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科学技術会議生命倫理委員会
ヒトゲノム研究小委員会(第1回)議事録 

1.日時    平成12年1月28日(金)  10:02〜12:03 

2.場所    科学技術庁第1・2会議室 

3.出席者 
    (委  員) 高久委員長、位田委員、奥田委員、小幡委員、五條堀委員、玉井委員、 
                 寺田委員、中村委員、眞崎委員、町野委員 
    (事務局)科学技術庁  小中審議官、小田ライフサイエンス課長  他 

4.課題 
    (1)小委員会の運営について 
    (2)ヒトゲノム研究と生命倫理について 
    (3)今後の審議の方向性について 
    (4)その他 

5.配付資料 
    資料1−1   ヒトゲノム研究小委員会の設置について 
                     ヒトゲノム研究小委員会構成員 
    資料1−2   個人のヒトゲノム情報を扱う研究と社会の接点 
    資料1−3   ヒトゲノムの生命倫理に関する諸外国の取り組み 
    資料1−4   ヒトゲノム研究に関する生命倫理についての基本ライン(検討資料) 

    参考資料1  科学技術会議について 
    参考資料2  ミレニアム・プロジェクト(新しい千年紀プロジェクト)について 
    参考資料3  ヒトゲノム多型情報に係る戦略について 
    参考資料4  ユネスコ「ヒトゲノムと人権に関する世界戦略」 
    参考資料5  WHO「遺伝医学と遺伝サービスにおける倫理的問題に関して提案され 
                     た国際的ガイドライン」 
    参考資料6  世界医師会「ヘルシンキ宣言」 

6.議事 
   
(高久委員長) 
  時間がまいりましたので、ただいまから第1回科学技術会議ヒトゲノム研究小委員会を開催させていただきます。 
  本日は、朝から多数ご出席いただきまして、ありがとうございました。 
  初めに、科学技術庁のほうから小中官房審議官のごあいさつをよろしくお願いいたします。 
(小中審議官) 
  おはようございます。科学技術庁の小中でございます。きょうは、寒いところをお集まりいただきまして、どうもありがとうございます。 
  生命倫理に関しましては、一応、科学技術会議の生命倫理委員会、その下には2つほど今、小委員会がございまして、1つはクローン小委員会と申します。これは、去年の末に一応、クローン技術によるヒトの個体産生は禁止すると、そういうような報告をいただいているんですけれども、もう一つはヒト胚研究小委員会ということで、ヒト胚の研究をどうするか、これも倫理委員会の問題でいろいろ検討はさせていただいているんですが、近々ある種の結論をいただけるかなと思っております。 
  それで、これ以外ということで、最近、ヒトゲノムのいろいろな計画が今進んでおりまして、大量あるいは高速シークエンサーといいますか、そういうのも開発されていまして、どんどん読めるようになってきたと。その次の段階ですね、そういうシークエンスの技術なり、それを使って、個人個人の遺伝子の違いといいますか、遺伝子多型とか、そういうふうに言うんだそうですが、今そういう研究がどんどん進もうとしております。そうしますと、そういう研究に対して、個人が自分の情報を提供するということで、個人情報をどうするかとか、あるいは、一方で研究はどんどん進める必要もあるかということで、研究をどう進めていくかということで、いわゆる生命倫理が一つまた問題のあれでございます。そういうことで、せんだっての生命倫理委員会で、ゲノム研究小委員会を設置するということで、今回集まっていただいたわけですけれども、法律から、いろいろな分野、医療の現場の方々まで含めて、あるいは社会的な観点からの議論とか、いろいろ各専門家の方々に集まっていただきまして、積極的な、あるいは活発な、かつ実りのある議論を大いにしていただきたいと思っております。よろしくお願い申し上げます。 
(高久委員長) 
  どうもありがとうございました。 
  ただいまの小中審議官のお話にもありましたように、ゲノムの研究といいますと、個人情報の問題、あるいはプライバシーの問題から、さらに、インフォームド・コンセントの問題等、いろいろな問題があると思います。既にこの問題については、いろいろな所で検討されていますが、科学技術会議の生命倫理委員会から、この問題について、ヒトゲノム研究小委員会で検討するようにという要請がありまして、私が委員長という御指名がありました。よろしくお願いします。 
  まず最初に、本日の配付資料について、事務局から確認していただけますか。 
(小田ライフサイエンス課長) 
  私、この担当をしています、ライフサイエンス課長の小田でございます。よろしくお願いいたします。 
  それでは、まず、配付資料の確認をさせていただきますが、最初の1枚紙は、当小委員会第1回の議事次第でございます。 
  お手元の資料番号1−1が、ヒトゲノム研究小委員会、当小委員会設置についての2枚紙でございます。 
  資料1−2が、「個人とヒトゲノム情報を扱う研究と社会の接点」ということで、三井情報がまとめたものでございます。 
  同様に資料1−3、ヒトゲノム生命倫理に関する国内外の取り組みという、かなり分厚い両面刷りのものでございますが、これは、表につきまして、一覧表ということでちょっと読みにくい面もありますので、A3のほうで別途、資料1−3ということで同じものを拡大したものでございますが、ございます。 
  次に、お手元の資料1−4、「ヒトゲノム研究に関する生命倫理についての基本ライン(検討資料)」という3枚紙のものがあるかと思います。 
  それから、資料1−4−参考資料は、それの参考資料ということで、「議論の対象として考えられる事項」という2枚紙のものでございます。 
  これが資料でございますが、その後、参考資料ということで、全部で6つほどございます。参考資料1が科学技術会議の概要、参考資料2がミレニアム・プロジェクト(新しい千年紀プロジェクト)についての抜粋でございます。参考資料3が、「ヒトゲノム多型情報に係る戦略について」という科学技術会議のゲノム科学委員会のワーキンググループの報告書でございます。それから、参考資料5がWHOのガイドライン、参考資料6が世界医師会「ヘルシンキ宣言」でございます。 
  以上でございます。 
(高久委員長) 
  どうもありがとうございました。 
  皆様のお手元にあると思います。 
  それでは、きょうの会議は第1回目ですので、ご出席の委員の方々から一言ずつ簡単に自己紹介をお願いしたいと思います。 
  私が、委員長を務めさせていただいています、自治医科大学の高久です。よろしくお願いします。 
  それでは、町野委員からどうぞ。 
(町野委員) 
  上智大学法学部の町野と申します。専攻は刑事法ということでございます。 
(眞崎委員) 
  循環器病センター研究所の眞崎と申します。循環器病に関連する遺伝子の問題を研究しなければいけないということで、本日、参加しました。 
(中村委員) 
  東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター長をやっております中村といいます。私自身、直接ゲノム研究に携わっている立場からコメントをさせていただきたいと思います。 
(寺田委員) 
  国立がんセンター総長の寺田でございます。がんのことを扱っております関係上、こういう遺伝子の倫理の問題は大変大事だと思っています。いろいろと意見を述べさせていただきたいと思いますし、ご意見を聞きたいと思っております。どうもありがとうございます。 
(玉井委員) 
  信州大学医療技術短期大学部の玉井と申します。私、専門は心理学と生命倫理学ということになっておりまして、附属病院の遺伝子診療部のほうで、臨床でカウンセラーの仕事をしております。よろしくお願いします。 
(五條堀委員) 
  国立遺伝学研究所の生命情報研究センター長をしております五條堀孝と申します。専門は分子進化学、あるいは生物集団の遺伝学、生命情報学、こういった問題を研究しております。 
(小幡委員) 
  上智大学の小幡でございます。私、専門は行政法でございますが、今、国レベルでもようやく個人情報保護の統一的な法制度の準備にかかったところですが、自治体レベルでも個人情報保護をいろいろやっておりまして、その審査会、審議会等のメンバーでやっております。よろしくお願いいたします。 
(奥田委員) 
  日本製薬工業協会、製薬協と申しておりますけれども、そこの研究開発委員会の委員長をやっております奥田でございます。研究開発委員会というのは、個々の企業は独自に創薬研究をしているわけですけれども、個々の企業ではできないような研究環境の整備、基盤の整備等について考え、提案をしていく委員会でございます。所属企業は塩野義製薬でございます。どうぞよろしく。 
(位田委員) 
  京都大学法学研究科の位田でございます。ユネスコの国際生命倫理委員会の委員を96年からやっておりまして、一昨年から、一応今年の秋までの予定ですが、そこの委員長をさせていただいております。生命倫理委員会の下の小委員会については、クローン小委員会、ヒト胚研究小委員会、両方に加わらせていただいております。よろしくお願いいたします。 
(高久委員長) 
  どうもありがとうございました。 
  私のミスで、名簿の下からご紹介させて頂きました。どうも失礼しました。 
    議題の1は、ヒトゲノム研究小委員会の運営ということになっています。この議題は、簡単に言いますと、この委員会を公開するかどうかということです。公開の方法にはいろいろあると思いますが、私の意向としては、既にこの委員会が非常に関係の深いクローン小委員会とヒトの胚研究小委員会がいずれも公開とされていますし、このヒトゲノム小委員会には、社会の関心も非常に高いと思いますので、できれば公開にして、自由な議論をしたいと考えていますが、よろしいでしょうか。もしご異論がなければ、そういうふうにさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。 
(小田ライフサイエンス課長) 
  すみません。ちょっとこの時間をおかりしまして、もう一人、豊島先生がこのメンバーでございますが、きょう、所用があって欠席されております。豊島先生は、現在、住友病院長をされております。以上でございます。 
(高久委員長) 
  このヒトゲノム小委員会を公開で行うということにご了承いただきました。ほかの委員会と同じように、後で、議事録の案が回ってまいりますので、随時ご加筆、ご訂正くださって、事務局のほうにお返しいただき、その後に議事録を公開するという形になると思いますので、よろしくご了承をお願いします。 
  次の議題の2ですが、このヒトゲノム研究小委員会設置の背景は大体おわかりだと思いますが、事務局のほうから簡単に説明していただけますか。よろしくお願いします。 
(小田ライフサイエンス課長) 
  それでは、資料1−1が、当ヒトゲノム研究小委員会の設置についてということでございます。先ほど小中官房審議官からのあいさつにもありましたように、この設置の背景でございますが、ヒトゲノム研究といったもの、まず、ゲノムの全塩基配列の解析といったものが加速化いたしまして、近々、終了するといったことで、塩基配列の全容が明らかになるその第一歩が到達するというようなことが1つの背景。それに伴いまして、個人のゲノムの違いといったようなものを調べる研究がかなり加速的に最近盛んに行われるようになってきたといったことが考えられております。 
  それから、後ほどまた資料でご説明いたしますが、我が国におきましても、昨年のミレニアム・プロジェクトといった総理のイニシアチブによりますプロジェクトの中で、高齢化対応といった中で大規模な遺伝子多型研究といったものがスタート、これは平成12年度からスタートする予定でございます。その際、特定の疾患を持った人を含みます多くの人からDNAを提供していただくといったことがございますし、その際に伴いますような個人の遺伝子情報の保護、あるいはインフォームド・コンセントなどの提供者の人権保護といったようなものが重要になるということが、生命倫理委員会のほうでも議論としてあったものでございます。こういったことから、高久先生を委員長ということで昨年の12月21日にヒトゲノム研究小委員会が設置されたということでございます。 
  それで、資料1−1がそういうことでございますが、審議事項ということで、当小委員会におきましては、ヒトゲノム情報を対象とする研究に関し、生命倫理の側面から審議を行うということでございます。 
  3の構成につきましては、小委員会には委員長を置き、生命倫理委員会の委員長の指名する者がこれに当たるということで、現在、井村議員がこの委員長でございます。 
  当小委員会の委員は10名程度とする。 
  それから、小委員会は、必要な場合にはワーキンググループを設置できるものとする。 
  4番目の生命倫理委員会への報告ということでございますが、当小委員会は、審議状況について、生命倫理委員会の求めに応じ、または、適宜、生命倫理委員会に報告するということになっております。 
  5番目の意見聴取についてでございますが、当委員会は必要に応じ関係省庁、関係機関及び学識経験者の意見を求めることができる。 
  以上でございます。 
  2枚目が、当小委員会の構成員の名簿でございます。 
  参考に、かなりの方はもう既に専門委員になっておられますが、初めての方もございますので、簡単に参考資料1ということで、科学技術会議の概要となってでございますので、これをご参照していただければと思っております。 
  それから、当小委員会で議論する、当面、何をやるかといったことが問題になるわけでございますが、我々、今現在、考えていることにつきましては、個人のヒトゲノムを扱う研究といったものに切り口をあてまして、まずは、国内の研究機関が共通に守るべきような、そういった考え方というんですが、原則といったようなものを提示していただければと思っております。 
  こういった原則、考え方といったものを提示した文章の位置づけということでございますが、一方、ミレニアム・プロジェクトに関しまして、現在、厚生省のほうでヒトゲノム・プロジェクトの疾患別の遺伝子多型に関する研究につきましては、研究班を設けてガイドラインを検討中でございます。こういったことは非常に具体的な運用手順まで言及している、基本的には厚生省の参加機関に限ったものでございますので、本委員会では、それ以外のものもございますし、また、全体的な共通の考え方をまとめることが重要じゃないかなと考えております。 
  もう一つは、当小委員会の必要性に関することでございますが、ヒトゲノムの生命倫理につきましては、一方、国際的なレベルでは、位田委員が日本の代表で参加されておりますユネスコの中でもヒトゲノムに関する議論がなされておりますし、また、そういった中で、考え方といったようなものが既に提示されております。そういった中で、我が国といたしましても、国レベルできちっとした対応をする場を設け、それに対する我が国の共通的な考え方を検討する場が必要じゃないかというようなことを科学技術会議のほうで考えてございまして、具体的には、昨年の科学技術会議の政策委員会のもとで、政策基礎調査小委員会といったところが、政策委員会、あるいは当生命倫理委員会などの議論に資するというようなことで調査制度を設けております。そういったソフト調査の中で、ヒトゲノムに関する問題点につきまして昨年決定し、既に三井情報開発に調査委託をしております。 
  そういったことで、こういった準備を我々は進めているわけでございますが、この調査におきましては、位田委員がその委員会に加わっていただいておりますし、また、ほかにも玉井委員ですか、参加していただいていますので、そういった点でも議論の足しになるのじゃないかと考えてございます。 
  後ほど、三井の委託の成果につきましてはご説明させていただきたいと考えております。 
  それから、参考2を見ていただきたいのでございますが、これは平成12年度の政府案に盛り込まれているものの内容でございますが、総理が昨年の12月19日に決定いたしましたミレニアム・プロジェクトについての基本的な内容、考え方でございます。 
  その中で、2枚目以降、高齢化対応ということで、プロジェクトの概要になっておりますが、その中で、大きく分けますと、ヒトゲノム・プロジェクトとイネゲノム・プロジェクトといったことに分かれてございますが、その中のヒトゲノム解析のプロジェクトの中のヒトゲノム解析、五大疾患の克服といったものがございますが、その中の五大疾患の克服といったところが大きな目標と掲げられているこのプロジェクトの内容でございまして、具体的な内容が、2枚目のページの裏側、57ページとなっていますが、4の「高齢化社会に対応し個人の特徴に応じた革新的医療の実現」ということで書いてございますものが、この内容でございます。 
  説明につきましては、基本的には省略させていただきますが、ご参考にしていただければと考えております。 
  もう一つ、参考資料3ということで、科学技術会議のゲノム科学委員会というところにおきまして、昨年の8月にヒトゲノムの多型情報に係る戦略ということで、いわゆるナショナル・プロジェクト、国家戦略という形で、ヒトゲノム多型情報の研究については進める必要があろうということで、ゲノム科学委員会でまとめていただいたものでございます。基本的にはこういった考え方に基づきまして、先ほどのヒトゲノム・プロジェクトの中の一つとして、多型情報、いわゆるスニップスに関する研究が来年度からスタートすることとなっております。 
  以上でございます。 
(高久委員長) 
  今、課長さんのほうからヒトゲノム小委員会の設置について説明がありましたが、何かご意見おありですか。 
  課長さんのお話の中でご紹介のありました、厚生省のほうでやっていますヒトゲノムの取り扱いについてのガイドラインの専門委員会は、たしか2月8日に最終的な討論がなされると聞いています。そのガイドラインの中に詳しく手順などが書かれている様ですが、このガイドラインは主として厚生省の研究所、あるいは病院を対象とした、しかもミレニアム研究に関連した研究に対するものですが、当然、このヒトゲノム研究小委員会で議論される内容の中に、厚生省のガイドラインの内容が含まれることになると思います。おそらくこのヒトゲノム研究小委員会の内容のほうが、もう少し幅の広い内容のものになる。厚生省のガイドラインは非常に細かいところまで指摘していますので、ここではもう少し範囲の広いといいますか、広い視野に基づいたものになると、考えています。よろしくお願いします。 
  次に、ヒトゲノム研究と生命倫理についてということですが、先ほど事務局から紹介されましたように、位田先生が中心になられまして、三井情報開発でやられました「個人のヒトゲノム情報を扱う研究と社会の接点」、「ヒトゲノムの生命倫理に関する諸外国の取り組み」、資料1−2と1−3ですが、三井情報開発の中村様にご説明をよろしくお願いしたいと思います。よろしくお願いします。 
(三井情報開発) 
  三井情報開発の中村と申します。よろしくお願いいたします。 
  それでは、資料1−2のご説明をさせていただきます。 
  この資料は、先ほどお話のありました科学技術政策基礎調査の一つのテーマでありますヒトゲノムの取り扱いに関します調査研究の検討委員会で、委員会の場、あとメーリングリストでご議論いただきました内容をまとめ上げました資料です。 
  まず、この1ページ目ですが、個人とヒトゲノム情報を扱う研究と社会との接点ということで、ヒトゲノム研究、遺伝子多型研究、あと、ヒトゲノム情報の取り扱いの問題点等をなるべくわかりやすく一つの絵にしたものです。 
  この絵をご説明する前に、2ページ以降の資料を先にご説明させていただきます。 
  まず、2ページ目ですが、これは、「遺伝子とは?」を簡単にまとめ、ご説明してある絵です。 
  それから3ページ目ですが、その「遺伝子とは?」といった内容を一つの絵にさせてもらったものです。 
  それから、4ページ目ですが、先ほどお話のありました「遺伝子多型、SNP研究とは何か?  それで何がわかるのか?」というものを、フローの形ですが、簡単にまとめさせてもらっています。 
  6ページ目に飛ばさせていただきますが、この委員会でご議論いただきます主なところになると思いますが、個人の遺伝子情報の取り扱いにはどのような問題点があるのかというところを整理いたしております。 
  遺伝子情報には、他の個人情報とは異なる側面があるのではないか。1つとしましては、近い将来、どのような病気になりやすいかといったリスクがわかるでしょう。それからまた、本人だけでなく、他の家族も遺伝子の変化を共有している可能性があるといった点があると言えます。 
  病気の素因というような個人的な遺伝子情報を使って、企業や保険会社等が雇用や保険加入等の条件とすることによって差別が生じるといった問題も一つ考えられます。それから、遺伝子診断の結果得られた遺伝子情報から、本人だけでなく家族のリスクもわかってしまうという、従来の個人情報とは違った側面があると言えます。 
  また、遺伝子研究段階においては、管理体制が不十分であると、サンプル提供者の遺伝子情報が漏れた場合、その提供者、被験者の差別に危害が及んだり不利益が生じる可能性があるのではないか。 
  その他としまして、診断の結果、治療法のない重篤な遺伝病という結果が出る一面もあります。 
  それから、次のページ、7ページ目ですが、これは、ヒトゲノム研究の中で取り扱いに注意すべき側面としまして、この絵は国立循環器病センターのバイオサイエンス部長の森崎先生につくっていただいた絵ですが、ヒトゲノム研究をひとくくりに議論されるのではなく、いろいろな研究があるでしょう。構造解析なり機能解析、先ほど話がありました多型解析、その他、プロテオーム解析とか、ゲノム情報科学(バイオインフォマティックス)等があります。 
  実は、昨日、この検討委員会を開催しまして議論を行っていただいたのですが、その中の一つのテーマとしまして、サンプルのアンリンク、それからリンクサンプルといった点の議論がありました。匿名化検体、これはアンリンクのサンプルになると思いますが、ヒトゲノム研究の中において、アンリンクで可能な部分と、どうしてもリンクでなければいけない研究があるのではないか。その辺は十分議論して、その取り扱い等を考えていくべきではないかということで議論が進んでおります。 
  それでは、戻りまして、1ページ目の絵を簡単にご説明させていただきます。 
  ヒトゲノム研究において、その個人、被験者からサンプルをインフォームド・コンセントを経て入手して、DNA抽出、それから個人の遺伝子情報が得られて、分析・データベース化になっていきます。現在まだいろいろ研究段階ですが、将来的にその実用化などの展開がされていくわけですが、オーダーメード医療といった光の部分と、左側に書いてありますように、遺伝子と病気との関係がわかった場合ですが、個人の遺伝子情報が漏洩したときに、知りたくない発症リスクを知らされたとか、本人だけでなく家族のリスクもわかってしまうとか、社会的に不当な差別を受ける可能性等の問題があるでしょう。 
  それから、医療サービス化が進展するにつれて起こり得る可能性としまして、右のほうに書かせていただいていますが、このような判断、保険加入の際に利用されるとか、やや極端な表現ですが、将来の発症リスクによる自殺とか、優生学的な目的への遺伝子情報の利用・売買なども問題としてあり得るのではないかということで、この絵をかかせていただいています。 
  資料1−2の説明は以上です。 
(高久委員長) 
  1−3も続けて……。 
(三井情報開発) 
  それでは、資料1−3のご説明をさせていただきます。 
  「ヒトゲノムの生命倫理に関します国内外の取り組み」ということで、特にヒト検体の取り扱いに関しますガイドラインの事例を整理させていただきました。その他、国際機関の事例も横並びにまとめ上げています。 
  対象としましたのは、国外としましてWHO、ユネスコ、ヘルシンキ宣言、欧州評議会、国立ヒトゲノム研究所(NHGRI)、それから、米国の大統領諮問委員会のNBACを事例として取り上げております。それから、国内では、国立循環器病センター、国立小児病院、人類遺伝学会、日本産科婦人科学会、家族性腫瘍研究会のガイドラインを整理いたしております。 
  2ページ目になりますが、それぞれの事例を整理する意味で、この分類の体系の形で資料をつくらさせていただいております。まず、1としましては理念、それから、研究の自由と条件、被験者の人権、4番目としましてインフォームド・コンセント、5番目といたしまして遺伝的特徴に基づく差別の禁止、それから遺伝情報の秘密保持といった大分類のもとに、それぞれ中分類の項目を設定しまして、おのおののガイドラインで関連します記述を一つの表にまとめましたのが、次のページ、3ページ目ですが、この表は非常に細かいですので、お手元にA3の大きい資料があると思いますが、このような形で整理いたしました。 
  この資料をさらに加工する形で、24ページ目になりますが、これは国内外の事例を生命倫理の検討項目として考えられる主な事項とした資料でまとめております。先ほどの分類の体系のもとで、どのガイドラインからどのような内容が記述されているかというものをコンバインする形で整理したのがこの表です。それぞれのところで、検討項目として挙げられるものは何かというところで幾つか挙げさせていただいております。 
  幾つかご紹介させていただきます。26ページ目の一番上にあります「共同研究」という分類の項目のところで、共同研究先機関にどの程度まで主体の研究機関でのルールと同程度等の制約をすべきかという課題もあるでしょう。それから、一番下になりますが、研究段階で発生した被害の責任はどのようになるのか、また、その補償はどのようにすべきかという課題もあります。 
  それから、29ページ目になりますが、上から2番目にあります、過去に採取した材料に対する同意はどうあるきかといった検討を今後進めていきたいと考えております。 
  それから、31ページ目になりますが、下の遺伝子情報に関する守秘義務、差別、排除等を法規制にすべきか、ガイドラインにすべきか、また、違反した行為に対して罰則を設けるべきかという議論もあるでしょう。 
  これらの検討項目を、今後、メーリングリスト等で議論を行いまして、先ほどお話のありましたヒトゲノム研究の原則書案というものをおつくりしまして、このヒトゲノム研究小委員会の検討資料として提示することを目的としております。 
  以上です。 
(高久委員長) 
  どうもありがとうございました。 
  今、資料1−2、1−3で、今まで三井情報開発のほうで議論されたことがご紹介されましたが、何かご質問がおありでしょうか。 
(中村委員) 
  いつもこういうのを見ると疑問に思うのは、研究と実際に確定した遺伝子診断との区別が全くなされていない点です。ここのガイドラインに載っているもののうち国内のものは、ある程度原因遺伝子がわかった場合に、その遺伝子診断を受ける場合に、どういうふうな手順でやるかというものであって、研究として、これから、例えば糖尿病とか高血圧とか、非常にありふれた病気の研究をしていく場合とかなり乖離しているわけですね。そこが完全に混同されている。 
  もう一点は、危険因子と決定因子という発想が全くないわけです。すべてリスクという言葉でくくられていますけれども、決定因子というのは、ある遺伝子的な要因を持てば、100%近い確率でなるもので、危険因子というのは、それを持つことによって、1,000人中10人の発症が1,000人中30人になるような要因です。病気を予防するという観点が大事ですけれども、将来、予防を考えた場合に、そういうリスクを知って、自分のライフスタイルを変え、病気を予防するという発想が、この資料1−2には全くない。すべて決定因子という考え方に基づいて書かれているものであって、今、ミレニアム計画でやろうとしているような、非常に多くの人が持っているような危険因子に対する研究という概念が完全に欠落している。やはりそういうことは考えないといけないわけで、全く違う2種類のリスクを1つの紙にまとめて、同じように扱うというのは問題があるわけで、そこの区別がないままに、こういうゲノムと社会の接点といっても、それは大きな誤解を招くだけであって、そこはちゃんと区別していただきたい。 
  もう一つ、オーダーメード医療の概念の中には、個人個人がありふれた病気に対するリスクを知って、病気を予防する、あるいは発症を遅らせるという非常に重要な観点があるわけで、そういう観点も全くここには含まれていない。だから、そういうリスクと一言に片づけても、全く違うものを含んでいるにもかかわらず、それを区別しないまま論議するというのはおかしいわけです。図を見ると、決定因子に近いものを書きながら、中ではアトピーとか、高血圧とか、動脈硬化などを書いているわけで、この矛盾ははっきりしていただきたい。 
  それから、SNPを用いてやみくもに診断するということはあり得ないわけで、最終的には病気の原因となる、あるいはリスクと関係するようなSNPそのものを特定して診断するわけで、それも完全に誤解がある。その辺の2つのポイントをもう少しはっきりしてもらわないと、リスク、リスクという言葉であまり安易に片づけて、しかも、決定因子に近い発想でこういうものをつくるというのは非常に問題があると思います。 
  以上です。 
(高久委員長) 
  どうもありがとうございました。 
  確かに中村先生のおっしゃったように、ゲノム解析で明らかになっている危険因子は、今のところ非常に限られている。すでにわかっている決定因子については、玉井委員はお詳しいと思います。中村委員がおっしゃったように、ミレニアム計画で問題になるのは、危険因子のゲノム解析だと思います。高血圧や糖尿病を例にとりましても、現実には遺伝的な要因よりも、食事を含めた生活環境の要因のほうがリスク・ファクターとしては大きい場合が多いと思います。そういう点を考慮に入れて、議論をしていく必要があると思います。今の中村委員のおっしゃったことを念頭に入れて、今後議論を進めていただければと思います。 
  ほかに、どなたかご質問、あるいはご意見がおありでしょうか。 
(位田委員) 
  私は、三井情報のほうのヒトゲノムの研究開発動向及び取り扱いに解する調査検討委員会という委員長を仰せつかっております。これが三井情報のほうの検討委員会の結論であるというつもりではございません。むしろこれから議論する材料として、きのう出てきたものですから、すべてこれでいいという話になっておりませんので、今の中村先生のご指摘を考慮して、これから議論を尽くしていきたいと思います。 
  1つだけお尋ねしたいんですが、研究と診断というのはきれいに線が引けるものかどうか、ちょっとよくわからないんですが。 
(中村委員) 
  診断というのは、ある程度研究によってエビデンスが証明されていて、そのエビデンスに基づいて、患者さんが受けたいという希望があって初めて成り立つものだと思うんですね。だから、どちらかというと患者側が医療機関に対して要求するというところからスタートするわけです。研究の場合には、欧米では患者団体があって、患者団体がこういう研究をしてくださいというような形で進むこともありますけれども、日本の場合は、ほとんどの場合は研究者側が、その条件を持っている患者さんに対して、原因を解明したいので協力してくださいと。だから、方向は明らかに違っていると思うんです。 
(位田委員) 
  ただ、やる方向が違うからよくわかるんですが、やることにおいて、ここまでは研究で、ここからは診断というような形のきれいな分け方ができるのかなというのがちょっとよくわからなくて、きのうも少し議論にはなったんです。 
(中村委員) 
  研究というのは、あくまでもゴールは病因遺伝子を見つけることであり、診断というのは、そこの段階が終わって初めて診断へ行くわけですから、フェーズとしては全く違うと思います。だから、患者さんが希望されるのか、あるいは研究者側が患者さんに協力を求めるのかという方向性も、そのフェーズを考えても、やっぱり一線を画されるべきものだと思います。 
(高久委員長) 
  基本的にはわからないから研究をする。診断は、100%とは言わないまでも、遺伝子の異常がわかれば、高い確率で臨床的な診断として使われる。この2つをある程度区別して考えないと、非常に混乱が起こると思います。研究と臨床診断とを簡単に区別出来ない場合もあると思いますが、基本的には中村委員のおっしゃったことだと私も理解しています。 
  ほかに、どなたかご意見ありますか。 
  それでは、まだいろいろとご議論をしていただきたいと思いますので、資料1−2と1−3につきましては、先ほど位田委員からもお話がありましたように、今後いろいろ皆さんがご議論していただくときの資料とさせていただきたいと思います。非常に膨大な資料を要領よくまとめていただいていますので、今後の議論には大いに役に立つものと思っています。中村さん、どうもありがとうございました。 
  それでは、今後の審議の方向性を検討をしたいと思います。 
  資料1−3にありますようにヒトゲノムの取り扱いについては、いろいろな場で、先ほども申し上げました様に、検討されています。この委員会では、これも繰り返しになりますが、事務局から話がありましたように、国内の研究機関が、これは私的な研究機関も当然入ると思いますが、共通に守るべき原則を提示したいと考えています。先ほどお話が出ました守秘義務について、小幡委員、個人情報については、守秘義務の法律ができるのですね、いずれ。そうなるのですか。 
(小幡委員) 
  今、政府の持っている電算機情報の法律があるのみなんです。それで、堀部先生の中間提案というようなものが出まして、多分、来月ぐらいに立ち上げて、2年ぐらいで統一法律をつくるんですが、ただ、そこでどんな扱われ方をするかというのはちょっとわかりませんが、あるいは個別に、例えばこういうヒトゲノム情報のようなものは別個という可能性もございます。 
(高久委員長) 
  患者さんの個人情報、病気に関する情報は、医師法で漏らしてはいけないということになっている。町野先生、そうではなかったですか。 
(町野委員) 
  医師法じゃなくて刑法そのものでしょう。 
(高久委員長) 
  刑法そのもので罰せられるということにもなっている様ですが、その法律との兼ね合いという問題も出てくるのではないかと思います。本日は、まだ大分時間がありますので、残された時間で、先ほど申し上げた運用の、この委員会でどういうことを議論して、どういう結論を出すべきかについてご議論をお願いしたいと思います。原則的なことをここで議論したいと思いますが、事務局のほうで、ヒトのゲノムの研究に関する生命倫理についての基本ラインをつくっていますので、それについて読んでいただけますか。これからの議論のもとにしていただきたいと思います。 
(小田ライフサイエンス課長) 
  今までの議論でも、どういう視点でということが少し話されたわけでございますが、事務局のほうで今後の議論の、まず取り組んでいただきたいということの方向性について、ひとつ何らかの資料を用意したほうがいいだろうというようなことで、基本的には、資料1−4につきましては、位田委員会のほうで検討していただいたものでございます。それから、資料1−4−参考資料は、事務方のほうでいろいろ勉強いたしまして、種々さらに議論を深めていただくべき事項じゃないかというようなことでまとめていただいたものでございます。 
  資料1−4につきましては、今後検討していく一つの資料というような形でまとめさせていただいたものでございますが、簡単に、数分で終わりますので、読まさせていただきます。 
(理念) 
1.ヒトゲノムの研究は、人間の生命の仕組を解明し、個人及び人類全体の健康の改善に大きく貢献するものである。 
2.ヒトゲノム研究及びその成果の応用は、人間の生命や生活についての考え方を大きく変化させる可能性があり、人間の尊厳及び人権の観点から、適切に行われなければならない。 
3.人は、その遺伝的特徴の如何を問わず、個人の尊厳及び人権が尊重されねばならない。 
4.ヒトゲノム研究は、その社会にもたらす影響が極めて大きいことから、倫理的、法的、社会的問題に配慮しつつ行われなければならない。 
5.遺伝的特徴に基づく差別は許されない。 
6.ヒトゲノムの研究は、被験者及びその家族の人権に尊重を払いつつ、行われなければならない。 
7.人の尊厳に反する研究は行ってはならない。 
(研究の自由とその限界) 
1.科学研究の自由は尊重されなければならない。 
2.ヒトゲノム研究は、人間の尊厳及び人権を損なうことなく、また倫理的基準に従って行われなければならない。 
3.ヒトゲノム研究は、生物学及び医学上、高い有用性をもつものでなければならない。 
4.ヒトゲノム研究においては、研究者及び被験者並びに社会に対して安全性が確保されていなければならない。 
5.ヒトゲノム研究は、独立で学際的で多元的な倫理委員会による審査を経なければならない。 
(被験者の権利) 
1ヒトゲノム研究を行う場合は、研究試料の提供者(「被験者」という)に対して、事前に十分な説明を行った上で自由意思に基づく同意を得なければならない。 
2.同意能力を欠く者については、親族又はその者の生活と深くかかわっていた者が、その者に代わってインフォームド・コンセントを行う。 
3.被験者は、研究の結果明らかになった自己の遺伝子情報を知る権利を有する。 
4.研究遂行者又は医師は、研究の結果明らかになった個人の遺伝子情報について、被験者本人又は代理者の求めがある場合でなければ、その者に知らせてはならない。 
5.何人も遺伝的特徴に基づいて差別されてはならない。 
6.被験者は自己のゲノムの研究に係る同意をいつでも撤回することができる。 
7.被験者、血縁者及びその家族は、遺伝カウンセリングを受けることができる。 
8.ヒトゲノム研究によって損害を被った個人は、正当な補償を受ける権利を有する。 
(遺伝子情報の取扱い) 
1.個人の遺伝子情報は機密である。 
2.特定の個人と結びついた遺伝子情報は厳重に保存管理されなければならない。 
(社会との関係) 
1ヒトゲノムは人類の財産であり、ヒトゲノム研究の成果は社会に還元されなければならない。 
2.ヒトゲノム研究によって得られた生物学、遺伝学、医学上の成果は、すべての人に公開されなければならない。 
3.ヒトゲノム研究の成果は、とくに人々の苦痛の除去及び健康の改善のために用いられるべきである。 
4.ヒトゲノム研究が人類及び個人の生命、生活及び未来に与える影響の重要性に鑑み、ヒトゲノム及びヒトゲノム研究についての教育及び情報の普及が計られるべきである。 
  以上でございますが、もう一つ、資料1−4−参考資料ということで、これも簡単にご説明させていただきます。 
  これは、かなり議論の余地があるところではないかなということでまとめたものでございます。 
  まず、1が、ここで対象とする研究の範囲ということで、ゲノム情報、先ほどの三井情報の編み目がかかったようなゲノム研究といっても非常に広うございまして、それに対するどこまでの研究を対象とすべきかということで、ここでは、基本的には個人の遺伝情報、個人のゲノム情報といった点に限るべきなのか、あるいは限ったほうがいいのかということでありますが、現時点では個人の遺伝情報に限っていたほうがいいんではないかなと考えてございますが、そこについての論点でございます。 
  2番目が、原則の内容及び関連事項ということで、議論の対象となると考えられるものを抽出したと書いてございますが、ここでは、基本的に各ガイドラインで共通で基本的に原則に取り入れられるべき、前の資料におきまして傍線を引っ張ったところについては、ほぼ共通的な問題だろうということでございますが、それ以外の事項について抽出したものでございます。 
  1つが、研究の自由と条件のところでございますが、倫理委員会が出てくるわけでございますが、倫理委員会の具備すべき要件は何かといったことで、機関ごとの設置は、小規模の研究機関ではできないことがあるのではないか、外部委員は必要なのかどうか、必要があるとしたら、どういった割合でいいのかといったようなことでございます。3点目は、科学的、社会的側面の評価といった面も同時に行うものか、つまり、倫理委員会の審査の範囲についても議論すべきではないか。 
  2番目が、被験者の人権といったことで、提供者の不利益に対する責任、補償は具体的にどうあるべきかといった点。2番目は、提供者への遺伝カウンセリングを受けることができるというようなことがあるわけでございますが、どのような研究対象でも必要なのか、そういった点をもう少し議論を深める必要があるのではないか。 
  3点目が、インフォームド・コンセントについてでございますが、インフォームド・コンセントで必ず説明しなきゃならない事項、あるいは研究内容によって分ける必要が出てくるのではないかということでございますが、インフォームド・コンセントの内容につきましては、ここに書いてあるようことが考えられるわけでございますが、そういったものを具体的にもう少しきめ細かくやる必要があるのではないか。2点目が、同意能力を欠く人からインフォームド・コンセント、これを具体的にどうすればいいのか。3点目が、匿名とした場合の取り扱いについて考える必要があるかということです。 
  4番目が、遺伝情報の機密保持でございますが、1つは、機密保持違反に対して罰則を課せられるかということで、これは、先ほどの刑法といったような話も出てくるわけでありますが、対象が限られてくるのではないか。国家公務員は、自分の知り得た情報、医師は医師法、薬剤師等、おのおのの所管している法律によって、機密情報の保持をしているわけでございますが、それ以外の研究といいますと、幅広い研究者がそれに関与するわけでございますので、そういった問題点でございます。次は、個人を特定できる情報、例えば氏名、住所といったものと、研究に必要な情報、試料、解析結果、臨床情報、これを切り離すことかできるか、あるいは匿名化のようなものでそれが確保できるのかといった点でございます。こういった個人を特定できる情報、研究に必要な情報といったものが、その両方に関与する人は限定したほうがいいんじゃないかといったような議論も出てくるわけですが、そういったものは具体的にどうするんだろうといったことでございます。それから、研究に必要な情報から個人を特定できる情報をさかのぼれる場合とさかのぼれない場合が出てくるわけでありますが、こういったものについて区別して考える必要があるのか。 
  最後が、5番目の既採取試料の取り扱いということで、既に研究に使用できるような、あるような場合の条件は何かといったことでございます。インフォームド・コンセントが与えられていない場合とか、インフォームド・コンセントが与えられているけれども、研究目的が必ずしも明確にされていないような場合、そういったものがあるわけでありますが、ただ、研究の価値が高くて、個人情報の保護が可能な場合などには、そういった一律に原則を当てはめるべきか、そうでない、そこら辺のところはどうすべきかといった点でございます。それから、個人名の特定が不可能な試料の場合、あるいは可能な試料の場合、そういったものについてきめ細かく考える必要があるだろうということでございます。 
  以上でございます。 
(高久委員長) 
  どうもありがとうございました。 
  資料1−4と1−4−参考資料ということで、いろいろな問題点を具体的に挙げていただきました。まず最初に、対象とする研究の範囲ということを少し議論していただきたいと思います。基本的には個人のゲノム情報ということでよろしいのでしょうね。20人、30人、あるいはもっと多くの特定の疾患の患者を対象にするとしても、個人個人のゲノム情報の集積ということになると思いますので、このヒトゲノム研究に関する小委員会では、個人のゲノム情報を扱う研究に限って良いのではないかと思いますが、いかがなものでしょうか。そこをはっきりしておくと、議論が進みやすいと思いますので、一応そのように考えて進めさせていただきたいと思います。あとはご自由に、資料1−4、1−4−の参考資料についてご意見をいただきたいと思います。私が最初に口火を切らせていただきますと、研究の自由とその限界、資料1−4の下の3番目の項目ですが、「ヒトゲノム研究は、生物学及び医学上、高い有用性をもつものでなければならない」となっていますが、実際には、研究を始めるときにはその結果に有用性があるかどうかという事がわからないから研究をするのだと思います。。 
  ほかに何かどなたか、どうぞ。 
(位田委員) 
  この検討資料は、私が三井情報のほうの委員会の議論のたたき台として出させていただいたものを流用させていただいたものです。きのう、三井のほうの委員会の第2回の、まだ第2回なので、これ自体について議論をしているわけでありませんが、そのときにも少し話が出たんですけれども、確かに高い有用性を持つかどうかは、実際にやってみないとわからないんですが、少なくとも高い有用性を持つだろうという推定のもとに行われる研究でなければならない。単に興味の対象としてヒトゲノムの研究をやってみるというだけでは困るという趣旨でございます。 
(高久委員長) 
  強いて言えば、高い有用性が期待される研究でなければならないという……。 
  何かご意見ありますか。 
(中村委員) 
  被験者の権利というときに、やっぱりこれは非常に特殊な遺伝病の研究を想定されているとしか思えないですね。被験者の権利の3番、「被験者は、研究の結果明らかになった自己の遺伝子情報を知る権利を有する」。例えばゲノムワイドに、例えば何万とか何十万というスニップを調べていく。それも何千人も対象に調べていくという場合に、10万のスニップ情報を全部被験者が見せてほしいと言ったとき、全部提供するというのは、プラクティカルに不可能なわけですね。だから、どういう研究をしていくのかということをもう少し想定してやっていただかないと。 
  それから、4番目の「個人の遺伝子情報について、被験者本人又は代理者の求めがある場合でなければ、その者に知らせてはならない」。今回、人類遺伝学会で新しい遺伝子診断に対するガイドラインをつくって、その中には、先ほどから言っていますように、個人のリスクというのは、血縁者のリスクにおそらくなる。特定個人が、その人が知らないことによって非常に不利益を受ける場合、例えば遺伝性のがんの場合、小児期に発症するようなものもあるわけで、非常に不利益を受けることが想定される場合に、本人を説得する。それで同意が得られなければ、倫理委員会の判断で血縁者に知らせてもいいというような項目が書かれているわけです。だから、これは新しくつくった人類遺伝学会のガイドラインとは矛盾があるわけで、病気の種類によってかなりシチュエーションは変わってくるわけで、個々の状況を想定すると、必ずしもこのガイドラインで、被験者の権利は守るけれども、その血縁者の権利というか、生きる権利を奪ってしまうようなこともあるわけで、そういうことも考えてディスカッションしていただきたい。 
  日本の場合には、必ず個人のプライバシーというのが何物にも優先して、個人のプライバシーを守れば、その周りの人は知らなくて、がんが手おくれになってもいいというようなことを平気で言う人がいますけれども、そこは非常に難しいと思うんです。法律的にどうなるか私はわかりませんけれども、遺伝性のがんの研究に携わった者として、やっぱり研究のほうでは、患者さんをがんで亡くさないということを想定してやっていたわけで、その場合に、ほんとうに個人のプライバシーが絶対的なのかどうかということもちょっと教えていただきたい。それが可能なのかどうかということを含めて考えていただきたいと思います。 
(五條堀委員) 
  まず、中村委員のご意見をちょっと補足する形でコメントしたいと思います。 
  1つは、先ほどのスニップということを利用して、病気遺伝子を探索していくというアプローチなんですが、その際に、どうしても健常人の方々のデータを使って病気の人との比較で探す。そうすると、健常人の方々は非常に量が多いわけですから、ある病気については健常ですから、その方が自己の病気を知りたいといっても、それはまた別の問題になってくるわけですね。ですから、そこはちょっと区別する必要があろうということが1点ですね。 
  それから、先ほどの高久先生と位田先生のお話の中で、ヒトゲノム研究は、生物学、医学上、高い有用性を期待するというところなんですが、好奇心というところも、実は基礎研究におきましては非常に難しいところがあります。つまり、学問の本質として人間とは何かとか、自己とは何かとか。したがって、サルと我々はどう違うんだ、そういうのがある意味で人間性の探求ということにもなるわけですね。もちろんそれが非常に人間の尊厳や権利を侵すのであれば、きっちりそれは規制しなきゃいけない。それから同時に、人の病気の機能を特定しようとすると、人では実験ができませんので、マウスや実験動物を使ってやる。そうすると、ヒトゲノム研究というのは、実は動物の研究とも密接にかかわるわけですね。ですから、ここもある程度考えていかないといけないのではないかと思います。 
(高久委員長) 
  確かにチンパンジーと人とは脳の細胞の塩基の配列はほとんど同じで、1.5%ぐらいしか違っていない。それで、チンパンジーがドアのかぎを開けると大騒ぎになるというこれだけの知能の差が、わずか1.5%のDNAの相違でおこっているという様な事は、研究者としてはぜひ知りたいということはよくわかります。五條堀委員のおっしゃることにも、確かにそういう点があると思います。医学的でなくて、生物学的には極めて有用性が高い研究もあると思います。 
(小幡委員) 
  全体としてヒトゲノム研究に関するという表題ですが、研究の中にどこまで入るのかなというふうな感じで、いろいろお話を伺っていたんですが、最終的に応用医学、治療の分野への応用ということになるのかもしれませんが、例えば非常に健康な方が、自分は糖尿病、あるいは高齢になって何か疾患になるような因子をどのぐらい持っているか調べてくださいという形で来て、それに対して調べるというふうな状況になったときの展開は、またちょっと違うのであろうなと思うんですね。ここでは、そこまでは考えていないのかなという感じがしたんですが、ちょっとその点を確認しておきたいと思いました。 
  そうでないとすれば、まさに研究ということになるわけですが、その場合に、匿名で、インフォームド・コンセントの場合、これは研究にのみ使いますから、あなたの個人名という結びつきはない形で利用しますよと言う限りにおいての問題というのは、比較的少ないと思います。 
  例えば、資料1−4の理念の5のところに「遺伝的特徴に基づく差別は許されない」。ここでは、研究者あるいは医療機関のやる差別のみを考えているわけではないと思うのですが、およそヒトゲノムについて大原則的なことを掲げておこうというのは、確かに将来に向かっては大事なことだと思います。ただ、研究とだけ、わりと狭い領域で考えていくと、遺伝子情報を他の第三者が知った時の差別の問題まで──将来的にはこれは必要だと思いますけれども──要るのかなという感じが若干いたしました。 
  個人情報保護の観点から言いますと、OECDの8原則から大体成っているわけですが、例えば個人の同意を得て収集すること。それから、目的外利用はしない。ですから、将来的には保険会社、あるいは雇用の機関がこの情報を知るということについて、目的外利用の禁止をかけることによって、そういったことがないという方向に多分いくのだろうと思います。アメリカなどでは、危険物を取り扱うところに採用する場合には、一定の遺伝子情報をあらかじめ知っておいたほうが有益であるという議論が若干あるようですが、それはおそらく日本ではまだ、考えられないと思いますので、目的外利用の禁止のところで、要するにほかの人には、情報管理をきちっとしておけば渡らないということになりましょう。そうすると、この差別は許されないという、だれが差別をするのかというそもそもの医療機関、研究機関自身が差別をするということであれば別ですけれども、ほかの人に渡らないという原則を徹底していくと、問題になる局面は本来出てこないはずなのです。まあ、一応原則としてうたっても構わないとは思いますが、それほどこれを強調する必要があるのかなと。 
  それから、個人情報の原則では、その本人に対しての開示の権利というのがございます。先ほど中村委員のお話がございましたが、被験者の権利のところの3番、これは個人情報のほうから言うと、まさにそうなんですが、匿名で研究だというふうにインフォームド・コンセントして、ボランティアでもらうという形は対象にならないと思いますので、その場合には、開示の権利というのは、必ずしも妥当しません。ですから、先ほどの診断のために自分のを調べてくれという形で行った場合は当然開示の権利が認められますが、あくまで研究、匿名ということであれば、すべてこういうことにはならない。 
  あともう一つは、情報管理責任というのがOECDの原則でも大変重要ですから、きちんと管理することと、匿名の研究の場合には、個人名に結びつけないような形による管理が可能であると思うのですが。いずれにしても、私が一番初めに表で、社会との接点のところで見たときは、研究に狭く限定せず、広い視野で話をするのかなと思っていたんですね。ですから、あくまで研究にするのか、あるいは将来的にはそれを診断に生かして、治療に生かすというふうなことまで視野に入れるかによって、つくり方が大分違ってくるのではないかという感じがいたします。 
(高久委員長) 
  おっしゃるとおりで、先ほどご紹介した来月の初めに公開される厚生省のガイドラインには、診断の事が入っている。玉井委員、そうですね。寺田先生どうですか。 
(寺田委員) 
  いえいえ、私は委員会に入っておりません。 
(玉井委員) 
  私は入っておりませんので。 
(高久委員長) 
  今、小幡委員から提案されたように、個人のゲノム情報に関する研究に絞った場合に、希望があれば教えるといっても、例えば糖尿病のスニップスについては、今の所、ほとんど何もわかっていないわけで、何年もたってそれがわかって、そのときに以前にさかのぼって「あなたのスニップスを調べたら、糖尿病になる確率が高い変化を持っていましたよ」という事を知らせるのかどうかという事も問題になってくるのではないかと思います。 
(中村委員) 
  だから、研究に協力する人が、研究参加者なのか、単にボランティアなのかという観点が非常に大事で、研究に参加するという位置づけであれば、当然、情報は戻さないといけないと思いますけれども、ボランティアという考え方であるところから、向こうが匿名ならば、そういう形で還元するということにはならないと思うんですね。だから、インフォームド・コンセントをとるときに、その対価は何かと、常にそういう協力する人には、何かを求めて必ずしも協力するとは限らないんで、これは5年先か、10年先か、あるいは子供の代かわからないですけれども、協力していただくことによって病気に対する新しい知見が得られて、予防や治療につながるというはっきりとしたボランティアであり、ドネーションであるという考え方がインフォームド・コンセントに入っているのであれば、本人に改めてフィードバックする必要はないと思うんですけれども、そうではないんですか。 
(位田委員) 
  この基本原則案というのを私が書いた背景というか、理由からちょっとご説明しておいたほうがいいと思うんです。この基本原則案は、必ずしもSNPだけを考えてつくったわけではなくて、ヒトゲノムを研究するということについて、どういうことを考えないといけないかという、ある意味では基本要素を挙げたわけです。その場合の原則をつくると先ほど委員長はおっしゃいましたけれども、どの程度の詳しい原則をつくるかというのが非常に難しいんですね。そういう意味で、この資料1−4というのは極めて一般的な、ある意味では普遍的な原則を挙げているのであって、実はこれを出発点にして、もう少し具体的な、SNPならSNPに関して、研究をする場合には、こういう問題があるぞ、もしくはこういう原則になるんだという方向でお考えいただければいいと思います。私、これに固執してやりましょうと言うつもりは全くありません。 
(高久委員長) 
  たたき台というか。 
(位田委員) 
  ええ。それで、匿名になってしまいますと、個人に研究の成果を知らせるといっても、わからなくなるわけですから、これは知らせることすらできないというほうの問題だと思うんですね。ただ、ある個人についてのヒトゲノムの研究結果が、その人のゲノムだということがわかって情報が出てきた場合には、その情報は知る権利があると。ただし、それが役に立つ情報かどうかというのをどちらが判断するかという問題があると思うんです。例えばお医者さんなり研究者の側が、これはこの人にとって役に立つ、もしくは役に立たないということを判断していいかどうかという問題があります。10万ぐらいの情報を全部あげて、多分相手の患者さんなり被験者はわからないと思いますが、それでも権利としてはあるというふうに私は基本的には思います。わからなければ結局使えないので、ほとんど情報としての意味はないかと思いますけれども、基本的な原則としては知る権利があって、それが役に立つかどうかというのは、本来なら本人の判断になります。そのときに、これはこういう意味ですよということを説明する義務なり責任なりが研究者もしくはお医者さんのほうにあって、現在の段階では、この情報ではこの程度までしか言えないということぐらいは説明をするべきではないかというのが私の考え方です。それが実際にはできないとか、それはやる必要がないとか、やってはいけないとここで決めるのであれば、それはそういう原則になるかと思います。 
  ですから、ボランティアかどうかというので区別をする必要があるというのは、ちょっと私は疑問に思っているんですが、ボランティアにしろ、患者さんにしろ、その人のゲノムはその人のゲノムなので、匿名になってしまうと、実際にはフィードバックできないというだけの話であって、原則はそういうことなんだろうと思います。 
  それから、遺伝情報を知る権利、知らない権利と同時に、だれが一体知る権利を持っていて、もしくは知らない権利を持っているかというのは非常に難しくて、先ほど中村委員がおっしゃったように、被験者の権利の4で、確かに本人は知りたくないけれども、もしくは本人は人に知らせてほしくないというけれども、血縁者にも当然その遺伝性の疾患があれば出てくるわけですから、その場合に、遺伝情報はだれのものであるかというのは非常に議論は難しいと思うんですね。原則としては、その本人以外は知る権利はないのですが、それは原則でありまして、例えば倫理委員会で、この情報については、患者には知らせなくてもいいけれども、血縁者に対しては知らせるべきであるという判断を下すならば、知らせてもいいという、むしろシステムを設定するほうの問題かなとは思います。 
(高久委員長) 
  このヒトゲノム小委員会でのガイドラインは、基本的にはミレニアム・プロジェクトに対応してつくられると解釈して良いのですか。 
(小田ライフサイエンス課長) 
  基本的にはそうではなくて、もともとはゲノム情報に関するゲノム研究が非常に加速化してきて、社会への応用なども具体的になってきたという状況の前で、まず、議論する場を設けたいということが、生命倫理委員会のほうで1つございます。それから、国レベルのものはないといったことが1つあります。それからもう一つは、やはり加速化してきてヒトゲノムの研究が非常に進展し、しかも、非常に多くの機関が参加する、そういったプロジェクトが具体的に始まったということで、その2つの意味が加わったというふうに考えております。それが一般的なそういう要請だけじゃなくて、具体的にミレニアム・プロジェクトが1つの国家プロジェクトとして始って、多くの機関も参加する。それに非常に大きなサンプルというんですか、一般の、あるいは病気の人も参画するといった状況を踏まえて、ヒトゲノム研究をきちっとした形のもので進める。そういった点で対応したらどうかな、その2つの意味が入っております。 
(高久委員長) 
  そうですね。ミレニアム・プロジェクトへの対応だけですと簡単なのですが。ミレニアム・プロジェクトに書いているゲノム解析を見ますと、遺伝子の解析と、スニップスだけ必要ですね。スニップスだけなら、まだわかっていないことですから、個人に知らせる必要もないのですが、今、事務局の言われたような広い範囲になりますと、当然、今、現実に行われている遺伝子診断ということも入ってくるわけですね。 
(小田ライフサイエンス課長) 
  それは、おそらく次の、遺伝子診断固有のものは必ずしもここで考えていなくて、次の他の遺伝子診断固有の問題についても、既に厚生省とか公の機関等で対応される面もありますので、当面、今すぐやるべきことは、研究面の加速化に伴うということで、そういった点で当面すぐやるべきことは、全体的な共通的な原則と、できればミレニアム・プロジェクトに対応したようなヒトゲノム研究、特にスニップス研究の加速化に伴うそういった点についてもと考えております。 
(高久委員長) 
  例えば研究という事で思い出しますと、日本の乳がんの患者ではBRCA遺伝子の異常が少ない。日本の乳がんの患者さんでBRCA遺伝子の異常のある人がどのぐらいの%いるのかというのは、研究になるのでしょうね。それまで含めると、いろんなことが全部入ってくることになると思います。スニップスだけですと、まだわからないことばかりですから、インフォームド・コンセントは得なければならないと思いますが、コンセントの内容も、将来、役に立つ可能性があるから調べさせてくださいという程度のことになります。同じ研究でも、研究のレベルがさまざまなものですから、そのレベルに応じてインフォームド・コンセントの取り方も違ってくるし、得られた情報の個人の要望に応じ知らせる対応の仕方も違ってくる。基本的には、それも含めて基本的な事を議論する。そういうことでいいわけですね。 
  ほかに何かご意見。 
(小幡委員) 
  研究をするのに、遺伝子情報のサンプルをとりたいというときに、とられるほうの立場からしますと、どういうふうに使われるのかということをきちんとインフォームド・コンセントされている必要があると思うんですね。自分のとられるのが、単に将来の人類の、まさに進歩のための一つのサンプルとしてお願いしますという形でいいですよというふうに同意してくれる場合は、まさにそれは匿名というふうな形になりますし、あるいは、現に何かしら疾患があって、そういった観点で、ひょっとしたら何か役立つかもしれないという形でとる場合、それは、そういう形で必ず言ってとらなければいけませんし、その場合、どういうときに本人に知らせるのかということも明確にした上で、そういうインフォームド・コンセントが必要である。ですから、とられるほうの立場になって、そこは考える必要があるのではないか。 
(高久委員長) 
  そうですね。おっしゃるとおりで、先ほど五條堀委員がおっしゃった正常の人の場合には、正常のコントロールとしていろいろ調べさせてもらう。例えば高血圧の人ですと、今のところはわからないけれども、高血圧になる頻度が高い遺伝子の変化が見つかるかもしれない。それが見つかると予防に役立つとか、それから、見つかった場合には、何年先になるかわかりませんが、ご希望ならばその結果について具体的に説明をしますということになるのではないかと思いますが、中村先生、どうですか。 
(中村委員) 
  実際、糖尿病とか高血圧研究になると、すごく大変だと思うんですね。だれが被験者にインフォームするのか、研究者がインフォームするのか、あるいはサンプルを集めた……。 
(高久委員長) 
  ドクターだと思います。 
(中村委員) 
  そうすると、まず、ドクターの教育をしなければならないという問題が、日本では必ず発生しますので、すごく大変な問題だと思います。 
(高久委員長) 
  サンプルを集めるというか、多分血液になると思いますが、血液を集めるドクターは、かなりの知識を持って集めないと、勉強してもらわなければならない。 
  それから、個人の情報として名前や住所は行かないにしても、研究者に病気の情報が行く可能性がありますね。年齢・性、それからどういう形で発病をしたとか、どういう症状があるとか、そういう個人情報はある程度行かないと研究にならないですね。そうでないと意味がないから。そういうことはインフォームを取る必要がありますね。 
(中村委員) 
  その場合に、どこでリンクさせるか。病院から出た時点でアノニマスに変わって、病院でしか関連がつけられないのか、研究者側のどこかにリンクする情報があって、実際にサンプルを扱う人には情報が行かないのか、どういう形で個人を特定する情報と研究結果とをリンクさせるのか、あるいはリンクさせないのかということも考えないといけないと思います。 
(高久委員長) 
  そうですね。おそらくリンクさせるところは別なところになる、一般論的なリンクじゃないと難しいと思いますね。ですから、最終的には、五條堀委員、そうじゃないですか。別なところでリンクさせて、そして、患者さんの情報については、必要最小限の情報を教えると、そういうことになりますかね。 
(五條堀委員) 
  私、基本的には小幡委員のご意見に賛成です。やはりインフォームド・コンセントというのは必要で、しかも、それがどういう形で利用されていくのかというのは、やっぱりそこに盛り込む必要がある。 
  今回、議論の対象としては、個人を対象としていますけれども、場合によっては正常な方がサンプルをドネートして、その結果によって、日本のある地域にはこういう病気が非常に多いですよというと、今度、その地域の人たちに対する差別とか、あるいは何かの問題が起こりますから、それはこちらの考え方でありますけれども、そういったものが地方、あるいは集団の特性はわかりますというようなことは、やっぱりイメージしておく必要があると思うんですね。 
(中村委員) 
  今の、ある地域に病気が多い少ないというのは遺伝子の問題ではなくて、それは疫学調査でわかることですから。ある地域にある病気が多いからといって、差別が生まれるとか生まれないとかいうことは現実問題として考えにくいと思うんですけど。 
(五條堀委員) 
  だから、この委員会は起こらないようにしようという……。 
(中村委員) 
  だから、それは問題の次元が違うわけで、ある地域にあの病気が多いというのは、別に遺伝子で調べる必要も何もないわけであって。 
(高久委員長) 
  ある地域に病気が多いといったときに、遺伝的な因子なのか、環境の因子なのか、いつも問題になってくるので、疫学調査で病気が多いということはわかりますけれども、その病気が多いのが、遺伝的なファクターなのか、環境的なファクターなのかということは、問題になると思います。しかし、地域といっても個人個人の集積ですから、患者さんの個人個人のゲノムを集めることになるのと同じように考えたほうが良いと思いますが。 
(五條堀委員) 
  それともう一つは、サンプルをあげたと。しかし、途中で私のサンプルは使ってほしくないと言われても、もう情報で入ってしまいましたら、例えば30万サンプル入った。それはもう無理なんですね。取り下げる権利があるぞと言われても、もう一度それを解析し直してやるということは非常に無理なんですね。そのことによって、研究に対するものすごい障害が起こってくるということもある。だから、むしろそういうことを明示して、この段階まで行ったら、これは一つの情報として入りますよと、それのほうがずっと。そうしないと、ある特定の妨害の目的でそんなことをやられてしまいますと、むしろ人間の尊厳や権利を守ることが、逆に研究によってもたらされる利益を妨害することになると思う。ですから、どこまで細かくやるかというのは非常に問題がありますけれども、ある程度どういうプロセスで使われるんだということは、やっぱりとるときに要るんじゃないかと思います。 
(高久委員長) 
  インフォームド・コンセントの概要についていろいろご議論いただいたわけですが、基本的には同じだと思いますけれども、目的とする研究によってかなり違ってくる。ここでは原則を書きまして、実際にどういうインフォームド・コンセントにするかということは、おそらく施設内のIRBでもう一回検討されることになるのではないかと思います、当然、研究内容によって違いますから、その基本原則だけ出せばいいと思います。 
  それから、皆さんご異論ないと思いますが、研究をするときには、協力機関を含めて全部、各施設のIRBを通さなければならない。少人数の施設ではIRBをどうするのだという問題がありますが、必ずしも施設の中のIRBでなくても、例えば協力研究機関ですと、IRBがしっかりしている施設に審査を依頼することは可能だと思いますから、原則は、どんな小さな施設でも、ゲノムの研究をやるときにはIRBを通すという原則はご同意いただきたいと思います。 
  それから、IRBに外部の人にどの程度は入っていいただくかどうかという問題がありますが、おそらく研究機関としては、一つのIRBをつくって、その中で、必要に応じて、外部の委員に入っていただく。IRBにはほとんどの施設で外部の人が入っています。厚生省のガイドラインでもたしか外部の人が入る様になっています。当然その研究に詳しい人、IRBに法律的な問題に詳しい人、生命倫理的な問題に詳しい人というようなことが、ほとんどの委員会で要求されていますので、資料1−4−参考資料の中で外部の委員を入れるということと、位田委員が言われたいろんな分野の方に入っていただく、サイエンスの面と、ソーシャルな面と、バイオエスティカルな面をカバーできる方が入っていただくということ、それを入れておいたほうが、施設としてやりやすいと思います。 
(位田委員) 
  厚生省のほうは、長い名前なんでちょっと忘れましたが、遺伝子解析に関連して生ずる生命倫理問題についてのガイドラインということですので、非常に詳細なガイドラインになっていると思うんですね。この委員会で、その程度の詳しいものをつくるのか、もしくは、もっと上のほうの基本的な原則でとどめるのかということについて、私はちょっとよくわからなかったものですから、非常に一般的な話しか書いておりません。例えばインフォームド・コンセントにしたって、だれがどのようにだれに対してインフォームド・コンセントをするか、もしくはインフォームする内容はどうするか、そういういろんな細かい話が出てきますので、それをここで議論して書き出すのかどうか、どの程度のレベルでここでつくる原則を考えたらいいのかというのを少しお考えいただければ、三井のほうで議論する場合にもやりやすいと思うんです。 
(眞崎委員) 
  その点ですけれども、さっきから迷っていたんですけれども、憲法的なものをつくると理解したんですけれども、今の議論ですとかなり詳しくて、厚生省のガイドラインと同じようなところへ行くような感じがしますね。例えば外部委員を入れるとか入れないとか、それから、匿名化の問題でも、どこで切るか、要するに名前を切るのは当然ですけれども、情報があまり切られると研究としては使い物にならない。そういう細かい点を、ごく大ざっぱなと言ったらちょっと語弊がありますけれども、全体的に包括するようなガイドラインをつくったらいいんだと思います。 
(高久委員長) 
  私も、議論としては出しましたが、基本的には憲法的なことを決めていただいたほうが良いと思います。厚生省のガイドラインでは非常に細かく書かれています。医療の現場では、ある程度のガイドラインがあったほうが便利とは思いますが、ここではもっと範囲が広いものにするとすれば、極端なことを言えば非常に簡単な、例えばインフォームド・コンセントを必ず取るとか、IRBを必ず通せとか、個人の情報は守秘義務とするとか、書きますと、一枚ぐらいのガイドラインになると思いますが、基本原則には大まかなガイドラインで良いと考えています。 
(寺田委員) 
  大まかで憲法的なことはいいんですけれども、医療として用いる診断的な面と研究の面とを別個にこの中で憲法として書いていただかないと、後々、非常に混乱が起きると思う。研究をやっている段階で得られた、全然役に立たないいろんな情報を知らせたり、知る権利があるとか、そこで研究者のほうをあまり厳しくくくってしまって、研究ができないというような恐れがある。このことと実際の遺伝病、それに対する診断、その情報の保護というのとは随分違うと思います。だから、その大まかなところだけここできちっと出していただきたい。私、恥ずかしながらまだ厚生省のをきちっと読んでいません。先生が言っておられるような厚生省のものが班研究のところであって、これからいろいろと改訂され厚生科学審議会に出てきて了承があるわけですね。この小倫教委員会ではもう少しどういう立場で論ずるのかきちっとここで書いていただければありがたい。 
  それから、これは細かいようですけれども、大事なところは、研究と医療を分けるところと、匿名化か匿名化でないかというところです。匿名化をするというのは、口ではいいですが、大変難しくて、個人情報法を政府が出そうとしているところでもあるし、ますます難しくなる。あるいはヨーロッパで個人情報法が前に施行されてご存じのとおり、あれで地域がん登録がドイツではつぶれてしまった。結局、個人情報で、匿名化のところで、匿名化からもとの情報に匿名化したままで全く戻れなくなり、全部わからない情報になってしまった。そういうこともあるので、そういうことも憲法的に、そこはきちっとした形で、ある程度法律的というか、行政的にきちっと罰もあるけれども、個人情報は機関として保護されるとか、そういうことまでちょっと書いていただければありがたい。 
(高久委員長) 
  どうもありがとうございました。 
  ほんとうにわからないことを研究するということと、わかっていることについての研究をさらに進めるということの区別について議論しておかないと、非常にややこしくなりますね。 
  それから、匿名化という問題は、名前は出さなくても、調べればすぐわかってしまう情報化の時代ですから、その点も検討していただく必要があります。 
(眞崎委員) 
  厚生省のはスニップス研究を目的としているのですから、研究のためなんですね。ただ、研究と診断を区別するというのは非常に難しいんですね。例えば患者さんがその結果を教えてくださいということは、正確な診断ではないけれども、そうかもしれないという要素が入っています。診断かもしれないですね。だから、その辺が不明確です。 
(高久委員長) 
  スニップスが入っているのですね。 
  厚生省のガイドラインは、たしか2月4日の先端医療部会で決めた事が厚生科学審議会に行くのだと思います。私、一応読んだのですが、大分忘れまして。 
(位田委員) 
  眞崎先生がいらっしゃるので、先生にお願いしたほうがいいかと思いますが、あれは非常に詳しいガイドラインで、今まで合計4稿まで出ておりまして、4稿を先日議論いたしまして、それをもう一度ブラッシュアップして、できたものが2月4日の先端医療技術評価部会へ出されるということになっています。議論するたびに少しずつ変わっていきますので、出てきたものが最終的にどうなるか、私も実はよくわかってないところがあります。 
(高久委員長) 
  あまり詳し過ぎて覚えられないのです。記憶力が悪いせいもあるのですが。 
  ほかに何か……。この後、引き継いで位田委員が中心になられて、きょう議論されことをもとにして、先ほどの説明を直していただくことになると思いますが、その場合に考慮すべきことなどについてご意見がおありでしたら。 
(眞崎委員長) 
  質問ですけれども、資料1−4、理念の3番と、5番、どう違うんでしょうか。 
(位田委員) 
  これが急いだためのミス、ミスというわけではありませんが、理念の5の「遺伝的特徴に基づく差別は許されない」というのと、被験者の権利の5の「遺伝的特徴に基づいて差別されてはならない」というのと、実は同じ内容でありまして、これをどちらに入れたほうがいいのか若干迷いつつ両方に書いてしまったというのが実のところです。ただ、理念の3のほうは、遺伝的特徴のいかんを問わず、単に差別されないというだけではなくて、ある遺伝的特徴があるから、何らかの形で社会的な評価が変わっていくとかいう問題もあり得ると考えました。3のほうが少し中身としては大きく考えています。理念の5のほうは、差別禁止ということで極めて人権的なことを書かせていただきました。 
  ついでに、先ほど憲法的なものを書いてほしいとおっしゃったのですが、今、資料1−4で出させていただいている程度のものよりも、もう少し詳しいことを書くということだと思うんですが、ただ、あまり詳しく書き始めますと、ほとんど厚生省のガイドライン的になってしまいますので、ある程度のところでとめさせていただいて、それぞれの項目にといいますか、説明のようなもの、もしくは、この中身についてはこれこれこういう問題があるという形で、2段階の形で成立させていただいたらどうかなと思います。そうしますと、例えばインフォームド・コンセントでどうするか、何をどうするかという問題も言えると思いますし、匿名の問題についても、原則としてみんな匿名にしてしまうほうがいいのか、ある程度リンクさせる可能性があったほうがいいのかというのは物によって非常に違うと思いますし、全部匿名にしてしまうと、多分あまり意味がなくなる情報もあると思いますので、そういうことは憲法的な部分に書かないで、説明の部分に入れるみたいな形でどうかなと思いますが、いかがでしょうか。 
(中村委員) 
  繰り返しになりますけれども、研究と実際の診断を分けていただきたいというのと、研究の場合でも、危険因子的なものをやるのか決定因子のようなものをやるのかで、患者さんにほんとうにフィードバックできるかというのは、レベルがかなり違うわけですし、そういうことも考慮していただきたいということと、100%アンリンクにすると、研究にはかなりディスターブが起こると思うんですけれども、その辺、アンリンクにする場合、完全にアンリンクにするのか、どこかに行けばリンク情報が得られるのか、どのようにやればいいのか、だれが管理するのかというのは非常に重要な問題ですね。ここに書いてありますが、守秘義務に関して、研究者というのはないわけですね、今までの法律的には。研究者が医師免許を持っているとひっかかるけれども、医師免許を持っていなかったら関係ないというのが今の状況ですから、そういうことも考えていただきたいと思います。 
(高久委員長) 
  位田委員がおっしゃった方向に私も賛成で、憲法的といいますか、かなり幅の広いことをお書きになって、それについて補足とか、参考という形でいろいろ書いていただいて、その中で、研究と、臨床とを分けて説明をしていただくと、わかりやすいのではないか。実際に作業されるのは大変だと思いますが、中村委員、更に匿名の問題などについては小幡委員に、ご意見を伺いながら、ご苦労さまですが、そういう線でつくっていただければと考えています。 
  ほかに何か……。 
(小田ライフサイエンス課長) 
  事務局からちょっとだけ。資料1−4の2枚目のところの被験者の権利の7番目の遺伝カウンセリング、8番目の正当な補償を受ける権利といったところにつきまして、特に8番目のところの正当な補償を受ける権利というのは、どこがどう受けとめればいいのか、国側が受け取るような形の何らかの何かを求めておるのか。あと、7番目につきましては、遺伝カウンセリングということで、厚生省系のかなり規模がきちっとした、基本的には医療機関が中心となって、しかも、きちっとした国立の医療機関を中心としたものでございますので、そういった点で体制が整っているところでのガイドライン。 
  それから、ヒトゲノムの研究は、厚生省系の研究機関だけじゃなくて、いろいろな研究機関、医療機関も関与しますので、こういったところについてもう少し現状を、まあ、時間がございませんが、ちょっとディスカッションしていただければいいのかなと思っておった次第なのでございますが、以上でございます。 
(高久委員長) 
  遺伝カウンセリングの問題とか、損害をこうむった場合の補償の問題は、中村委員がおっしゃったデフィニティブの場合には当然問題になってくると思います。この点は参考のほうで説明するほうがいいのかなと思いますが、玉井委員、それでいいですね。デフィニティブの場合に問題になりますね。 
(玉井委員) 
  先ほどから繰り返し出ているように、一口にヒトゲノム研究といっても、病気との関連の程度というのはさまざまなわけですね。それで、スニップスにあればそんなに問題にならないかもしれないけれども、一口に研究と言った場合には、疾患との関連はある程度明らかになっているけれども、例えば日本人集団における浸透率がわからないので研究するというレベルのものも、それはやはり研究だろうと思うんですが、ただ、その場合には、目の前に患者さんがいるという状況になるんだと思うんですね。患者さんもいるし、患者さんのご家族もいる。そういった場合には、研究ではあるけれども、そこでは診療にも踏み込んでくると思いますし、当然、浸透率がわらかないんだけれども、という形でお返しするのであれば、より患者支援という点ではきめ細かなものがそこに必要になってくると思います。私は、医療サービスとして提供できるレベルのものなのか研究なのかということはきちんと分けるべきだと思いますけれども、一定のグレーゾーンがあるということ、これは私が言うようなことじゃなくて、先生方のほうがよくご存じだと思いますけれども、そういうことも前提に入れた上で、憲法的なものをつくるというようなことを考えておかないといけないのではないか。それは、匿名ということに関しても、だれがどうやってももとをたどれないというような形でサンプルを集めてきても研究が成り立つのであれば、それはそんなに問題はないと思うんですね。だれがどうやっても、採血するそばから番号にしてしまうというような集め方をするのであれば、そんなに問題はないかもしれませんけれども、現実にはそういう集め方では、研究そのものが意味をなさないという場合もあると思うんですね。病歴がついていたり、時には家族歴がついていて、だれとだれがどういう関係にあるというものがついていなければ成り立たない研究というものもあると思いますので、一口に匿名といったときに、どういうレベルのものがあるのかということを頭の中に入れた上で、包括的ということを考えないと、個別にこういう場合はこうしましょう、こういう場合はこうしましょうと考えるほうが、むしろ簡単かもしれないんですけれども、こういう場合でも、こういう場合でも、こういう場合でも成り立つ包括的なものをつくりましょうというのは、なかなか難しい。 
  多分、私も位田先生と一緒にこれをやらなきゃいけないのかなと思ったりしているので、ちょっと頭が痛いんです。 
(高久委員長) 
  確かにほんとうに幅が広い。私は、スニップスと研究だけでいいのならば、簡単だと思ったのですが、グレーゾーンも含めてとなりますと、幅が広い。カウンセリングはやはり憲法のほうに入っておったほうが良いと思います。参考の中で、どういう場合にカウンセリングをしなければならないかということを書くわけですね。 
  それから、補償の問題も、基本的な問題ですが、憲法の中に入れる必要があるのではないかと思います。もちろんスニップスを調べて補償というようなことは考えられませんので、参考の中で、どういう場合に補償を考えなければならないかということを、位田先生と、玉井先生もよろしくお願いしたいと思います。 
(寺田委員) 
  こういう憲法をつくっていただくのは有り難い。しかし、当然、臨床研究で、あるいは人を扱う研究で守るべき約束が、ヘルシンキ条約とかいろいろある。当然そこでカバーされていることのすべてのことを書くのは必要かと思う。例えば8なんか当たり前の話で、こういうのは全然必要ないと思う。 
(位田委員) 
  当たり前の話は書かなくていいという議論がよく学者の方から出るんですが、当たり前だから書くのであって、当たり前なら、なぜ書いてはいけないのかというのを私はいつも返しているんですが。 
(高久委員長) 
  寺田先生、当たり前だから書かなければならないのですよ。 
(寺田委員) 
  それだったら、医療行為はこうであるとか、国民の権利とか、患者の権利とか、いっぱいある。当然の医療上の倫理のことがある。当然のことをここでどうして書くかというのはよくわからない。 
(高久委員長) 
  それはまた位田先生の案ができた時点でご議論乞う。 
  それでは、事務局のほうから日程について説明していただけますか。 
(小田ライフサイエンス課長) 
  それでは、我々も次回、2案を考えていたのでございますが、案を考えるのに少し時間が必要なようでございますので、ちょっと時間をとらせていただきまして、3月6日の午後というふうに考えてございますので、よろしくお願いいたします。 
  できれば、この研究のある程度内容がわかっている必要もありますので、中村委員にも、ちょっとディスターブしますけれども、ご協力いただければと思っておりますが、いかがでしょうか。 
(高久委員長) 
  中村先生、ものすごくお忙しいと思いますが、研究者の立場を代表していろいろご意見を言っていただきたいと思います。中村先生、よろしくお願いします。 
(小田ライフサイエンス課長) 
  どうもありがとうございました。 
(高久委員長) 
  それでは、きょうはこれで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。 

──  了  ──