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アジア科学技術協力推進に係る今後の取組み方針

 
 

平成17年12月19日制定
平成18年10月30日改定
科学技術・学術審議会
国際委員会

 科学技術振興調整費「アジア科学技術協力推進戦略プログラム」においては、
 
(a) 中韓(東アジア)、ASEAN(アセアン)諸国(東南アジア)、インド(南アジア)の地域特性を踏まえた地域共通課題解決型の国際共同研究
(b) 機動的かつ政策的な研究交流
に対する支援を行うものである。このうち(a)の制度を念頭に置き、アジア科学技術協力推進に係る今後の取組方針を取りまとめると以下のとおり。

地域共通課題解決型国際共同研究について

1. 基本的考え方
 
 次の13の要件を満たす共同研究課題を基本的に支援する。
 
1 社会経済情勢や地域の特性を踏まえ、日本とアジア諸国にとって、共に取り組んでいくべき政策的必要性が高い課題に対応した研究活動であること。【政策的ニーズ】
2 研究開発成果が地域共通課題の解決に如何につながっていくのかに関して、社会経済的実効性の高い提案であること。【社会経済的実効性】
3 産業界主導で行うべき段階の研究開発活動ではないこと。民間ベースの技術協力、ODAによる技術供与、既存の研究開発プログラムなど他の制度ではカバーできないような取組みであること。また、他の制度で行われている取組みとの関係の中で、本制度による取組みの位置づけ、付加価値が明確にされていること。【制度の付加価値】
 また、次の45の要件を満たす共同研究課題の採択を推奨する。
 
4 当該課題に関して当該相手国が共同研究に参画することが可能な程度の研究資源(人材、フィールド、試料等)を提供できること。【共同研究への参画】
5 過去、当該分野で、当該相手国との間で活発に研究交流が行われ、日本への元留学生などの知日派人材とのネットワークなど本格的な共同研究に取り組むのに必要なネットワークが既に構築されていること。(或いは、近い将来かかるネットワークを構築できる見込みが高いこと。)アジア工科大学(AIT)、ASEAN(アセアン)工学系高等教育ネットワーク(SEED-Net)等日本のODA活動により構築された研究者、研究機関とのネットワークが生かされる構想であること。【過去の累積】

2. 優先的に取り組むべき分野
   この枠組みの中で、政策的に優先して取り組むべき分野としては、次のものを挙げることができる。
 
(1) 喫緊の社会経済的ニーズに対する科学技術による貢献
 
1−1) 自然災害への対応に資する防災科学技術などの研究開発
1−2) 感染症対策に資する研究開発

(2) 中長期的な課題に対する科学技術による挑戦
 
2−1) 持続可能な発展のための環境・エネルギー技術などの研究開発
2−2) アジア発の先端技術の創出

3. 地域特性の考慮等
   2.の各分野に関しては、1.の15の要件や、各地域の抱える特性を踏まえて精査すると、次のように共同研究に取り組むことが適当である。
 
(1) 喫緊の社会経済的ニーズに対する科学技術による貢献
   我が国とアジア諸国が直面する喫緊の社会経済的ニーズに対する科学技術による貢献を行うため、当該国の機関との協力の下に我が国研究者がアジア諸国に赴くなどして研究開発活動に取り組む。
 
1−1) 自然災害への対応に資する防災科学技術分野の研究開発
   大学、研究機関による学術交流レベルの取組みは過去行われてきたものの、最近の政策的ニーズを踏まえれば、自然災害の被害を軽減するため、研究者間のネットワークを生かして、地震及び気候変動に関する防災科学技術の適用までを視野に入れた研究開発を実施していくことが必要である。例えば、東南アジア諸国を中心に、津波・地震及び気候災害分野の国際共同研究を推進することは政策的に有意義であり、平成18年12月4日にインドネシアで開催する「アジア防災科学技術フォーラム」における議論を踏まえるなどして、戦略的に推進することが必要である。アジア地域のデータが集積されることは、我が国の防災対策のためにも役立つものであり、さらにこれを更にアジア諸国に情報発信することにより、アジア地域全体の防災対策の向上に資するものである。
(なお、最近の災害のみにとらわれ、近視眼的対応に陥らないよう注意も必要である。)
1−2) 感染症対策に資する研究開発
   中国、東南アジアとの間で過去の取組みの蓄積は多く、ごく最近においても感染症研究拠点育成(中国、タイ、ベトナム)のプロジェクトが進展している。一方、平成18年8月には、ASEAN(アセアン) COSTプラス3(ASEAN(アセアン)プラス3(日中韓)科学技術委員会)会合においても感染症対策の重要性が指摘され、これらの国以外からも我が国との研究ネットワーク構築を求める声も出されたところ。例えば、上記プロジェクトが進展している国以外で、さらに取組みを強化すべき感染症対策研究開発分野があれば、その取組みを支援することは政策的に有意義である。その際、対処療法的な感染症対策に止まらず、例えば感染ルートの情報共有等の体系作りといった観点も重要である。また、かかる感染症対策の進捗が我が国を含むアジア地域の健康増進に結びつくことにより、我が国にとっての利益も大きい。

(2) 中長期的な課題に対する科学技術による挑戦
   我が国とアジア諸国が抱える中長期的な課題に対して科学技術により挑戦していくため、アジア諸国の機関との協力の下、当該国の研究者を我が国機関に招くなどして研究開発活動に取り組む。
 
2−1) 持続可能な発展のための環境・エネルギー技術の開発
   環境・エネルギー分野の取組みは数多く行われているが、持続可能な発展を可能とし、諸問題の発生を未然に予防していく観点から、社会全体を俯瞰し有効な社会システムを追求すること、現地の研究者等と協力するなど地域社会・文化を考慮し人文・社会科学の観点も取り込むこと、などが重要である。特に、地域環境予測やバイオマスの需要と供給の安定化と二酸化炭素排出削減を目指した環境資源管理技術の研究開発など他分野の知見も交えて総合的、分野横断的に取り組むべき課題については取組みが難しいことから、アジア各国との一層の協力のもと、地球観測データの提供・利用を含め、政策的に一層推進する必要がある。平成18年8月の日中韓科学技術協力担当局長会合においても、かかる地域共通課題にともに取り組んでいくことの重要性が議論されているところである。例えば、中国、韓国等の研究水準が一定程度の水準に達している研究機関とともに、環境・エネルギー分野の研究開発等を推進していくことにより、地域共通課題の解決に資することができる。このような中国、韓国との連携を行う際に、ASEAN(アセアン)プラス3やGEOSS等の枠組みを活用し、ASEAN(アセアン)諸国にも連携の輪を広げていくような展望があれば、地域共通課題解決の観点から更に効果的である。
2−2) アジア発の先端技術の創出
   アジア諸国との相互補完的な協力に基づき、アジア発の先端技術の創出を図ることが重要である。例えば、近年急速な発展が見られるインドとの間では、従来国際協力関係が比較的手薄であったところ、我が国とインドとの間で相互補完関係が存在するような分野で国際科学技術協力を進めることにより、情報科学、ライフサイエンス、ナノテクノロジー等の分野でアジア発の先端技術の創出を図ることが見込まれる。平成18年10月17日、18日に東京で開催された「日印科学技術イニシアティブ会合」の議論の成果を踏まえつつ、例えば、日本の弱点といわれる情報科学分野において一定の研究水準を持つインドとの間での共同研究(我が国のライフサイエンス研究者と協力したバイオインフォマティクス研究等)のように、相互補完的な協力に取り組むことが望まれる。

(科学技術・学術政策局国際交流官付)