○ 我が国の持続的な成長のためには、科学技術力による企業の国際競争力強化及び環境等の課題に科学技術力を応用した全世界的な新需要創造、すなわち、科学技術駆動型の成長戦略が必要不可欠。
○ そのためには、1.大学等において、独創的・先進的な研究成果を継続的に生み出し、2.その成果を活用し、広く社会還元するため、産学官連携活動の積極的な推進が必要。
○ 地域発イノベーション創出モデルによる地域経済活性化は、各地域にとって喫緊の課題。
○ 大学等が、地域の中小企業の研究開発支援、農業分野等への科学技術の応用等を通して、地域振興と地域社会の発展に貢献することが期待され、産学官連携活動の活性化推進が重要。
○ 企業の海外事業展開による研究開発のグローバル化に伴い、大学等も国際的に評価される時代に突入。最先端の知、最先端の研究リソースを求め、国境を越えて連携相手を選ぶ動きが加速。
○ 国際的産学官連携活動は、日本の科学技術力による環境等地球規模の課題解決の推進、開発途上国等の人材育成による国際貢献及び国際的に活躍する我が国の研究人材の育成に資するものであり、その推進が求められる。
○ 産学官連携活動は、社会が必要とする人材の育成、科学技術の新領域や融合領域への展開、大学等の研究成果の社会還元のための重要な手段であり、大学等における教育、研究、社会貢献の発展にとってもその意義は大きい。
○ 産学官連携は、大学等教育の側面では、企業等との協働による課題解決であり、優れて実践的な科学技術人材育成の場であり、科学技術人材育成強化のため、産学官連携活動の推進が重要。
○ 我が国の産学官連携活動は、当初、特許の個人帰属を前提とした研究者、研究室単位での活動を中心に推進されてきたが、平成10年の大学等技術移転促進法、平成11年の産業活力再生特別措置法、平成16年度からの国立大学法人化等により、特許の機関帰属を前提とした大学等の組織的な活動に転換。
○ このような状況の中、国は、大学等の産学官連携体制の整備や研究成果の権利保護等の支援を通じて産学官連携活動の主として量的拡大を図ってきた。
○ こうした国の施策と大学等の努力により、大学等における産学官連携体制の整備が進み、企業との共同研究、企業による大学等の特許実施件数、大学発ベンチャーの増加等、産学官連携活動が総じて活性化。
○ 現在、世界規模での深刻な経済不況に直面し、多くの企業で研究開発環境が悪化。産学官連携活動を巡る状況も厳しい局面を迎えつつある。
○ EUの「欧州テクノロジー・プラットフォーム(ETP)」、仏・グルノーブル・イゼール産学官国際研究拠点等、国際的な大規模国際産学官連携拠点の構築などグローバルなレベルでの先端技術の開発競争は加速。
○ 我が国が科学技術力で優位な地位を占めることができるかは、予断を許さない状況。
○ 持続可能なイノベーション創出のためには、今後の産学官連携についての方向性を検討し、次のフェーズに向けた産学官連携の推進施策の構築が求められる。
○ 今後は、これまでの制度や体制整備といった取組の枠を越えて、以下のような重要課題に対応し、産学官連携の実質化を図っていくことが必要。
1 産学官連携の領域を基礎研究レベルにまで拡大するため、大学・公的研究機関・企業間のネットワークを形成し、知のプラットフォーム(共創の場)を構築することが必要。
→ 取組1.産学官協働によるイノベーション創出に向けた新たな場の創出
2 研究開発の促進に知的財産を活用するため、知的財産の独占権を担保しつつも、知識の流通に支障を来さない仕組みを整備することが必要。
→ 取組2.研究活性化及び活用促進に向けた知的財産開放スキームの構築
3 研究成果の事業化支援、研究マネジメントを行う人材の育成、研究成果を高付加価値の技術シーズに高める活動等を推進するための「つなぎ」、「マネジメント」、「補完」の役割を担う人・組織の充実、産学官連携を戦略的に推進する仕組みの整備・強化、国際的産学官連携等に対応できる専門人材の育成・確保が必要。
→ 取組3.研究成果の創出と活用に向けた支援の充実
→ 取組6.産学官連携のための機能強化や人材育成・確保に向けた取組
4 地域における産学官連携活動では、自治体の各種施策と有機的に組み合わせるなど、地域の自律的発展に結びつける仕組みが必要。
→ 取組4.地域における産学官連携活動の推進
5 グローバルな吸引力を持つ研究拠点等での取組強化、大学間協働の促進等による国際産学官連携活動を一層推進する施策が必要。
→ 取組5.国際的な産学官連携活動の推進
○ このため、国は、産学官連携活動を停滞させることなく、新たなフェーズに向けて、国として政策的観点から戦略的に推進する施策をメリハリを付けて実施していくことが重要。
○ 持続的なイノベーション創出能力の向上に向けて、「教育(人材育成)」と「研究(知の創造)」と「イノベーション(社会・経済的価値創出)」を三位一体で取り組んでいくことが重要。この視点に立って産学官連携の施策を推進することが必要。
○ 持続可能なイノベーション創出のため、大学等、産業界、研究開発独立行政法人等とがそれぞれの役割を担い、協働してイノベーション創出の源泉となる新たな「知」のプラットフォーム(共創の場)を構築することが必要。
○ 産業界の課題に対し、産学の対話により設定された研究領域において大学等が基礎研究を行い、その成果を踏まえた緊密な産学官の対話・交流を行う。
○ 産学官連携の領域を基礎研究の立案段階にまで拡大し、相互理解と連携関係を深化させると共に、産学官の人材交流も含めた人材育成を図っていくことが必要。
○ 知的財産の独占権を担保しつつも知識の流通に支障を来さない仕組みとして、大学等が保有する特許を企業を含む国内他機関における研究実施過程に限って無償開放する「リサーチ・パテントコモンズ」を構築し、個別にライセンス契約を結ぶことなく簡便に特許を研究に利用できる仕組みを整備(任意参加。対象特許は提供者が選択)。
○ 戦略的に重点化する技術分野を選定し、領域ごとに関連する科学技術情報(特許マップ等)も提供して知的財産の技術的価値の理解の容易化を図り、それら全体を「科学技術コモンズ」として運用。
○ これにより基礎研究を活性化するとともに、産業界にも開放していくことで、大学等の知的財産の活用を促進し、知的財産の新たな価値の発掘に繋げ、イノベーションの創出を促す。
○ 研究マネジメントや知財活動等に従事するリサーチ・アドミニストレーターを育成・確保し、大学等の研究マネジメント体制を強化。
○ 大学等の有望な研究成果について、実現可能性の目利きやプロトタイプ等による検証を通じて高付加価値の技術シーズに向上させていくことを支援。
○ 大学等の研究成果の事業化までの切れ目のない支援やベンチャー創出のため、シード・アーリーステージにおける研究開発経費等を充実。
○ 地域の中小企業等との産学官連携活動の活性化に向けて、大学等の研究力と中小企業・ベンチャー企業の技術力を活用して、課題解決・事業化を目標とする共同研究を強化。大学等は、戦略的に地方公共団体等と連携を図りつつ、地域イノベーションを生み出すため、地域振興人材の育成、支援体制の整備等の取組を強化。
○ 地域の産学官連携拠点においては、関係府省、自治体等の各種施策を有機的に組み合わせて総合的に実施し、持続的・発展的にイノベーションを創出するイノベーションエコシステムの構築を推進。
○ 地域の潜在力を十分に発揮するためには、個々の組織の枠を越え、広域的な大学等のコーディネーターのネットワーク機能や独立行政法人等の地域オフィスのリエゾン機能の強化を踏まえた総合的マネジメントの仕組の確立が必要。
○ ビジネスモデルや研究開発のグローバル化に鑑み、産学官連携の真価発揮のためには、グローバルな吸引力を持つ拠点を中心とする国際的な産学官連携戦略の一層の強化が必要。
○ 海外特許出願経費を含めた支援強化を図るとともに、大学等における取得した海外特許のより一層の活用を目指した海外企業等に対するプロモーション戦略の構築を促進。
○ 個々の体制整備が非効率となる小規模な大学等においては、ビジョンを共有する大学等の協働を促進し、国際的な産学官連携のためのネットワークを構築。
○ 産学官連携の戦略的な推進に当たっては、それぞれの機関や地域の特色・個性等に即して、国際性や広域性、更には分野的な視点も加え、大学等における産学官連携本部といった組織やTLO(技術移転機関)の在り方について検討し、機能分担等の見直し、連携強化、統合等、イノベーション創出を加速する仕組を整備する取組が必要。
○ 国内機関のみならず海外機関との対応能力やライフサイエンス等の重点分野の産学官連携活動を担える専門的知見を有するなど、新たなフェーズに対応できる専門人材の確保、育成・評価、キャリアパスの確立について、大学等が組織的に取り組むことが必要。
研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室