資料第98-4号に基づき、最近の獣医療の実状と獣医核医学について、北里大学獣医畜産学部の伊藤教授から説明がなされ、引き続き、資料第98-5号に基づき、獣医療法施行規則及び関連告示に係る放射線障害の防止に関する技術的基準の改正等の諮問事項への委員からの質問に対する回答について、農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課から説明がなされた。委員からは以下の質問及び意見が述べられた。
《委員質問》 動物の場合は静脈注射が難しく、必然的に作業時間が長くなるので、放射性同位元素(以下、「RI」という。)の注射をうつ人の被ばくが心配であるが、どのような対策がなされているのか。
【伊藤氏応答】 注射器を鉛の筒に入れて遮へいすることや、あらかじめ針だけを刺しておいてRIに近づく時間を抑えるなどの被ばく低減対策をしている。また、注射をうつ人は指輪状の個人線量計を着用して手先の被ばく管理を行っている。
《委員質問》 RIの投与量は、動物の大きさに比例するのか。
【伊藤氏応答】 一般的に投与量は小動物より大動物の方が多くはなるが、必ずしも投与量が動物の大きさに比例するものではない。
《委員質問》 診療施設には獣医師や看護士の他に、入院動物の飼育者が存在する。飼育者は直接RIを扱うことはないが、RIを投与された動物に近づくことはあるので被ばくのおそれがある。この者はどのように扱うのか(放射線業務従事者に該当するのか)。
【農林水産省応答】 入院している飼育動物の世話などは、獣医師のほか、診療補助者等が実施することが予想される。そのような管理区域に立ち入る者は放射線診療従事者等として被ばく管理を行う。なお、現在、獣医師以外に獣医療に従事する診療補助者には資格制度はない。
《委員質問》 単に教育を受けただけの無資格の一般人が管理区域に立ち入って作業することは大きな問題ではないか。
【伊藤氏応答】 ご指摘の点は我々も重々検討している点であり、現状として自分の施設では、診療放射線技師の有資格者を診療従事者として採用することで対応している。なお、獣医師は放射線取扱主任者の資格も持っている者が多い。
《委員意見》 動物に施す手法は医療であっても、放射線防護の観点からは動物自体はヒトではなく物としてとらえられているというようなあいまいな議論を呼ぶので、また、エックス線装置の届出がなされている飼育動物診療施設は既に約8,000施設も存在しているので、これら全てが届出だけでRI(放射性医薬品)を使えるようになってしまう。これらを適切に管理するためには、許可制を導入するなど抜本的に規制体制を見直すべきではないか。
本審議会においては、放射線障害防止法(以下、「障防法」という。)で放射線取扱主任者資格と同等な権限が認められている医師であっても、放射線管理については主任者試験を受けるべきであるとの議論がなされており、実際、多くの放射線科医が主任者試験を受けているという現状の中で、非密封RIを多く扱うことが予想される獣医療においても、現場の主任者については早期に議論されるべきである。
獣医療法では、診療施設の開設の届出は国ではなく都道府県知事に届け出ると規定されているが、都道府県知事には審査資格要件は求められていない。そのような国ではない組織に施設の構造設備等を審査させる(国の施設検査を要しない)ことに問題はないのか。
既に他の委員から指摘された点ではあるが、特別な資格を持たない(公衆とみなせる)飼育者や清掃者等の診療補助者が非密封RIの使用場所(管理区域)に入ることには問題がある。また、線量拘束値として1mSv(ミリシーベルト)を設定することは、様々な活動を制限してしまうと思う。
馬房等の排気・排水や空気モニタリングはどのように行うのか教えて欲しい。
病院ではRI治療を受けている患者のオムツをどう扱うかなど、廃棄物について長期間の議論がなされているが、RI治療を受けている動物の廃棄物についてはどのように考えるのか教えて欲しい。
刺入線源により前立腺がん治療を受けている患者の退出基準は、患者が帰宅したときのモデルや線量評価について詳細に検討がなされているので、動物と公衆との接点という観点で、RIを投与された動物の退出基準についても、十分な議論が必要である。さらに、公衆との接点という観点では、他分野の法令との整合性についても十分な議論が必要である。
α線放出核種に関する質問については回答がなされていないのではないか。
【農林水産省応答】 資料に示した約13,000施設については、飼育動物診療施設の現在数を示したものである。構造設備が法律上の基準を満たしていれば、全ての施設でRIを使用することは可能であるが、実際にはそれほど多くの診療施設がRIを使用するとは考えていない。獣医療法における規制体制は、都道府県知事に対して、獣医療法に定められた放射線防護に関する事項等の届出を行う体制になっており、都道府県職員が届け出る際に指導を行っている。
現場の主任者については、今回、獣医療法施行規則に新たに規定を設ける機器等の多くが障防法における使用許可を取得した上で使用するものであり、当方としては、放射線取扱主任者が確実に任命されていることを確認することとしている。
診療補助者については、獣医療法施行規則における放射線診療従事者に該当するので、獣医師と同様に被ばく管理される対象である。
1mSv(ミリシーベルト)という値については、線量拘束値ではなく、線量限度として考えている。
馬房等の放射線治療収容室の排気・排水については、部屋全体の排気・排水をそれぞれ排気設備・排水設備に連結して放射能濃度を評価してから排出する。
RI治療を受けている動物の廃棄物について、排泄物は、主に排水設備で管理される。RIに汚染した注射器等の放射性廃棄物は、医療の現場と同様に、廃棄事業者に依頼して回収してもらうことになると思う。
RI治療を受けた動物の退出基準については、ヒトの退出基準よりも厳しい基準を設定して、退出後の動物による公衆の被ばくを防止する。
現時点の獣医療で使用可能な核種という意味で、資料第98-5号の19番目のスライドに核種を示しているが、α線放出核種についても、今後医薬品として承認される可能性はあるので、諮問の別表には網羅的に規制できるように、障防法や医療法と同様に記載した。
《委員意見》 実態としてRIを使用しているかどうかではなく、約8,000施設において、法律上の基準を満たせばRIを使用できる潜在能力があるということが重要な論点である。
現場の主任者については、放射線取扱主任者を選任するという回答があったが、資格を認めているのは農林水産省ではないので、主任者は都道府県知事に従うべきか放射線取扱主任者の資格を認めている国に従うべきかなど、難しい問題をはらんでいる。
RI治療を受けた動物の退出基準については、もっと慎重に被ばく線量評価を議論した方が良いのではないか。
RIに汚染した廃棄物については、動物の廃棄物をも回収している話を聞いたことがないので、廃棄事業者との検討も必要ではないか。
《委員質問》 資料第98-4号において、馬のし尿の処理やガンマカメラの使用風景が示されており、写真からは診療従事者の防護衣の着用が徹底されていないように見受けられるが、人体の放射能汚染や被ばくの問題はないのか。また、核医学で使用するガンマ線はエネルギーが強く、X線診断で使用する防護衣の厚みでは十分とは思えない。
【伊藤氏応答】 資料は米国の診療状況の紹介であり、必要に応じて防護衣を着用していると聞いている。また、米国において診療従事者の被ばくが特に多いという事実は聞いていない。国内では、社会状況を考慮して、社会で受け入れられる範囲・限度の被ばく対策を現在計画している。
《会長質問》 獣医療業界では、ヒトの医療に近いものが求められている状況にあることは理解できた。それならば、ニーズはあるが、現在の規制では行えないこと、既に準備ができていること、近い将来に実現しなければならないことなどを視野に入れて、むしろ、限定した分野で規制を定めることの方が、医療で行われている放射線診療の全てを一度に獣医療法に取り込むよりも現実的で安全であり、個別の対応もしやすいと思うがどうか。
【伊藤氏応答】 実際に一般の獣医療施設で様々な放射線診療を始めるためには、資金面に問題があり、施設数もヒトの病院と比べて10分の1程度であるので、早急に動物に対する放射線診療が広まるとは考え難い。まずは、高度医療を担う義務のある大学や大規模な病院で、限定的な放射線診療が行われていくと思う。
《委員意見》 例えば、原子力発電所は、資金や人員が確保できても自主的なルールだけで運営できるような法律の仕組みになっていないが、獣医療法では届出だけで運営可能であるところに問題がある。資金面云々という議論は馴染まないと思う。
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