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(別添)


  情報科学技術は、国民の生活、経済、研究・教育といった社会のあらゆる分野の活動において共通的に必要とされる基盤的技術という側面を有する。したがって、情報科学技術に求められる社会の要請は、基礎的・基盤的なものから応用に至る広範なものとなる。 
  先導プログラムのための重点領域は、基礎的・基盤的な情報科学技術の強化という視点に立って、こうした社会の要請の中から基礎的・基盤的な情報科学技術に対する要請について、技術の波及性、先端性等の観点から、取組みの視点、取組み方法如何に関係なく我が国の情報科学技術力を強化するために重点的に取り組むべき研究領域として設定したものである。 
  したがって、当該重点領域について、産業競争力の強化との関係を論ずれば、基礎的・基盤的な情報科学技術に対する要請が産業競争力の強化という視点から重点領域のどこに位置付けられるかを明らかにすることに他ならない。ただし、産業競争力の強化という要請は、必ずしも基礎的・基盤的なものに限らず、応用にまで亘る幅広いものになることから、重点領域の対象だけで産業競争力の強化という要請を必ずしも全て満たせるわけではないことに留意する必要がある。 

  かかる観点を踏まえた上で、設定した重点領域について、産業競争力の強化という観点から重点的に進めていくことが適切であると考えられる技術項目を明らかにすれば、以下のような大きく3つの技術分類の下に位置付けることができる。 

(1) 新しい市場開拓につなげる技術 

  ○統合シミュレーション技術開発 
  • 例えば、効率的かつクリーンなエンジンや環境負荷の低いボイラの開発において、設計から模擬試験など製作の前段階までの一連の工程をコンピュータ上で開発することを可能にし、従来の生産過程を一新させるような、流体と熱・化学反応とを連成させた複雑な燃焼現象を扱えるソフトウェアも含めた統合シミュレーション技術の開発 
  ○新しいアーキテクチャ技術開発 
  • 例えば、次世代のコンピュータ技術として、多様なニーズに柔軟に対応できるようなシステムオンチップ、演算処理性能を飛躍的に高めるためのメモリ混載型プロセッサ、リアルタイム処理プロセッサなどの新しいプロセッサ技術やそれらの性能を充分に引き出すソフトウェア技術の開発 
  ○大規模で信頼性の高いソフトウェアを構築する技術開発 
  • 例えば、高性能化が求められるシステムの開発に伴い複雑化、大規模化が一層進むソフトウェアの構築を容易にし、開発期間の短縮が図れるようなパッケージ化したミドルウェアの開発や既存のソフトウェアをベースとして進化発展させることのできる機構の技術、さらには複雑なソフトウェアシステムの設計からテストに至る方法論及び技術の開発 

(2) 市場拡大が大いに期待される技術 

  ○大規模で信頼性の高い先導的なネットワークアプリケーション技術開発 
  • 例えば、迅速かつ安全で高い信頼性で医療情報をネットワークを介して伝送することによって、専門医も患者も移動させることなく診断を可能にする遠隔医療システムの開発 
  • 例えば、必要な時に、欲する所へネットワークを介してつなげることにより、自発的に学習できるような教育を実現する遠隔教育システムの開発 
  ○高度なデータマイニング技術開発 
  • 例えば、患者に対して的確な治療を行うため、ネットワークを介して世界の医療機関に蓄えられている膨大な数にのぼる臨床データから患者の症状に関連する情報を迅速かつ的確に取り出すとともに、解析しそこから有用な治療データを取り出せるようにするためのデータマイニング技術の開発 
  ○あらゆる人が利用可能なバリアフリー・インタフェース技術開発 
  • 例えば、子供から高齢者、さらには五感あるいは運動機能に障害がある者でも利用上の不利益を受けることなく使いこなすことを可能にする、音声やジェスチャーなど多様な手段を持つコミュニケーションシステムの開発 

(3) 市場における優位性をさらに高める技術 

  ○光技術を駆使した超高速ネットワーク技術 
  • 例えば、我が国が得意とする光通信技術について、さらに通信品質の安定した利用しやすい超高速ネットワークの実現のための研究開発の推進 
  ○家電製品、携帯情報端末を駆使した人間重視ヒューマンインタフェース技術 
  • 例えば、我が国が世界に先行している家電製品について、知能(ロボット)化、ネットワーク化を図ることによって、さらに日常生活での利便性を高める情報家電システムの開発 

  産業競争力の強化の視点から重点領域の技術項目を上記のような3つの技術分類の下に位置付ける政策的な背景となる主要な考え方は、以下のとおりである。 

(1)中長期的観点から企業における情報科学技術の研究開発力の強化を図り、新しい市場を切り開く産業競争力を醸成すること 

(2)市場の大幅な発展、拡大が見込まれる情報科学技術の分野について、重点的な研究開発を行うことによって、飛躍的な技術力の向上を図り、当該市場にお  いて産業競争力を確保すること 

(3)我が国が世界に比して優位に立っている情報科学技術の分野について、さらに高い目標を掲げて技術力を高めることにより、当該分野における産業競争力の優位性を不動のものとすること 

  なお、こうした考え方に基づいて具体的な実施に移すに当たっては、 

○国研、大学等の研究開発機関における先端的な研究からの技術的な要請や、産業界からの技術に対する要請について、双方が共同・連携して達成していくことなどを通して、さらなる飛躍を図ること 

○国研、大学等の研究開発機関の有する新しい基礎的な研究知見と産業界の有する高い技術、開発力との融合により新しい技術の創出等を図ることなどを通して、市場を先導していくことが重要であり、産学官共同によるプロジェクトで実施することが効果的であり効率的である。また、 

○産学官共同プロジェクトの実施を通して人材の育成を図るとともに、研究成果を確実に産業界に還元していくことが重要である。 

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