっていればこういうことを追求されても仕方かないのかと。多分、Eメールで送ったのが間に合わなかったと思うんですけれども、例えば、ほんとうに厳重に管理している金庫ごと持っていかれたと、その場合でも、やっぱりこういうことで、研究者あるいは国が補償をしなければいけないのかどうか。どの程度厳重な管理をやっているかによって責任の程度が違うと思うんです。個人の情報を机の引き出しに入れてかぎだけかけていると。その程度の個人情報の管理で盗まれると、これはやっぱり研究者側が責任を問われても仕方がないと思うんですけれども、徹底して管理していると、なおかつ盗難に遭っても責任を問われるということは、病院の中で人殺しがあって、それも病院が責任を負わなければいけないのかということぐらい厳しいですよね。ここまで原則として要求されるのかどうかということを、朝、Eメールでも送りましたけれども。  

(位田委員) 
  確かに、どこで線を引くかというのは非常に難しくて、例えば、銀行の地下室にある大金庫ならいいけれども、人一人では動かせないけれども、10人ぐらいかかったら動かせるような金庫ならいいかとか、若干、漫画風になりますが、そういう話もあり得るわけで、具体的にどの程度の管理をしていたかということによって責任が軽減される、もしくは重くなるということは考えられると思うんです。ただ、原則の中に、もしくは解説文書の中にそういう具体的なことを逐一盛り込むというのは極めて難しいですし、むしろ、原則は過失責任というよりも、かなり厳しい管理責任があるのだと、無過失責任とまで言うかどうか若干問題があると思いながら書いたんですが、非常に厳しい管理責任があるのだということを原則にして、その状況を見て、これはどうやっても防ぎようがなかったということになれば、裁判では、そこのところで責任の緩和ないし酌量ができるかなという気はいたします。ただ、具体的にどうするんだと言われても、私もなかなか難しいんですが、中村先生のところの管理体制を私は一回、見せていただいたほうがいいかなと思いながら考えてはいるんですが。  

(町野委員) 
  今のことに関連してなんですけれども、原則の中に入っているのは解説ですよね。後でお配りいただいた第十一のところの3のところは、無過失責任の趣旨ではないでしょうか。  

(位田委員) 
  はい、そうです。 

(町野委員) 
  先ほど言われましたとおり、これを原則にしてしまいますと、この手書きのもののように、やはり現行法とは矛盾しますので、やめたほうがいいだろうと思います。  
  もう1つ、解説の中で書かれるというときに、やはり「無過失」と書くと今のような問題が起こりますので、解説と書かれるときには、原告側の立証責任を立件するような措置を講ずるのが望ましいという程度じゃないでしょうか。  

(高久委員長) 
  そうしていただいたほうが良いようですが、どうですか。 

(中村委員) 
  やっぱり、難しいのは、例えば、スーパーコンピューターのようなものに入れて管理している。ハッカーに入って持っていかれるということもあるんですね。我々のところは全部、個人情報管理者がいて、MOで管理して、そのMOは金庫の中に入れて、金庫は大型だからクレーンでもないと持ち出せない。部屋もかぎがかかっている。それでもなおかつだめなのかどうか。確かに個人情報を管理しているという人ははっきりしていますから、その人を、あるいは部屋の中でそういうことが起こった場合にはその責任を問われてもしょうがないかもしれないですけれども、外からだれかが入ってきて金庫ごと持ち去ったというような場合には、やっぱりこの3のような形のものが残ると我々では対応し切れないと思うんですけれども。  

(高久委員長) 
  一応、町野委員のご意見でいかがでしょうか。 

(位田委員) 
  先ほどおっしゃった、もし取られてしまったらどうするんだというのは、むしろ犯罪のほうにかかってきますので、そこまで言われると、それはむしろ犯人に損害賠償請求をするというほうだと思うんです。だから、そういう形ではなくて、実際に遺伝子研究をやっているときに何らかの形で漏洩をしたと。でも、一般の人からは、医者の過失を立証するのは極めて難しいということをちょっと念頭に置いているものですから、泥棒が入ったらどうするかというのは、若干、話が違うのではないかなという気はしますけれども。  

(中村委員) 
  でも、その管理のレベルによってですよね。実際、厳しく情報管理すると書いてありますけれども、どこまで行けば厳しいのかというのがだれにもわからないです。  

(ライフサイエンス課長) 
  ただいまの、いわゆる無過失責任の話は、おそらく普通の人はなかなかわかりにくいことだと思います。この無過失責任の考え方が一番最初に出てきたのは、いわゆる原子力の損害でございます。原子力損害賠償法という法律できちって書いて、原子力の場合は、その損害を受けた場合に、因果関係はもちろん必要なんですけれども、過失があるか、ないかといったことで、そこで判断するのではなくて、とにかくそこで保障すると。そのために非常に金額も事業者に積み立てるとか、それを超えたものについてはさらに政府が保障するとか、そういったようなことで、こういったことは確率としてあります。  
  次は、消費者の保護といった観点、PL法ですか、結構ドイツとか何かで早目にこういったものができて、日本も消費者の保護といった点でなかなか立証が難しいということでございますが、こういったものをやる場合には、かなりきちっとした法律で、法律のような体系でやらないとなかなか原則はできないものですから、こういった、望ましいというのは、解説より、もしそうなら、別途、別な提言をしていただかないといけないかなと思っていますが、非常に難しいし、ここのところ、逆に、研究機関とか、基本的には多分、公共機関、そのときにこういったものをどうやって保障するのかといったようなことも含めて、どの程度の保障があり得るのか、そういったところも含めてかなり議論を深めないと、先生のおっしゃっている問題はわかりますけれども、これをどうやっていくかというのはもう少し議論が必要ではないかと思っています。  

(高久委員長) 
  この点は、町野委員のご提言が一番妥当ではないか、そう思います。ほかに何かご意見はおありでしょうか。 

(位田委員) 
  ちょっともう1点、今、中村委員がおっしゃった、どこまで情報を管理すればいいかという話なんですが、15ページの第十一の解説のところに、一応、少なくともこういう要素が必要だというところまでは書いたのですが、先ほどもおっしゃいましたように、具体的にどういうふうな文章で書けば一般的で、かつ情報の管理が、具体的なイメージができるほど示せるのかというのが、ちょっと作文能力の問題もありまして、非常に難しくて、少し考えさせていただきたいなと思っているんですが。  

(高久委員長) 
  この点は指針のほうで少しきっちり書いたほうが良いのではないかと思います。あんまり細かく書きますと、解説以上の内容になってしまいますので。 
  ほかに何かご議論は、どうぞ。 

(町野委員) 
  インフォームド・コンセントの12ページのところです。この原則というのはかなり誤解を招きますよね。つまり、インフォームド・コンセントの内容というのは、研究の目的に合わせて決まるのだというぐあいに、これは読めるわけです。解説の中でそれを打ち消しておられるように見えますが。研究ではここまでインフォームド・コンセントすることはできないから、インフォメーションを与えることはできないからこの程度でいいというような考え方はとるべきじゃないというのが普通の今まで来た考え方です。インフォームド・コンセントというのは個人の権利の問題ですから、その個人の決定に対して必要なことはすべて知る権利があるということなので、少しそこら辺を考慮されたり、改めていただけたらというふうに思います。  

(位田委員) 
  町野委員のおっしゃるとおりでして、そこを厳格に言うと、第五の基本事項のところになるんです。本来ならば、これだけで全部終わるんですが、ただ、具体的にインフォームド・コンセント、特に説明の手続き、同意は必ず文章で取って、紙で書いてもらうというのは、そこはもう譲れないと思うんです。しかし、実際にどういうふうな説明をするか、だれが説明に当たるかという具体的なことを考えると、どうも一律には行かないのではないかと考えて、最も適切な方法で、やっぱり具体的な研究に合わせて説明の仕方、説明の内容等を考える必要があるのではないかという書き方なんです。ちょっとこの辺も、そういう意味を込めながら、第七の原則の文章を書きましたので誤解を生みやすいかなとは思いますが、意図はそういうことでございます。ちょっと考えます。  

(町野委員) 
  結局、第七のところの趣旨は、原則のほうですね、「当該研究の目的と内容に照らして」というのは、当該研究の目的と内容に照らして、その研究が本人に与える影響をかんがみてということなんですよね、意味としては。  

(位田委員) 
  はい、そうです。もちろん、研究の方法とかは、そういうのもありますが。 

(町野委員) 
  研究が本人に、つまりインフォームド・コンセント、本人に与える影響を考えて、それに合わせたものが必要だという趣旨であればよろしいのですけれども、このままだと研究者のほうの都合に合わせてというふうに簡単に読まれますのでと、そういうことだけです。  

(位田委員) 
  基本は研究者のことを考えています。つまり、先ほど申し上げたように、第五は完全に提供者側の権利、自己決定権をきちっと守るというのが本来の基本で、しかし、ヒトゲノム研究というのは、遺伝子治療とか診断と違いまして、提供した試料が自分の体の中で何かをやるわけではなくて、外で、ある意味では自分と関係ないところで研究されますので、その研究の結果が直接に本人に返ってくるようなことでなければ、その研究の目的とか内容、方法等を考えて緩和されてもいいのではないか。そういうケースもあり得るのではないかということを考えました。ただ、だからといって簡単に、この研究は提供者本人にあんまり関係がないから、もしくは影響を与えないからインフォームド・コンセントは簡単でいいよと研究者が勝手に思われても困りますので、そこはやはり倫理委員会の審査を受けるということで。  

(高久委員長) 
  そうですね。この第七の内容は勝手に便宜的にやっていいということではなくて、逆に、倫理的、社会的問題を引き起こす可能性が高いから十分に注意して取れと、そういう内容のものにするということですね。  

(中村委員) 
  ちょっと違う項目でもよろしいですか。17ページの下の「また」というところからですけれども、これは、治療が不可能な病気に対しても倫理委員会に諮って、血縁者に伝えたり伝えないことができるということが書かれています。欧米でも、本人に全くベネフィットのないものを勝手に本人に伝えるということはできないですし、ましてや血縁者には。これは血縁者には絶対に伝えるべき問題ではないというふうに思います。  

(位田委員) 
  これはいろいろな場合をちょっと頭の中で想定したんですが、現在、治療が不可能であっても将来的にはこのことを知っておいたほうがいいというケースがあり得るのかもしれないというのが、これはもう完全に私の頭の中で論理的に考えて、こういう場合は、こういう場合はというのを考えてこういうふうに書いたんですが、それは結局、将来、治療法が明らかになれば知らせるという形のほうがいいんでしょうかね。  

(中村委員) 
  だから、あくまでもベネフィットがあるか、ないかというのをその時点で判断して考えるべきであって、少なくとも、治療法がないものに対して、遺伝子診断はもともと原則的には本人が希望するというところからスタートするわけですから、こういう全く本人に何のメリットもないものを倫理委員会は頭越しにやることはできないと思いますけれども。  

(高久委員長) 
  この説明は省いたほうが良い。基本原則と反対みたいな内容になっていますので。まだいろいろご意見があると思いますが、そろそろこの基本原則とその解説についての議論を終わらせていただきたいと思います。きょういろいろご意見いただきましたし、位田委員のほうもまだ完全にはできていない所があるとおっしゃっていますので、私のほうで位田委員、事務局と相談しながら一応案をつくって、それについて意見公募ということにしたいと考えています。公募のときには、解説についても意見を公募するわけですね。  

(ライフサイエンス課長) 
  はい、解説がないと、むしろ、不明でございますし。 

(高久委員長) 
  基本原則とその解説ということで意見を公募させていただきたいと思います。 
  次の第3の議題の、「基本原則にのっとった運用指針」についてでありますが、前回の小委員会で話題になった厚生省の指針がお手元の資料3−3です。この中間報告書はまだパブリック・コメントを求めている途中です。これからも、訂正される点がかなり出てくると思います。それから、この指針は一応、ミレニアム研究に限っていますが、厚生省の委員会では、範囲をもう少し広げた指針をつくる必要があるという事では、もちろんこの中間報告書が基本になるわけです。ミレニアム研究という範囲で作っていますので、臨床の現場の事情と少し合わない点もありますので、もう少し対象を広げた指針を現在つくっているところです。  
  そういう意味で、厚生省の中垣企画官が来られていますが、この報告書の説明よりも、今、議論していただいた基本原則の解説と、厚生省からの中間報告書との間で矛盾した点があれば、ご意見を言っていただければと思います。もしなければ、あまり議論をしなくても良いのではないか。ただ、先ほども議論がありましたように、遺伝子解析の結果が疾病の予防や治療に結びつくような場合には倫理委員会の審査を経て血縁者に伝えることができるということをこの解説では言っていますので、厚生省の指針でも、それを述べておく必要があると思うのですが、どうですか。  

(中垣企画官) 
  後者の点、すなわち血縁者への開示の点、これについては指針の中にもう既に入っております。具体的に申し上げますと、お手元の資料の11ページ、ちょうど中ほどに(5−2−1−1)解析結果の開示というのがございますが、この3行目に、「求めはないが血縁者に対する開示が適当と認められる場合には」ということで、先ほど中村委員からご発言がございましたように、ベネフィットがある場合、適当と考えられる場合ということで倫理審査委員会の意見を聞いて判断をするということが書いてあります。  
  また、総括的な観点から申し上げますと、今、委員長のほうからご示唆がございましたとおり、ミレニアムに限っておるこの指針を一般化する方向で考えろという部会のご意見に沿って内々、検討を進めておるところでございますが、正直申し上げまして、全体、遺伝子解析研究全部にかけるということになりますと、ベンチャー企業みたいなところから、それこそ大学の医学部、大学の理学部、薬学部、病院というところを、規模から申し上げてもまちまちでございますし、実際に研究の場ということを考えてみますと、研究計画をつくるというよりは、ちょっとやってみて大変な成果が出てくるということも想定されるわけです。  
  例えば、この間、ある場で聞いたのですが、ノーベル賞クラスの研究というのは、あらかじめ研究計画書をつくって補助金にアプライするようなものでは1つも出ていないとかいうようなことも聞いておりますし、先ほど申し上げましたように、非常に小さいところで倫理審査委員会の問題でありますとか、あるいは、個人情報保護管理者の問題でありますとか、この解説に書いておられる部分、理念として個人情報保護をしっかり守るというのはだれも反対するようなものではないと思いますが、具体的な手続きについては検討が必要と考えています。この解説の中に幾つかについては、もちろん我々の指針とそれが反しているとは考えておりませんけれども、我々の指針は、あくまで大規模なナショナルセンター等でやられるということを前提に、しかも、ミレニアム・プロジェクトという非常にはっきりした目的と、その研究方法があるということを考えているのと整合性がとられているので、それを一般にした場合に、この解説は相当大きな影響を持つのではなかろうかというのを若干、懸念しておるところです。  

(高久委員長) 
  そうですね。どうでしょうか。 

(町野委員) 
  私はむしろ影響を持つべきだと思っていたんですけれども、それがぐあいが悪いということはどういうことか、ちょっと理解できないのですが。 

(中垣企画官) 
  ある面で申し上げますと、今、例えば個人識別情報管理者というのを置くことだけが個人情報保護を守ることになるのであろうかという議論もあるのだろうと思います。個人情報保護をしっかり守るということ自体はだれも反対をするべきではないと思いますけれども、その方法というのは、いろいろな方法が、例えば研究の対象であるとか、やられる実験内容であるとかいうので、もう少しフレキシブルな態度というのがあってもいいのではなかろうかという考え方ということです。  

(高久委員長) 
  どうぞ。 

(位田委員) 
  私も町野先生がおっしゃったように、できるだけこの程度のことは用意してほしいという希望を込めて書いております。実際に、例えば、個人識別情報管理者と個人情報管理者というのをまた別に置かれる可能性もありますし、具体的にどういうふうな制度をとるかというのは研究機関によって少しずつ違うとは思いますが、これは原則を書いておりますし、その解説ですから、私自身としては少し厳しいことを書いておかないと、つまり低いレベルから始めますと、それよりどんどん低くなる可能性がありますので、そういう意味で、こういうことを考えて情報を管理してほしいというつもりで書いたつもりでございます。  
  これは原則ですから、実際に、もしそういうことができない場合には、指針の中で代替的な手段として何らか別の個人情報保護システムを、例えば、小規模な研究機関でとるということであれば、それはそれで指針の問題だと思うんです。必ずこれでないとだめだと言い切っているつもりはございませんが、そういう意味では、特に次のような要素を含むべきであると書いてありますけれども、こういう要素は考えながらやっていただきたい。場合によって、個人識別情報管理者と実際の研究者が同一であるということはあり得るかなとは思いますが、最初からそれをやってよろしいというのは、とても私にとっては言えませんので、こういうことは特に考えてほしいという趣旨でございます。  

(宮本課長補佐) 
  ただいま、企画官中垣からご説明申し上げましたように、前回、厚生科学審議会におきまして、この指針、これは先ほどご説明いたしましたように、ミレニアム・プロジェクトという一種独特のと言いますか、非常に限られた研究を前提としていると、しかしながら、一般化するに当たりましては、もう少しいろいろな要素を検討しなければならないということを申し上げただけでございますので、原則論なり、解説に示されました方針、それから一方でこの原則でお示しいただきましたものの中には、おそらく遺伝子解析研究と言いましても、塩基配列を非常に細かい単位で調べる研究から、もう少し簡易な遺伝子解析研究と、定義がありませんので非常に幅広い遺伝子解析研究というものが含まれていると思いますので、こういった程度の問題等を踏まえまして引き続き、医療を守る立場から、国民の良質な医療を提供するというのが厚生省の任務でございます。また一方で、患者の人権を守るというところの領域を考えながら引き続き検討をさせていただきたいと考えております。  

(高久委員長) 
  どうぞ、中村委員。 

(中村委員) 
  研究者の立場として、やっぱりミレニアムだから指針が要ると、ミレニアムじゃない研究だから指針が要らないという言い方だとおかしいのではないかと。だから、個人情報、あるいはプライバシーの侵害というのは遺伝子研究に共通した問題であって、今回、ミレニアムがあったらこの指針をつくったと、じゃあ今まで何もしなかったというのはあまりにも厚生省としてはおかしいのではないでしょうか。  

(高久委員長) 
  確かにすべての研究で個人情報を守るということは基本です。おそらく今の厚生省の説明は、ミレニアム研究をする所が基本的には大きな研究機関だから、そこでいろいろな整備をしろ、委員会もつくれという事でこういうふうに出てきたと思います。基本的には中村委員がおっしゃったとおりだと思います。  
  先ほどの議論ですが、ちょうど解説のところで、それぞれについて私はこれに「共通」という言葉をつけ加えましたが、「具体的な指針が定められるべきである」と書いていますから、この「具体的な」のところを少しフレキシブルに解釈すれば、必ずしも大きな研究所などでないとできないというふうにはならないと希望しています。それからもう1つ、基本原則の最後に研究の実際の進展及び社会の理解と動向に照らして見直すということが書いてあります。社会の動向ということと同時に、世界的な動向も見ながら、フレキシブルに変えていく必要があると思います。あんまり固定をして考えないほうが良い。そういう事で、今の議論を収束させていただければと思います。  

(ライフサイエンス課長) 
  まさに厚生省さんのやつはミレニアムという特定なものを考えた、それなりの、きちっと具体的なことが書けて、相当書けるものだと思います。それから、我々の基本原則は、今、厚生省の企画官からお話しされたように、基本的には全体が適用され得るというふうに考えております。ただ、このメンバーの中でどこまで具体的な項のところまで全部把握できているかどうかというのは疑問でございますが、少なくとも、次のステップとして、これを交互に出すと、多分、民間にもさまざまないろいろな意見が出てくると思いますが、厚生省さんのやつ以上に、多分これに対して皆さん、そういったものを踏まえて解説をどうしていくかという1つの作業があると思います。そういった、多分、民間は着目していると思いますので、いろいろな機関がこういったことに対して、こういったことを考慮してくれといろいろな意見が出てくると思いますが、そういったことを踏まえて、まず、この解説等を充実図り得るかどうかという話と、それから、できるだけそういう共通的なものをつくっていくということでしていったらどうかと思っております。  
  ただ、そのときに、厚生省のミレニアムという特定なものとダブルスタンダードにならない、つまり同じものを対象にしているけれども違った形にならない、これは非常に考えでございますので、そこをどう調整していくかということもございますが、基本的にはそういった形で対応していただけたらと思っております。  

(豊島委員) 
  先ほどの厚生省のほうからおっしゃったベンチャーの問題も含めて、基本的には、コマーシャルのものとか、あるいはもう特定できないものとなったものを一般的には使うと思いますから、あまりその辺は心配する必要はないのだろうと思います。それはちゃんとここで除外されていますから。ですから、個人の特定できるものについては、この原則にやはり従うということを一般論としてやったほうが私もいいのではないかと思います。  

(高久委員長) 
  厚生省のはミレニアムに限ったのですが、しかし、公開したときには非常にたくさんの意見が出ました。今度は基本原則ですのでもっとたくさん意見が出てくるのではないかと思います。それをまとめる事務局並びに位田先生は大変ではないかなと思っています。おかげさまで、基本原則については、少し文章を直すところが出てくると思いますが、この小委員会では大略ご賛同いただいたと思います。。  
  当然、パブリック・オピニオンを反映して、またいろいろと考えるべき点が出てくるのではないかと思いますが、その点についてはまた結果を見て、この委員会でいろいろご議論願いたいと考えています。  
  実は、もうそろそろ終わりたいと考えていますが、いかがなものでしょうか。どうぞ。 

(玉井委員) 
  ちょっと確認なのですけれども、パブリック・コメントに出す前に、この小委員会をもう一度開くということではなくて、きょうの議論を踏まえて修正をしたものをパブリック・コメントに出して、その後でもう一度この委員会を開くというふうに理解してよろしいでしょうか。  

(高久委員長) 
  はい、そういうふうに考えていました。よろしいですか、それで。 

(寺田委員) 
  こういうのを早く渡してもらわないと、夕べ送ってもらって、きょうこれのコメントをして、そのまま終わりでパブリック・コメントに行くというのは、やっぱり、皆さん忙しいのはよくわかりますけれども、せめて1日、24時間前には手元に入りたい。  

(高久委員長) 
  先ほど申し上げましたが、きょうもいろいろご意見をいただきましたので、事務局と位田先生、私とで少し直さなければならないと考えています。ですから皆様にはこの後文書で事務局のほうにいろいろご意見を頂きたいと思います。  

(ライフサイエンス課長) 
  それでは、来週いっぱいまでご意見をいただいて、それを踏まえて、基本的には委員長に最終的に一任していただき、その前、合意した文章を最後、お手元にするという手続きも経て、再度集まるということはやめていただきまして、イラインのほうで見ていただいて、最終的に見て、その合意したものを再度渡すということで、基本的に来週いっぱいまでにその作業を終えさせていただくということでよろしいでしょうか。  

(玉井委員) 
  私が確認したかったのは、パブリック・コメントに出す前に一応、全員にこれをパブリック・コメントに出しますよというものが配られるのか、そしてそれを確認できるのか、そうでないと、ちょっと無責任ではないかと思ったものですから、それだけ確認したかったのです。  

(ライフサイエンス課長) 
  はい、それは今、確認させていただきました。 

(高久委員長) 
  配るということです。 

(中村委員) 
  最後にお願いしておきたいのですけれども、このミレニアムというのは省庁連携で始まったものですから、大学だから、理学部だからという形ではなくて、やはりこの厚生省の指針というのは非常に重要な意味を持っているわけですから、やはり共通のものとしてガイドラインをつくっていただきたい。だから、これは厚生省のものではなくて、やはり、ある程度、広い、多くの研究者に共通の指針であるという認識のもとにミレニアムという枠を外した形でもう少し考えていただきたい。そうでないと、小さな、小規模でやっている研究者は別のガイドラインでと、それもやっぱりダブルスタンダードになってしまうわけですから、そういうことはぜひ配慮して考えていただきたいというふうに思います。これはお願いしておきます。  

(中垣企画官) 
  若干、誤解があるようなので申し上げますが、先ほど申し上げたのは、理学部だからどう、薬学部がどう、医学部だからどういうことを申し上げたわけではなくて、一般に適用するということを考えると、まださまざまな要素を考慮に入れる必要があるのではなかろうかということです。今回のミレニアムという観点から申し上げますと、ミレニアム、これは大学でもやられる予定になっておりますが、いずれもかなり大きな施設、大規模な施設でございますから、ある一定条件でそろっておると考えておるわけでございますけれども、かなり具体的なことを書き込んできておりますから、その具体策については、先ほど位田先生がおっしゃったように、代替措置みたいなものも取り得るよみたいなことを書いていかないと、なかなか指針として適用できない部分があるのではなかろうかと考えています。それと同じ問題がこの解説の中にもあるのではなかろうかということを申し上げたところでございまして、何も厚生省がこれをひとり占めするとか、厚生省だけでこれをやるということを申し上げているわけでもないので、その点はご了承いただきたいと思います。  

(寺田委員) 
  私が、最初の議論のところでライフサイエンス課長が言ったので非常に不愉快に思って、ちょっと感情的になり、私としては、いい年をしてというようなところがちょっとありました。しかし、やっぱり厚生省だからだとか、何々だからじゃやっぱりおかしいと思います。やっぱりこのダブルスタンダードで研究者とか国民の皆さんが一体何をやっているんだと、わけがわからないということだけは避けて頂きたいと思います。最初、私が理解していたのは、厚生省のミレニアムプロジェクトのためにつくったのですけれども、皆さんがそれをもうちょっと厚生省のミレニアム以外に広げましょうということになったからパブリック・コメントを入れて指針としてはもっと大きなものにしていこうというふうな過程にあるというふうに私は理解しています。結局、どこの省庁であれ、とにかく1ついいのができて、それを使ってみんなができるという態度じゃないとわけがわからなくなると思います。  

(高久委員長) 
  初めから共通のということを申し上げていますし、それは基本的な理解だというふうに考えています。、その方針は……。 

(町野委員) 
  ちょっとよろしいでしょうか。この原則をつくることの意味なんですけれども、これはやっぱり考え方は随分前と変わってきたということだろうと思うんです。つまり、研究者の責任をはっきりさせろというのが原則の考え方だろうと思うんです。そうすると、例えば、ベンチャーだからとか、そういうことは通用しないというのが基本だろうと思います。実際、この原則が正しいかどうかを議論されるなら私は結構だったと思いますけれども、実際にこれは使えないとか、そういうことだけでは私はそれはだめだろうと思います。それは考え方の相違がちょっとあるのかなという感じが今、非常にしました。  
  それからもう1つ、これは研究のための原則とは言いますけれども、最初のほうに、一応、ヒトゲノムの意義について幾つか述べているところがあるわけです。そして、これがなければおそらく研究のほうも議論できないということは当然だろうと思いますけれども、将来このままでいいかということを議論されるときは、当然、今のヒトゲノム一般についての議論ということもここで宣言されたことを確認しておく必要があるように思います。  

(宮本課長補佐) 
  補足させていただきますが、決してベンチャーだから一方的に何とかして全体を緩めていいということを申し上げているのではなくて、ここに示されました水準、あるいは厚生省の指針で示しました水準というものをさまざまな機関で担保しようとしたときには、今ここでバランスをとっているような、これだけですべてが担保とれるということではないと思いますので、その点につきましては、もう少しいろいろな研究機関の研究のやり方があるということを前提にしたバランスのとり方というものを考えなければいけないだろうと。つまり、水準を落とすということを申し上げているのではなくて、何らかの形でバランスをとった形で今、町野委員からご指摘のあったようなものをするためには具体的にどうしたらいいのかということは検討してまいりたいと考えております。  

(位田委員) 
  私自身は、これは憲法をつくれとおっしゃったので、こうあるべきであると、つまり、現状がこうであるからこうしましょうねということではなくて、現状はこうかもしれないけれども、それをもう一歩進めて研究者の責任であるとか、人権の保護であるとか、人間の尊厳であるとか、そういうことを考えれば、こうでなければいけない、ヒトゲノムの研究に関してはこうでなければならないということを前提にして考えたつもりでございます。  
  そういう意味では、憲法をつくるというのは、実はこんな短期間では本来できるわけがないので、寺田先生がおっしゃったことは私もよく理解できますが、こういうものをつくるときに、1つの文章をつくるのに1時間、2時間かかることはざらでございます。したがって、何日までに書けと言われるのが一番苦しいのでございまして、できるだけ早くと思って一生懸命にやっておりますけれども、にもかかわらず、きょうもお出ししたように、実は未完成な部分が若干残っておりまして、その辺はご理解をいただきたいと思います。当初、中村委員にも十分にご相談はできなかった部分もございまして、それは前回、申し上げましたけれども、本来であれば、やはりこういうのは生命倫理一般の議論が基盤にあって、そしてヒトゲノム研究に関する憲法ができるというのが本来の形であります。しかし、今はそういう形には、少なくともそういう経緯のもとでこの憲法をつくれというふうな形になったのではございません。しかし、にもかかわらず、やはりヒトゲノム研究に関する憲法をつくるのであれば、いろいろなことを考えて、生命倫理一般のことも考えて、このぐらいがせめて、いかなるレベルの研究機関にしても、もしくは研究者に関しても、これぐらいはやはり今後は守っていただきたいということを考えてつくったものでありまして、それ以下のものでも、それ以上のものでもありません。  
  しかし、私は、ヒトゲノム研究を制約したいと思ってつくっているわけではありません。他方で、ヒトゲノム研究の試料を提供する人、もしくは人間そのものについてきちっと、今までよりももっとちゃんと考えていただきたいと思っております。私は、バランスをとるという考え方はあんまりしたくないのですけれども、そういう考慮する要素をいろいろ勘案しながら、現段階においてはヒトゲノム研究に関する基本原則もしくは憲法というのは、少なくともこのレベルの程度は維持をしていただきたいということでございます。もし、先ほど委員長のおっしゃいましたように、附則で見直し規定をおいておりますが、見直しがあり得るとすれば、これよりももう一段進んだ、より高いレベルの原則になる可能性もありますし、これではとても動かないということであれば、どこが動かないのかということをきっちり把握して、緩和されるべきところはされる。もっと上に行ける部分があればもっときつくしてもいいというふうに基本的には思っております。そういう意味では、この基本原則というのは、まさに出発点としてお考えいただきたいというふうに思っております。  

(豊島委員) 
  先ほどからのお話ですけれども、特に厚生省からおっしゃっていることは、おっしゃることは非常によくわかるのですが、やはり基本原則は絶対に守らないと、これは文部省関係でもご存じだと思いますが、今までいろいろ見てきまして、倫理委員会のないところで物事が進むとどうなるかということはやはりわかるわけです。ですから、それはやはりこの原則を守っていただく。そして、組織が小さ過ぎてできないようなときに、それをどうカバーするかというのを、例えば、この中に盛り込んでいただければ、これは非常によくできているので、ぜひ、逆に言うと、これをうまく使えるようにしていただきたい。そういうことによって全体の世の中の理解が得られやすくなるのだろうというふうに思っていますので、その辺のご配慮をぜひよろしくお願いしたいと思います。  

(高久委員長) 
  これをというのはどっちのほうですか。 

(豊島委員) 
  厚生省のです。憲法のほうは、私はこれでほとんど抵抗がないのです。 

(高久委員長) 
  それでは、いろいろご議論も出ましたし、2時間近くたちましたので、これで小委員会を終わらせていただきます。 

(ライフサイエンス課長) 
  1つだけ、きょう、基本原則についてご議論していただいてまとめたものにつきまして、小委員会のマンデートといたしまして、この上に生命倫理委員会の親委員会がございます。親委員会の立場は、単に小委員会の報告を聞いて了承するという立場ではなくて、ちゃんと高い立場で生命倫理委員会は議論するのだということで、途中の段階でまとめ切ってこれ以上動かないといったものを持ってくるのではないのだという強い意思を持っていますので、今月の連休前に一度、まとまったもの、中間報告に出したものにつきまして、生命倫理委員会の親委員会でご議論をしていただく。そしてまたそういったご意見も踏まえてパブリック・コメント、それから親委員会の意見も踏まえて、また再度、小委員会でご議論していただくということを考えております。よろしくお願いいたします。  

(高久委員長) 
  生命倫理委員会はいつやるのですか。 

(ライフサイエンス課長) 
  来月の第3週、あるいは第4週の連休前に一度開かせていただきたいと思っております。 

(高久委員長) 
  それでは、どうもありがとうございました。位田先生、ご苦労さまでした。 

−−  了  −−