第4回技術・研究基盤部会知的基盤整備委員会知的基盤整備計画のフォローアップと見直しのまとめ

2002年12月24日
知的基盤整備委員会

第4回技術・研究基盤部会知的基盤整備委員会
知的基盤整備計画のフォローアップと見直しのまとめ

はじめに
  平成13年8月に答申した知的基盤整備計画では、毎年度その進捗状況についてフォローアップする旨述べられている(第6章.「知的基盤整備計画のフォローアップと見直し」)。平成14年11月14日に、第4回知的基盤整備委員会を開催し、知的基盤整備の現状の報告を受け、今後の整備のあり方について議論して、知的基盤整備計画のフォローアップを行った。審議の結果を取りまとめると以下のとおりであり、関係者の今後の知的基盤整備において留意されることを期待する。なお、以下の事項についても、来年度以降のフォローアップの対象とする。 (研究振興局 研究環境・産業連携課)

目標値・整備方策について
  知的基盤整備計画における目標値、整備方策全体については、計画策定から1年しか経過しておらず、また、変更するべき格別の事情はみられないので、特に変更しない。
  ただし、計測方法・機器等の整備の2010年の目標である「国際競争力があり世界最高水準の性能を有するものの供給を可能とする(国内企業による一定の国内市場のシェア(例えば50%以上)が指標となる)」については、国内市場におけるシェアではなく、他の切り口から目標値を設定することができないか今後検討の余地がある。

今後の整備における留意事項
1.各領域横断的な留意事項
各領域において、人材育成のための研修体制、教育体制の整備等の検討を行う。
知的基盤を長期に亙って整備・維持するためには継続的に予算を確保することが必要であることに留意して、知的基盤に関する予算確保のあり方を検討をする。
共同利用機器の公開やDBの公開等を促進するためにも公開した者に対してインセンティブを与えるスキームを検討する。
知的基盤を公開するか否か、どの時期に公開するべきか等知的基盤の公開については、国家安全保障、知的財産権による保護を含めた国際競争力の確保とのバランスの観点も留意する。

2.各領域毎の留意事項
(1)研究材料
生物遺伝資源の保存・提供の中核拠点の整備及びバックアップ体制の整備等を各省庁連携(生物遺伝資源等知的基盤府省連絡会等)して検討する。
生物遺伝資源の保存・提供機関においては、生物遺伝資源の品質管理基準の策定を行い、収集・保存のための研究開発を推進する。
生物遺伝資源情報等の研究材料について各研究機関・大学における情報の公開を推進するとともに、保存機関のリンク集の作成、生物遺伝資源情報の統合検索化を推進する。また、生物遺伝資源情報の公開に際して、危険な生物遺伝資源を保有する機関はテロリストの標的になるおそれもあることから、情報の公開に際してはこの点を十分留意する。
生物遺伝資源以外の特殊材料については、研究開発成果の情報発信の観点から、情報の公開を積極的に推奨し、その際には、利用者がアクセスしやすい体制の整備も検討する。
生物多様性条約の場におけるルール策定等、生物遺伝資源に関する国際的な取組に引き続き積極的に参加する。

(2)計量標準
計量標準・標準物質のさらなる研究開発のために、共同研究・特許の取得・研究開発成果の技術移転の推進等産学官の連携を進める。また、開発された成果の活用を図る。
医療医薬品・環境・農薬等の分野の標準物質については、引き続き、関係省庁、研究機関との連携により開発を推進する。
グローバルMRA(計量標準相互承認協定)、APMP(アジア太平洋計量計画)の取組に引き続き積極的に参加する。また、発展途上国との戦略的な協力体制の整備を検討する。

(3)研究材料
各研究機関・大学で保有している共同利用機器の所在、機能、利用方法等について情報の公開を推奨し、また、共同利用機器の利用を望む者がアクセスしやすい体制を整備する。
計測方法・計測機器の開発について、共同研究・特許の取得・研究開発成果の技術移転の推進等産学官の連携や国際共同研究を進めるとともに、市場化・製品化についての取組を推進する。
VAMAS(新材料および標準に関するベルサイユ・プロジェクト)等の国際的な取組に引き続き積極的に参加する。

(4)研究材料
各研究機関はデータベースを組織的に構築・管理し、利用者のニーズを踏まえた設計を図り、また、学会や協会と連携して可能な限り統合検索化を推進する。
各研究機関・大学においては、研究成果の発信の観点から、DBの整備および公開を推進する。公開されたDB及びDBのリンク集については積極的に広報しDBの利用・活用を促進する。また、データベースの公開に際しては、その内容によって、一般に広く公開するべきか、アクセス条件を附するべきものかについて留意する。
各研究機関や大学においては、学会や協会との連携、計測データ等の分散型簡易入力システムの開発等、データの収集を効率的に行う体制を検討する。

参考
現在の推進状況
(1)研究材料
現在、各府省庁の各研究機関において、それぞれの研究機関の役割に応じた生物遺伝資源その他の研究材料を収集・保存・提供している。
各大学においても、多数の生物遺伝資源を保有しており、一部の大学においては、積極的にHPに公開し、分譲を行っている。
研究に使用される生物遺伝資源について、生物遺伝資源毎に中核機関を決めて収集・保存・提供を進めるプロジェクトが開始され、大学を中心とした生物遺伝資源の収集・保存・提供体制が整備されつつある。
生物遺伝資源に関する全省庁的な取組については、生物遺伝資源等知的基盤関係府省連絡会において議論がなされている。
生物遺伝資源以外の研究材料については、研究機関によってはHPに標本等の公開はなされているものの、積極的には分譲等は行われていない。
生物遺伝資源等の研究材料の分譲条件、寄託条件等については、各研究機関において整備されはじめている。

(2)計量標準
国家計量標準については、独立行政法人産業技術総合研究所、独立行政法人製品評価技術基盤機構(経済産業省)を中心に、2010年の目標達成に向けて整備が進められている。
標準物質についても、独立行政法人産業技術総合研究所、独立行政法人製品評価技術基盤機構(経済産業省)を中心に、2010年の目標達成に向けて整備が進められている。また、標準物質の総合情報システムについても独立行政法人製品評価技術基盤機構において整備が進められている。
環境標準物質についても、国立環境研究所(環境省)において整備が進められている。

(3)計測方法・計測機器
生物遺伝資源関連の解析機器については経済産業省及び文部科学省を中心に、また、人間特性の試験評価方法、材料物性等の試験評価方法、化学物質の安全性の試験評価方法の基盤については経済産業省を中心に整備が進められている。
化学物質の環境動態の評価方法、化学物質の生体試料中の挙動の試験評価方法については、環境省を中心に整備が進められている。
各研究機関とも、外部の研究者も利用可能な計測機器等の共同利用機器を保有しているものの、機器の所在、機能、利用方法等についての情報公開はあまり進んでいない。
ライフサイエンス分野の核酸・タンパク・酵素関連の計測機器については依然として国内シェアは小さく、海外に多くを依存している。

(4)データベース
生物・生体に関するデータベースについては、各大学、各研究機関とも多数公開がなされている。また、ゲノム関連情報の統合検索システムについても、科学技術振興事業団(高機能生体データベース、文部科学省)、独立行政法人製品評価技術基盤機構・バイオ産業情報課コンソーシアム(経済産業省)において整備が進められている。
人間特性に関するデータベースについては、経済産業省を中心に整備が進められている。
材料や物質の計測データ等に関するデータベースについては、独立行政法人産業技術総合研究所(経済産業省)、独立行政法人物質・材料研究機構、科学技術振興事業団(文部科学省)をはじめとする研究機関、大学等により多数公開されている。
化学物質の安全性の試験評価データに関するデータベースについても、経済産業省、厚生労働省、環境省を中心に整備が進められている。
国土、地球、海洋、宇宙の計測データ等に関するデータベースについても、各研究機関や大学において多数公開がなされている。
関係各省との連携について、地理情報に関しては地理情報システム(GIS)関係省庁連絡会議が、化学物質安全情報に関しては内分泌かく乱化学物質問題関係省庁課長会議が設置されている。