第5期産学官連携推進委員会(第2回) 議事録

1.日時

平成21年8月4日(火曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省東館(3階) 3F1特別会議室

3.議題

  1. 大学等における産学連携等実施状況について
  2. 今後の産学官連携の推進に係る主な論点について
  3. その他

4.出席者

委員

(委員)
白井主査、野間口主査代理、西山委員、原山委員
(臨時委員)
石川委員、竹岡委員、武田委員、西岡委員、本田委員、三木委員、南委員、森下委員、渡部委員
(専門委員)
秋元委員、井口委員、羽鳥委員、平田委員、牧野委員

文部科学省

大臣官房審議官(研究振興局担当)、研究環境・産業連携課長、技術移転推進室室長代理、ほか

5.議事録

【白井主査】

 すいません、少し時間がおくれてしまいましたけれども、ただいまから、第5期の科学技術・学術審議会 技術・研究基盤部会 産学官連携推進委員会の第2回を開催いたします。

 初めに、事務局から異動がありますので、ご紹介をいただきたいと思います。

(事務局より、異動した事務局の紹介及びあいさつ)

【白井主査】

 よろしくお願いします。

(事務局より、出欠の確認及び配布資料の確認)

【白井主査】

 それでは今日の議題に入りたいと思いますが、今日の議題1は、大学等における産学連携等実施状況についてということです。

 資料1の内容について、事務局から説明してください。

(事務局より、資料1の説明)

【白井主査】

 それでは、この資料1について何かご質問のある方はございますか。どうぞ。

【羽鳥委員】

 一番最後に特許の実施料収入がありますけれども、技術移転の特許に限定しない、著作権とかマテリアルとか、あるいはノウハウとかいったものを包含した形の技術移転の指標という統計もあると、すばらしいのではないかと思います。これはこれで特許はあっていいと思うのですが、もっとトータルの技術移転の統計もあったら、より技術移転の指標がわかるのかなと思いました。これは来年以降の話でご検討いただけたらと思います。

【渡辺技術移転推進室室長代理】

 今ご指摘の点につきましては、先ほどお配りしました資料の7ページをごらんいただけますでしょうか。(5)が特許権の実施件数というところでございます。(6)が特許権とその他地財実施料収入ということで、こちらの(6)のトータルの中には、実用新案でありますとか、意匠権、著作権、ノウハウなども含んだ額を提示させていただいてございます。

 しかしながら、ご指摘いただきましたように、大学の個別の上位と並べているところには今加えてございませんが、次年度以降、その点については検討してまいりたいと思います。

【白井主査】

 ほかには。どうぞ、森下委員。

【森下委員】

 一番最後のページにあります知的財産等の実施等収入、15ページのところを見ていますと、3位が日本大学で4位が東工大、6位長崎、7位広島ということで、金額で見ると地方とか私立大学がわりと上位に入ってくるので、これは具体的にどういう特許が収入を稼いでいるのかというのを、ぜひ教えて欲しいなというのと、逆に言うとこういう地方大学でもこれだけ、何か1つの特許かわかりませんけれども、収入を上げられるのであれば、結構励みになるかなと思いますので、例えばそういうものがあれば表彰なり、あるいはそういうのをもう少し、アナウンスするなりしてあげたほうがいいんじゃないかなという気がいたします。おそらく積み上げの金額ではないのではないかと思うので、内容はわかれば教えてほしいなと思います。

【渡辺技術移転推進室室長代理】

 今、手元に具体的などのような特許があってこうなったかというデータはございませんが、特に例えば昨年度の調査と比べて、非常に伸びているような地方大学も幾つかございますので、そういったところを中心に、具体的にどのような特許などがあってこういったことが起こっているかというのを、少し分析させていただきたいと思います。

【白井主査】

 よろしいでしょうか。どうぞ、武田委員。

【武田委員】

 毎年見なれた資料なので、何となく見ていますが、これは産学連携の実施状況ということで見ようとしたときに、表紙にまとめてある2番目が、受託研究件数がどうのこうの、研究費総額がこうなっているというのを挙げているんですけど、中身を見ますと、4ページからその次のページの内訳を見ると、実は受託研究の1,700億のうちで大半は、国からの受託であるとか公益法人からの受託であると。共同研究のほうは民間企業からの共同研究というのがマジョリティーなので、何となく産学連携の指標として、すっと入るのですが、2番目に挙げている受託研究の動向というのが、実態は国と公益法人からの受託がこれだけの規模があるという中において、これは産学連携という目で見たときにはどう読めばいいのかと。

【白井主査】

 受託研究とかその受託先が、国とか…。

【武田委員】

 要するに国や公益法人からの受託研究が巨額であり、伸びているということを、産学連携上はどう理解すればいいかという解説が必要じゃないですか。

【柳研究環境・産業連携課長】 一応私がデータを読んだときに理解しているのは、外部収入がどうかという目で見たときに、共同研究収入、受託研究収入というけれども、実はふたをあけてみると公募型の資金、競争的資金によって、国ですとか独法のお金で賄われている。だからそこは伸びているように見えても、ある意味見せかけであって、実際はその部分を考慮してもっと頑張らなきゃいけないというデータなのかなという理解をして、この数字を読ませていただいております。

【白井主査】 非常に正確にあらわしているということのようですが、意味はなかなかどう理解するのか。原山委員、どうぞ。

【原山委員】

 先ほど4番の外国出願件数が18%減っているという話なので、分析に入るのですけれども、その理由というのですか、出すほうがちゃんとセレクションをかけたことによっての効果なのか、あるいはいろんな諸条件があって、これは理由を判定する必要があると思います。国としては一生懸命プロモートしているわけで、その中でこの結果というのは、やはりどうやって説明するのか検討する必要があると思います。

【渡辺技術移転推進室室長代理】

 本調査におきましては出願件数などにつきまして、どのような事情で減ったなど、個別の大部分を聞いていないものですから、この調査結果の中では出てきませんが、やはり今この7ページの(2)を見ていただきますと、非常に急激に外国出願が減っているということでございますので、ここは少し我々も分析をして、調べていきたいと思っております。

【白井主査】

 まだあるかもしれませんが、またあとの議論の中でも思いつかれた方はどうぞ。

 次の議題2に移りたいと思います。今後の産学官連携の推進に係る主な論点についてですけれども、これは前回、今後のあり方について、基本的な考え方を自由な意見交換をさせていただきました。今回はその前回の議論を踏まえて、論点を幾つか絞って議論を深めたいと考えております。

 進め方としては、資料2に大きい項目として1から4番まで記載されていますけれども、今後の産学官連携の在り方についての基本的な考え方というのと、イノベーション創出に向けた産学官連携の深化、それから3番目が国際的な産学官連携活動の推進、そして4番目が大学等における産学官連携体制の整備、こういう論点ごとに意見交換を行って、少し論点をそれぞれに深めてみたいと思っています。

 それでは、事務局のほうから、この資料2の説明をしてください。

(事務局より、資料2の説明)

【白井主査】

 それでは今説明があったことについて、飛んでも結構ですけれども、できるだけこの4つの論点について、順番に意見をお伺いしたい。

 最初は基本的な考え方。基本的な考え方はあまりたくさん書いていないですけれども、ここのところでこれまでの経緯を踏まえると、今までの調子を続けていいのかということかと思いますけれども、いろいろな方向性ということで、特にご意見のある方ありますでしょうか。

【西山委員】

 イノベーションにかかわる点で2点、人材育成にかかわる点で2点、申し上げたいと思います。

 イノベーションが社会的な価値を創出するということといたしますと、新しい産業が生まれるたり既存産業でも急成長させたりするというのが、イノベーションのとらえ方として非常にわかりやすいのですが、私はイノベーションにはもう一つあると思っています。

 それは大学の主たるミッションである純粋基礎研究の分野で、ノーベル賞クラスや、それに準ずるクラスのディスカバリーやブレークスルーを達成した状態は、社会や人類に対して非常に大きな励みを与え、新しい価値が創出されたと思いますのでこれもやはりイノベーションだと私はとらえております。

 大学における純粋基礎研究においてわかりやすい例で言いますと、小柴先生がノーベル賞をもらったわけですけれども、この先生の研究においては、産学官連携として、特に浜松ホトニクスの産業界としての協力は、小柴先生の発見に不可欠だったと私はとらえております。

 そういう点から申し上げまして、日本の基礎研究の水準をレベルアップするためには、大学のみならず、産業界と大学とが基礎研究をやるときに、産業界の持てる力を発揮したときに、ブレークスルーができたり、ディスカバリーができるということもあるように思います。それを取り上げて補強する政策が、日本の基礎研究のレベルを上げるためには私は必須だと思いますので、そういう点からの政策をもう少し強化したらいいのではないかと考えます。

 イノベーションにかかわる2点目は、いわゆる出口戦略から入ったイノベーションの場合は、主として目的基礎研究にかかわりますが、これはやはり国家政策というか、ナショナルストラテジーを達成するという側面を色濃く持っていると、私は思います。日本も第2次世界大戦前までは軍事研究がありまして、世界との競争の中で日本におけるいわゆる軍産の研究があったわけで相当な資源が投入されていた。現在、平和国家を標榜する日本には、軍産研究はそぐわないですが、国家的プロジェクトとしての資源投入は必要かと思います。

 ナショナルストラテジーを達成していくには、いわゆる国研が主導的な役割を発揮して、大学と民間がそれに協力して、オールジャパン体制でイノベーションをつなげることが必要です。いわゆる国研の役割を産学官連携の中にもっと明快に位置づける必要があるのではないかということを思っております。これはイノベーションにかかわる2点目であります。

 それから大きな2つ目の人材育成にかかわることですけれども、特に国際化ということでは、今日本は、いわゆる産学官連携の大きなテーマの国際化の拠点が、欧米に比べて負けている位置にあると思います。具体的に言うと、何とか突破口を開こうということで、経産省が筑波にナノ国際拠点というのをやっていこうとしておりますけれども、要するに世界中から、もちろん日本の企業も大学も、いわゆる国研も協力してやるのは当然でありますけれども、海外からの企業とか人材が、そこに混然一体となっているような、いわゆる日本に魅力があるような国際化拠点を何点か意図的につくらないと、まずかろうと思います。その中で人材育成が図れると思いますというのが1つです。

 それからもう一つは、国際化拠点づくりに加えて、既にグローバル30ということで始まっておりますが、海外留学生30万人計画、このような計画をもっと強化することと、日本の若者が、海外に武者修行にいくような政策を、人材育成の見地から、一層強化していく必要があると思っています。

 以上であります。

【白井主査】

 ありがとうございました。わりに全体に及んでいたかもしれませんけれども、どうぞあまり気にしないで、この4つについてよろしくお願いします。いかがでしょうか。

 今、西山委員に指摘されたことは、これまでの日本のここ何年か、10年ぐらいでしょうか、やられてきたところの方法論の中で、根本的に少しピントがずれているといいましょうか、焦点が合っていないということを非常に強くご指摘されたと思います。やはり基礎研究というのが、どっちかというと大学からは、消えつつあるというところまでは言わないけれども、かなり弱くなっている。

 要するに大学にいる人の資源というのは非常に限りがある。そうすると、あまり大きいお金が入ってきて、そっちが応用研究であったとすると、みんなそっちへ行かざるを得ないのです。これは大分積年の効果があらわれてきていると思います。さっき武田委員が、国のお金とか公益法人の方が非常に競争的資金が大きくなっているのではないかと言われましたが、これが増えることが果たして産学官連携どころか、大学の研究にとって役に立っているのかどうかという、非常に強い危惧を言う人もあるわけです。ですから方法論をもう少し考えられなきゃいけない。

 それから国のプロジェクトというのはどこが主体になってやるのかというのですが、例えば産総研と企業が一緒になるというところでかなりやられてきましたが、それだけのパターンが成功しているかというと、必ずしもそうでないということも今指摘されたと思います。そこは今後の日本のこういう研究政策というのでしょうか、イノベーション政策の中で、ものすごく根本的なことをご指摘いただいたのではないかと思います。

 それから国際化の拠点のことも全く私も同感なのですが、今どこの国も、次のフェーズはねらっていますよね。自分のところは相当やったと。だけど自分のところだけでいいのを集めても、もう国全体で、世界の中でイニシアチブをとれない。とにかくある分野のトップの人をできるだけそこに集めることが有効なのであって、そこにどれだけお金を費やして設備をつくるとか、そういうことが問題ではないということで競争になっているわけで、そういう研究戦略というものがいけない。この産学官連携というのと、スケールがもうちょっと大きい話に今なっているのですが、非常に大きいご指摘かと思います。

 どうぞほかの方、時間がもったいないですから。

【武田委員】

 私は今の4点のご指摘は、多分多くの方も極めて賛成だと思うのですけれども、逆にそういう共通認識をもとにしたときに、この委員会の役割も含めて、いわゆる国策とか国としての戦略って、一体議論ができるのだろうかと思っています。

 例えば渡部先生がいらっしゃいますけど、総合科学技術会議というときに、例えば国の科学技術戦略があります。戦略になりますと、まんべんなくといかないので、例えばある種のバイオを育てようとか、非常にめり張りをつけないと、これは戦略にならないわけです。

 ところがそんなことを言った瞬間に、ほかの産業はどうしてくれるんだみたいな、やっぱりある意味ではそれも必要なのです。全体のレベルアップも、あるいは決め打ちじゃなくていろんな可能性を追求するといっているうちに、産学連携という非常に抽象的な、まんべんなく議論になって、ほんとうにここで例えばバイオ特有の知財の議論をしているのか、エレクトロニクスの話をしているのか、ソフトコンテンツの話をしているのかが、何となく知財という言葉で丸められてしまっている。

 ということからすると、なかなかあるところの割り切りでまんべんなく見るジェネラルイシューと、それからここ一、二年はちょっとどこかだけコントラストをつけて議論しましょうということを、文部科学省事務局も含めて、賛成していただかなくては、結局、議論は一般論になるのではないかという気が少しいたします。

【白井主査】

 大変重要なご指摘だと思います。いつも同じようなことを話しているので、毎回会合をやるのですが、結論も問題意識もいつも同じだというのではどうもいけない。

【武田委員】

 何のことか踏み込めないですよね。

【西岡委員】

 何というか、すごく素朴な疑問ですけれど、官はいいとして、この産学が連携することを議論する場に、産の人が少ないなと思うのです。私はいつでも交代しますので、本来この学と一緒にやっていこうよと、資料3にもそういうのがあるのですが、ぜひ委員を選定されるときに、産の人を増やしたほうがいいのではないかなと、具体的にそう思います。

【秋元委員】

 おもしろい例を少し出したいのですが、ちょうど私どもは1年たちまして、製薬協の知財支援プロジェクトというのが終わりました。約40の大学あるいは国研をすべて回らせていただいて、IPSについてお話をさせていただきました。日本の場合、いろんな研究の予算も非常にライフサイエンスに多く出ていますし、その中でもIPSというのは極めて大きな予算が使われているのが事実です。

 40ぐらいの大学、国研を回りまして、そこには産学連携本部、あるいはTLOもあります。しかしながら、東大、京大、それから単科大学の自治医大、ここを除いてライフサイエンスの人間が産学連携本部にいないのです。これはもう決定的にやっぱりそういうところに人がいないというのは確かなので、大学の産学連携本部、TLOを考えるときに、当面は先ほど武田委員が言われましたように、場合によっては分野によって、切ってしまわないと、一言に産学連携本部といっても決してうまくいかないと思います。

 だからもちろんITとか理工系の電気機械、自動車含めて、これは1つの大学でも産学連携本部というのは成立すると思いますけれども、ライフサイエンスの場合だったら、おそらく先ほど言いましたように、非常に金が出ている、IPSもやっている、そういうところで人がいないということは決定的な問題なので、やはりオールジャパンというか、すべてを見られるような、産学連携本部でも何でもいいのですが、そういうすべてをつないだような横ぐし的なものをつくらないとどうしようもない。そういうふうにつくった上で、やはり人材というものを早急に養成しないといけない。

 私は時々例に出すのですが、アメリカのライフサイエンスの知財あるいは業界というのは非常に強いんです。これはなぜかというと、戦前からやっぱりデュポンとかメルプとかロシュとかいうのがアメリカに入りまして、そこで化学産業、それで医薬産業、ライフサイエンスといっていますから、アメリカの場合、例えばロビー活動にしろ、あるいは実際の勢力にしても、ITや何かとも互角に戦うというか、場合によったらそれよりも強い。だからアメリカの特許法改正でも、組んで動かなくなってしまうということもあるわけです。

 ところが日本は、例えば私が去年までいた武田薬品にしても、十四、五年前に初めてアメリカ、ヨーロッパで全面戦争したのです。それ以降、第一三共、アステラス、それから最近では大塚、エーザイ、塩野義と、製薬企業の研究開発型の企業で70社ぐらいいる中で、グローバルに戦っているのはこの6社です。しかもさっき言いましたように、一番最初は15年前ぐらいです。

 だからそういうことで、こういう分野はやはり当面はとにかく全体的に日本を見るような横断的なものをつくり、かつ早急に人材を育成しなければいけない。それもやはり産業に根差したような、どろどろした修羅場をくぐったような人材をつくらないと、これはどうしようもないと思っております。

 そういうことでぜひ、一口に産学連携本部とかTLOという議論ではなくて、武田委員が言われたように、やはり分野によっては、この際抜本的に考えるべきだろうと思っております。

【原山委員】

 これまで国の施策として産学連携の重要性を積み重ねてきて、ここまで来ているわけですね。先ほど武田委員がおっしゃったように、総合科学技術会議においては国全体としての戦略を立てているわけなのですけれども、この時点に来て、さらに国の施策を増やすという前に、今問われているのは、主たるアクターの大学そのものが学内でどのような産学連携の戦略を持っていて、やはり自分の大学の強み、弱みがあるわけなので、その強みをうまく生かしていく、弱みを補完するために何をしたらいいかという話で、個々の大学の中で議論しなくてはいけない。その中には産学連携戦略を立てるため、大学そのものの本体の戦略がないといけないのです。

 その話をまず個々の大学がするという前提があって、その中で、次に何か大学レベルでできないことがあれば、国として何かするかということをもう一回考え直さないと、例えば産学連携の戦略をつくってくださいというと、産学連携ポリシーという1枚紙が出てくるわけです。それだけではないのです。

 具体的にやはり分野に特化するかもしれないし、あるいは研究者チームに特化するかもしれないのですけれど、具体的なところを大学としてどのような戦略を持っていくかということを、まずやるということは大事ではないかと思います。

【白井主査】

 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

【牧野委員】

 大枠についていろいろお話がありますけど、具体的なところについて、我が国の場合にかなり問題点があるのではないかなと思っています。武田がヨーロッパに行かれたように、人の行かないところに行こうかなということで、国際化でヨーロッパとアメリカの東海岸に重点的に行っておるのです。まず今大学はパテントをライセンスすることを求められておるわけですけれども、日本の場合には、パテントをライセンスする条件が非常に悪いと思います。

 どうしてかといいますと、西山先生にしかられるかもしれませんけれども、やはり共同研究のパテントが共同出願になっているのです。これが非常に大きな足かせになっております。欧米は大学の所属になっておるわけですが、私どもの仲のいいメディカル・リサーチ・カウンセル・テクノロジーでは、いろいろな大学、特に大きな大学ではないところのパテントを集めて、きれいなバンドルをつくって、そして1年間に百数十億円のライセンスを行っている。それは単独のパテントであるからできるのです。そういうところが日本にはないのです。

 やはりいろいろな国際的な場所で話してくれるまでおつき合いをして、うちの大学が何者であるかを知ってもらって初めて出てくる話がたくさんありまして、そういうところをやっていって、どこが悪いかを見て話をしないと、なかなか議論が空中を舞っているだけで、どうしたらいいかというのが出てこないような気がします。

 今、うちの大学とヨーロッパの大学がどれぐらいうまくいっているか、私もわかりませんけれども、少なくとも行けば、最初のころは何をしに来たのかというような顔をしていた向こうの方々が、最近非常に喜んで迎えてくれるようになりまして、この前も、オックスフォードは非常に偏屈ですけど、うちの大学との共同研究、大体先生方は個人の共同研究は20ぐらいあったので渡しておいたのですが、どれぐらいうまくいっているかを少し調べたところ、スペーススペクトラム、宇宙から来るスペクトラムの解析のことですが、どのくらい京都大学がコントリビュートしてくれているかというのをまとめたものを、非常につぶさに紹介してくれました。

 やっと大学の力というのを少しはわかってくれたのではないかなと思っておるのですけれども、そういうことと同時に、先ほど言いましたように、やはりライセンスするのに有利な条件をつくらないといけないというのが1つ。

 それからベンチャーが育たない理由も非常に簡単だと思います。日本ではまずベンチャーのための教育がない、これが1つ大きいと感じています。何とかしたいと思って、今ケンブリッジの先生方にお願いしたりして、授業を改良する作業をやっております。ですからできてきているベンチャーが、うちの大学の中を見ていても小さいものしかないのです。

 それと同時に今度は企業のほうが、もうこれはいいのではないかなと思うと、あまりサポートをしていただけないのですか、アメリカとかヨーロッパですと、スピンオフしたところをずっと見ていてサポートしながら、いいところに行ったら買ってしまえというのが普通行われていることかと思いますが、そういうところがないです。ですから下地がないのです。そういう非常にわかりやすい具体的な改良すべき点も多々ありますので、海外が先に行っているわけですから、そういうところを習いながらやっていくのも一つの手かなと思います。

【竹岡委員】

 この委員会のミッションはやはり、産学連携の政策に反映させていくという、ある意味で大きな方向性を考えていくところだと理解しております。その意味では、基本的にまず2つに分けて議論をする必要があるのではないかと思います。

 1つは、平成14年ぐらいから産学連携という方針が国レベルで決まって、特に平成16年から国立大学の法人化で、知財本部の整備事業など、産学連携に向けた体制づくりをずっとやってきた中で、私は基本的に方向性はそんなには間違っていないと思っています。

 ただ、例えば今、牧野先生がおっしゃったような特許の問題とか、あるいはバイオの人材の話とかも出ましたけど、要するに今までの戦略的な方向性の中で、まだここは足りないとか、あるいはここはもう一回考えなければいけないのではないかという部分があるとしたら、そこを考えなければいけないのではないか、そういうくくりが1つあると思います。

 もう1つのくくりが、これは新しい潮流として方針として出てきているのが、国際的な産学連携拠点の形成、あるいはそれから非常に多額の予算を投じての大型な研究推進です。どちらかというと研究が事業化するといいますか、非常に事業体的な研究体制をどうつくっていくか、これは従来の産学連携の普通の仕組みの中では、少しおさまり切らないような部分が、今国からのミッションというところでおりてきている。

 これは前回、21世紀の研究開発の第4次産業と申し上げたのですけれども、やはり例えばファイザーとか、それからテキサス・インスツルメンツの例のように、日本から研究拠点が逃げています。日本というのは、特に大型な、それから先端的な研究開発というところで、これからも21世紀、世界に伍していかなければいけないのに、ほんとうにこのままでいいのか、上海に行ってしまうのではないかとか、グローバルな視点の中での議論だと思うのです。

 こういうものの仕組みというのは、今までの従来型のものでいいのだろうかというところでよく考えなければいけなくて、これは逆に我々がほかから学ぶ。例えばヨーロッパとかの国際的な産学連携拠点、先ほど西山委員がおっしゃられたように、いろんな海外からの企業を呼び込んでの先端的な知の追求というところをやっている拠点があるとすれば、それはどういう仕組みでやって、どういう人材が必要で、単純に研究者だけではなく、研究支援者がどういう役割をしているのか、それから予算のつけ方はどうなっているか、そういうものの分析をきっちりやる。

 あるいは例えば東京大学が、取り組まれてきたプロプリウス21など、大型研究などの取組、そういうものからも学ぶということを含めて、この仕組みの構築という部分、ここの議論が今までない。だから私はここの委員会で、2つの議論を並行してやらないといけないのではないかと思います。

【白井主査】

 ありがとうございました。議論の仕方そのものが少し先に進むのに、ペースをよく考えたほうがいいと。まさにそうだと思います。ほかにはいかがでしょうか。

【野間口主査代理】

 私も、白井先生から競争的資金云々というお話がありましたけど、大きなところでは、方向性というのは間違っていなかったのではないかなという認識を持っています。それで欧米はよくて日本は少しおかしいのではないかというのも、多々そういうところはあると思うのですが、欧米がほんとうにいいのかという分析も要るのではないかなと思います。

 例えば製造業的な分野で言いますと、文部科学省、経済産業省の大規模プロジェクト的な取組が、結局は人的コストも高く、資源もない我が国の産業競争力を、曲がりなりにも今日まで持ってきたということにつながっているのではないかと、私は会社に入りましたのが1965年ですけれども、それから10年ぐらいして、いろいろ社会人として物心がついてからの動きを考えてみますと、そう評価しています。

 ここへ来て、また環境とかなんとか21世紀型の課題が出ていますので、今までの路線にある程度いい面もあったということで、そこのところはやはりいいものはいいと評価して、続けていただく必要があろうかと思います。

 ただ、そのスピード感とかベンチャー等の話になりますと、確かに反省すべき点は多々あります。それから知的財産の取り扱いにつきましても、先ほどご指摘のように、日本の場合は共同所有、アメリカは機関帰属で明快であります。それも、機関帰属でいいのか、日本の共同保有で何か次の解決策はないのかというのは、それこそ先ほど竹岡委員のおっしゃられたように、こういう場で一度、利害損得、メリット、デメリットを考えて方向性を検討してみるのも、日本的な姿を見出す上で非常に重要ではないかなと思います。

 それからベンチャーの話ですが、ベンチャーは成功確率が低い。こういうのは低くて当たり前だというのが、あまり認識がないのではないかなと思います。アメリカあたりでも雲のようにたくさんできますけれども、どんどんつぶれる。ほんとうに強いところだけ生き残っていくという仕組みはそのとおりだと思っていまして、日本でもこれから生まれては消えていくことになると思います。1,000のうち3つなのか1つなのか知りませんけれど、ほんとうに強いのが生まれていくのかなと思います。ここのメンバーをちょっと見ましても、例えば森下先生などの大阪でやっておられるベンチャーは、ほんとうに成功して、期待の持てる例ではないかなと思っておりますし、先ほど産学官連携で、官の研究所もかむべきだという話がありましたけど、産総研の関西センターを踏み台にしていただいて、非常にそれはそれでよかったのかなと思っております。

 それからさかのぼって考えますと、西山委員がおられる味の素というのは100年前、うま味研究100周年が去年でしたけれども、あれは産学官連携の何の助成策もない時代に、東京大学の池田教授と事業家の何とかという人、鈴木三郎助が組んで、今日まで持ってきたという例もあるわけで、日本の社会としてそういうのを育てる力がないと考えてしまうのではなくて、やはりあくなき挑戦、執念、こういったものを是としてサポートする仕組みというのが、この産学官連携施策の中で考えられるべきではないかなと思います。

【白井主査】

 ありがとうございました。いろいろ結構あるのではないかという、今までの発展といいましょうか。別に不成功で終わっているわけでもないのだから、現状をやや肯定的に見ないと先に進めないということでしょうか。

【白井主査】

 森下委員、何かありますか。

【森下委員】

 踏み台にしていただけて、大変産総研には感謝しております。

 思うのは、いろんな動きをしてきた中で、波及効果が思ったほどまだ出ていないのかなという気がするのです。各大学、先ほどの共同研究の増加とか受託研究の増加、あるいは特許の収入等も予想外にいいところも、正直サイズから考えるとできていると思う。ただそういうモデル自体が波及効果として、周りに広がっているかとか、あるいはどこが実際成功の原因としてあったのかというあたりの情勢認識がうまくいっていないので、何となく事業をやっているけれども全体の有機的な統合がないという印象が、やっぱりあるのではないかという気がするのです。

 したがって、どうやったら波及効果をもたらせるかというポイントを、もう一つ考えなければいけないのだけど、特に思うのは、地方の大学というのはやはり、地方の中で一番おそらく知財に関して人が集まっている可能性が高いので、場所によっては弁理士の先生すらいないような地区というのも存在しますから、そういう意味で、地方でうまくいっている大学の知財本部というのを、うまく地方の中小企業とか、あるいは地方のベンチャーとかに広げられるようなロールモデルができれば、結構実感として産学連携がうまくいっているような印象を持てるのではないかという気がするのです。

 また地方においては、多分大学が一番やっぱり頼りやすいところ。いわゆる産総研にしても理研にしてもあまり地方にはないので、しかも結構ハードル、敷居が高いのは多分事実だと思うのです。そうしますと、わりとまだまだ地域に密着している大学の力をうまく使って、その地方での産学の技術移転のモデルとか、あるいは知財活動を一緒にやったモデルをうまくつくっていくような形での事業というのも、今後必要なのではないかなという気がいたします。

 特に意外に地方の中小企業というのは、結構こつこつとやられていて、地道な技術を持たれているところが多いんです。ただ何となく大学に対してはハードルが高いと思っているというポイントがありますし、それから人が少ないので、自分たちのほうからそういう活動には行かないです。声がかかれば決して嫌がっているわけではないのですけれども、そういう意味では、地方の優秀な技術系、物づくり系のベンチャー、中小企業等をうまく巻き込んだような仕組みをつくる必要があるのかなという気がいたします。

 その中にできれば産総研とか理研のような公的な研究機関、あるいはJSTとかNEDOも、もっとこの知財活動の中で顔が見えてもいいのではないかと思うので、このあたりもうまく巻き込むことが必要ではないかと思うのです。JSTの地域のプラザはたくさんあるのですけれど、知財の活動という点では、もう一つ姿がはっきりしないと感じています。そういう意味ではせっかくあれだけ拠点を持たれて、今度もたしか補正で各県に1つずつですか、産学連携の建物が建つという話ですから、これも箱物ができて終わりというのでは意味がないので、そのあたりをうまく活用するような事業展開というのも必要だろうと思います。

 そのことによってもう少し実感として、産学連携活動というのがやっぱり動いているという印象を持っていただけるのではないかという気がしますので、ぜひその波及効果というものを増やすための仕組みというのも考えていただければという気がします。

【野間口主査代理】

 今、地方のお話が出ましたけれど、実は私はきのう、今日と、香川大学と愛媛大学の学長にも会って、産学官連携の責任の先生にもお会いしまして、例えば愛媛県当局、知事をはじめ、ああいう方から見ても、最近の大学はほんとうに変わったという評価です。これは文部科学省の中の評価ではなくて、県などの評価ですから、おそらくそうだろうと思うのですが、一番変わったのはやはり産学官連携の産業貢献の意欲が非常に大きいと、そういう点が感じられました。

 そういうのに公的機関もよくサポートしてくれという話がありまして、私もそのとおりだなと思ったのですが、先ほどから産総研の名前が出てきますけど、文部科学省にも立派な研究法人がありますので、そちらをまず早めるようにお願いしたいのですが、産学官連携が動き出しているということは、私は事実ではないかなと思います。

 ただ地方で感じますのは、先ほど秋元委員のお話にありましたが、産学官連携のコーディネーターの層が薄いと感じています。ですから産業界OB、あるいは大学の先生のOBの方、こういった方にもっと活躍してもらうような機会をつくるというのが、産学官連携の出口がスムーズに見えていく、一つの方式かなという気がいたします。

 それからもう一つは、世界への発信力というのをもっと高める工夫をしたらどうだろうかと思っています。世界から来ていただく、来て日本で研究してもらう、これは非常に望ましいことですけれども、やはり日本の言葉の問題とか、リビングコストの問題とか、住まいの問題とか、教育の問題とか、そう簡単でないとしたら、そこの改善は粘り強くやるにしましても、世界への発信力というのを今までの何倍か上げる。これは海外から来ていただくということよりも、費用対効果が大きくできるのではないかなと感じました。

 というのは、地方大学でもきらりと光るような、今回の2,700億手配しているような先生方のようなところは、結構そこの主催の国際会議などが行われているのです。相当なレベルの外国の研究機関の方も来ておられますので、そういったものをもっと活性化して、日本からの発信力を高めていく。そうすると、この産学官連携の取組の出口が今までよりもよく見えて、もっと活性化するにはどうだろうというように見えてくるのではなかろうかと思います。

【白井主査】

 ありがとうございました。事務局のほうでこの資料22とか3とか、そこら辺の課題というのが書いてありますが、ここで少し紹介してもらったらどうですか。

(事務局より、資料2の説明)

【白井主査】

 かなり関連したご意見をいただいたように思うのですけれども、今の項目について、思いついたことがありましたら。本田委員、どうぞ。

【本田委員】

 ほんとうに現場の声ということで幾つか、問題点というか、現場から見えてくるものというのをお話しさせていただきたいと思うのですが、共同研究の数を評価するというのがあるのですが、必ずしもそれがベターではないと考えていまして、例えば共同研究による成果が大体どれだけの実用、製品につながっているか、そろそろそういう視点での調査もあってもいいのかなと思うのです。

 実際に技術移転によって生まれた成果はまだまだ少ないとは思うのですが、そちらの数と、例えば共同研究の成果が実用化につながったというところと、そのあたりの調査もしていっていただいたほうがいいように思います。共同研究の成果として共同発明が生まれてくるのですけれども、当然ものすごい数の共同出願というのがありますが、それはかなり多くて、中にはほんとうにこれを出願するのだろうか、特許性があるのだろうかというものも出願しているのが実態ではないかと思うのです。量から質へとなっている中で、まだまだそういう部分も現実は多くあります。

 ですので、何でも共同研究を推進するというよりも、逆にアカデミア単独での研究を推進し、ある程度インキュベーションした後に、もう少し民間企業に移転できるような、今バトンゾーンみたいなところがかなり離れているのを、無理やりひっつけているように思いますので、そこをもう少しアカデミアができるような構造があってもいいのかなと思います。

 意外と企業に技術紹介をしますと、そんなアーリーなものはということが結構多いです。やはりアーリーなもので、そこで眠らせてしまわないように、もう少しインキュベーションがアカデミアの中でできていかないと、なかなか民間へ渡していけないというところがあると思います。例えば、最近ですと医工連携とか、東大の中では非常に成果があります。今まで工学部の先生がやっていたものの、実際に生物活性が図れるようになったり、医工連携による成果って、すごく大きいと考えております。

 異分野融合というのは、ここ何年か重要だということで、皆さん視点を持っていただいているのですが、その融合をどう融合していくかというのを、大学の中で融合する連携組織をつくらないとできないのか、個別で融合していけないかなとも思っています。

 例えばポスドクがたくさんいらっしゃると思いますので、今どうしても研究室がすごく細分化されていますので、逆に異分野の研究者を技術の推進のために派遣したりとか、そういうもう少し細やかな異分野融合があってもいいのかなと考えています。

 例えば有機合成をやっている研究室で生物活性がはかれない、そこでとまっているというような実態もありますので、そういう研究室には、例えば生物活性をはかれるようなポスドクを2年、3年という単位で派遣したりという、細やかなことができるといいなと思いますし、工学部のほうで材料系をやっている研究室で、電気特性をはかりたいけれどなかなかはかれないみたいなことがあると、電気特性をはかれるようなポスドクをそこにあてがって、かつ、少しの研究費をその人につけてあげるということができれば、もっと大学の中でインキュベーションというのができるのではないかなと考えております。共同研究ではなくて、もう少しアカデミアでの研究推進ができるともう少し変わるのではないかと思っています。

 あとは、イノベーション創出に向けたというところで、大学の質が、多分中を見ていただくと、もっと質を重視していいのではないかと思われるものが多くあろうかと思います。まだなかなかここで見切るにはということで、レベルがラインをどこで切るかというと、わりと下のほうで、特許性でも、ぎりぎり進歩性があるのかないのかというところで切っているようなところがあろうかと思いますので、もう少し質重視の方向で、出願件数が減っているというのはご指摘があったと思うんですが、もっと絞っていいのかなとも考えております。

 あと、TLOをどうするのかというところに関しては、やはりTLO、技術移転して初めてその役割というか、活躍の場があると思いますので、実際に今までいろいろ指標を見ますと、実施許諾件数とかいうところでしか、皆さん、調査というか、統計がないのですけれども、実際1つの技術をどのぐらい企業に紹介しているかとか、例えば紹介件数がどのくらい動いているのかというのがあると、もっと意識して動かれるのではないかなと思いますし、あと、実施許諾件数という中に、例えば多分特許権の譲渡も含まれていると思います。

 独占ライセンス、譲渡契約でもう上げて終わってしまっているというものを細かく分けると、実態がもっと見えてくると思うのです。多分企業に一部譲渡して、それで対価を得て技術移転の件数としては1カウント。結局共願になって終わっているというものもあるのではないかと思いますので、もう少しここの中身を、共同出願、共同発明でそれでよしとすればいいのであれば、そういうカウントもいいとは思うのですが、どちらに引っ張っていくかというのを考えながら今後の統計指標というのを考えていくと、また各組織の活動も変わってくるのではないかと考えますので、そのあたりをこういう場で議論できるといいなと思います。

【野間口主査代理】

 よろしいですか。

【白井主査】

 はい、どうぞ。

【野間口主査代理】

 先ほどから、共願という話が出ますけれども、私は共願になっているのは、その前に独自でアカデミアとしての研究の成果で出てきた先生方の基本特許があって、それを市場に出すために一緒にやりましょうと、共同開発が始まってから出たのは共願になっていると思うのです。その基本特許のすばらしいのがあれば、そこで大いに稼げるはずなのです。だからそこがせいぜい共同研究から始まるような形のものは、当然あまり稼げないものだと私は思います。やはりその共同研究を引き出すための基本特許みたいなやつが重要だと思います。

 そうなりますと、先生ご指摘のように数ではない。数をやっている間はよくならないような気がします。論文の数とか特許の数とかでは競争力の指標にならないのではないでしょうか。やはりそこは改めてもらう、我々自身がこういうのを見るときに、数だけに惑わされないようにというのは非常に重要だと思います。

【西岡委員】

 少し教えてもらっていいでしょうか。

【白井主査】

 どうぞ。

【西岡委員】

 今の数の論議をしているのも非常に重要だと思うのですけれども、私たちはこう思ってもいいのですか。日本の大学、国研は、ほんとうに企業が活用すべき研究をやっているではないか、これだけやっているのに使わないやつはおかしいと思っていいのですか。それとも使わないほうには使わない理屈があって、大したものがないのではないかと彼らは言っているのか。何かそこのところが需要と供給が合わないと、この議論がかみ合わないと思います。そういう意味で、数で言わずに、こういう件数を企業の人が見て、これは使えるなというような採点がここに出てくればいいかなと思います。

【白井主査】

 大変厳しく難しい問題を尋ねられたのですが、答えられる人はだれですか。それでは少しご発言がなかったから、どうぞ。

【渡部委員】

 私でよろしいですか。今の話だけ少し先にして、全体的な話を。基本的に大学の技術は、すぐ使えるというものはありません。それはそういうものだと思います。基本的に不確実性が非常に高い。技術的な不確実性が高くて、マーケット側の不確実性が高い。問題はそれに対してどれだけ不確実性を下げるための投資を民間(官も入りますけれども)でやるかどうかということで、基本的に眠らせないで大学の技術が実用化するかというところが決まるわけです。そのための努力を産学連携という仕組みの中で、皆さんが一生懸命やっていると私は理解しています。

 少しもとへ戻りますけれども、全体的な振り返りの話が少しありましたが、少し世界的なことから言いますと、基本的に現在までやってきた、一番大きなところは機関帰属という話がありまして、個人の研究者がいろいろやっていて、それがたまたま産業に使われるというのではなくて、ナショナルイノベーションシステムの中に学セクターをきちんと位置づけようとすることです。それで、施策としてそれが有効になるようにしようということで、機関に帰属させて、政策的に活用させるというような仕組みになってきたわけです。

 これについては、実はアメリカが1980年で非常に早かったわけですけれども、世界的にほとんどみんな同じことを、1990年代後半からやってきて、ヨーロッパも1990年代の後半ですし、今は中国もほぼそういう状態ですし、南アフリカが今法改正を行っているらしいです。それからインドが今国会にかかっていると聞いていますけれども、ほとんどみんな同じことをやっています。

 イノベーションシステムの整備に関しては、実を言うとそんなにみんな変わったことはしていないというのが私の印象です。例えば国際産学連携をやろうとしたときに、どこかの国は個人帰属で、どこかの国は違うシステムだと、これは大変できないわけですから、機関でちゃんと管理ができている状態であればいろんな連携ができる。オープン・イノベーションやなんかに関してもやりやすいということになって、非常にいいことなのですが、その個々の国でシステムがうまくいっているかどうかというのは、まちまちで、苦労している国も多い。

 実を言うと私の印象だと、ヨーロッパ、例えばドイツなどは機関帰属はそんなにうまくいっていませんので、日本のほうがよっぽどうまくいっています。日本は私の印象ですと、政策誘導が非常によく効く国だと思いまして、機関というものに帰属させるといって、みんな結構そのとおりにしたという感じがします。

 だけど一方で、その機関管理、機関帰属ということが施策の中心であったので、先ほど本田委員が言われたように、アカデミアとか研究者全体に対しての影響力というのはそこの中で、やはり欠けていた部分もあるのではないかなという気がします。

 現在、学術会議なんかでも知財の検討委員会なんかができていますけれども、実を言うと基本的なことの認知というのが、まだそんなに進んでいないような気がします。そのために、例えば非常に難しいマネジメントが、ラボラトリーマネジメントのレベルから必要なことというのが結構あるわけです。基本特許が出てくる過程というのは、非常にその研究現場の中で出てきて、それをうまく知財に持っていこうというのが、実はかなり高度な研究現場のマネジメントが必要で、それは機関管理だけだとなかなかうまくいかないです。

 そういうことの施策として、例えばリサーチアドミニストレーターみたいな人を現場側に置こうという発想もあると思いますが、そういうことをもう少し精度を上げて考えていったらいいではないかと思います。リサーチアドミニストレーターの理論というのもあるのですが、何か単に雑用係みたいな感じになってしまうと、多分これは施策としてうまくいかないのだろうと思います。おそらくそこに専門職としての何らかインセンティブとかモチベーションがあるような形の像をつくっていかないと、日本の場合はそういうスペシャリストはなかなか育ちにくいので、単なる雑用係にならないような施策の設計というのは必要だと思います。

 それからもう一つ、先ほど質の議論というのがいろいろ出ていました。これはどうしても数が統計的に使いやすいので、数の表が並ぶとそれが気になるということですが、これは苦労すると思いますが、とにかく活用のデータというのをこれから一生懸命とっていかないといけないと思います。

 特にライセンスなどは勘定しやすいのですけれど、先ほど何回も出ていますが、共同出願の特許とかいうものについては、実はこれは単願のものがライセンスになった場合は、企業側から活用のデータを受け取る義務を課すことができるのですが、共願の場合はほとんどわからない。先ほどナショナルイノベーションシステムの中でと言った中で、それが一体どういう効果、役割を果たしているのかというのは、実はよくわかりません。

 これも世界的な比較から見ると、日本と韓国だけが異様に共同出願が多くて、全体の7割、8割が共同出願というのはやはり非常に多い。逆に言うと、ここの共同出願の特許がいかに活用されているかどうかというのは、日本と韓国に関しては全体の効率を決めるということになりかねないので、そこの中身は重要ですが、なかなかわからない。だからそういうところの活用のデータをとれるようにすることは、非常に重要だと思います。

 それからもう一つ、あんまり出てこないですけれど、実はやはり昨年からの経済危機というのが、産学連携にも随分影響を及ぼしているはずです。統計数字で、おそらく今年は共同研究などが減っている可能性が高いわけですが、これは日本だけではなく、世界的にそうで、アメリカはもっと厳しいという話を聞いていまして、アメリカのあるTLOは、昨年の12月の段階で半分がレイオフになっているという状況がありまして、そういう中で世界の産学連携のやり方というのも、もしかすると変化をしているかもしれません。

 その辺のことは、やはり調査というのがなかなかできないと思いますけれども、どういう変化があって、どういう新しい施策が出てくるのかというのはよくウオッチをして、日本の施策にも反映させるべきではないかと思います。

【白井主査】

 たくさんいろんな重要な点を指摘いただいたと思います。どうぞ。

【井口委員】

 私も渡部先生とほぼ似たようなことですけれど、東北大学あるいは今も地域でずっとやっておりまして、1つ今JSTの地域結集型、これは終わりつつありますが、その評価、実用化、あるいは企業化の評価を全国的にかけて担当しています。そこで気づくのは、いかに地域の中小企業をどう巻き込んでいるかということと、もう一つ、さっき特許申請の数が出ていましたが、数は必要かもしれないのですが、その数を打つ前に、ベンチャーをつくるなら、実用化するなら、戦略的にどういう形で特許を出すかということが非常に重要で、それを指導できる人材が地方にどれだけいるかということを非常に不安に思っております。

 先日から公募が始まった産学連携拠点というものが、これから地域でどれだけ動けるかは、我々も見守りたいと思いますが、ぜひ地方にとっては、そういう国からのお金がある程度あったのだけれども、それではどうやって先生方のさっき言われたものすごい基本特許、それに続く特許を戦略的にとっていくかということを指導できる人材、これは非常にこれから育てていかなきゃいけない。

 実は私もJSTの育成研究から生まれたベンチャーの取り締まりをやっていて、5年目に入ってきて、何とか今年にはプラスマイナスゼロになるところまで来ましたけれども、去年からベンチャーキャピタルがファンドを立てられない状況になっていて、キャッシュがどれだけというのを非常に不安を持ちながらおります。ですから今度できた産官ファンド、あの巨大な産業革新機構が早目に柔軟に動いてくれることを期待しています。

 なぜかというと、幾つかのベンチャーキャピタルから出資していただいているのですけれども、期限が5年目になってきましたので、近づいてきています。IPO3年後といっても期限が近づいていますので、ぜひそういう2つの点で、こういう産学官連携をいかに推進するかというところで、人材というのと、それからほんとうに産学官連携をやったときに、ファンドをつくったけれども、どれだけ動いていくかということについてもご議論いただければと思います。

【白井主査】

 ありがとうございました。

【羽鳥委員】

 先ほどの西岡先生のすごくわかりやすい発言があったと思いますけれども、大学は、私はすばらしい成果が結構いろんなものが出ていると思っています。それに対して産業が結びつかないのは、やはりそこのつなぎのところの仕組みがいまいちまだ機能していないのではないか、そのためにこの大学に産学連携の仕組みを大々的に数年前から、文科省が重点を入れてやってきたと思います。

 1つは特許出願をするというのと、あともう一つは技術移転、TLOということだと思います。特に私はTLOのところが非常に大事だ、人が技術を産業にわかりやすく紹介していくということが大事だと思います。私のところにもTLOの専門家がいますけれども、単に研究成果、特許の明細書だけを企業に渡すのではなくて、加工して渡す。

 ただ、それも限界があります。先ほども指摘がありましたけれども、まだリスクが高くて、これは企業が手を出すとやけどしてしますというか、どうなるかわからないものに手を出させるかという見方が、行くたびにあります。現実に私どもの専門家がそうやって帰ってきます。

 そうすると、そこのつなぎのところでつなぎの研究開発、応用開発といいますか、そこの資金をどこかから獲得して、それで企業が手を出せるところまで持っていく、それは1つベンチャーかもしれないですけれども、ベンチャーも数限りあって、日本はそんなに起きませんので、そこを何とか手助けする必要があります。

 アメリカのTLOなんかは実用化研究資金とかいって、結構既に20年も歴史があって、TLOが回り始めているので、そういった応用研究のところにその金を使っていくこともできます。まだ日本はそこまで成長していませんので、その金はどこにもないです。だからどこかから捻出しなければいけません。

 あともう一つ、研究者側から見た問題ですけれども、基本的に研究者は論文を書かなければいけないです。そうすると応用開発のところで、企業が使いたいようなデータを精度を上げて、企業向けにやっていくことが論文の価値があるのかと。そうすると大学ではなくて別のところで、それはベンチャーかもしれないですけれども、やらざるを得ないという、幾つかの解決すべきことがつなぎのところにあります。そこを議論できるとありがたいなと思います。

 あと、もう一点だけ言ってよろしいでしょうか。大学の体制です。さっき言ったつなぎの人、専門家、これは単なる大学の事務職員ではだめです。事務職員は2年とか3年でどんどん変わっていきます。そうしたときに、大学はどういう人種がいるかというと、教員と事務職員。専門家の居場所は日本にはないです。それは国立大学も私立大学も同じです。私は、慶應は私立大学だからその辺柔軟なのかと思ったら、そうではなくて、みんな専門家は5年で有期です。

 したがって、最初は意気揚々とやりますけれども、5年目に近づくとインセンティブがなくなります。どこか次を探さなければいけませんので。ということがすべての大学で行われているとすると、あるところまで上がってはまた下がって、上がって下がってというつらい思いをしているなというのがございます。その辺をどこか改革できないかなと思います。

 以上です。

【西岡委員】

 少しいいでしょうか。私はつなぎの議論はすごく大事ですけど、もう何年も研究されてしまって、それをつなごうと思っても全く市場性がない。何であなたはこういう研究をしていたのですかというと、それは博士論文にするためだという研究もいっぱいあるように見えます。プロフェッサーの歴史であって、プロフェッサーのやっていることを次々やるから、何かアメリカの論文の1次近似を2次近似にしたら博士になるようなことをやってきて、これをいきなり事業化といったって、全く市場性がないものをこつこつやってきているのです。

 もしそうだったらつなぎを、こういう研究をするしかないのかというところに入らないと。あれで5年も6年もやっていたら、到底市場性はありませんというものが結構ありまして、私もJSTIT部門のPOをやっていますけれど、何で先生こんなことをやっていたのですかと言いたくなるようなものがいっぱいあります。

 それは渡部先生のおっしゃったこともよくわかりますけれども、だからそういう意味では評価というのを、少なくとも使う側の評価軸をここに入れてほしいです。そんなことをしていたらノーベル賞はとれないかもしれません。そんな企業の喜ぶようなことをやっていたらノーベル賞はとれるわけがないですね。ただ基礎研究をやるということは、横にないといけないと思います。そのつなぎのところはおっしゃるとおり大事ですけれど、後からつなぎという思いです。

【白井主査】

 西山委員、どうぞ。

【西山委員】

 先ほど本田委員から東大のプロプリウス21の話題が出ましたので。もちろんプロプリウス21は着々と成果が出ていますが、私は関与してうまくいかなかった例もあります。これは東大で、MRIというものがありますけれど、今医療には大体3.5テスラーぐらい使われていると思います。これを東大の医工連携で11.5テスラーにすると、細胞レベルの解像度が上がって、それはコンピューターと医の生理学とを合わせますと、例えばメディカルでは超早期に発見できるという革新的なアイデアなのです。

 それを当初から、プロプリウス21ですから、企業と話し合ってやるということについて話し合ったのですけれど、結局日の目を見ておりません。

 私は欠点として痛切に感じましたのは、参画すれば一番やりを上げるチャンスは十二分にあって、先ほど本田委員も言われましたように、トゥーアーリーなので、相当マネーの負担が多いということで、産業界はシュリンクしてしまうわけです。だからアイデアはいいけれど、参画しない。

 それから大学のほうは大学のほうで、アイデアなのだけれども、企業に参画してくれという説得性があるほどは、そんなに進んでいないわけです。そうすると、その辺をどうするかということになると、日本の中では多分こういうケースが非常に多いのではないかと思います。産学連携と言っているけれど、実際にしなければいけないときにやらないで、欧米が一番やりを上げたと気がついてやるというのが大体従来パターンですけれども、そういうケースはまだ多々あるのではないかと思います。

 そこに一つの解決策としては、呼び水マネーみたいなものがあって、そこに参画してもらいたいとなれば、多分参画できたと思うのです。やはり少し早過ぎると、企業としては。そういうところへ先行投資というのはなかなか厳しいです。

 それからそれをブレークスルーするには、やはり大学が自助努力で、かなりの要素技術があって、この辺までいっているから参加してもらうのがかなりの確度だよとなると、また参画しやすいという、両面を感じました。だからプロプリウス21で、改善の余地があるように思います。

【本田委員】

 すいません、私の発言がちょっと誤解を招いていたようなのですが、特定のプロプリウスを否定したわけではなくて、基本の技術があって、ライセンスはできないけれど共同研究だったらやってもいいよというものをどうするかという、そこを少し見直してうまくつなぎができるようにインキュベーションして、きちんと大学で興味を持っていただくような格好ができたらなという、そこの視点で申し上げただけです。

 プロプリウスみたいな構想段階からやるのはまたそれはそれで…。

【西山委員】

 いや、特に本田委員の話をしているのではなくて、たまたまプロプリウスというキーワードが出たから、そこでうまくいったほうがいいのだけれど、なかなかさえているアイデアではあるけれども先に進まなかったことがあると。それにはどうやってやるかということについては、多少どちら側もリスクテークしないと先に進まなくなってしまいますから、その場合に最終的にやっぱり呼び水マネーみたいなのがあると、解決策になるのではなかろうかなと思いましたということです。

【白井主査】

 なるほど。

【本田委員】

 その点で1点だけ、そのインキュベーションするための呼び水マネーで、経済産業省、文部科学省と、マッチングファンド形式にはすごくたくさんのプロジェクトがあるけれども、残念ながら大学の研究で出口方向に向けるというところで、大学単独でやりたいというものに対して、極めて少ないです。

 それは基礎研究で出ているからいいのではないかという話になっているようでして、ただほんとうに羽鳥委員がおっしゃったように、基礎研究でやるテーマと、産学連携で行わなくてはいけない、データとりみたいなところも若干ありますけれど、産学連携という視点で知財としての評価のための研究というのは、少し違うと思います。

 そうすると、やはり基礎研究でそのお金を回しなさいというと、なかなか先生方は回していただけなくて、ほんとうに出口方向を向けるファンドというか、呼び水マネーをつくっていただけるといいなと思っていますので、例えばJSTでそういうファンドみたいなものを組んでいただけると、非常に産学連携が動くのではないかなと考えています。

【白井主査】

 時間もぼちぼちきておりますが、あとご発言がなかった方、どうぞ。

【石川委員】

 東大でプロプリウスを設計した張本人なのですが、プロプリウスを設計した前提は、大学と企業との間の意識の差が大きいだろうということで、それを共同研究が始まる前に意識の差をうまく埋め込んでいこう、そのプロセスを重視しようというのがプロプリウスの本質でした。だからその時点でできないものができないという判断ができたということは、実は成功であって、西山委員は失敗とおっしゃるのですが、お互いによくわかって無理なことをしなかったという意味では成功なのです。それができなかったという意味では失敗ですけれど。

 事前にちゃんとお互いを認識し合うというプロセスを入れ込もうという発想自体は、非常に必要な話で、西岡委員のおっしゃっているようなことも、そういったプロセスを重視すればお互いわかり合えるというところがあります。そこでそのプロセスでどれだけノウハウを蓄積できたかという話であって、第1期の産学連携からすると、6年近くの時間はまだ足りないというのが私の思いで、これを強化していく必要があるかなという気がします。

 この資料というか、データの中で少し気になるのは、大学6年の中で相当なことをやってきたわけです。大学の歴史の中で、これだけの大変革をやった歴史は実はないです。意識改革をし、制度改革をし、組織設計をし。組織設計なんか2年で1人から50人にしたとか、それから数億円の予算を動かしたとか、人を、専門人材を入れていないとおっしゃいましたが、東大は入れましたので、専門人材を入れたというのは、歴史上こんなことを数年の範囲の中でやってきたことはないです。キャピタルはつくった、TLOには出資した、こんな恐ろしいことを大学が今までやってきた歴史はないです。

 それだけ大学が相当努力をして変えてきた。努力が結んだかどうかわからないですけれど、努力をしたことだけは確かであって、その努力が企業の側でどう見られているかということには強い興味を持っています。そのあたりを少しこの中でもあぶり出していかないと、これはみんな大学側の資料なので、大学側はよくわかったけれども、企業側がこういった大学の行ってきた作業をどう見ているのかというのを、少し聞いてみたいなと思います。それが実は先ほどのプロプリウスなんかで、まだギャップがあるということのギャップにつながってくると思っていまして、そのギャップを埋めるための次の施策のアイデアになるんではないかなという気がします。

 実は企業に聞いてみたいことはいっぱいあります。このトータルの数字の企業版という数字が欲しくて、それと両方突き合わせるとギャップが見えてくるので、それをどうやって埋めていくかという話です。今日幾つかアイデアは出ていると思いますが、そういったものの基礎データがほしいなという気がいたします。

【武田委員】

 少しいいですか。

【白井主査】

 はい。

【武田委員】

 私は毎年委員を引き受けるときにも、事務局のほうには要望としてお話をしていますけれど、今日の議論はもう一段やっぱり調査を深めるとか、分析を深めると、最初のごあいさつに、一、二年でかわってといる。やはりそういうスピードでやっていますと、この基礎資料の数字そのものは、僕はよく嫌味で、頭のいい大学生だったらこの数字からこれくらいのサマリーをつくれるよと。

 要するに深まった調査というか、例えば私はボスの野依先生に負けないくらい愛国者ですから、別にアメリカがいいと言っているわけではないです。例えばヤングレポートにしてもパルミザーノにしても、私は競争委員会でつき合いましたけれども、向こうはまずそこの中にマイケル・ポーターとか、社会科学者がいます。その連中が、今石川先生が言われたようなことも含めて企業をインタビューして、調べて、まず今日の最初に出たようにこれだけやってきたけれど、これはどうだろうかということを、この数字では読み取れないです。

 やはりこれも科学的に研究して、諸説あってもいいと思いますけれど、幾つか掘り下げて、各省庁はその中に政策研究所があるから、アメリカみたいなシンクタンクではなくても、官のお金を使ってもいいから、少し社会科学の力を強めて、自然科学も産業技術も世界一ですけれど、社会科学が少し弱いのではないかという気がしていています。こういう機会を通じて事務局の資料の中にもう少しくっきりと調査をした結果、ここにいる有識者の先ほどから出ているコメントはどれも正しいと思います。

 ただそれは、それぞれ持っておられる知識や、そこから出てきているそれぞれのコメントなので、むしろたたき台となっています。このもとの事務局の資料のところにあるということにフォーカスされた仮説とデータが載っていて、それに対してどう思いますかということで、この有識者の意見をぶつけるようなことをしないと、いつも分散してしまう。

 最近もゲーリー・ピサノという、ハーバードのビジネススクールの教授が書いたバイオ産業の失敗の本質とか、やはり正しい、正しくないは別としても、綿密に調査し、仮説をもって、なぜバイオがこれだけ期待されているのに、ほかの産業と比べるとアウトカムが低いのかと。どうも知財にこだわり過ぎているから問題であるとか、すり合わせが弱いからとか、非常に示唆に富んでおり、マイケル・ポーターもそうですが、みんなそういうレベルで、さらにこの有識者の知恵を使えば、今までが悪いという意味ではなくて、この先の、先ほどから論に出ているような、もう一段深めるといった瞬間に、シンクタンクではないですけれど、もう少しインテリジェンスを使った上で、この会議を前に進めることをすればいいのではないかといつも思っています。

【原山委員】

 人文社会系の端くれですので一言申させていただきます。日本において研究者の層の弱いことは確かですけれども、ゼロではありません。産学連携に関しても、データをもとにした定量的な分析をしていらっしゃる方もいますし、また定性的に、いわゆるインタビュー調査をベースにしていらっしゃる方もいます。それはやはり、何らかの形で把握した上でもって、こういう土壌に上げていただきたいというのは1つです。

 それからもう一つは、産学連携と科学技術政策の中ですけれども、そういう研究者グループを強化していく、可視化していくということも一生懸命サポートしていて、いろんな場面でこれから必要になってくるけれども、やはり単発で何人かいて、見えてこないです。ですので、それを強化するというのも一言入れていただければと思います。もちろん渡部先生も含めてやっていらっしゃる方の一人です。

【武田委員】

 そうです。もっとそれを表に出して。

【野間口主査代理】

 石川先生のご意見に関することですが、私もこれまでの取組でポジティブな面があると申しましたけれども、1件当たりの共同研究の企業からの負担を考えますと、東大のプロプリウスのような取組以来、やはり大きくなっていると思います。奨学給付金でこの産学連携をお願いしますと言っていた時代から大いに脱皮して、そういった動きにはなっていると私は思います。

 それとこのTLOで、ここの技術をライセンシングしますというように見えてしまうと、企業の中の研究所であっても、研究所から事業サイドに成果を移すときに、特許の書面手続だけで成果が移るということは、まずないです。共同作業が何年か続いて初めて物になるわけで、そこがやはりプロプリウス的な取組の意味だと思います。ですからTLOというのをやめて、連携コーディネーションかインキュベーション、そういう形でやると、まだ産官連携が進むのではないかと。

 特に中堅企業以外になりますと、最初にライセンシングと聞いたときに、まだ事業が実るかどうかわからない段階で費用のことが出ますと、企業はものすごく姿勢が後退すると思います。それを前向きに取組みましょうという形にするといいのではないか。そういう取組が大学側の努力で増えているし、産業界もそれにこたえている姿が出ていると思っています。そういう面は評価してあげないといけないと思います。

【三木委員】

 いろいろお話を伺っていて、今後の議論にとって大事だと思っているのは、私は資料2で言いますと、やはり論点12番、それから3番だと思います。体制のことはそれに付随することなので、そこに最初に議論を集約する必要はないと思っております。石川先生もおっしゃられたように、大学は確かにこの6年間、ステップは踏んだと思っています。

 ただ、もう一つの物の見方として、向こう10年後を考えたとき、次に何のステップを踏むのかということは、実はあまりはっきりさせていないと思っています。片や経済社会で考えましても、これはつい先日、ある大きな企業の方から聞いた話ですけれども、ある部品をつくっている、世界シェアを半分ぐらい持っている企業ですけれども、中国の知財を忘れていたと。基本的に知財が必要なのは、多分マーケットの大きなところです。今大学は国際知財も欧米で、それでいいのかというような問題とか、もっと抜本的な問題が向こう10年を見たときにあるはずです。

 この委員会では6年間の、今年で多分国立大学法人で言うとターニングポイントですね。第1期の中期目標、中期計画が済むので。次の6年、さらにもう1期あるのかどうかは知らないですけれども、そこを見越した、しかも経済的には100年に1度のことが起こったわけです。ここへもう一度しっかり踏み込んだビジョンに基づいて、ストラテジーを考えていくことが必要だと思いまして、そのためにはこの人数で議論するのは少しきついなと私は感じています。

 これは事務局のほうでできるのかどうか知りませんけれども、少人数の少し踏み込んだ、分科会といったらおかしいでしょうけれども、何かそういったものをやるなり、それかもう一つは、ネットでメールで出してくれというと、これはすぐ大体忘れてしまいます。だけど、これは産学連携の深化と2の項は書いてありますけれど、何かうまくこの議論を深化させる方策がもう一つ必要だと感じつつ、今までお話を伺っておりました。

 先ほどから渡部先生もおっしゃられていた、いろいろ技術の不確実性とかマーケットの不確実性、それを下げていくための投資、そういう中でいろんなことを考えると、先ほどの産学連携の深化というところでも、例えばイノベーションの出口コンセプトというのは、民間、大学、それぞれの人たち、プロフェッションの人たちが一致することはないわけで、それをつなぐようなことを、実はやっています。

 なぜそういうことをやるかというと、地方の大学というのは大きな大学に比べて危機は先に来ています。東京に出てくると、どこが不況だと僕らは非常に思うわけです。非常にすぐにマーケットに知財が展開できるとかいうような状況はなくて、どういうプロジェクト、どういうものができていって、最後に結果が出てきたら産業のためになりますかということで、我々大学の中にあるもの、それから企業の中にあるもの、もちろんすべては開示いただけませんけれども、そういったものをベースにしまして、民間企業の方と一緒になってプロモーションします。こういうことを現実にやっております。

 そういう意味では地方のほうが二、三年ぐらい先を行っているのかもしれないですね。だから先ほどからありましたけれども、数字のゲームはやっていって仕方ないわけで、もう少しケースをいろいろ見て、その中から大事なものを掘り下げていくということを、事務局のほうにも資料もお願いしたいし、そんなことを少し感じておりましたということです。

 以上です。

【平田委員】

 先ほど社会科学者から発言がということなので、最後に一言意見を述べさせていただきます。ただいまこれからの6年の話を考えていかなければいけないというお話がありましたし、一番最初、西山先生のほうから国家戦略という話があり、そして後のほうで、大学自体が独自でもある程度やっていかなければいけないという話がありました。確かにほんとうにこの産学連携で産が主導権を握って、産学官のいろんな仕組みをどんどん強化していくという動きは、もちろん強化していかなければなりません。

 しかしながら、先ほどありましたとおり、去年からのものすごい経済不況と、それからそれ以外に実は10年前から、ものすごい勢いでMAが実現して、水面下でいろいろ動いています。このMAは今基本的に企業が事業部制をとっていますので、その事業部の中にいろんな技術開発の機能があります。それが選択と集中の中で、企業が短期的な業績を上げるために、基幹の事業でないものをどんどん切っていってしまう。

 それで、切ったものがどこに行っているかというと外資です。外国に行っています。実際に外資が買っている場合もあれば、ほんとうに例えば事業部ごと、あるいは子会社ごと海外に移転してしまっているというケースを結構最近聞き及んでおります。結構大企業が水面下でそういうことを行っています。

 その中で非常に若い開発能力のある人材が、企業の短期的な経済業績、あるいはその戦略に翻弄されて育っていかない、あるいは海外に流出してしまう、あるいは長期的な観点で技術開発ができない状態になっているという現実が、まだこれは数字には載っていないと思いますけれども、先ほどケーススタディーとありましたが、ネガティブなケースの中にかなり載ってきているという現実がございます。

 やはりそこをある意味では、産を支える学という部分もあろうかと思いますけれども、今度産を下支えする、あるいは補完をする学の役割というものも、これから必要なのではないかと思います。産の論理だけで、あるいは市場に任せてしまっていい部分と、それからやはり国としてしっかり守っていかなければいけない部分ということ、これは明確にしておかないと、産に任せた結果がアメリカだったという部分もあろうかと思いますので、日本はしっかりとこの短期的なものに翻弄されないで、10年、20年、あるいは30年先の技術開発の姿がどうなるのかということを考えていくと、やはり学の役割というのがもっと大きくなっていくのではないかと思います。

 簡単ですが、以上です。

【白井主査】

 大変深刻な話題もありましたけれども、今日出たかなり結論的なところは、今日論点をまとめていただいて、それなりに、いろんなところがよくまとめられていると私は思いますが、ただ、今のこの産業界、あるいは大学もですけれど、置かれている状況ということを考えると、ここまでいろいろな数の上とか、中身もそうかもしれないですけれど、ある程度伸びてきていることは事実でして、このままやっていればいいとはみんな感じていないということです。

 もちろん、これをさらに進めるべき幾つかのシステムやコンポーネントというのは考えられるけれども、それだけで済むかどうかという問題と、それからもう少し評価という意味で、細かくこの調査の内容を、数だけカウントしても意味がわからないのではないか、詳しく調べると、もう少し我々がやるべきことというのが見えてくるのではないだろうかという、非常に前向きなご指摘があったと思います。

 そういう作業を、どうしたらできるのだろうかということになるかと思います。各研究室、大学の中ではこういう人が必要だという議論もあったし、いろいろな分野によってこういう人材がいなければいけないというご意見もあったし、それからまた、つなぎの人材というのはその分野によって、それなりの知識や情熱を持っている人がいなければ、ほとんど有効ではないという、全体にわたって、各段階にわたってご議論、ご指摘が、ほとんどあったのではないかと思います。

 そういうものをもう少し具体的に、どういう人がどのぐらいほんとうにいるのか。それは各大学で全部用意するということは多分できないと思います。そうすると、一体我々はどうすればいいのかと思います。

 産業界から見たときには、大学で何が起こっていて、大学は何を提供してくれるのか、正直に言ってほとんどの産業界の人は何もわかっていないというのが事実だと思います。たまたまうまく顔が合ってというか、こんなことをやっているの、それでは一緒にやってみましょうという出会い、その出会いによってここまで数が来たということです。だけどそれは偶然ぐらいのことであって、ほとんどまだ体をなしていないと、そういうようにも思えるわけです。

 それは西岡委員が言われたとおりで、大学にほんとうにあるのか、産業界から見るとそう見えてしまう。大学のほうはあると言っているけれども、ほんとうに見える格好になっているのかというと、そういうわけでもなさそうです。では、産業界は今のままほうっておくと、これまでの行き方を追求して、日本の国力というものを守れるのかということになると、結構厳しいわけです。そのときに特に人材が多分枯渇してくるということが既に起こりつつあるわけで、理科離れなんて嫌なこともありますが、そういう一番基本のところからも崩されてきていることも確かに事実です。

 そういうことも含めて、この少なくとも産業界と産学連携というところで言うと、我々はどんなことをやればいいのか、今年というか、これから何年かの間でどうすればいいということを、もう少し具体的に、かつ、深みを持って出さないといけないということを、今日の結論で終わろうかと思います。

 そうすると、今三木委員が、これは人数が多過ぎて作業ができないから、みんな勝手なことを言っていて、こちらはメモをとっているだけで多分時間が過ぎてしまう、問題をもう少し細かく分類して、それでサブコミッティーでやるならやる。少し考えてみることがいいのではないでしょうか。

 野間口先生や、私ももちろん、何か考えてみたいと思いますが、やり方についてご意見のある方はぜひ、メールか何かで事務局のほうにご意見をお寄せいただければと思います。今日いただいたご意見はもちろんまとめてみて、どうするべきか、ということを、事務局と一緒に考えてみたいと思います。よろしいでしょうか。

 それではちょうど時間になりましたので、今日はこんなところにしたいと思います。事務局のほうで何か連絡することがあればお願いします。

(事務局より、資料4の説明)

【白井主査】

 どうもありがとうございました。

午後507分閉会

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研究振興局 研究環境・産業連携課 技術移転推進室

(研究振興局 研究環境・産業連携課 技術移転推進室)