産学官連携基本戦略小委員会(第3回) 議事録

1.日時

平成22年6月3日(木曜日) 14時~16時

2.場所

文部科学省東館16階 16F特別会議室

3.議題

  1. 産学官連携による人材育成について
  2. リサーチ・アドミニストレーターの育成・確保について
  3. その他

4.議事録

午後2時02分開会

【西山主査】

 それでは定刻を少し過ぎましたので、ただいまから第5期科学技術・学術審議会、技術・研究基盤部会産学官連携推進委員会の基本戦略小委員会の第3回目を開催いたします。
 本日は、オブザーバーといたしまして、科学技術振興機構の菊池部長、高等教育局専門教育課の枝課長補佐、及び理化学研究所の高橋先生にご出席をいただいております。後ほど枝補佐及び高橋先生にご説明をして頂きます。

 初めに、委員の出席確認と配付資料の確認を事務局からお願いいたします。

(山﨑技術移転推進室長補佐より委員の出欠、配布資料の確認)

【山﨑技術移転推進室長補佐】

 その前に、この6月からクールビズで軽装を事務局のほうでさせていただいておりますので、お許しいただきたいと思っております。

 それでは委員の出欠の確認でございますが、本日の欠席は三木委員の1名ということになっており、なお南委員が途中でご退席されると伺っております。

 それでは配付資料の確認ですが、議事次第をごらん下さい。4の配付資料のところで、本日は、本資料といたしまして4点ご用意させていただいております。まず資料1は「産学官連携を担う専門人材の育成に関する参考資料」ということで、両面で14枚の資料でございます。続いて資料2は「産学連携による人材育成について」ということで、これは後ほど専門教育課の枝補佐のほうからご説明いただくことになっており、両面6枚の資料になってございます。資料3は「リサーチ・アドミニストレーターにかかる現状と課題について」ということで、これは後ほど高橋先生のほうからご説明いただきたいと思っており、両面10枚の資料になっております。そして資料4でございますが、この小委員会のスケジュールということで、1枚ものになっております。それ以外に机上配付参考資料ということで、ブルーのファイルにとじたものを机上でご用意させていただいております。なお、資料の不足等がございましたら事務局までお申しつけください。

 以上でございます。

【西山主査】

 ありがとうございました。

 それでは、早速、議題1に入らせていただきます。議題1は産学官連携による人材育成についてです。もとより人材が最も大切であることは皆さんも百も承知の上ですけれども、本日はこれを今一度まとめて議論をさせていただきたく思います。

 それでは事務局のほうからご説明をお願いいたします。

(渡辺技術移転推進室長より資料1の説明)

【渡辺技術移転推進室長】

 それでは、お手元の資料1を御覧下さい。「産学官連携を担う専門人材の育成に関する参考資料」でございます。本小委員会の議論の中で、持続的なイノベーションの創出に向けて、教育、すなわち人材育成、研究、知の創造、それからイノベーションという3要素を三位一体で推進していくことが重要であるというご意見をいただいてございます。

 イノベーションの創出に向けた産学官連携を担う人材といたしましては、例えば知の創出やその成果を実用化につなげていく研究開発人材であるとか、産学官連携をサポートしていくような、例えばアドミストレーターといった専門人材などが考えられます。本日は最初に、前者のような知の創出やその成果を実用化につなげていくような人材などを、産学官連携の取り組みによってどのように育成していくかということを検討いただければと考えてございます。
 したがいまして、まず産学官連携による人材育成につきまして、現状と課題について、現在、関係省庁が取り組んでいる施策を中心に説明させていただいた上で、主な論点を提示させていただきたいと思います。

 まず人材育成に対する産業界のニーズでございますが、企業の求める人材像についてのアンケート結果によりますと、産業界からは、大学や大学院における人材育成に関し、専門分野の知識の習得等に加え、知識や情報に基づき自分の考えを導き出す訓練、理論に加えて実社会とのつながりを意識した教育を行うことなどが記載されているというアンケート結果が出てございます。
 さらに、博士課程後期での教育研究を通じて身につけたい知識・技能・態度と、実際に身についていると見込まれる能力等というものを比較した調査によりますと、この専門知識の応用や融合、それからマネジメント能力などについては、必要性は非常に高いということは認識されていても、現実には博士課程後期の期間中に身につけることが難しいと考えているような調査結果も出てございます。

 こういった現状を踏まえまして、教育界における人材育成の課題として、社会で求められる能力と若者が身につける能力との間に質的ミスマッチがあるのではないかと。その原因としては、教育界と産業界の相互の関心が薄れ、コミュニケーションの希薄化が進展しているのではないかという問題意識に立ちまして、平成19年10月に産学人材育成パートナーシップというものが、産業界、経団連や経済同友会、日本商工会議所や、教育界、国大協、公立大学協会、私大協、私立大学連盟など、それから経産省や文科省などが連携して、こういったパートナーシップを創設して、産業界と教育界が将来に向けて育成することが必要な人材像を共有し、それぞれの立場で人材育成や能力発揮に向けた取り組みを強化するとともに、より直接的に連携した取り組みを実施していく関係づくりをしようということで活動を行ってまいりました。
 その人材育成パートナーシップの中で、平成20年7月に中間取りまとめがなされ、その中では、分野共通的に求められる人材像でありますとか、主な課題などが提言されております。その中の1つの重要課題といたしまして、産学共同による人材育成プログラム等の開発などが提言されているところでございます。
 こういった状況を踏まえ、文部科学省、経済産業省において、産学連携による人材育成のさまざまな取り組みが行われてございます。例えば産学連携による実践型人材育成事業、先導的ITスペシャリスト育成推進プログラム、イノベーション創出若手研究人材養成、実践型研究リーダー養成事業など、これは詳細を後ほど述べさせていただきます。
 さらに現在、成長戦略の検討の中で、世界的なリーディング大学院の形成の実施に向けて検討が始まってございます。これはどういうことかというと、成長分野において世界で活躍する人材を輩出するすぐれた取り組みを実施する大学院を選定して重点的支援を行うということ、特にその中で産学連携によるすぐれた教育プログラムの構築と博士課程修了者の企業採用とのマッチングの戦略的推進を行うということを検討していると聞いてございます。
 さらに経済産業省におきましても、産業技術人材育成支援事業、中小企業等の次世代の先端技術人材の育成・雇用支援事業などを通じて、産学連携による人材育成の取り組みを行ってございます。
 これらの施策につきましては、産学人材育成パートナーシップの提言も踏まえつつ、文部科学省と経済産業省で相互協力のもと、推進しているところでございます。それぞれの省庁の施策をざっと説明いたしますと、まず産学連携による実践型人材育成事業につきましては、この後、専門教育課の枝補佐より説明がございますので、省略させていただきます。
 次に、イノベーション創出若手研究人材養成の事業でございます。こちらは平成22年度の配分予定額で18億円を予定しているものでございます。目的といたしましては、イノベーション創出の中核となる若手研究者等が国内外の多様な場で創造的な成果を生み出す能力を身につける研究人材養成システムを構築するということで、具体的には、イノベーション創出の担い手となる創造的な若手研究人材を養成するための実践的なプログラムを企業等と協働で実施する大学等を国が選定するというものでございます。
 具体的には、ここにございますように、若手研究者などが国内外の企業や研究機関での研究開発の実践など多様な場で創造的な成果を生み出す能力を身につけるための機会を設定しようということで、国内の企業もしくは海外の企業などと協働して、実践的なプログラムを作成してそれを実施していくという取り組みでございます。

 続きまして、実践型研究リーダー養成事業でございます。こちらは平成22年度予算額で1億円の予定となってございますが、中身としては、博士人材による産業界におけるイノベーションの創出力向上に資する大学院教育の実質化を促進するため、博士課程学生について、企業等の研究開発チームの力を最大限に引き出すリーダーとして養成するというものでございます。
  体的な内容といたしましては、博士課程の学生が、企業において企業が提示する実践的な課題解決型のチームでの演習などを通じて、実践的な課題解決力、リーダーシップ力、マネジメント力やコミュニケーション力など、リーダーとしての素養を効果的に身につけられるような体系化された演習モデルを開発するというプログラムでございます。
 次に、経済産業省さんの産業技術人材育成支援事業、こちらは平成22年度で14.3億円でございます。目的といたしましては、人材育成に係る産業界のニーズと実際の教育との間のミスマッチの解消であるとか、横断的・制度的課題、業種別課題の解決を図る観点から、大学と産業界との対話を促し、当該対話を踏まえた実践的な人材育成プログラムの開発と定着を図るというものでございます。その中でいろいろプログラムがございますけれども、特に産学人材育成パートナーシップ事業というものは10.6億円計上されてございます。これは、大学と産業界との対話を促して、産業界のニーズと実際の教育との間のミスマッチの解消や、横断的・制度的課題、業種別課題の解決に取り組む産学人材育成パートナーシップでの検討結果を踏まえた、産学連携による人材育成プログラムの開発とその実証等を行っていくということで、文部科学省とも連携を行いつつ進めている事業と聞いてございます。
 次に、中小企業等の次世代の先端技術人材の育成・雇用支援事業、こちらも経済産業省さんでございますが、平成22年度予算で3.7億円でございます。こちらは、大学や公的研究機関、民間企業、自治体などが連携して、次世代産業の起業あるいは担い手となる先端技術人材を育成・雇用を行う取り組みについて国が支援を行うものということでございます。具体的には、その実施機関、大学であるとか、公的研究機関とか、民間企業などは、研究人材等を雇用して、その人材を産学官共同研究プログラムに従事させる。研修後に地域企業への就業支援をするというプログラムでございます。以降、それぞれの個別の大学などにおける取り組みなどを紹介してございますので、後ほどお時間があるときに御覧いただければと思います。それから外国の例で申し上げますと、デンマークにおける産学協働の人材育成の事例なども掲載してございますので、参考にご参照いただければと思います。

 こういった点を踏まえまして、論点といたしましては、産学官連携による人材育成はどうあるべきか、産学官連携による人材育成を強化していくために、国はどのような施策を行っていくべきかということを検討していただければと思います。

 以上でございます。

【西山主査】

 ありがとうございました。

 次に入る前に、同じ主題でありますので、高等教育局専門教育課の枝補佐より、同様の課題についてのご説明をお願いしたいと思います。

(枝高等教育局専門教育課長補佐より資料2について説明)

【枝専門教育課課長補佐】

 高等教育局専門教育課の枝と申します。よろしくお願いいたします。産学連携による人材育成についてということで、当課で実施している事業を中心にご説明をさせていただきます。
 こちらの産学人材育成パートナーシップについては、先ほど渡部室長のほうから説明がありますので、こちらのほうは割愛させていただきます。

 産学人材育成パートナーシップのこれまでの取り組み状況について、若干触れさせていただきます。第4回の全体会議が昨年7月にございまして、まずそこまでの成果が1のところでございます。全体会議の下に分科会が9つございまして、その各分科会の取り組みが(1)のところでございます。例えば科学の分科会におきましては、受け入れ企業の窓口の一元化をインターシップに関して図るといった取り組みでございますとか、また資源の分野につきましては、海外の資源採掘現場へのインターンシップの実施といったこともやっていると。電気・電子の分野については、研究者・技術者の大学への講師派遣のコーディネート機能の充実でありますとか、こういった取り組みをインターンシップに関してはやっていると。
(2)のところで、分野横断的な取り組みといたしまして、経済産業省さんと連携いたしまして、インターンシップの受け入れ企業の窓口一覧や、インターンシップの手引きのようなものを作成・配布したり、こちらの経済産業省さんの取り組みでありますが、産学人材育成グッドプラクティス集という好事例集のようなものの策定・配布といった取り組みがされていると。
 その後の取り組みといたしまして、2のところでございますが、まずは、理系の魅力向上と魅力発信のための取り組みということで、これは、一言で言ってしまうとキャリア教育のような、理系に進んだ人がこういう分野で活躍していますよと、中学生にわかりやすく説明した資料をつくって、全国の中学校、教育委員会に経済産業省のほうで配布されています。
 それからグローバル人材育成の検討ということで、グローバル委員会というものを全体会議の下に設置いたしまして、グローバル人材像の明確化や、その育成手法についての議論を行ってきて、この4月に報告書が取りまとまっております。こちらには報告書の概要は書いておりませんが、簡単に概要を紹介いたしますと、グローバル化が進展している状況を踏まえると、グローバル人材の育成というのは日本社会全体が抱える課題である。学校教育だけではなくて、産学官のリソース、人・物・金を最大限に活用して社会全体で育成していくことが必要だ。また、社会と接続した教育機関である大学での育成というものを充実させていくことが重要である。それから、グローバル人材が育ち、活躍できるよう、日本全体として、若い世代から日本人が積極的に海外で学習や就労ができる社会システムでございますとか、海外から高度人材を積極的に受け入れて、日本人も含めて切磋琢磨できる社会システムと、こういった社会システムを構築していくことが必要だといったことが言われているところでございます。

 続きまして、当課で実施しております産学連携による実践型人材育成事業につきましてご説明いたします。平成22年度の予算額、トータルといたしまして12億700万円予算を計上してございます。具体的には4つの事業に分かれております。長期インターンシップ・プログラム開発、これはまた次でご説明いたしますが、それからものづくり技術者育成、サービス・イノベーション人材育成、専門人材の基盤的教育推進プログラムと、この4つで構成されているわけでございます。一つ一つ見ていきますと、まず長期インターンシップ・プログラム開発でございますが、真ん中のところに書いていますのが条件でございますが、まずは3カ月以上の長期インターンシップを実施するもの、教育プロジェクトを正規の教育課程に取り入れたものであること、人物像・効果について大学、学生、企業が共通認識を持っている、さらに産学連携による具体的なプログラムであるとか、事前・事後教育を企業としっかり連携してやると、こういった条件に合うものを我々のほうで選定して実施しているものでございます。対象としては国公私の大学院ということで、平成17年度に20件、18年度に10件、合計30件の事業をやっているところでございます。趣旨でございますが、従来の就業体験や職業意識の啓発を目的としたインターンシップとは異なり、修士・博士課程の学生を対象に、産学が協同して、企業の現場を活用しながら高度専門人材の育成を行うというプロジェクトでございます。
 次はこの具体的な事例でございますが、例えば京都大学におきましては、インターンシップ科目を修士論文と同等のコア科目10単位分に設定して、学生全員が必修するという中で、派遣先の指導者を特任教員として委嘱して指導を行う。それから、企業だけでなく政府機関やNPOなど多様な場で研修を実施している。次に立命館大学の場合ですと、理系の大学院生がリーダーとなって企業と大学間を往復して、学部生をメンバーとするチームとともに半年間かけて課題に取り組んでいくという中で、リーダーシップをはじめ実践的能力、人間力をはぐくむ長期のインターンシップを実施するといった取り組み、岡山大学の場合には、やはりグループ活動によって最新の技術開発現場での技術課題に対しての解決策を検討していくと、こういった取り組みがされているところでございます。

 続きまして、ものづくり技術者育成の事業についてご説明いたします。大学においてこれまで主に講義中心で行われていた技術教育につきまして、地域や産業界と連携して実験や実習、講義を有機的に組み合わせた教育プログラムを開発・実施するというものでございます。定年技術者の大量退職でございますとか、工学部志願者の減少、こういったことを背景といたしまして、産学で連携して魅力あるものづくりのプログラムをしていくというのが事業のねらいでございます。
対象としては大学・短大・高専になっており、19年度、20年度で合計17件の採択をしてございます。
具体的な事例として、阿南工業高専と金沢工業大学の例をここに挙げさせていただいておりますが、時間の都合もございますので、こちらのほうはそれぞれお読みいただければと思います。

 続きまして、サービス・イノベーション人材育成ということで実施しておりますが、こちらは、産業構造が変化していく中で、年々、経済に占めるサービス産業の割合が増加し続けていると。一方で、サービス産業の生産性はアメリカなどに比べると総じて低いという状況にあるということで、ビジネス知識、IT知識、人文系の知識などの分野融合の知識を備えて、サービスに関して高いレベルの知識や専門性を有するとともに、サービスにおける生産性の向上やイノベーションの創出に寄与し得る人材を育成する教育プログラムを開発するという内容でございます。こちらは、対象としては大学の学部または大学院ということで、19年度、20年度で合計13件の採択をして、3年間という期間で実施しているところでございます。
 具体的な事例としては、こちらの大学を挙げさせていただいておりますが、こちらのほうもそれぞれお読みいただければと思います。

 続きまして、専門人材の基盤的教育推進プログラムについて説明します。こちらは生涯学習政策局の専修学校教育振興室が担当しているもので、直接私どもの課でやっているものではございませんが、基本的には、専門学校が中心になって企業と連携をして人材養成を図るものに対して支援をするというプロジェクトでございます。

 最後にITスペシャリスト育成推進プログラムでございます。こちらは、ここに書いてございますように、大学間及び産学の壁を越えて結集し、教育内容・体制を強化することにより専門的スキルを有するとともに、社会情勢の変化等に先見性をもって対処できる世界最高水準のIT人材を育成するための取り組みを支援するというものでございます。具体的には、各拠点が開発した教材等の洗練、洗練というのは、教材を集めて、それを他大学等が活用できるように改編することでございますが、そういった取り組みや、ポータルサイトを通じて教材を普及していくという、こういった拠点間教材等洗練事業を実施するというものと、それからその一環として、各大学が実践的なプロジェクト演習、プロジェクト・ベースト・ラーニングを遠隔で実施できる学習用クラウドコンピューティングの基盤等を整備するという内容になっております。実施拠点としましては、ソフトウエアの人材開発として6拠点、セキュリティ人材の拠点として2拠点、合計8拠点で実施しているところでございまして、こちらの対象は大学院の修士課程が中心となっております。拠点間教材等洗練事業についてもう少しご説明させていただきますと、右下の枠のところでございますが、先ほど申し上げた教材の改編等、ポータルサイトを構築する、著作権の問題等に対応できるようにガイドラインをつくる、さらにシンポジウム等によって広報を行う、それから教員の教育力の向上支援や社会人向けのプログラム展開、こういったものが内容になってございます。

 最後は事例でございますが、こちらも説明のほうは割愛させていただきます。

 事業の説明については以上になりますが、行政事業レビューというものが、今、各省庁で行われているわけでございますけれども、本日ご説明いたしました長期インターンシップ、ものづくり技術者育成、サービス・イノベーション人材育成、最後のIT人材育成、この4つにつきましては、この行政事業レビューの対象に含まれており、実は本日午前中の公開プロセスにおきましては非常に厳しい判定をいただきました。いずれにつきましても、判定者の方は8人いらっしゃったわけですが、要改善が4人の方、廃止と判定されたのが4人の方、最終的な判定としては、今、ご説明いたしました4つの事業についてはすべて廃止ということで判定がされているところでございます。これはもちろん最終的な事業の廃止という判断ではなくて、その公開プロセスの結果を踏まえて、また文部科学省の中でどうするのかということを検討していくことになるわけでございますので、今の段階で最終的にどうなったかというのを申し上げることはできません。しかし、そういう形ですので、少なくともこのまま23年度に事業が継続していくことはないということでございます。

 一応説明は以上でございます。

【西山主査】

 ありがとうございました。ご両名の説明は終了しましたが、改めてお伺いしておりますと、いろいろな取り組みが非常に多岐にわたって相当数されていることがよくわかりますが、全体を含めて討論させていただきたいと思います。もちろんご質問、ご意見等を伺いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

【柘植主査代理】

 質問の話ですけれども、今の主査の課題設定は我々の問題でもありますが、今、資料2で説明を受けた中で、資料2の表題「産学連携による人材育成について」というところ。これは、多分この上位には、渡辺室長がおっしゃった、最終的には国を支えてくれるいろいろなタイプのイノベーション人材を育てなければいけない、そしてやはり研究を推進していく、その中に当然教育が絡むと、こういう教育と研究とイノベーションの三位一体で、さまざまなイノベーション創出に必要な教育、人材育成をしなければいけない。そういう位置づけだと思うので、さまざまな観点からさまざまなプログラムがされていて、我々の整理の前に、先ほど枝さんがおっしゃった事業仕分けの厳しい判定に立った、彼ら・彼女らの論理を知りたいです。
 我々の論理を固めないといけない時期が来たと、これがまさにこの基本戦略小委員会のミッションだと思いますが、このままだと確かにご理解不足ではないかなというおそれがあります。そのあたり、どういう論理で中止とか、見直しとか言われたのかを教えてほしい。

【枝専門教育課課長補佐】

 説明が不十分で大変失礼いたしました。産学連携による人材育成の事業自体が不要だということではございませんが、その判定の理由としましては、例えば事業の評価がしっかりと行われていないということでございますとか、こういった補助事業としてやるべきものではなくて、本来その基盤的経費の中で、経常経費として実施すべきものではないかといったご指摘でございますとか、あるいは、その成果の普及の取り組みが十分でないといったことも本日の中では言われておりました。

 また高度IT人材の育成に関しましては、育成される人材は給料の高いIT企業に入っていきますから、そういう人は受益者負担でやるべきであって、国がそういう人にお金を出すべきではないのではないかと、そんな理論もございました。私は全体を通して見ていたわけではないので、後半30分ぐらいだけ見た中での結果を、今、申し上げたわけでございます。

【西山主査】

 評価に際して、人材育成をやっている取り組み自体が抜本的にだめだということではなくて、必要性は認めているけれども、やり方が不十分であるとか、補助的ということはなくて、むしろ骨格の中で考えたほうがいいとか、そういうイメージでしょうか。

【枝専門教育課課長補佐】

 失礼いたしました。あくまでも事業として、この個別の事業について廃止という判断でございます。

【土屋総括審議官】

 いわゆる各省庁の事業仕分けと言われている行政事業レビューが、今朝から明日まで2日間にわたってあります。それで、今回対象にしている事業については、主査がおっしゃったとおり、今の事業についての改善・改良点があるもの、すべきようなものという観点から選んで議論していただいて、きょうの議論も、いわゆる国民の視線というか、目線というか、そういうことで見ていただくと。その結果を踏まえて、私ども、最終的には文部科学省の三役と来年度の概算要求をどうするかという意思決定をやっていく、そのプロセスの一環で本日のようなことが行われていると、こういうご理解をいただければと思います。

【西山主査】

 ほかにありますか。

【柘植主査代理】

 先ほどの枝さんへの質問は、さっきも触れましたけれども、我々の基本戦略小委員会の実は命題そのものだなというふうに自分に言っているのです。すなわち、例えばこの各プログラムの事業の評価がはっきりしていない、逆に言うと、我々の基本戦略小委員会からすると、資料2の表題にあるように、産学連携によって人材、これは手段であると思うんですけれども、どんな人材を育成するんですかということがきちっとディファインされているか、それでそれが、各プログラムをしたときに、できるだけメジャラブルにどういう形でその投資効果を図れるか。これは難しい話ですけれども、そういう基本戦略があるなと。

 それから、基盤的経費は補助ではないのではないか。これは、私も産業界のほうにいて感じているのは、大学における人材育成の話が、本来の教育の中に入っているべき、例えば博士課程の後期の教育研究の中に本来入るべきものが、たまたま補助事業みたいなものに入ったから、そのお金がある間だけは一生懸命育てましょうと、終わってしまったら、また本来の多方通行的と言っては怒られるかもしれないけれども、教育プログラムだけに戻ってしまうと、こういう体質ではだめなのではないかと私は個人的にずっと思っていて、それが行政事業のレビューから見ると、補助ではなく基盤経費ではないか、本来の教育の中なのではないかとか、そういう話が、この基本戦略小委員会の大きな命題だなと思います。

 もう一つは受益者負担の話で、高度IT人材ですね。これなんかも、やはり国がやるべきことと、それからまさに競争原理のものですべきものという産学連携の仕分けですね、このあたりも、我々の基本戦略の非常に大きな分かれ目ですね。それに対して我々は、しっかりこうだということを見せることができない限りは、行政事業のほうから見ると、かなり厳しい評価を受けざるを得ないなと感じた次第です。

【 西山主査】

 私も今同じように感じています。仕分けがあろうがあるまいが、人材育成というのは本来時間がかかるもので1年、2年やったら、はい、こういう人ができて成功でしたとか、そういうものでは本質的にはないわけです。だと思われます。人材の育成には時間がかかりますが、このプロジェクトでいう事業としての人材育成のエンドポイントがどうなるかということが、重要だと思います。どのくらいの時間がかかって、最終的には、どのようなことになったかを、成功ということを、具体的にしないと、評価がしにくいと思います。入口の説明のみで、最終的なゴールが明示されていないのは、事業仕分けにかかったときには、決定的な欠点となります。
ですから、その辺がこれから一番大きな、我々が取り組む非常に重要な課題ではないかと思います。いろいろな取り組みがたくさん多岐にわたってあるけれども、もちろん一つ一つが悪いなんてだれも思っていないけれども、それがどうなるのかということが、いまいち不足しているという問題意識があって、今後その辺をどうするかということが課題ではないかと私は思っています。

【竹岡委員】

 多分、今、西山主査のおっしゃったことと結論としては一緒になるのかなと思っているのですが、基本的に、今のお話を聞いていても、多分仕分ける側の人には、現状認識と危機意識が圧倒的に足りなくて、私はいろいろな大学のことをやっていますが、この高度IT人材育成で、今実際に何をしているかということも知っています。日本はシステム系のソフトウエアの輸入、これは、去年の内閣府の知財専門調査会でも言ったことがあるのですが、たしか1対100で圧倒的な輸入超過です。ものづくりとかいっても、設計は全部ソフトウェアでやっている時代になっていて、日本の自動車会社とかが軒並み欧米系のソフトウェア会社に巨額のライセンス料を払わなければいけないぐらい、日本というのは要するにIT系技術者が足りない。そのようなIT系技術者をどうやって育成していくかということは、これは企業側にとってもものすごく大事なことですが、それをなかなか企業だけではやりきれないからこういうのがあるという。もしかしたら、この表題からして「高度IT」とか、それに「受益者負担」なんていう発想が出てくるのは、言葉が美し過ぎるからで、非常に危機的な状況に日本があるから、足りない人材を何とか育成していかなければいけないのだという感じが真実なのだと思います。だからそれは、まさに西山委員がおっしゃったように、なぜこれが必要なのか、非常に危機意識に基づいたものがあって、そして最後にエンドポイントが出てくると思います。文部科学省さんもそうだし、経済産業省さんもそうですけれども、最初、政策が出てくる時点では、そこがねらっているものはとてもいいんです。ところが、その政策がだんだん形になって整備されていく途中で、言葉がすごくきれいになっていくんです。そしてもう一つは、先ほどの目的、何でこれが必要だったのかという目的と、だから最後、エンドポイントはここに行くんだというところが、なぜか政策の説明の中で切られてしまう。つまり、今度これをどうやりますか、だけの話になってしまうので、そうすると、これは一体最初は何を目的でやったのというところが非常に見えなくなっています。言葉が美し過ぎて、それで先ほどのような、結局大事なところが理解されないというパターンを、どの省庁さんもやっているような気がするので、ぜひ文部科学省さんはその轍を踏まないようにやっていただければなと思いました。

【西山主査】

 渡部先生。

【渡部委員】

 事業仕分けの話は非対象なので、あまりコメントしてもしようがないのですが、少しプラクティカルなことで、私はこういう人材育成事業みたいなものは、2000年のちょっと後、科学技術振興調整費の知的財産人材育成でやったことがあります。その当時は、たしか所轄はこちらだったと思いますが、これはどういうアウトプットが出るんですかとものすごく厳しく指導された記憶があります。5年間でさんざん言われて、最後、明治時代ではないのだから国費でこのようなものをつけるというのは意見もいろいろあるとか、いろいろ言われながら作文を考えました。ほんとうに人材育成だからアウトプットをどのように出していくかを考えてやった覚えがあります。そういうものを多分今でも当然やっていらっしゃるはずですが、資料を見るとそのようなアウトプットのイメージがあまりありません。恐らくそのときの私のもので、要は、このようなことをやったというのはほんの少しで、結果がこうでしたというものを非常に多く求められているので、多分同じようなことをやっていらっしゃると思いますが、その辺が今後はむしろウエートがずっと重要になっていると思います。そこがこういうときに結構差が出てしまうのではないかという気もします。

【西山主査】

 ありがとうございます。

【秋元委員】

 これは文部科学省さんではないのかもしれませんが、結局人材育成の目的というのは、非常に単純に言うと、そういう高度な人材を日本で確保して、日本のために役立たせるというところが出口だと思います。これは分野が違ってもそうです。そうすると、評価の問題にしても、例えば地域のそういうプログラムであるとか、あるいはインターンシップであるとか、そうすればそういう人材が日本でどれだけ確保できたかというのが非常にメジャラブルにはかれると思います。そのときにやはり考えなければいけないのは、もしほんとうに高度な人材がいたとしたら、あるいは教育できたとしたら、その人たちがほんとうに日本でやりがいがある職について、それに見合ったような報酬なり待遇が得られるかどうか。ほんとうに高度な人材であれば、もしかしたらアメリカに行ったら倍の給料で、というような環境があるわけです。でも逆に、そういういい環境があれば、アジアからでも、あるいはアメリカからでも人が集まってくるわけです。ですから、やはりこの人材の育成というのは1つの入口であって、最終的にはそれを日本として確保するというところに目標点がないといけないのではないかと思って、私はいつも「人材の育成」というと反発して、「人材の育成と確保」ということをきちっと考えたらどうかと思っております。

【西山主査】

 どうぞ。

【土屋総括審議官】

 すみません、あまり役所がしゃべってはいけないのかもしれませんが、ご参考までですが、今いろいろと議論があって、人材養成において企業が担うべきことと、学校教育でどこまでやるかと。これは、きょうは産業界の委員の方がたくさんいらっしゃいますが、以前は企業内教育で相当の部分をされていたことが現在されていないという社会、経済の変化もあるわけです。もう一つは、今、秋元委員がおっしゃったように、日本社会自身が、能力を評価しないで肩書きで評価する社会、ここは変えないといけないという意見が長い間あると思います。その辺も踏まえて、これは雇用対策の議論として今出ているのですが、学校教育と職業能力のリンク、リンケージをきちんと整理しようと。イギリスでも例がありますが、そういうものを模範にしながら、学校教育と職業能力との関係を整理することによって、今、議論がありましたように、その達成目標みたいなものはおのずと明確にはなってくると思います。これは全体の整理学だと思います。
 個々の事業については、きょうの事業レビューでいろいろご意見があったわけで、何をなすべきかという、そこは我々として改善しないといけないと思いますが、全体の流れとしては、職業教育、職業能力、雇用ということと、教育のブリッジがだんだんかかりつつあるということを報告させていただきたいと思います。

【西山主査】

 どうぞ、石川先生。

【石川委員】

 秋元委員のおっしゃったことに全面的に賛成ですが、私は情報系で、情報系の人材を育てていますが、日本の大学の育てている人材が欧米の人材に劣っているということはありません。ところが、それが企業に行くと低い評価を受ける。これはなぜかというと、企業側の需要が適正な需要になっていない。供給だけをいくら増やしてもどうにもならなくて、例えばうちの内部でつくったITスペシャリストの人材をアメリカの西海岸へ送り出してマイクロソフト、アップル社などそのようなところで評価を受けると、これは非常に高い評価を受けているのですが、日本では評価を受けません。だから、秋元委員がおっしゃるように、日本ですごく適切なる職業教育をしたとしても、あるいは即戦力教育をしたとしても、持っていくのはアメリカの会社です。日本で需要がないんです。そこが一番大きな問題であって、日本の需要を喚起していかないと、いくら人材の供給、人材育成をしたところで、そのサイクルは回っていかないと思います。
 ちなみに、あまり言ってはいけないのかもしれませんが、うちできちんと育てた優秀な学生の多くは外資系に行きます。その他にはコンサル、金融へ行きます。このような学生は、ほんとうに行ってほしい国内の情報系の企業は行きたがりません。
 これは、秋元委員もおっしゃっていたことに私も同感ですが、欲しい人材に関しては給料を倍にすれば、こんな事業は何1つ要らないと思います。学生はそちらに必ず流れるし、それに必要なスキルを大学で学びます。学ぶだけの教育は我々がしておりますので、大丈夫だと思います。だから、企業側と大学が何を話さなければいけないかというと、教育の内容、教育課程の中身の話ではありません。需要と供給のバランスをどういうところでとるかということのほうがものすごく大きな問題で、需要の大きい、供給の少ないところに関しては、給料を倍ぐらいあげないといけないのではないかと。実際になぜ外資系に行くかというと、スキルの高い学生は給料を求めていきます。それだけの話ですから、そこに合った需要と供給のバランスをとるようにすれば、この問題は大きな進歩というか、解決すると私は感じています。

【柘植主査代理】

 ちょっと補足です。石川委員のおっしゃった話は、東大が生み出している大学院修士課程あるいは博士課程後期、これはかなりの率でそう言えると思います。しかし、日本の全部の今の産学官連携による人材育成の問題は需要と供給だけの問題かというと、そうではないことをやはり我々は認識しなければいけないと思います。
 博士課程修了者の7割は産業に行かないといけないところを、日本は、今、生み出しているわけですが、その7割が、東大が生み出しているような人材レベルだけではないために、構造問題も含めていろいろ問題を起こしているわけです。ですから私は、石川委員のおっしゃった話ではないものも我々の工学系の人材育成の中にあるということも、やはりリマインドしたいと思っています。

【森下委員】

 我々バイオ系でも柘植さんと同じ話があって、基本的にはプロジェクトリーダーになるような人というのは、大学であれ、企業であれ、優秀な人材であればどちらでも通用するというのは本当だと思います。それは別に日本であれ、海外であれ同じです。ただ裾野を考えると、やっぱりそのリーダーになれる人材の10倍ぐらいの人数がものづくりの技術者にいないと、実際にはいくら言っても人材ができてこない。特に医薬品なんかは、GCPとか、GMPとか、非常に細かいスケジュールが決まっているので、そういうことを全部組み立てられるだけの人材が、結局周りの人たちと一緒にいなければいけないのですが、これは、そのトップ人材を育てるだけではないので、非常に難しいところがあると思います。
 それは逆に言うと、裾野が拡大しない限りものづくり産業というのは根づかないというのは、これは別にバイオ系であれ、IT系であれ、どこでも一緒だと思います。そういう意味で、今一番日本で必要なことは、そういう裾野の拡大というところであって、今回のプログラムなんかは、地方の大学や私立大学がたくさん入ってはいますが、やはりその辺が拡充されないと、多分日本としての技術が上がらないということになると思います。
 おそらく今回の人材育成の目的の1つはそこにあるのだろうと思いますので、そうした意味では、そのトップを育てるという部分と、以前から始まっている裾野をいかに底上げしていくか。目的としては今回裾野を拡大していって、底をいかに上げていくかだと思います。大学院を出ても卒業できないという人が圧倒的に多く、それは、企業に要らないと言われるのはやっぱり裾野としてのどういうふうな人材が必要かというところがまだちょっとぼやけている。それをはっきりさせようというのがこの人材育成プログラムだと思うので、そういう意味では、かなりいいものもあると思います。
 ただ、先ほど話がありましたように、そういうのは、なかなか数字での測定は難しいんです。どちらかというと、言ったことを理解してちゃんとできるかどうか、その中でどれだけいわゆる改善ができているかという話だと思うので、今までのように数字だけでやっていくということをやるだけでは成果はなかなか見えてこないということになりやすいですし、多分それが実際に評価されるのは5年、10年先の話だと思いますから、その辺の目的意識をもう少し明確にして、何をするためのプログラムかがはっきりしていれば、もう少し仕分けに対しての理論構築もできるのかなという気がいたします。話としては、常にトップ人材の話とその裾野の底上げというのはどうもごっちゃになっている傾向が多いので、そこを今回は明確にしていくというのも1つの手ではないかと思います。

【竹岡委員】

 やっぱり企業側が、共同研究もそうですが、景気の問題もあって、先ほどの産学連携におけるシステムの中での人材育成という面に、企業側がお金を出すということが、今かなり厳しい状況です。企業側が本来自前で人材育成する力が今はなくなっていて、なおかつ、それを大学でやっているというときに、大学の取組みにお金を出すだけということについても及び腰であると。逆にお金の出し手が日本企業ではなくて海外企業、もしかしたらほんとうに海外企業ばかりになってしまうかもしれないと、日本企業の及び腰度を見ていると、そのような感じがします。
 ただ1つ大事なのは、もしかしたらアプローチの仕方として、まだ十分に企業側に、啓発する取り組みが弱いのかもしれない、文部科学省さんの所轄になっているので、そういう面もあるのかなという気もちょっとしていて、だから、できる限り企業側、例えば経団連とか、商工会議所とか、いろいろあると思いますが、そういうところに、こういうことを今やっているんです、と紹介してそのご意見を聞くようなやり方とか、できる限り企業側が賛同し、参加し、企業側から今度は評価してもらうというプロセスをつくると、この役立ち方というのもよく国民に見える形になるのではないかなと思いますし、企業側がもっとこういうものに対して、お金を出していくということも出てくるのではないかなと思います。

【西山主査】

 ありがとうございます。

 私の石川先生に対しての意見ですけれども、今日本で一番高度な教育を受けている博士であったりしても、トップレベルと、中間レベルと、あまりさえないレベルと、いうふうに分けられます。そうすると、構造的に、いつの時代でも、もともとトップレベルの人は問題ないのです
 したがってトップレベルの人を議論してもあまり意味がありません。本来的に構造的に問題はないからです。 石川先生がおっしゃったように、他国企業がそのトップレベルの価値を認めて大変お金を弾むけれども、日本企業においてはそれは弾まないということだとすると、企業に問題点があると言えます。 一例で申し上げますと、私どもの企業も、グローバルに活動しています。そうすると、フランス人とかアメリカ人をもその地域の経営の責任者として採用していますが、より職位の高い日本人よりも、高い報酬を支払わないと来てくれません。
 採用するときに、採用時点で能力の高い人に、より高いお金を払うというところが、本社部門では、硬直的な面であります。現場ではそれでもとりたいということです。
 ここで議論している最も高度人材のドクターではトップレベルの何%の人を議論するのではなくて、最下位の何%もあまり議論しても無駄だと思いますけれども、中間層で一生懸命努力している大多数のマスの人がどうなっていくのだということを基盤に置かないと、話がずれてしまうと思います。

【柘植主査代理】

 今の西山主査のお話プラス竹岡委員のおっしゃった話の延長の中で、この基本戦略小委員会としての今後のアクションプランといいますか、戦略の立案の視点として意見を申し上げたい。さっきからの議論で、とにかくトップを育てるのと、裾野というのは、まあ、真ん中ですね。充実・拡大という形で、どういう人材を育てるかというのはやはりスペクトルがあると。それは両方ないと、この命題は、すべてが日本のイノベーション創出能力を強化すると、こういうことになっていくと言い切っても多分過言ではないと私は思うわけですから。
 一方では、さっきの話で、行政事業レビューでも厳しく言われたように、見方は、今の状態だったら、行政事業レビューから見るとそういう判定をせざるを得ないのも多分我々は認めざるを得ないところがあると思います。どうするかというと、さっきからの議論の中で竹岡委員は、産業界も入ってと。私も賛成です。ただ一方で、私も産業界の経験から、アメリカの産業人のトップと大学のトップとでBusiness Higher Education Forum がありまして、あそこの一泊合宿に私どもは参加したのですが、産業人のトップは大学の目線で大学をいかに強くするかということをほんとうに考えてくれた。それと彼我を比べてみると、私も元産業人の一人として、まだ日本は後進国と言ってしまうと経団連から怒られるかもしれないですが、大学の目線になって、ほんとうに一泊してでも大学をいかに強くするかというところにまだ来ていない。しかし私の結論は、とにかく産業も一緒になって、今のこの問題、トップもミドルも育てていく話に対してこれだけ大学が努力しているんだから、あとどこを直せばいいのかと、こういう話が我々の戦略小委員会の中で1つの大きな提案になると思う。そうなったときに、さっきの資料2でも説明があったように、産学人材育成パートナーシップ、結構、平成19年からこれをやっているんですね。かなり組織的に、かつ科学から、バイオから、すべての理学・工学のスペクトルをカバーしている分科会、この活動がはっきり言ってまだ十分ではないということです。この活動が十分ならば、行政事業レビューに対して答え得る論理を我々は持っています。だから、やはり近道は、これだけではないかもしれませんけれども、せっかく産学人材育成パートナーシップのスキームが動いているわけですから、1つはここに今日のようなイシューを載せて、大学と産業界も一緒の目線でどうするんだと、こういうのが充実したアクションプランとして価値があるのではないかと私は思います。

【西山主査】

 ありがとうございました。

 じゃあ、本件、もう一つ議題がありますので、次の議題に移ります。

【石川委員】

 トップのことばかり言い過ぎたようなので、中堅の話もします。今の柘植委員のおっしゃっていることは正しくて、それをやるためには何をやればいいかというと、これは産業界と大学が一緒になって、日本の今後の産業構造がどうあるべきかを議論しなければいけない。これは、今を是認した中での産業の人材需要分布というのをやってしまったのでは、現状維持か後退しかありません。これを、次の産業につながる人材を、産業界側は需要を喚起し、大学側は供給を喚起して高いレベルへ持っていかなければいけない。特にアメリカ型の人材の需要というのは、ものづくりの下のほう、つまり何か与えられたものをつくっていくだけという人材は全部アウトソーシングして、別の国に行っている。日本が昔一生懸命頑張って、何かやればできたという人材をやっているだけだと、他の国、韓国、中国、台湾なんかに負けてしまう。じゃあ、どういう産業構造をつくればいいかという議論が1つあって、そのための人材として何が需要として必要なのかという議論があって、それに合わせた供給をすると。これを両方がやっていかないと、現状維持の人材育成あるいは供給と需要をやっているだけの話になってしまいますので、そこを一緒に考えていくという意味で、柘植委員のおっしゃっていることに私は賛成です。

【西山主査】

 ありがとうございます。

 次の議題に入ると申しましたが、1つだけ言わせてください。石川先生がおっしゃることは王道だと思います。だけれども、将来のことを予測していく、見合うということではなくて、既に今の段階で、現状でも、ドクターは今までのマスと違ってひと味違う存在であるということを主張するべきだと思います。それには、まだ大学の教育自体も、主としてアカデミアで来たのですが、産業界も含め、要するにドクターというのは、欧米先進国では、理工系のドクターから出発したとしても、至る分野で活躍しているんです。ですから、日本において、マスコミに入っても金融界に入っても行政に入ってもいいわけです。いろいろな活躍分野がある。私がいつも言っているのは、ドクターに来てくださいといってR&Dをやってもらうのですが、生涯研究を継続することは、ほとんどありません。例外的な人しか、一生、60歳までずっと研究を続ける人はほんの一握りしかいません。みんな適時に職場替えしています。だから、企業はそういう仕事の仕組みになっていることを分かって、企業に参加をしてほしいものです。

 次の議題に入らせていただきます。言いっぱなしで恐縮です。議題の2のリサーチ・アドミニストレーターという、何かニューワードみたいですが、育成・確保についての議題に入りたいと思います。

【渡辺技術移転推進室長】

 資料1の18ページ以降で説明させていただきます。時間が押しておりますので、簡単に説明させていただきたいと思います。

 現在、こちらのスライドが示してございますように、この枠にございます、研究者の平成15年から19年度にかけての研究時間が、全活動時間が増えているにもかかわらず、非常に激減してきていると。資料1の、今、19ページを説明させていただいております。研究者の活動時間に占める研究時間の割合が顕著に減少しているという状況がございます。したがいまして、研究マネジメント体制の充実による研究環境の改善が必要であろうということでございます。特に競争的資金は最近非常に増えてございます。そういった外部資金の獲得や管理、産学官連携等のプロジェクトの運用には高度なマネジメントが必要であるということで、マネジメント業務をサポートする専門的な人材の配置が課題となってございます。

 次のページでございますが、各種会議におきましてもリサーチ・アドミニストレーターの必要性が提言されてございます。例えば総合科学技術会議の「科学技術基本政策策定の基本方針(素案)」でございますとか、その下の総合科学技術会議の「研究システムワーキング・グループ中間まとめ(案)」、知的財産戦略本部の「知的財産推進計画2010」、それから旧7帝大と早稲田、慶應による9大学長による新成長戦略、科学技術基本計画策定等に向けた緊急提言におきましても、リサーチ・アドミニストレーターの育成、確保が重要であるという旨が多々提言されているところでございます。そもそもリサーチ・アドミニストレーターとは何かということでございますが、米国におきまして定着している制度でございます。米国の大学において、リサーチ・アドミニストレーターは、pre_award、競争的資金の申請までの業務、それからpost_award、競争的資金の採択後の業務でそれぞれ大まかに業務が分かれてございます。その具体的な業務が左下の枠にございます。米国におきましては、右下のグラフにございますように、上からNIH、NSFと書いてございますが、こういった競争的資金が、1970年代以降、急激に増加してきております。それにあわせてリサーチ・アドミニストレーターの必要性が叫ばれてまいりまして、1959年にリサーチ・アドミニストレーターの団体であるNCURAが設立され、その後1993年に資格認定をしておりますRACCが設立されるなど、研究資金の増加に伴ってリサーチ・アドミニストレーター対象の整備が進められてきているところでございます。米国におきましては、リサーチ・アドミニストレーターを研修や情報共有を促進するための職能団体として、National Council of University Research Administratorsという団体と、リサーチ・アドミニストレーターの能力を保証するResearch Administrators Certification Councilという団体がございます。このように職能団体と資格認定団体とが努力をして、リサーチ・アドミニストレーターの体制、それからそのリサーチ・アドミニストレーターのキャリアの専門性を確立してきたという経緯がございます。我が国におきまして、同様にスキル標準や資格認定が定まっている例といたしましては、23ページでございますけれども、知的財産管理技能検定というものがございます。こちらは知的財産教育協会が実施している検定でございますけれども、知的財産の創造、保護、または活用のための業務を行う技能、それから、それに関する知識の程度をはかる試験といたしまして、経済産業省の知財人材スキル標準というものに準拠して資格認定の試験が行われているところでございます。

 次のページでございますが、産学官連携の支援人事に関する課題といたしましては、大学等関係者を対象とした調査結果によりますと、産学官連携の支援人材について、資金面をマネジメントできる人材の不足、特許関連業務や企業との連携調整等を担う専門人材が必要、大学・企業の間を取り持って研究・開発を組織化できる人材が必要といったことが課題として挙げられてございます。

 次の25ページは、立命館大学におきましては、学科ごとに職員がテクノプロデューサーという形で配置されて、担当学科の全教員の研究活動を把握して、1人の教員のシーズの発掘から事業化までを一貫してマネジメントする研究室エージェント制というものを取り入れているところでございます。

 こういったことを踏まえまして、論点といたしましては、リサーチ・アドミニストレーターに期待する具体的な職務内容は何か、リサーチ・アドミニストレーターのキャリアパスはどうあるべきか、リサーチ・アドミニストレーターの雇用・育成に向け、国はどのような施策を行っていくべきかということを議論していただきたいと思います。

 以上でございます。

【西山主査】

 本件、リサーチ・アドミニストレーターに係る現状と課題について、本日は高橋先生にお越しいただいておりまして、ご説明をいただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

【高橋先生】

 理化学研究所の高橋真木子と申します。お時間ありがとうございます。私はリサーチ・アドミニストレーターという肩書きではないのですが、多分これからお話しする私の仕事がこの議題に合ったものかと思いますので、事例提供として自分の経験をお話ししたいと思います。

 ポイントを5つにまとめたのですが、先のご説明にありましたので1.2.のあたり、リサーチ・アドミニストレーターとは何かといったそもそものディフィニション、必要となる背景というあたりは割愛させていただいきます。今日は今の議論にもありました、全く白地のゼロから始める仕事ではないというところの既存の業務との整理と、4.がメインになります。具体的に私が担当した仕事を通じて、先ほどトップじゃなくてミドルもという話でしたが、ここはトップの話を、トップの研究者の活動対してどんな機能が必要で何が未だ埋まっていないのかというあたりの必要な仕事をご説明したいと思います。それから、そこから示唆されるものとして、課題等の今後の話をさせていただきたいと思います。委員の皆様方のバックグラウンドが多様でいらっしゃると聞いておりましたので、パワーポイントは参考資料的な面も含め情報満載でございます。これからの話は省略するところもございますので、プレゼンのほうをごらんください。

 まず、リサーチ・アドミニストレーター(RA)の定義ですが、研究機関に所属してこういう仕事をやっていく人というのが大ぐくりの定義、アメリカでは15万人いるとも言われています。下の赤枠の中は、最近日本でもいろいろなところで話題になっています、という話です。当然皆様ご承知のように、RAが居ないとどうなるのかという消極的な面で言うと、図の上のほうで、まず研究者がすごく困るという話と、国のお金を有効に使うという観点からも、RAが機能しないとちゃんと動かないという問題があります。このパワポはこれについてまとめております。
 次の図は、もしちゃんと機能するとどうなるかというポジティブな面からまとめました。良い点の1つ目は、研究者がやりたいところに専念して、忙しいのは当然忙しいけれども、質のいい忙しさができるはずだということが1つ目。良い点の2つ目としては、研究費の有効活用という観点から、研究者が所属する機関、大学や研究機関にとっても重要な機能であるということ。3点目として、こういうことを仕事としていくのもおもしろいキャリアではないかということです。私は2つの国立大学で研究推進支援に関する仕事をしてまいりました。いろいろな施策をプランする方たちから見ると、例えば人材育成やグローバルCCE等いろいろな拠点形成の事業がありますが、一方事業を受ける大学のほうから見てみると、研究教育資金の性格によって少し違う視点で整理できると思います。1個目の研究内容重視の案件というのは、一番代表的なものが科研費、簡単に言うと研究で勝負するものというふうに言えると思います。これは規模の多寡を問わずに、研究内容がよければ基本的にはそれで運営されていくものです。これが1つ目だとすると、きょうの最初のお話の人材育成とか、地域連携とか、いろいろな形での研究プラスアルファの研究資金、外部資金というのが2つ目に区分され、今この資金が増えており、多くは産学官連携関連の事業としてカテゴライズされるものだと思います。
 もう一つ、3つ目が、2、700億円の補正予算のことでもとても話題になりましたが、いわゆる年間数億円以上で回る大きな案件、大型案件で、これも昨今事業としては増えていると思います。この3つ目の事業は中心的な研究者がいかに活発に動いても、当然それだけでは回らなくて、いわゆる組織が運営するという組織力というものがすごく問われてくると思います。2つめのものも組織力は必要ですけれども、少し違う性格を持っていると思います。今、このような多様な事業趣旨の研究教育資金を日本の大学ではどういうふうに運営しているかということを図の真ん中に示しました。実際には大学によって組織形態は異なりますが、研究協力部とか、経理部とかで公募情報をとってきて、申請書を出して、受かればそれをきちんと履行していくという部分をそれぞれのセクションが分担している、という整理です。それに加えて成果活用という観点から言うと、知財部やTLOがそこに関係してきます。それを、さっきお話があったアメリカではどう行われているか、が図の右側になります。競争的資金、特に政府系資金に関して言うと、事業が採択された後をpost_awardといい、報告書や経費の適切な執行が中心業務です。一方申請書を一緒につくり込んでいくところ、特に研究だけじゃなくて事業趣旨を踏まえて一緒に考えていくところというのをpre_awardと言い、とりわけここの部分が、昨今より重要になっているといわれています。
 このような業務を行うためにどういうスキルが必要でしょうかというので、アメリカのNCURAが、pre_award、post_awardの必要とされるスキルを整理しています。要は採択されるまでの申請書を書く段階で必要なスキルというのと、それをちゃんと運営していくスキルは少し違います。このスキルについては、アメリカではcertificationがあるそうです。
 では、職務の区分の次に、対象とする研究者もいろいろいるので、それぞれに必要な業務も異なることから、こちらもあえてカテゴライズしてみました。
 若手のポスドクの先生方から、助手を経て、中堅、准教授、教授、そして複数のプロジェクトを運営する上でのスター研究者、さらに日本の数十人ぐらいのカリスマ研究者というふうにあえて分けてみると、当然のことながら、その人たちに対するサービスというのは各々変わってきます。これらを支える業務、組織も2つに整理できると思います。一つは、基盤的に支えるもの、これは既にどの大学でも、業務の名前は違っても、行われているものです。それに加えて2つ目は、相手毎に異なってくるカスタマイズされた業務があります。若手であれば、まず申請書はこういうものがあるとか、その書き方とか、カリスマに対しては全く違う、そのほんとうにやりたいことのために必要な体制づくりというのは何かというあたりをそれぞれ個別に提供していく必要があるわけです。これは東北大の共同研究件数と金額のデータですけれども、研究者が2,700人いますが、外部資金で研究活動をしている研究者は偏在しているという傾向が明らかに出ている、というのが判り、研究者のステージや活動の種類に併せたRA機能が必要ということが理解できると思います。これは2007年ですけれども、2004年以降、ほぼ同様です。

 では、次に非常にアクティブな研究者がどういう活動をしているかということを3つの事例でご紹介したいと思います。ご紹介する事例を理解する背景として簡単に自己紹介しますと、マスターをとった後、最初の10年間、いろいろな研究者を対象にいろいろな研究推進支援をKASTという財団でやってきました。その後、法人化の直前の東工大に入り知財本部整備事業で雇用され、知財ポリシーとか共同研究契約の大学全体の基盤づくりを経験しました。またNED0の大型の産学によるプロジェクトを、企業と一緒に準備して申請していくところを担当しました。これが1件目の事例になります。その後、この3年ほどは東北大で研究担当理事のもと学内連携や研究コンソーシアムをつくっていくような仕事をやっていました。その時の経験を2件ほどご紹介いたします。

 最初の事例は簡単に言えば研究開発を中心とするもので、事例2と3は、研究開発自体ももちろんアクティブで大規模ですが、それに加えて大学の通常のルールでは難しいところを企業と一緒にやっていこうという試作ラインを作る取り組みや活発な研究者の研究室ベースの活動の紹介になります。まず事例1のNEDOプロジェクトは水平垂直型です。新規部材の開発なので、特許が非常に必要と言われていました。部材をつくる側だけではなくて製造装置メーカーも入っているので、特許をはじめとする知財に関する位置づけが企業によって違います。この辺りをどう調整するか、というのがポイントでした。細かい知財の話は割愛しますが、少なくともこのポンチ絵にかいてあるような、プロジェクトのプレーヤーとしての部材メーカーと製造装置メーカー、それからそれぞれの企業の子会社や海外展開も視野に入れてプロジェクトのメンバーとそれ以外に対してどうルールを設定していくかを調整します。この時一番大切だと思うのは、研究者がどういうことをしたくて、事業趣旨にそれがどのぐらい合っていて、企業側はそれについてどのぐらい同意して一緒にできるかというあたりのバランスだと思います。簡単に整理すれば、多分仕事は2つに大きく整理されます。1つは研究体制の整備、これは学内で特区的に動かすために、人事、経理、施設、部局と中央執行部と調整していく、プロジェクト運営のための学内調整です。2つめはコアになる知財マネジメント、これは当然企業や委託元の機関との調整にも含まれると思います。この新規部材の研究開発に関して言うと、このタイプの研究開発を大学でやって、果たして学術的にも価値が高くて、アカデミックにも勝負できる成果が出せるかというところに課題があります。答えは、多分難しい、というのが妥当だと思います。産学連携にはいろいろなタイプがあって、学術的にも勝負できる成果をどんどん出せるものもありますけれども、このタイプのものは、よい論文というよりは特許や、もう少し具体的に課題を解決するための研究開発の部分が多くなってくる。ですから、こういうタイプのプロジェクトに関して言うと、研究者は何をモチベーションとしてやっていけばいいのかとか、そこら辺が難しくなってくると思います。

 次の事例2というのは、研究開発プラスアルファのプラスアルファ部分が、研究拠点構築にむけてという大きい取り組みのものです。これも多数の企業との水平垂直連携で、装置メーカーや、あと海外の研究拠点との連携も入ってきています。
 このプロジェクトではまさに研究開発と知財マネジメントだけではなくて、それを大学で運営していくために何が必要かということから検討が始まりました。最初の研究をコアとすると、周辺領域、例えば人材育成だったり、試作ラインを学内で動かすためのルールの整備だったり、施設管理、例えば光熱水費や場所も含めた調整なども必要になってきます。もちろんこれは大学だけでは動かないので、初期投資をして参画している企業と、最終的には研究拠点としてオープンにしたいというゴールを踏まえ、知財や研究成果の利用について当初メンバーへのメリットを考えながら段階を分けてルールをつくっていきます。そのようなことをこのMEMSの分野でやりました。
 この2つの事例はいわゆる大型の研究開発プロジェクトですが、大学の中でこういう仕事をしていると、実はこういうのが一番よくあるタイプだと思うのが、最後に紹介する3番目の事例です。これは私が経験した中でも最もアクティブな事例の一つですが、研究推進支援機能を考えるとき、研究室ベースの視点も必要ではないかと考えご紹介します。2002年に教授職として着任した非常にアクティブな研究者の活動事例でを時系列で説明します。まず着任してすぐ共同研究が数社と開始されました、当然これだけでも結構、研究課題や知財についての調整は必要です。それに加えてJSTのStart_up支援事業も始まり、さらにその後数年のうちにナショプロによる複数社との共同研究開発が加わりました。
 ここで科学的に興味深いのは、最初の共同研究のときには、応用面に近いナノ粒子を研究課題としていますが、企業との連携が増えるにつれて、研究自体はベーシックなほうに向かいます。その成果はちょうどこの4月と6月に有名な賞を2つの受賞に結びついています。
 ここで大切なのは、さっきも評価や成果が出るには時間がかかるという話があったのですが、この2つの大きな賞をいただいたのは今年2010年ですが、研究者の周りに支援者がいなくて、研究者がほんとうに一番大変な思いをしていたのは、それをさかのぼること数年前です。申請書を書きつつ共同研究との成果の区分をしたり、という全体を整理するのがほんとうに大変でした。研究成果が世に認められ始めたのが最近で、多分これから、起業や研究成果が実用化され新産業創出に結びつくのはもっと先の話というのがよくわかると思います。これはそれを非常にデフォルメしたものですが、きょうの議論は、研究開発資金や、研究開発活動をイノベーションにつなげていくためにどうするか、という文脈の中での話だと思うんですが、研究者ベースでそれを見たときには、横軸に時間軸をとって、売れている時期も、だれとも一緒にやらない研究の時期もいろいろあって、論文の特許は、契約期間はお構いなく、一緒にやった人と一緒にやる時期で、大体時間軸がずれて出てくるというのが当たり前の研究活動だと思います。

 最後にこの3つの事例から示唆されることをまとめてみました。まず、RAの位置づけとか、スキルを考える上で大切なこととして必要なのは、専門知識よりも、専門知識を持った専門家を必要なときに連れてくる力だと思います。特に事例1、2、3の2と3に関して言うと、知財だけではない、契約だけではない、事業化だけではない、いろいろな専門知識が必要になってきます。今、必要だということをウォッチして理解する力が、最初に必要です。
 2つ目として、一番大変、つまりこういう機能が必要なのは事業を開始する前です。先ほど渡部先生のお話もありましたけれども、例えば事業趣旨と異なるゆがんだ体制設計をしてしまうと後々改定するのは難しく、事業推進がとても大変になってしまうので、趣旨を理解して、いい体制をつくることがとても必要です、そしてそれはまさに事業開始前でほぼ勝負は決まっています。企業の方はきっとおわかりでしょうけれども、産学でほんとうに大変なのは内部調整であって、大学からすると、企業と調整するよりも学内の調整をすることのほうが大変なことは多いです。
 もう一つ、事例の1、2、3のいずれに関しても言えますが、研究代表者、PIとコア関係者の構成を理解して、当事者が得意なところはやってもらえばいいんですが、できないところ、人がはまっていないところはどこかというのを理解する力、そこに自分自身のスキルが足りなければ、外の専門家を引っ張ってくる力というのが大切です。
 5つ目ですが   、もう少し深く考えると、多分大学の伝統とか校風というのがここですごく効いていると思います。私の経験したのは、2つともエンジニアリングが強くて、実学重視の伝統がある大学ですが、例えば法律、倫理的な面を始め色々な観点から意見はあるはずでここは伝統や校風が随分影響を及ぼすと思います。その意味で長く組織にいて、学内の教員を知っているスタッフというのは、組織にとっても貴重な人材になるのではないかと思っています。

 最後に現状と課題の整理です。これは1年前に、リサーチ・アドミニストレーターというのは必要な機能だと思うということを整理したときの図です。研究者支援としても、大学組織としても必でありさらに、魅力的な職業になり得るのではないかという3点を指摘しています。
そこから考える時間が1年あったわけですが、もう少し現実的にお話ししたいと思います。まず、さっきお話ししたように、研究者のカテゴリーによって必要な機能が大きく異なるという点。また大切なポイントとして、それを担う人材を既存の組織体制にうまく溶け込ませないと、いつまでも特任教員のような位置づけでは私自身がそうでしたけれども、大学の中に組織がもつ機能として浸透していかないと思います。
 また、必要な機能の中にも、本当はやれるはずなのに出来ていない事項と、今の体制や人材では本当に出来ないことが混在しているので、その整理が必要という点があります。
この機能が最も必要な時期はいつか、という点についてですが、経験から、最も重要な業務はいずれも事業開始前に発生しています。例えばプロジェクトベースでこういうことをやる人が当然必要ですが、それ以外に、プロジェクトをプランするときにもやっぱり必要ですということを申し上げたいです。これをお話するとこういう人材が定着するためには、1大学に何人必要か、という話になりますがそれは大学がどういう機能分担で体制を組んでいるか、ということを抜きには考えられません。しかし、全体としてそう多くは無いのではないか、と思うと多分大学や研究機関をまとめた人事循環のシステムが全体の機能向上には必要ではないかと思います。また、今の日本の大学の現状を考えると、おそらく研究開発だけではなくて、教育も含めてこういう仕事の必要性がご理解いただけるのかなと思います。

 最後に、こういう仕事をする人たちがどのぐらいどこに魅力を感じるかという話ですが、なかなか難しいんですが、少なくともアメリカでワークしている理由は、全体のシステムの中でRAの役割が意味をもつように設計されている点です。リサーチ・アドミニストレーターがしっかりいて、大学がきちんとその経費を管理してプロジェクトを成功させると、そういう大学に対して成功のフィードバックがかかるようになっている。だからこそ大学の中の研究者が、ああ、RAがちゃんといてくれてよかった、おかげで来年度の予算執行が少し自由裁量幅が増えて楽になったというようになる。全体としてのインセンティブシステムがあるのではないかなと思います。そこまで含めた制度設計が重要かと思います。

 以上です。

【西山主査】

 どうもありがとうございました。

 それでは、先ほどの事務局の説明と高橋先生のご説明をあわせてご討論させていただきたく思います。

【森下委員】

 このリサーチ・アドミニストレーターに関しては、現場にいますと非常に重要でして、お話があったように、准教授と助教をいかにうまく使って書かせるかというのは限界です。それと最近、NED0とか文科省もそうですけれども、使途が非常に限られてきてなかなか共通品とか、実際の商品を買うのが難しくなって、どこに何の予算を割り振るかというのがものすごく細かい作業なんです。そういう意味では、1つ大きいプロジェクトをとると1人雇わなければいけないような、企業の場合はそれが嫌で参加しないところも最近あるぐらいですけれども、極めて負担が増えたのは事実だと思います。
 しかも間接経費で、30%取られますので、今まで以上に1個ぐらい余分にとらないと従来の研究予算がとれません。本当はその予算が欧米ですとこのリサーチ・アドミニストレーターの雇用として入ってくるので、わりとそういう人がついてくることが多いのですが、日本の場合は多分数が全然足りないので、おそらく各プロジェクトに配置されないと思います。1つ質問があるのは、東北大の場合は一体何人で回しているかということと、先ほどの話ではないですが、カリスマという方々というのは、大体非常にお年の方が多くて、若手のところにはなかなかこういう方は来ないことが多いので、実際上どういう形で、かなり学部間でもこれは違うと思います。何人ぐらいいれば実際回るかというのを、ほんとうのところを、数字をお聞きしたいと思います。あとは、実際にそれだけの人数の雇用ができるかどうかですね。

【高橋先生】

 まさにエッセンシャルなご質問だと思います。最初の質問はよく受けるのですが、まず1人が100%その仕事を担うという職種が確立されていません。私は2つの大学でこのような仕事をしましたが、時期毎にそのエフォートは異なりました。そういう意味では季節労働のようなもので、事業を計画する一時期はこの事業につきなさいという形で動くスタッフは東北大程度の規模で全学的な案件を担当する人間がおそらく六、七人位はいるのではないかと思います。実際はいろいろな形で配置されていると思います。例えば地域共同センターの教授だったり、TLOの中のすごくシニアで学内に顔がきく方だったり、もしくは、プロジェクトベースだけれども、それを超えてアクティブな活動をしているような状況だったり。、私の場合は研究担当理事のスタッフとしてそういうことを担当するというふうになっていました。 2点目は雇用の話…。

【森下委員】

 ほんとうに何人必要か。比だと、おそらく申請書とかの調整はできますけれども、実際の計算とかグラントの支出はできないですよね。

【高橋先生】

 そうですね、そこも多分幾つかパターンがあると思います。ご紹介した事例経験は専らpre_awardの体制づくりのところに特化していました。逆にプロジェクト稼働後まで担当するような仕事なら、例えば、森下先生のラボに週4ぐらいいて、机もいただくような、多分そういう時期も必要でしょうし、そういう形で入ることもできると思います。そこは多分大学の、最後は経理を執行するセクションとのうまいフローが必要で、それは具体的にこういう体制だとこうですねという話が必要だと思います。

【森下委員】

 日本の場合は予算が同時に来るので、同じ時期に人が必要になる。欧米ですと、3ヶ月ごとの申請とかなので、わりとずれてくるのですが、そこも季節的にニーズがすごく高くなってしまう。
 最後の質問ですが、これは企業も、実はプロジェクトマネジメントということで、おそらく必要としている人材だと思いますが、私どもの経験ですと、ほんとうにいいリサーチ・アドミニストレーターがいたら、企業は多分欲しがると思います。日本の場合は、その企業への就職というのは出ないですか。

【西山主査】

 リサーチ・アドミニストレーターを素朴に理解するための質問です。企業の研究所になりますが、まず研究所長がいて、リサーチ、マネジメントをしています。研究所の組織には研究企画管理部、知財部、経理部、総務部があり、それらは総合すると研究所長のスタッフなのです。ぱっと単純に理解すると、リサーチ・アドミニストレーターと言うことはできるのでしょうか。

【高橋先生】

 できると思います。さっきの前半の日本の大学での役割分担も、経理部だとか研究協力部、あれもリサーチ・アドミニストレーターの最初のレイヤーです。

【西山主査】

 そういうことで言えば、企業にはもう存在しています。

【森下委員】

 いわゆるプロジェクトマネジメントだと思います。大手はいますが、ベンチャーとかにはいないんです。

【西山主査】

 ああ、そうですね、わかりました。

【森下委員】

 中小企業とかにはこういう方がいらっしゃらないので、なかなか苦労しているというのがあるので。

【渡部委員】

 ちょっといいですか。この話の本質は、企業が組織的にそういう仕事をやっているというのは確かにそのとおりだけれども、これを専門職として独立させたほうが効率がいいのではないか、ということだと私は理解しています。

【西山主査】

 なるほど。

【渡部委員】

 先ほどの話もそうですけれども、教育と産学連携といったときに、日本の場合は会社組織に必ずなりますが、本来は専門職なんです。専門職業団体が自分たちの仲間のために教育をどうするという構造ですが、先ほど西山主査は、専門職としての技術者の存在というのをどっちかというと否定されていたので、なかなかそこはかみ合っていないのかなと。ここの話はだけどそうかもしれない。

【西山主査】

 今の渡部先生のご意見で、多分専門職としてのそういう人は、企業の中にいないように思います。小さい場合はいると思いますけれども。

【渡部委員】

 ヨーロッパは結構技術者の方の地位も高くて、随分長い間、その業界の標準やなんかの仕事をやっていたりしますね。だから少し違うのかなという気はします。

【西山主査】

 企業だと、そういう経験をさせた人を研究所長に登用しようとしていると、単純には考えますね。

【柘植主査代理】

 これは大事なことはよくわかります。それから、特に悪い意味ではないですけれども、お金が有り余っているトップリサーチャーに対しては、こういう方をつけない限り日本の損失だということもわかります。ですから、そういう見方に立ったときに、少しご意見を伺いたいのは、きょうの議論は産学連携による人材育成ということで、最終的には持続可能なイノベーション創出能力を日本が具備するために、大学も、産業も、研究独立法人も含めてどういう人材を育てたらいいのか、こういう大きなアンブレラの中で考えたときに、1つの大きな役割を大学に期待していたのは、例の産学連携コーディネーターというものですね。これは玉石混交ですけれども、文部科学省はたしか90名ぐらい育ててきたわけですね。あれは事業仕分けで分解されてしまいましたが、あの財産は、私はあきらめていないんです。ただあの中でおそらく相当な人数の人がこのリサーチ・アドミニストレーターになり得る素養を持っているし、機会を与えたらなれるだろうと思います。しかし、それ以外の人たちはもっと別のミッションが、やはりイノベーションプロセスの中で、広義のコーディネーターとしての役割があって、今そこで路頭に迷っているのではないかと私は心配しています。このように私はリサーチ・アドミニストレーターを決して否定しないのですが、非常に大事な役目だけれども、きょうの人材育成の中では、ある輝線スペクトルの人材だなと思います。では、広い意味でのコーディネーターという視点の中でどう位置づけたらいいかなというご意見がもしあったら開陳していただきたいのですが。

【高橋先生】

 ありがとうございます。多分ここの研究支援ニーズに応じたサービスという部分は、学内に所属するコーディネーターの方は、自分の顧客として部局、個々の研究者、もしくはキャンパス毎というレベルで既に機能していることも多いと思います。彼らの仕事は、研究をうまく推進し、かつ研究以外の周辺領域をマネジメントしていくという意味では、十分リサーチ・アドミニストレーションだと私は思います。今日特に申し上げたかったのは、従来の業務分担としては全くセットされていないけれど、研究者だけでは対応しきれない大型の、趣旨が特別な事業というのが増えており、そこに関係する研究者にやはり随分負荷と期待の両方がかかっています。まだ現在は職名もなく、職域として確立していないですが円滑な事業推進のためにはやはりここは専門職としてのスキルが必要となってくると思います。その専門職のスキルの大きな柱の1つは知財です。ただ、それだけではないですし、ご紹介したように、学内の調整が非常に重要なので、きちんとした組織の中での設定が必要だと思います。

【柘植主査代理】

 ありがとうございます。

【西山主査】

 どうぞ。

【澤井委員】

 さっきの議論と絡むのですが、多分こういうリサーチ・アドミニストレーターというのを1つの職種にしますということは、ある種の役割分担をするわけですから、結果としてその研究者がかなりいい質のアウトプットを出してくれるという評価関数がないと、我々の会社の研究所でも、研究所は雑務はしたくないということをよく言うんですね。それは雑務じゃなくてあなたの仕事だろうと言うのですが、大体そういう人に限って、いいアウトプットは出てこないんです。だから、このようにある種の役割分担をしていったときに、先ほどアメリカのケースを例にとられましたけれども、あのケースの場合は、本当の意味でのアウトプットのいいものが出ないと多分そこで淘汰されていくという、もう一つの競争原理が働いていて、日本みたいにある種の競争のようでいて実は競争でないような状況のところに、どうやっていくかということをもう一個ちゃんと入れておかないと、こういう職種ですねということをつくっていても、その後そのトータルとしてのイノベーションにつながるほんとうの意味での、いいアウトプットが出るようにするかというところが、さっきの話とも絡んで大事なところだという感じはします。

【西山主査】

 例えばアメリカは、資格認定、certificationまで訓練を受けた人は15万人います。この方々は、大体いろいろな研究所におられるわけですか。

【高橋先生】

 かなり大くくりの話ですが、多分15万人のうちの8割、9割は、日本では既に大学事務職、もしくは研究室の秘書さんたちがやっている仕事をやっています。一方、pre_awardのここは多分違う人材層で、MBAを持っていたり、企業のトップをやっていたり、そういう人材層があり、研究大学、例えばCALTECやMITはヘッドハントしていると聞いています。2つのフェーズは違う人材層のようですが全体としては、大学の競争的な資金の獲得と、円滑な運営という意味で運命共同体であり、NCURAも両方の人材層が集まっています。pre_awardはビジネスをやっていた経験があって、その層はPHDホルダーが多いと聞いています。

【西山主査】

 その関連で、日本の大学は、いわゆるリサーチ・アドミニストレーターという職種みたいなものは存在していないけれども、リサーチ・アドミニストレーター的仕事をしている人がいるというのは実態なのでしょう。そうしたときに私の質問は、高橋先生から見られて日本の大学の今の現状は、決定的に競争力のない仕組みになっていて、きちんとリサーチ・アドミニストレーターを位置づけて抜本解決を図らないといけないというスタンスに立つのか、それともそれなりに改善していけば何とかなるのかと、この辺の見方はどちらなのでしょうか。

【高橋先生】

 まず日本の大学全部を知りません。

【西山主査】

 感覚的でいいですから。

【高橋先生】

 どっちにしても、いてもいなくても多分研究者は大変です。森下先生がずっと苦労をなさっているのと同じです。ただ、苦労した分、森下先生が苦労したからこの分がよくなったというのと、森下先生じゃなくても、例えばペアにさせていただけるなら私がやったほうが、事業趣旨だったり、いろいろな外部資金のルールだったりがほかの人にも伝わりやすいし、コストパフォーマンスがいいねという部分は明らかに存在していて、そこの整理は今なされていないと思います。

【西山主査】

 なるほど、わかりました。

【竹岡委員】

 仕事柄、企業さんの研究体制と、それから研究系の独立行政法人(以下 研究独法)と大学を全部見ていますが、研究者を支える組織的な研究の実施体制というところの観点から見ていくと、この順番になってきます。研究独法が100点満点とか、そんなのではないですが、ただ研究独法は、官僚システムがあるんですね。役割分担をして、研究者を支えて、知財とか、研究の申請とか、共同研究で相手方との交渉とか、そういうのを、自分の役割としてやる組織体制があり、かつもちろん官僚組織なので人事異動はありますが、研究独法にもよりますけれども、ある程度は専門性を配慮している。大学の組織は、教員組織と職員組織というのがものすごく二分化されている世界で、しかも職員の人事異動というのが、ものすごく規則性がない人事異動、今は研究支援で、次は施設管理、その次は学生のお世話、というふうに、2年ぐらいで行います。これでは専門性が育たない。特に研究を支える人というのは、本当はお話のように非常に知識がないとできない部分があるし、まさにコーディネーター的な機能もあるので、例えば企業さんとの間で交渉するにも、ああ、あの人だねという顔が見えるかどうかというのはすごく大きいし、学内でもやっぱり、ああ、あの人ねということで話がすごく通りやすくなる。そういうコーディネーター機能もあわせ持っている人でなければいけないのに、2年ぐらいで人事異動をすると、そういうことが育つということはあり得ないんです。大学で研究支援の専門的な職種にいる方は、まず間違いなく不安定雇用なんです。高橋先生が、「季節労働者」って先ほどご自分のことをとても控え目な表現でおっしゃっていましたけれども、そういうほんとうに研究者を支えていて専門的な知識を持っている方が不安定雇用なんです。こういう不安定雇用にいい人材が来るのかと疑問に思います。今大学はほんとうに危機的な状況にあるなと思うのは、先ほど産学連携コーディネーターのお話が出た。それから知財本部整備事業があって、知財本部ができた。この方々は、企業の中である程度の経験を積んできた人が、大学はこういうのが必要だからと、特に団塊世代あるいは団塊世代のちょっと後ぐらいの、ちょうどいい人材の方が来て、そういう人は、本来の職種は知財本部の仕事で、あるいは本来は産学連携コーディネーターだけれども、実際はその人が持っていらっしゃるあまりにもいろいろな経験があるので、大学の中でいろいろ頼られて、その枠を超えたことをやっていらっしゃることが実はあるんですよ。でもその方々も、今もう退場していくわけです。問題は、今のような体制だと、その方々のスキルを含めて、こういう専門的なスキルをずっと継承していくような若い人が大学の中に育たないのではないかと、大学を見ていてほんとうに思います。大学の中で、専門性を持った人材として、不安定雇用ではなくて、ちゃんとした雇用として位置づけるべきだし、人材育成のためには、2年とか短期でしかもアットランダムな、関連性がない、人事異動はさせるべきではないのではないか、と言ったら、大学の方は、基本的に大学の職員は、オールマイティーにあらゆるものを経験させないと出世できない仕組みになっているのだと。だから、専門性と言った途端に、その人は出世できないことになる、だからその人のためによくないんだという反応が返ってきたのです。これは結局、国立大学のときから、大学の職員の位置づけがずっとそういう感じで来ているので、組織の中でそれを変えようとしても変わらない。だとすると、これは上から、もうそんな時代ではないと。ぐるぐる回して中途半端にやって、そんな中途半端な人材を育てても仕方ないと。専門性のあるものについてはちゃんと雇用も確保し、専門性があるということで、人事異動もある種の幅で限って、専門性を育成していくという中でキャリアを位置づけてやっていくという、そういう人事が必要だ、というものをきちんと大学の中に入れないと。
 私は、先ほどの若い先生の方とかいろいろ話を聞きます。研究支援の部署にとても有能な人が来るといいんですよ。だけど、そういう人はものすごくいろいろな人から頼まれて今度は仕事を抱えることになるんですけれども。悲惨なのは、非常に能力のない人が来ると、お仕事をしないんですね。その若い研究者に、例えば国際的な共同研究の話が来ていたりするんですよ。契約の交渉の話とかがあっても、そのお仕事をしない人は、ほったらかす。だから「放電現象」なんだとその先生は言うんです。つまりアースをつけて、土にアースを垂らしてしまえば放電されるじゃないですか。大学の人に言ってもそれでおしまい、結局全部自分がやらなければいけないと。これでいいのか。能力のある研究者ですよ。そういうことをきちんとやってくれる人がいれば、もっと研究に邁進できるのに、放電現象なので、自分がやらなければ放電されてしまう。こういうことは、企業とか研究独法ではあまり考えられないことですけれども、大学ではこういうことが起こり得ると。
 だから、このリサーチ・アドミニストレーターの議論というのは、むしろもっと大学職員の人事管理、人事構造のあり方も含めてというか、それにも踏み込むようなことになるかもしれませんが、あまり大がかりにやってしまうと大変でしょうが、でもこれはやはり重視しないと、大学というのはなかなか進まないのではないかなと思います。

 すみません、長くなりました。

【西山主査】

 ありがとうございました。

 ほかにございますか。かなり構造的な問題ですね。よろしいでしょうか。
時間が来ましたので、そろそろ終わります。事務局から何かありますか。

【渡辺技術移転推進室長】

 それでは資料4をごらんいただけますでしょうか。今後の本小委員会のスケジュールについてでございます。次回、第4回につきましては、6月10日の木曜日、15時から17時におきまして、テーマとしては「大学等の知的財産の戦略的管理・活用についての検討」でございます。

 第5回につきましては、7月9日の13時から15時でございまして、「産学共創の場の構築についての検討」でございます。予定といたしましては、この第5回をもって、この小委員会における調査・検討を取りまとめていきたいと考えているところでございます。

 以上でございます。

【西山主査】

 どうもありがとうございました。

 最後に、特にご意見のある方はいらっしゃいますか。

 それでは、本日の戦略小委員会を閉会とさせていただきます。きょうも極めて重要なご意見が多々ありましたので、これをぜひ最後のまとめに反映させたいと思っております。どうもありがとうございました。

 

午後4時01分閉会

 

 

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研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室

(研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室)