審議会情報へ

科学技術・学術審議会技術・研究基盤部会

2001/05/15議事録
科学技術・学術審議会技術・研究基盤部会産学官連携推進委員会(第1回)議事録

科学技術・学術審議会技術・研究基盤部会産学官連携推進委員会(第1回)議事録


1.日   時 平成13年5月15日(火)17:00〜19:00
   
2.場   所 文部科学省別館第1会議室
 
3.出席者
委   員: 末松、市川、伊藤、小野田、川合、川崎、北村、清水、白川、田中、田村、丹野、平井、古川、安井、吉田
事務局: 中西研究環境・産業連携課長、磯谷技術移転推進室長、柴田技術移転推進室長補佐   他
   
4.議   題
(1) 主査代理の指名について
      末松主査の指名により、安井委員が副主査となった。
   
(2) 産学官連携推進委員会の運営規則について
      資料2に基づき事務局から説明した後、原案のとおり了承、決定された。
   
(3) 産学官連携推進の在り方について
      資料3、4及び5に基づき事務局から説明した後、自由討議が行われた。
      その内容は以下のとおり。
   
  (○・・・委員      △・・・事務局)
   
   資料5の論点、課題とは別の点で確認しておきたい。一つは、ここでいう「産」には外国企業も入るのか。日本の大学の先生方が、日本の企業と組むのか、外国の企業と組むのか、さらにはグローバルな企業と組むのか、といった問題が当然起こり得る。
   2番目は、社外取締役兼業といった、個別の研究成果だけでなく、その先生の持っている全人格的識見が問われる産学官共同も視野に入れるのか。産業技術力強化法は、研究成果主義の域を出なかった。
   3番目は、大学の教員が、大学を研究開発のアウトソーシングの対象として見る企業と大学の持っている任務との間で相克を起こすコンフリクト・オブ・インタレストの問題がある。これは米国では非常に大きな問題であり、日本の場合も起こり得るので、今後どうするかについて検討すべきではないか。
   
   第一点目の外国の企業については、科学技術基本計画等にある国内産業の育成と競争力強化という主軸はぶれないが、外国の企業を排除する考えではない。
   それから、全人格的又は見識を持って大学の先生が社外取締役を兼業し、コーポレートガバナンスに参画することについては、この委員会の最終レポートまでには検討していきたい。
   コンフリクト・オブ・インタレストは、資料3で紹介した11の検討項目案の中に入っており、当初から視野に入れている。
   
   先ほどの話にも多少関係するが、産学官連携の意義という問題は、特に文科省、特に大学という視点に立った場合、本当にこういうものでいいのだろうかという感じがする。多くの方が大学に望んでいる最大の機能は、時代あるいは社会を先導してくれる大学であってほしい、それだけの知的集団であってほしいということが基本であると私は思う。そのような社会あるいは時代を先導する知的集団がその機能を果たそうとしたら、現代を知らずして、どうやって未来を先導するのか。産業とかテクノロジーの未来を考えた場合、まさに現代の最先端に大学自体が深くコミットして、接して十分な情報を持ってこそ初めて未来が見えるのではないか。それが、産学連携の一番基本にある大事なことではないかと思う。
   私自身、MITとか、あるいはインペリアルカレッジという工科系の大学と非常に長い付き合いがある。彼らの産学連携に対する望みは、自分の研究、教育というものが、日本語に意訳すれば、畳の上の水練なのか、本当に泳げるのか、のチェックができる絶大なるチャンスであり、それによってエデュケーションなり研究にフィードバックすることである。やはり文科省なり大学という立場に立ったら、そのような産学連携の意義というものをかなり明確に持つのが大事なのではないか。
   
   産学連携で幾つか指摘された中に、大学で何をやっているか見えないことがあるが、見えるような研究をやるようにすべきである。教育も同様である。研究成果にウエートがあるが、社会還元で一番大事なのは、期待される人間を輩出することである。これが一つの大きい役割としてあるので、産学連携をあまり局地的にとらえず、社会が注目することをどの大学でもやっているというふうにすれば、突破口が開けるのではないか。
   次に、ここに挙げられている幾つかの課題は、大学が国立あるいは公立であること、又は大学教員が教育公務員特例法の適用を受けていることからくるひずみであり、もし国立大学が独立行政法人に移行したとしても、国研のように、公務員の身分を継続する形をとる限りにおいては永遠に続く問題になる。大学の優秀な個人の先生が、そういうスキャンダルに巻き込まれ、個人の犠牲で解決せざるを得ない問題が発生することはあり得る。
   産学連携の一つの在り方として、日本国内に400近くある私立大学はあらゆる財源をプライベートに求めながらやっており、これらの大学を制度面から基本として考えるのが長期的観点としては重要ではないか。
   最後に、幾つかの制度をいろいろと作っているが、産学官が連携することがあたかも目的のようになっており、連携の結果として何を国は期待し、地域は期待し、社会は期待するのか、そのための最短の道は何かという議論についてあまり検討していない。最初に指摘した点を含めて議論をした方が、船が山へ登ることにはならないのではないか。
   
   大学と産業というものの問題意識が乖離してしまったのではないか。それから、お互いに必要のない仕組みにしてしまったというところに問題があるのではないか。
   まず、問題意識から言うと、大学へ行って驚いたのは、経済学の先生は経済学を一生懸命勉強しているが、経済にはあまり関心がないということである。経済学にしか関心がない人がほとんどである。米国の学者は米国経済を見て研究しており、その研究成果を見て、関心がある研究者は米国に留学して勉強しに行くため、経済学にしか関心がない人がいるのは当然かもしれない。そこが問題意識として乖離していると思う。
   それから、学生でも、例えばITとか、ベンチャーとか、金融公論とかを勉強したいと言ってくるが、修士号を取ったらみんなやめてしまう。周りを見渡してもポストがなく就職できるかどうかわからないため、そういう事に関心がある人は大学に残らない。結局、今ある経済学なら経済学をやっている方が確実にポストもとれるということが一つの問題意識としてある。
   「産」の方も、我々に対して何を期待すればいいかということで問題意識のずれがある。システム上で考えても、特に経済で言えば、ビジネススクールがどうして日本では発展してこなかったか考えると、要するにビジネスの問題を開発しトレーニングするのは企業であり、大学には必要ないという日本型経営の特徴にある。今、日本型経営システムを変えなければいけない時に、日本型経営システムを営々とやってきた人たちにはアイデアがなく、例えば人事関係の評価システムを変えるためにアメリカのコンサルタント会社などに頼んでいる。そういったお互いにニーズを持っていないことがあるので、官が規制緩和をすることで産学を融合させようとすると同時に、お互いに問題意識を共感でき、お互いのニーズを産でも生かし、学でも生かせるような仕組みがないか議論してほしい。
   
   30年間工学系の教官をやり、その後5年間ぐらい産学連携に取り組んできて、一番実感として感じるのは、欧米のいわゆる研究大学と国内の工業大学との比較で、研究ポテンシャルという意味ではそんなに大きな差はないが、研究のマネジメントでは人事も含めて責任も決定もすべて大学教官が主体であり、その基本になるルールは非常にあいまいな形であるということである。一方、欧米の大学を視察すると、学長、副学長は全く違った観点でマネジメントを強制されており、宣伝活動も含めて大学の内容を的確に宣伝する、いわゆる営業活動までできる。現在の仕組みで科学技術基本計画にいう科学技術立国という目的に対して大学が立ち向かうのは無理であるため、最初、とにかくマネジメントのいろはを作りたい。TLOをやって1年半になるが、非常にいろいろな制度的な問題がある。
   したがって、この会議では、イデオロギーに焦点をぼやかさずに、マネジメントをどうしたらいいかということについて何か一つ焦点を絞ってやってほしい。こういう場でオーソライズされて、何にスピードが要求されているのか1〜2年の間に解決しなければならない。ある意味でTLO業務というのは、商売であるので、時間との競争である。
   
   資料を見ても、最近の日本では仕組みが随分よくできている。ところが、大学でいろいろな人と話したときに、ほとんどの人に、自分たちは公務員で保障されていて、産学連携をしなくても給料も入るのに何でそんなことをしなければいけないのかと言われて非常に驚き、愕然とした覚えがある。アメリカに行くと、やりなさいと言わなくても、自らインセンティブを持ってやっている。日本の場合、みんなやらないから何とかしてやらせたい、嫌かもしれないけれども何とかやりなさいというふうにしている。アメリカの場合、機構もやりやすく、それでお金も入り、自分の基礎研究も伸びるので非常に喜んでやっている。これからの議論では、どうやって嫌なことをやらせるかという議論ではなく、やるとこんなにいいというふうにするのが非常に重要な視点であり、今後の進め方としてあるのではないか。
   
   事務局の説明の中で、ちょっと認識にずれがあると思った点が一つ。官側のほうで、制度を通達すれば、直ちに現場ではできているというふうに認識すると大変である。現場の方がどうなのかということを確認しながら次へ行ってほしい。やはり何らかの障害があり、特に前例をぶち破ることは大変である点を認識してほしい。
   産学連携の産という場合に、中小企業と大企業では、全く違っており、一緒に議論すると、何の議論をしているのかわからなくなる。
   社会的ニーズとか、産業界のニーズとかいう言葉が出てくるが、ニーズがもともとはっきりとあると認識していると、大変な間違いを起こす。競争的ニーズは、企業は皆持っているので大学が協力することがあるが、議論をすると、10年先、20年先の業界全体のニーズについては、日本の業界がつかんでいないところがかなりある。それが大学に伝わらないため、大学の研究が先生の趣味に陥るとか、勝手なことをやっているということについては産業界にも非常に大きな責任がある。しかし、それを産業界が出せるかというと、日本は追いつき追い越せでフロンティアになった途端に見えなくなっている部分がある。ゆえに、そのニーズが何かを、産も学も一体になって議論をし発掘していかなければいけない。また、それを議論する場もないので、それを明確にしていかなければならない。その場合に錯覚してはならないのは、ニーズとは、例えば、ナノテクノロジーだという一つに決まるような単純なものではなく、もっと多様なものだということである。産も学も一体となって、将来の日本のニーズというものを、多様性を念頭に入れながら出していかなければならない。
   いろいろまとめられているテーマは、非常にうまくまとまっているが、やはり人だと思う。コーディネーター、専門家が非常に不足しているので、各組織の間をフェイス・ツー・フェイスでつないでいく人がいない。これをどう育てるかということが喫緊の課題である。
   契約について、産業界と最初に特許も含めて契約すべしということだが、日本の企業は、研究費を出したら特許も何も全部自分のものだというスタンスである。これでは米国の大学などの契約と全く内容が違っており、誰がお金を出しても、研究をした者がプライオリティを持っているという立場まで日本は達していない。そんなところで契約をしたら、ある意味では、全部とられてしまうというような面もある。この点でも中小企業と大企業では全くスタンスが違うということがある。
   
   産学連携を進める上での制度的な障害などについては、規制を緩和するという観点から、比較的短期間に検討できると思うが、ベンチャー支援の関係で、いろいろ金融的な面でお手伝いをしていると、最大の問題は、事業をやろうとする人が少ないことである。いくらいい技術があっても、大学の先生が自ら事業を興してマネジメントをやることには必ずしもならない。マネジメントの問題にも絡むが、新しい事業をいかにしてやるかについては人材不足の問題が大きく、あまり早急にこの問題を解決しようと思っても、無理な話である。
   論点整理の中に、人材育成の問題が出ていたが、大学は研究の場であると同時に、教育の場である。産学連携のいろいろな議論を見ると、大学の研究成果を産業界にうまく移転できないかというあたりの議論がかなり多い。一番大事なのは、新しく事業を興そうとする気持ちを持つような人材の育成である。いろいろなコーディネートができるような人材の育成は日本全体の教育システムの問題であり、大学だけ変えてもしようがない面がある。仕組みも含めて、米国などと比べて決定的に違っている。だから、新しく自ら独立して何か事業を興そうという考えがないと、いくらシーズを出したり、ニーズを出したところで、事業にうまく結びつくのかと疑問を持っている。
   そういう意味で、短期的な問題と長期的な問題を分けて考えるのは必要であるが、本質的な問題は人材の問題だということを議論してほしい。
   
   現場にいると、TLOの障害が多々あることは感じており、その問題を今ここで詰めて議論することも大事だと思うが、ここでしかできない議論をすべきである。それは、当初の意見にあったように、意義は何か、どこに軸足を置いてどう解決するかという問題だと思う。
   今、技術移転の中でTLOは、非常に注目を浴びており、重要な機能を担っているが、TLOだけではできないことがたくさんある。TLOは一つのマーケティング機関であり、一つの技術的機関であるので、それ以外の制度面、組織といったサポーティング・システムが必ず必要になる。独法化の問題はさておき、今の段階において、システムとしてどういうものがいいのか、きちんと意義に立脚して考えるべきである。
   私は、2年間米国にいたが、向こうにはいろいろな方がおり、技術移転に反対で、学者は研究すべきだと言っている人も多い。米国にもいろいろな議論があるが、大事なことは、米国人にはオプションがあり、選択できる自由が比較的広いということである。
   例えば私は、今、博士課程で、遺伝子の進化とかおもしろいと思って勉強しているが、絶対、商業化の見込みはない。それでも、私はこれを研究したいと思うし、そう思う方はたくさんいると思う。そういう方はもちろんいるし、実用化に近い方ももちろんいるし、みんなが自由に自分の方向性を伸ばしていけるという大学あるいはそれをサポートする事務局をどうやって作っていくかが非常に大事である。
   話は元へ戻るが、TLOも非常に大変であるので、できたら議論していただきたい。
   
   大学で3年間センター長をやって、たどりついた最終的な結論は、連携をするということは何かというと、合体ではなく、それぞれの主体が全く違う価値観があるから連携することに意味があるのだということである。要するにそれぞれの価値観にどうしても縛られて、乗り越えられない障害があるけれども、それを全く違った価値観を持った人間が連携することによって、乗り越えられるということぐらいしか、整合性を見出すことができなかった。
   大学は未来を見通すべきということは事実であるが、特に大学が気をつけなければならないのは、大学人全員が産学連携だと言ってわあーっと行ってしまう大学は要らない。本当に必要なのは、その中で多様な価値観を持った者がバランスよく適当な格好で存在しており、その多様性ゆえに何か社会全体のある種の固定軸を構成し、未来が見やすくなるシステムを大学は目指すべきことではないかと思う。
   いろいろおもしろい経験もあり、本当に基礎研究しかやっていないような人間を産学連携に実際に強引に巻き込んでみたら、その研究者にとって全く新しい経験となり、自己評価まで変わったという例もある。本当に使えないような研究が使えたという経験が起きたりするなど、正に棚ぼたみたいなことはあると思う。
   それで、3年間の結論は一体何かというと、とにかく一つ言えるのは、産業界が自らの利益になるような大学にアプローチしやすいシステムを作っていかにマネージするか。2番目、大学教官がその気になるようなシステムを作っていかにマネージするか。3番目が、棚から落っこちたぼたもちか何かをぱっくり食べて、その気になった瞬間にそれをコーディネートするシステムを使ってどこまで実施するか、以上ではないかと思う。
   
   先ほどから大企業、それから、中小企業という話が出ているが、バイドール法一つにしてもメインはスモールビジネスというのがはっきりうたっているが、日本の場合の産学連携というのは、ほとんどそこのところは強調されてないと思う。今、大企業が大学といろいろな技術で連携するのは当然必要で重要なことであるが、新しい産業を興すとか、そういうことを考えるときに成功するかしないかは、大企業の産業界とこれからどうするかという議論ではなく、中小企業の産業界をどうするかという議論がきちんとできるかにあると思う。日本の場合にはハイテクの中小企業が非常に少ない現状であり、これからそれを作りながら、ハイテクの中小企業を助けて産業を興していくという方向が、大学あるいは国研の技術移転の重要な点であると思う。
   
   あえて最後にまとめることができるとすれば、一つは、大学というものの性格が多様なものであり、大学というのは、いつも将来が見えるような雰囲気づくりがなされているところでなければいけない。あるいはいつも新しい知的財産の生産が行われているところであり、その中の一部が産学連携をやって大学の成果を移すことができるということである。   次に、産学連携をやることは、大学の人たちが、世の中は一体どうなっているかを知る一つの道でもあり、大学にとっても産業界にとっても意義があるということ。
   それからもう一つは、産学連携をやる場合のシステムはあまりはっきりしていないので、今の段階でやれることをきちっとすべきではないかということ。
   産学連携の本当の意味は、実は事業を起こすということではないかと言われていた。そういう意味で中小企業あるいはベンチャー企業を起こすということが大変話題の中心になっていたのではないかと思う。さらに、これは当たり前のことであるが、そのためには人が大事なんだということも言われていた。
   できればこれをまとめてもらい、大学の存在意義ということから始めて、現状のどの辺に焦点を絞るかということで次回に意見をいただくということがよろしいかと思う。よろしければ、次回にそういう形でまとめてもらい、それをたたき台にして進みたい。
   
5.今後の日程
     次回は5月末に開催する予定とし、各委員との日程調整の上、事務局から改めて連絡することとされた。
   
(文責:研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室)

 

(研究振興局研究環境・産業連携課)

ページの先頭へ