戻る

第7回科学技術会議生命倫理委員会クローン小委員会議事録


1.日時    平成10年11月24日(火)13:30〜15:30

2.場所    科学技術庁第7会議室(通商産業省別館9階)

3.出席者

(委 員)
岡田委員長 青木委員、勝木委員、高久委員、武田委員、豊島委員、永井委員、木勝(ぬで)島委員、横内委員
(事務局)
科学技術庁 中澤審議官、藤木ライフサイエンス課長 他

4.議題

(1)クローン問題に関する動向(平成10年6月以降)について
(2)「大学等におけるクローン研究について(報告)」(文部省)について
(3)有識者からの意見聴取結果等について
(4)クローン小委員会の今後の進め方について
(5)その他

5.配付資料

資料7−1  クローン問題に関する動向(平成10年6月以降)
資料7−2  大学等におけるクローン研究について(報告)
資料7−3  クローンに関する有識者アンケート調査
資料7−4  クローン小委員会中間報告に対する意見とりまとめ結果
資料7−5  クローン小委員会の今後の進め方(案)

参考資料1  新聞報道(クローンに関する有識者アンケート調査結果について)
参考資料2  第143回国会衆議院科学技術委員会議録 第4号
参考資料3  厚生省厚生科学審議会先端医療評価部会
                     生殖補助医療技術に関する専門委員会資料
                     出生前診断に関する専門委員会資料

6.議事

議題(1):クローン問題に関する動向(平成10年6月以降)について

 (岡田委員長)

それでは、時間がまいりましたので、第7回のクローン小委員会を開会させて戴きます。どうもお忙しいところをありがとうございました。
最初に、新しい委員として横内さんが参加されることになりましたので、ご紹介申し上げます。
(横内委員)
畜産試験場の横内でございます。よろしくお願いします。
(岡田委員長)
高久委員が少し遅れるということですけれども、始めさせていただきます。
前回の小委員会以降、本委員会で取りまとめました中間報告を、学術団体や一般に公募いたしまして、広く意見を募集してきたというのが6月以来のことでありますが、その間にこのクローンに関する動きが幾つかございましたので、最初に事務局から簡単に説明して戴きたいと思います。
その前に、事務局のほうから、資料の確認をお願いいたします。
(事務局)
それでは、確認させて戴きます。
1枚目に、記事次第ということで、1枚ものの紙がございます。その下に配布資料がございますけれども、資料の7から資料の5まで5種類の資料がございます。その下に、参考資料の1〜3ということで3種類の参考資料を添えさせて戴いております。ございますでしょうか。
では、資料1に沿って、事務局のほうからご説明させて戴きます。
クローン問題に関する動向ということで、第6回の6月の会合以来の動きにつきまして、簡単に取りまとめてございます。
6月は、今申し上げました中間報告をプレス発表いたしまして、その後、当委員会でコンセンサスのございました国民一般からの意見をまとめるという話に基づきまして、中間報告を学術団体、社会団体、地方公共団体などに送付いたしまして、幅広く意見を収録したということでございます。それから、インターネットにも中間報告を掲載して意見の募集を行ったということでございまして、現在までに得られた意見の数は、団体、個人を合わせまして127件でございます。
それから、7月に入りますと、文部省の学術審議会で「大学等におけるクローン研究について」という報告が公表されました。
8月には、この文部省の報告を受けまして「大学等におけるヒトのクローン個体の作製についての研究に関する指針」が告示がされました。
9月になりまして、クローン技術に関するパンフレット「クローンって何?」というのを、私どものほうの科学技術庁で作製いたしまして公表をしております。
同じく9月には、衆議院の科学技術委員会におきまして、クローンに関する参考人質疑が取り行われて、岡田委員長をはじめ4名の参考人の方にご出席戴いております。
それから、10月に入りますと、厚生省の厚生科学審議会技術評価部会の下に専門委員会を設置しております。生殖補助医療技術に関する専門委員会、それから出生前診断に関する専門委員会、この2つを設けておりまして、クローンに絡む話は、この生殖補助医療技術に関する専門委員会ということであります。
それから、11月になりまして、第2回の生命倫理国際サミットの会合が開催されております。この会合では、クローン問題については一部取り上げましたが、そのほかのいろいろな医療倫理に関する問題が取り上げられておりました。
それから、つい先日、今月の5日ですが、総理府から「クローンに関する有識者アンケート調査」結果が公表されております。これについては先生方にも送らせて戴いているかと思います。
以上がクローン問題に関する動向の最近までの状況でございます。
(岡田委員長)
ありがとうございました。以上、いろいろな動きがあったわけでございますけれども、これに対しての質疑がございましたら、お受けしたいと思います。何かございませんでしょうか。
(岡田委員長)
それでは、議事の1番目の問題はこれで終わらせていただき、次に進ませて戴きます。

議題(2):「大学等におけるクローン研究について(報告)」(文部省)について

 (岡田委員長)

議題2は、大学等におけるクローン研究について、文部省の学術審議会のバイオサイエンス部会クローン研究に関するワーキンググループの主査として、この文部省側の報告をおまとめになりました豊島先生から、簡単にこの2番目の議題、大学等におけるクローン研究について説明して戴きたいと思いますが、よろしくお願いいたします。
なお、豊島先生は、本日他の会議に御出席のため、途中で御退席になります。それでは、先生よろしくお願いいたします。
(豊島委員)
豊島でございます。それでは簡略に文部省のクローンにかかわる委員会の経過を報告させて戴きたいと存じます。
まず、本年の1月20日の学術審議会に中間報告を出させて戴きました。その後も審議を続けまして、7月に学術審議会としての報告を出すと同時に、8月31日付で文部省から、自主規制に関する通達を各大学及び研究機関に出したところでございます。
その7月の分と8月の通達に関しましては、資料7−2にまとめて戴いておりますので、ご参考にして戴きたいと存じます。
なお、後ろのほうに、大学等におけるクローン研究について(報告の概要)というのがございます。それに沿って説明させて戴きますが、まず背景については、ここでもよく議論されておりますので、ほとんど変わらない議論でございますので、省略させて戴きたいと存じます。
それから、倫理・社会面からの考察でございますが、その1番で、ヒト・クローン個体の作製がもたらす社会的影響への懸念ということがございまして、これも、ここで議論されたことと一緒でございますが、文部省の学術審議会のグループといたしましては、どのように対応するべきかという議論になりました。特にヒト細胞を扱っている頻度が一番多く、しかも研究が進んでいるという面では、大学及び研究所の関係というのは、クローン問題に対して一番近いところに位置しているという認識でございまして、したがいまして、できるだけ早くこれに対応するべきであるという考え方に基づいて、このようにちょっと早く動いたわけでございます。
それで、倫理面の3番のところに書いてございます研究の自由と責任ということでございますが、大学等における研究は、研究の自由を原則としつつも、社会における文化的活動の一部であり、研究者自身による倫理的・社会的責任の自覚と厳しい自主規制のもとに研究を行うことが重要であるという認識でございます。
それと、4番の研究に関する情報の公開でございますが、不要な疑い、不安を持たれないために、個人のプライバシーの尊重や研究にかかわる独創性、知的所有権等の保護の観点から必要な配慮を行いつつ、情報の開示に努めていくことが必要であるということで、できるだけ情報は開示していきたいということでございます。
それから、数枚めくっていただきまして、5ページでございますが、その4番に、クローン研究の指針の策定主体及び内容という項目がございます。ここをこらん戴きますと、大体どのような考え方でクローン研究の指針をつくったかということがおわかり戴けるかと存じます。読ませて戴きます。
初めの項目でございますが、大学等のクローン研究の指針については、全ての大学の研究者に対し共通的な規制が行われるべきであるため、文部省が策定し、学術審議会による専門的な調査審議に基づきながら、運用に当たることが適当である。
2番目、指針の内容としては、ヒトのクローン個体の作製を目的とした研究又はそのおそれのある研究は行ってはならず、とりわけ、ヒトの体細胞(受精卵、胚を含む。)由来核の除核卵細胞への核移植は禁止と明示する。
3番目が、禁止対象となる研究に隣接する周辺領域の研究については、ヒト・クローン個体の作製の禁止に違反するおそれのあるもの又は違反するとの疑義を受けるおそれがあると考えられるものを対象として、指針違反の有無について、事前に確認を得なければならないこととし、審査の結果、指針に違反しないことが確認されたものについても、実施する際には情報公開に努める。
4番目が、指針の策定後においても、研究の進展や社会の動向に対応し、不断の見直しを行うことが必要である。また、見直しが行われないまま3年を経過した場合においても、改めて指針の再検討を行う。ここで見直しの要望が出てこない場合でも、3年目には必ず見直しを行うということを規定しております。
それから、その管理をどのようにするかということでございますが、5)のクローン研究の指針に基づく審査・管理でございますが、ポイントだけを申しますと、各大学等において審査を行うための委員会を置き、異議があって確認を行う際には、文部省に意見を求めることを条件とする。文部省では、学術審議会に専門委員会を置いて審査を行う。そして答えを出す、そういうことになっております。
以上、簡単でございますが、筋道だけご説明させて戴きました。
(岡田委員長)
ありがとうございました。この「大学等におけるクローン研究について」という報告で、ご質問ございませんでしょうか。
(岡田委員長)
これは、ここで議論していることとの違いは、ないわけですね。
(豊島委員)
基本的な線で違いはほとんどないと思います。ちょっと禁止項目がきついかと思います。というのは、疑いのあるような研究は行わないということになっていて、直接だけではなくて、もう少し厳しく規制しておりますけれども、これは全体のいろいろな議論の進み方、あるいはここでのこれからの規制等を踏まえまして、いろいろ改定をしなければいけないけれども、大学では直接近いところを扱っている人がたくさんおりますので、とりあえずこれで規制して、大学の研究が滞らないようにしておきたい、そういうことでございます。
(武田委員)
1つ教えていただきたいんですが、今の禁止を要することを明示するということが書いてございますけれども、もし違反した場合の罰則とかいうことについては何か議論ございましたでしょうか。
(豊島委員)
法的な面では罰則はございませんけれども、それぞれの大学におきまして、委員会において検討するわけでございますから、その大学においていろいろ考えていきます。文部省側としては、大学の自主的な考えに基づいた決定を、つまり、基本的には後から追認するというふうな形になると思います。
(岡田委員長)
そのほかにはございませんか。
(岡田委員長)
これは、申請者が、以前のときみたいな、何か丸をつけてどうこうというような感じのところから始まるんですか。
(豊島委員)
はい、そうです。組み替えのDNAのときにもそういう申請の方式をとりましたけれども、今回に関しても、申請者が申請のときに丸をつけて、それから学内の委員会で審議してOKしてもらう。審査の段階でもし疑義がありながら、審査の場のないものは、審査委員会でチェックして戻すということになっております。
(岡田委員長)
わかりました。ほかにございませんでしょうか。
(岡田委員長)
よろしゅうございますか。

議題(3):有識者からの意見聴取結果等について

 (岡田委員長)

それでは、議題の3のほうに移らせていただきます。議題の3は、有権者からの意見聴取結果等についてということでございますが、前回の本小委員会で、インターネットとか世論調査等を通して、クローン技術に関する国民一般の意識を適切にとらえることが必要であるという共通の意識が得られたことと存じますけれども、先ほどの事務局の説明のように、総理府が実施しておりました「クローンに関する有識者アンケート調査」の結果がまとまりまして、このほど公表された次第であります。それが資料7−3でありますが、これにつきまして、事務局から説明をお願いいたします。
(事務局)
それでは、「クローンに関する有識者アンケート調査」について御説明申し上げます。1ページ目から御説明申し上げます。
調査の目的は、クローン技術に関する基本的考え方をとりまとめるため、各界の有識者を対象にアンケート調査を実施し、意見を聴取するものでございます。
調査項目は、生命倫理問題一般について、クローンに関する生命倫理問題について、動物のクローン技術について、4番目としてその他ということでございます。
調査対象者は、全国の有識者2,700名を調査対象としております。対象としているところの分野でございますが、学識者、マスコミ関係者、医者、自由業者、企業経営者、各種団体役員、研究職、行政官でございます。調査時期は今年の8月から9月の間でございます。調査方法は郵送法によります。それから、回収結果は、2,700名中2,114名、78.2%の回収率となっております。
各分野ごとの回収数及びその率は、そこに書いてあるとおりでございますが、70%をいずれも超している状況でございます。
2ページ目に移らせていただきます。
調査結果の概要でございます。
1、生命倫理問題一般についてということで、1)で生命倫理問題に対する関心ということでございます。問1で、生命倫理問題について関心がございますかということで、96.1%の方が、関心があるという非常に高い結果になっております。
3ページは各分野ごの関心の度合いについて表にしてありますが、どの分野でも関心が高くなっております。
4ページ目に行きます。それでは問2ということで、生命倫理問題について、特に関心の高いものは何ですか、3つまで挙げてくださいということで質問しておりまして、これにつきましては、遺伝子治療50.4%、臓器移植47.7%、脳死47.1%、安楽死44.7%、クローンの作成45.6%、以上の項目が非常に関心度合いの高い項目となっております。
5ページ目には、各分野ごとの関心の状況をグラフにして示してございます。分野間での比較で見ますと、遺伝子治療を挙げた割合はお医者さんで、それから臓器移植を挙げた者の割合は各種団体役員で、脳死を挙げた者の割合は企業経営者でそれぞれ高くなっております。
6ページに移ります。それでは、非常に関心が高かったものの1つでありますクローンに対する関心ということで、焦点を集めてきておりますが、問3で、クローンについて、どの程度関心がありますかという質問に対しまして、非常に関心がある、ある程度関心があるを含めまして、関心があるは92.3%で、ほとんどの方が関心があるということでございます。これにつきましても、各分野ごとに、それぞれ圧倒的に関心が高いという率になっております。
8ページをお開きください。問4でございます。では、その関心のあるクローンに関する知識・情報をどこから得ていますかという質問でございまして、これを見ますと、新聞が93.0%、テレビが84.2%、次に書籍や雑誌というのが60.9%と続いております。この3つの媒体でほぼカバーされるような状況になっております。
次に、10ページをお開きください。今回、このアンケート調査を実施するに当たりまして、先ほどもございましたように、「クローンって何?」というパンフレットを同封させて戴きましたが、そのパンフレットの中で、どういう項目について関心を持ちましたかということを質問しております。ここにあります1から5までは、そのパンフレットの目次に沿った内容でございます。
その中で見ますと、非常に関心の高い項目としましては、クローン技術の応用分野が75.3%、クローン技術の人への適用68.3%、その次に、クローンを産生する方法、技術でございますね、この3つが非常に関心が高い分野であったということでございます。やはりクローン技術を使ってどういう応用ができるかというものに、非常に有識者の方は関心があったということが言えるかと思います。
12ページをお開きください。ここは大きな2のクローンに関する生命倫理問題についてということでございます。
1)でクローン技術を人に適用することは好ましくないかという質問でございます。問6は、クローン技術を人に適用し、人の個体を生み出すことは、生命倫理の観点から好ましくないとの意見がありますが、あなたはこのような意見についてどう思いますか。
それに対する回答としましては、好ましくないと思う、どちらかというとそう思うという人が全体の93.5%を占めております。そう思わないという方は4%にすぎません。これも各分野ごと、圧倒的に好ましくないという答えでございます。
14ページでございます。これは枝の質問になりますけれども、先ほどクローン技術を人に適用し、人の個体を生み出すことについて好ましくないとお考えの方と、好ましくないと答えた方1,976名に質問をしております。その理由は一体何ですかということでございます。これは1から6まで、当小委員会でも議論されておりました尊厳に関する問題と理由を6つぐらいに分けて選んで戴いております。これを2つ選んで戴くということでございますが、一番多い理由としましては、1番の人間は男女の関与で生まれるものであり、人間の尊厳上問題があるからと、人間の尊厳について67.7%の人が指摘しております。
次に、生まれてくる人をあらかじめ定めた目的達成の手段としてとらえるものであるからという、これが43.6%でございます。この2つが非常に高い率になっておりまして、その次は、人の性質をあらかじめ意図的に決めることはそもそも許されないからというものが29.8%と続いております。
分野間の比較で見ますと、人間の尊厳上問題があるからと答えた者の割合は、行政官で高くなっております。そのほか分野ごとに見ますと、研究職を除く各分野で、人間の尊厳上問題があるからと答えた者の割合が最も高くなっております。
次、16ページでございます。先ほどのクローン技術を人に適用することについて好ましくないとは思わないと答えられた方でございますが、これは4%の85名ですけれども、その方に、では、その理由は何ですかということで聞いております。その理由は1から4まで分けてつくっておりますが、一番多い理由は、誕生後の環境要因によって、能力、容姿等は変化し得るものであるので、クローン技術を特別視する理由はないというのが58.8%、2番目は、両親の様子からあらかじめ性質がわかるので、クローン技術を特別視する必要はないというのが40%になっております。これは総数が85人ということで、いわゆる統計的な有効値という意味ではどうなのかなという指摘は、総理府のほうからもございました。
次に、18ページでございます。クローン技術の人への適用について、大きな問題の1つとして、不妊症の夫婦が、クローン技術で子供をもつことということで、問題7としまして、クローン技術によって不妊症の夫婦が、受精によらずに夫か妻の遺伝子をそのまま受け継ぐ子供を持つことが可能ともなるとも言われていますが、このような目的でクローン技術を使うことについて、どのように思いますかという質問に対しまして、一番多うございましたのは、使うべきではないが67.3%、それから、ほかに方法がない場合や、審査機関の承認を必要とするなどの一定の条件・制約の下で使うのであれば問題ない、これが22.0%でございました。特に制約を設ける必要はないというのは1.5%でございました。
次に、20ページでございますが、では、そのクローン技術の人への適用といったときの規制の問題について質問しております。これは特に外国とのバランスの関係を質問しておりますけれども、問8として、クローン羊の誕生を契機として、欧米をはじめとした各国及び国際機関において、クローン技術の人への適用の規制について種々の検討が行われましたが、当面は、人のクローン個体を生み出すことについては、これを禁止することが世界的な流れとなっています。日本での規制は、世界の規制と比べてどうあるべきだと思いますかという質問でございます。
こういう質問に対しまして、一番多うございましたのが、世界各国と歩調を合わせるべきであるが42.8%でございます。2番目に多うございましたのが、我が国独自に厳しい規制を設けて技術の暴走を予防すべきであるが38.1%、その2つが多うございました。
それから、22ページでございますが、生殖技術の人への適用の規制とのバランスということの質問をしております。問9で、クローン技術の人への適用の規制について、他の生殖技術の人への適用の規制とのバランスを考慮すべきと考えますという質問に対しまして、60.2%の方が、そう思う。そう思わないという方が31%ございました。これは各分野とも、そう思うという方が一番多うございました。
次、24ページでございますが、5)でございますけれども、日本における人のクローン個体の規制の形態について質問しております。問10で、日本において、人のクローン個体を生み出すことを禁止するとすれば、どのような規制の形態が適当であると考えますかということでございます。一番多うございましたのが、1の法律に基づく規制、71.2%でございます。次に、国の定めるガイドライン等による規制が16.7%でございます。あとの規制は非常に低い数字になっております。
次、26ページでございますが、では、そのような規制につきまして、いつごろやるのがいいかということで、問11で、人のクローン個体を生み出すことについて、クローン技術を規制するとした場合、規制の時期をいつごろから行うのが適当と考えますかということでございますが、1番のできるだけ早くが66.9%で、一番多うございました。次に、生命倫理の観点から国民的議論を深めた上でという意見が23.1%と続いておりました。
28ページでございます。これは規制の適用期間ということでございまして、問の12で、人のクローン個体を生み出すクローン技術の規制は、今後、クローン技術に対する国民の意識やその規制のあり方をめぐる状況が変化する可能性があります。規制に期限を設けて一定期間の後、再議論すべきだとの考えについて、あなたはどう考えますかということでございます。
これにつきましては、永久に禁止すべきであるという意見が59.4%でございます。次に、人の発生過程の研究等の可能性をなくさないため5年程度の期間を置いて再検討すべきというのが23.9%で続いております。永久に禁止したほうがいいというのが59.4%で、一番多うございました。
以上が人へのクローン技術の適用についての有識者からの意見でございます。
次に、3番ということで、30ページですが、動物のクローン技術についてということでございます。これは、クローン技術を用いて人の役に立つ動物を生み出すことについて質問しております。問13としまして、クローン技術を用いて、肉質の良い牛を大量生産するなど人に役に立つ動物を生み出すことについて、あなたの考えをお聞かせくださいということでございまして、一番多うございましたのは、効率的な食糧の生産、医療の向上など人類に役立つ技術であるから、適切な情報公開を進めながら行うというのが多うございました。あとは倫理上の観点から行うべきではないというのが13.1%ございました。
それから、32ページでございますが、人に使える移植用の臓器を多数つくることについて質問しております。問14としまして、遺伝子組み換え技術を用いて人に移植可能な臓器を持つ動物を生み出し、人へ移植する研究が諸外国で進められています。このような遺伝子組み換え動物をつくり出す成功率は非常に低いことから、貴重な遺伝子組み換え動物の複製増殖技術として、クローン技術は今後の有力な技術と考えられ、研究が進められています。クローン技術を利用して、動物を使って人に使える移植用の臓器を多数つくることについてどう考えますかということでございます。
これにつきましては、安全性の確保等の一定の条件付きで認めるべきであるというのが54.8%で1番でございます。続いては、倫理上の観点から行うべきではないというのが24.7%ございます。
それから、34ページでございますが、4、その他ということで、1つは、情報公開の主体について質問しております。問15としまして、クローン技術の研究は、一般の国民に容易に理解しがたいものであるため、情報公開の重要性が指摘されています。クローン技術等に関する情報を公開するには、誰が最も主体的に取り組むべきであると思いますかということで、これにつきましては、国などの行政機関というのが56.1%、続いて研究機関が22.4%となっております。
それから36ページ、最後の質問でございますが、生命倫理問題について考えるべき主体ということで、問16で、生命倫理問題については、誰が主に考えるべき問題であると考えますかということで、これにつきましては、一般の人すべてが考える問題というのが85.8%で、圧倒的多数でございます。あとは4%、3%ということでございまして、一般の国民が考えべき問題だというぐあいに意見をお持ちでありました。以上でございます。
(岡田委員長)
どうもありがとうございました。このような格好で、非常に貴重なアンケートが得られてその整理が行われたわけですが、これを1つのベースにして、これから先考えていかなければならないと思っております。
このアンケート調査では、この整理のところには入っておりません自由記述欄というのもございまして、そこにはいろいろな観点からさまざまな意見が記述されておりました。その記述がありまして、分厚い資料を事務局から各委員の先生のご自宅に直接郵送させて戴きますので、ごらんになって戴きたいと思います。これは、プライバシーの保護の観点から、取り扱いには十分気をつけて戴きますようお願いいたします。
それでは、「クローンに関する有識者アンケート調査」の結果につきまして、ただ今の事務局からの説明に関しての御質問、御意見はございませんでしょうか。
(木勝(ぬで)島委員)
基本的な質問をいたします。これは総理府の世論調査担当の特別部局でやった調査ということですが、一般国民対象でなくて、有識者という形にされたのは、どのような理由からでしょうか。
(事務局)
これは総理府の広報室が行ったアンケート調査でございますけれども、クローン技術に関する国民の意見ということでございますけれども、中身が非常に専門性が高いということで、そのために私どももパンフレットをつくって、なるべく理解しやすい形にしたんですけれども、非常に専門性の高い内容ということで、有識者の方に質問したほうが理解をして戴きやすいだろうということが1つございます。
あと、こういう形の有識者を対象としたアンケートということで、最近、世論調査だけではなくて、経済、財政の分野などを含めまして、そういう専門的な内容について質問する場合に、有識者アンケートという手段をとるというのが広報室などでは最近やりだしているということもあって、その2点から、今回、有識者アンケートということで調査しようということになったと考えております。
(岡田委員長)
よろしいですか、その他ございませんでしょうか。
(岡田委員長)
このアンケートの結果というのは相当ウエートの高いものだと思いますので、その中でも気になるのは、法規制の問題というのが非常に強く出されているというのがありまして、片一方では、もう一つは生殖技術とのバランスをとらなければならないということでのウエートもまた高いという2つのことがございますので、そこら辺を勘案しながら、どういう形をとるかというのが、今後のこの委員会での1つの検討課題になろうかと思っております。
(木勝(ぬで)島委員)
このアンケートを拝見したときに、一番特徴的だと思いましたのは、問6で、クローンの人への適用は好ましくないとした人が93%あるのに対して、問7で、不妊のカップルに認めないとした人が67%に減ってしまうことです。これは一貫した答えをし続ける人であれば、クローンの人への適用は好ましくないとした人は全員が、不妊カップルにも認めないと答えるはずです。論理的にはそうなんですが、それが93%が67%に、26%も減ってしまう。全体で4人に1人の方が、そこでウーンと考えてしまうわけで、やはり人クローンの是非の問題は生殖技術の規制論議の枠内で検討しないと矛盾を来すということが改めてわかりました。事実、問9で、ほかの生殖技術とのバランスを考慮すべきという人が60%に上っています。ただ、問11のクローンの規制をいつやるかという質問に対しては、早急にするかというような選択肢を与えられてしまうと、ほかの生殖技術の規制の動向を見てというところに行く人が極端に少なくなってしまいますので、その辺、ちょっとばらつきというか、揺れが大分あると思います。ですから、ここに示されたような単純集計だけではなくて、問6で好ましくないと答えた人、好ましいと答えた人、それぞれが問7でどう動いたか、問の間でのクロスチェック分析も行えば、この調査結果を、より有効に利用できると思います。
(岡田委員長)
いろいろなことを考えていかなければならないと思っております。今回の論議を踏まえて、とにかくこれからやっていかなければなりません。
続けて、資料7−4のクローン小委員会中間報告に対する意見のまとめというところに入らせて戴きます。これも事務局のほうからお願いいたします。
(事務局)
御説明させて戴きます。資料7−4でございます。クローン小委員会中間報告に対する意見とりまとめ結果でございます。
これは、意見を求めました対象としましては、学術団体、社会団体、地方公共団体、それから一般ということでございます。一般のほうは、インターネット等に中間報告を公表して、一般の方からの意見が集まってきたのを整理したということでございます。
意見の回収状況でございますが、学術団体は304に対して82団体、社会団体は21団体に対して14団体、地方公共団体は59団体に対して15団体、一般は16件あったということで、合計127件の意見が集まりました。
意見のとりまとめ結果は次のページにございます。3枚ものでございますが、概要でございます。読ませて戴きます。
1.科学技術に対する考え方
科学技術のあり方に言及している意見は少ないが、それらの中には科学技術の進歩を評価しながらも、応用については慎重になるべき、利用にあたっては優れた思想が必要であるという指摘がみられる。
2.クローン技術に対する考え方
1)人への適用
クローン技術による人個体の産生について言及している意見すべて否定的なものであり、多くは「人間の尊厳の侵害」を利用してあげている。しかしながら、「人間の尊厳の侵害」は人個体産生の禁止理由として不十分であるという意見もみられる。また、人個体が産生された場合の対処方法や人クローンにも人間の尊厳を認めるべきだという意見もみられる。さらに、日本人に特定した表現を疑問視する意見や、中間報告の理論的根拠や主張が弱いとする意見もある。一方、クローン技術に対する評価が定まっていない現時点において、将来の方向性を結論づけることを疑問視する意見がみられる。
2)人以外への適用
クローン技術の人以外への適用については、概ね中間報告の内容と同じ評価がなされているが、研究の進め方については積極的に推進すべきという意見と慎重に検討すべきという意見の2つに分かれている。また、人個体産生に対する懸念から有用な研究が規制されることを危惧する意見もみられる。
3)他の生命倫理問題との関連
クローン問題を単独で扱うのではなく、他の生命倫理問題と関連させた議論、生命や生命操作の根本問題を提示することの必要性を指摘する意見がみられる。
3)規制のあり方
(1)規制方法
クローン技術の規制方法に対する意見の9割は何らかの法的規制が必要との考えを示している。これらの意見の多くは実効性や抑止力を理由としてあげている。
一方、人個体産生の禁止により有用な研究まで規制、禁止されることのないよう配慮が必要という意見もみられる。
(2)規制対象
規制対象について具体的に言及している意見は少ない。
(3)時限
規制の時限について言及している意見のうち、恒久的という意見が3分の1、定期的(2年〜3年ごと)に見直しが必要という意見が3分の2を占めている。人個体の産生は将来も容認されるべきものではないという意見がある一方、クローン技術の評価が定まっていない現時点において将来的な規制の判断をすべきではないという意見がみられる。
(4)罰則
法律違反に対して厳しい罰則が必要であるという意見は多いが、具体的な罰則を挙げているものは少ない。処罰の対象や誕生した人の取り扱いなど、簡単には決めがたいとする意見もみられる。
4)情報公開のあり方
正しい情報が伝達されていないことが国民の不安を生ぜしめているという意見が多い中、情報公開については積極的に推進すべきという意見と慎重に行うべきという意見に分かれている。前者は情報公開の義務づけ、制度化、データベースの設置等の必要性をあげている。一方、後者は詳細情報の公開、研究論文のオリジナリティーの保護等への配慮の必要性をあげている。
5)研究・開発のあり方
クローン技術の研究・開発のあり方に対しては、積極的に推進すべきという意見の他、積極的に推進することは極めて危険であるという意見がみられる。また、クローンを確実に誕生させる技術の確立をはじめとする基礎研究に重点を置くべきだという意見もみられる。
さらに、研究機関の認定、実施状況のチェック等、研究システムの確立の必要性を指摘する意見もある。
6)国際協調のあり方
国際協調のあり方については、独自の路線を打ち出すべき、国際的な法規制に向けて働きかけていくべき等、クローン技術に対して我が国が積極的に取り組む必要があるとの意見が多くみられる。
それから、大きな3.でございますが、クローン小委員会に対する意見
クローン小委員会に対しては、いくつかの社会団体から委員に女性を入れてほしいという意見が出ている他、基本事項の検討やわかりやすい説明の必要性が指摘されている。
それから、大きな4.でございますが、中間報告に対する加筆、修正等
中間報告の内容に対する意見には、内容全般についてコメントしているものと箇所を特定して修正案を明示しているものがある。
内容全般についてコメントとしている意見では、基本的な定義や説明がなされていないことに関する指摘が多くみられる。
箇所を特定して修正案を明示している意見は、文章・表現の追加、内容が不明な点の指摘、より厳密な内容への修正等がみられる。
以上が意見に対する概要でございまして、4ページ以下は個別の意見でございます。この中には、学会としての意見を統一見解としてまとめられたものもありますし、学会ということではなくて、学会の会員の個人の私見として寄せられた意見もございます。それから、個人の意見というのもございます。その辺は、記述の一番最後に、(個人)とか(私見)とかという形で明示してございます。以上でございます。
(岡田委員長)
どうもありがとうございました。これも随分エネルギーを費やして意見聴取をして戴きまして、どうもありがとうございました。
ただいまのことでありますが、事務局に寄せられた意見には、まだいろいろな観点からの意見が記述されておりまして、今度は先ほどとは別のものですが、厚い資料を、これも事務局のほうから皆さんのところへお送りいたしますので、中身を読んでおいて戴きたいということであります。そういうのも含めて随分エネルギーを費やしておりますので、できるだけ読んで、これからの討議に持っていきたいと思います。
今のクローン小委員会の中間報告に対する意見という後のものに対しまして、何か御質問なり、御討議ございますでしょうか。
これは、どの団体に出したかというのは、リストか何かに出ているんですか。それは何もないですか。意見を回収した団体とか、学会とかというもののリストみたいなものはあるんですか。
(事務局)
リストはございます。
(岡田委員長)
それはオープンにしないということですね。
(事務局)
はい。今回の……。
(岡田委員長)
そこにはあるんですか。
(事務局)
こちらにはございますが、個別の中身はちょっと。
(岡田委員長)
多分いろいろな意見がいろいろな団体でそれぞれある方向性のものが出ていると思いますが、そうなのでしょうか。
(青木委員)
お聞きしたいんですけれども、この学術団体というのは、多分、日本学術会議に尋ねたんだと思うんですけれども、抽出した304団体がよくなかったんでしょうか、回答率が大分低いですね。片一方のアンケートに比べると、有識者や学識者が非常に多いのに、学術会議なんかは非常に低いというのはちょっとびっくりしたんですけれども、304団体の選び方が悪かったのか、それとも、もう少し視点を変えて選ぶと、もう少し回答があったのか、その辺は検討することだと思いますけれども、ちょっと低いなというふうに私の考えでございます。
(木勝(ぬで)島委員)
私も、調査対象の2)の社会団体というのはどういう団体であるか、一覧表を公表して戴きたいと思いますし、そのうちどの団体から回答があったかということも公表して戴きたいと思います。そうでないと回答結果をどう評価したらいいのかよくわからなくなります。また、あそこには行ってないから送ってくださいといったお願いもこれからできると思います。前のアンケート調査の対象にあった「各種団体」というのも具体的に何なのかよくわからなかったのですけれども、それにはどういう団体が入っているのでしょうか。科学技術に関心を寄せる市民団体もありますけれども、例えば宗教団体のようなものが入っているのかどうか、それが入っていないのであれば、これからそちらのほうにもヒアリングをしなければいけないと思います。今後の進め方にもかかわってくる問題ですので、その辺は明らかにしておいたほうが有効な議論ができるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
(岡田委員長)
そこら辺は可能ですか。
(事務局)
先ほど各先生方にお送りすると申しました意見について、どの団体から回答があって、どことどこの団体から回答があったかというリストは当然つけてお送りいたします。
(木勝(ぬで)島委員)
それは公開された情報であると考えてよろしいのですね。
(事務局)
そういたしましたら、団体の名前については公表いたします。
(永井委員)
意見の公開、非公開についてあらかじめ明確にしてアンケートを取られたのかどうなのか。
(事務局)
それは明確には、オープンにしますよということは書いてありません。このことを小委員会の議論の参考として使わせて戴きますというふうに申し添えてあります。
(高久委員)
先ほど青木委員から、学術団体が少ないというお話しでしたが、例えば私が関係している学会などでは、統一見解は出しにくい。いろいろ人がいらっしゃいますし、個人ならわかるんですけれども。例えば内科学会で統一見解を出す事はむつかしいです。逆に言うと、各社会団体は、ほんとうに統一見解を出しているのか、一部の人の意見といいますか、中心の人の意見なのか、それだと少し問題じゃないか。
(岡田委員長)
医学系の団体が幾つとか、工学系が幾つとか、そういうふうな形のもの、それから宗教団体が幾つぐらい、宗派としては仏教か、キリスト教か、イスラムかというあたりの分類というのは知りたいことじゃないでしょうか。個々のものではなくて、そこら辺あたりがもしも可能なら、一緒に示して戴けたらと思います。
(事務局)
今ほどのお話でございますが、分類はしてございまして、ちなみにちょっと申し上げますと、学術団体関係ですと、文学、教育、心理学、社会学、社学系、この辺一くくりは113団体となっております。法律学、政治学は22団体、経済学、商学、経営学は5団体、医学関係は47団体、法学関係が14団体、農学関係が59団体、医学・歯学・薬学関係が79団体というぐあいになっております。これも整理したものをあわせてお送りいたします。
(岡田委員長)
アンケートを出したところというよりか、回収した側のものの分類とか数とかということにしておいて戴いたほうが実質的ですね。では、そういうことで、面倒ですけれども、少し考えてみてくださいますか。

議題(4):クローン小委員会の今後の進め方について

 (岡田委員長)

きょうは、いろいろなアンケートとか何かの整理を事務局のほうでして戴いたものを出して戴いて、この次からの会合をどういう方向で進めるかというつもりで開かせて戴いたものでありますが、議題の4番のクローン小委員会の今後の進め方ということで、資料7−5ということで事務局のほうから案が出ております。これを御説明戴けますでしょうか。
(事務局)
資料7−5、クローン小委員会の今後の進め方(案)ということでございます。
6月から11月までの間のいろいろな国民等からのご意見を踏まえまして、今後どういう項目を検討すべきか、あるいは小委員会の枠組みにかかわる話ですとか、そういうものを私どものほうで思いつく範囲で羅列したというのがこのペーパーでございます。
まず1番の今後の検討項目についてということでございますが、1)検討範囲ということで、クローン技術のみを検討対象とするのか、2つ目の丸が、クローンに加えて、キメラ、ハイブリッド、生殖細胞系操作もあわせて対象とするか、次の丸が、以上に加えて、体外受精、男女産み分け、代理母、出生前診断、精子・卵子銀行等の生殖補助医療技術一般も合わせて対象とするか、次の丸が、以上に加えて、動物も合わせて対象とするかということでございます。
2)が規制の形態及び根拠ということで、法律かガイドラインかということで、これは中間報告でもここまでの議論は出ておったわけでございますが、具体的に法律を例えば立てる場合、どういう根拠なのか、その根拠について十分な議論がなされて、どういう根拠を立てられるのかとか、ガイドラインであれば、どういう根拠にしていくか、そのメリット、デメリットそれぞれ法律、ガイドライン、今の場合は国のガイドラインということになろうかと思いますが、それぞれについて、さらに詳細な具体的な検討が必要なのではないかという趣旨でございます。
3番目は、規制の対象ということで、どの時点を規制の対象とするのかということで、クローンの胚産出時点、胚移植時点、原始線条索出現時点というのを書いてございます。
それから、4番目としまして情報公開のあり方ということで、公開の対象をどうするか、公開情報を何にするか、公開のタイミング、時点をいつにするかということも重要になってくるかと思います。これが今後の検討項目の案でございます。
それから、2の今後の審議についてということですが、有識者ヒアリングをやるかやらないのか、それから公開のシンポジウムをやるかやらないか、委員会の枠組みとして、メンバーとして女性委員を追加するかどうかということですね。例示的に書きましたので、漏れている点もあるかと思いますが、以上でございます。
(岡田委員長)
ありがとうございました。事務局のほうから、検討項目として検討範囲、規制の形態及び根拠、規制対象、情報公開のあり方ということ、それから、今後の審議についての問題として、ヒアリングの必要性、公開シンポジウムの必要性、女性委員の追加の必要性というようなことを提示してくださいましたが、少し時間がございますので、これに関して御討論をちょっとお願いしたいと思います。
(高久委員)
この検討範囲の中で、私は、しばらくはクローン技術中心のほうが良いと思います。ちょっと気になりますのは、ヒトのES細胞ができた段階で、それも対象になるのでしょうか。ご存知のように世界的に非常に大きな問題になってものですから。
(岡田委員長)
実は規制対象の中のところに事務局のほうはESが入っていたんですけれども、一応ちょっと私のほうで外したといういきさつがあるんですけれども、ESの問題というのは、今回時間があれば、話題として出しておく必要があろうかと実は思っておりまして、ここには書いておりませんが、ESの問題というのを少し全体像として……。勝木先生、ちょっと説明して戴けますか? ヒトのESの問題について。
(勝木先生)
11月6日号の『サイエンス』と、『米国学士院紀要』に出た2つの報告がございます。それは、ヒトのES細胞、日本語では胚幹細胞と申しますけれども、いろいろな細胞に分化できる能力を持っている細胞の樹立の報告です。マウスなどでは、それをキメラマウスにしまして、ES細胞であることを証明するんですが、ヒトのキメラをつくることはできませんので、マウスの皮下に植えまして、その細胞が、軟骨だとか、上皮細胞だとか、そういういろいろな細胞に分化することを確かめていくことと、それから、その細胞自身の非常に初期に出る抗原について確かめてES細胞と判断しております。直接ヒトキメラをつくることをせずに、その能力を持っているだろうということが確認されたわけです。
トムソンというウィスコンシン大学の先生は、それを樹立したウィスコンシン大学ではなくて、その同じキャンパスにあるらしいんですが、ジェロン社というベンチャービジネスをつくりまして、お金も人もすべて分けている。したがって、これはフェデラルファンドには全然ひっかからない研究であって、そういう法律にはひっかからないというふうに述べております。その目的は、新しい薬剤、ドラッグ・ディスカバリーと書いてありますが、要するにヒトの細胞を使った薬剤の開発、あるいは毒性の試験というようなものが、ヒトの細胞でテストでき、非常に有効であるということです。
それからもう一つは、そういういろいろなものに分化できる細胞ですので、それを移植用の細胞、細胞移植によって、あるいは臓器までつくることはなかなか難しいと思うんですが、細胞移植によって移植医療の材料に使う。特に免疫系に対しまして、移植すると、普通は患者さんが持つ免疫系によってそれが排除されるわけですけれども、そのES細胞を何らかの遺伝子操作をすることによって、免疫寛容の状態にしておいて移植すれば、排除されないだろうと思われます。場合によっては、テロメラーゼのようなもの、つまり、寿命が長く不死化するといいますか、そういうふうにした遺伝子操作をした細胞を使って移植すれば、万能の治療細胞になる、そういうものの開発だと。特許も自分で取ったというのが『サイエンス』に出ておりました。
『サイエンス』が、非常に論争の多いこういう論文をどうして載せたかということまできちんと書いてございまして、彼らの論調は、ES細胞は細胞であって胚ではない。つまり、そのまま培養しても個体になることはない。したがって、これはいわゆる胚の操作を規制した規制の範囲の中には入らないというふうに、論争の起こるようなことをあらかじめ言いわけしているという、そういうところまで含めて、非常に画期的な細胞という、ある見方からすれば非常に画期的な細胞であり、ある見方からすれば、非常に危険な細胞だとも言えるかと思います。
(岡田委員長)
どうもありがとうございました。今のようなお話なので、受精卵の1つのハンドリングの方法論とは思いますが、クローン問題のところに直接ひっかかってはこない分野のものだという判断をしておきたいと思っております。その辺りから少しディスカッションしてほしいと思います。
(勝木委員)
岡田先生のお気持ちはよくわかるんですが、随分面倒な議論を惹起するようなことをよくやるものだと思うんですけれども、このほかに、実はハイブリッドという問題がございまして、今のような発想を、今度は牛の卵から核を抜きまして、人の核を植える。そして、今申しましたようなES細胞を樹立したというのが、やっぱりベンチャー企業から発表されました。新聞によりますと、クリントン大統領がそれについて十分討議するようにとアメリカの倫理委員会にご下問をなさったそうなんです。それは、結局、ある意味でES細胞を、細胞質を別の動物を使って作るわけですね。これは規制が人に対してあるものですから、それを便宜上逃れるような感じが私はいたします。
ですから、条文に書いてあることとは違反しませんけれども、随分抜け駆けのようなものを、悪知恵を使ってやっているような気がするものですから、ES細胞というのをそういう観点で、もしとらえられていくといたしますと、やっぱり議論はしておくべきではないかというふうに思います。ただ、ちょっとそれにくけ加えて申しますと、この委員会は、本来、最初からクローンに限ってと何遍も先生もおっしゃってまいりましたので、ある意味では、そういう問題がここで生じたからには、逆に言えば、一旦閉じて、また新たに、ここでクローン委員会を、クローンについての報告をして、閉じる。しかし、ES細胞に関する議論は絶対に必要だと私は思いますので、議論としては。そういうふうにしたほうが混乱がないのかもしれない。1つの提案ですが。
(岡田委員長)
そのような感じを少し私も持っておりまして、事務局のほうで、問題点をずっと書き上げてくださっていますが、これを全部ここでやると、これはいつになることやら、さっぱりわからないわけでしょうし、逆に言うと、例えば高久先生のところで、厚生省では、資料7−1の最後のところに書いてありますが、出生前診断に関する専門委員会と、それから生殖補助医療技術に関する専門委員会という形の、これは厚生省としては多分身につまされた問題かと思っておりますが、そういう形で、特にここにある体外受精とか、いろいろなことに、そこで多分、相当具体的に対応していかれるだろうと思いますし、それから、例えばES細胞ということになると、これは今の段階では、研究者という格好のこととの対応で、文部省のほうが一番身につまされている問題であろうと私はちょっと思っております。
それぞれ問題が、どこかでオーバーラップしているところがあるわけですが、これをオーバーラップさせたままで全体像という形で持っていくのは非常に難しいので、ここでは、クローンというスタートのところの問題というあたりのところに絞ってやって、今、勝木委員が言われたような形の問題点については、それぞれ文部省、厚生省あたりでそれぞれの問題をやって戴いて、それらのもう一つ全体像としては、これをまた科学技術会議の生命倫理委員会に各省から上げていって、そこで全体像としての問題点を討議していくという形が一番具体的ではないかと思います。少し時間がございますので、その辺りを討議しておいて戴けるとありがたいのですが。
(勝木委員)
今の岡田先生の御意見はよくわかるんですが、ヒトのES細胞に関しまして、一番今緊急に問題なのは、アメリカでそれをつくりましたのがベンチャービジネスなんですね。そうしますと、これは、そういうルートで日本に入ってくる可能性があるわけです。むしろ大学などはスキップいたしまして、臓器や、あるいはそういうものを、ちょっと私もあんまり想像したくはないんですが、しかし、実際にそういうことが起こり得る可能性はあると思うんですね。
それで、先ほど申しましたように、ヒトの核を移植して動物にというよりは、むしろヒトそのもので、そこで発表されました技術というのは、極めて効率のいい技術で、3個とったら1個ES細胞になるというような、そういう技術なものですから、しかも、そこに書いてあるのは、マウスでできたものをそのまま適用したらうまくいったという、だれにもできるということになりますと、日本でも将来を見越して、それを大学ではなくて、営利目的にというか、経済行為としてやろうとするグループがすぐに出てこないとも限らないということは確かなんです。
それは確かに、クローンの問題と直接的ではないんですが、クローンの問題そのものは、背景にあるのは生殖細胞の操作ということがなければクローンはできないわけで、その辺の線引きはやっぱり難しいと思うんです。ですから、委員長の線に沿って私も申し上げたいんですけれども、事実はそういうことなので、クローンをはじめ胚操作の1つずつを論じても、必ずどこで線を引くかという問題が出てくることは確かなので、少なくとも今緊急の問題は、ほかの委員会に渡すにしろ、一応は議論しておいたほうがいいのではなかろうかというふうに、ちょっと思います。
(木勝(ぬで)島委員)
私は勝木先生の御意見に賛成で、やはりこの小委員会は検討範囲を拡大するべきだと思います。少なくともキメラ、ハイブリッド、生殖細胞系操作という項目までは絶対に広げるべきだと思います。最近のようにやれES細胞だ、ヒトと牛のハイブリッドだ、キメラ胚だと、個別の新奇な研究開発のケースが出てくるたびに小委員会をつくっていては対応できませんし、そのたびにアンケート調査をまた取り直すというのも不合理であると思います。
基本的な問題として、人間の受精卵をどこまで研究利用していいか、その許させる範囲あるいは是非については、ここできちんと示しておかないと、クローンだけを禁止するということですと、そういう基本問題が置き去りにされてしまうことになると思います。いつまでも基本問題を押さえる場がないというのはやはり問題があると思うのです。
国際協調という言葉も出てきていますが、法律で禁止までしている国はすべてキメラとハイブリットとクローンをセットで禁止しています。生殖技術全般と、ヒトの受精卵の研究利用の是非について検討する会の中で行われてきたものです。そこを検討しないでクローンだけ禁止するということになりますと、かえって日本は変な国であるということになってしまいます。少なくともアメリカやヨーロッパのスタンダードで判断されたら、そうなってしまうと思います。
やはりこれだけの先生方がお集まりですから、ここは看板を変えて、女性委員の追加の必要性ということも検討課題に入っている以上、もう少しほかの専門の方の追加も考えて、この委員会を、例えば「発生操作技術に関する小委員会」というような形に改組するべきではないかと私は思います。
最近始まった厚生省の生殖医療技術の専門委員会の検討課題の表が出てきたとき、私は非常にがっかりしました。クローンの問題が論点に入っていなかったからです。それより以前にインターネットの論点の中には入っていた研究利用の是非について、胎児とか、卵子、精子、ヒトの受精卵の研究利用の問題についても、今の厚生省の専門委員会の論点には入っていないのです。そうすると、そういう基本問題はどこもやらないままに、省庁ごとにばらばらなことだけやっているというのではいけないと思います。基本原則が定まらないままでこれは禁止する、と言っても、法律をつくるほどの十分な根拠がないと思うのです。ですから、ヒトの受精卵の研究利用の是非と許される範囲という課題をやはりここで考るべきで、日本では、それをだれも問題にしないのだという結論もありうるとは思いますが、厚生省もどこもやっていない以上、科学技術会議でやるべきであると思います。中間報告までの議論をたたき上げてきたこの小委員会がそういう形で発展的に改組されるというのは、私は非常に合理的な政策であると思います。
(岡田委員長)
どうもありがとうございました。それが理想像でしょうね。しかし、果たしてちゃんとしたものになるのと言われると、これはクエスチョンマークもあると思っております。
勝木さん、『ネイチャー』の11月12日号に、いろいろなコメントが出ていましたね。アメリカのほうは、これはどうも先に進みそうだけれども、ヨーロッパはどうも抑えると。それは、受精卵のハンドリングというあたりのところで、しょっちゅうここで出ているハンドリンク自体をヨーロッパあたりは抑えているところが多いから、当然ながらES細胞をとるわけにはいかないということだと思いますが、そういうふうな形のものとして動いていっているというところで、これに関しては、日本として、ということになってくると、今度は受精卵のハンドリングの問題というあたりのところのことが大きなことになりますね。そういう意味では、今までここでやってきた議論というのは、それとは少し場の違ったところで、ある形づくりというのができるだろうと思っていました。私は今も思っております。
そういう意味合いでの私の理解としてのESというあたりのところと、少し……、できませんでしょうかね。
(勝木委員)
私としましては、今までこのクローン委員会でなされてきた議論は、ある程度今までの流れの中で1つ結論を出したほうがいいだろうと思います。
ただ、このクローン委員会で、今までの流れの中でそれをやるのがほんとうに適当かどうかについては、委員長をはじめとして十分お考えになるべきことのような気がします。もっと端的に申しますと、ヒトのES細胞とかハイブリッドについては、ここでは何遍か議論が出てきたわけですね、ちらちらと。そのとき私は、こんなに早く進むとは思わないものですから、多分、このクローンの話が終わって、また新たにその問題を、受精卵の取り扱い、あるいは胚の取り扱いというものを改めて根本的に問い直す委員会ができてというふうに、考えておりました。それがもうオーバーラップしてきているわけですから、岡田先生のここでの運営の意図も非常によくわかりますので、私は、アンケート調査の前提となったものはやっぱり今までの議論ですし、新しい事態になりますと、またアンケート調査をするわけにもまいりませんので、ここで1つまとめられて、しかし、必ずという言葉が適当かどうかわかりませんが、そのような受精卵の操作というものがこのクローン問題の背景にあるんだということを指摘して、そのことについてはまた早急に議論すべきだ、そういう委員会をつくるべきだということを含めて答申するのが一番妥当な線ではないかなと思います。
(岡田委員長)
どうもありがとうございました。確かにESの問題というのは、ここを中心にして取り上げなければならない問題が随分ありそうですね、波及する問題として。だから、クローンのところに横にくっつけてというほど軽いものではどうもないような気がします、ESの問題は。だから、これは日本に情報が出てきて、時間的にはまだ1週間とか2週間あたりのところですが、これを、たまたまこの委員会はその間動いている委員会であったということではあるんですが、ESの問題が出てきたときに。そういう意味のウエートをどうするかというと、これはどうしたものでしょうか。
(高久委員)
先ほど木勝(ぬで)島委員が言われた、厚生科学審議会の中の先端技術の評価部会ですか、その中に小委員会、名前は正確には覚えていませんけれども、ヒトの細胞とか臓器の利用という小委員会があって、その答申が出ました。それは、腫瘍の手術をしますときに、残った周りの、例えば肝臓がんのときには、周りの正常な肝臓も少し取るものですから、それをどう利用するかというようなことについての答申でして、生殖細胞については議論をしてなかったと思います。
どちらのほうで議論するのかという問題は、厚生省と科技庁のほうで話し合って戴くことも必要だと思いますが、エンブリオリサーチの問題は、独自の問題として取り上げる必要があると思います。ご存じのように、アメリカでも、アドホックコミッティでは審査の上実施という結論を出したのですが、実施されなかったそういう現状を見ますと、アメリカの場合には、カトリックの影響も随分あるとは思うのですが、私は岡田委員長のおっしゃるように、クローンはクローンでここで一応結論を出して、その後、ESの問題、生殖細胞の問題をどこで取り扱うかを検討すると、そういったやり方をとるべきだと思います。
(永井委員)
そうしますと、この委員会としては、近い将来、明確な方針を出すということとして理解してよろしいですか。その場合に、ES細胞については別な課題として取り上げ議論すべきである、という意見をつけるとか、そういう方向でやりますか。
(岡田委員長)
そういうことである形づくりができて、今のクローンの問題というのは、ある意味でまだ具体性のないものですからね。そういう形で出して、別にどこにも問題点が出てこないと思いますが、やはりESの問題をここの委員会でも外すわけにはいかんということは確かで、永井委員のおっしゃるような形というのは、1つの方法論としてはあり得るでしょうね。
(永井委員)
現実のほうが先へ先へと進んでしまっているという状態に我々が直面している点が非常に厄介なところです。まとめる場合に、私、これは非常に難しいところもあるかと思いますが、クローンといったときに、クローンそれ自体を取り上げているのか、あるいは、ヒトのクローンのことを問題にしているのか、それを明確にできる場合には、きちんと書いて戴ければと思います。例えばきょうのクローン小委員会の今後の進め方についても、検討範囲でクローン技術のみを対象とすると言いながら、その後で、以上に加えて動物もあわせて対象とするとなったりする。クローンといったときに、いつでもヒトのクローンを問題にしているのか、それともクローン全体というものを問題にしているのか。議論がそうすると錯綜してきますので、きちんとできる場合にはきちんとしたほうがやりやすいと思います。さっきのアンケートでも、対象が区別されずにいろいろな形で入り乱れている。むしろ分けないでやっているほうが楽だというのかもしれません。いずれにせよ一考を要する点かと思います。
(岡田委員長)
中間報告のときには、ESは人には使っているとは思いもよらなかったことでありまして、これは有効であるというか、このことで、そうしてしまいましたけれども、どうでしょうか。
(事務局)
ただいま資料7−5の中の検討範囲について、人と動物と分けるという御指摘があり、またそのとおりだと思いますが、クローン技術といった場合には、中間報告書を出すまでの段階でも大分議論して戴いたんですが、動物も人もクローン技術の対象となり得て、特に哺乳類については非常に議論があったところですので、通常、クローン技術という場合には、動物を対象とした場合の有用性も人を対象とした場合のネガティブな部分も両方含めて議論するということだったと認識しています。
ここで、検討範囲の一番下に、動物を記述しましたのは、中間報告書を出すまでの段階におきまして、クローン以外のいわゆる動物そのものの、例えば実験動物の倫理のようなこともキメラ、ハイブリットから、生殖補助医療技術と同様、ある程度議論されておりましたので、ここでは検討範囲として理論的には考えられるということで、項目として書いたものであります。
概念的には、クローン技術だけにとらわれないで、動物一般の倫理のようなものを対象とするという議論がかつてございましたので、そこでここに書いたというものです。もちろん、人と動物で本来区別すべきところは区別して書くほうが適切であると思います。
(岡田委員長)
今までずっとこの委員会で討論されてきたものの項目を挙げていくと、これだけになるということで理解して戴いてよろしいでしょうか。
(事務局)
はい。網羅的に必ずしもなっているかどうかというのはありますが、ここは議論されたものはできるだけ拾ったつもりでおります。
(岡田委員長)
まだ少し時間がございますが、今度のアンケート調査を含めて、集結していく側に持っていくステップの中に、このアンケート調査というのは入ってきたということの意味でもあったろうと思います。だから、ESの問題はあるにしても、この委員会の目的というあたりのところをできるだけ早くにある形に終結させておかないと、ESの問題は次に考えていますよという形のところですから、これ自身もそれほど長引かさないほうがいいのではなかろうかというのが、私の感じです。
(勝木委員)
私も岡田先生のお考えに賛成で、もう煮詰まってきていると思うんです。2)のほうの規制の形態の根拠が問題になってくるかと思うんですが、この場合でも、大変問題なのは、クローンだけを取り上げて規制ができるかというのがアンケート調査でもすごく出ているわけですね。法律で確かに縛りたいけれども、果たしてそのバランスを考えたらどうかというのが、先ほど木勝(ぬで)島さんからも指摘があったように、あるんです。
したがって、ヒトのESやあるいは生殖細胞の操作、あるいは場合によっては別の生殖医療との関係まで少し踏み込むことになるかもしれませんけれども、そういうものはなるべく早くおつくりになって、これと並行して別の問題だと、別の問題というと変ですけれども、もっと基本の問題だというので、むしろそこではっきりお分けになったほうが、クローンだけにこっちは早く答申が出せるというふうに考えます。
(岡田委員長)
どうもありがとうございます。今、勝木委員がおっしゃったような格好のことから言えば、今後の検討項目の中で、ウエートの高いところで言えば、2)の規制の形態のところの法律にしたときの、法律が可能なのかどうか、メリット、デメリットがどうか。それから、ガイドラインのメリット、デメリットというあたりの問題点のところに集約してきて、まず一度、ここでまとめの問題に一回入ってみる、そういう時期に来ているのではなかろうかと思います。それこそアンケートとの対応の中で存在しているわけですから、そういうふうな格好で何とか終結側に動かせてほしいんですが、よろしゅうございますでしょうか?
(木勝(ぬで)島委員)
最終的にどういう中身の答申になるのかを考えてみると、1)の検討範囲の問題と2)の規制の形態及び根拠の問題は完全につながっていると思うのです。ありうべき政策の線として、ヒトのクローン個体の規制は、法律で禁止するべきであるかどうか、法律にする場合は、ほかの遺伝あるいは発生操作技術に関する検討、少なくともヒトの受精卵をどこまで規制するかという、その結論の枠内に位置づけて、そこで最終的な結論を出すべきであるという勧告が1つ可能と思います。クローンだけ単独の法律をつくるのがいいか、それとも、ほかの発生操作技術に関する規制の法律、あるいはガイドラインの中でヒトのクローンの個体は禁止するというようにするか、政策の選択肢は広がってくると思います。その辺は、答申に書き込むときに、ただ法律かガイドラインかでクローンだけを禁止するというのではなく、もう少し政策の選択肢を広げて置くべきだと思います。
(岡田委員長)
そういうことで、この委員会としての整理の仕方としては、私の感じだと、法規制ということをした場合には、今おっしゃったことも含めて、いろいろな問題点があると。しかしながら、メリットとしてはこれがあると。ガイドラインにするとこういうことがあるという形のところの検討をできるだけちゃんとやって、それを親委員会の生命倫理委員会のほうに渡すということができれば、これでこのクローン小委員会の任務は一応終わって、今度はES、高久先生、ESなんかの問題だと、これはやはり生命倫理委員会というか、学術会議という形のところでやって戴くべきものでしょうか。私は文部省でまず先にやった下さったらいいと思っておりましたが、いかがでしょうか。
(高久委員)
ヒトのESですと、医療的な応用が一番大きなウエートですね。ですから、これは必ずしも文部省だけというわけにはいかないかもしれません。勝木委員がおっしゃったように、薬の効果判定もあるし、それから、せめて造血細胞や、皮膚ぐらいはできるのではないか、そう遠くない将来にという期待はしているのですが。
(岡田委員長)
私もそれはそう思いますね。
(高久委員)
そうすると、医療的な応用という事が出てくることは間違いないと思いますね。
(武田委員)
今までの議論を伺い、私は全くそのとおりだと思うんですが、ES細胞というのが、必ずしも生殖細胞に限らず、同じような能力を持つものはないかということで探しているような状態もございますよね。だから、規制の範囲というのは、なかなか生殖細胞ということだけに限れないところがございます。
だから、先ほどいろいろ議論が出ましたようなことでポイントアウトした上で、あとの規制の方向は上部委員会にお任せするとか、あるいは別につくっていただくとかいうふうな流れのほうがいいんじゃなかろうかと思います。
(青木委員)
先ほど委員長のほうから、文部省のほうが出ましたけれども、私はガイドラインをもう出しておりますので、見直すということもあって、ES細胞にやはりタッチせざるを得ないと思います。そこからどう出るかはわかりませんけれども、ガイドラインを出した責任上、ES細胞についても今後議論しておかないといけない。そこのところは、前のときにペンディングのような形になっておりましたので。ですから、それはやると思うんですね。ただ、応用という面を考えれば、私も高久先生の意見に賛成で、ここの生命倫理委員会になげかけると同時に、厚生省にのほうにもなげかけるというのが、既成の法律か、ガイドラインかの議論のところで整理してやればよろしいのではないかと私は思っております。
(岡田委員長)
どうもありがとうございました。だんだん時間が迫ってまいりましたが、そういうふうなことで、よろしゅうございますでしょうか。次の委員会の日程は、事務局のほうでまた調整させて戴きたいと思っておりますが、事務局側はいかがでしょうか。次の委員会のときに、2)の法律か、ガイドラインかというあたりのメリット、デメリットみたいなものの整理というのはできますでしょうか、無理でしょうか。何かたたき台みたいなものを出しておいて戴けるとよいと思います。
(事務局)
法律か、ガイドラインかの総括的なメリット、デメリットはこれまでいろいろ議論されてきていると思います。拘束力があるのかないのか、実効性があるのかないのか、強制力があるのかないのかなど。そのような総論については大方の議論がなされてきていると思うんですが、もう少し議論を深めたいとすると、具体的にガイドラインのほうは、文部省のほうでつくられた例が既に存在するわけなんですけれども、法律とする場合には、一体どんな具体的な法律になるのかというのは、今まで考えたことがないと思います。
したがって、もしその辺の議論をして戴くということでありますと、むしろ法律系の委員の先生で、例えばつくるとすると、こんなものになるのではないかというものを、少し具体的な姿として作って見せて戴いた上で、より具体的なメリット、デメリットといいますか、影響といいますか、その辺を議論して戴くことが、単なる総論を越えて、具体的にこれがいいこと、これがまずいこと、そういう議論が促進されるという気がいたします。
率直に言いまして、この種の法律というのは、あまり過去に多くの例があるとは思えませんので、具体的にどういう姿になるのかというのは、なかなか想像しにくいところがありますし、外国の立法例とか、いろいろな例を参照しながら考えるということだと思いますけれども、申し上げたようなより具体性を持った議論にならないと、既に過去に6カ月間行った議論の繰り返しになってしまうのではないか。そこをもう一歩深めるための工夫が要るかと思います。
(岡田委員長)
今ちょうどライフ課長から非常にいい提案がございましたけれども、そういう形で、法律関係の方々にそういうのを少しまとめて戴くことにして、ガイドラインのほうは文部省側のものが既にあるということで、それとの対応の中で少し踏み込んだ格好の討論がこの次の会のときにできればいいと思いますが、そういうような形にいたしたいと思います。
それでは大体私が思っていたようなことは終わりましたけれども、何か御発言がありましたら、もう少し時間がございますが。
(青木委員)
たまたまここに科学技術委員会の委員会議事録がありますけれども、国会で議論された、これとはどういう関係になるんでしょうか。これは記録として残っているだけで、何ら科学技術会議のこういう委員会の議事録とは関係ないというふうに理解してよろしいんでしょうか。
(事務局)
お答えになるかどうかわかりませんが、この衆議院の科学技術委員会の議論は、衆議院のほうでクローン問題について非常に深い関心を持たれ、今後考えていかなければいけない問題として、国会のイニシアチブで、岡田委員長をはじめとする参考人の方からお話を聞いて質疑をされたという位置づけであると思います。
国会でなされた議論でございますので、当然、議論としては直接国政に影響し得る議論であると思いますが、その段階ではあくまで参考人質疑で、これから国会でいかなる政策を考えていかれるのかということのための議論でございますので、私どもは当然それを参考にしなければいけないとは思いますけれども、あくまでも国会の議論のための参考質疑であるという認識だと思います。
(岡田委員長)
事務局のほうから、何か追加がございますか。
(事務局)
次回の日程等につきましては、また事務局のほうから先生方にご相談いたしまして、調整してご連絡いたしたいと思っております。
(木勝(ぬで)島委員)
きょういただいた「今後の進め方」の中で、答申を最終的にまとめる前に、ヒアリングやシンポジウムを行うかとか、女性委員の追加をするかといった検討事項がありますが、この点については、どのようにするのでしょうか。
(岡田委員長)
この次に議論したいと思いますが、いかがでしょうか。
(勝木委員)
これは、しかし、よろしいんじゃないですか、先ほどの流れとしては、今までの話をまとめる方向だということで。木勝(ぬで)島先生がおっしゃったのは、むしろ、ここでわざわざ女性委員を入れるというリクエストが来た意味は、やっぱりおっしゃっているような受精卵を扱うとか、生殖医療を扱うとか、それからもう一つ社会的な問題もきっと含まれていると思いますけれども、そういうことが本来の意図でしょうから、ここでは女性委員をわざわざ追加するのは、また議論を初めに戻すような感じがしますので、このままでよろしいんじゃないでしょうか。私はそう思います。
(事務局)
1点申し添えますけれども、今ほどありました規制の関係の法律系の先生を中心とした小グループをつくって検討するという件につきましては、委員長と事務局のほうで相談させて戴きながら、やらせて戴きたいと思います。
(岡田委員長)
そうですね。そうさせて戴きます。
今後の審議について、このようなものがありますが、とにかく一番大切なのは、アンケートをいただいて整理してありますので、それとの対応のものをとにかく勉強してみるという形のところから始めたいと思います。
それでは、これできょうの会は終わらせて戴きます。どうもありがとうございました。