資料3 産学官連携推進委員会におけるこれまでの主な意見

今後の産学官連携についての基本的な考え方

1 これだけいろいろなことをやってきて、組織、制度、ルールなどが整備されてきたが、その結果大学がどう変わったのか、大学の何が変わったのか、大学にとってこれらの施策は何だったのかというのを1回議論したい。

1 国の施策あるいは産学官それぞれの役割の認識・整理を行うことが重要である。

1 大学特許の実施状況も高くなっているが、産学官連携は、イノベーションがキーワードであり、社会に成果を還元するところまで見届けなければならない。

1 産学官連携がなぜ必要かということが国民に理解されていないため、大きな意味での説明を国民にきちんとしていく必要がある。

2 大学の主たるミッションである純粋基礎研究の分野で、ノーベル賞クラスや、それに準ずるクラスのディスカバリーやブレークスルーを達成した状態は、社会や自由に対して非常に大きな励みを与えると同時に新しい価値を創出するととらえられるので、これもイノベーションである。

2 産学連携戦略を立てるため、大学そのものの本体の戦略をまず個々の大学が策定することが前提であり、その上で、大学レベルでできないことがあれば、国として何をするかということをもう一回考え直していくことが大事なのではないか。

2 製造業的な分野では、文部科学省や経済産業省のこれまでの様々な取り組みが、結局は人的コストも高く、資源もない我が国の産業競争力を今日まで高めてきたということにつながっているのではないか。

2 経済的には100年に1度のことが起こったわけで、もう一度しっかり踏み込んだビジョンに基づいてストラテジーを考えていくということが必要である。

2 理科離れなどが進むなかで人材が枯渇してくるということが起こりつつあり、今のままほうっておくと日本の国力を守れるのかということになると、結構厳しいわけで一番基本のところからも崩されてきている気がする。

4 これまでは機関ごとに知財管理をしてきたが、今後はネットワークの構築やコモンズなど、機関間の協調ということに施策が位置づけられると思う。また、機関と機関との間の他に、研究者間の競争と協調もある。機関の協調と競争にはバランスが必要。

4 基本的な考え方には、これまでとの違いを書く必要があり、これまでにやってきたことの中で、まだできていないところを書くと良いのではないか。

4 全体像として、「新たなフェーズ」を、委員の中でデザインしていくべき。第1期では組織論、第2期では展開論から、第3期は実態論になってきた。スタンスを初めに明確に出し、そのスタンスに合う書きぶりに直してはどうか。

4 新しいフェーズに入ろうというのであれば、どういう意味で入るのかということは明確にすべきであり、どういった観点の事をこれから次のフェーズとして行わないといけないのかを明確にしていくことが大事。

5 成長戦略を担うということの位置づけが大事であり、公共事業による成長ではなくて、技術力強化による、産業力強化による成長戦略だということが施策だと言えるようなキーワードを入れるのがいいのではないか。

イノベーション創出のための産学官連携の深化に向けて

(1)大学等と産業界との共同による知的財産の創出に向けた場の形成

1 産学官連携でイニシアティヴをとるのは産であるから、企業が上手に大学を使いこなす能力がないと、学の方から関係を改善できない。

1 大型研究について日本企業は、日本の大学との共同研究よりも海外の大学や研究機関との研究費の方が多いが、何故なのか、研究開発を日本に呼び込むことができないのか、について分析する必要がある。

2 日本の基礎研究の水準をレベルアップするためには、大学が基礎研究をやるときに産業界の持てる力を発揮すると、ブレークスルーができたり、ディスカバリーができたりする案件があるため、それを取り上げて補強する政策をもう少し強化したらいいのではないか。

2 ナショナルストラテジーを達成するには、主導的リーダーを担うのが国研の本来の役割であって、それに大学と民間が協力していくということをやっていくことが必要で、国研の役割を産学官連携の中にもっと明快に位置づける必要があるのではないか。

2 産を支える学という部分もあるが、これからは産を下支えする、あるいは補完をする学の役割も必要であり、産の論理だけで市場に任せていい部分と、国としてしっかり学の役割を守っていかなければいけない部分ということを明確にしておかないといけない。

2 従来の産学連携の仕組みの中ではおさまり切らない部分をカバーするため、国のミッションとして事業体的な研究という体制をつくっていく必要がある。

2 海外からの企業を呼び込んでの先端的な知の追求というところをやっている欧米における国際的な産学連携拠点について、どのような仕組みで、どのような人材が必要で、単純に研究者だけではなく、研究支援者がどういう役割をしているのか、予算のつけ方はどうなっているか、そういった分析をきっちりやるべきである。

3 日本の大学と日本の産業界とがある程度取り組んでいくことはある程度必然であり、それをどのような格好でやっていくのか、大学の役割はいったい何かという事をしっかり議論しておく必要がある。

(2)研究の活性化に向けた知的財産相互開放スキームの構築

1 パテントプールやパテントコモンズのような特許権の集合的利用が盛んに行われているが、そのような特許の活用において、大学はどのようにマージナルコストを回収すべきか、戦略的に考えないといけない。

2 共同研究のパテントが共同出願になっているが非常に大きな足かせになっており、英国のメディカル・リサーチ・カウンシル・テクノロジーでは、いろいろな大学のパテントを集めて、きれいなバンドルをつくって、1年間に百数十億円のライセンスを行っているが、そのような仕組みが日本にはない。

3 科学技術コモンズは非常にいいと思うが、使えない特許ばかり集めてもダメなので、内容をしっかり精査して予算をつけてやってほしい。

4 パテントコモンズはすばらしいと思うが、「パテントコモンズに入りたくない」という人もいると思う。「パテントコモンズの外であってもいい」という書き方の方がいい。

4 相互開放については、そもそも研究ライセンスのガイドラインが出ており、各機関が他機関の特許を研究目的でどのくらい使えるのかという議論はすでに行われてきたので特許を集合的にすることによって、価値が高まるというところを強調してはどうか。

(3)独創的・先進的な研究成果の創出と活用に向けた研究システムの構築

1 研究のロードマップをしっかり設計して、それに従って取り組んでいくということが重要であり、そうしなければ産学官連携が非常にちぐはぐなものになる。

2 研究現場の中で出てきた研究成果を知的財産に結びつけていくためには、かなり高度な研究現場のマネジメントが必要であり、リサーチアドミニストレーターを専門職として配置していくことが必要。

(4)研究成果の事業化支援

2 産業界はトゥーアーリーの段階のアイデアについては相当負担が大きいということで、アイデアはよくても参画しないこととなる。大学は大学でよいアイデアを持っていても、そんなにステージが進んでいないため、企業が参画してくれるほどの説得性がない。日本の中ではこういうケースが非常に多いのではないか。

2 企業に大学の技術紹介をするとそんなアーリーなステージの技術は使えないということが結構多く、アーリーなものをそこで眠らせてしまわないように、大学の中でもう少しインキュベーションを進めていくためのシステムをつくらないとなかなか民間へ技術移転していけない。

2 マッチングファンド形式にはすごくたくさんのプロジェクトがあるが、出口方向に向けるものがほとんどで、大学単独でやりたいというものに対するファンドが、極めて少ない。

2 大学は、すばらしい成果が結構色々なところが出ており、それに対して産業が結びつかないのは、そこのつなぎのところの仕組みがいまいちまだ機能していないのではないか、そのためにつなぎのための支援が必要。

2 つなぎの研究開発、応用開発の資金をどこかから獲得して、企業が手を出せるところまで持っていく、それは1つのベンチャーかもしれないが、何とか手助けする必要がある。

2 JSTで出口方向を向ける呼び水マネーのようなファンドを組んでいくと、産学連携が動くのではないか。

2 米国のライセンス収入がある大学では、その収入の所定部分を試作や、データ補充の資金援助に使っており、企業が評価できるレベルまで大学の基礎研究成果を持ち上げる繋ぎの仕組みがあるが、日本の大学では、金沢大学TLOがギャップファンドとしてやり始めているが限定的であり、日本の大学のライセンス収入が大きくなるまで、このようなシステムの公的支援があると産学連携は加速すると思う。

(5)国際的な産学官連携活動の推進

1 日本で生まれた大きな成果が海外で活用されるという例が増えてくると思うが、成果の活用ポリシーまたは知財ポリシーを国境をまたがった形で考えておく必要がある。

1 国際社会の中で日本の大学が実力を発揮できるようにするためにはコミュニケーションを通じてグローバリゼーションをやっていく努力が必要。

1 技術移転のグローバル化は重要であり、海外企業から引き合いがあることによって、国内企業が興味を持つ傾向があることからも産学連携のグローバル化は重要。

1 グローバリゼーションに対応できる力のある大学は若干あるが、ほとんどの大学では対応できていない。

2 世界中から、海外からの企業とか人材が、そこに混然一体となっているような、いわゆる日本に魅力があるような国際化拠点を何点か意図的につくらないと、まずいのではないか。

2 地方大学でも光るようなところは、その大学主催の国際会議等が行われており、相当なレベルの外国の研究機関の方も来ているので、そういったものをもっと活性化して、日本から世界への発信力というのを高めていくことが必要。

3 海外企業からの共同研究等の契約は、知財本部が間に入ったときに、なかなかスムーズにいかないことがある。東工大や東大はうまくやっているようだが、その状況を調査していただきたい。その上で、東工大や東大の事例を活用した研修会を開催し、地方大学へ普及させる必要がある。

3 研究開発は本質的にはグローバルであり、地方であっても光る開発があって、周りに企業が集まってくればそれでグローバルなものとなる。既存の枠組みを超えて専門人材の確保が必要。

5 国際的な人と人との深いリンケージをつくっていくことが大事であり、産学連携活動を担う人材や研究者の中にそのような世界へ出ていって国際的な場で活躍する人材を育成する必要がある。

(6)中長期的な視点に立ったTLOの見直し

1 TLOは沢山あるが、一生懸命やっても報われないため、成り立っていない。良いことをやっているところが生きていけるよう考えなければならない。

2 TLOは、技術移転して初めてその役割があると思うので、実際1つの技術をどのぐらい企業に紹介しているかとか、紹介件数がどのくらい動いているのかというデータがあると、もっと意識して動いていくのではないか。

2 東大、京大、それから単科大学の自治医大、このあたりを除いてライフサイエンス分野の人間が産学連携本部にいないため、TLOを考えるときに分野によっては分野ごとの拠点を作ってはどうか。

(7)大学等における産学官連携体制の発展に向けた取組

2 地方の大学は、地方の中で一番知的財産に関して人が集まっている可能性が高く、地方でうまくいっている大学の知財本部の活動を、地方の中小企業や地方のベンチャーに広げられるようなロールモデルができれば、産学連携がうまくいくのではないか。

2 地域に密着している大学の力をうまく使って、その地方での産学の技術移転のモデル、あるいは知財活動を一緒にやったモデルをうまくつくっていくような事業も、今後必要ではないか。

2 地方の優秀な技術系、物づくり系のベンチャー、中小企業等をうまく巻き込んだような仕組みをつくる必要があり、その中にできれば産総研や理研のような公的な研究機関、あるいはJSTやNEDOも、もっとこの知財活動の中で見えてもいいのではないか。例えばJSTの地域プラザなどの拠点をうまく活用する事業展開も必要ではないか。

2 地方では、連携のコーディネーターをやる人の層が薄く、産業界OBや大学の先生のOBの方、こういった方にもっと活躍してもらう機会をつくるのが、産学官連携の出口が見えていく、一つの方式ではないか。

3 地域にいくと、地方自治体でも、大学・高専でもほとんど体制もマンパワーもないため、国として地域における産学官連携の底上げの施策を打ち出してもらいたい。

4 地方がキーワードとして重要であり、もう少し地方での取組を書いたほうがよいのではないか。地方の中小企業やベンチャーについても書けるのではないか。

4 三重大学のような取組をもっと強調して表現すべき。地域発の産学官連携に強力なインセンティブを与える表現にした方がよい。

4 自治体がどれだけ関与して、そこに学と地域の産が協力するということを強調してほしい。

5 地域の中小企業との産学官連携の具体的な支援策を書くべき。

(8)大学等における産学官連携活動を担う人材の育成・確保

1 ライフサイエンス分野において戦略、戦術を考える人がいない。人材の育成・確保・維持ということを踏まえて、具体的な施策を考える必要がある。

1 マネジメント系専門職大学院大学は定員割れであり、マネジメント系の学校の文系の人たちと、研究されている理系の方との学内での情報ギャップが問題である。

2 今までの戦略的な方向性の中で、まだここは足りないとか、あるいはここはもう一回考えなければいけないのではないかという部分があるとしたらライフサイエンスの人材の育成・確保を考えなければいけないのではないか。

2 現在大学では、技術移転専門家などスペシャリストは通常5年等の有期で採用されるが、採用された専門家は直ちに立ち上がらず、最後の方になると次の職探しになる傾向があるので、腰を据えて実力を発揮できるような仕組みを構築することが必要。

2 特許申請の数は必要かもしれないが、その数を打つ前に、ベンチャーをつくり実用化するなら、戦略的にどういう形で特許を出すかということが非常に重要で、それを指導できる人材が地方にどれだけいるかが非常に不安である。

3 交渉は弁護士等に任せるのではなく内部人材でやるべきである。大規模大学は個々の大学で対応できるだろうが、その他の大学は、個々の大学で対応していくのは厳しいので、専門人材をプールして連携して大学が使えるようにしていくと良いのではないか。

4 大学の組織のあり方として、特に人材確保について大学の組織として対応することを位置づけることが必要ではないか。

*1は、産学官連携推進委員会(第5期第1回)における意見
2は、産学官連携推進委員会(第5期第2回)における意見及び書面にて追加で頂いた意見
3は、産学官連携推進委員会(第5期第3回)における意見
4は、産学官連携推進委員会(第5期第4回)における意見
5は、産学官連携推進委員会(第5期第5回)における意見

 

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