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1.基本的考え方

  社会・経済活動全般にわたる急速な情報化及び国際化と科学技術の急速な発展の中で、第2期科学技術基本計画(以下、「基本計画」という。)に示された目指すべき国の姿と科学技術政策の理念である「知の創造と活用により世界に貢献できる国」、「国際競争力があり持続的発展ができる国」及び「安心・安全で質の高い生活のできる国」の実現を目指すためには、科学技術・学術活動の国際協力・交流の主体的、積極的な推進がきわめて重要である。

  基本計画においては、「科学技術活動の国際化の推進」を重要政策の一つに位置づけ、「主体的な国際協力活動の展開」、「国際的な情報発信力の強化」及び「国内の研究環境の国際化」について基本的方向を示している。

  基本計画を指針とし、科学技術・学術活動の国際協力・交流の現状と動向を踏まえて、今後の国際化推進の方向を検討した結果、国際化推進の諸施策を講じるに当たっては、「先端研究における国際協力の戦略的推進」、「地球規模の問題解決への取組みの強化」及び「アジア諸国との研究パートナーシップの構築」の3点を特に重視するとともに、これを支える「国際交流・協力の基盤強化」を強力に推進することを基本とすべきものとの結論に達した。

1)先端研究における国際協力の戦略的推進

  先進諸国に伍して先端研究を発展させる上で、先進諸国との交流の強化と競争的協力は極めて重要な課題であり、特に次の視点に立って協力・交流を戦略的に推進することが望まれる。

  第一に、先端研究の推進に当たって、宇宙・海洋開発、素粒子物理学、核融合研究等の諸分野はもとより、ライフサイエンス等においても、巨額の経費、多数の研究者を投入し、組織的、継続的取組みを展開することが研究の成否を決する場合が増加しつつある。このような課題の取組みに当たっては、我が国と先進諸国の研究水準、動向等を的確に把握し、共同、分担、競争の必要性についての十分な戦略的、政策的検討を行い、効果的な協力を主体的に展開する必要がある。特に巨大プロジェクトについては、国として適切な戦略的判断を時宜を失せず下すためのシステムを整備する必要がある。

  第二に、先端研究の推進に当たっては、先進諸国の研究者、研究拠点との間のネットワークの形成及びそれを通じての研究協力・交流の展開が極めて重要である。地理的、言語的にハンディキャップを負う我が国にとっては、このことが特に重要な意味を持つが、我が国における日米、日欧間の研究者交流はむしろ停滞気味であり、憂慮される状況が見られる。先端研究の推進とその基盤強化の観点から、国際間の研究ネットワークの形成とそれを通じた先端研究の国際協力への取組みを強化することが肝要である。

2)地球規模の問題解決への取組みの強化

  21世紀人類社会最大の課題は、地球的規模の環境問題を克服するとともに、食料、エネルギー問題等を解決し、国際社会の安全及び人類社会の持続的発展を確保することである。これらの課題の解決は科学技術・学術活動の成果に待つところが大きく、そのための国際的協力の強力な推進が強く期待される。優れた科学技術と研究能力を有する我が国としては、研究者コミュニティーによる国際研究協力の発展を促進し、国際機関等による取組みに我が国の特長を活かして積極的に参加するなど、人類共通の諸課題解決のため、主体的国際協力活動を一層強化すべきである。

3)アジア諸国との研究パートナーシップの構築

  科学技術・学術活動の国際化推進に当たっては、将来アジアが米、欧と伍する世界の研究センターに発展することを目指して、長期的観点からアジア諸国との研究パートナーシップの構築に力を注ぐことが必要である。

  第一に、人材の養成、確保についての支援協力の強化である。現在、外国人特別研究員制度、拠点大学方式による交流制度等を通じて、相当数の若手研究者をアジア諸国から受け入れているが、アジアにおける第一線の研究者育成の観点に立って、相手国関係機関、大学等との連携を深めつつ、優秀な若手研究者の招致活動をさらに強化する必要がある。

  第二に、地球的規模の課題への取組みに当たっては、アジア諸国との連携協力の下に、アジア地域を中心にリージョナルな活動を展開することが重要である。この観点からも、アジア諸国との研究パートナーシップを主体的に構築していくことが必要である。

  第三に、研究活動のグローバル化の進展に伴いアジア諸国と米、欧との研究交流が拡大しつつあり、米、欧との研究協力に当たって、アジア諸国、特に、研究活動の発展が著しい中国、韓国、インド等と提携して協力・交流を推進することが有効である場合が、今後ますます増大すると思われる。このような認識の下に、これら諸国との研究者・研究機関間のネットワークの強化に力を注ぐ必要がある。

4)国際交流・協力の基盤強化

  科学技術・学術活動の国際協力・交流発展の基本的基盤は、いうまでもなく、我が国の大学・研究機関の研究環境である。基本計画が指摘するとおり、「国際的にも開かれ、国内外の優秀な研究者が集まる世界水準の研究環境の構築」が、科学技術・学術活動の国際化推進の最重要な課題である。そのためには、世界水準の施設・設備の整備が必要であることはいうまでもないが、同時に、国際的に活躍ができる人材の育成や大学、研究機関の国際活動を日常化するための体制整備を早急に進める必要がある。

  また、研究者交流の拡充、国際研究集会の開催やこれへの積極参加、さらには、国際的論文誌の刊行や情報通信ネットワークの充実等により、我が国の研究活動の状況や成果を積極的に世界に発信し、我が国の研究が国際的に認知、評価される途を広げることも、世界水準の研究環境構築の重要な一環として、強力に推進すべきである。


2.早急に講ずべき方策

  以上のような基本的考え方に立って、国際協力・交流を推進するためには、既存の各種施策の充実強化を含めて、総合的な方策を強力に推進する必要があるが、当面、早急に実現することが必要な方策をとりまとめると次のとおりである。

1)政府間合意に基づく重要課題協力の機動的推進

  社会経済の諸活動における科学技術の役割の重要性の認識が深まるとともに、温暖化等地球環境問題、食料問題、エネルギー問題、淡水管理、感染症対策、災害防止と被害の低減等の重要政策課題についての科学技術協力が、国際機関会合、首脳・閣僚会談、科学技術協力協定下の合同委員会等において、政府間協議の対象となることが増加しつつある。これらの政府間協議において、研究協力・交流促進の一般的合意を越えて、我が国が、戦略的判断に立ってイニシアティブを発揮することは、重要政策課題の解決に向けての国際的協力を推進する上で極めて重要である。政府間協議と政府間合意の実現において、我が国がイニシアティブを発揮するためには、重要課題の国際協力についての我が国の明確な政策形成が不可欠であり、このような政策形成のためのシステムを早急に整備すべきである。政策形成に当たっては、産業界等を含む国際協力の構築や研究者コミュニティーとの緊密な連携に十分配慮することが肝要である。

  さらに、合意された国際協力を確実に実行に移すシステムの強化が図られなければならない。そのためには、文部科学省が、政府間合意の実現に向けて、関係府省等との連携の下に、国際会議の開催、国際共同研究の実施、専門家派遣等を機動的に進めるための資金を確保し、府省横断的に措置できるシステムの確立が急務である。

  また、政府間合意には、学術協力、すなわち、研究者コミュニティー間の自発的協力の促進を図ることが適切なものも少なくない。そのような場合には、学術振興機関間、あるいは大学・研究機関間の協議、協力による推進を図るべきであり、科学研究費の活用を含めて、そのための支援方策を講じる必要がある。

2)先端研究多国間ネットワークの構築

  先端研究の推進を図る上で、先進諸国との研究ネットワークはきわめて重要であるが、最近における先端研究の国際的展開に対応するためには、従来の二国間の研究ネットワークだけでは不十分であり、新たに多国間ネットワークを早急に構築し、大型共同研究の実施や研究者の交流を発展させる必要がある。特に、学術協力においては、先進諸国の学術振興機関との協力の下に、重要分野を選んで各国の中心的大学・研究機関を拠点とするネットワーク形成を早急に推進すべきである。なお、アジア諸国との研究パートナーシップの強化の観点から、拠点大学交流の発展を図るとともに、中国、韓国、インド等の大学・研究機関をネットワークに加えることも考慮すべきである。

3)研究者国際交流の促進

  研究者の国際交流によるパーソナルネットワークは、研究の国際協力・交流を支える基盤であり、その促進は国際化推進の重要課題である。欧米諸国との交流の著しいインバランスの改善、アジア諸国との交流の緊密化を重視し、次の諸点に重点を置いて一層の促進を図る必要がある。

1  外国人特別研究員招致の拡充と運用の弾力化

  外国人特別研究員事業は、若手研究者招致の中心的事業として大きな役割を果たしており、平成14年度予算においては、受入れ定員は1650人である。第1期科学技術基本計画に掲げられた2050人規模を目指してその拡充を図るとともに、優秀な研究者招致のため制度の運用の改善と受入れ体制の整備を進める必要がある。

  特に、欧米からの若手研究者が停滞・減少傾向にあるのは憂慮すべき問題であり、その改善のための努力を早急に開始すべきである。

  欧米の若手研究者が来日をためらう主たる原因は、日本の研究環境に対する不安と将来のキャリアへの不安にあるといわれており、日本における研究が母国をはじめ国際的に評価されるような研究環境の整備への努力が必要である。それがまた、基本計画が掲げる「国際的にも開かれ国内外の優秀な研究者が集まる世界水準の研究環境の構築」につながる道である。

  当面の改善の具体策としては、第一に、将来の来日意欲を喚起する短期受入れの道を開くことが挙げられる。その際、対象を研究者を目指す優秀な大学院生にも拡大することも有効な方策である。

  第二には、優秀な外国人特別研究員が、我が国の大学、研究機関等に適切なポストを得られるようにすることである。そのためには、大学・研究機関等の積極的な努力が求められるが、同時に外国人特別研究員が我が国で腰を据えた研究を進めることを可能にするため、期間延長を弾力的に認める配慮が必要である。

2  若手研究者等の長期海外研究の促進

  我が国研究者の海外訪問は増加傾向にあるが、海外の大学・研究機関に長期に滞在し、海外の研究者との日常的交流の中で研鑚を積む機会は広がっていない。むしろ、欧米諸国のポスドク雇用や招へいプログラムの縮小に伴い、以前よりは狭まっている面も見られる。世界レベルの研究を推進していく上で、海外における研究経験はきわめて重要であり、優れた研究者養成の観点から、若手研究者の長期海外研究を積極的に推進する必要がある。

  当面、我が国研究者養成の中核的事業である日本学術振興会の特別研究員制度の運用に当たって、採用期間中海外における一定期間の研究を原則とすること、アジアにおける研究ネットワーク形成を視野において、中国、韓国等への研究者の長期派遣を進めること、中堅研究者の長期海外派遣のシステムを整備すること等の措置を早急に講じることが望ましい。また、大学院博士課程後期に在学する優秀な学生を研究のために海外に派遣するための制度の整備拡充が重要である。

3  国際研究集会支援の強化

  国際的学会、セミナー、ワークショップ等の国際研究集会は、研究者にとって世界水準の研究を追求する上で、極めて重要な意味を持つだけでなく、研究者間のネットワークを構築する上でも、我が国の研究成果、研究水準を世界に発信する上でも、大きな意義を有している。我が国研究者のイニシアチブによる国際研究集会の開催について、開催地の如何を問わず積極的に支援を強化する必要がある。

4)国内の研究環境国際化の推進

  国内の研究環境国際化の基本は、我が国の中心的大学・研究機関において海外の優秀な研究者との交流、協力、競争が日常的に行われるようにすることにある。そのためには、大学・研究機関の外国人スタッフの拡充に向けての採用努力が必要であるが、同時に外国人研究者のため研究・生活環境の整備を積極的に進めることが肝要である。特に、宿舎の確保、外国人研究者の競争的資金への応募の容易化、海外での研究発表の支援が重要である。また、国際的な学生交流の拠点の活用も有効な方策である。

  さらに、大学・研究機関が所在する地域社会の国際化にも留意しつつ、我が国社会が外国人受入れについての理解を深め、適切な対応へ一層の努力が払われるよう、さまざまな機会を通じて働きかける必要がある。

  同時に大学・研究機関の組織・体制の強化が急務であり、国際担当副学長等の特定、国際担当部門の整備、優れた専門職員、ボランティアの採用、確保や研修の強化などが早急に措置されることが望まれる。

5)国際的情報発信力の強化

  研究の国際協力・交流活動を主体的に推進する上で、我が国の研究活動とその成果が、国際的に正当に評価され、認知されていることが極めて重要であり、そのためには、我が国の研究成果、研究者、研究機関に関する情報の海外への発信を情報通信ネットワークの活用等によって積極的に推進していく必要がある。

  学会等による充実した英文誌の発行と国際的流通の促進が、有効な方策であるが、そのためには多額の資金と労力が必要であり、我が国が国際的に高い研究水準にある分野における英文誌の刊行を促進するため、学会等の優れた試みに対してパイロット・ケースとして集中的に支援することが有効な方策である。また、優れた研究論文の英文抄録等の発信に積極的に取り組んでいくことが重要である。

  さらに、海外への情報発信は、在外公館の科学アタッシェ、科学技術・学術振興機関、研究関係法人等の海外拠点がそれぞれの特長を活かし連携を深めて、情報発信に努めることが重要である。また、我が国との研究交流経験者を中心とする研究者コミュニティーの形成を支援することも重要な意味を持つ。


おわりに

  以上国際化推進委員会におけるこれまでの審議の成果をとりまとめたが、国際交流・協力における知的所有権の問題など未検討の課題や、さらに検討を深めることを必要とする課題が残されており、今後さらに審議を重ねた上で、最終的な取りまとめを行う予定である。


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