平成21年9月3日(木曜日) 10時~12時
金融庁(13階) 13F共用第1特別会議室
(委員) 白井主査、野間口主査代理、西山委員、原山委員 (臨時委員) 石川委員、石田委員、竹岡委員、西岡委員、本田委員、三木委員、南委員、森下委員、渡部委員 (専門委員) 秋元委員、井口委員、羽鳥委員、牧野委員
研究環境・産業連携課長、技術移転推進室室長代理、ほか
山梨大学 研究支援・社会連携部長(理事)、新潟大学 知的財産本部教授、三重大学 創造開発研究センター社会連携創造部門長
午前10時00分 開会
【白井主査】
おはようございます。
それでは、定刻になりましたので、ただいまから第5期科学技術・学術審議会 技術・研究基盤部会の産学官連携推進委員会、第4回を開催させていただきます。
きょうは、山梨大学の田中理事、新潟大学の辰巳教授、三重大学の西村教授にご出席をいただいています。後ほどお話を伺うということになっています。
では、初めに、出席の確認と配付資料の確認をお願いします。
(事務局より、出席の確認及び配布資料の確認)
【白井主査】
それでは、今日の議題に入りたいと思いますが、今日の議題(1)、これは産学官連携本部の現状と課題についてであります。まずは山梨大学の田中理事にお話をいただいて、その後、意見交換を行いたいと思います。
田中様、よろしくお願いします。
【田中理事】
山梨大学の田中でございます。おはようございます。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、新潟大学と山梨大学の取組について、以下の目次に従いましてご説明いたします。
国際・大学知財本部コンソーシアム、通称、我々はUCIPと言いますけれど、この目的は、中小規模の大学が抱える共通的な課題を一元的に管理し、国際的な産学官連携を推進しようとするものでございます。山梨大学と新潟大学の国際共同研究・受託研究、海外特許ライセンス並びに海外特許取得状況の平成20年度の実績並びに平成24年度の目標は、そこに示すとおりでございます。
また、UCIPの加盟大学4大学の実績についてでございますが、静岡大学等4大学の実績につきましても、実績はそこに示すとおりでございます。
また、UCIP加盟大学の平成20年度における中小企業対象の共同研究の実績の全国的な位置は新潟大学が20位、あるいは外国企業を対象とする共同研究の実績は山梨大学が10位並びに受託研究の研究費別については山梨大学が15位、特許権実施等収入については山梨大学が17位という状況でございます。
次に、UCIPの機能及び役割でございますけれど、大きく分けて4つでございます。知財・法務関連事務の共有化、国際知財人材の共同養成、海外拠点との連携・相互活用、そして単一の大学では得がたい有益情報の共有化並びに情報発信でございます。
このような機能・役割を果たすために、UCIPの体制は、理事長のもとに理事を置き、その下に事務局、そして事務局のもとに、企画連絡調整部門、法務部門、人材養成部門、国際活動部門、情報収集発信部門という5つの部門を設けてございます。現在の理事長は新潟大学の下條先生でございまして、昨年度までは山梨大学の学長が理事長を務めておりました。
年度別推進計画でございますけれど、ここに示すとおりでありますが、本事業の終了年度である平成24年度にはUCIPの法人化にめどをつけたいというふうに考えてございます。
各委員会並びに作業部門の活動状況でございますけれど、その状況はここに示すとおりでありますが、おおむね月に1回以上、各部門のメンバーが集まって、各分野におけるテーマについてミーティングを行い、それぞれ計画的に実施しているという状況でございます。
各部門の業務の概要でございますけれど、企画連絡調整部門は、全体企画の立案、進行管理、規則等の整備を行っております。法務調査につきましては、海外法制度の調査並びに契約書等ひな型の整備、そして国際的なリスク管理対策等を行っております。国際活動支援部門につきましては、国内外の展示会への出展の支援、あるいは海外拠点の相互利用の支援並びに海外拠点の整備の支援について行っております。人材養成部門は、米国や欧州のセミナーの開催、あるいは養成対象別の人材養成カリキュラムの作成並びに、海外に研修を出したいという大学の連絡調整、海外事務所との連絡調整などを行っております。また、情報収集発信部門につきましては、UCIPホームページの管理、e-learning並びに遠隔教育システムのデータベース化、有益情報、各種契約書のひな型のデータベース化を行っております。
次に、取組み例でございます。UCIP加盟大学の技術並びに研究成果の付加価値を高めて国際展開し、海外企業にアプローチをしやすくするために、特許のパッケージ化に向けて作業を開始しております。各大学から、パッケージ化を希望する技術情報や研究成果並びにライセンスや共同研究につなげたいシーズについて、アンケート調査やヒアリングを行っております。また、パッケージ化のためのガイドラインの策定に着手しております。
次に、UCIP加盟大学の合同夏季研修の実施を行いました。先週の木金の2日間にわたって、山梨県は清里というところにおいて1泊2日の研修会を行いました。これはUCIP参加メンバー間の交流を深めるということが一番の目的でございますけれど、参加者は54名、知財の専門職の方だけではなくて、事務の方、財務の方、それから各センター長、あるいは理事も含めて参加したというものでございます。夜を徹してそれぞれの大学の抱える課題や共通の課題について語り合ったということでございますけれど、大変大きなパワーをそこでは感じたというのが、私の素直な感想でございます。
そして、UCIPのホームページについても、この4月1日から正式な運用開始を行っております。現在、このホームページの中には、山梨大学の特許や研究成果、約250件がデータベース化されております。また、参加大学の同じような技術シーズ・研究成果を今年度末までに、それぞれ計画的にデータベース化していく予定でございます。また、情報セキュリティーポリシーやホームページの利用規約について、現在策定中でございます。また、会員相互の安全保障貿易管理に関する情報交換を進めるための外為NETを運用中でございます。
先ほどのホームページの中にはe-learningのコンテンツが入ってございますけれど、これはe-learningのコンテンツの一例でございます。昨年、4日間にわたって米国弁護士を招いて米国特許セミナーを行いました。その内容をすべてe-learningにおさめてございますけれど、このe-learningを見るに当たっては、講義資料の挿入がされておりますので、講座に使った講義資料を見ることができます。また、講師の説明の英語の全文についてテロップを流すようにしてございますので、ヒアリングで聞きにくいところはテロップを見ることによって理解することができるようになってございます。また、講義の適宜、合間、合間に日本人弁理士のモデレーターを入れてございまして、英語のために理解が不足するところについては、モデレーターの日本語による解説で理解を深めるというような仕組みをとってございます。
そして、課題でございます。山梨大学及び新潟大学の知財の管理に要する経費と人件費でございますけれど、まず山梨大学の場合は、人件費が約5,000万とここに記載されてございますが、これはあくまで正規の定員枠の職員の経費を除いた経費です。したがいまして、事務職員の経費も入ってございませんし、それから正規の教授のお金も入っていないということで、なかなかその人たちのエフォートというのは割り出すのが難しいので何も言えないですけれど、おそらく1億円近い人件費がかかっていると推察します。また、特許出願の経費については、5,000万近い金がかかってございますけれど、海外についてはJSTのご支援をいただいているということで非常にいいのですが、結構のお金がかかっているということでございます。
新潟大学につきましては、山梨大学より少ない数値になってございますけれど、ここに記載されているのは定員枠の経費が入っていないということと、正規の定員は本学以上に大勢の方々が知財の管理活動にかかわっておりますので、相当の人件費がかかっているのだろうと思います。
推進課題でございますけれど、まず第一はやはり人材の育成・確保でございます。人材を育ていくには非常に時間がかかります。それから、多くの実務経験を積ませなくてはいけないので、そういう場の提供が必要だろうと思います。リタイアした人たちを採って、その人たちにやってもらうのは非常に簡単ですけれど、やはり若い人材を育てていくには非常に大きな時間とお金もかかるし、また、専門職だけではなくて事務の管理の方々も含めた教育システムをつくろうとすると、さまざまな知財の教育施設の構築が必要になります。また、ある程度年齢が来た場合は、やはり知財という狭い中でもってキャリアパスをつくってあげなければいけない。おそらくこれが今後の大きな課題になってくるのだろうと思います。
そして、連携して複数の大学がやっていることは非常にいいですけれど、実は非常に難しい問題は、各大学間の意思疎通をどうやって確保するかということでございます。これは、担当者だけではなくて、財務の担当者、そしてセンター長などの責任者並びに理事や学長まで含めて、活動の理解をしてもらわなければいけない。そのためには、非常に大きな時間もかかるし、お金もかかるということでございます。
そして、継続して連携を続けていくためには、各大学がほんとうにメリットを感じなくてはいけないということです。どのようにメリットを感じさせていくかということになったときには、例えば共同研究であるとかライセンスであるとかということになれば、各大学の知財のところまで踏み込まなくてはいけないという問題があって、非常に厄介なところもあろうかと思います。
時間もだんだんなくなってきましたので、さっと流しますけれど、各大学の連携というのは、大学だけではなくて、地域にある企業まで含めた連携が必要だろうと思います。そして、各大学の強みを生かさなくてはいけないと思います。そして、現在の知財やTLOの組織というのは、実は非常に中途半端なところがあります。なぜならば、数十件程度の知財の管理をするために職員を張りつけて知財管理のシステムを運用していると。この分野は極めて広いということで、その広い分野をカバーするためのTLOの人材というのは極めて少ないということでございます。時間が過ぎてしまいましたので、あとは、自治体の知財本部との連携や、JETRO、JSTの連携なども必要というふうに考えてございます。
そして最後に、UCIPの法人化に向けての柱とすれば、国内外の特許事務の共同処理、国際契約事務のサポート、特許活用支援が挙げられますが、これでほんとうに自立できるかどうかというのは、今から非常に悩ましいところであるということでございます。
時間を少しオーバーして、大変申しわけございませんでした。以上でございます。
【白井主査】
ありがとうございました。
それでは、ご質問とか何かございましたら、どうぞお願いします。
石田委員。
【石田委員】
どうもありがとうございます。
パワーポイントの15、取組み例(1)の件で、非常に重要な部分でございますけれど、特許のパッケージ化、これにつきまして、ルールをつくられておやりになっているのか。例えば、ライセンシング交渉における方針や決定などにつきまして、特許のパッケージ化に関する規定か、ルールか、そのようなものをおつくりになっておられるかなどにつきまして、先ほどの説明でおよそわかりましたけれども、共同管理、あるいはパテントプールなどにつきまして、もう少し説明いただければありがたいです。非常に重要な部分だと思います。
【山梨大学(田中理事)】
ご指摘のとおり、ここのところをどうするかというのは非常に大きな問題で、実は昨年度、フィージビリティースタディーで新潟と山梨の水素燃料電池関係でやってみたのですが、どういうガイドラインでやるかということが非常に大切だということになりまして、現在、ワーキンググループの中でもって特許パッケージ化のためのガイドラインの作業に着手してございますが、まだできてございません。いろいろ問題がたくさんございます。公開特許公報に限定するのか、どこまで情報を教えてもらえばいいのかとか、あるいは、その特許については既にお客さんがついているとか、ついてないとか、いろんな問題がございまして、それについて現在検討をしている段階でございます。
それから、パッケージ化のためのヒアリングやアンケートをやってございますけれど、こういう表を一応つくって、IPCの分類であるとか、グルーピングをしたりとか、出願日から始まって、権利者の状態だとか、そういうことも含めながら現在策定中という状況でございます。
【石田委員】
ありがとうございます。よい先例になりますように、実効性のよいルール化を、ガイドラインを期待しております。ありがとうございます。
【山梨大学(田中理事)】
ありがとうございます。ぜひ、ご指導をよろしく、ひとつお願いいたします。
【白井主査】
それでは、原山委員からお願いします。
【原山委員】
レディーファーストですみません。
2点ほど伺いたいのですが、これは、サポート組織を大学に埋め込むということは規模の経済が働くので、複数の大学が共通の部分をつくるって、皆さん、頭の中でわかっていても、実践できない。多分ご苦労多いと思いますが、その体系化で少しお話を伺いたいです。
1つは、根本のところにある、各大学の知財に関する、また産学連携に関するポリシーというのが異なると思います。それはある種の共通部分をつくらないとこういうのは動かせないので、その辺のご苦労はどう調整なさっているかというのが1つと、それから、最終的には法人化なさるというお話です。理想的な話だと思いますが、法人化するということは外部機能とするわけで、その後に今のメンバーの大学との関係をどう構築なさっていくということを想定なさっていらっしゃるのか、その辺をちょっと伺わせてください。
【山梨大学(田中理事)】
まず、各大学のポリシーが違うというのは、そのとおりであります。先ほど言いましたけれど、総論は賛成でも、各論に入ってくると衝突してしまいますね。そこをどうやって同じ方向に向けながら、あるいは、お互いが譲り合えるところは譲り合える、一緒にやるところはやれるかということが実はかぎですけれど、それをやるためには、先ほど合宿と言いましたが、よくわかり合うしかないです。僕らが静岡大学のポリシーをよく知っているかというと、よくわからないです。我々のことをよくわからない。やはりそこは、時間がかかっても、まず知財の担当者、直接の担当者がよくわかること。それから、我々責任者がそれをよく知ること。そのことを大学の学長が理解しないと、絶対動かないですね。学長がだめと言ったとたんに、もうだめです。学内の中だけでも結構それは難しいところがあるので、まして連携した場合については、ご指摘のようにすごく難しい問題があると思います。そこにお金がかかることと時間がかかること、それを苦にしないでやらなきゃいけなくて、それをやって初めてほんとうの成果が出るのかなと思っています。
次のUCIPの独立の話ですが、これは、今こうやってUCIPが何とか動いていると、非常によく動いていると私は思いますけれど、それは、文部科学省という一つの方向があって、そこにお金を出してくれているから、きちっと動いていると思います。一番最後のスライドで見せていますけれど、ほんとうに参加大学がメリットを感じて、自分の身銭を切ってここでやってくれるかどうかだと思います。どういうサービスを提供すれば、それをやってくれるのか、実はすごく悩ましくて、答えは出ていませんけれど、先ほど言ったように各大学の意思疎通を明確にする中で、どうすればいいかというのを、あと2年間、ここで何とか答えを出していきたいというのが、正直なところでございます。
【白井主査】
それでは、羽鳥委員お願いします。
【羽鳥委員】
複数大学での共同した取組の中で、非常にすばらしい取組で、おそらくモデル的なものになるだろうと、私はすばらしいなと思っています。コメントは1点で、先ほど石田先生がご指摘されたような、15ページの特許のパッケージ化のあたりのところです。ここのところで私ども慶應も、iPSの4拠点の連携など、そういった中で既に体験済みですけれども、特許出願が論文よりも早く出すようになればなるほど、複数の機関が一緒になってやる場合に、連携という部分、つまり、協調という部分です。それと、競争(コンペティション)という部分と、両方の側面があります。例えば共同研究みたいな形で共有特許、これは全く問題ないですね。でも、ほんとうにコンペティションのところになりますと、いつの段階でパッケージというか、共有してやっていくかというのは、すごく難しい問題だと思っています。これは、お聞きするというよりは、体験上出てくるので、競争と協調というのをどういうふうにうまく調和させるかというのが、こういった複数大学の連携のときの一つの視点かなと思っております。
【白井主査】
西山委員お願いします。
【西山委員】
2点、質問をさせていただきます。
1点は、目的が国際的な産学官連携の推進をするということだとしますと知財との関係は不即不離だとはもちろん思いますけれど、そうした場合に、知財オンリーワンではない部分の国際間の連携をどうするかという部分の構想という側面がやはりあろうかと思います。国際間の連携というのは、すべてが知財ではないと思います。もちろん知財が何もないわけではないので、一番重要だと思いますけれども、その辺のところは、今、知財に相当特化したようなお話だったように思います。目的が国際間の連携をするということであれば、世界の中の全方位の国際的連携をしていくのか、地域を特化してやるのかということも含めて、構想が随分変わってくるように思います。その辺がどうなっているのかという質問が1点です。
それからもう1つは、12ページに既に山梨大学は米国に特許事務所を設けておられるような記載がありますが、それは、米国のパテントローヤーの方が何人おられて、山梨大学の職員の方が何人ぐらいそちらに常駐されておられるのかという質問であります。
【山梨大学(田中理事)】
第2番目のほうからでございますけど、山梨大学はアメリカに拠点を持っていませんでして、誤解を招くような記載があったとすればおわび申し上げたいと思いますけど、我々、実は米国の特許事務所というかローファームの中でBSKBと随分長い間おつき合いをさせていただいています。そういうおつき合いの中で、我々の職員を3カ月とか長い期間預けたり、向こうから来てもらっていろいろ教えてもらったりしているということだけでして、実際は、事務所もございませんし、常駐した職員もございません。
それから、最初のご質問でございますけれど、確かに、我々は始めるときから、特許などに特化して国際展開をしていくというふうに考えて、やってきました。表題は言われるとおり産学官連携ではないかといったら、確かに特許だけではないですけれど、現状、我々がやれているのは、特許の海外との共同研究、ライセンス契約を取るというところがほんとうに精一杯のところです。ただ、もちろん別のスキームで国際交流等はやってございますけれど、残念ながら特許に、知財に特化した活動になっております。
【西山委員】
ありがとうございました。
【白井主査】
ほかにございますか。どうぞ、井口委員。
【井口委員】
非常に参考にさせていただきました。実は、国立高専機構と、長岡技術科学大学、豊橋技術科学大学の2つの大学でスーパー産学連携本部というのをつくって活動を始めて、ほとんどこれに近いような課題を抱えております。ただ、高専は55あって、10月から51高専になるんですけれども、比較的まとまっている。
それから、1つ質問ですけれども、人件費のところですが、私どももお金がないので自分たちからは出せないので、文部科学省のコーディネーターということを全国の8つの地域拠点をつくって活動と、それから大きい2つの、大きいといっても高専に比べたらはるかに大きい長岡技科大と豊橋技科大のコーディネーターの方にご協力いただいていますが、この生の人件費の中にはそういう文科省の外部の資金のお金が入っているのでしょうか。それとも、そうでなはなく生に出ているお金でしょうか。
【山梨大学(田中理事)】
手元に積算の資料が一応ありますが、外部人材という項目がございまして、そこに専門人材という経費として780万が積算されております。おそらくこれが文科省の産学官連携コーディネーターの費用だと思いますので、すみません、不確かでございますけど、おそらく入っていると思います。
【井口委員】
どうもありがとうございました。
【白井主査】
ほかにありますでしょうか。
【西岡委員】
大変貴重なご努力をされていると思いますが、例えば法務調査研究だとか、この4つの大学だけではなく、国全体で使えるノウハウがここにはいっぱいあると思います。国全体で考えたら、この活動がもし非常に重要であると文部科学省が認めるのであれば、国全体でこのことをやっていかないと、何となく4つの大学で実験をやってみているというような感じにしか見えないですけれど、これに関して文部科学省はどう思っているのでしょうかということを文部科学省に質問したいのですが。
【渡辺技術移転推進室室長代理】
こちらのUCIPの取組は、平成20年度から開始しておりまして、5年間やっていただくということでございます。したがいまして、そこで5年間の取組などを見た上で、次の戦略展開事業はどうするかというのは今後の課題になってまいりますので、これは非常にうまくいったということであれば、次の戦略展開事業を展開するときに、1つ全国的なネットワークをつくるということを打ち出してもいいかなというように思っております。今後の課題と思っています。
【西岡委員】
大変申しにくいのですが、例えば今の実績の数字がありますね、特許の数だとか。そういうことを考えたときに、このUCIPと一緒にやっていく相手がいると思いますが、相手からのニーズを考えたときに、もっと大きい組織がやりましょうかというのと、違うと思います。だから、もしこれだったら、やはり最初に東京大学がいないといけないのではないかなとか、何でここで小さく実験されるのかなと思います。小さくという言い方はすごく失礼で悪いのですが。
【山梨大学(田中理事)】
小規模の大学でございます。
【西岡委員】
文部科学省にそういう覚悟があるのでしたら、なぜやらないのかという疑問を持ちました。
以上です。
【白井主査】
どうぞ。
【秋元委員】
1つはUCIPに対する心からのサジェスチョンになるかもしれませんが、将来的にこれを法人化しようと思ったときに、先ほど羽鳥委員が言いましたように、iPSでもいろいろもめているということです。各大学の協調とコンペティションがあって、なかなかうまくいかない。やはりこういう組織をつくろうと思ったときには、どうしてもこれを外に出してニュートラルな組織にせざるを得ないだろうということです。そうしないと、各大学の考え方、戦略・戦術も違いますから、なかなかまとまらない。だから、今意見がありましたが、東京大学がもしやるとすれば、東京大学ではなくて、東京大学を含んだようなニュートラルな組織をつくるとうまくいくのではないかと思います。
そのときに、UCIPがどうやっているかわかりませんが、1つは、さっき、特許出願の件数、それから人件費の問題がありましたけれども、外に持っていくというのは、政府の補助をもらうというのではなくて、独立採算できるかどうか、そういう観点から考えなければいけないと思います。そうしますと、特許の評価そのもの、あるいはその出願前のいわゆるグローバルマーケットを考えたような戦略・戦術、こういうところがないと、多分、独立採算できません。アメリカの大学で例えばハーバード、スタンフォードやウイスコンシンは自分たちだけで独立してできますが、そういうサイズを考えると、日本にはやはり1つか2つぐらいだろうと思います。そういう形で日本全体として外に出してニュートラルで、しかもお互いに秘密保持をきちっと守った上で、しかも特許の評価・価値、あるいはそれ以前の戦略・戦術を考えたような組織にすると、多分成功するのではないかなと思います。
少しスペシフィックな質問で申しわけないですが、UCIP全体の例えば文部科学省からのお金に対して、各分野にどのぐらいのお金の分け方があって、それに対して成果、あるいは特許出願でもいいですし、ライセンスの成約でもいいのですが、その辺の割合というのは、どこかに詳しいデータがあるのでしょうか。というのは、各分野にそれぞれ予算が配分されたとしても、大学としてはいろんな予算の使い方があると思いますけれども、知財というところにもし焦点を当てるのであれば、それはほんとうにコストパフォーマンスがうまくいっているかどうかということも検証していかなければいけないと思います。
【山梨大学(田中理事)】
UCIPでいただいている経費というのは今年度7,200万円ですけれど、そのほとんどは人件費で消えています。
【秋元委員】
ごめんなさい。UCIP加盟の全体の大学でそれぞれの分野でどのぐらいのお金が出ていて、その成果としてこういう知財というものがどのぐらい出ているかというのが質問でした。
【山梨大学(田中理事)】
すみません、すぐには把握できてないというのがほんとうのところですけれど、コストパフォーマンスは上がっているかといったら、直感的には非常に難しいのではないかなというふうには思いますけれど。
【秋元委員】
ただ、法人化する場合はそれを考えなければいけないだろうし、ただ出せばいいという問題ではなくて、それがほんとうに必要なのかどうか、グローバルにライセンス契約できるのかどうかと、そういう評価というものがどうしても入ってくると思います。
【山梨大学(田中理事)】
独立化に向けて考えていることは、一番最後のページでございますけれど、各大学が困っているのは、知財の管理と活用です。人件費も、管理の費用も、かかっています。これは、集約することによって今の経費は下がるし、効率的になるだろうと思っています。各大学のニーズもそこにあるだろうと思っています。ただし、ほんとうにお金を出してくれるのかどうか、今かかっている経費を出してくれるかどうかといったら、それはやはり、まだまだ疑問だなと思っています。
【白井主査】
ありがとうございました。
牧野委員、ありますか。どうぞ。
【牧野委員】
組織的なことを少しお聞きしたいのですが、図や、先ほどの説明を見ておりますと、今のところ大学の中にすべて存在しているようにお見受けするのですが、大学の外にTLOがあるのではないかなと思うのですが、TLOとの組織的な関係ですね。この辺がありましたら、どうやってうまくおつき合いされているのか、あるいはこれからどういうふうにしていかれるのか、この辺を少しお聞かせいただけたらありがたいと思います。
【新潟大学(辰巳教授)】
今のご質問にありましたTLOとの関係について、新潟大学からご報告させていただきたいと思います。
今、新潟には、広域TLO、新潟TLOというものがございまして、我々と非常に密なる連携をとって活動をしております。それで、我々が、TLOのメンバーの方々の得意、不得意といいますか、それぞれの専門分野がございますので、そういった分野によってTLOにいろいろな活動をお願いする。いろいろな活動といいますのは、例えば、展示会でのプレゼンテーションや、企業とのコンタクトであるとか、そういったことをお願いするということで現在やっております。
【牧野委員】
それでは、今、独立を考えておられるという話ですけれども、将来的に、独立すれば、外部に独立した機関が2つ、TLOと存在することになっていくのですが、これもまた一緒になっていくと考えておられるのですか。
【新潟大学(辰巳教授)】
その辺に関しては、今、学内においてもいろいろ検討をしておりまして、まだ決まった方針というのはございません。
【牧野委員】
そうですか。どこの大学もTLOとのつき合いというのがうまくいけば一番いいだろうなと、我々もそう思っているのですが、その辺は少し、将来的なことを考えていかないと、最後に考えるとうまくいかないのではないかなと思って、少しお聞きしたわけです。ありがとうございます。
【白井主査】
ありがとうございます。
それでは、簡潔にお願いします。
【竹岡委員】
どうもありがとうございました。大変ご苦労の多いところで、まだ、見させていただくと、組織をつくって、これから始動させて、どうやって成果を上げていこうかという段階でのご発表だから、これからに期待したいと思って聞いておりました。
1つは、特許と、それから特に特許の中でも海外出願を含めたところにかなり注力されているという感じがいたしました。加盟大学の中で、例えば、電気通信大学、芝浦工業大、学や、静岡大学などもそうですけれど、見ていると、必ずしも特許だけではなくて、むしろ情報系のソフトウエアの分野で非常に成果を出しているところとかは、特許には数としては絶対出てこないような部分もあると思います。加盟大学の中の分野によってのある種の強みというか特色、特に地方大学の特色みたいなものをうまく拾い上げる形でこの組織ができていくと、例えば、UCIPは特許と情報系には強い人材がいるとか、あるいは、ほかの組織であれば、例えばバイオ系に強い人材がいるとかいうことであれば、この分野はここに頼もうとかいうことが非常に出てくるから、つまり、ある地方大学にフルラインナップで、例えば、バイオにも強い、情報にも強い、そういう人をそろえるというのはできないから、逆に、今の段階でこれを言うのは非常にハードシップかもしれないですけれど、特に独立に向けたことであれば、何か特色、ライセンス活動とか知財サポート活動に関する特色的なものが出せていければ、いろんな大学から、あの分野であればここに頼もうというのが出てくるかもしれないと思いながら聞きました。
【山梨大学(田中理事)】
ありがとうございます。全くそのとおりだと思います。我々、スライドの21の課題の中にそのようなことを書いてございます。各大学の強みの分野の集約化、各地域の強みの技術の共有化ということで、それをやらなくてはいけないなと思っていますし、もともとUCIPが連携するというのは、言われたようなお互いの強いところを生かしながら相互補完していくというのが趣旨でございますので、何とかそうなるように頑張ってまいりたいと思います。
【白井主査】
ありがとうございました。まだいろいろあるかもしれませんが、後を少し予定しておりますので、一応この件に関してはこの辺にさせていただきます。
どうもありがとうございました。
【山梨大学(田中理事)】
ありがとうございます。
【白井主査】
それでは、続いて西村教授から、資料2についてお話をお願いします。
【三重大学(西村教授)】
三重大学の西村と申します。今日は、こういう時間をいただきまして、ありがとうございます。多分、私たちは地方大学の特徴的な取組としてここに呼ばれたのだと思いますので、先ほどの世界的な展開とは私たち全く違って、一地方大学、中規模の地方大学がどういうことをやっているかというのを、その現状をお話ししながら、できれば問題点のようなものを抽出していただければと思います。
三重大学という大学は、三重県にある大学です。三重県の中にある唯一の国立大学という位置づけですが、一応バックグラウンドとして、おそらく三重県と言われても知らない方々が多いと思うのですが、唯一あるとしたら、伊勢神宮があるのが三重県であります。これも知らない人が多いのですが、実はこの地域というのは北と南でかなり温度差のある県でありまして、北のほうは、今、少し経済状態悪いですが、ホンダであるとか、東芝とか、シャープとか、非常に大規模の工場があって、経済成長率が非常に高い、県の牽引の場所になります。このような北部の工業地帯と、三重県南部というのは、実は過疎化が非常に激しくて、高齢化が進んでいるという、南北問題のある県であります。人口規模、国内総生産ともに、ほんとうに目立たない、22位というちょうど真ん中の県です。ただ、ここにある唯一の国立大学として三重大学というのは、5つの研究科・学部がありまして、人文、教育、医学、工学、生物資源と、総合大学として機能しています。ただし、それほど極めてすごい技術がある先生方がいるというものでもないです。学生規模は7,000人程度、教員数は700名程度、というサイズになります。
ただ、こういう地方の大学ですが、私たちなりに存在意義というのを考えながら活動を続けてきておりまして、残念ながら今回の戦略展開事業の、その前の予算である、知財整備事業というのは採択されずに、逆にそれが私たちにとってよかったのか、すべて私たちの手弁当で体制づくりをしてきたというところがあります。唯一ここに書いた、三重大学として誇れるということになるのかもしれませんが、中小企業との共同研究数が国内大学ではトップクラスということを文部科学省のほうから以前教えていただいて、私たちもそれを意識してやってきたので、ちょうどそれがほんとうに日本の中でも認められてきたのかなというのが、今の実態です。
そういうことを踏まえながら、私たちはどういう大学なのかということを明確に教員すべてが意識するようにしようと、あと県内でもそういう意識でいこうということを対外的に語っています。ですから、テーマとしては「三重から世界へ」と書いたのですが、これは何かというと、地方大学といえ、非常に狭い分野になりますが、その分野では世界で一番の技術をつくらないと、とてもではないけれど地域の企業――地域の企業は意外と小さい企業でも国内のトップシェアをとっている企業もいますので、そういう人たちが国際的に出ていくというときにやはり世界規模の、世界的に通じる技術が必要になります。ですから、私たち自身もそういう、大学としてはどんなニッチな分野でも世界一の研究をしましょうということです。逆に、そうでないと地域の企業に対して貢献できませんということです。そういうことで地域の企業、地域ばかりにこだわるかもしれませんけれども、三重大学として地域に根差して、世界に誇れるような研究・教育をしていこうということです。
社会貢献としては、本来は国立大学なので国のことを見ろと言われるかもしれませんが、私たちは三重県にある三重大学として、この地域を守るというか、発展させるということにやはり重点を置きたいです。それこそが存在意義であって、存在していてもいいだろうなということになるかと思いますので、地域づくりが地域発展に寄与するというのを一応特徴としています。ですから、地域の中小企業の成長を支援することで地域社会の発展に貢献するというのが、産学官連携における基本的な考え方としております。
その体制ですけれども、これもすべて私たちのほうで手弁当でつくってきたので、最初は各研究科に、医学、生物、工学のほうに推進本部を置きました。そこを束ねるような形で全学組織として、副学長がセンター長となって、社会連携研究センターという全学的な支援組織をつくっています。私はそこの実際の責任者として、今働いております。知的財産統括室というのも一応置いて、将来的にはこのセンターの中に統括室を入れる方向で進んでいます。ただ、産学連携をする組織をただ置いていてもだめなので、今それを実態のある研究・教育とつなげる作業をしています。そのための一つの策として、産学官連携を教育・研究の土台とするような大学院をつくる活動を昨年度から始めて、ことし4月からそういう産学官連携を土台としたような教育・研究をする大学院として地域イノベーション学研究科というのをつくって、そこがある面、産学官連携の教育・研究です。それの産学官連携のほんとうに実務部隊というのが、この上に書いた社会連携研究センターです。そのような関係で、今、三重大学は動いています。
なぜこのようにしてきたかというのは最後に申し上げますが、地域イノベーション学研究科、少しだけ話をいたしますと、これは、地域の企業と共同研究をやって、その中で学生を育てようということです。それと、そこで出てきた研究成果で地域の企業が世界などに出ていくときに、極力お手伝いをします。地方にはポテンシャルの高い企業はたくさんありますけれども、今苦しんでいる成長障害因子というのを人材の面や共同研究の面で支えていって、何らかの形で役に立ちたいという目的です。ですから、規模は非常に小さいです。ただし、その中に1点だけ特徴としてつけたのは、青字で書いた中に「PM教員2名」と書いてありますけれども、これを産学官連携のプロデュースをする人材として、工学系、バイオ系にそれぞれ1人ずつ、教授職として民間企業からパーマネント職として採ってくるということをやりました。これも一つの、産学官連携を進めるためのちょっとした策になります。
ではこの地域イノベーション学研究科でどんなことをやるのかというと、先ほど申し上げました5つの研究科からはすべて等距離に置いて、各研究科から1名2名ぐらいの教員に出てもらいました。地域イノベーション学研究科に集まっていただいて、先ほどのPM教員と組んで活動をします。何をするのかというと、左から落とし込みます。左というのは、基本的に三重県の中における地域ニーズ、これに合わせて、北部対応、南部対応ということでユニットを形成して、そこに教員を張りつけて、共同研究をしながら人材をつくっていきます。「『産学連携』で即戦力人材を育成」と書いてありますが、学生の特別研究を行うテーマというのは、地域の企業の皆さんと行う共同研究を題材にします。ここに学生を担当者として張りつけて、単なる基礎研究だけではなく、PM教員がプロジェクトマネジメントを教える、こういうサンドイッチ方式の教育をとります。それと、企業のほんとうに必要なプロジェクトで教えるので、オン・ザ・プロジェクト・トレーニングという形の、こういうOPT教育とサンドイッチ方式教育というのを特徴として、この研究科を進めています。その成果をもとにして地域の中に人と技術を送っていくような形になります。それと今回の戦略展開事業というのをかなりきちっと組み込ませていただいて、こういうふうな土台の研究科ができたので、この研究科を土台にしながら、なおかつそこで動かしていくプロジェクトをしっかりさせていただくのが、今回の戦略展開事業です。
このときにどうしたらいいのかというと、やはり動かす人が必要で、実際には私自身が、プロデューサーとここに書きましたけど、そういう位置づけとして、地域の中の企業と、今、かなりほとんどの企業と連携をとっていますが、その人たちと地域に必要な課題を見つけます。戦略を立てて、プロジェクトを起こして、それを地域全体で一緒になって動かしていくということです。こういうプロデューサーをつくるということと、実際に動かすプロジェクトを実施するということで、最終的には中小企業の成長を支援することで地域社会の発展に貢献します。そのための土台としては、地域イノベーション学研究科という場所が共同研究の受け皿であり、あと高度人材の教育の場であります。そこにプロデューサーが一緒になって地域を走り回ってプロジェクトを起こしていって、地域の中に落としていきます。このように、私たちは5年ぐらいかけて体制づくりはしてきましたが、そろそろ結果を出さなければいけないということで、この戦略展開事業に応募させていただいて、私ひとりではできないので、2人のプロデューサーが欲しいということで予算を取らせていただいて、今、3名のプロデューサー、その下に3名のプロデューサー候補を雇っています。雇っているといっても、この中の2人は我々の助教という形にしていますから、大学の費用で雇っています。1人は戦略展開プログラムで雇わせていただいたのですが、来年度からは私たちの間接経費で雇うという方向で今進めています。ですから、育てて学内に落とし込むということも一応組み込みながら、体制づくりをしているというところです。
この具体策というのは地域的にこのように3つぐらいに分けて動かしていますというお話ですけれども、1つ事例として挙げますと、これは私が動かしていますが、地域の製油企業と酒造メーカーがユズを使った製品をつくりたいという話になって、三重県南部はユズがないので、県南部の過疎化対策にユズを植えさせようということを企画して、今これを動かしています。実際にこれはもう動き始めていて、ことし3月には2,000本のユズを植えて、酒造メーカーが果汁を使って酒をつくる、製油メーカーが皮から油を搾って香料にする。こういったものを最終製品として3つぐらいのカテゴライズした製品を、私がプロデュースしながら、いろんな方々にかかわってもらって結果を出していきます。とにかく私たちは地方大学なので、体制づくりや形づくりばかりやっていてもほとんど役に立たないので、結果を出すということで、かなり手弁当に近いのですが、そういう活動を続けてきています。
そういうのが今かなり動いてきているので、こういうことをやりながら非常に私たちが感じたことというのは、産学官連携を担当する組織というもののあり方は、それだけが浮いていて、テンポラリーなものではだめでして、既存の教育・研究の組織、つまりは研究科や学部と実質的に対等にしなければいけないと思います。これは人員の面でもそうです。ですから、例えばコーディネーターという形のテンポラリーな職として3年、5年の任期でいただいても、リタイアした方々をつないでいくしかなくなってしまうので、財産としては残らないです。ですから、若い教員をそこにはめ込むということで、人員を割くということをしてきています。それだけでもだめなので、やはり教育・研究機能を持たせないと人は残せないということになりましたので、地域イノベーション学研究科をつくって、そこに産学官連携のプロデュースをするようなプロジェクトマネジメント担当のポジションを2名、これをパーマネントの職として文部科学省からいただけたということです。こういうことで、人員数はそんなに多くないですが、恒久的につながります。トータルで6名から8名ぐらいがパーマネント職になります。今のところ6名ですけれども、そういう人員で動かせる体制をつくって、何とかこれを定着して地域に必要なものにしていこうということを進めています。そのためのきっかけとして、今回の戦略展開事業というのはかなりありがたかったかと思っています。
あと、こういう活動をしっかりしているということを地域社会で共有させるというのは重要で、私たちは三重県庁とかなり組んで動いていますし、私自身も地域の有力な企業の社長とはほとんど飲み友達になります。少し変な言い方ですけれども、そういう形で、何かをやるといったときにすぐにだれがということがわかるようなネットワークというのは、かなり人的なつながりとしてやっています。逆に、そういう人的なつながりをつくるためには、人をずっとその専任者として継続させていくということ、経験を積ませていくということが重要かなと思っています。
すみません、時間を無視してやってしまったかもしれませんが、以上が三重大学の事例ということでご報告させていただきたいと思います。ありがとうございました。
【白井主査】
ありがとうございました。
それでは、今のお話に質問などございますか。森下委員、どうぞ。
【森下委員】
西村さんは、いろいろと昔から知っていますけど、北海道でもされていましたよね。北海道大学みたいな大きな大学と三重大学という地域の大学でやるときの違いとか、実際、産学連携のやりやすさ、それぞれの課題と、そのポイントというか、違いというのはどうですか。両方経験されている方はあまりいないので、どう思われますか。
【三重大学(西村教授)】
森下委員、ありがとうございます。
昔、私はベンチャー企業の社長をやっていまして、そのときは北海道大学と産学官連携で会社経営をしていた立場でいろんな動きをしましたけれども、トップの方々につなぐのが遠いですね、大きな大学は。それと、トップの方が決めたとしても、動かないですね。会社経営から考えると、トップマネジメントをするには組織としては大き過ぎるなというのが、旧帝大系の特徴です。地方大学というのは逆に言うとそれがものすごくコンパクトになっているので、私もいつも学長や副学長とすぐ話ができます。私、非常勤から始めたけれども、5年前に参加したときには週2日のパートタイムで三重大学の産学官連携担当者として来ましたが、その立場でもすぐ学長といろんなディスカッションをさせていただいて、私がかけた提案をすぐ採用して実行させてくれるというのはありました。
ただ、問題点もあります。これは、組織力の弱さということはないですが、やっぱり脆弱過ぎて、油断すると私が全部仕切ってしまうことになるので、その怖さがありますね。私がもし倒れたらどうなるんだということをたまに言われるので、これははっきり言いますが、地域イノベーション学研究科をなぜつくったかというと、僕が死んでも組織が動くようにということが学長命令だったので、そういうことでつくりました。そういう意味で言うと、地方大学は非常に、風通しというか、クイックに動きますけれども、組織が脆弱という、このバランスをうまくとっていかないと、うまくいくときもあるし、全くだめなときもあるだろうと思います。
【森下委員】
そうすると、実験的なことをやろうとすると地方大学のほうがいいらしいと思いますが、三重大学は地方大学でもサイズ的には小さいほうですね。もう少し大きいほうがいいのか、それとも三重大学くらいのサイズが一番いいのか、その辺の感触はどうですかね。
【三重大学(西村教授)】
結果を何に出すかによります。私たちは三重県の中でこの地域の発展ということを考えると、サイズ的には三重大学はぴったりです。これをもう少し大きく、道州制みたいな形で、例えば中部圏をどうしようかとか、東海地方をどうしようかというようになると、やはり三重大学のサイズでは、例えば研究者のレベル、レベルと言ってはいけませんが、密度が低いので、難しいかと思います。ですから、最終的に解きたい課題のサイズに応じて、多分、実験する場は変わってくると思います。私が今いる三重大学というのは、三重県を何とかする、地方の問題をどうやって解決するかというのには非常にいい実験場だとは思います。
【白井主査】
ほかにはいかがですか。
西岡委員お願いします。
【西岡委員】
やっぱり人だと思います。だから、私たちは西村さんのような人をいっぱい見つけて各県に送り込まないと、いくら組織をつくっても、やはり動かすのは人だと思います。非常におもしろいお話でした。
【三重大学(西村教授)】
少しそれは私を買いかぶっているかもしれません。私がどこでも働けるかというと、そうではなくて、先ほどの森下委員のお話にあった北海道では、あまり働けてないです。動かし切れませんでした。これはなぜかというと、サイズの問題もありましたけど、結構重要なのは思い入れです。私は何で三重大学でこんなに働くかというと、三重大学は別に私の出身校ではないですけれども、私はさっき紹介した三重県南部の過疎の地域の出身なんです。ですから、故郷で働けるということと、ある面、故郷に対する思い入れというのが大分モチベーションになっていて、昔、経営者をしていたのでこんなに楽な商売はないなと思っているのですけれど。税金でこうやって好きなことをやらせていただくという状況に置かれているのでしたら、純粋に自分のほんとうにやりたかったこと、地域のために何か貢献したいなというのをほんとうに純粋にやっています。青臭いですけれども、そういうところです。
【西岡委員】
北部に大企業3つという固有名詞を出されましたが、聞きたいのは、ああいうところの企業は、このような話に乗ってきますか。
【三重大学(西村教授)】
乗ってきません。
【西岡委員】
乗ってきませんでしょうか。
【三重大学(西村教授)】
全くではないです。例えば四日市のところは、コンビナートをつくって集合体をつくっていますから、ここで解かなければいけない共通の課題というのがあるので、例えば防災の面であるとか、そこはいろいろ協議会をつくってきます。ただし、例えば今回のシャープのケースだとかホンダなんていうのは全く三重大学とは関係のないお話になりますから、そこは少し今後の問題です。ただし、そこに製品を出している中小企業というのが連動して動きますから、この人たちに対してのケアというのは、大学は非常に重要な立場になると思います。
【西岡委員】
そうですね。さっきユズが出てきて、これはいいなと思って聞いていましたけれど。
【三重大学(西村教授)】
まだ秘密にしたかったんですけれども、これは多分いけると思います。これも固有名詞を出してしまうと、辻製油という会社があって、全国第4位の油を搾る会社ですけれども、ここが今、高知県とこのプロジェクトを始めようとしています。この社長がやはり地元のことを何とかしたいということで、農商工連携と言われる前から実際にやっていたことです。私も地域でやっていたときに、高齢化が進んだときはユズぐらいでないと、片手間でやらせるぐらいの農業でないとだめだと思いました。ただし、現金になると、現金になるような策を足し算でいっぱいつくってあげることが地域を継続させるための唯一の手段かなと思ったので、今回はユズで動いています。
【西岡委員】
ありがとうございました。
【白井主査】
それでは、渡部委員お願いします。
【渡部委員】
私は、三重大学は3年ぐらい前に突然押しかけたことがあるのですが、覚えていらっしゃると思いますが、中小企業との共同研究数でたしかトップクラスって紹介されていましたが、そのデータを見て、知財本部整備事業もとれてないし、そういう中で何でこんなに多いのだろうということで行きました。私なりに理解をしたのは、本部事業をとれてなかったせいで、戦略性から立ち上がった組織づくりだというふうに理解をしています。これが1つです。これは、先ほども仕事場をつくって組織をつくるのは大丈夫ですか、みたいな話がありましたが、若干、今までグラントがあるから組織をつくるということもあったのかもしれないと思います。それはやはりよく考えないといけないですね。私の考えでは、組織をつくるときは100年先まで考えるくらいのことをしないとほんとうに先まで生きる組織はできないと思いますが、そういう意味で戦略性から立ち上がった組織という印象が1つあります。
例えば、具体的に言えば、中小企業との共同研究というのは実を言うとすごく難しくて、キャッシュはまずないと思います。普通、おそらく大企業は渋くても100万円ぐらいは払うのでしょうけれども、多分、100万払わないと思います。中小企業の共同研究は、20万や30万だと思います。普通、知財マネジャーがそういう仕事にかかわるためのインセンティブを何とか組織的に戦略的に設計していかないと、それはできないはずです。この大学の場合は、そこは知財などを上手に使っていて、特許というのは出世払いの構造を持っていますので、それを要所に入れて使っているようなヒアリングをそのときはさせていただきましたが、実はその傾向というのは全国的なデータを分析していても出ていまして、キャッシュがない中小企業と共同研究をセットアップするためには特許などを上手に使っていかないと、うまくいかないということになっています。これは実は結構重要な話で、今、中小企業との共同研究数は減ってしまっています。特に地域との共同研究数は減ってしまっていまして、やはりキャッシュだけでいくとそっちに選択できないということで、これは逆に言うと三重大学みたいな戦略性を持ってやっていただくところをますます支援していかないと減ってしまうだろうという気がします。その辺は非常に重要な事例だというふうに思っていますので、学ぶものもあると思いますし、三重大学にも今後頑張っていただきたいと思います。
以上です。
【白井主査】
それでは、南委員お願いします。
【南委員】
すみません、私、知財とか特許とかということにあまり専門的でないので、今のお話をそういうこととは別として、非常にわかりやすいお話であったというふうに思いました。それで、中小企業との連携で知財・特許を通して地域を振興するということだけでなく、地域振興全体を最終的なミッションというふうに考えておられるということで、地方大学がそういう役割を担うということは非常にすばらしいことであると思います。けれども、5年ぐらいいろいろ試行錯誤されて、最終的に例えば、社会で今問題になっているような若年人口の地方からの流出とか、雇用とか、それから少子化問題とか、そういったことまで含めた社会の再生みたいな上では、見通しとしては非常に明るいものが描けているというふうに思っておられるかどうか質問させてください。少し漠然とした質問ですけれど。
【三重大学(西村教授)】
非常に的確なご指摘だと思います。大学が企業だけを見て空素振りしていてもだめで、地域に人が住めるということを私たちは最終的にやりたいと思っています。このためには、地域に根差している企業がしっかり動けなければいけないというのは確かです。これは前提です。ただし、若年層などをそこにほうっておいたらそうなるかというのは絶対無理で、私たちが別にやっている活動としては、例えば地域イノベーション学研究科の中には、客員教授を2名採用しています。1人は、地域の薬事工業会の会長です。もう1人は、百五銀行という地域の金融機関のトップの方です。ですから、地域の産業界のトップの人が大学に来てもらって大学院生に地域イノベーションを教えるというようなことでの連携をさせています。それと、講義の中では、15回シリーズで中小企業の社長に順番にしゃべっていただいて、それを学部生に聞かせています。そのようなことで、地域にはこんなにおもしろい会社があって、ここで取り組むことが君たちにとっては人生設計できるということをできる限り触れさせるようにしています。これをもう一段落として、ことしからやっている作業は、地域の高校生を対象にして、この地域にはこういう企業があって、こんなにおもしろいということです。そういうことを知った上で社会に出て、三重県を出ていってもいいけど、三重県に帰ってきて自分の故郷で何かをしたいというための意識づけというか、いわばそういうすり込み作業のようなこともしっかりやらないと、どうしても情報が一方的に中央から来るので、そっちばかり見てしまいます。私は地元を見るということに対してしっかりと教育をするというのは地方大学の重要な役割だと思って、今、高校生ぐらいからやるようにはしています。
【西岡委員】
これにもっと予算をつけないといけないですね。
【三重大学(西村教授)】
あまりお金は要らないです。全部、手弁当でやりますから。あまりお金をもらってしまうと義務になってしまうので、お金ありきで動くと、どうしてもすべてをうまくできません。すみません、お金要らないと言っているのではないです。適切なお金、的確なお金が重要であって、お金を取るためだとか、お金を使うためにというのはあまりよくなくて、できれば長いスパンでお金を安定的につけて見通させていただくというのが重要かと思います。ですから、今回、5年間というのはかなり私たちにとっては助かっていて、5年スパンで物事が考えられるということがあります。
【白井主査】
少し時間が過ぎていますが、どうぞ三木委員いいですよ。30秒ぐらいでお願いします。
【三木委員】
結果を出すということは非常に大事なことだと思っていますが、1つは、その結果を出すとき、それから将来的なビジョンの中で、地域振興というビジョンの中で、時間スパンをどうとるかということ、この点について少しいろいろお伺いたいしたいと思っています。特に難しい点は、すぐれた人材を地域に定着させるということ、これは至難のわざだと思います。プロジェクトプロモーションをしてという話は具体例でユズの話を伺ったので、もう1つのほうの人の問題について、少しお話を伺いたいです。
それからもう1点は、三重にもたしか鈴鹿高専という高専があったと思います。大学単独でなぜそこまでやるのか、この辺のところも事情をお聞かせいただければと思います。
【三重大学(西村教授)】
全部をしゃべれなかったところもありますが、地域に人材を残すというのは非常に重要ですけれども、まず最初にやったことは、戻すということをやりました。地域だけを知っている人間は、少しこれはきつい言い方をしますけど、やはり甘いです。いったん外に出ないといけません。私も、少し偉そうなことを言うと、別に三重大学で働かなくても職はあります。中央でも、どこでも、海外でもありますけれども、逆に言うとちゃんと戦える人間を地域に残して、地域の重要な仕事のおもしろさをわからせて居続けさせる、これが重要だと思います。
【三木委員】
それでは、時間スパンは15年とかいう時間で考えているのでしょうか。
【三重大学(西村教授)】
そんなに長くなくて、例えば私が来てからまだ5年たってないのですが、今、三重大学はここまで来たと思います。あと、私に続く人間が、今、大分戻ってきています。こういう人たちがそれぞれプロジェクトを動かし始めると、1年、2年のスパンで、例えばユズのプロジェクトは、ユズが成長するのに5年かかるので完成するのは5年ですけれども、スキームとしては来年から始まる話なので、実態としてはもう動き始めます。ではいつの結果で成功だというのはあるかもしれませんけれども、地域に人が残って地域が全体に活性化するのは5年、10年かかるかもしれませんけれども、5年後、10年後までずっと黙っていて、来ました、できましたというのは無理なので、毎年結果を出していきます。参加した人、特に企業側が手ごたえとして感じる結果を出す、これは絶対だと思います。
あと、ほかの大学との関係ですけれども、鈴鹿高専とも鈴鹿市の連携の中では、今、地域興しに対しては、一緒に協議会などをやっています。ですから、それぞれの大学とか専門機関の独自性というのは重要ですけれども、連携をとるということに関してはやっています。それでは具体例はというとなかなかぱっとは言えないですけれども、三重大学が単独で走っているわけではなくて、三重大学が中核となりながら動いているのは確かです。
【原山委員】
コメントを30秒だけ申し上げます。
まさにこの事例というのは、政府の役割は何なのかということを問題提起するものだと思います。今の話というのは、それをうまく潤滑油として使っていらっしゃいます。ほかのやり方としては、呼び水的な使い方もあるし、逆に延命的なところになってしまう可能性もあるわけです。なので、次の議題だと思いますけれども、これからは、やはりその点を深く考えた上で、どういう施策があるかということを言っていきたいなと思います。
【白井主査】
大事なご指摘だと思います。
大変貴重なお話を伺えてよかったと思います。ありがとうございました。
それでは、少し時間の関係がありますので、次の議題(2)に移らせていただきます。
それでは、事務局から、論点整理したものについて説明をお願いします。
(事務局より、資料2-1、2-2、2-3について説明)
【白井主査】
ありがとうございました。
資料2-1というのは、これまで出てきたものに基づいた整理、あまり字がたくさん書いてあっても、これもまだ字がたくさん書いてありますけれども、大分コンパクトにまとめてもらったと思いますが、これをもとにして少し意見交換をしていただきたいと思います。きょうの2つのご発表も非常に典型的だと思うわけですが、UCIPというような動き、それからもう1つは地域という問題、あと、専門性というのはどういうふうに考えていくのかというあたりはまだはっきり見えているわけではないですが、これはコンセンサスとしてある程度専門知識のある人たちがきっちりそれなりに位置づいてないとこれ以上は無理というのが一つの意見でもあろうかと思いますので、そういったことに基づいてきょうの議論をしていただければありがたいと思います。
それでは、今後の進め方ということに関係して、この資料についてご自由にご議論いただければと思います。どうぞ、どなたからでもお願いします。
【渡部委員】
サマライズという格好になるのかもしれませんが、これは、今までは、それこそ大学の法人化を契機にした知財の機関管理・機関帰属ということで、法人ごとに競争をして、その競争の中で効率を上げていくという、そういう施策に沿っていろんなことが行われてきました。しばらく前から少しそういうのが出てきてはいましたけれども、今回、競争ではなくて、機関間の協調ということについての施策がかなり多く取り入れられてきたというのが、今回の大きな変化というか、特徴だと思います。この中で言うと、産学官協働による、先ほどの事例の話も含めてそうですけれども、あるいはパテントコモンズの話もそうですが、この辺は機関間の協調です。機関間の競争と協調と、それからもう1つは機関の中の研究者の競争と協調という軸があって、実はそれは4象限みたいになっていますけれども、少しこの中で異質なのは、リサーチ・アドミニストレーターというのがそういう意味では、機関の中で研究者、アカデミアとのつなぎ、研究者個人とのつなぎをいかに効率よくやるかというかという、そういう位置づけになっていまして、4象限を後で当てはめていただくと大体いろんな施策がそこに当てはまります。こういう構造になっているときに、少し幾つか、これからの運用に関して留意をしたほうがいいなと思うことは、1つは、仕事がふえるということで組織や何かをつくりがちです。特に協調と競争、あるいはアカデミアの中との関係で言いますと、機関間というのがあるので、ここの調整も出てくるものですから、そこでまた組織をつくるというような話が出がちな気がします。これは、先ほどの事例でもありましたけど、戦略性というか、いかにそれを効率よくやるかという見通しをしっかり立てて組織づくりをしていただく必要があるし、そういうことを考える必要があるということが1点です。
それから、機関の競争と協調に関しては、バランスが非常に重要であると思います。当然ながら、機関がまだ競争できる状況にない、独立してないというものがすべて協調の中に入ってしまうという意味は何なのかということをよく考えないといけないので、そこはバランスを十分注意をしないといけないという、その2点が今回のこの施策の運用に関しての重要なところではないかと思います。
以上です。
【白井主査】
ありがとうございました。
それでは、森下委員お願いします。
【森下委員】
先ほど三重大学の例もそうですけれど、地方というのはキーワードとして重要ではないかと思っていまして、なかなか国の全体のレベルでやるという話は、大型大学は向いておりますけれども、現在の地方の状況を考えると、入ってこれなかったり、十分進まないということもあるかと思うので、もう少し地方で実際のケースを動かして見分けていくということの取組をどこかへ書いてもいいのではないかと思います。その中で、今、JSTが全国にプラザをつくっていますので、そのあたりをうまく使うということも大変重要だと思っていまして、そういう意味では地方での産学連携、これは1番にありますプラットフォームの地方版ということになるのかもしれませんけれども、そのあたりも少し書き込んだらどうかという気がします。本文には地方が結構出てくるんですけど、要約版では地方はほとんど出てこなくて、キーワードとして、地方、中小企業、ベンチャーあたりの連携というのはもっとどこかで書いたほうがいいのかなというふうに思います。
【白井主査】
それでは、野間口委員お願いします。
【野間口主査代理】
今、渡部委員や森下委員、大学の先生から意見が出るのではないかなと思っていましたが、出ていませんでしたので、少しお話いたします。
この青の数字の2.のところですけれども、知的財産相互開放スキーム、パテントコモンズという考えは大変すばらしいことだと思いますが、こんなものに入りたくないと、もっとこの域を超えてやるというような人も、やはり日本の学会から出てほしいなと思います。パテントコモンズというのを、リサーチスルーをはじめ基礎研究の活性化という点で大事にしていこうということですが、この外でもあってもいいよというような書き方にしたほうがいいのではないでしょうか。出るくいは伸ばしたほうがいいと思います。
【森下委員】
これに入る人は、入るのを希望している人だけが入るというイメージを持ったので、すみません、自分が入るという意味では全くなかったので、今初めて、言われて思いました。強制的に入るというわけでは、ほんとうに意味がないです。
【野間口主査代理】
これだったら、森下委員は出てこないと思います。
【森下委員】
僕のイメージはどちらかというと、こんなことを言うと笑われますけど、あまりそういうのが得意ではない人が集まるのかなと思ったので、人ごとと思って聞いていました。もし強制的に入るのであれば、むしろ、先ほど野間口委員が言われたように、かえってだめになる可能性が高いと思います。かといって、だめな人ばかり集めたらだめになってしまいますので、非常に難しいです。言葉として言われるのはいいのですけど、実態の運用はどうするかというところで、両方の問題が出てくる可能性があるので、そのあたりはしっかりされるというのを大前提としてこの内容かなと思ったのですけれども、言われるように、これだけ読むと、確かに全員が入らなければいけないような感じもします。
【白井主査】
これはこれからの、中身はどういうふうにするかはまた別問題だと思います。
【柳研究環境・産業連携課長】
今ご議論ございましたように、この科学技術コモンズ自体は、強制的に入れるということではなくて、あくまでご賛同いただける大学を中心に入れるものも取捨選択いただいて構築していくものと思っておりまして、この中に入っている人だけに使わせるということでもなく、その外でも使っていただくことを考えています。この中に入らない活動をどんどん進めていくということも当然あって、今、森下委員がおっしゃったように、こういう中で積極的に使っていただくことによって大学自体に埋もれている「知」を活用いただくということにご賛同いただければ、こういう枠組みが活性化するのではないかと思います。それによって、「知」の創出、イノベーションの創出、ともに寄与することがあるだろうと、そういう発想でございまして、これに強制的にみんな入れるということは考えてございません。
【秋元委員】
今のお話と、それからもう1つ別なことがあるんですが、パテントコモンズということを考えてなくても、既に2006年、総合科学技術会議の知的財産専門調査会で、国費を原資とするものについては、大学はロハ、あるいは企業に対してはリーズナブルなロイヤルティーでライセンスを出せということが出ております。その後、2007年だったと思いますが、ライフサイエンス分野においては、大学、企業問わず、事業に影響を与えないような場合については原則として、特にライフサイエンスは非常にアーリーな数字が多いですから、これに対しては、特許はただか、あるいはリーズナブルなロイヤルティーで出せということがもう既にガイドラインとして決まっておりますので、ここでわざわざこれを持ち出すかどうかと。ガイドラインと同じことを言っているような気がします。
もう1つは、1.ですが、確かに、「知」のプラットフォーム(共創の場)というのは非常に大事だと思います。これはつくらなければいけないと思いますが、実は、共創の場をつくろうと思っても、大学の知財は、グローバルに戦えないような知財を先にとられてしまっていて、後でリカバーできないというような状況があるため、共創の場ができないです。企業として、それに飛びつかないです。そういうことでありますから、この共創の場をつくろうというのであれば、大学については、iPSの今年度から予算化されたような、出願前の、あるいは研究段階のときからのコンサルタントということが非常に大事になってくると思います。そこでしっかりした知財がとられていれば、この共創の場というのは産業界もかなり飛びついてきて共同研究等ができると思いますので、共創の場は非常に大事ですが、共創の場に入るような形の知財というものをもう少し前の段階で大学にお願いしたいなと思っております。
【白井主査】
それでは、原山委員からお願いします。
【原山委員】
また手短にやります。この概略ですけれども、頭の基本的な考え方のところには何が違うのかということを書き込む必要があると思います。ここで単純に「新たなフェーズ」とか「三位一体」と言っただけでは、現実的に何かわからないです。先ほど渡部委員のご指摘はすごく重要なことであって、これまでの経緯を踏まえて、どういう状況になってきたのか、さらにこういうことを考えなくてはいけないって、まさに競争と協調のバランスの取り方ですか、コアなところをここに入れていただきたいというのがあります。
その中で具体的なこととして何をするかという話ですけれども、例えば2番目のところは、先ほど秋元委員がおっしゃった話はまさに私も言いたかったことであって、既にやったことをまたここで言う必要はないと思います。ですので、既に言われたことで何がまだ踏み込んでないところがあって、残りの部分はこうしなくてはいけないということを言わないと、既に聞いたことある話ではないかという話になります。
それから、1番のほうのプラットフォームに関しても、いわゆるこういうプラットフォームが必要だということは、長年、皆さん言ってきているわけです。具体的にいろんなアクションも施策としてとってきているわけなので、まだ何ができてないのかということです。そこで進めなくてはいけないのは、プラットフォームを、政府がこれをつくりましょうというのではなくて、できるような前提条件です。先ほど秋元委員がおっしゃったような話ですけれども、OECDだとフレームワークコンディションとよく言うのですが、その前提条件として、まだクリアしなくてはいけないものが残っているのであれば、それだということを指摘する、などのところをやはり考えてほしいと思います。
それから、3番目のところのリサーチ・アドミニストレーターですが、これはまさに新しい話ですね。これは強調しなくてはいけないですけれど、「ポストドクター等を活用し」で始まってしまいますと、ポスドクの問題を解消するためにケアしているという雰囲気になってしまいます。これは日本の研究体制の、特に大学の研究体制の中でリサーチ・アドミニストレーターが重要だということを盛り込みたいのであれば、まずそれを言った上で、どういう人がというのが例えばの話で出てくる話だと思うので、本末転倒にならないようにしていただきたいと思います。
【白井主査】
どうもありがとうございます。
それでは、西山委員、お願いします。
【西山委員】
5番と6番に関係することですが、先ほど三重大学のお話がありましたけれども、そのときに一部言い忘れたものですから、それとの関係で申し上げますと、森下委員も言われましたように、三重大学がやっているような取組をもう少し強調して表現したほうが望ましいと思っています。私は、地域の中小企業というのは、世界的に見れば、将来の大企業に向かう種の段階だととらえています。ですから、三重大学のような取組をやっている中からだんだん大きくなっていくようなことになるというのが地方大学にとっても日本にとっても非常にいいことなので、こういうことを強化していくということをやっていく必要があります。その際に、三重大学は「三重大学から世界へ」ということを最初から考えておられるのは非常にいいんだけれども、産学連携といったときに、世界から三重に来てもらうと考えている。三重大学は、こういう取組の成功例がありますと、東南アジアに対して協力できるように思います。ですから、地域発のものは、地域拠点と国際化拠点で議論はしましたが、最初は地域だけれども、結局はグローバルに行くわけです。ですから、そういうダイナミズムを5番と6番のつながりの中で表現していくことも大事かなと思っています。ですから、地域に対して、あるいは三重大学のような地方大学に対して、相当なインセンティブを与えるような表現が非常に望ましいのではないかと思います。
【白井主査】
ありがとうございます。
それでは、羽鳥委員お願いします。
【羽鳥委員】
それでは、30秒みたいなもので、重点的に2.だけお話いたします。リサーチ・パテントコモンズ、これは既に皆様がおっしゃられているとおりだと思っていますが、表現が「大学等が保有する特許を~相互に無償開放する」となっております。当方、大学などのアカデミア間では、特許の有償許諾は全然経験したことがないので、企業との間の話かなと思いました。その場合に、「大学等が~相互に」は、実際は企業と大学の間の無償開放なのでしょうか。
【柳研究環境・産業連携課長】
現在の段階でイメージしているものは、大学自身も、一番典型的な例を言いますと、例えばある大学の研究者が発明し特許をとったものが機関帰属になって、その大学の特許になっているとします。その大学の先生が別の大学に移ったとしたらその特許が使えるかというと、現在の特許法の69条1項というのは、研究であったら自由に使えるかというと、そうではないです。それについて個別の手続をとっていくという煩雑さも解消していくという意味で、大学同士、「知」の創出の拠点たる大学の中で自由に特許が使えるという意味で大学間の相互開放ということをイメージしています。
企業との関係におきましては、企業自身が持っている特許はなかなか開放ということにはならないと思いますので、企業については大学とはまた違う形で、例えば登録などによって企業も同じように試験的に使っていくということについては、要するに直接利益を求めるような使い方をするときには個別に権利者と契約を結んでいただきますけれども、試しに使っていくというようなことについては、登録などをすることによって企業も自由に使えるような、要するに非営利の事業化前段階では自由に使えるような形をイメージしております。
【羽鳥委員】
ありがとうございます。そういうことであればすばらしいなと思いますし、荒っぽくすべての大学を一つにするということでもなさそうですので、そういったことが誤解のないような表現があるとすばらしいかなと思います。
あと、補足でほんの少しだけiPS関連であります。本日の委員の発言の中でiPS知財連携がうまくいっていないような感じの発言もあったかと思いますが、私はうまくいっていると思っています。京都大学はすごく頑張っておられるし、要は競争と協調というのがすごく大事だというところであります。例えば協調であれば、それぞれの大学が自分のコアとしている特許をもとにポートフォリオを組みたいといったときに、他の関係部署とすごくツーカーになっていて、それでは一緒にと、機動的にそれが動くという、そういった競争・協調があるとすばらしいなと思っています。それはiPS知財連携でできつつあるのではないかなと思っております。
【白井主査】
ほかにはいかがでしょうか。それでは、西岡委員お願いします。
【西岡委員】
この重要課題について議論をした委員の一人としての反省も含めて思いますけれど、さっき三重大学の西村さんの話を聞いていたときは、これは三重は変わるかもしれない、何か起こるなという期待をひしひしと感じましたけれど、この重要課題について聞いていると、人ごとのように聞こえました。何をやるということを、先ほど先生方が言っておられるところをもう少しはっきりと、私たちがめり張りをつけてあげないとだめではないかなと思います。それは、渡辺室長代理の責任ではなくて、我々委員がめり張りをきちっとつけないと、やはり何も起こらないのではないかなという印象を受けてしまいました。
以上です。
【白井主査】
それでは、竹岡委員お願いします。
【竹岡委員】
リサーチ・パテントコモンズの考え方は基本的に賛成ですが、もし今おっしゃっていただいたような説明だとすれば、それこそ先ほど秋元委員がおっしゃったように、そもそも研究ライセンスのガイドラインとかはもう出ておりまして、しかも特許法69条の解釈については、特許庁が最初におっしゃったのがほんとうに正しいかどうかということも含めて、要するに各機関がほかの大学の特許を研究目的のためにどの程度使えるのかという議論はかなりされています。もしそういうことだとするとこれはほんとうに屋上屋を重ねるだけで、そうではないだろうと思います。多分、基本特許と周辺特許とか、あるいは特許を集合的にするということによってその特許の価値が高まるということを言いたいです。そうでないと意味がないだろうというのが1つです。
もう1つは、お帰りになってしまったのですが、先ほど野間口委員がおっしゃっていたように、戦略的に重点化というところの重点というのは、基本的に特許の戦略というのは非常に重要なので、逆に開放する部分とものすごく独占する部分というのはめり張りをつけるというのが当たり前のことなので、この書き方だと、押しなべて開放するというふうに思います。それから「強制的に」とおっしゃっていた方もいるので、ここの2.のところは、かなり誤解を招くかなと思います。ここのところはもう少し特許の戦略などを、ほかの施策を見ながら、誤解を招かない表現にしていただきたいのが1つあります。
2つ目は、先ほどの5番と6番のところですが、組織的な、大学の組織としての対応というところ、特に人材の確保というのは、基本的に三重大学みたいに産学連携組織を研究組織などと対等すると位置づけて、しかもパーマネントに採用していると、こういうのはいろんな大学はできてない。ほんとうにここを解決しなければいけないですけれど、この5番と6番のところは、人と組織のあり方みたいなところを若干におわせるような形で書いていただければ、具体的にどうやればいいかということが出てくる。
読んでいて、何度読んでもよくわからない、1番が何を言いたいのか全然わからないので、もう少し具体的に書いていただけないだろうかと思います。具体的に書かないと議論ができないだろうという感じが少ししますので、よろしくお願いします。
【白井主査】
どうもありがとうございました。
石川委員お願いします。
【石川委員】
各論の議論がここまでできるようになったというのは、2006年のころはこんな議論にならなかったので、この議論ができたということは大分進歩してきたと思います。この全体像に対して、多分、書かれた方も大分悩んでいらっしゃるのが少し見えるのですが、西岡委員が先ほどおっしゃったように、全体像として及第点だけれども、一つ、西岡委員はめり張りとおっしゃったのですが、パンチというか、原山委員は何か違いをと言うのですが、ここで書いてある「新たなフェーズに向けて~深化させていく」といったときの新たなフェーズということがどこにも書いてないです。だから、新たなフェーズというのをこのメンバーの中でデザインしていかなければいけないと思います。ここでイノベーションを標榜しているのだけど、イノベーションを標榜している委員会が何ら新しいことを言わないというのは、非常に矛盾というか、我々の責任があるのではないかと思います。イノベーションを標榜する者は自分自身がもっとイノベーティブでないといけないと思うので、新たなフェーズのデザインというのをもう少し真剣に考えていく必要があるのではないかという気がいたします。その意味では、第1期は、知財本部、あるいは産学連携本部の設置、組織設計、組織をつくるというフェーズでした。第2期は、それを国際と地方へ展開するという、展開期ということ。では第3期はどうするのかという議論だと思います。今までのお話を伺っていると、どうも第3期は、組織論でも、展開論でもなくて、実態論だと思います。成果、あるいは産業創出をどうやってやるのかという議論に向けていく時期になってきたのではないかという気がします。
そこで、私の意見は、そういったスタンスというか、姿勢を先に明確に出して、そのスタンスのもとでこういった各論を書き直し、原山委員がおっしゃるように、少し継続的なものは書かなければいけないのかもしれないのですが、それは大分サプレスして新しいことを、成果の創出、あるいは産業の創出に向けた書きぶりに直していくのがいいのではないかと思います。
【白井主査】
それでは、三木委員お願いします。
【三木委員】
石川委員のお話を引き継ぐ形で話させていただきます。新たなフェーズのところをかなり書き込む必要があると、私も思っています。単独で知財戦略なんてあるわけがなくて、事業イメージのないところに知財戦略なんてありません。そういう意味で、事業戦略、事業イメージを大学自身が持つわけないわけですから、今度は、事業をどういうふうに進めていくかというところでの競争の場とか、こういったところが大事になるわけです。従来の個別的に考えていた、大学は研究開発戦略や知財戦略を言っていますけれども、実は、真の目的、結果に向けてのことが十分にできていたかというと、それはできてないわけです。ところが、大学は全部それをやる必要はないわけです。そこで競争の場というのは意味が出てきます。そういう意味で後の内容が生きてくる形に、私はしたほうがいいと思います。
それからもう1点は、大学または複数大学でビジョンを明確にするということが非常に大事だと思います。フェーズ2に入れば、次のフェーズに入れば、ビジョンを持つということが大事なことで、そういった記載がどこかにないと、議論が深化しなくなる、それぞれの組織が踏み込んだことを考えなくなるということをおそれますので、その辺はぜひお願いしたいと思っております。
【白井主査】
それでは、渡部委員お願いします。
【渡部委員】
先ほどから少し指摘が出ている2番のところですけれども、私の理解は、パテントコモンズって中身には書いてありますけれど、タイトルは「知的財産相互開放スキーム」で、これ、ほんとうのパテントコモンズだったら、仕組み上、相互開放ではないです。これは、勝手に読んだのは、大学等の研究活性化、あるいは活用促進に関する集合的利用の戦略的取組に対するスキームの構築というぐらいにしか読んでないので、パテントコモンズであるかどうか、契約書の条文を書いてみないと、いわゆる権利不行使宣言でコントロールする場合のターミネート条項とか、そういうことをやってみないとわからないので、ここは具体論になったらそういうことをやっていかないといけないと思います。先ほど69条の関係の話も出ていましたけど、私、69条の解釈とか、あるいは研究方法については総合科学技術会議のガイドラインを読みましたけれども、もしあれでできないことがこっちであるとすれば、外国だと思います。あの場合は国内しかだめなので、ほんとうは海外に広げないと意味がないです。だけど、それは外交交渉になってしまうので、非常に大変であると思います。こういう形でもし海外の大学等が参加してくると、これは結構メリットがあるかと思っていて、そういう意味での戦略性のところに契約の条文を構築するという作業をこの後きちっとやらないと生きてこないと理解しています。
【井口委員】
ここで言うと6番目ぐらいに相当するのかもしれないですけれど、先ほどから出ている地域や地方が地域の大学とどうイノベーションを図るかというと、この本文の中の53や54には、産学官連携の「官」のところが地方自治体だとか、そういうことが出ているのですが、何も動かないような自治体があるから地域の中小企業は大変なわけで、ここの「官」というのが何とはなしに中央官庁ととられます。確かに中をよく見ると出ているのですが、この6ぐらいのところには、「自治体等」ということをきちっと書けたらと思います。なぜかというと、今度、JSTが全部のところに新たな産学連携拠点を設ける審査に入っているわけですけれども、あれは箱ものなんですが、あれを運用するのは自治体なので、自治体がどれだけそういうところに関与して、そこに「学」と地域の「産」が協力するかということもくっついていかないと、また建物だけができるということになりかねないと思います。なので、本文の中にはありますが、ここの6番のところに自治体というようなところを何か工夫して書いていただけたらと思います。よろしくお願いしたいと思います。
【白井主査】
それでは、石田委員、先にお願いします。
【石田委員】
今、委員の皆様の意見を聞いておりまして、私は全体的な大局的なことにつきまして意見を述べたいと思います。要は産学官連携の推進がテーマでありますので、私は、この1、2、3、4、5、6、およそこういう立て方でよいのではないかと思っております。その中で、私は3段階に分けてとらえる考え方を意見としては述べたいと思います。すなわち、第一段階としては、イノベーションを推進するために産学官が連携しやすい、連携にヘジテートするような考え方や具体的な施策は好ましくないと思います。そういう意味で、イノベーション創出の仕組みにヘジテートしないようなことがよいと思います。ただ、1に書いてある内容について、私はおよそこういう考え方でよいと思っています。
2番目は、産学官で連携するときに主として大学がヘジテートする理由として、費用の面、あるいは権利の帰属、あるいは特許法で言えば73条から出てくる利益への問題、これが具体的にここでは整理されるべきだと思います。そういう意味で2.はおよそよいと思うのですが、2、3、4、この辺につきましては、大学の立場なども考慮して、日本の特許法73条等におけるいわば共有権利についての単独ライセンス、または不実施補償等についても、ガイドライン的に具体的に示したほうがよいと思っております。
3点目は、結論として産学官連携の目的はイノベーションを促進し、そして活用段階では、オープンとしてですが、オープンというのは、私はあまり好ましくないと思います。すなわち、知財制度というのは結局、インセンティブで排他力を認めて開発を促進し、その結果をオープンイノベーション的に社会貢献または国際競争力に寄与する、こういう手順があると思います。知財の本質的機能を最初からあまり確認しないような施策は、あまり好ましくないと思います。結論として、産学官連携がしやすくなるようにだと思います。そして、その内容として、費用、権利帰属、利益配分、そういうようなことにつきましてできるだけ具体的に表現し、結論としては、そういうことによって、特許か論文かを、価値観というレベルではないです。総合的に国として、あるいは社会貢献のために大学として、企業として、どういう理念があるべきかということを、この1、2、3、4、5、6の中でできるだけ具体的に書き起こすべきだと思います。およそこれでよいのではないかなと思っております。考え方を抽象的に述べました。
以上です。
【白井主査】
それでは、羽鳥委員お願いします。
【羽鳥委員】
2.のところで恐縮でありますけれども、皆様のご発言を聞いていて思ったのですが、これはタイトルが「研究活性化及び活用促進」となっております。知財で言えば、知財の発生部分、これは研究そのもののところと関係しています。ライセンス、これは活用です。わかりやすく言うと、前半と後半というか、上流と下流というか。コモンズは何かというと、先ほどの渡部委員の話を理解すれば、研究のためのツールの部分のようです。これでもって研究がより活性化し、それで知財が出る、そういう部分のことを言っていると思います。
もう1つ、このタイトルの「活用促進」、これは、わかりやすく言えば、パテントプール、あるいはポートフォリオという言葉もありますが、一般的に下流の部分を指すと思います。本施策は、研究のためなのか、あるいはライセンスのためなのか、あるいは、上流のためなのか、下流のためなのか、表現方法は幾らでもあるのですけれども、そういった点をくっきりできるといいのかなと思いました。
【白井主査】
ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。大分クリアな意見が出てきたかなと思いますけれど。
一番最初の、この資料2-1はあれですけれども、これを見ると、きょうの議論から見れば、役所が書くものと現場とは雰囲気が違うのではないかと思います。私も少し違和感を感じます。非常に頑張ってこの資料はできていると思うのであまり言えないですけれど。今回わりといいのではないかとおっしゃっていただく方もいるけれども、十歩譲ってそれはいいとしても、新しいフェーズに入ろうと言うのならば、どういう意味で入るのかということは明確にすべきだというご意見が非常に強かったと、まず第一に思います。どういう観点のことをこれから次のフェーズとして入らなきゃいけないのか、幾つか出て、かなり具体的に出ていると思うので、それを明確に書くということが大事です。今までに出てきている、産学連携活動は大事だとか、基本的な何とかだとかいうのはもう終わっているということで、新しいところをちゃんと書いてくれということになるのではないかなというのが1つあります。
それから、6項目の中身をもう少し明確に具体的に示したほうがいいだろうと思います。イメージが少し、皆さん委員の中でも受け取り方がかなり違っているのではないか、きょうの意見の中でも違うのではないかなという気がしました。
そんなことをすると、一応この原案が一つの今後の方向性として、来年どうするかということぐらいから考えて、国の施策としてはやっていくというのがいいのではないかと思います。
これまでの大学単位でやっているものというのはそろそろ、いつまでもそこにお金を注入していくかということは、大問題があります。事実的には非常に困るけれども、これをどうするんだということです。これは、各大学に温度差はもちろんありますけれども、どうするのかと。それから、こういう新しい施策を出すとすれば、それは、国がどのぐらいバックアップしてやるのか、それから、JSTがやっているプロジェクトは、箱はあっても中身がないとか、何か非常におかしいけれども、そういうものともう少しきっちり連携して、ここで言っているような性質のものが幾つか具体的に組み立てられて、その中で活動できるのか、できないのかとか、そういうさまざまなものが関係してくるのではないかと思います。そういうのをしっかり打ち出していかないと、ちぐはぐになって、お金はかけているけれども、ほとんど成果が上がらないという、いつもやっているパターンがまた起こるわけだから、それはぜひ避けたいです。
それから、各大学が今まで伸びてきて、非常に特徴的にしっかりやっておられるところがあるので、これはこれで、ある種、まだもっと伸びるという大学もたくさんあると思うので、それは別に新しい施策の中でどうこうする必要は全くなくて、ある意味、協調と競争というのがうまく働くような環境をつくるということが非常に重要だろうと思います。だけど、一方で、相当協働して人材も有効に生かしていかないと、各大学がそういう人を持とうとしても持てないというのは実際に起こっていることであって、それから、知財といっても、各大学だけで生む知財には非常に限りがあって、現実にはそんな強いものでは全くないわけだから、これはどうするのかということです。
今まで出てきている、今の現状の産学連携、あるいは大学が生む知財というものは、どういう強みがあって、ほんとうにそれを生かしていくということ、あるいは大学にこういう研究をやろうということに逆に影響を与える程度の強さで産学連携というものが動いていくとすれば、何をやればいいのか、これは分野ごとにも若干違うということです。先ほど秋元委員が言われたように、ライフサイエンスなんかは非常に厳しい面があるというようなので、そういうものは大学間で、学術的な研究レベルでの情報交換みたいなものと、きわどいところがありますよね。そういうものと関係させてどういうふうにやっていくんだということも、一つの課題になると思います。要するに、何をやれば一番効果的か、それはどういう単位なのか、どういう場所にはどうなのか、ということを具体的にこの1から6の中に整理して、適当な命名をもって組み込んだらいいのではないかと思うのですが、その作業はどうやってもらいましょうか。何か、委員の中でご意見ありますか。
実は、何人かの方にワーキングで集まっていただきました。集まっていただいてもいいし、それぞれの委員の方に若干具体的な意見いただいてもいいし、いろいろ方法はあると思います。
(事務局より、資料3について説明)
【白井主査】
今説明していただいた手順になるということですが、きょうのご意見で、資料2-1でまとめたものの方向性、大きい方向性としては、いいと思います。10月1日ですから、まだ1カ月弱の時間がありますので、これをきょうのご意見に基づいて少し焼き直させていただきたいと思います。特に、何かコメント、具体的なものがございましたら、直接、事務局のほうにお送りいただく、あるいは逆に事務局からお尋ねするかもしれませんけれど、資料2-1を中心にして少しリファインをして、それをもって一応報告はする予定です。報告をしたからといって何か決めたということではないですが、一応、今の段階でのまとめということをさせていただいたらどうかということです。
それでよろしいでしょうか。
それでは、きょうのことは大体終わりかかっているのですが、何か事務局のほうからありますか。
委員の方は、きょうのようなまとめ方でよろしいでしょうか。議論はまだこれからも続くということになりますけれども、一応、中間まとめでもないけれど、親委員会があるので、そこには報告させていただきます。
よろしければ、きょうはどうもありがとうございました。
午前11時56分閉会
研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室