今後の技術士制度の在り方に関する論点整理 (概要)

 科学技術・学術審議会技術士分科会では、技術士制度の在り方について、時代の要請に合わせた見直しに向けた検討を開始した。
 以下は、これまでの議論をふまえて、現在の技術士制度の問題点を整理し、これらの改善を図るために今後必要な検討課題や論点をまとめたもの。
 平成25年2月からの次期分科会においては、これらの論点等を出発点としつつ、産業界等の幅広い意見を聴取しながら、今後の技術士制度の在り方について、論点ごとに詳細な検討を行う。

 問題点1 ~技術士に求められる資質能力~ 

 技術者が業務を履行するために必要な資質能力等の基本的な要素(「コアコンピテンシー」)や産業界が求めている技術士のコアコンピテンシーが明確ではない。
(今後の主な検討課題・論点)
●コアコンピテンシーを明確にする。このために、以下の作業が必要である。
  ・産業界のあらゆる業種の意見を聴取する。
  ・これらの業種(部門)における技術士の現状と課題等を調査する。

 問題点2 ~技術士試験~ 

 第一次試験の受験者年齢は36.8歳(平成24年度)、第二次試験は42.1歳(平成23年度)であり、年齢が高いのではないか。
 特に、第二次試験については、技術士補の資格と所要の実務経験を有することを受験要件としているため、受験者にとって負担になっているとも考えられる。
(今後の主な検討課題・論点)
●コアコンピテンシーをふまえた技術士試験の内容や方法等を検討する。
●受験年齢の若年化を図るための方策を検討する。
●受験者の負担を考慮し、以下について、その必要性を含めて検討する。
 ・第一次試験及び「技術士補」資格
  ・第二次試験の受験要件となっている所要の実務経験

 問題点3 ~総合技術監理部門~

  産業界においては、技術的・経営的な課題を、総合的かつ多角的に解決できる技術者の養成が必要であり、経営的な観点より、総合技術監理部門の5つの事項(「安全管理」「社会環境との調和性」「経済性(品質、コスト及び生産性)」「情報管理」「人的資源管理」)では不十分であると考えられる。
(今後の主な検討課題・論点)
●産業界が求めている技術士のコアコンピテンシーの明確化を図りながら、総合技術監理部門で求められる内容の見直しを行うとともに、総監部門の位置付け強化・活用拡大を図る方策を検討する。

 問題点4 ~技術部門・選択科目~ 

  一定の技術部門・選択科目のみを有する技術士資格では、複合的な問題を解決することが困難であると考えられる。
(今後の主な検討課題・論点)
●産業界のあらゆる業種における技術士の活用状況並びに技術部門及び選択科目の将来性や技術の変遷に留意しながら、長期的、多面的、総合的な見地から、現在の技術部門・選択科目の在り方を検討する。

 問題点5 ~継続研鑽(CPD)~ 

 CPDについて、各々の技術士の必要に応じて、その取組の程度が異なっているのが現状。
(今後の主な検討課題・論点)
●技術士の資質能力等を向上させるために、CPDの内容、質、量等の望ましい在り方を検討する。
●CPDの実施主体について、技術者教育を行う高等教育機関への拡充について検討する。
●官民におけるCPDの登録及び活用の拡大を図る方策を検討する。

 問題点6 ~普及拡大・活用促進~ 

  技術士資格は、一部の業務資格取得上等の特典があるものの、名称独占資格であること、我が国においては、従来、組織としての技術力が重視されてきたこと等により、社会的な評価は十分ではなく、一部の分野以外では活用が進んでいない状況である。
(今後の主な検討課題・論点)
●技術者のキャリア形成、企業における技術人材育成等のさまざまな観点から、技術士資格が、例えば「運転免許証」のように、業務のスタート地点であるという位置付けを検討する。
●名称独占資格の性格を維持しつつ、他の国家資格との整理等を通して、公的活用の範囲拡大を図る。

 問題点7 ~国際的通用性~

 APECエンジニア登録件数は6,076件(平成24年8月現在)であり、日本人はその3分の1程度(2,004件)を占めているが、その活用が不十分である。
 国際的に活躍できる技術者の必要性に伴って、技術士資格を、APEC等の資格を通じて、国際的に通用する資格とすることが必要である。
(今後の主な検討課題・論点)
●IEAのPCを最大限活用しながら、コアコンピテンシー(技術士版PC)を明確にする。その際に、技術者資格の同等性の確保を図りつつ、「エンジニア」「テクノロジスト」「テクニシャン」と技術士を含む日本の技術者の位置付けも整理する。

 問題点8 ~大学教育との連携~ 

  技術者のキャリア形成の観点から、大学等における技術者教育、その後の技術士資格の取得、CPDの一連の過程における技術者教育の意義、重要性についての検討が十分ではなかったように思われる。
(今後の主な検討課題・論点)
●技術者教育の段階から、技術士資格付与、CPDまでの生涯に亘り、一貫した整合性のあるシステムを構築し、十分に機能させるための方策を検討する。
●第一次試験の合格とJABEE認定課程の修了が同等であるという現行制度の在り方について、再検討する。

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